特許第5972972号(P5972972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972972
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】直流電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/16 20060101AFI20160804BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20160804BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H02H3/16 A
   G01R31/02
   B60L3/00 S
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-514006(P2014-514006)
(86)(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公表番号】特表2014-519307(P2014-519307A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012060396
(87)【国際公開番号】WO2012171818
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】1154851
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シャトルー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン カルクェ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ドーシー
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/088448(WO,A1)
【文献】 特開平08−163704(JP,A)
【文献】 特開2003−169401(JP,A)
【文献】 特表2010−536314(JP,A)
【文献】 特開平11−133093(JP,A)
【文献】 特開平07−203601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
G01R 31/02−31/06
H02H 1/00−3/253
99/00
H02J 1/00−1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 自身の2つの端子間に公称電圧Vmを出力する直流電圧源(2)と、
− 前記直流電圧源(2)の絶縁欠陥を検出するための検出装置(4)であって、
・ 前記直流電圧源の2つの端子の各1つにそれぞれ接続されている第1および第2の入力端子(47、48)、
・ 前記第1の入力端子(47)と第2の入力端子(48)との間で、互いに直列に接続されており、標準化されている安全閾値によって定められる最大絶縁欠陥電流をImaxとすると、Zmin=Vm/Imaxで定義されるZminと、Zmax=1.5×Vm/Imaxで定義されるZmaxとの間の範囲のインピーダンス値Zをそれぞれに有している第1および第2のインピーダンス素子(41、42)、および
・ 前記第1のインピーダンス素子(41)と第2のインピーダンス素子(42)との間の中間点(49)と、電気的接地部との間に接続されている電流検出回路(45)を
有している検出装置(4)とを備えている直流電力供給装置であって、
前記電流検出回路(45)は、前記中間点(49)から来る絶縁欠陥電流に比例した電圧を受ける入力端子を有するマイクロコントローラ(453)を備えており、該入力端子は、第3のインピーダンス素子(456)を介して、前記直流電圧源の電圧レベルの1/10倍未満の電圧レベルVccを有する電圧供給源に接続されており、該入力端子は、さらに、第4のインピーダンス素子(457)を介して、前記電気的接地部(93)に接続されており、前記マイクロコントローラ(453)は、その入力端子に印加される電圧の関数として、前記絶縁欠陥の大きさを特定するように構成されており、前記第3および第4のインピーダンス素子の各々は、Ztmin=Z×Vcc/(4Vm)で定義されるZtminと、Ztmax=Z×Vcc/(2Vm)で定義されるZtmaxとの間の範囲のインピーダンス値Ztを有していることを特徴とする直流電力供給装置。
【請求項2】
前記第1および第2のインピーダンス素子(41、42)は、前記バッテリの端子の1つが前記電気的接地部に短絡しているときに、3.5mA未満の最大電流までしか流れないような定格を有している、請求項1に記載の直流電力供給装置。
【請求項3】
− 前記第1の入力端子と前記中間点との間で、前記第1のインピーダンス素子に直列に接続されている第3の断続器(43)と、
− 前記第2の入力端子と前記中間点との間で、前記第2のインピーダンス素子に直列に接続されている第4の断続器(44)と、
− 前記第3および第4の断続器のうちの一方を開いておくとともに、前記第3および第4の断続器のうちの他方を閉じておくことができるように構成されている制御回路(8)とを備えている、請求項1または2に記載の直流電力供給装置。
【請求項4】
前記第3のインピーダンス素子に並列に接続されている第1のダイオード(454)、および前記第4のインピーダンス素子に並列に接続されている第2のダイオード(455)を備えている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の直流電力供給装置。
【請求項5】
前記第3のインピーダンス素子(456)と第4のインピーダンス素子(457)とは、実質的に同一の特性を有する抵抗である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の直流電力供給装置。
【請求項6】
− 前記第3のインピーダンス素子に並列に接続されており、前記第3のインピーダンス素子のインピーダンス値より低いインピーダンス値を有している第5のインピーダンス素子(461)と、
− 前記第4のインピーダンス素子に並列に接続されており、前記第4のインピーダンス素子のインピーダンス値より低いインピーダンス値を有している第6のインピーダンス素子(462)と、
− 前記第5のインピーダンス素子に直列に接続されている第1の断続器(463)と、
− 前記第6のインピーダンス素子に直列に接続されている第2の断続器(464)とを備えている、請求項1〜5のいずれか1つに記載の直流電力供給装置。
【請求項7】
前記第1の断続器(463)と第2の断続器(464)とを、一時的かつ同時に閉じることができるように構成されている制御回路(8)を備えている、請求項6に記載の直流電力供給装置。
【請求項8】
前記制御回路(8)は、前記絶縁欠陥の大きさが、ある閾値を超過したことを特定することができるように構成されており、かつこの特定がなされると、前記第1および第2の断続器を一時的に閉じるように構成されている、請求項7に記載の直流電力供給装置。
【請求項9】
前記マイクロコントローラ(453)は、前記中間点(49)における電圧に比例した信号を発生させ、この発生させた信号を前記制御回路に供給する、請求項7または8に記載の直流電力供給装置。
【請求項10】
前記電圧供給源の電圧レベルは25V未満である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の直流電力供給装置。
【請求項11】
前記第1および第2のインピーダンス素子(41、42)は、100kΩ以上のインピーダンス値を有している、請求項1〜10のいずれか1つに記載の直流電力供給装置。
【請求項12】
前記第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とは、実質的に同一の特性を有する抵抗である、請求項1〜11のいずれか1つに記載の直流電力供給装置。
【請求項13】
− 直流電圧源がバッテリである、請求項1〜12のいずれか1つに記載の直流電力供給装置と、
− 直流/直流インターフェイスおよび交流/交流インターフェイスを有しており、該直流/直流インターフェイスに前記バッテリの2つの端子を接続されているインバータ(6)と、
− 前記インバータ(6)の交流/交流インターフェイスに接続されているモータ(7)とを備えている電動システム(1)。
【請求項14】
前記バッテリ(2)の端子間電圧は、100Vを超えている、請求項13に記載の直流電動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力供給装置における大地に対する配電網の絶縁に関する。
【背景技術】
【0002】
高電力の直流電圧供給システムは、大きく発展しつつある。実際、多くの輸送システムは、直流電圧供給装置を備えている。
【0003】
特に、燃料/電気ハイブリッド自動車や電気自動車は、高電力バッテリを備えている。適切な電圧レベルを得るために、複数の電気化学蓄電池が、直列に配置される。高電力および高供給能力を得るためには、複数の蓄電池群が直列に配置される。ブロックの数(蓄電池群の数)、および各ブロックにおいて互いに並列に接続される単位蓄電池の数は、そのバッテリに要求される電圧、電流、および供給能力に応じて異なる。いくつかの単位蓄電池の組み合わせは、単位蓄電池が組み合わされたバッテリと呼ばれる。このような自動車用の電気化学蓄電池としては、限られた重量および体積において、相当のエネルギー量を蓄える能力を有するために、一般に、リチウムイオンタイプのものが用いられる。リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO)タイプのバッテリ技術が、エネルギー蓄積密度が若干低いにしても、高いレベルの安全性を内在的に保有するために、際立った開発対象となっている。
【0004】
このようなバッテリは、インバータを介して、交流モータを駆動するために用いられる。このような交流モータに必要な電圧レベルは、数百ボルト(通常、およそ400ボルト)に達する。このようなバッテリは、さらに、電気モードにおける自動車の航続距離を長くするために、高い電力供給能力を有する。自動車への応用に特有のいくつかの技術的な理由によって、自動車の車体(自動車の金属シャーシおよび金属ボディシェルによって構成され、したがって、ユーザによってアクセス可能な部分)とバッテリの出力端子とは、互いに絶縁される。走行中の最初の絶縁欠陥の発生の際に、バッテリが駆動系から即時に電気的に切り離されるという危険は避けなければならないというのが、その主な理由である。例えばバッテリの一方の極の端子が車体に電気的に接続されており、他方の極の端子に絶縁欠陥が発生する場合を考える。この絶縁欠陥の発生によって短絡が生じ、保護ヒューズが即時に溶断する。これにより、自動車を危険な状態となる。駆動電力が消失し、または回生ブレーキが作動するために、必然的に、バッテリを絶縁し、絶縁モニタでその絶縁をチェックして、人間の安全を図らなければならなくなる。最初の絶縁欠陥の発生の際に、ユーザに対する危険がなかったとしても、バッテリの正極端子と負極端子との間の短絡を引き起こすことによって、バッテリを駆動系から電気的に切り離す効果を有する2回目の絶縁欠陥の発生の前に、この最初の絶縁欠陥に関して、ユーザに警告を与えることは適切なことである。さらに、この2回目の絶縁欠陥の発生の際に、バッテリ電圧が車体に直接印加されるから、ユーザは、このバッテリ電位にある車体に触れる可能性がある。このような電力源には、ユーザに対するこうした危険性が存在するために、極めて注意深く、バッテリと車体との間の絶縁および絶縁の監視を行わなければならない。自動車の全ての導電部分を、大地に対して絶縁しなければならない。この絶縁は、絶縁材料を用いてなされる。絶縁材料は、時間の経過とともに劣化し(振動、機械的な衝撃、塵芥などのために)、したがって、車体は、危険な電位に置かれる場合がある。
【0005】
さらに、配電網から電気的に絶縁されていない充電器を用いる場合がある。通常、充電中、車体は大地に接地され、従来用いられる中性線方式(TT方式)においては、常に、中性線が大地に接地されているから、充電中、車体は、バッテリの2つの電極のうちの1つの電位に接続されていることになる。したがって、充電中、絶縁材料の両境界間には、十分に制御された状態で、バッテリ電圧の半分しか印加されない標準的な場合と違って、バッテリの全電圧が印加される。したがって、この絶縁材料は、バッテリの全電圧に耐えることができず、即座に短絡をもたらす2回目の絶縁欠陥が発生する場合がある。
【0006】
従来技術による電気自動車は、通常、三相モータに電力を供給するためのバッテリを備えている。このバッテリは、電気化学蓄電池を有している。ヒューズを備えた保護装置が、バッテリの両端子に接続されている。さらに、絶縁監視装置がバッテリの両端子に接続され、また自動車の車体に接続されている。絶縁監視装置はコンピュータに接続されており、検出された絶縁欠陥を、そのコンピュータに通知する。このコンピュータは、車内ネットワークのバッテリから電力を供給される。遮断システムを介して、バッテリの両端子から、インバータの直流入力に、電圧(+Vbat)、(−Vbat)が印加される。遮断システムには、コンピュータによって制御されるパワースイッチが設けられている。三相モータが、インバータの交流出力に接続されている。種々のタイプの絶縁監視装置が、従来公知である。
【0007】
特許文献1は、直流電圧配電網の絶縁を監視する絶縁監視装置を開示している。この特許文献1には、低周波(4〜10Hzの範囲の)の交流成分(約30V)を放出する抵抗性ブリッジが開示されている。検出回路が、絶縁インピーダンス素子および測定抵抗を通って接地部まで流れる電流を測定する。このような検出回路の設計には、抵抗性ブリッジ内の抵抗との兼ね合いが考慮される。
【0008】
検出回路の測定精度を適切に保持するためには、抵抗性ブリッジにおいて、常時、相当量に及ぶ電流消費が誘発される。そのような電流消費は、組み込みシステムへの応用には、例えば電気自動車の航続距離の低下をもたらすために、望ましくないことがわかっている。さらに、このような絶縁監視装置は、特に、高直流電圧用に設計された低周波電源を用いるために、かなり高価である。さらに、検出回路は、一方の端子と接地部との間の絶縁欠陥しか検出することができず、他方の端子と接地部との間の絶縁欠陥を検出することはできない。さらに、このような絶縁監視装置は、交流電流がインバータ中に存在するコモンモードコンデンサを通るときに絶縁欠陥を検出するため、誤判定を起こすおそれがある。
【0009】
電気自動車1で通常行われる別の解決方法においては、絶縁監視装置に、抵抗性の分圧器を設け、マイクロコントローラを、分圧器の中間点と車体との間に接続している。中間点の両側における分圧器の抵抗は、同一の特性を有している。したがって、絶縁欠陥が存在しない場合には、マイクロコントローラの入力における電圧は0であり、絶縁欠陥の存在は通知されない。バッテリの両端子のうちの一方と車体との間に、絶縁欠陥が発生すると、分圧器の中間点の電位は変化する。すなわち、マイクロコントローラの入力に電圧が発生し、それに応じて、絶縁欠陥信号が生成される。
【0010】
処理回路が、中間点とマイクロコントローラの入力との間に接続されている。この処理回路は、特に、自動車の車内ネットワークに電力を供給するためのバッテリから引き出された−Vcc電源(電圧値が−Vccである)との間に、測定抵抗を接続されている。反転増幅器としての第1の演算増幅器が、電圧(−Vcc)および電圧(+Vcc)を出力する2出力電源から電力を供給される。この第1の演算増幅器の非反転入力は、−Vcc電源に接続されている。この第1の演算増幅器の反転入力は、第2の抵抗、および反転入力における電位をVcc/2だけ上昇させる加算回路を介して、中間点に接続されている。反転増幅器としての第2の演算増幅器には、電圧(−Vcc)および電圧(+Vcc)を出力する2出力電源から、電力が供給される。この第2の演算増幅器の非反転入力は、−Vcc電源に接続されている。この第2の演算増幅器の反転入力は、第3の抵抗を介して、第1の演算増幅器の出力に接続されている。第2の演算増幅器の出力は、マイクロコントローラの入力に接続されている。
【0011】
この解決方法を実施するためには、相当に大きな費用、および多数の部品を要することがわかっている。さらに、バッテリの種々の充電レベルに対して、十分な検出能力を確保するために、分圧器中の抵抗の抵抗値を、ほぼ50KΩの比較的低い値としなければならない。したがって、これらの抵抗によって、相当的に大きな直流電力消費が生じ、バッテリによって与えられる走行距離が短縮される。さらに、処理回路によって、無視し得ない電力の消費が生じる。さらに処理回路は、負電圧と正電圧とを同時に供給する2出力電源を必要とし、そのため、費用および複雑さが増す。また、負電源(−Vcc電源)は、上述の目的に用いるために必要とされるだけである。さらに、人体への電流の流入からのユーザの保護と、絶縁欠陥の大きさの特定のための十分な精度との両方が、同時になされることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】フランス国特許公開第2671190号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】NF EN61851−21(欧州統一規格61851−21にしたがうフランス規格)、8.2項、第8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の欠点の1つ以上を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的の達成のために、本発明は、次のものを備えている電力供給装置を提供するものである。
− 自身が備えている2つの端子間に公称電圧Vmを出力する、感電死を引き起こし得る直流電圧源と、
− 直流電圧源の絶縁欠陥を検出するための検出装置であって、
・ 直流電圧源の2つの端子の各1つにそれぞれ接続されている第1および第2の入力端子、
・ 第1の入力端子と第2の入力端子との間で、互いに直列に接続されており、標準化されている安全閾値によって定められる最大絶縁欠陥電流をImaxとすると、Zmin=Vm/Imaxで定義されるZminと、Zmax=1.5×Vm/Imaxで定義されるZmaxとの間の範囲のインピーダンス値Zをそれぞれに有している第1および第2のインピーダンス素子、および
・ 第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子との間の中間点と、電気的接地部との間に接続されている電流検出回路を有している検出装置。
電流検出回路は、中間点から来る絶縁欠陥電流に比例した電圧を受ける入力端子を有するマイクロコントローラを備えており、この入力端子は、第3のインピーダンス素子を介して、直流電圧源の電圧レベルの1/10倍未満の電圧レベルVccを有する電圧供給源に接続されており、この入力端子は、さらに、第4のインピーダンス素子を介して、電気的接地部に接続されており、マイクロコントローラは、その入力端子に印加される電圧の関数として、絶縁欠陥の大きさを特定するように構成されており、第3および第4のインピーダンス素子の各々は、Ztmin=Z×Vcc/で定義されるZtminと、Ztmax=Z×Vcc/(2Vm)で定義されるZtmaxとの間の範囲のインピーダンス値Ztを有している。
【0016】
一変形例によれば、第1および第2のインピーダンス素子は、バッテリの端子の1つが電気的接地部に短絡しているときに、3.5mA未満の最大電流までしか流れないような定格を有している。
【0017】
別の変形例によれば、電力供給装置は、次のものを備えている。
− 第1の入力端子と中間点との間で、第1のインピーダンス素子に直列に接続されている第3の断続器と、
− 第2の入力端子と中間点との間で、第2のインピーダンス素子に直列に接続されている第4の断続器と、
− 第3および第4の断続器のうちの一方を開いておくとともに、第3および第4の断続器のうちの他方を閉じておくことができるようになっている制御回路。
【0018】
別の一変形例によれば、電力供給装置は、第3のインピーダンス素子に並列に接続されている第1のダイオード、および第4のインピーダンス素子に並列に接続されている第2のダイオードを備えている。
【0019】
別の一変形例によれば、第3のインピーダンス素子と第4のインピーダンス素子とは、実質的に同一の特性を有する抵抗である。
【0020】
− 別の変形例によれば、電力供給装置は、次のものを備えている。
− 第3のインピーダンス素子に並列に接続されており、第3のインピーダンス素子のインピーダンス値より低いインピーダンス値を有している第5のインピーダンス素子と、
− 第4のインピーダンス素子に並列に接続されており、第4のインピーダンス素子のインピーダンス値より低いインピーダンス値を有している第6のインピーダンス素子と、
− 第5のインピーダンス素子に直列に接続されている第1の断続器と、
− 第6のインピーダンス素子に直列に接続されている第2の断続器。
【0021】
一変形例によれば、電力供給装置は、第1の断続器と第2の断続器とを、一時的かつ同時に閉じることができるようになっている制御回路を備えている。
【0022】
別の一変形例によれば、制御回路は、絶縁欠陥の大きさが、ある閾値を超過したことを特定することができるようになっており、かつこの特定がなされると、第1および第2の断続器を一時的に閉じるようになっている。
【0023】
別の一変形例によれば、マイクロコントローラは、中間点における電圧に比例した信号を発生させ、この発生させた信号を制御回路に供給するようになっている。
【0024】
さらなる一変形例によれば、電圧供給源の電圧レベルは25V未満である。
【0025】
さらに別の一変形例によれば、第1および第2のインピーダンス素子は、100kΩ以上のインピーダンス値を有している。
【0026】
さらなる一変形例によれば、第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子とは、実質的に同一の特性を有する抵抗である。
【0027】
本発明は、さらに、次のものを備えている電動システムを提供するものである。
− 直流電圧源がバッテリである上述の電力供給装置と、
− 直流/直流インターフェイスおよび交流/交流インターフェイスを有し、直流/直流インターフェイスにバッテリの2つの端子を接続されているインバータと、
− インバータの交流/交流インターフェイスに接続されているモータ。
【0028】
一変形例によれば、バッテリの端子間電圧は、100Vを超えている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】バッテリから電力を供給されるモータを備えている自動車の一例を示す概要図である。
図2】絶縁欠陥を検出する検出装置の概要的な回路図である。
図3図2の検出装置の一制御相における回路図である。
図4図2の検出装置の別の一制御相における回路図である。
図5】絶縁欠陥電流の振幅を特定することができる、絶縁欠陥電流検出回路の第1の実施形態の回路図である。
図6】絶縁欠陥電流の振幅に応じて測定感度を変更することができる、絶縁欠陥電流検出回路の第2の実施形態の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面を参照して、完全に非限定的な例として以下に示す本発明に関する説明を読むことによって、本発明の他の特性および利点が明らかになると思う。
【0031】
本発明は、自身の2つの端子間に公称電圧Vmを出力する、感電死を引き起こし得る直流電圧源を備えている電力供給装置を提供するものである。絶縁欠陥の検出装置が、直流電圧源の2つの端子の各1つにそれぞれ接続されている第1および第2の入力端子を有している。互いに直列に組み合わされた第1および第2のインピーダンス素子が、これらの2つの入力端子間に接続されている。電流検出回路が、第1のインピーダンス素子と第2のインピーダンス素子との間の中間点と、電気的接地部との間に接続されている。第1および第2のインピーダンス素子の各々は、Zmin〜Zmaxの範囲のインピーダンス値Zを有している。Zmin、Zmaxは、それぞれZmin=Vm/Imax、Zmax=1.5×Vm/Imaxで与えられる。Imaxは、標準化されている安全閾値によって定められる最大絶縁欠陥電流である。電流検出回路は、中間点から来る絶縁欠陥電流に比例する電圧Vccを受ける入力端子を有するマイクロコントローラを備えている。この入力端子は、それぞれ接地部および1つの電圧供給源に接続されている2つのインピーダンス素子の中間点に接続されている。これらの2つのインピーダンス素子の各々は、Ztmin〜Ztmaxの範囲のインピーダンス値Ztを有している。Ztmin、Ztmaxは、それぞれZtmin=Z×Vcc/(4Vm)、Ztmax=Z×Vcc/(2Vm)で与えられる。電圧供給源の電圧レベルは、直流電圧源の電圧レベルの1/10倍未満である。
【0032】
本発明は、最少限の部品、原価の低い部品、ならびにただ1つの電圧供給源しか有しない測定回路で、漏洩電流(絶縁欠陥電流)の測定を行なうことを可能にする。本発明は、さらに、人体への電流の流入から人間を確実に保護するとともに、絶縁欠陥電流の振幅を正確に特定することを可能にする。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態を実装している自動車の一例を示す。この自動車1は、互いに直列に接続された複数の電気化学蓄電池21を有するバッテリ2を備えている電気自動車(それ自体は公知である)である。バッテリ2は、互いに直列に接続された多数の電気化学蓄電池21(必要な電圧、および用いられている電気化学蓄電池のタイプに依存して、通常、40〜150個の範囲の)を有している。充電を完了したバッテリ2の端子間電圧は、通常、およそ400Vである。バッテリ2は、第1の端子に電圧(+Vbat)、第2の端子に電圧(−Vbat)を出力する。電気化学蓄電池21は、電力コネクタを介して、互いに直列に接続されている。バッテリ2の両端子は、インバータ6の直流/直流インターフェイスに接続されている。モータ7が、インバータ6の交流/交流インターフェイスに接続されている。
【0034】
バッテリ2の両端子と、インバータ6の直流/直流インターフェイスとの接続は、保護回路3および電力結合回路5を介して行われている。保護回路3は、公知のように、短絡の際に接続を断つように構成されたヒューズを有している場合がある。電力結合回路5は、インバータ6の直流/直流インターフェイスへの、バッテリ2の両端子の接続および接続解除を選択的に行うことができる断続器51および52を有している。断続器51および52の開/閉は、制御回路8(通常、バッテリ2の動作を管理するためのコンピュータ)によって制御される。制御回路8は、通常、自動車1の車内ネットワークに電力を供給するためのバッテリ91(バッテリ2の電圧レベルよりずっと低い電圧レベルを有する)から電力を供給される。制御回路8は、通常、自動車1の金属シャーシおよびボディシェル92を含む、接地体である車体93に接続されている。
【0035】
絶縁欠陥を検出するための検出装置4が、バッテリ2の両端子、および車体93に接続されている。このような検出装置4の一実施形態が、図2に概略的に示されている。検出装置4は、それぞれ電力コネクタ95および96を介して、電圧(+Vbat)および(−Vbat)が印加される入力端子47および48を有している。検出装置4は、第1の入力端子47と第2の入力端子48との間で、互いに直列に接続されている第1のインピーダンス素子41および第2のインピーダンス素子42(この例においては、どちらも抵抗)を有している。インピーダンス素子41と42とは、中間点49を介して接続されており、実質的に同一のインピーダンス値を有していることが好ましい。第1の断続器43が、第1の入力端子47と中間点49との間で、第1のインピーダンス素子41に直列に接続されている。第2の断続器44が、第2の入力端子48と中間点49との間で、第2のインピーダンス素子42に直列に接続されている。断続器43および44は、この例においては、MOS電界効果トランジスタである。当然ながら、他のタイプの断続器を用いることもできる。制御回路8は、断続器43および44のそれぞれの開/閉を制御する。検出装置4は、さらに、車体93に接続されている。検出装置4は、中間点49と車体93との間に接続されている絶縁欠陥電流検出回路45を有している。絶縁欠陥電流検出回路45は、第1のインピーダンス素子41と第2のインピーダンス素子42とのうちの一方に直列に接続されている断続器が閉じられたときに、そのインピーダンス素子を通る絶縁欠陥電流が存在すれば、その絶縁欠陥電流を受けるように構成されている。
【0036】
図3に示すように、車体93に対する、バッテリ2の(+Vbat)側の端子の絶縁を検査するために、制御回路8は断続器43を開き、断続器44を閉じる。(しかしながら、断続器43と44とを同時に閉じることによって、車体93に対する、バッテリ2の両端子の絶縁を検査しようとすることも可能である。)そうすると、絶縁欠陥電流検出回路45は、バッテリ2の(−Vbat)側の端子と車体93との間で、インピーダンス素子42に直列に接続される。(+Vbat)側の端子に絶縁欠陥が存在すれば、その絶縁欠陥を介して、(+Vbat)側の端子と車体93との間に、1つの回路が形成され、したがって、絶縁欠陥電流検出回路45に絶縁欠陥電流が流れる。
【0037】
図4に示すように、車体93に対するバッテリ2の(−Vbat)側の端子の絶縁を検査するために、制御回路8は断続器44を開き、断続器43を閉じる。そうすると、絶縁欠陥電流検出回路45は、バッテリ2の(+Vbat)側の端子と車体93との間で、インピーダンス素子41に直列に接続される。(−Vbat)側の端子に絶縁欠陥が存在すれば、その絶縁欠陥を介して、(−Vbat)側の端子と車体93との間に、1つの回路が形成され、したがって、絶縁欠陥電流検出回路45に絶縁欠陥電流が流れる。
【0038】
断続器43および44を用いると、断続器43および44を閉じておく期間を非常に短くする(デューティ比を非常に低くする)ことができるから、検出装置4による電力消費を非常に低減させることができる。したがって、検出装置4は、バッテリ2によって得られる走行距離に、ごくわずかしか影響を与えない。例えば自動車1の操作中、2〜30秒の範囲の時間間隔で(例えば10秒ごとに)、各断続器43および44を閉じることができる。自動車1の電気回路における電磁障害の発生を制限するために、トランジスタである断続器43および44のスイッチング速度は十分に低くされる。断続器43および44の閉路操作のデューティ比を非常に小さくすることによって、インピーダンス素子41および42に対して、かなり小さなインピーダンス値を用いることができる。それによって、バッテリ2によって与えられる航続距離をあまり損ねることなく、検出装置4の感度を上げることができる。車体93(例えば自動車1のボディシェル)が、ユーザにとってアクセス可能である場合には、最初の絶縁欠陥の発生時に、この車体を通る最大電流は、標準化されている安全閾値によって定められる最大絶縁欠陥電流Imax未満でなければならない。絶縁欠陥電流は、例えば3.5mA(具体的には、非特許文献1に開示されているImaxの値)未満に規定される。そのためには、各インピーダンス素子41および42は、最小でもZminに等しいインピーダンス値を有していなければならない。Zminは、Zmin=Vm/Imaxで与えられる。Vmは、バッテリ2によって、入力端子47と48との間に印加される公称電圧である。インピーダンス素子41および42として、一般に、100kΩを超過する抵抗値を有する抵抗が用いられる。抵抗であるインピーダンス素子41および42は、バッテリ2の充電のために絶縁されていない外部充電器が用いられる際に、配電網から生じる過電圧から、トランジスタである断続器43および44を保護することができる保護抵抗としても用いることができる。抵抗であるインピーダンス素子41および42は、さらに、絶縁欠陥電流検出回路45を通る電流の振幅を減衰させる減衰抵抗としても働く。
【0039】
絶縁欠陥検出の閾値を十分に低く保つために、各インピーダンス素子41および42は、最大でも、Zmaxに等しいインピーダンス値Zを有するべきである。Zmaxは、Zmax=1.5×Vm/Imaxで得られる。
【0040】
インピーダンス素子41および42は、互いに直列に接続されている、いくつかの抵抗で形成されていることが好ましい。互いに直列に接続されているそれらの抵抗のうちの1つが短絡しても、互いに直列に接続されている残りの抵抗が、検出装置4の短絡を防止する。
【0041】
インピーダンス素子41および42は、開路故障モードを有していることが好ましく、例えば巻線抵抗の形態で実装されている。インピーダンス素子41および42のどちらかが故障しても、検出装置4は短絡から免れる。
【0042】
図5は、絶縁欠陥電流の振幅を特定し、したがってその時間発展を分析することができる、絶縁欠陥電流検出回路45の第1の実施形態を示す。絶縁欠陥電流検出回路45は、マイクロコントローラ453を有している。マイクロコントローラ453は、入力491および車体93に接続されており、Vcc電源から電圧Vccを供給されている。Vcc電源は、バッテリ91から引き出すことができる。この電圧Vccは、例えば3.3Vであり、電子回路に供給される極めて一般的な電圧レベルと一致している。抵抗456が、Vcc電源と入力491との間に接続されている。ダイオード454が、抵抗456に並列に接続されていることが好ましい。抵抗457が、Vcc電源と入力491との間に接続されている。ダイオード455が、抵抗457に並列に接続されていることが好ましい。車体93に触れているユーザの安全を確実に守るとともに、絶縁欠陥電流検出回路45を低電圧部品で構成することができるように、直列に組み合わされている抵抗456および457の端子に印加される電圧Vccは、直流電圧源の電圧レベル(バッテリ2の公称電圧レベル)の1/10倍未満に設定される。
【0043】
抵抗456と457とは、同じ抵抗値を有している。絶縁欠陥電流が存在しない場合には、入力491における電圧値はVcc/2である。
【0044】
いかなる絶縁欠陥電流も、その向きに拘わらず、入力491における電圧に変更を与える。入力端子47側に絶縁欠陥が存在する場合には、マイクロコントローラ453の入力491で読み出される電圧は、(R/2)×Idef(R:抵抗456または457の抵抗値、Idef:中間点49から来る絶縁欠陥電流値)の値に達し得る大きさだけ、Vcc/2より高くなる。入力端子48側に絶縁欠陥が存在する場合には、マイクロコントローラ453の入力491で読み出される電圧は、(R/2)×Idefの値に達し得る大きさだけVcc/2より低くなる。
【0045】
入力491で読み出される電圧値の関数として、マイクロコントローラ453は、絶縁欠陥の大きさを正確に特定することができる。この特定は、極めて単純な回路を用いて行われ、逆極性の電圧を出力する電圧供給源の使用も要しない。入力491で読み出された電圧値を、制御回路8に供給することができる。マイクロコントローラ453は、例えば入力491における電圧に比例する振幅を有する信号を発生させ、この信号を、制御回路8に供給することができる。
【0046】
電圧Vccを、抵抗456を介して入力491に接続し、かつマイクロコントローラ453への供給電圧にあてていることが有利である。したがって、単一の1出力電源しか必要でなく、バッテリ91の電圧から容易に引き出すことができる。社内ネットワークのバッテリは、通常、自家用車においては14V未満の公称電圧を、バスやトラックにおいては25V未満の公称電圧を有する。
【0047】
ダイオード454および455は、特に、絶縁されていない充電器が用いられているときに、配電網から入ってくる過電圧からマイクロコントローラ453を保護することができるという利点を有する。実際、コモンモードまたは差動モードにおいて、バッテリ2の端子間に著しく高い電圧が発生すると、この電圧は、抵抗456または457に大きな電流を流すように働き、入力491に過電圧が発生する危険性をもたらす。このとき、ダイオード454および455は、入力491における電圧を、−Vd〜Vcc+Vd(Vd:ダイオード456および457の閾値電圧)の範囲の値に制限することを可能にする。ダイオード454および455は、さらに、良好な測定感度と電力消費の低減との両方を実現することを可能にする。抵抗456および457の抵抗値を低くすると、ダイオード454および455は、大きすぎる絶縁欠陥電流を一定の振幅にクリップするか、または小さな絶縁欠陥電流に対する測定感度を良好にすることができる。
【0048】
車体93の電位は、実際には、中間点49の電位に等しくなるのではなくて、Vcc/2だけ異なる電位になる。Vccの値(通常、25V未満)を考えると、車体93の電位と、中間点49の電位とのこの違いは、動作の面からも安全の面からも、いかなる問題も発生させない。
【0049】
図6は、漏洩電流(絶縁欠陥電流)の振幅の関数として測定感度を変更することができる、絶縁欠陥電流検出回路45の第2の実施形態を示している。この実施形態の絶縁欠陥電流検出回路は、抵抗456および457と並列に、切り替え可能ないくつかの抵抗が接続されているということを除いて、図5の絶縁欠陥電流検出回路と同じである。
【0050】
絶縁欠陥電流検出回路45は、例えば抵抗456に並列に接続されている抵抗461および断続器463、同じく抵抗456に並列に接続されている抵抗465および断続器467、抵抗457に並列に接続されている抵抗462および断続器464、同じく抵抗457に並列に接続されている抵抗466および断続器468を有している。
【0051】
抵抗461の抵抗値は、抵抗456の抵抗値よりも低い。同様に、抵抗465の抵抗値は、抵抗461の抵抗値よりも低い。抵抗462の抵抗値は、抵抗457の抵抗値よりも低い。同様に、抵抗466の抵抗値は、抵抗462の抵抗値よりも低い。
【0052】
マイクロコントローラ453によって検出される絶縁欠陥電流が存在しない場合には、制御回路8は、断続器463、464、467、および468を開き続けている。マイクロコントローラ453または制御回路8は、入力491において測定される電圧が、あらかじめ定められた第1のシフト閾値を超過して変化したときに、絶縁欠陥が存在すると判定する。第1のシフト閾値を超過する、この変化が発生すると、制御回路8は、マイクロコントローラ453の測定感度を上げるために、断続器463および464を閉じる。断続器463および464を閉じるこの操作は、電力消費の低減のために、どちらも一時的であり、かつ同時に行われる。入力491において測定される電圧が、あらかじめ定められた第2のシフト閾値を超過して変化したときに、制御回路8は、マイクロコントローラ453の測定感度をさらに上げるために、断続器467および468を閉じる。断続器467および468を閉じるこの操作は、電力消費の低減のために、どちらも一時的であり、かつ同時に行われる。
【0053】
車体93と、バッテリ2の端子の1つとの間で短絡が生じたときに、入力491における電圧を、接地電圧とVccとの間の範囲にとどめるために、各抵抗456および457の抵抗値は、最大でもZtmaxである。Ztmaxは、Ztmax=Z×Vcc/(2Vm)で与えられる。入力491における電圧を、絶縁欠陥の大きさの特定に対して最適な精度を保証することができるほどに十分に大きく保つために、各抵抗456および457の抵抗値は、最小でもZtminである。Ztminは、Ztmin=Z×Vcc/(4Vm)で与えられる。
【0054】
交流電気機器において、最も一般的な中性線方式は、次のとおりである。
− TT方式:電源側で機器の中性線が大地に接地され、機器側で金属性の機器本体(保護導体)が大地に接地される。
− TN方式:電源側で機器の中性線が大地に接地され、機器側で金属性の機器本体が中性線に接続される。
− IT方式:電源側で機器の中性線が大地から絶縁されるか、または高インピーダンスを介して大地に接続され、機器側で金属性の機器本体が大地の接続部に接地される。
【0055】
したがって、このような中性線方式は、一方において、中性線がどのように接続され、他方において、ユーザ側で機器本体がどのように接続されるかを定めている。接地のレイアウトは、絶縁欠陥を抑制して、人間および設備を保護することを目的として定められている。
【0056】
バッテリ2に対する接地レイアウトは、配電網の中性線のIT方式と同等に扱うことができる。すなわち、中性線が大地から絶縁されており、車体が大地に接続されている(走行中、車体はタイヤによって大地からは絶縁されているが)。このような接地レイアウトによって、最初の絶縁欠陥の発生の際に、継続して自動車を操作することができる。したがって、ユーザは、十分に安全な状態で自動車を停止させるように、自動車を制御し続けることができる。
【0057】
配電網によるバッテリ2の充電を確実に行うために、一般に、配電網に接続されている交流的に絶縁された充電器が、バッテリ2に接続されている。この場合には、中性線方式は、IT方式に保たれる。一方、ガルバニック絶縁を施された充電器は、非絶縁型の充電器よりも高価である。非絶縁型の充電器を用いた場合には、充電中、中性線方式はTT方式に戻される。これによって、配電網の正の半周期の間、バッテリ2の(−Vbat)電位側の端子に大地が接続されることになる。したがって、配電網の正の半周期の間、大地を通って、電流が流れる。
【符号の説明】
【0058】
1 電気自動車
2 直流電圧源(バッテリ)
3 保護回路
4 検出装置
5 電力結合回路
6 インバータ
7 モータ
8 制御回路
41、42 インピーダンス素子
43、44、51、52、463、464、467、468 断続器
45 絶縁欠陥電流検出回路
47、48 入力端子
49 中間点
92 ボディシェル
93 車体
95、96 電力コネクタ
453 マイクロコントローラ
454、455 ダイオード
456、457、461、462、465、466 抵抗
491 入力
図1
図2
図3
図4
図5
図6