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特許5972986CDDOエチルエステルの多形体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972986
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】CDDOエチルエステルの多形体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07J 63/00 20060101AFI20160804BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20160804BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C07J63/00CSP
   A61K31/59
   A61P43/00 105
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P17/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P1/04
   A61P9/00
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P9/12
   A61P9/10 101
   A61P9/10
   A61P13/12
   A61P25/00
   A61P21/00
   A61P27/02
   A61P3/00
【請求項の数】33
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-537484(P2014-537484)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公表番号】特表2014-534208(P2014-534208A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】CN2012086045
(87)【国際公開番号】WO2014048033
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2012/082278
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516041807
【氏名又は名称】アプライド ファーマシューティカル サイエンス インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516041793
【氏名又は名称】ワン, ジャン
(73)【特許権者】
【識別番号】516041818
【氏名又は名称】ジャン, シヤオホン
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シヤオホン
(72)【発明者】
【氏名】リュイ,ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ウェンドン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,カイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チュンレイ
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 HONDA,TADASHI,ET AL.,"A Novel Dicyanotriterpenoid, 2-Cyano-3,12-dioxooleana-1,9(1 1)-dien-28-onithle,Active at Picomolar Concentrations for Inhibition of Nitric Oxide Production",BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,2002年,VOL.12,NO.7,PP.1027-1030
【文献】 DINKOVA-KOSTOVA,ALBENA T.,ET AL.,"Extremely potent triterpenoid inducers of the phase 2 esponse: correlations of protection against oxidant and inflammatory stress",PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA,2005年,VOL.102,NO.12,PP.4584-4589
【文献】 HONDA,TADASHI,ET AL.,"Synthetic Oleanane and Ursane Triterpenoids with Modified Rings A and C: A Series of Highly Active Inhibitors of Nitric Oxide Production in Mouse Macrophages",JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2000年,VOL.43,NO.22,PP.4233-4246
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の多形体であって、
【化1】

前記多形体は、(a)0.3°、14.1°及び14.6°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形I、並びに(b)0.4°、12.1°及び13.4°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形IIら選択される、多形体。
【請求項2】
多形体は、結晶面の距離が8.6Å、6.3Å及び6.1Åに特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形Iである、請求項1記載の多形体。
【請求項3】
多形体は、0.3°、14.1°、14.6°、15.8°、16.6°及び19.6°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形Iである、請求項1記載の多形体。
【請求項4】
多形体は、結晶面の距離が8.6Å、6.3Å、6.1Å、5.6Å、5.3Å及び4.5Åに特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形Iである、請求項3記載の多形体。
【請求項5】
多形体は、0.3°、14.1°、14.6°、15.7°及び16.6°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形Iである、請求項1記載の多形体。
【請求項6】
.3°及び19.6°に回折角2θの特徴的なピークがさらに現れる粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項5に記載の多形体。
【請求項7】
多形体の融点が174〜177℃である、請求項1〜6のいずれかに記載の多形体。
【請求項8】
多形体が純度≧85%である、請求項1〜6のいずれかに記載の多形体。
【請求項9】
多形体が純度≧95%である、請求項8記載の多形体。
【請求項10】
多形体が純度≧99%である、請求項9記載の多形体。
【請求項11】
多形体は、5.4°、17.8°及び18.8°に回折角2θの特徴的なピークがさらに現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形IIである、請求項1記載の多形体。
【請求項12】
多形体は、結晶面の距離が8.5Å、7.3Å及び6.6Åに特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形IIである、請求項1記載の多形体。
【請求項13】
多形体は、結晶面の距離が5.7Å、5.0Å及び4.7Åに特徴的なピークがさらに現れる粉末X線回折パターンを有する結晶形IIである、請求項12記載の多形体。
【請求項14】
結晶形IIの融点が209〜212℃である、請求項1、11〜13のいずれかに記載の多形体。
【請求項15】
結晶形IIが純度≧85%である、請求項1、11〜14のいずれかに記載の多形体。
【請求項16】
結晶形IIが純度≧95%である、請求項15記載の多形体。
【請求項17】
結晶形IIが純度≧99%である、請求項16記載の多形体。
【請求項18】
治療有効量の請求項1〜17のいずれかに記載の多形体、及び医薬的に許容される賦形剤、佐剤又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項19】
他の活性成分を更に含む、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
多形体は式Iの化合物の結晶形I又は結晶形IIである、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項21】
経口的に投与される、請求項1820のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
錠剤又はカプセル剤である、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
1〜99質量%の前記多形体を含む、請求項1822のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
1〜70質量%の前記多形体を含む、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
10〜30質量%の前記多形体を含む、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
マクロファージにおけるIFN−γ誘導性一酸化窒素の生成を阻害する薬物を製造するための、請求項1〜17のいずれかに記載の多形体の使用。
【請求項27】
癌又は炎症関連疾患を治療する薬物を製造するための、請求項1〜17のいずれかに記載の多形体の使用。
【請求項28】
炎症関連疾患が狼瘡、リウマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、心血管疾患、糖尿病又は糖尿病関連症状である、請求項27記載の多形体の使用。
【請求項29】
糖尿病関連症状が肥満、高血圧、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、腎障害、神経障害、筋壊死、網膜症若しくは代謝異常症候群(X症候群)、又はこれらの組合せである、請求項28記載の多形体の使用。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれかに記載の多形体を含む、マクロファージにおける一酸化窒素の生成を調節するための医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜17のいずれかに記載の多形体を含む、癌又は炎症関連疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項32】
炎症関連疾患が狼瘡、リウマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、心血管疾患、糖尿病、又は糖尿病関連症状である、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
糖尿病関連症状が肥満、高血圧、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、腎障害、神経障害、筋壊死、網膜症若しくは代謝異常症候群(X症候群)、又はこれらの組合せである、請求項32記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年9月28日に出願した国際出願PCT/CN2012/082278のPCT国際出願の優先権を主張するものである、参照によりその全体を本明細書へ組み入れるものとする。
【0002】
本出願はトリテルペノイド化合物であるエチル 2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)ジエン−28−オエート(CDDOエチルエステル)の多形体、及び少なくとも一つの当該多形体を利用して、様々な疾患、一般には炎症関連疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トリテルペノイド化合物は、スクアレンの環化によって植物で生合成されている。これらの天然分子は、医薬用途のための候補物質であるが、比較的弱い生物活性を示す。従って、化学者たちは、高い効力を有する類似体を合成しようとしている(Hondaら,1997&1998)。
【0004】
いくつかの合成類似体は、IFN−γ又はLPSによって刺激されたマクロファージにおけるサイトカイン誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)及びシクロオキシゲナーゼ?2(COX−2)のde novo合成を抑制することが報告されている(Suhら,1998;Hondaら,2002)。その中で、2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)−ジエン−28−オエート(CDDO)は、抗炎症活性及び抗増殖活性を示す(Hondaら,1998&2000)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hondaら,1997
【非特許文献2】Hondaら,1998
【非特許文献3】Suhら,1998
【非特許文献4】Hondaら,2002
【非特許文献5】Hondaら,1998
【非特許文献5】Hondaら,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、iNOS活性の抑制剤としての、特にNO生成の阻害における、トリテルペノイドの研究は、CDDO及びCDDOメチルエステルの高い有効性を示している(IC50<1nMレベル)。Hondaら(2000)参照のこと。しかし、上記の分子、特にCDDOエステルの治療における潜在能力を利用することは不完全であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
式IのCDDOエチルエステルの治療における潜在能力を解明するために、本発明者らは、該化合物の多形体を検討した。その結果、本発明者らは、CDDOエチルエステルの3つの多形体形態を発見した。この3つの多形体は有益な特性を有する(例えば、好適な薬物動態及びより高い全身暴露)、従ってそれ自体で薬剤開発の理想的な候補物質となった。
【0008】
発明の概要
一方では、本発明は、式Iの化合物の多形体、及び/或いは該多形体の水和物或いは溶媒和物に関する。
【0009】
【化1】

【0010】
その中でも、多形体は式Iの化合物の少なくとも二つの実質的に純粋な結晶形、及び一つの実質的に純粋なガラス質の固形物形態を含む。ここで便宜のために、これらの二つの結晶形は結晶形Iと結晶形IIを示している。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、多形体は式Iの化合物のガラス質の固形物形態であり、該ガラス質の固形物形態のTgが約52℃±10℃である。
【0012】
他の実施形態において、多形体は、約14.3°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する式Iの化合物のガラス質の固形物形態である。
【0013】
他の実施形態において、式Iの化合物はガラス質の固形物形態が純度≧85%(すなわち、少なくとも85%)であることを特徴とする。他の実施形態において、純度が少なくとも95%或いは99%である。
【0014】
他の実施形態において、該多形体は、約10.3°、14.1°及び14.6°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する、式Iの化合物の結晶形Iである。
【0015】
他の実施形態において、該多形体は、約10.3°、14.1°、14.6°、15.8°、16.6°及び19.6°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する、式Iで示される化合物の結晶形Iである。
【0016】
他の実施形態において、該多形体は、結晶面の距離が8.6Å、6.3Å及び6.1Åに特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する式Iで示される化合物の結晶形Iである。
【0017】
他の実施形態において、該多形体は、結晶面の距離が8.6Å、6.3Å、6.1Å、5.6Å、5.3Å及び4.5Åに特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有する式Iの化合物の結晶形Iである。
【0018】
本発明の多形体の実施形態のもう一つのサブセットは結晶形Iである。
【0019】
そのような実施形態において、式Iの化合物の結晶形Iは、約10.3°、14.1°、14.6°、15.7°及び16.6°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有することを特徴とする。
【0020】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形Iは、約9.3°及び19.6°に回折角2θの特徴的なピークがさらに現れる粉末X線回折パターンを有する。
【0021】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形Iの融点が174−177℃であることを特徴とする。
【0022】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形Iは純度≧85%である(すなわち、少なくとも85%)。他の実施形態において、その純度が少なくとも95%或いは99%である。
【0023】
本発明の多形体の実施形態のもう一つのサブセットは結晶形IIである。
【0024】
そのような実施形態において、式Iの化合物の結晶形IIは、約10.4°、12.1°及び13.4°に回折角2θの特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有することを特徴とする。
【0025】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形IIは約15.4°、17.8°及び18.8°に回折角2θの特徴的なピークがさらに現れる粉末X線回折パターンを有することを特徴とする。
【0026】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形IIは、結晶面の距離が8.5Å、7.3Å及び6.6Åに特徴的なピークが現れる粉末X線回折パターンを有することを特徴とする。
【0027】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形IIは、結晶面の距離が5.7Å、5.0Å及び4.7Åに特徴的なピークがさらに現れる粉末X線回折パターンを有することを特徴とする。
【0028】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形IIの融点が209−212℃であることを特徴とする。
【0029】
他の実施形態において、式Iの化合物の結晶形IIは純度が85%以上である(例えば、純度が少なくとも95%或いは少なくとも99%である)。
【0030】
一方では,本発明は式Iの化合物の結晶形多形体を調製する方法にも関する。
【0031】
そのような方法の一つの実施形態は、過量の化合物をCHCl、酢酸エチル、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ヘプタン、またはこれらの混合物の中から選択される溶媒に添加して少なくとも24時間かけてスラリー化し、得られた結晶形の多形体或いはガラス質の固形物形態を回収する工程を含む。
【0032】
ある実施形態において、生成した結晶形は結晶形Iであってもよいが、または結晶形IIであってもよい。
【0033】
他の実施形態において、室温或いは50℃において、式Iの化合物が混合溶媒中でスラリー化されている。
【0034】
他の実施形態において、式Iの化合物が溶媒に少なくとも48時間スラリー化される。
【0035】
溶媒が酢酸エチル/ヘプタンの混合物、エタノール/ヘプタンの混合物でもよい。例えば、酢酸エチル/ヘプタンの混合物において、酢酸エチルとヘプタンの比が1:10(重量比或いは容量比)の割合でもよい。
【0036】
本発明の多形体を提供するために、少なくとも一つの溶媒を含む適当な溶媒系で、自然沈殿(蒸発)、冷却または貧溶媒の添加(貧溶媒において、本発明の化合物の溶解度はより低い)によって溶媒系の過飽和を達成することにより、式Iの化合物が結晶化される。本発明の化合物を結晶化のために、適当な種晶を使用することができ、また、使用しないこともできる。
【0037】
他の実施形態において、本発明の式Iの化合物を、室温で溶媒であるヘプタンに溶解し、次いで、自然沈殿によって所望の結晶形Iが得られる。該結晶形Iの融点は174−177℃である。
【0038】
他の実施形態において、室温或いは50℃で、過量の本発明の式Iの化合物を酢酸エチル/ヘプタン(重量比或いは容量比で1:10)の混合溶媒に添加し、少なくとも48時間の撹拌を行い、結晶形IIが得られる。該結晶形IIは融点が209−212℃である。
【0039】
他の実施形態において、室温或いは50℃で、過量の本発明の式Iの化合物をジクロロメタン溶媒に溶解し、次いで、溶媒を蒸発させることにより、式Iの化合物のガラス質の固形物形態が得られる。該ガラス質の固形物形態はTgが52℃±10℃の範囲である。
【0040】
本発明は更に、障害又は適応症、特に、炎症に関係した障害又は適応症を治療するための、式Iの化合物の多形体(結晶形I又はII又はガラス質の固形物形態)の用途、又は本発明は障害或いは適応症、例えば、急性又は慢性の酸化性ストレス及び炎症に関係した障害或いは適応症、特に、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)若しくは誘導性シクロオキシゲナーゼ(COX−2)の部分的な過剰発現を特徴とする障害或いは適応症を治療する薬剤を製造するための、上記の多形体の用途を提供する。
【0041】
従って、本発明は、少なくとも治療有効量の本発明の結晶形I或いは結晶形II或いはガラス質の固形物形態、及び医薬的に許容される賦形剤、佐剤或いは担体を含む医薬組成物或いは薬剤に関する。該組成物或いは薬剤は、任意的に、少なくとももう一つの他の活性成分をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明の医薬組成物或いは薬剤は、治療を必要とする適応症或いは疾患に応じて適当な形態或いは剤型(例えば、錠剤或いはカプセル剤)とすることができ、また、当技術分野で周知の方法(例えば、経口投与)により投与することができる。
【0043】
本発明の医薬組成物或いは薬剤は、1−99wt%(例えば、1−70wt%、10−30wt%)の式Iの化合物の多形体(例えば、結晶形I、結晶形II或いはガラス質の固形物形態)を含んでもよい。
【0044】
本発明の全ての多形体(結晶形又はガラス質の固形物形態を含む)は実質的に純粋、又はほぼ純粋である。本明細書において使用される用語「実質的に純粋な」或いは「ほぼ純粋な」とは、本発明の多形体、特に、結晶形I或いは結晶形II中での式Iの化合物の含量が、少なくとも85wt%(例えば、少なくとも95wt%、或いは少なくとも99wt%)であることをいう。
【0045】
上記の結晶形とガラス質の固形物形態の多形体の主ピークは、誤差限界の範囲内で(所定値±0.2)再現できる。
【0046】
本発明において、「図1のような粉末X線回折パターン」とは、図1の主ピークを示す粉末X線回折パターンであることを意図し、該主ピークとは、図1の最高ピークと比べて(最高ピークの相対強度は100%を表す)、相対強度が10%以上、好ましい30%以上のピークであることを意図する。本発明において、図2のような粉末X線回折パターンとは、同様に図2の主ピークを示す粉末X線回折パターンであることを意図し、該主ピークとは、図2の最高ピークと比べて(最高ピークの相対強度は100%を表す)、相対強度が10%以上、好ましい30%以上のピークであることを意図する。
【0047】
下記の図のような工程を含む式Iの化合物を製造する方法が、本発明の範囲内に属する
【0048】
【化2】


【0049】
本発明はまた、式Iの化合物、またはその多形体若しくは結晶形I、結晶形II、ガラス質の固形物形態からなる群より選択される形態の用途であって、マクロファージにおいてIFN−γにより誘導されるNOの生成を阻害する、癌を治療する、又は炎症関連疾患、障害若しくは適応症、例えば、狼瘡、リウマチ性関節炎、クローン病或いは潰瘍性大腸炎、心血管疾患、糖尿病、糖尿病の一種以上の関連症状、その中、関連症状は肥満、高血圧、アテロム性動脈硬化、冠動脈心疾患、脳卒中、外周血管疾患、腎障害、神経障害、筋壊死、網膜症、代謝異常症候群(X症候群)或いはこれらの2種以上の組み合わせから選択される疾患を治療するための薬物を製造する用途も提供する。
【0050】
本明細書において使用される用語「治療有効量」とは、疾患、又は疾患若しくは障害の少なくとも一つの臨床症状を治療するために、対象に投与した場合において、その疾患、障害或いは体調を治療する効果に影響を与える化合物の量を意図する。「治療有效量」は化合物、疾患、障害、及び/又は疾患若しくは障害の症状,疾患、障害及び/又は疾患若しくは障害の症状の重症度、治療対象の年齢、及び/又は治療対象の体重などによって変更することがてきる。具体的な例における適切な量は、当該技術分野における当業者にとって明らかであるか、或いは従来の試験によって決定することができる。併用療法の場合において(即ち、本発明の多形体の他に、少なくとももう一つの活性成分がある)、用語「治療有効量」とは、疾患、障害或いは体調を有効に治療する組成物の総量を意図する。
【0051】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、治療を必要とする対象に、経口、吸入、経直腸、注射或いは局部的に投与することができる。経口投与のために、医薬組成物は錠剤、粉末、細粒、カプセル剤のような普通な固形物剤型;水或いは油懸濁液のような液体剤型;シロップ、溶液、懸濁液のような他の液体剤型であってもよい;注射投与のために、医薬組成物は溶液、水溶液、油懸濁液濃縮物、凍結乾燥粉末などであってもよい。好ましくは、医薬組成物は錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、坐剤、鼻噴霧剤或いは注射剤からなる群より選択されるいずれかの剤型である、より好ましくは錠剤或いはカプセル剤である。医薬組成物は正確な投薬量を有する単位投与剤量である。その上、医薬組成物は他の活性成分をさらに含んでもよい。
【0052】
本発明の医薬組成物の全ての剤型は、製薬分野の慣用方法で生産できる。例えば、活性成分と一種以上の賦形剤と混合し、所望の剤型を生産することができる。「医薬的に許容される担体」とは、所望の薬物剤型に適した慣用な薬物担体を指す。例えば、希釈剤、例えば水、さまざまな有機溶剤のような媒介物;でんぶん、ショ糖のような充填剤;セルロース誘導体、アルジネート、ゼラチン及びポリビニルピロリドン(PVP)のような結合剤;グリセリンのような湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムのような崩壊剤;四級アンモニウム化合物のような吸収促進薬;へクサデカノールのような界面活性剤;カオリン、ベントナイトのような吸収担体;滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコールのような潤滑剤。その上、医薬組成物は他の医薬的に許容される賦形剤、例えば、分散剤、安定剤、増粘剤、錯化剤、緩衝液、浸透促進剤、ポリマー、芳香剤、甘味料及び染料を更に含む、賦形剤は、所望の剤型及び投与種類に適したものであることが好ましい。
【0053】
本明細書において使用される用語「溶媒和物」とは、溶媒と化合物との相互作用によって形成した化学成分を意図する。適当な溶媒和物は医薬的に許容される溶媒和物、例えば水和物、一水和物と半水和物を含む。
【0054】
本明細書において使用される用語「活性成分」とは、生物活性を有する化学物質を意図する。ある実施形態において、「活性剤」とは、製薬的な用途を有する化合物を意図する。例えば、活性剤は抗癌治療剤でもよい。
【0055】
用語「疾患」或いは「障害」或いは「適応症」とは、如何なる疾患、不快、病気、症状或いは兆候を含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】式Iの化合物の結晶形Iの粉末X線回折パターンを示す。
図2】式Iの化合物の結晶形IIの粉末X線回折パターンを示す。
図3】式Iの化合物のガラス質の固形物形態の粉末X線回折パターンを示す。
図4】ガラス質の固形物形態の熱流量(w/g)図を示す。
図5】式Iの化合物(CDDOエチルエステル)の結晶形IIが、マウスマクロファージ17においてIFN−γにより誘導される一酸化窒素の生成を阻害する効果を示す。
【実施例】
【0057】
図1図2及び図3で示される粉末X線回折パターン(XRPD)は、Empyrean consoleを有するPANalytical X線回折システムを用いて生成した。2θの値が28.443度である単結晶シリコンを標準物質として使用して、回折ピークの位置を較正した。Empyrean Cu LEFX線管のKα放射線を、X線の光源として用いた。
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書の実施例において使用される技術或いは方法は、特に言及しない限り、当業者に一般的に知られている慣用技術或いは方法である。
【0059】
実施例1 式Iの化合物の合成方法
【化3】


【0060】
段階1 APSN13B−1の合成
【0061】
オレアノール酸(1000g、2.2mol)と炭酸カリウム(604g、4.4mol)のDMF(12L)溶液に、ヨウ化エチル(376g、2.4mol)を加えた。得られた混合物を45℃で一晩撹拌した。オレアノール酸がHPLCで検出できなかった後、この混合物を室温へ冷却して、水(120L)に注いだ。得られた懸濁液を30分撹拌した。固形物を遠心分離により集め、水(1L)で洗浄し、50℃で真空乾燥して、後の段階で使用するAPSN13B−1を976g得た。収率92%。
【0062】
段階2 APSN13B−2の合成
【0063】
45℃で、APSN13B−1(975g、2mol)、ピリジン(474g)、DMAP(24.4g、0.2mol)とTHF(6L)の混合物に、無水酢酸(612g、6mol)を加えた。この溶液を一晩撹拌した。反応終了後、この溶液を水(60L)に注いだ。固形物を遠心分離により集め、45℃で真空乾燥して、後の段階で使用するAPSN13B−2を847g得た。収率80%。
【0064】
段階3 APSN13B−3の合成
【0065】
室温で、APSN13B−2(846g、1.6mol)とギ酸(1L)のDCM(5L)溶液に、過酸化水素(30%水溶液)(453g、4mol)をゆっくり添加して、一晩撹拌した。得られた溶液に水(2L)を加え、DCMで抽出した。水相が中性になるまで、飽和したNaHCO水溶液で有機相を洗浄した後、更に塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。有機相を濾過し,濾液を真空中で蒸発させて、APSN13B−3を871g得た。収率100%。この材料を更に精製せず、次の反応に使用した。
【0066】
段階4 APSN13B−4の合成
【0067】
45℃で、APSN13B−3(871g、1.6mol)の酢酸(5L)溶液に、臭化水素酸(30ml)の酢酸(40%)溶液を加えた後、臭素(256g)の酢酸(700ml)溶液をゆっくり添加した。得られた混合物を45℃で30分撹拌した。室温で、臭素(512g)の酢酸(1.3L)溶液をゆっくり添加して、一晩撹拌し続けた。反応終了後、得られた混合物を冷水(35L)に注いだ。得られた固形物を回収して、飽和亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、真空乾燥することにより、黄色の固形物であるAPSN13B−4を841g得た。収率97%。
MS−ESI(m/z):541[M+H]
【0068】
段階5 APSN13B−5の合成
【0069】
APSN13B−4(840g、1.56mol)及びKOH(263g、4.7mol)のEtOH(4.5L)溶液を30分還流加熱した。真空中でEtOHを除いた後、得られた混合物を6N HCl水溶液により酸性化した。水相を酢酸エチル(3L)で抽出した。得られた有機相を飽和NaHCO水溶液及び塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。有機相を濾過し、濾液を真空中で蒸発させて、APSN13B−5を928g得た。収率100%。
MS−ESI(m/z):499[M+H]
【0070】
段階6 APSN13B−6
【0071】
氷浴したAPSN13B−5(927g、1.8mol)のアセトン(5L)溶液にジョーンズ試薬(400ml)を少しずつ滴下した。TLCでAPSN13B−5を検出できなくなるまで、得られた混合物を室温で撹拌した。アセトンを除いた後、得られた混合物に水を添加した。得られた水混合物をDCMで抽出した。得られた有機相を飽和NaHCO水溶液及び塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空中で蒸発させて、粗製のAPSN13B−6を得た。ペトロールと酢酸エチル中で再結晶することによって、純粋なAPSN13B−6を498g得た。収率54%。
MS−ESI(m/z):497[M+H]
【0072】
段階7 APSN13B−7の合成
【0073】
APSN13B−6(496g、1mol)の無水トルエン(2L)溶液にギ酸エチル(185g、2.5mol)とCHONa(216g、4mol)を添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。次に、得られた混合物を酢酸エチル(1L)で希釈し、5% HCl水溶液で洗浄した(3回)。水相を酢酸エチルで再抽出し、合併した有機相を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空中で蒸発させて、APSN13B−7を497g得た。収率95%。
MS−ESI(m/z):525[M+H]
【0074】
段階8 APSN13B−8の合成
【0075】
APSN13B−7(496g、0.94mol)のEtOH(2.5L)及び水(200ml)溶液に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(98g、1.4mol)を添加した。得られた混合物を2時間還流加熱した。得られた混合物を真空中で濃縮し、水(2L)を添加した。得られた混合物をEAで抽出した(3回)。合併した有機相を水及び塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空中で蒸発させて、APSN13B−8を453g得た。収率92%。
MS−ESI(m/z):522[M+H]
【0076】
段階9 APSN13B−9の合成
【0077】
氷浴したAPSN13B−8(452g、0.86mol)のEtOH(1.5L)溶液にCHONa(56g、1.04mol)を添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。次に、得られた混合物を真空中で濃縮し、酢酸エチル(2L)を加えた。得られた混合物を5% HCl水溶液で洗浄した(3回)。水相をEAで再抽出し、合併した有機相を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空中で蒸発させて、APSN13B−9を429g得た。収率95%。
MS−ESI(m/z):522[M+H]
【0078】
段階10 APSN13B−10(式Iに示される化合物1)の合成
【0079】
トルエンに溶解させたAPSN13B−9(428g、0.82mol)及びDDQ(205g、0.90mol)の混合物を一晩還流加熱した。濾過によって不溶性成分を除いた後、濾液を真空中で蒸発させて、粗製の固形物を得た。得られた固形物からフラッシュカラムクロマトグラフィーによってAPSN13B−10を341g得た、収率80%。生成物を酢酸エチル及び石油エーテル中で再結晶によりさらに純化し、化学的に純粋な生成物を得た。最終生成物における不純物は最大限0.1%以下である。
MS−ESI(m/z):520[M+H]
H−NMR(CDCl):δ8.04(1H,S),5.96(1H,S),4.17(2H,t,J=6.9Hz),3.05(1H,d,J=13.5Hz),2.95(1H,d,J=4.5Hz),2.04−0.07(21H,m).
【0080】
実施例2 式Iの化合物の結晶形Iの製造
実施例1で製造した式Iの化合物を室温でヘプタン溶媒に溶解させ、自然沈殿によって所望の結晶形Iを得た。該結晶形Iは融点が174−177℃であった。
【0081】
表1は図1で示される粉末X線回折パターンを要約したものである。
【表1】
【0082】
実施例3 式Iの化合物の結晶形IIの製造
実施例1の方法で製造した過量の式Iの化合物のスラリー懸濁液を、室温又は50℃で、酢酸エチル/ヘプタンの混合溶媒(重量比或いは容量比は1:10の割合である)中で少なくとも48時間撹拌し、結晶形IIを得た。該結晶形IIの融点は209−212℃であった。
【0083】
表2は図2で示される粉末X線回折パターンを要約したものである。
【表2】
【0084】
実施例4 式Iの化合物のガラス質の固形物形態の製造
実施例1の方法で製造した過量の式Iの化合物のスラリー懸濁液を、室温又は50℃で、ジクロロメタン溶媒に溶解させ、次いで溶媒を蒸発させて、式Iの化合物的ガラス質の固形物形態を得た。該ガラス質の固形物形態のTgは約52℃±10℃であった。
【0085】
図3は式Iの化合物のガラス質の固形物形態の粉末X線回折パターンを示す。図4はガラス質の固形物形態の熱流量(w/g)図を示す。
【0086】
実施例5 式Iの化合物の多形体の予備薬物動態学
DMSO−クリンパー(Cremphor)−PBS(重量比或いは容量比が1:1:8である)に溶解させた式Iの化合物(CDDOエチルエステル)の三つの多形体とメチル2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9(11)ジエン−28−オエート(CDDOメチルエステル)の溶液を、10mg/kgで雌性CD−1マウスに注射した。投与から0.083、0.25、0.5、1、2、4、8及び24時間後の血液試料を採取した。コントロール血液に加えた化合物を標準品として、HPLC/MSで血液試料中のレベルを定量化した。
【0087】
PKの結果を表3に示す。式Iの化合物(CDDOエチルエステル)の三つの多形体の全身暴露は、CDDOメチルエステルより高かった。順序は下記である:CDDOエチルエステルのガラス質固形物形態>CDDOエチルエステルの結晶形II>CDDOエチルエステルの結晶形I>CDDOメチルエステル。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例6 結晶形の安定性測定
実施例3で製造した式Iの化合物の結晶形IIを、25℃/60%R.H.及び40℃/75%R.H.でテストした。XRD図は全ての試料の間に著しい変化がなかた。本発明の他の多形体は同様に使用した。該実施例において、本発明の他の多形体と比べて、式Iの化合物の結晶形IIは最も熱力学的な安定であることを示した。
【0090】
実施例7 ガラス質の固形物形態の安定性測定
実施例4で製造した式Iの化合物のガラス質の固形物形態を、25℃/60%R.H.及び40℃/75%R.H.で1週間テストした。XRD図は全ての試料の間に著しい変化がなかた。
【0091】
実施例8 式Iの化合物の結晶形IIで処理したRAW264.7細胞におけるNOの検出
検出の要約
RAW264.7細胞の培養
1.10%FBSを含むDMEM培地を使用して、37℃、5%CO下で、RAW264.7細胞を培養した。
2.顕微鏡の下で培養物を観察して、コンフルエンスと評価し、細菌と真菌の汚染物がないことを確認した。
3.使用した培地を除いた。
4.予熱したD−PBSで単細胞層を洗浄した。
5.ピペットにより、3mlトリプシン/EDTAを洗浄した単細胞層へ移し、フラスコを回転させて、単細胞層をトリプシンで覆った。
6.顕微鏡で細胞を検査し、全ての細胞が離れ、浮遊していることを確認した。
7.新鮮な血清を含んだ少量の培地で細胞を再懸濁し、トリプシンを失活させた。
8.室温で1000rpm、5分間遠心分離をすることによって、細胞を回収した。
9.37℃、5%COで細胞をインキュベートした。
【0092】
RAW264.7細胞におけるNOの誘導
1.細胞を96穴細胞培養プレートに1穴あたり1×10個で播種した。
2.37℃、5%COで細胞を2時間インキュベートした後、吸引により非接着性細胞を除き、10ng/ml IFN−γ及び希釈した化合物を含む新鮮な完全培地を添加した。
3.37℃、5%COで細胞を更に48時間インキュベートした。
【0093】
RAW細胞におけるNOを測定する
1.1000rpm、5分間遠心分離することにより、上清を回収した。
2.試料に使われたマトリックス或いはバッファーを使用して、0.1M亜硝酸塩標準品を1:1,000の割合で希釈した、濃度が100μMである亜硝酸塩溶液を1ml調製した。
3.濃度が100、50、25、12.5、6.25、3.13、1.56及び0μMである亜硝酸塩標準溶液を、1穴あたり50μl調製した。
4.室温で、スルファニルアミド溶液とNED溶液を平衡させた(15−30分)。
5.1穴あたり50μl試料を加え、2連で試験を行った。
6.多重チャンネルのピペットで、50μlスルファニルアミド溶液を全ての試料と希釈系列の亜硝酸塩標準溶液を含んだ穴に分配した。
7.光を避けて、室温で5−10分間インキュベートした。
8.多重チャンネルのピペットで、50μlNED溶液を全ての穴に分配した。
9.光を避けて、室温で5−10分間インキュベートした。すぐに紫色/マゼンタになった。
10.30分以内に、フィルターが520nmから550nmまでのマイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。
【0094】
図5は、式Iの化合物(CDDOエチルエステル)の結晶形IIの、マウスマクロファージ17におけるIFN−γにより誘導される一酸化窒素の生成の阻害活性(IC50(nM))を示す。式Iの化合物(CDDOエチルエステル)の結晶形IIのIC50は34nMであった。式Iの化合物(CDDOエチルエステル)のガラス質の固形物形態のIC50は32nMであった。
図1
図2
図3
図4
図5