【実施例】
【0017】
図1及び
図2は、チューブ内を液体(例えば、薬液、栄養剤等)をポンプによって強制的に流動させて患者の体内に注入する装置であって、本発明に係るポンプ機構を適用しているチュービングポンプ1の外観を示している。このチュービングポンプ1は、ポンプ本体10の正面部を開閉するドア20を具備しており、
図1はドア20を閉じた状態を示し、
図2はドア20を開いた状態を示している。
【0018】
ポンプ本体10は、略矩形箱状に形成され、その正面側に、ドア20によって開閉される直立状の基台11を有し、この基台11には、クランプ装置40によってクランプされたチューブ30が横向き状態で挿通される(
図2参照)。クランプ装置40によるチューブ30のクランプ状態は、ドア20を閉じると解除される。
【0019】
基台11は、厚肉な略板状の部位であり、装着されたチューブ30内の液体を強制移送するポンプ機構50を具備している。ポンプ機構50は、装着されたチューブ30に対する押圧・開放動作、その上流側におけるバルブ51の開閉動作、下流側におけるバルブ52の開閉動作等を、適宜に組み合わせることによって、チューブ30内の液体を上流側から下流側の方向dに強制的に移送するものである(
図2参照)。
【0020】
<ポンプ機構の構成>
図3は、ポンプ機構50の構成部品を示す分解斜視図である。ポンプ機構50は、上流側バルブ51、上流側バルブカム51C、下流側バルブ52、下流側バルブカム52C、ポンプブロック53、ポンプブロックカム53C、ガイドシャフト53S、シャフト54、ポンプブロックケース55などの部品により構成されている。
【0021】
これらの構成部品の内、ポンプブロック53とポンプブロックカム53Cとガイドシャフト53Sとを主な構成部品として、チューブ押圧機構部を形成している。
【0022】
そして、上流側バルブ51と上流側バルブカム51Cとを主な構成部品として、ポンプ機構50の中で上流側バルブ機構部を形成している。また、下流側バルブ52と下流側バルブカム52Cとを主な構成部品として、ポンプ機構50の中で下流側バルブ機構部を形成している。
【0023】
シャフト54には、上流側バルブカム51Cと下流側バルブカム52Cとポンプブロックカム53Cとが、固定されている。シャフト54は電気モータ(図示しない)を動力源として連続的に回転する。
【0024】
シャフト54が連続して回転するとき、上流側バルブカム51C、下流側バルブカム52C、ポンプブロックカム53Cが、各々上流側バルブ51、下流側バルブ52、ポンプブロック53に各カム形状により定まる一定の範囲で、往復動作をさせる。
【0025】
このとき、チューブ押圧機構部と上流側と下流側のバルブ機構部とが連動して、適切なタイミングでチューブ30の押圧を繰り返すと共に、上流側及び下流側でのチューブの30の閉塞又は閉塞状態の解除を行うことによって、輸液チューブ内の液体が移送されることになる。
【0026】
<チューブ押圧機構部>
上述したように、チューブ押圧機構部は、ポンプブロック53とポンプブロックカム53Cとガイドシャフト53Sとを備えている。
【0027】
上下に往復運動をするポンプブロック53の位置は、シャフト54を回転軸として回動するポンプブロックカム53Cの位置によって定まる。
【0028】
図4は、ポンプブロックカム53Cのカム形状を示している。ポンプブロック53が中間位置にある状態から、上下に移動するとき、
図4に示すカム形状を有するポンプブロックカム53Cのカム面がポンプブロック53の上側ベアリング部53u又は下側ベアリング部53dに接触する位置によって、ポンプブロック53の位置が定まる。
【0029】
図5(a)は、ポンプブロック53が最上位の位置にある状態でのポンプブロックカム53Cとの位置関係を示している。
図5(b)は、ポンプブロック53が中間位置にある状態でのポンプブロックカム53Cとの位置関係を示している。
図5(c)は、ポンプブロック53が最下位の位置にある状態でのポンプブロックカム53Cとの位置関係を示している。
【0030】
また、ポンプブロック53は、上流側と下流側に備えるボールブッシュ部35bにガイドシャフト53Sを通して配置することにより、上下方向にのみ移動可能に保持されている。
【0031】
このガイドシャフト53Sによって保持されていることで、ポンプブロック53が上下に往復運動する際に、他の方向にガタつくことを防ぐことができる。
また、ガタつきを防止できることで、ポンプ動作時の振動や騒音を抑えることができるとともに、輸液ポンプとしての流量精度に向上にも資することになる。
【0032】
ポンプブロック53には、略V形状の凹部であるV溝53vが形成されており、このV溝53vに沿ってチューブ30を配置する。
【0033】
一方、ドア20にも、ドア20を閉じたときには、ポンプブロック53に対向する位置に、略V形状の凹部を有しているポンプブロック対向部品21が固定配置されてる。
【0034】
このポンプブロック対向部品21に形成されている略V形状の凹部であるV溝21vが、ポンプブロック53のV溝53vと向かい合うことで出来る菱形の空間に、チューブが配置される。(
図6(a)、
図6(c)参照)
【0035】
この状態から、ポンプブロック53が上下に往復運動をするとき、チューブ30が繰り返し押圧される。(
図4(b)、
図4(d)参照)
【0036】
ポンプブロック53の動作の過程でチューブ30が押圧された状態(
図6(b))から菱形の空間が形成されて解除されるとき、チューブ30の形状は、チューブ30の材質の弾性力とチューブ30内を流れる液体の圧力によって、押圧される前の状態に戻ろうとする。
【0037】
このとき、チューブ30の材質の弾性力と、液体の圧力に加えて、V溝53vの斜面とV溝21vの斜面とによって輸液チューブ30が両側から押されることによって、よりチューブの形状が復元されやすい。
【0038】
これにより、チューブ30が、押圧されて変形している状態から、次に押圧されるまでの間に、チューブの形状が、より確実に復元されるので、チューブ30を押圧する毎の液体の移送量が安定して、流量精度が向上する。
【0039】
<バルブ機構部>
バルブ機構部は、上流側では、上流側バルブ51と上流側バルブカム51Cとを備えており、下流側では下流側バルブ52と下流側バルブカム52Cとを備えている。
【0040】
チューブ30を閉塞又は解除する動作を行うバルブ51(52)の位置は、シャフト54を回転軸として回動するバルブカム51C(52C)の位置によって定まる。
【0041】
図7(a)は、バルブ51(52)がチューブ30の閉塞を解除している位置にある状態でのバルブカム51C(52C)との位置関係を示している。
図7(b)は、バルブ51(52)がチューブ30を閉塞している位置にある状態でのバルブカム51C(52C)との位置関係を示している。
【0042】
上流側のバルブ51と下流側のバルブ52とは、別体の部品であるため、可動部を大きくとり理想的なバルブ角度が設定できるので、輸液ポンプとしての流量精度の向上が図れる。
【0043】
<ポンプブロックとバルブとの動作関係>
図8は、本実施例のチュービングポンプ1において、シャフト54が1回転するときのポンプブロック53、上流側バルブ51、下流側バルブ52バルブの動作タイミングを示すチャート図である。
【0044】
シャフト54が1回転するとき、ポンプブロック53は上下に1往復する動作を行う。
また、上流側バルブ51は、シャフト54が1回転するとき、バルブを開閉する動作を2回行う。
このとき、下流側バルブ52は、上流側バルブ51とは、タイミングをずらして、バルブを開閉する動作を2回行う。
図8ではこれらの動作の関係を示している。
【0045】
図8の横軸は、シャフト54を回転軸として、回転する3つの別体のカム、すなわちポンプブロックカム53C、上流側バルブカム51C、下流側バルブカム52Cの回転角度である。
【0046】
図8の縦軸は、ポンプブロック53、上流側バルブ51、下流側バルブ52バルブの移動変位量を表している。
【0047】
図8からわかるように、本実施例では、バルブが最大に開くときの移動量を1として、ポンプブロック53が中間地点から上方向または下方向に移動する最大変位量を3として設定している。
【0048】
チューブ30内の液体を吸引(Fill)するとき、ポンプブロックカム53Cは
図4でFとして指示している44°の範囲で、ポンプブロック53を動作させている。このとき、上流側バルブ51は輸液チューブ30を開放し、下流側バルブ52は、輸液チューブ30を閉塞している。そしてポンプブロック53がより中間位置に向かって移動するにしたがい液体を吸引(Fill)する。
【0049】
チューブ30内の液体を吐出(Pump)するとき、ポンプブロックカム53Cは
図4でPとして指示している70°の範囲で、ポンプブロック53を動作させている。このとき、上流側バルブ51は輸液チューブ30を閉塞し、下流側バルブ52は、輸液チューブ30を開放している。そしてポンプブロック53のV溝53vの斜面が輸液チューブ30を押していくことによって、液体を吐出(Pump)させる。
【0050】
輸液ポンプとしての流量精度を上げるための要素の1つとして、バルブ開閉のタイミングやチューブの弾性力等の諸条件を考慮した上で、できるだけ吐出時間の割合を多くすることが望ましい。
【0051】
ポンプブロックカム53Cの吐出(Pump)の為のカム角度範囲を広く設定する必要がある。従来、チューブを押圧する駆動部品と上下流のバルブ1つのカムで動作させる形態では、カム角度範囲を60°程度よりも更に大きくすることが困難であった。
【0052】
しかし本実施例では、ポンプブロック53、上流側バルブ51、下流側バルブ52の動作方向を変えるカムを各々別体のカムを使用することで、設計上の許容範囲が広がった結果、少なくともカム角度範囲を70°に設定できた。
【0053】
なお、上記実施例によれば、吐出(Pump)の為のカム角度範囲を70°とし、吸引(Fill)の為のカム角度範囲を44°に設定したが、上下流側のバルブの開閉タイミングの設定に合わせて、他の角度範囲を設定してもよい。
【0054】
また、上記実施例によれば、1本のシャフト54をポンプブロックカム53C、上流側バルブカム51C、下流側バルブカム52Cの共通の回転軸としたが、全部又は一部について、各々異なる回転軸を設定してもよい。