【実施例】
【0022】
図1〜
図3において、10はこの発明の実施例1に係る木工沈床キットで、この木工沈床キット10は、1台の床材11と、2台の(一対の)縦柵14と、2台の(一対の)横柵17とにより構成されている。床材11は、複数の敷成木を組み付けて形成され、平面視して正方形の簀子として構成されている。各縦柵14は、木材からなり、かつY1−Y2方向に平行に離間した同一サイズの一対の縦柵用支柱12に、同一サイズの2本の縦柵用横木13が上下に平行な状態で横架された4本の木組み構造に構成されている。各横柵17も、縦柵14と同様に、木材からなり、かつX1−X2方向に平行に離間した同一サイズの一対の横柵用支柱15に、同一サイズの2本の横柵用横木16が上下に平行な状態で横架された木組みとして構成されている。すなわち、これら5台のパネル体で1組のキットは構成されている。
木工沈床キット10が現場に搬入された後、簀子11の4つの辺部に、2つの縦柵14と2つの横柵17とがそれぞれ立設され、かつ、各縦柵用横木13と各横柵用横木16とが井桁状になるように組み付けられて、全体として上側が開放された箱状の枠体である木工沈床18が作製されることとなる。木工沈床18の内部空間には、石材19が充填されることになる。
また、木工沈床18の4つのコーナー部は、井桁状に組み付けた複数の縦柵用横木13と複数の横柵用横木16とを、対応する縦柵用支柱12と横柵用支柱15との間に、木工沈床18の内外方向から挟み込んだ、組み木構造となっている。
【0023】
以下、これらの構成体を詳細に説明する。
図1および
図2に示すように、簀子11は、Y1−Y2方向に長い断面円形の一対の縦敷成木20と、これらの縦敷成木20と両端部が直交し、かつX1−X2方向に長くかつY1−Y2方向に所定ピッチで離間した7本の横敷成木21とを有している。簀子11は、1人または数人の作業員によって持ち運べるサイズ(例えば縦横2m)のものである。
2本の縦敷成木20は同一サイズの杉丸太である。また、各横敷成木21は、縦敷成木20より小径で、かつ縦敷成木20と同一長さの杉丸太である。各横敷成木21の両端部は、対応する縦敷成木20より外方に突出し、この状態でそれぞれ1本のビスBによって縦敷成木20に固定されている。ただし、最もY1側および最もY2側に配された横敷成木21は、それぞれ2本のビスBによって、対応する縦敷成木20の両端部に固定されている。2本止めとした理由は、仮にビスB1本であれば、簀子11の四隅部分に配置された各1本のビスBを中心として、縦敷成木20や横敷成木21が回動し、簀子11を運ぶ際などに変形しやすくなるためである。
【0024】
次に、
図1〜
図5を参照して、縦柵14について説明する。
各縦柵14の一部を構成する2本の縦柵用支柱12は、それぞれがZ1−Z2方向に長く、かつ横敷成木21より小径な同一サイズの杉丸太である。また、2本の縦柵用横木13は、それぞれがY1−Y2方向に長く、かつ縦敷成木20と同一サイズの杉丸太である。各縦柵用支柱12の長さは、縦柵用横木(縦敷成木20)13の直径の5倍としている。
各縦柵用支柱12は、対応する2本の縦柵用横木13の両端部の井桁内側(木工沈床18のコーナー部の内側)に、それぞれビスBにより固定されている(
図4)。
【0025】
Y1側の各縦柵用支柱12は、平面視して、それらのY1側の周側端を、対応する縦柵用横木13のY1側の端面から横柵用支柱15の直径と横柵用横木16の直径とを加算した長さ分だけY2方向へ離間した位置に揃えた状態で、各縦柵用横木13に固定されている。
また、Y2側の各縦柵用支柱12は、平面視して、それらのY2側の周側端を、対応する縦柵用横木13のY2側の端面から横柵用支柱15の直径と横柵用横木16の直径とを加算した長さ分だけY1方向へ離間した位置に揃えた状態で、各縦柵用横木13に固定されている。
各下段の縦柵用横木13は、各縦柵用支柱12の下端を基準として、縦柵用横木13の直径の3倍の高さに配置されている。また、各上段の縦柵用横木13は、各縦柵用支柱12の下端を基準として、縦柵用横木13の直径の5倍の高さに配置されている。
【0026】
次に、
図1〜
図5を参照して、横柵17について説明する。
横柵17の一部を構成する2本の横柵用支柱15は、Z1−Z2方向に長く、かつ縦柵用支柱12と同一サイズの杉丸太である。また、2本の横柵用横木16は、X1−X2方向に長く、かつ縦敷成木(縦柵用横木13)20と同一サイズの杉丸太である。横柵17は、1人の作業員が持ち運べるサイズおよび重量となっている(縦柵14も同じ)。
各横柵用支柱15は、対応する2本の横柵用横木16の両端部の井桁外側(木工沈床18のコーナー部の外側)にビスBにより固定されている(
図5)。
【0027】
X1側の各横柵用支柱15は、平面視して、それぞれのX1側の周側端を、対応する横柵用横木16のX1側の端面に揃えた状態で、各横柵用横木16に固定されている。
X2側の各横柵用支柱15は、平面視して、それぞれのX2側の周側端を、対応する横柵用横木16のX2側の端面に揃えた状態で、各横柵用横木16に固定されている。
下段の横柵用横木16は、各横柵用支柱15の下端を基準として、横柵用横木16の直径の2倍の高さに配置されている。また、上段の横柵用横木16は、基準を同じとして、横柵用横木16の直径の4倍の高さに配置されている。
木工沈床18は、床材である簀子11の各辺部上に、2つの縦柵14と2つの横柵17とを、各縦柵用横木13と各横柵用横木16とが井桁状になるように組み付けて作製されたものである。木工沈床18の外周部には、平面視して正方形の枠体である周側壁22が立設される。
木工沈床18の内部空間に投入される石材19は、現場の河岸から集めた割石や石塊である。
【0028】
次に、
図1〜
図5を参照して、この発明の実施例1に係る木工沈床キット10を利用し、河岸付近の河床に木工沈床18を施工する方法を説明する。
図1に示すように、あらかじめ工場内で、木工沈床キット10の構成体である矩形状の簀子11と、2つの縦柵14と、2つの横柵17とをそれぞれ製造(プレハブ)する。これらは、現場へトラック輸送される現場搬送物となる。
その後、これらの現場搬送物を作業員がトラックの荷台に積み込み、現場の河岸までトラック搬送する。
【0029】
このように、工場から出荷される現場搬送物として、木工沈床18を5分割した簀子11と2つの縦柵14と2つの横柵17とを有する木工沈床キット10を採用したため、従来のように工場で組み立てられた木工沈床18を現場搬送物とする場合に比べて、工場内での現場搬送物の保管スペースを狭くすることができるとともに、現場搬送物のトラックの荷台への積載量が増大し、木工沈床18の輸送効率を高めることができる。さらには、現場搬送物のサイズおよび重量が作業員によって持ち運べる程度であるため、従来は工場や現場に配されていた木工沈床18の積み降ろし用のクレーンが不要となる。
【0030】
現場到着後、作業員が、トラックの荷台から木工沈床キット10を構成する簀子11と縦柵14と横柵17とをそれぞれ荷降ろしし、これらを担いで、河川水がせき止められた河岸付近の河床に運び込む(または川岸などでもよい)。
図2および
図3に示すように、河床では、まず河床に簀子11を敷き、簀子11の4つの辺部に、2つの縦柵14と2つの横柵17とを井桁状に組み付けて木工沈床18を組み立てる。具体的には、隣り合う2本の縦柵用横木13と2本の横柵用横木16とを井桁状に組み付けることで、簀子11の外周部上に平面視して正方形の周側壁22が立設された木工沈床18が作製される。このとき、4本の縦柵用支柱12の下端部によって、簀子11のコーナー部がそれぞれ位置決めされる(
図2および
図4)。
【0031】
このとき、各縦柵用支柱12は、それぞれの周側端を、各縦柵用横木13の対応する端面から横柵用支柱15の直径と横柵用横木16の直径とを加算した長さ分だけ、縦柵用横木13の中間部方向へ離間した位置に揃えて各縦柵用横木13に固定され、かつ各横柵用支柱15が、それぞれの周側端を各横柵用横木16の対応する端面に揃えて、各横柵用横木16に固定されている。そのため、木工沈床(周側壁22)18の各コーナー部には、井桁状に組み付けた複数の縦柵用横木13と複数の横柵用横木16とが、木工沈床18の内外方向から縦柵用支柱12と横柵用支柱15とにより挟み込まれ、それぞれ組み木構造が配設されることとなる。
これらのコーナー部では、各縦柵用支柱12と、これらの縦柵用支柱12に当接する各縦柵用横木13および各横柵用横木16とが、それぞれ1本のビスBによって固定されるとともに、各横柵用支柱15と、これらの横柵用支柱15に当接する各縦柵用横木13および各横柵用横木16とが、それぞれ1本のビスBによって固定される。ビスによる木材同士の固定によるため、きわめて迅速な組み立てを行うことができる。
【0032】
これにより、従来の通しボルトを使用したものに比べて、現場で組み立てられた木工沈床18の剛性が高まり、例えば石材19を木工沈床18の中に過剰に投入した際や、河川の氾濫時などに木工沈床18が変形しにくい。また、木工沈床18の各コーナー部にあっては、縦柵用横木13の端から横柵用横木16が突出する長さと、横柵用横木16の端から縦柵用横木13が突出する長さとが、対応する横柵用支柱15の直径と同一となっている。そのため、これらのコーナー部の外側に配置される横柵用支柱15は、平面視して、各横木13,16の突出部によって区画された仮想矩形状の空間に過不足なく収納される。これにより、複数の木工沈床18を端面同士突き合わせて河床に並設する際、隣り合う木工沈床18のあいだに不必要な隙間が現出せず、構築された木工沈床群のコンパクト化が図れるとともに、木工沈床群全体としての剛性も高まり、例えば河川が氾濫した際に木工沈床群が壊れにくい。また、従来の木工沈床におけるコーナ部は垂直な1本の通しボルトによる固定であったが、この実施例に係る固定は2本の支柱間によって交差する横木同士を挟み込む構造であるため、矩形枠(井桁)としてコーナー部に水平方向に外力が作用したとき、1本ボルトよりも2本支柱構造の方が剛性が高い。
【0033】
次に、
図6〜
図8を参照して、この発明の実施例2に係る木工沈床キットおよび木工沈床の施工方法を説明する。
図6〜
図8に示すように、実施例2の木工沈床キット10Aの特徴は、簀子11に代えて、平面視して正方形のシート状床材30を採用し、また縦柵14に代えて、縦柵14の内側に縦柵用養生シート31が展張されたシート付縦柵32を採用し、さらに横柵17に代えて、横柵17の内側に横柵用養生シート33が展張されたシート付横柵34を採用することで、シート状床材30の4つの辺部に、2つのシート付縦柵32と2つのシート付横柵34とを井桁状に組み付けた木工沈床40を採用するとともに、木工沈床40の内部空間への充填物として、実施例1の石材19に代えてモルタル(セメント系水硬性材料)35を採用した点である。
【0034】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図6および
図7に示すように、シート状床材30は、同一サイズの敷成木からなる一対の平行に離間した床用巻き芯材36に、平面視して正方形の床用養生シート37の一対の辺部を巻き付けられたものである。各床用巻き芯材36は縦柵用支柱12と同一直径で、かつその長さは、平面視して、Y1側の縦柵用支柱12におけるY1側の周側端と、Y2側の縦柵用支柱12におけるY2側の周側端とを結ぶ直線の長さと同じである。また、各床用巻き芯材36の直径は、縦柵用支柱12の直径と同じである。さらに、床用養生シート37は土木用の防草シートである(縦柵用養生シート31、横柵用養生シート33も同じ)。
【0035】
シート付縦柵32は、一対の縦柵用支柱12の井桁外側(木工沈床40の外側)に、Y1−Y2方向へ長い矩形状の縦柵用養生シート31を展張状態で巻き付けて、タッカーによりステープル止めし、かつ両縦柵用支柱12の下端部の井桁外側にY1−Y2方向へ長い縦柵用補助横木38をビス止めしたものである。縦柵用補助横木38は、床用巻き芯材36と同じ長さにカットした縦柵用横木13を半割したもので、その半割面を縦柵用支柱12に当接して使用される。
【0036】
シート付横柵34は、各横柵用横木16の長さ方向の両端部付近の井桁内側に、一対の横柵用シート展張支柱41が配設されている。
各横柵用シート展張支柱41は、横柵用支柱15と同一サイズのものである。X1側の各横柵用シート展張支柱41は、平面視して、それらのX1側の周側端を、対応する横柵用横木16のX1側の端面から縦柵用支柱12の直径と縦柵用横木13の直径とを加算した長さ分だけX2方向へ離間した位置に揃えた状態で、各横柵用横木16に固定されている。また、X2側の各横柵用シート展張支柱41は、平面視して、それらのX2側の周側端を、対応する横柵用横木16のX2側の端面から縦柵用支柱12の直径と縦柵用横木13の直径とを加算した長さ分だけX1方向へ離間した位置に揃えた状態で、各横柵用横木16に固定されている。
両横柵用シート展張支柱41の井桁外側には、X1−X2方向に長い矩形状の横柵用養生シート33が展張状態で巻き付くようにステープル止めされている。また、両横柵用シート展張支柱41の下端部および上端部の井桁外側には、横柵用養生シート33を挟み込むように、X1−X2方向に長い横柵用補助横木39がそれぞれ1本のビスBによって固定されている。横柵用補助横木39は、床用巻き芯材36と同じ長さにカットした横柵用横木16を半割したもので、その半割面を横柵用支柱15に当接して使用される。
【0037】
次に、
図6〜
図8を参照して、この発明の実施例2に係る木工沈床キット10Aを利用した木工沈床40を、河岸付近の河床に施工する木工沈床施工方法を説明する。
図6に示すように、実施例2の土木沈床キット10Aは、現場に搬入されたシート状床材30の4つの辺部に、2つのシート付縦柵32と2つのシート付横柵34とを井桁状に組み付けて木工沈床40を組み立てる。このとき、木工沈床40の内側に、シート状床材30、一対の縦柵用養生シート31および一対の横柵用養生シート33からなるシート状の袋体42が形成される。
図7および
図8に示すように、その後、袋体42にモルタル35を充填してこれを養生固化することで、モルタル35をウエイトとした木工沈床40を現場で簡単に作製することができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため説明を省略する。