(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973076
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】温水型暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20060101AFI20160809BHJP
F24F 11/02 20060101ALI20160809BHJP
F24F 1/00 20110101ALI20160809BHJP
F24F 3/00 20060101ALI20160809BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
F24D3/00 K
F24F11/02 102U
F24F11/02 102W
F24F1/00 331
F24F3/00 B
F25B1/00 371F
F25B1/00 341F
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-532739(P2015-532739)
(86)(22)【出願日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2014064960
(87)【国際公開番号】WO2015025585
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-173822(P2013-173822)
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 和仁
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明由
(72)【発明者】
【氏名】藁科 吉隆
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−173636(JP,A)
【文献】
特開2000−186819(JP,A)
【文献】
特開2004−286412(JP,A)
【文献】
特開2008−045805(JP,A)
【文献】
特開2000−046417(JP,A)
【文献】
特開2001−041473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00 − 19/10
F24H 1/00 − 9/20
F25B 1/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転により得た温水を暖房用の放熱器に供給する温水型暖房装置であって、
室内温度を検知する室内温度検知器と、
前記ヒートポンプ式冷凍サイクルの圧縮機の運転を前記室内温度検知器の検知温度と設定温度との比較により制御する第1制御部と、
前記第1制御部の制御による前記圧縮機の運転オフ時、前記放熱器を経た温水の温度が所定値未満に低下した場合に、前記第1制御手段の制御にかかわらず前記圧縮機の運転をオンする第2制御部と、
を備えることを特徴とする温水型暖房装置。
【請求項2】
前記放熱器が存する被空調室に配置され、前記設定温度が含まれる運転条件を設定するための操作器、
をさらに備え、
前記室内温度検知器は、前記操作器に配置され、前記放熱器が存する被空調室の雰囲気温度を前記室内温度として検知する、
ことを特徴とする請求項1記載の温水型暖房装置。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記圧縮機の運転がオンのとき、前記放熱器に供給される温水の温度が目標値となるように前記圧縮機の能力を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の温水型暖房装置。
【請求項4】
前記目標値を前記設定温度と前記温度検知器の検知温度との差に応じて補正する補正部、
をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の温水型暖房装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、
前記設定温度Tsに基づいて第1設定値Tsc1および第2設定値Tsc3(>Tsc1)を定め、
前記温度検知器の検知温度Taが前記第2設定値Tsc3未満の場合に、前記圧縮機の運転をオンし、
前記温度検知器の検知温度Taが前記第2設定値Tsc3以上の場合に、前記圧縮機の運転をオフし、
前記圧縮機の運転をオフした後、前記温度検知器の検知温度Taが前記第1設定値Tsc1未満に低下した場合に、前記圧縮機の運転をオンする、
ことを特徴とする請求項1記載の温水型暖房装置。
【請求項6】
前記第1制御部は、前記圧縮機の運転がオンのとき、前記放熱器に供給される温水の温度Twが目標値Ttとなるように前記圧縮機の能力を制御する、
ことを特徴とする請求項5記載の温水型暖房装置。
【請求項7】
前記目標値Ttを前記設定温度Tsと前記温度検知器の検知温度Taとの差に応じて補正する補正部、
をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の温水型暖房装置。
【請求項8】
前記第1制御部は、
前記設定温度Tsに基づいて基準値Tsc(=Ts−ΔT0)を定め、
前記基準値Tscに基づいて第1設定値Tsc1(=Tsc+ΔT1)および第2設定値Tsc3(=Tsc+ΔT3)を定め(Tsc1<Tsc3)、
前記温度検知器の検知温度Taが前記第2設定値Tsc3未満の場合に、前記圧縮機の運転をオンし、
前記温度検知器の検知温度Taが前記第2設定値Tsc3以上の場合に、前記圧縮機の運転をオフし、
前記圧縮機の運転をオフした後、前記温度検知器の検知温度Taが前記第1設定値TTsc1未満に低下した場合に、前記圧縮機の運転をオンする、
ことを特徴とする請求項1記載の温水型暖房装置。
【請求項9】
前記第1制御部は、前記圧縮機の運転がオンのとき、前記放熱器に供給される温水の温度Twが目標値Ttとなるように前記圧縮機の能力を制御する、
ことを特徴とする請求項8記載の温水型暖房装置。
【請求項10】
前記目標値Ttを前記設定温度Tsと前記温度検知器の検知温度Taとの差に応じて補正する補正部、
をさらに備えることを特徴とする請求項9記載の温水型暖房装置。
【請求項11】
前記補正部は、
前記圧縮機の運転オン時、前記温度検知器の検知温度Taが前記基準値Tsc未満の場合に、前記目標値Ttを一定時間毎に一定値ずつ上昇方向に補正し、
前記圧縮機の運転オン時、前記温度検知器の検知温度Taが前記基準値Tsc以上かつ前記第1設定値Tsc1未満の領域に存する場合に、そのときの前記目標値Ttをそのまま保持し、
前記圧縮機の運転オン時、前記温度検知器の検知温度Taが前記第1設定値Tsc1以上かつ前記第2設定値Tsc3未満の領域に存する場合に、前記目標値Ttを一定時間毎に一定値ずつ下降方向に補正する
ことを特徴とする請求項10記載の温水型暖房装置。
【請求項12】
前記ヒートポンプ式冷凍サイクルは、前記圧縮機、四方弁、水熱交換器、膨張弁、室外熱交換器を含み、前記圧縮機から吐出される冷媒を前記四方弁に通して前記水熱交換器の冷媒流路に流し、その冷媒流路を経た冷媒を前記膨張弁および前記四方弁に通して前記室外熱交換器に流し、その室外熱交換器を経た冷媒を前記圧縮機に戻す、
ことを特徴とする請求項1記載の温水型暖房装置。
【請求項13】
前記水熱交換器の水流路と前記放熱器との間で水を循環させる循環ポンプ、
をさらに備えることを特徴とする請求項12記載の温水型暖房装置。
【請求項14】
前記水熱交換器の水流路に流入する水の温度Twiを検知する入水温度センサと、
前記水熱交換器の水流路から流出する水の温度Twoを検知する出水温度センサと、
をさらに備えることを特徴とする請求項13記載の温水型暖房装置。
【請求項15】
前記第1制御部は、前記圧縮機の運転がオンのとき、前記出水温度センサの検知温度Twoが目標値Ttとなるよう前記圧縮機の能力を制御する
をさらに備えることを特徴とする請求項14記載の温水型暖房装置。
【請求項16】
前記目標値Ttを前記設定温度Tsと前記温度検知器の検知温度Taとの差に応じて補正する補正部、
をさらに備えることを特徴とする請求項15記載の温水型暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、温水の熱を利用して暖房を行う温水型暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転により得た温水を暖房用の放熱器であるファンコイル,ラジエータ,床暖房パネル等に供給し、この放熱器からの放熱により室内を暖房する温水型暖房装置が知られている(例えば特開2000−18671号公報)。
【0003】
ファンコイル,ラジエータ,床暖房パネルは、設置場所のユーザが望む暖房方式に応じて選択的に配管接続される。
【0004】
このような温水型暖房装置は、運転条件設定用のリモートコントロール式の操作器(リモートコントローラともいう)を備える。この操作器は、暖房する部屋の壁面などに取付けられるとともに、その取付け場所の室内温度(雰囲気温度)を検知する。
【0005】
温水型暖房装置は、このリモコンの検知温度と同リモコンの設定温度とを比較し、その比較結果に応じて、ヒートポンプ式冷凍サイクルの圧縮機の運転をオン,オフ制御する。例えば、検知温度が設定温度未満の場合に、ヒートポンプ式冷凍サイクルの圧縮機の運転をオン(サーモオン)し、検知温度が設定温度に達した場合に圧縮機の運転をオフ(サーモオフ)する。
【発明の開示】
【0006】
床面に敷設される床暖房パネルの周りには、床材や床下空間など多くの放熱要素が存在する。このため、床暖房では、サーモオフ時にユーザの足元の温度がリモコンの検知温度よりも速く低下し、ユーザの足元が寒くなり易い。このため、ユーザの足元が寒くならない快適な暖房運転が望まれている。
【0007】
一実施形態の温水型暖房装置は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転により得た温水を暖房用の放熱器に供給するものであって、
室内温度を検知する室内温度検知器と、
前記ヒートポンプ式冷凍サイクルの圧縮機の運転を前記室内温度検知器の検知温度と設定温度との比較により制御する第1制御部と、
前記第1制御部の制御による前記圧縮機の運転オフ時、前記放熱器を経た温水の温度が所定値未満に低下した場合に、前記第1制御手段の制御にかかわらず前記圧縮機の運転をオンする第2制御部と、
を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、熱源機である室外ユニット1は、圧縮機2、四方弁3、膨張弁(減圧手段)4、室外熱交換器5、室外ファン6、およびインバータ7を備える。インバータ7は、圧縮機2を可変速駆動する。そして、室外ユニット1に、冷媒配管11,12を介して水熱交ユニット20の水熱交換器21が接続される。
【0010】
圧縮機2は、冷媒を吸込んで圧縮し吐出する。この圧縮機2の冷媒吐出口に、四方弁3および冷媒配管(ガス側)11を介して水熱交換器21における冷媒流路21aの一端が配管接続される。冷媒流路21aの他端に冷媒配管(液側)12および膨張弁4を介して室外熱交換器5の一端が配管接続され、その室外熱交換器5の他端が四方弁3を介して圧縮機2の冷媒吸込口に配管接続される。これら配管接続により、ヒートポンプ式冷凍サイクルが構成される。
【0011】
すなわち、圧縮機2から吐出されるガス冷媒が、四方弁3および冷媒配管11を通って水熱交換器21の冷媒流路21aに流れる。冷媒流路21aに流れたガス冷媒は、同水熱交ユニット20の水流路21bに流れる水に熱を奪われて凝縮する。冷媒流通路21aから流出する液冷媒は、冷媒配管12および膨張弁4を通って室外熱交換器5に流れる。室外熱交換器5に流れた液冷媒は、外気から熱を汲み上げて蒸発する。室外熱交換器5から流出するガス冷媒は、四方弁3を通って圧縮機2に吸込まれる。すなわち、水熱交換器21の冷媒流路21aが凝縮器として機能し、室外熱交換器5が蒸発器として機能する。
【0012】
インバータ7は、商用交流電源の電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧をスイッチングにより所定周波数Fの交流電圧に変換して出力する。この出力により、圧縮機2のモータが可変速駆動され、冷凍サイクルの (暖房)能力が可変される。
【0013】
水熱交ユニット20は、水熱交換器21のほかに、循環ポンプ22、入水温度センサ23、出水温度センサ24、およびコントローラ25を有する。水熱交換器21は、冷媒流路21aを通る冷媒と水流路21bを通る水との熱交換を行う。この水熱交換器21の水流路21bに、水配管31,32を介して暖房用の放熱器である複数の床暖房パネル40が並列接続される。各床暖房パネル40は、部屋の床面に敷設され、水熱交ユニット20から供給される温水の熱を床面に伝える。
【0014】
循環ポンプ22は、水熱交換器21の出水側につながる水配管31に配設され、水配管31内の水を各床暖房パネル40に送る。すなわち、循環ポンプ22は、水熱交換器21の水流路21bと各床暖房パネル40との間で水を循環させる。入水温度センサ23は、水流路21bの入水側と水配管32とをつなぐ水配管に密着して取付けられ、各床暖房パネル40を経て水流路21bに流入する温水の温度Twiを検知する。出水温度センサ24は、水熱交換器21の水流路21bの出水側と循環ポンプ22とをつなぐ水配管に密着して取付けられ、水流路21bから流出して各床暖房パネル40に向かう温水の温度Twoを検知する。
【0015】
なお、暖房用の放熱器として、床暖房パネル40のほかに、温風吹出し用のファンコイル、熱輻射用のラジエータなどがある。温風吹出しによる暖房を行う場合には、水熱交換器21の水流路21bに、水配管31,32を介して1つまたは複数のファンコイルが接続される。輻射熱による暖房を行う場合には、水熱交換器21の水流路21bに、水配管31,32を介して1つまたは複数のラジエータが接続される。水熱交換器21の水流路21bに、1つまたは複数の床暖房パネル40、1つまたは複数のファンコイル、および1つまたは複数のラジエータを混在的に接続することも可能である。
【0016】
水熱交ユニット20のコントローラ25に、室外ユニット1、循環ポンプ22、入水温度センサ23、出水温度センサ24、およびリモートコントロール式の操作器(リモートコントローラともいう)50が接続される。操作器50は、運転モード、室内温度(設定温度Ts)、運転/停止などの運転条件を設定するためのもので、各床暖房パネル40等の放熱器が設置される被空調室の壁面などに取付けられる。この操作器50に、室内温度検知器である室内温度センサ51が配設される。室内温度センサ51は、被空調室の雰囲気空気温度を室内温度Taとして検知する。操作器50は、設定された運転条件および検知された室内温度Taなどのデータをコントローラ25に送る。
【0017】
コントローラ25は、操作器50から送られるデータ、入水温度センサ23の検知温度Twiのデータ、および出水温度センサ24の検知温度Twoのデータに基づき、室外ユニット1の各機器および循環ポンプ22を制御する。
【0018】
とくに、コントローラ25は、内部メモリに格納された制御プログラムに基づく主要な機能として、次の(1)〜(3)のセクションを有する。
【0019】
(1)圧縮機2の運転を室内温度センサ51が検知した室内温度Taと操作器50の設定温度Tsとの比較結果に基づきオン,オフ制御するとともに、このオン,オフ制御による圧縮機2の運転オン時、出水温度センサ24の検知温度(各床暖房パネル40に供給される温水の温度)Twoが目標値Tt(例えば30℃)となるように、圧縮機2の能力(インバータ7の出力周波数F)を制御する第1制御部。
【0020】
(2)上記目標値Ttを設定温度Tsと室内温度Taとの差に応じて補正する補正部。
【0021】
(3)各床暖房パネル40の放熱により床面を暖める床暖房モードが操作器50で設定された場合、第1制御部の制御による圧縮機2の運転オフ時(サーモオフ時)、入水温度センサ23の検知温度(各床暖房パネル40で温度低下した温水の温度)Twiが所定値Twi1未満に低下した場合に、第1制御部の制御にかかわらず圧縮機2の運転をオンする第2制御部。
【0022】
なお、(1)の第1制御部は、具体的には、操作器50の設定温度Tsに応じて基準値Tsc(=Ts−ΔT0)を定め、この基準値Tscに基づいて第1設定値Tsc1(=Tsc+ΔT1),中間設定値Tsc2(=Tsc+ΔT2),第2設定値Tsc3(=Tsc+ΔT3)を定める(Tsc<Tsc1<Tsc2<Tsc3)。そして、第1制御部は、室内温度Taが上昇方向にある状態において、室内温度Taが第2設定値Tsc3未満の場合に圧縮機2の運転をオンし、室内温度Taが第2設定値Tsc3以上の場合に圧縮機2の運転をオフする。この運転オフ後、第1制御部は、室内温度Taが第1設定値Tsc1未満に低下した場合に、圧縮機2の運転をオンする。
【0023】
上記(2)の補正部は、具体的には、圧縮機2の運転オン時、室内温度Taが基準値Tsc未満の領域に存する場合に目標値Ttを一定時間毎に一定値ずつ上昇方向に補正し、室内温度Taが基準値Tsc以上かつ第1設定値Tsc1未満の領域に存する場合にそのときの目標値Ttをそのまま保持し、室内温度Taが第1設定値Tsc1以上かつ第2設定値Tsc3未満の領域に存する場合に目標値Ttを一定時間毎に一定値ずつ下降方向に補正する。
【0024】
上記床暖房モードは、各床暖房パネル40が水熱交ユニット20に配管接続される際に、係員による操作器50の特殊操作により設定される。係員の操作により設定可能な暖房モードとして、床暖房モードのほかに、放熱器としてファンコイルを用いる温風暖房モード、放熱器としてラジエータを用いる輻射熱暖房モード等がある。
【0025】
なお、床暖房モード以外のモードでは、(3)の第2制御部は作動せず、(1)の第1制御部および(2)の補正部のみが作動する。
【0026】
上記(3)の第2制御部における所定値Twi1は、操作器50の設定温度Tsと同じ値またはその近傍の値であり、コントローラ25により自動的に設定される。例えば、設定温度Tsが25℃の場合、コントローラ25は、同じ25℃を所定値Twi1として設定する。
【0027】
つぎに、床暖房モードが設定された場合にコントローラ25が実行する制御を、
図2の制御条件および
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
コントローラ25は、操作器50の設定温度(例えば25℃)Tsに応じて基準値Tsc(=Ts−ΔT0)を定め、その基準値Tscに基づいて第1設定値Tsc1(=Tsc+ΔT1),中間設定値Tsc2(=Tsc+ΔT2),第2設定値Tsc3(=Tsc+ΔT3)を定める(ステップ101)。ΔT0,ΔT1,ΔT2,ΔT3は、コントローラ25の内部メモリに予め記憶された規定値である。例えば、ΔT0=0.5℃,ΔT1=0.5℃,ΔT2=1.5℃,ΔT3=2.5℃である。これら規定値により、Tsc<Tsc1<Tsc2<Tsc3の条件が成立する。
【0028】
基準値Tsc(=Ts−ΔT0),第1設定値Tsc1(=Tsc+ΔT1),中間設定値Tsc2(=Tsc+ΔT2),第2設定値Tsc3(=Tsc+ΔT3)により、
図2に示す5つの制御領域A,B,C,D,Eが設定される。制御領域Aは、基準値Tsc未満の領域である。制御領域Bは、基準値Tsc以上かつ第1設定値Tsc1未満の領域である。制御領域Cは、第1設定値Tsc1以上かつ中間設定値Tsc2未満の領域である。制御領域Dは、中間設定値Tsc2以上かつ第2設定値Tsc3未満の領域である。制御領域Eは、第2設定値Tsc3以上の領域である。なお、制御領域D,Eの相互間に存する温度幅ΔTx(例えば0.5℃)は、チャタリングによる誤動作を防止するためのヒステリシス領域である。
【0029】
コントローラ25は、ステップ101の処理に続き、室内温度Taが制御領域Eに存するかを判定する(ステップ102)。室内温度Taが制御領域Eに存する場合(ステップ102のYES)、コントローラ25は、圧縮機2をサーモオフ(運転オフ)する(ステップ103)。
【0030】
室内温度Taが制御領域Eに存しない場合(ステップ102のNO)、コントローラ25は、圧縮機2がサーモオフしているか否かを判定する(ステップ104)。圧縮機2がサーモオフしている場合(ステップ104のYES)、コントローラ25は、室内温度Taが制御領域C,Dのいずれかに存するかを判定する(ステップ105)。室内温度Taが制御領域C,Dのいずれにも存しない場合(ステップ105のNO)、つまり室内温度Taが制御領域A,Bのいずれかに存する場合、コントローラ25は、圧縮機2をサーモオン(運転オン)する(ステップ106)。このサーモオンには、循環ポンプ22の運転オンが含まれる。
【0031】
このサーモオンにより、水熱交ユニット20から各床暖房パネル40に温水が供給される。この温水の供給により、床暖房が始まる。
【0032】
コントローラ25は、サーモオンに伴い、出水温度センサ24の検知温度(床暖房パネル40に供給される温水の温度)Twoが目標値Ttとなるように、インバータ7の出力周波数Fを制御する(ステップ109)。具体的には、検知温度Twoが目標値Ttより低くてその差が大きい場合、コントローラ25は、インバータ7の出力周波数Fを高めの値に設定する。この設定により、圧縮機2の能力が大きくなる。検知温度Twoが目標値Ttに近づいてその差が小さくなるに従い、コントローラ25は、インバータ7の出力周波数Fを低減していく。この低減に伴い、圧縮機2の能力が減少していく。こうして、圧縮機2の能力が制御されることにより、適切な温度の温水が各床暖房パネル40に供給される。なお、温水の温度変化にはある程度の時間差(タイムラグ)がある。このため、インバータ7の出力周波数Fの増減は、頻繁に実行するよりも、所定時間毎たとえば3分毎に実行するのが望ましい。
【0033】
続いて、コントローラ25は、室内温度Taが制御領域A,B,C,Dのどの領域に存するかを判定する(ステップ110,111,112)。
【0034】
室内温度Taが制御領域Aに存する場合(ステップ110のYES)、室内温度Taが設定温度Tsよりかなり低いので、床暖房能力を増大する必要がある。よって、コントローラ25は、目標値Ttを一定時間(30分)毎に一定値(1K)ずつ上昇方向に補正する(ステップ113)。続いて、コントローラ25は、ステップ101からの処理を繰り返す。この場合、室内温度Taは制御領域Eに存しておらず(ステップ102のNO)、かつ圧縮機2がサーモオンなので(ステップ104のNO)、コントローラ25は、出水温度センサ24の検知温度Twoが目標値Ttとなるように、インバータ7の出力周波数Fを制御する(ステップ109)。すなわち、コントローラ25は、ステップ113で目標値Ttを上昇方向に補正した後なので、インバータ7の出力周波数Fを高めて圧縮機2の能力を増大させる。この圧縮機2の能力増大により、温水に対する加熱能力が増して、床暖房能力が増大する。これにより、室内温度Taが設定温度Tsに向かって迅速に上昇する。
【0035】
続いて、コントローラ25は、室内温度Taが制御領域A,B,C,Dのどの領域に存するかを判定する(ステップ110,111,112)。
【0036】
室内温度Taが上昇して制御領域Bに入った場合(ステップ110のNO、ステップ111のYES)、室内温度Taが設定温度Tsの近傍に到達しているので、床暖房能力を増大する必要はない。よって、コントローラ25は、この時点の目標値Ttをそのまま保持する(ステップ114)。続いて、コントローラ25は、ステップ101からの処理を繰り返す。この場合、室内温度Taは制御領域Eに存しておらず(ステップ102のNO)、かつ圧縮機2がサーモオンなので(ステップ104のNO)、コントローラ25は、出水温度センサ24の検知温度Twoが目標値Ttとなるように、インバータ7の出力周波数Fを制御する(ステップ109)。すなわち、コントローラ25は、ステップ114で目標値Ttを保持した後なので、室内温度Taが制御領域Aに存する場合と同じ加熱能力が得られるようにインバータ7の出力周波数Fを制御する。これにより、室内温度Taが設定温度Tsに向かって迅速に上昇する。
【0037】
続いて、コントローラ25は、室内温度Taが制御領域A,B,C,Dのどの領域に存するかを判定する(ステップ110,111,112)。
【0038】
室内温度Taが上昇して制御領域Cに入った場合(ステップ110のNO、ステップ111のNO、ステップ112のYES)、室内温度Taが設定温度Tsに達しているので、床暖房能力を減少する必要がある。よって、コントローラ25は、目標値Ttを一定時間(30分)毎に一定値(1K)ずつ下降方向に補正する(ステップ115)。続いて、コントローラ25は、ステップ101からの処理を繰り返す。この場合、室内温度Taは制御領域Eに存しておらず(ステップ102のNO)、かつ圧縮機2がサーモオンなので(ステップ104のNO)、コントローラ25は、出水温度センサ24の検知温度Twoが目標値Ttとなるように、インバータ7の出力周波数Fを制御する(ステップ109)。すなわち、コントローラ25は、ステップ115で目標値Ttを下降方向に補正した後なので、インバータ7の出力周波数Fを下げて圧縮機2の能力を減少させる。この圧縮機2の能力減少により、温水に対する加熱能力が減って、床暖房能力が減少する。これにより、室内温度Taの上昇が抑制される。
【0039】
続いて、コントローラ25は、室内温度Taが制御領域A,B,C,Dのどの領域に存するかを判定する(ステップ110,111,112)。
【0040】
制御領域Cでの床暖房能力の減少にもかかわらず、室内温度Taが上昇して制御領域Dに入った場合(ステップ110のNO、ステップ111のNO、ステップ112のNO)、床暖房能力の減少を続ける必要がある。よって、コントローラ25は、制御領域Cの制御と同様に、目標値Ttを一定時間(30分)毎に一定値(1K)ずつ下降方向に補正する(ステップ116)。続いて、コントローラ25は、ステップ101からの処理を繰り返す。この場合、室内温度Taは制御領域Eに存しておらず(ステップ102のNO)、かつ圧縮機2がサーモオンなので(ステップ104のNO)、コントローラ25は、出水温度センサ24の検知温度Twoが目標値Ttとなるように、インバータ7の出力周波数Fを制御する(ステップ109)。すなわち、コントローラ25は、ステップ116で目標値Ttを下降方向に補正した後なので、インバータ7の出力周波数Fを下げて圧縮機2の能力を減少させる。この圧縮機2の能力減少により、温水に対する加熱能力が減って、床暖房能力が減少する。これにより、室内温度Taの上昇がさらに抑制される。
【0041】
なお、制御領域C,Dにおいて目標値Ttを下降方向に補正する場合、その補正の実施時間間隔および補正の量を適宜に変更可能とすることが望ましい。また、室内温度Taが高い方の制御領域Dにおける目標値Ttの補正については、その補正の実施時間間隔および補正の量のいずれかもしくは両方を、制御領域Cの場合と異ならせることが、室温制御上、好ましい。すなわち、制御領域Dにおける補正の実施時間間隔を、制御領域Cにおける補正の実施時間間隔よりも短くする。または、制御領域Dにおける補正の量を、制御領域Cにおける補正の量よりも多くする。
【0042】
制御領域Dでの床暖房能力の減少にもかかわらず、室内温度Taが制御領域Eに入った場合(ステップ102のYES)、室内温度Taが設定温度Tsに対し上がり過ぎて、暖房過多の状態にある。よって、コントローラ25は、圧縮機2をサーモオフ(運転オフ)する(ステップ103)。このサーモオフにより、床暖房が中断する。続いて、コントローラ25は、ステップ101からの処理を繰り返す。なお、サーモオフ中、コントローラ25は、循環ポンプ22の運転による温水循環を継続する。温水循環の継続により、水配管31,32の凍結が防止される。
【0043】
サーモオフによって室内温度Taが制御領域Eより下の領域に入った場合(ステップ102のNO)、コントローラ25は、サーモオフ中であることにより(ステップ104のYES)、室内温度Taが制御領域C,Dのいずれに存するか判定する(ステップ105)。圧縮機のサーモオフ中に室内温度Taが制御領域Aまたは制御領域Bまで低下せずに制御領域C,Dのいずれかに留まっている場合(ステップ105のYES)、コントローラ25は、入水温度センサ23の検知温度Twiと所定値Twi1とを比較する(ステップ106)。なお、所定値Twi1はほぼ設定温度Ts近傍の値が設定されている。入水温度センサ23の検知温度Twiが所定値Twi1以上の場合(ステップ107のNO)、コントローラ25は、圧縮機のサーモオフを継続する(ステップ103)。続いて、コントローラ25は、ステップ101からの処理を繰り返す。
【0044】
ステップ105の判定において、室内温度Taが制御領域Bまたは制御領域Aまで低下した場合(ステップ105のYES)、コントローラ25は、圧縮機2をサーモオンする(ステップ106)。このサーモオンにより、床暖房が開始(再開)される。続いて、コントローラ25は、ステップ109に移行して圧縮機2の運転周波数Fを制御する。これにより、床暖房パネル40に温水が供給され、その温水の熱で床暖房が行われる。つまり、室内温度Taが低下してきたので、床暖房が再開される。
【0045】
一方、ステップ107の判定において、入水温度センサ23の検知温度Twiが所定値Twi1未満の場合(ステップ107のYES)、コントローラ25は、室内温度Taと設定温度Tscとの差にかかわらず、圧縮機2を強制的にサーモオンする(ステップ108)。このサーモオンにより、床暖房が開始(再開)される。続いて、コントローラ25は、ステップ109に移行して圧縮機2の運転周波数Fを制御する。これにより、床暖房パネル40に温水が供給され、その温水の熱で床暖房が行われる。
【0046】
入水温度センサ23の検知温度Twiは、床暖房パネル40を経て水熱交ユニット20に戻る温水の温度である。この戻り温水の温度が所定値Twi1未満の場合は、操作器50の室内温度センサ51が検知する室内温度Taと設定温度Tscとの差にかかわらず強制的にサーモオンすることにより、床面およびその付近の温度低下が抑制される。
【0047】
操作器50の室内温度センサ51が検知する室内温度Taは床面より高いところの雰囲気温度であり、しかも床面に敷設される床暖房パネル40の周りには床材や床下空間など多くの放熱要素が存在するため、サーモオフしている間にユーザの足元の室温は、操作器50の室内温度センサ51が検知する室内温度Taよりも速く低下する。このままではユーザが寒さを感じるが、本制御によって事前に入水温度センサ23の検知温度Twiの低下を検出して強制的にサーモオンするので、寒さを解消できる。この結果、ユーザの足元が寒くならない快適な床暖房が可能となる。
【0048】
[変形例]
上記実施形態では、設定温度Tsより低い値を基準値Tscとして定めたが、設定温度Tsをそのまま基準値Tscとして定めてもよい。あるいは、設定温度Tsより高い値を基準値Tscとして定めてもよい。
【0049】
各設定値“Tsc+ΔT1”“Tsc+ΔT2”“Tsc+ΔT3”を決定する一定値ΔT1,ΔT2,ΔT3については、実施形態中の値に限らず、床暖房パネル40を敷設する場所の環境や水配管31,32の長さなどに応じて最適な値を適宜に選定すればよい。
【0050】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の実施形態の温水型暖房装置は、床暖房を行う家屋での利用が可能である。