(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービン建屋のように、内部に騒音発生源を収容する建物の壁面には、騒音の外部への漏洩を低減するために吸音材が設けられることが一般的である。このような吸音材としては、グラスウールやウレタン等、多孔質系の材料によって形成されたものが特に好適に用いられる。
【0003】
ここで、良好な騒音低減効果を得るためには、想定される騒音レベルに応じて吸音材の寸法(厚さ等)を適切に決定することはもとより、適切な性能を有する吸音材の種類を選定することが肝要となる。このような吸音材の性能を評価するための指標としては、吸音率が特に支配的である。
【0004】
吸音材の吸音率を測定する方法としては、2マイクロホン法や、下記非特許文献1に記載されたBiot理論に基づく方法が広く知られている。
2マイクロホン法では、評価対象である吸音材を測定管の一端側に配置し、反対の他端側に音源を配置することで、これら吸音材及び音源の中途位置に設けられた2つのマイクロホンによって、入射される音波、及び反射される音波の間の減衰率が取得される。この減衰率に基づいて当該吸音材の吸音率が得られるとされている。
【0005】
非特許文献1に記載された方法では、多孔質である吸音材が、弾性多孔質(固体部)、及びこの弾性多孔質中の空隙を流れる空気(流体部)の2つの要素を含むモデルとして定義される。Biot理論は、これら弾性多孔質と空気との相互作用によるエネルギー減衰に基づいて導出された弾性波伝搬理論に根差すものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の2マイクロホン法では、吸音材の厚さによって、得られる測定結果が異なるため、吸音材の寸法や形状が複数種類である場合、種類ごとに都度測定を行う必要がある。このため、寸法や形状等の影響を受けずに吸音率を測定することが可能な測定方法への要請が高まっていた。
【0008】
一方で、上述のBiot理論に基づく吸音率の算出に際しては、特に多くの測定パラメータが必要とされる。測定パラメータの一例としては、流体部の実効密度、流体部の実効体積弾性率、固体部のヤング率、固体部のポアソン比、固体部及び流体部における気孔率が挙げられる。これらパラメータのうち、流体部の実効密度と実効体積弾性率は、直接測定することが特に難しいことが知られている。すなわち、これらパラメータの取得の困難さが、吸音率の正確な測定に対する障壁となっていた。
【0009】
さらに、このBiot理論を拡張したモデルとして、AllardらによるJohnson−Champoux−Allardモデルも提唱されている。この方法で必要とされるパラメータ(流体部の迷路度、粘性特性長、熱的特性長)の数は少ない一方で、その測定には、超音波やヘリウムガス等を用いた専用装置が必要となる点で、依然としてその測定には困難が伴う。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、容易かつ精度高く吸音率を測定することが可能な吸音率の測定方法、及び吸音率評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によれば、伝搬定数の取得方法は、軸線に沿って延びる測定チューブ内の一端側に配置された音波発生源から、他端側に配置された吸音材に対して音波を照射し、前記吸音材に当接するように軸線方向に互いに離間して配置された複数のマイクロホンを用いて、前記吸音材の伝搬定数を取得する伝搬定数の取得方法であって、前記複数のマイクロホン同士の間における音波の伝達関数を算出するステップと、前記伝達関数、及び前記複数のマイクロホン同士の離間寸法の値に基づいて、(1)式により、前記吸音材の伝搬定数を算出するステップと、を含む。なお、Lは前記マイクロホン同士の間の距離を表し、H
12、H
13は伝達関数をそれぞれ表す。
【数1】
【0012】
この方法によれば、マイクロホン同士の間における音波の伝達関数を求めることにより、吸音材の伝搬定数を容易に算出することができる。さらに、測定チューブ内における音波の伝達関数は、実際に吸音材の物性等を測定することなく、測定チューブ内における空気の圧力変動を記述する式に基づいて求めることができる。この圧力変動を記述する式は、マイクロホンへの音波の入力成分のみに基づいて得られる。すなわち、この方法によれば、測定チューブ、音波発生源、及びマイクロホンを用いるのみで、吸音材の内部における音波の伝搬定数を容易かつ正確に求めることができる。
【0013】
本発明の第二の態様によれば、吸音材の吸音率の計算方法は、上記第一の態様に係る伝搬定数の取得方法に基づいて得られた前記伝搬定数に基づいて、(2)式により、前記吸音材の音響インピーダンスを算出するステップと、前記音響インピーダンスに基づいて、(3)式により、前記吸音材の吸音率を算出するステップと、を含む。
なお、Zは音響インピーダンス、ρは空気の密度、cは音速、σは吸音材の空隙率、λは伝搬定数、kは前記測定チューブ内の前記吸音材の存在しない領域における音波の波数、L
0は前記吸音材の軸線方向における寸法、αは吸音率をそれぞれ表す。
【数2】
【数3】
【0014】
この方法によれば、上記第一の態様に係る方法によって得られた吸音材内部の伝搬定数に基づいて、(2)式により吸音材の音響インピーダンスを得ることができる。さらに、音響インピーダンスが求められたことで、空気の密度ρ、及び音速cに基づいて、吸音材の吸音率を(3)式のように算出することができる。
【0015】
本発明の第三の態様によれば、吸音率評価装置は、軸線を中心とする管状の測定チューブと、前記測定チューブにおける軸線方向一方側に設けられ、該軸線方向の他方側に向けて音波を照射する音波発生源と、前記測定チューブにおける軸線方向他方側に設けられた吸音材と、前記吸音材に当接するとともに、軸線方向に間隔をあけて配列された複数のマイクロホンと、前記複数のマイクロホンによって検出された音波に基づいて、請求項1に記載された伝搬定数の取得方法を実行することにより、前記吸音材の伝搬定数を算出する演算装置と、を備える。
【0016】
この構成によれば、測定チューブ、音波発生源、及びマイクロホンを用いるのみで、吸音材の内部における音波の伝搬定数を容易かつ正確に求めることができる。
【0017】
本発明の第四の態様によれば、上記吸音率評価装置では、前記演算装置は、上記第二の態様に係る吸音材の吸音率の計
算方法を実行することにより、前記吸音材の吸音率を算出してもよい。
【0018】
この構成によれば、上記第三の態様に係る演算装置によって得られた伝搬定数に基づいて、吸音材の音響インピーダンスが算出される。この音響インピーダンスと、空気の密度ρ、及び音速cに基づいて、吸音材の吸音率を容易に算出することができる。
【0019】
本発明の第五の態様によれば、上記吸音率評価装置では、前記吸音材は、軸線方向に隣接する複数種類の吸音要素を有し、前記マイクロホンは、前記吸音要素ごとに複数個ずつ設けられ、前記演算装置は、前記吸音要素ごとに算出された前記伝搬定数を含む伝達マトリクスを互いに積算することで、前記吸音材としての前記伝搬定数を算出してもよい。
【0020】
この構成によれば、異なる種類の複数の吸音要素を有する吸音材について、容易にその伝搬定数を算出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容易かつ精度高く伝搬定数、吸音率を得ることが可能な伝搬定数の取得方法、吸音率の計算方法、及び吸音率評価装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る吸音率評価装置1は、供試体としての吸音材2の吸音率を測定するための装置である。具体的には
図1に示すように、この吸音率評価装置1は、測定チューブ3と、音波発生源4と、吸音材2と、複数のマイクロホン5と、演算装置6と、を備えている。
【0024】
測定チューブ3は、軸線Acに沿って延びるとともに、当該軸線Acを中心とする円管状をなしている。測定チューブ3の内径寸法は、軸線Ac方向にわたって同一とされている。すなわち、この測定チューブ3は直管状に形成されている。
【0025】
音波発生源4は、測定チューブ3における軸線Ac方向の一端側に設けられることで、当該測定チューブ3内で軸線Ac方向他端側に向けて音波を発生する。音波発生源4と対向するようにして、測定チューブ3内の軸線Ac方向他端側には、吸音材2が設けられている。吸音材2は、測定チューブ3の軸線Ac方向他端側の面全体を埋めるようにして配置されている。
【0026】
この吸音材2には、軸線Ac方向に等間隔をあけて配列された複数(3つ)のマイクロホン5が設けられている。より詳細には、これらのマイクロホン5は、吸音材2に当接するように設けられている。すなわち、吸音材2の内部を通過する音波が、これらマイクロホン5によって捕捉される。
【0027】
演算装置6は、上記のマイクロホン5によって捕捉された音波の波形に基づいて、圧力変動に関する数式を生成した後、後述する演算を行うことで、吸音材2の伝搬定数、及び吸音率を算出する。
【0028】
以下では、演算装置6が実行する計算について説明する。概略として
図3に示すように、演算装置6では、複数のマイクロホン5にそれぞれ入力された波形に基づいて、各マイクロホン同士の間の伝達関数がはじめに算出される(ステップS1)。次いで、伝達関数から吸音材の伝搬定数が算出される(ステップS2)。続いて、演算装置6は音響インピーダンスを算出する(ステップS3)。最後に、この音響インピーダンスに基づいて、吸音率が算出される(ステップS4)。
【0029】
まず、伝達関数を導出する過程について説明する。
図2に示すように、音波発生源4から音波が照射されている場合、測定チューブ3内部では内部に存在する空気の圧力変動が生じる。この圧力変動p(x、t)には、軸線Ac方向一方側から他方側(すなわち、音波発生源4から吸音材2)に向かう入射波p
+(x、t)と、軸線Ac方向他方側から一方側(すなわち、吸音材2から音波発生源4)に向かう反射波p
―(x、t)とが存在する(下記(1)式参照)。これら入射波、及び反射波は、吸音材2の内部では減衰しながら伝播する。なお、上記のxは、測定チューブ3内における軸線Ac方向の位置を表し、tは時間を表す。
【数4】
【0030】
上記の(1)式に対して、時間tについてのフーリエ変換を施すことで、下記(2)式、及び(3)式が得られる。なお、ωは角周波数、iは虚数単位をそれぞれ表す。また、(1)式と(3)式において、右辺の各項は互いに対応している。すなわち、(3)式における右辺第一項は、入射波を表し、右辺第二項は、反射波をそれぞれ表している。
【数5】
【数6】
【0031】
ここで、吸音材2の内部では、音波は減衰しながら伝播するため、音波の波数に相当する上記のλは、一般的に複素数となる。以下では、このλを複素波数と呼ぶが、より一般的にはλを音波の伝搬定数と呼ぶことがある。複素波数λの実数部は、音波の伝播速度に関連し、虚数部は、音波の減衰特性に関連する。また、(3)式におけるa(ω)、b(ω)は、いずれも音波の振幅に相当する。
【0032】
次いで、上記(3)式について二階偏微分を行うことにより、下記の(4)式が得られる。
【数7】
【0033】
さらに、上記(4)式と、下記(5)式との関係から、下記(6)式が得られる。より具体的には、(4)式を(5)式で因数分解することによって、(6)式を得ることができる。ここで、(5)式は、流体の連続の式に基づいて得られるものであって、音波に関する質量保存則を意味している。特性が未知の吸音材2であっても、音波の挙動を考察する上で質量保存則は少なくとも成立すると考えられることから、測定チューブ3内においては(5)式が成立する。
【0034】
この(5)式により、音波による空気の圧力変動と、粒子速度変動との関係が記述される。(6)式を、吸音材2が存在しない領域に適用する場合、理論的にはλ=kと仮定することができる。この場合、(6)式は、音波に関する運動量保存則を表す。
【0035】
なお、u^(x,ω)は、空気を粒子の集合体とみなした上で、その粒子速度変動を時間についてフーリエ変換することで得られる。ρは測定チューブ3内部を満たしている流体(空気)の密度、cは音速、kは吸音材2が存在しない領域を伝播する音波の波数k(=ω/c)を表す。
【数8】
【数9】
【0036】
以上のようにして導出された(6)式と、上述の(3)式とに基づいて、下記(7)式が得られる。すなわち、上記の(5)式で示される関係を導入したことにより、(3)式から逆解法的に(7)式を導くことができる。言い換えれば、マイクロホン5に対する入力を表す(3)式から、吸音材2に関する物性パラメータの測定を何ら行うことなく、(7)式を導くことができる。
【数10】
【0037】
続いて、上記(7)式に基づいて、吸音材2の吸音率を算出・評価する方法について説明する。なお、ここでは、
図2に示すようなモデルを前提とする。具体的には、吸音材2における軸線Ac方向一方側の端面(上流側端面7)と、軸線Ac方向他方側の端面(下流側端面8)とを定義し、これら上流側端面7と下流側端面8との間の距離をL
0とする。
ここで、圧力変動を表す上記(3)式、及び粒子速度変動を表す上記(7)式から、係数a(ω)、b(ω)をそれぞれ消去することで、上流側端面7と下流側端面8とにおける圧力変動、及び粒子速度変動の関係式(伝達マトリクス)が導かれる(下記(8)式)。
【数11】
【0038】
この(8)式に示される関係から、吸音材2の上流側端面7における音響インピーダンスZuが、下記(9)式として表される。
【数12】
【0039】
上記(9)式に示すように、上流側端面7における音響インピーダンスZ
Uを求めるためには、吸音材2の下流側端面8における音響インピーダンスZ
Dと、吸音材2の複素波数λとが必要となる。
ここで、下流側端面8の剛性が十分に高い場合には、その音響インピーダンスZ
Dは無限大となる。したがって、上流側端面7における音響インピーダンスZ
Uは、下記(10)式のように記述される。
【数13】
【0040】
なお、上記の音響インピーダンスZ
Uは、吸音材2を内部から評価した場合の音響インピーダンスを表す。一方で、吸音率を吸音材2の外側から評価する場合には、吸音材2の空隙率σ(吸音材2内部で流体が占める体積比率)を考慮する必要がある。この空隙率σを用いることで、吸音材2の外部から評価した場合の音響インピーダンスZは、下記(11)式のように記述される。
【数14】
つまり、(10)式と(11)式とにより、音響インピーダンスZは下記(12)式のように記述することができる。
【数15】
【0041】
続いて、吸音材2中における音波の複素波数λを求める方法について説明する。ここでは、
図1に示すように、吸音材2に複数(3つ)のマイクロホン5が等間隔をあけて離間するように設けられた吸音率評価装置1が用いられる。なお、以降の説明では、3つのマイクロホン5のうち、中央に位置するマイクロホン5を第一マイクロホン51と呼び、この第一マイクロホン51よりも軸線Ac方向一方側(上流側)に位置するマイクロホン5を第二マイクロホン52と呼ぶ。さらに、第一マイクロホン51よりも軸線Ac方向他方側(下流側)に位置するマイクロホン5を第三マイクロホン53と呼ぶ。
【0042】
これらマイクロホン5は、互いに等間隔L(離間寸法L)ごとに配置されている。また、第一マイクロホン51の位置を基準として、第二マイクロホン52の軸線Ac方向位置を−Lとし、第三マイクロホン53の軸線Ac方向位置を+Lとする。
【0043】
吸音材2内部における圧力変動は、上述の(3)式のように記述されることから、上記3つのマイクロホン5(第一マイクロホン51、第二マイクロホン52、第三マイクロホン53)によって得られる圧力変動p^1、p^2、p^3は、下記(13)式のようにそれぞれ表すことができる。
【数16】
【0044】
さらに、第一マイクロホン51を基準とした場合の第二マイクロホン52の伝達関数をH
12(=p2/p1)と表し、第一マイクロホン51を基準とした場合の第三マイクロホン53の伝達関数をH
13(=p3/p1)と表す。この場合、これら伝達関数H
12とH
13との関係は、下記(14)式のように記述される。
【数17】
【0045】
この(14)式により、複素波数λ(伝搬定数)は、下記(15)式のように求められる。
【数18】
【0046】
以上により、上記(9)式における吸音材2の複素波数λと、吸音材2の下流側端面8における音響インピーダンスZ
Dとが求められた。ここで、物質の音響インピーダンスと吸音率との関係は、一般的に下記(16)式によって与えられる。すなわち、上記の音響インピーダンスZの値に基づいて、吸音材2の吸音率αを求めることができる。
【数19】
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る方法、及び装置によれば、マイクロホン5同士の間における音波の伝達関数を求めることにより、吸音材2の伝搬定数を容易に算出することができる。さらに、測定チューブ3内における音波の伝達関数は、実際に吸音材2の物性等を測定することなく、測定チューブ3内における空気の圧力変動を記述する式に基づいて求めることができる。この圧力変動を記述する式は、マイクロホン5への音波の入力成分のみに基づいて得られる。すなわち、この方法によれば、測定チューブ3、音波発生源4、及びマイクロホン5を用いるのみで、吸音材2の内部における音波の伝搬定数を容易かつ正確に求めることができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る方法によれば、音波の伝達関数同士の関係に基づいて得られた伝搬定数に基づいて、上記(2)式により吸音材2の音響インピーダンスを得ることができる。さらに、音響インピーダンスが求められたことで、空気の密度ρ、及び音速cに基づいて、吸音材2の吸音率を(3)式を用いて容易に算出することができる。
【0049】
一方で、従来提唱されている2マイクロホン法では、吸音材2の厚さによって、得られる測定結果が異なるため、吸音材2の寸法や形状が複数種類である場合、種類ごとに都度測定を行う必要がある。また、この他Biot理論に基づく吸音率の算出では、特に多くの測定パラメータが必要とされる。測定パラメータの一例としては、流体部の実効密度、流体部の実効体積弾性率、固体部のヤング率、固体部のポアソン比、固体部及び流体部における気孔率が挙げられる。これらパラメータのうち、流体部の実効密度と実効体積弾性率は、直接測定することが特に難しいことが知られている。
【0050】
しかしながら、本実施形態に係る方法、及び装置によれば、上記のような複数のパラメータをそれぞれ計測することなく、容易かつ正確に伝搬定数、及び吸音率を得ることができる。
【0051】
[第二実施形態]
続いて、本発明の第二実施形態について、
図4を参照して説明する。同図に示すように、本実施形態に係る吸音率評価装置9では、吸音材10が、軸線Ac方向に隣接する複数の吸音要素11によって形成されている。これら複数の吸音要素11は互いに種類(特性)が異なっている。これら複数の吸音要素11に対して、それぞれ複数(3つずつ)のマイクロホン5が設けられる。
【0052】
このような構成のもと、本実施形態に係る伝搬定数の取得方法、及び吸音率の計算方法では、
図5に示す各ステップが実行される。まず、各吸音要素11における伝達マトリクスがそれぞれ導かれる(ステップS21)。これら各吸音要素11の伝達マトリクスを上記(17)式のように互いに積算する(ステップS22)。次いで、伝達関数から吸音材10の伝搬定数が算出される(ステップS23)。続いて、演算装置12は音響インピーダンスを算出する(ステップS24)。最後に、この音響インピーダンスに基づいて、吸音率が算出される(ステップS25)。
【0053】
より具体的には、演算装置12では、以下のような計算が実行される。まず、上述の第一実施形態において説明した方法により、各吸音要素11に対応する伝達マトリクス(上記(8)式に相当)が導かれる。その後、演算装置12では、これら複数の吸音要素11ごとにおける伝達マトリクスの積算が行われる(下記(17)式)。
【数20】
【0054】
すなわち、各吸音要素11における伝達マトリクスを個別に評価し、これらの伝達マトリクスを互いに積算した後、上記の(15)式に相当する演算を行うことで、吸音材10全体としての伝搬定数を得ることができる。この伝搬定数に基づいて、上記(16)式により、吸音材10全体としての吸音率が導かれる。
【0055】
この構成によれば、異なる種類の複数の吸音要素11を有する吸音材10についても、容易にその伝搬定数を算出することができる。また、この伝搬定数に基づいて、吸音材10全体としての吸音率を容易かつ正確に算出することができる。
【0056】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいては、上記の各構成に種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の各実施形態では、1つの吸音材(又は1つの吸音要素)に対して、3つのマイクロホン5を設けた例について説明した。しかしながら、マイクロホン5の数は上記に限定されず、4つ、又は5つ以上であってもよい。マイクロホン5の数を増やすほど、取得される伝搬定数、及びこれに基づく吸音率の値の精度を高めることができる。
【解決手段】伝搬定数の取得方法は、軸線Acに沿って延びる測定チューブ3内の一端側に配置された音波発生源4から、他端側に配置された吸音材2に対して音波を照射し、吸音材2に当接するように軸線Ac方向に互いに離間して配置された複数のマイクロホン5を用いて、吸音材2の伝搬定数を取得する伝搬定数の取得方法であって、複数のマイクロホン5同士の間における音波の伝達関数を算出するステップと、伝達関数、及び複数のマイクロホン5同士の離間寸法の値に基づいて、(1)式により、吸音材2の伝搬定数を算出するステップと、を含む。