特許第5973132号(P5973132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973132生分解性ポリマーとアクリル系共重合体とのブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973132
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】生分解性ポリマーとアクリル系共重合体とのブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20160809BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20160809BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20160809BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C08L101/00ZBP
   C08L33/06
   C08L67/04
   C08L101/16
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-528010(P2010-528010)
(86)(22)【出願日】2008年4月28日
(65)【公表番号】特表2010-540750(P2010-540750A)
(43)【公表日】2010年12月24日
(86)【国際出願番号】US2008061712
(87)【国際公開番号】WO2009045564
(87)【国際公開日】20090409
【審査請求日】2011年4月27日
【審判番号】不服2014-21615(P2014-21615/J1)
【審判請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】60/976,542
(32)【優先日】2007年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・シガン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・アール・デイビス
【合議体】
【審判長】 菊地 則義
【審判官】 小柳 健悟
【審判官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/089451(WO,A2)
【文献】 特開2007−119729(JP,A)
【文献】 特開2007−90877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)10〜100質量%の機能低下しており、未乾燥で、非未使用で、リサイクルされ、粉砕再生された生分解性ポリマーを含む、30〜99.9質量%の1種以上の生分解性ポリマーであって、前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、又はこれらの混合物であり、前記機能低下した生分解性ポリマーは、以前溶融状態に加熱されている生分解性ポリマー、
b)0〜69.9質量%の1種以上の生体高分子であって、デンプン、セルロース、多糖、脂肪族又は芳香族ポリエステル、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される該生体高分子、及び
c)0.1〜15質量%の1種以上のアクリル系共重合体
の均一なブレンドを含む、向上された特性を持つ生分解性ポリマー組成物であり、
前記向上された特性は、未使用の生分解性ポリマーからなる生分解組成物と比べて、溶融強度において少なくとも100%以上上昇するという改善された特性である該組成物。
【請求項2】
前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、又はポリ乳酸とポリヒドロキシ酪酸との混合物であり、ポリ乳酸の質量を基準として、10質量%までの低レベルの耐衝撃性改良剤をさらに含む、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記耐衝撃性改良剤が、少なくとも2種の異なる耐衝撃性改良剤を含む、請求項2に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体の重量平均分子量が10,000〜3,000,000g/molである、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項5】
アクリル系共重合体が、2種以上の共重合体のブレンドである、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が透明である、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記生分解性ポリマーが20〜80質量%の、以前に加熱されて機能低下した生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、又はポリ乳酸とポリヒドロキシ酪酸との混合物であり、前記ポリ乳酸が加熱により溶融強度が低下している、請求項1に記載の生分解性ポリマー組成物。
【請求項9】
生分解性ポリマー組成物の特性を向上させるための方法であって、前記方法は、以下を混合して均一なブレンドを形成するステップを含み:
a)10〜100質量%の、機能低下しており、未乾燥で、非未使用で、リサイクルされ、粉砕再生され、乾燥手順にかけられたことのない生分解性ポリマーを含む、30〜99.9質量%の1種以上の生分解性ポリマーであって、前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、又はこれらの混合物である生分解性ポリマー、
b)0〜69.9質量%の1種以上の生体高分子であって、デンプン、セルロース、多糖、脂肪族又は芳香族ポリエステル、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される該生体高分子、及び
c)0.1〜15質量%の1種以上のアクリル系共重合体
前記向上された特性は、未使用の生分解性ポリマーからなる生分解組成物と比べて、溶融強度において少なくとも100%以上上昇するという改善された特性である該方法。
【請求項10】
前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、又はポリ乳酸とポリヒドロキシ酪酸との混合物であり、ポリ乳酸の質量を基準として、10質量%までの低レベルの耐衝撃性改良剤をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記耐衝撃性改良剤が、少なくとも2種の異なる耐衝撃性改良剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクリル系共重合体の重量平均分子量が10,000〜3,000,000g/molである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
アクリル系共重合体が2種以上の共重合体のブレンドである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が透明である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記生分解性ポリマーが20〜80質量%の未乾燥で、非未使用で、以前に加熱された生分解性ポリマーを含み、前記生分解性ポリマーは、乾燥手順にかけられたことのない、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記生分解性ポリマーがポリ乳酸、又はポリ乳酸とポリヒドロキシ酪酸との混合物であり、前記ポリ乳酸が加熱により溶融強度が低下している、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種以上の生分解性ポリマーと、この生分解性ポリマーの特性を改善することを目的とした1種以上のアクリル系共重合体とのブレンドに関する。この生分解性ポリマーは、加工のための理想的な状態に満たない、少なくとも10重量%の生体高分子を含む。「機能低下した(compromised)」生体高分子は、未乾燥生体高分子であってもよく、熱履歴を経てもよく(「再加工」されても、「粉砕再生」されても「リサイクル」されてもよく)、又は両方であってもよい。このアクリル系共重合体は、全ブレンドの重量を基準として、0.1〜15重量%のレベルでブレンド中に存在する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ポリマーは、包装材料及びボトリング材料において等、典型的な用途において普及している多くのプラスチックに代わる環境にやさしい代替品として用途を見いだしつつある。
【0003】
多くの生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸の問題点の1つは、ポリマーの不十分な溶融強度にある。ポリ乳酸の不十分な溶融強度は、押出成形、熱成形、ブロー成形及び発泡成形等の、その後の溶融加工の困難につながる。アクリル系共重合体は、米国特許出願第11/053364号明細書において等、PVC及びポリスチレンブレンドで加工助剤として使用されてきたが、溶融強度の向上を達成するためにポリ乳酸又は生分解性ポリマーで類似の加工助剤として使用することは明らかではない。例えば、ポリカーボネートで、アクリル系共重合体加工助剤を使用しても溶融強度の有意な向上は全く発表されていない。
【0004】
溶融強度の問題は、熱履歴を有する(粉砕再生又はリサイクルされた材料等の、以前に溶融加工されたことがある)材料で顕在化する。ポリマー鎖は熱履歴を保持し、多くの場合その特性は熱加工後に変化する。リサイクル又は再生材料は一般に未使用材料より低い溶融強度を有し、それは、より低い分子量に起因し、ポリマー分子相互作用の変化を生じ得る。再生ポリ乳酸の不十分な溶融強度は、押出成形、熱成形、ブロー成形及び発泡成形等の、その後の溶融加工の困難性につながる。
【0005】
リサイクルPLAの幾つかの用途は当該技術分野において公知である。例えば、特開2001−253964号公報及び特開2001−252968号公報には、発泡材料の製造を目的としたリサイクルPLAと未使用樹脂とのブレンディングが記載されているが、どちらにおいてもアクリル系添加物の使用については全く言及されていない。
【0006】
同様に、乾燥されなかったPLAは、加工中に加水分解及び分子量の低下を引き起こすであろう。これにより、材料の溶融強度は低下することになる。材料の乾燥は、現在は加工中にPLA中の水に関連する問題を防ぐために行われているが、高価で時間のかかる工程である。
【0007】
米国仮特許出願第60/860375号明細書及び米国特許出願公開第2007−0179218号明細書には、ポリ乳酸等の乾燥未使用生分解性ポリマーへの少量のある種のアクリル系共重合体の添加がこのポリマーの溶融強度を大きく増加させ得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/860375号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007−0179218号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
意外にも、機能低下したPLAにおいて、溶融強度、溶融伸展性、溶融弾性の向上及びドローダウン比の改善が、未使用材料で見いだされるものよりさらに大きい程度まで達成できることが見いだされた。機能低下したPLAの特性を改善するのみならず、未使用材料と似ているか又はそれよりさらに良好な特性を与える低レベルのアクリル系添加物の能力は予期されなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a)10〜100重量%の再生生分解性ポリマー、又は10〜100重量%の未乾燥生分解性ポリマー、又は両方、又はこれらの混合物を含む30〜99.9重量%の1種以上の生分解性ポリマー、
b)0〜69.9重量%の1種以上の生体高分子、及び
c)0.1〜15重量%の1種以上のアクリル系共重合体
を含む生分解性ポリマー組成物に関する。
本発明はまた、この生分解性ポリマー組成物でできた製品に関する。
一態様において、本発明は以下の発明を包含する。
(発明1)
a)10〜100重量%の再生生分解性ポリマーを含む、30〜99.9重量%の1種以上の生分解性ポリマー、
b)0〜69.9重量%の1種以上の生体高分子、及び
c)0.1〜15重量%の1種以上のアクリル系共重合体
を含む生分解性ポリマー組成物。
(発明2)
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、又はこれらの混合物である、発明1に記載の生分解性ポリマー。
(発明3)
ポリ乳酸の重量を基準として、10重量%までの低レベルの耐衝撃性改良剤をさらに含む、発明1に記載の生分解性組成物。
(発明4)
前記耐衝撃性改良剤が、少なくとも2種の異なる耐衝撃性改良剤を含む、発明3に記載の生分解性組成物。
(発明5)
前記ポリ乳酸の重量平均分子量が10000〜3000000g/molである、発明2に記載の生分解性組成物。
(発明6)
アクリル系共重合体が、2種以上の共重合体のブレンドである、発明1に記載の生分解性組成物。
(発明7)
前記組成物が透明である、発明1に記載の生分解性組成物。
(発明8)
前記生体高分子が、デンプン、セルロース、多糖、脂肪族又は芳香族ポリエステル、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される1種以上のポリマーを含む、発明1に記載の生分解性組成物。
(発明9)
前記生分解性ポリマーが20〜80重量%の再生生分解性ポリマーを含む、発明1に記載の生分解性ポリマー。
(発明10)
前記生分解性ポリマー組成物が1〜5重量%の前記アクリル系共重合体を含む、発明1に記載の生分解性ポリマー。
(発明11)
a)10〜100重量%の未乾燥生分解性ポリマーを含む、30〜99.9重量%の1種以上の生分解性ポリマー、
b)0〜69.9重量%の1種以上の生体高分子、及び
c)0.1〜15重量%の1種以上のアクリル系共重合体
を含む生分解性ポリマー組成物。
(発明12)
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、又はこれらの混合物である、発明10に記載の生分解性ポリマー。
(発明13)
ポリ乳酸の重量を基準として、10重量%までの低レベルの耐衝撃性改良剤をさらに含む、発明10に記載の生分解性組成物。
(発明14)
前記耐衝撃性改良剤が、少なくとも2種の異なる耐衝撃性改良剤を含む、発明12に記載の生分解性組成物。
(発明15)
前記ポリ乳酸の重量平均分子量が10000〜3000000g/molである、発明12に記載の生分解性ポリマー。
(発明16)
アクリル系共重合体が2種以上の共重合体のブレンドである、発明10に記載の生分解性ポリマー。
(発明17)
前記組成物が透明である、発明10に記載の生分解性組成物。
(発明18)
前記生体高分子が、デンプン、セルロース、多糖、脂肪族又は芳香族ポリエステル、及びポリカプロラクトンからなる群から選択される1種以上のポリマーを含む、発明10に記載の生分解性組成物。
(発明19)
前記生分解性ポリマーが20〜80重量%の再生生分解性ポリマーを含む、発明10に記載の生分解性ポリマー。
(発明20)
前記生分解性ポリマー組成物が1〜5重量%の前記アクリル系共重合体を含む、発明10に記載の生分解性ポリマー。
(発明21)
a)10〜100重量%の再生及び未乾燥生分解性ポリマーを含む、30〜99.9重量%の1種以上の生分解性ポリマー、
b)0〜69.9重量%の1種以上の生体高分子、及び
c)0.1〜15重量%の1種以上のアクリル系共重合体
を含む生分解性ポリマー組成物。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】異なるレベルの粉砕再生材料及び異なるレベルのアクリル系添加物を有する乾燥ポリマー組成物についての溶融強度のプロットである。
図2】乾燥及び未乾燥ポリマー組成物並びに異なるレベルのアクリル系添加物についての溶融強度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、1種以上の生分解性ポリマーと、溶融強度等の改善された特性を有する生分解性ポリマー組成物を生み出すための1種以上のアクリル系共重合体とのブレンドに関する。生分解性ポリマーは、未乾燥、再生加工された、又は両方である少なくとも10重量%の1種以上の生体高分子を含む。
【0013】
本明細書において用いられる、用語「機能低下した」生分解性ポリマーは、加工するための理想的な状態に満たない生分解性生体高分子を記載するために用いられる。「機能低下した」生体高分子は、未乾燥生体高分子であってもよく、熱処理されたことがあり熱履歴を経てもよく(「再生」されても、「粉砕再生」されても又は「リサイクル」されてもよく)、又は両方若しくは両方の混合であってもよい非未使用材料であってもよい。機能低下した熱処理生分解性ポリマーは、以前に溶融状態に加熱されたことがあるものである。この加熱は、これらに限定されるものではないが、押出成形、射出形成、熱成形、発泡又はカレンダー成形、及びブロー成形等を含むプロセスによって起こる可能性がある。
【0014】
未乾燥生分解性ポリマーは、溶融加工前にポリマー樹脂の含水率を低下させるために、これらに限定されるものではないが、加熱、循環空気又は真空での加熱等の普通の乾燥手順にかけられたことがないポリマー樹脂である。乾燥は、材料の含水率を下げるために行われる。この余分なステップは追加の時間を要し、エネルギーを大量消費する可能性がある。従って本発明の組成物は、未乾燥生分解性ポリマーを使用することができるので、製造時間及び費用を節約する。
【0015】
本発明の生分解性ポリマー組成物は、30〜99.9重量%、好ましくは50〜99.5重量%の生体高分子を含む。全生分解性ポリマーは、10〜100重量%の機能低下した生分解性ポリマー、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜75重量%の機能低下した生分解性ポリマーを含む。本発明の生分解性ポリマーは、単一種の生分解性ポリマーであっても、生分解性ポリマーの混合物であってもよい。本発明に有用な生分解性ポリマーとして、これらに限定されるものではないが、ポリ乳酸及びポリヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0016】
好ましいポリ乳酸及びポリヒドロキシ酪酸は、標準的(normal)又は低分子量であってもよい。
【0017】
生分解性ポリマーに加えて、これらに限定されるものではないが、デンプン、セルロース、多糖等の他の生体高分子が生分解性ポリマーとブレンドされてもよい。これらに限定されるものではないが、ポリカプロラクタム、ポリアミド11、及び脂肪族又は芳香族ポリエステル等のさらなる生体高分子も存在してもよい。これらの他の生体高分子は、組成物中に0〜69.9重量%、より好ましくは0〜50重量%存在してもよい。
【0018】
1種以上のアクリル系共重合体が、生分解性ポリマー用の加工助剤として使用される。アクリル系共重合体は、0.1〜15重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%で生分解性ポリマー組成物中に存在する。本明細書において用いられる「共重合体」とは、2種以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味し、三元共重合体、及び3種以上の異なるモノマーを有するポリマーが挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、グラジエント又は他の構造のものとし得る。本明細書において用いられる「アクリル系共重合体」とは、アクリル系及び/又はメタクリル系モノマー単位を60%以上有する共重合体を指す。本明細書において用いられる「(メタ)アクリレート」には、アクリレート、メタクリレート、又はアクリレート及びメタクリレートの両方の混合物が含まれる。有用なアクリル系モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(phnoxy)エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−メトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましいアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び2−エチル−ヘキシル−アクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレートが挙げられる。
【0019】
アクリル系モノマー単位に加えて、本発明のアクリル系共重合体はまた、アクリル系モノマーと重合可能な40%までの他のエチレン性不飽和モノマーを含むことができ、これらに限定されるものではないが、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルスルホン、ビニルスルフィド、及びビニルスルホキシドが挙げられる。一実施形態においては、共重合体はスチレンを含む。
【0020】
本発明の共重合体の重量平均分子量は一般に10,000〜3,000,000g/molの範囲である。
【0021】
別の実施形態においては、アクリル系共重合体は、全体で合計して100%になる、10〜75重量%のメチルメタクリレート単位、10〜50重量%のブチルアクリレート単位、0〜50重量%のブチルメタクリレート単位、及び0〜80重量%のスチレンを含む。
【0022】
本発明の共重合体は、通常の重合法によって製造することができ、その方法には、これらに限定されるものではないが、塊状、バルク、溶液、懸濁、乳化及び逆相乳化重合が含まれる。
【0023】
本発明の生分解性ポリマー組成物は、その10〜100重量%が機能低下してしまった、30〜99.9重量%の生分解性ポリマー、0〜69.9重量%の他の生体高分子及び0.1〜15重量%のアクリル系共重合体を含む。
【0024】
合計して100%までの生分解性ポリマー、生体高分子及びアクリル系共重合体に加えて、本発明の組成物は、様々な添加剤もさらに含んでいてもよく、添加剤としては、これらに限定されるものではないが、熱安定剤、内部及び外部潤滑剤、耐衝撃性改良剤、加工助剤、フィラー、及び顔料が挙げられる。特にポリ乳酸組成物には、少なくとも1つの低Tg及び1つの高Tgブロック又は層を有するコア/シェル型共重合体かブロック共重合体かのいずれかである耐衝撃性改良剤が有用である。ある実施形態においては、耐衝撃性改良剤は、エチレン−プロピレンベースのアクリレートとの共重合体、又はコア−シェル型ポリマーであり、1,3−ジエン(若しくはビニル芳香族化合物との共重合体)又はアルキル基が4個以上の炭素を有するアルキルアクリレート等のゴム状コアを有し、シェルがこのコア上にグラフトされており、かつビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)、アルキルメタクリレート(アルキル基が1〜4個の炭素を有する)、アルキルアクリレート(アルキル基が1〜4個の炭素を有する)、アクリロニトリル等のモノマーから構成されるポリマーである。
【0025】
この成分は、加工前に均一なブレンドに混合されてもよいし、あるいは、溶融混練作業等の、1つ以上の加工ステップ中で混合されてもよい。1種以上の構成成分は、プロセス中に加えられる他の成分と、前もってブレンドすることができる。これは、例えば、単軸押出機、二軸押出機、Buss混練機、二本ロールミル、撹拌翼混練機によって実施してもよい。アクリル系共重合体を生分解性ポリマー又は生分解性ポリマーブレンドポリマー中に均一に分散させる任意の混合作業が許容される。ブレンドの形成は一段階形成に限られない。担体ポリマー1〜85%中にアクリル系共重合体15〜99%を含むマスターバッチを形成した後、生分解性ポリマーを加えることによって最終ブレンドを得ることも想定される。この担体ポリマーは、これらに限定されるものではないが、ポリ乳酸、機能低下したポリ乳酸、アクリル系−メタクリル系共重合体、及びメタクリル系単独重合体であってもよい。
【0026】
生分解性ポリマー組成物は、最終製品、シート若しくは異形材に直接押し出されてもよいし、又は組成物は、ペレット化されるストランドに押し出されてもよい。形成されたペレットは次に、最終製品に成形する前に貯蔵し、輸送することができる。この組成物から形成されたシートは、最終製品に成形することができる。
【0027】
一実施形態においては、この生分解性ポリマーは、生分解性ポリマーで現在行われているような、加工前の乾燥を必要としない。未使用ポリマー、100%再生ポリマー、又はこれらのいずれかのどれかである未乾燥生分解性ポリマーが、乾燥未使用ポリマーの溶融強度以上であることさえできる向上した溶融強度を達成するために、アクリル系共重合体と組み合わせてもよい。未乾燥生分解性ポリマーの使用は、ポリマーが加工前に乾燥されることを必要とする現在の技術よりも時間及びお金を節約する。
【0028】
一実施形態においては、未乾燥未使用又は未使用/粉砕再生PLAに加えられた4%のアクリル系ポリマーは、4%の同じアクリル系ポリマーが未使用PLAに加えられたときよりもさらに大きい溶融強度を意外にも生み出すことが分かった。
【0029】
機能低下した生分解性ポリマーへのアクリル系共重合体添加物の添加は、溶融強度の増加を生み出すのみならず、溶融伸展性、溶融弾性及びドローダウン比をも改善する。
【0030】
本発明の組成物は、深絞り熱成形、ブロー成形、及び発泡のための溶融強度の向上;熱成形におけるドローダウンの改善;引張強度及び曲げ強度の向上;並びに耐衝撃性の改善等の、追加の利点を提供するかもしれない。
【0031】
本発明の組成物は任意の周知の方法を用いて加工することができ、その方法としては、これらに限定されるものではないが、射出成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、発泡、及び熱成形が挙げられる。生分解性組成物を用いて作製することができる有用な製品としては、これらに限定されるものではないが、包装材、フィルム、及びボトルが挙げられる。当業者は、本明細書における開示内容及び実施例に基づき、他の様々な有用な製品及びこれらの製品を形成するための方法を推測できるであろう。
【実施例】
【0032】
「未使用PLA」とは、いかなる熱履歴も以前に経験しなかった(乾燥された又は乾燥されていない)樹脂ペレット、すなわち、製造業者から受け取ったままの樹脂を意味する。「未加工樹脂」は、溶融加工されなかった樹脂である。「乾燥されたことがない」樹脂は、ある乾燥工程にかけられたことがない(未使用か粉砕再生かのどちらかの)樹脂である。「乾燥」樹脂は、ある乾燥工程にかけられたことがある(未使用か粉砕再生かのどちらかの)樹脂である。
【0033】
実施例1
0(比較)、2、及び4重量%のアクリル系−メタクリル系共重合体(添加物)を含む95〜99%ポリ乳酸のブレンドを、二軸押出機を用いた溶融押出によって形成した。使用したポリ乳酸は、未使用PLA樹脂と0%(比較)〜75%再生材料との混合物であった。溶融物が確実に均質になるように、押出時の加工温度及び溶融温度をポリ乳酸の融点を超える(>152℃)ように維持した。溶融強度は、商品名レオテンス(rheotens)溶融強度測定装置に結び付けた毛管レオメータによって評価した。ブレンドを一定速度で毛管を通して押し出し、レオテンスを用いて加速した。押出物を加速するために必要とされる力と、加速レオテンス装置の速度(プルオフ速度)とをストランド破断まで記録した。これらのデータを図1にまとめる。
【0034】
予期されるように、多量の粉砕再生材料の添加は、生成ブレンドの溶融強度の低下をもたらし、アクリル系−メタクリル系共重合体の添加は、ブレンド全ての溶融強度を増加させる。これらのデータについて予測できなかった結果を下記に示す。
1)溶融強度の向上の大きさは、ブレンド中の再生材料の量が増加するにつれて増加する。そのため、4%のアクリル系−メタクリル系共重合体添加物の場合、200mm/sのプルオフ速度で、25%再生材料を含むサンプルでは溶融強度が100%向上し、50%再生材料を含むサンプルでは溶融強度が130%向上し、75%再生材料を含むサンプルでは溶融強度が230%向上した。
2)4%アクリル系−メタクリル系共重合体添加物のサンプルについての溶融強度の絶対値は、未使用ポリ乳酸のみを含むサンプルについてよりも再生材料を含むサンプル全てについて一様に、実質的に高い。そのため、4%のアクリル系−メタクリル系共重合体添加物の場合、200mm/sのプルオフ速度で、未使用PLAのみを含むサンプルの溶融強度は0.12Nであったが、再生材料を含むサンプルの溶融強度は0.15N〜0.16Nであった。
【0035】
実施例2
別個の実験において、0(比較)及び4重量%のアクリル系−メタクリル系共重合体(添加物)を含む95〜99%ポリ乳酸のブレンドを、二軸押出機を用いた溶融押出によって形成した。全サンプルについて、使用したポリ乳酸は、未使用PLA樹脂のみを含んだ。サンプルの幾つかは、加工前に24時間周囲温度及び湿度に曝された樹脂を使用した。他のサンプルは、押出の直前に循環空気乾燥剤ドライヤー中70℃で最低4時間乾燥させた。溶融物が確実に均質になるように、押出時の加工温度及び溶融温度をポリ乳酸の融点を超える(>152℃)ように維持した。溶融強度は、レオテンス溶融強度測定装置に結び付けた毛管レオメータによって評価した。ブレンドを一定速度で毛管を通して押し出し、レオテンスを用いて加速した。押出物を加速するために必要とされる力と、加速レオテンス装置の速度(プルオフ速度)とをストランド破断まで記録した。これらのデータを図2にまとめる。
【0036】
ポリ乳酸をはじめとする、多くのポリエステルは、湿気の存在下に溶融加工されるときに部分加水分解することが知られている。これらのポリエステルは、いかなる加水分解又はポリマー分解も最小限にするために押出前に典型的には乾燥させられる。この実験において、未加工PLAと比較して、乾燥PLAが溶融加工されるときに溶融強度の幾らかの低下が起こることが示されるが;それは、乾燥されなかったPLAの溶融加工時に起こる溶融強度の低下より小さい。予期されなかったことは、アクリル系−メタクリル系共重合体添加物の添加が、溶融強度のこれらの低下を相殺するために使用でき、乾燥工程なしで済ますことを効果的に可能にするという結果である。
図1
図2