【実施例】
【0054】
製造例1〜5:赤外線遮断粒子の表面に紫外線遮断粒子がコーティングされた複合粉体の製造
粒径が1μmの赤外線遮断粉体MP−100(TAYCA社製品)と幅8〜20nm、長さ30〜100nmの紫外線遮断粉体MPT−136(ISHIHARA SANGYO社製品)を用いて、その重量比を下記表1のように変化させて、
図10のような圧縮、剪断式の乾式粉体複合化方法である機械的コーティングシステム(メカノフュージョンシステム)内で複合粉体を製造した。ここで、複合粉体を製造する前に紫外線遮断粉体MPT−136は、ピンミルを用いて凝集状態を壊しかつ粉砕する工程を経た後に使用した。製造例1〜3は、MP−100をそのまま用いてそれにMPT−136をコーティングし、製造例4と5はそれぞれジメチコノール及びジメチコン/メチコンコポリマーで表面処理したMP−100を用いてそれにMPT−136をコーティングした。機械的コーティングシステムの工程条件として、回転容器の回転速度は8000rpm範囲に設定し、コーティング工程は15分間遂行した。また、本発明の複合粉体の赤外線及び紫外線遮断に対する相乗効果と比較するために赤外線遮断粉体としてMP−100(TAYCA社製品)と紫外線遮断粉体としてMPT−136(ISHIHARA SANGYO社製品)を重量比70:30及び50:50にした後ヘンシェルミキサーで800rpm、5分間単純に混合して混合粉体(比較例1及び比較例2)を製造した。
【0055】
製造例1〜5による複合粉体及び比較例1〜2による混合粉体を下記の表1に整理する。
【0056】
【表1】
【0057】
製造例6:複合粉体を用いたパウダー化粧料組成物の製造
前記製造例1の複合粉体をヘンシェルミキサーで均一に撹拌して液状バインダーを微細スプレーで均一に噴霧した後、アトマイザーを用いて粉砕する方法でパウダーファウンデーション化粧料組成物を製造した(製造例6)。また、前記比較例1の混合粉体を用いて製造例6と同一な方法でパウダーファウンデーション化粧料組成物を製造した(比較例3)。また、紫外線遮断粉体(MPT−136)のみを用いて製造例6と同一な方法でパウダーファウンデーション化粧料組成物を製造した(比較例4)。そして、赤外線遮断粉体(MP−100)のみを用いて製造例6と同一な方法でパウダーファウンデーション化粧料組成物を製造した(比較例5)。
【0058】
製造例6及び比較例3〜5によるパウダーファウンデーション化粧料組成物の組成及び重量%を下記の表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
製造例7:複合粉体を用いた油中水型ソンスクリン化粧料組成物の製造
前記製造例1の複合粉体を15重量%含みながら表3に示す組成比を有するようにホモゲナイザー5,000rpmでオイル相に複合粉体を添加して20分間分散後、ホモゲナイザー5,000rpmのオイル相に水相をゆっくり投入しながら10分間乳化させて製造例7の均一なソンスクリン化粧料を得た。また、紫外線遮断粉体であるMPT−136を15重量%含みながら製造例7と同一な方法で均一なソンスクリン化粧料を得た(比較例6)。
【0061】
製造例7及び比較例6による油中水型ソンスクリン化粧料組成物の組成及び重量%を下記の表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
製造例8:複合粉体を用いた分散物の製造
前記製造例1の複合粉体を表4に示す重量%でAGI MIXERを用いて300RPM、20分間分散して分散物を得た。また、比較例7は顔料級二酸化チタンのC47−056(ソンケミカル社製品)を、比較例8はMTP−136を、比較例9はMP−100を、比較例10は比較例1の混合粉体を用いて製造例8と同一な方法で分散させて分散物を製造した。
【0064】
製造例8及び比較例7〜10による分散物の組成及び重量%を下記の表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
実験例1.複合粉体形成の確認(SEM写真)
赤外線遮断粒子の表面に紫外線遮断粒子をコーティングした本発明による複合粉体が、実際に正しく製造されたかどうかを確認するためにSEM写真を撮影した。
【0067】
図2は、赤外線遮断粉体であるMP−100単独SEM写真で、
図3は紫外線遮断粉体であるMPT−136の単独SEM写真である。
【0068】
図4は製造例1によって製造された複合粉体のSEM写真で、
図5と6は製造例4と5によって製造された複合粉体のSEM写真である。
【0069】
図5と6から分かるように、表面処理された赤外線遮断粒子の表面に紫外線遮断粒子がよくコーティングされていることが分かる。また、
図4から分かるように、表面処理されていない赤外線遮断粒子の表面に紫外線遮断粒子がよくコーティングされていることが分かる。したがって、SEM写真の結果から赤外線遮断粒子の表面処理の有無にかかわらず、赤外線遮断粒子と紫外線遮断粒子の複合粉体の形成が可能であることが分かった。
【0070】
また、
図7はMP−100の単独SEM写真(左側写真)とMP−100の表面にMPT−136がコーティングされた製造例1による複合粉体のSEM写真(右側写真)を同一な倍率で比較したSEM写真であり、
図7から本発明の複合粉体が明確に形成されることが分かる。
【0071】
実験例2.複合粉体のコーティング強度実験
製造例1によって製造された複合粉体のコーティング強度を調べるために、IKA Mixer(モデル:IKA−WERKE M20)を用いて30秒(15秒2回)の間粉砕後、SEMで表面状態を観察した。その結果を、
図8に示す。
図8から分かるように、粉砕前の表面(左側写真)と粉砕後の表面(右側写真)の間に変化がほとんどなかった。したがって、粉砕前の紫外線遮断粉体のコーティング状態をそのまま維持していることが分かる。また、前記製造例1によって製造された複合粉体のコーティング状態を調べるためにインビトロ試験方法のSPF290アナライザー(Optometrics USA,Inc)を用いて粉砕前と粉砕後の複合粉体の紫外線遮断効果を比較した。具体的には、粉砕前と粉砕後の複合粉体をブチレングリコールに1:1の割合で混合して均一に分散させた後、サージカルテープ(3M社/Transporeテープ)に適正量(2mg/cm
3)を均等に延ばして塗って15〜20分間乾燥させる。次に、SPF(sun protection factor)とPA(Protection Factor of UVA)の紫外線遮断効果を測定した。ここで、それぞれの試料は5回測定して、その平均値をSPF数値とPA数値で表5に示した。下記の表5から分かるように、複合粉体の粉砕前と粉砕後のSPF数値及びPA数値はほとんど類似の結果を示した。この結果からも複合粉体は粉砕後にも粉砕前と類似なコーティング状態を有していることが分かる。
【0072】
【表5】
【0073】
実験例3.複合粉体の紫外線遮断効果(SPF数値とPA数値)実験
インビトロ試験方法のSPF290アナライザー(Optometrics USA,Inc)を用いて赤外線遮断粉体MP−100と紫外線遮断粉体MPT−136のそれぞれ単独粉体、製造例1と3によって製造された複合粉体、及び比較例1と2によって製造された混合粉体の紫外線遮断効果を比較した。具体的には、それぞれのMP−100とMPT−136単独粉体、複合粉体及び混合粉体試料をブチレングリコールに1:1の割合で混合して均一に分散させた後、サージカルテープ(3M社/Transporeテープ)に適正量(2mg/cm
3)を均等に延ばして塗って15〜20分間乾燥させる。次にSPF(sun protection factor)とPA(Protection Factor of UVA)の紫外線遮断効果を測定した。ここで、それぞれの試料は5回測定して、その平均値をSPF数値とPA数値で示した。
【0074】
その結果は、下記の表6に示した。下記表6から分かるように、MP−100単独粉体及びMPT−136単独粉体と比較して比較例1と比較例2、及び製造例1と製造例3のすべてが、SPF数値及びPA数値を上昇させることが分かる。したがって、赤外線遮断粉体と紫外線遮断粉体の単純混合でも紫外線遮断効果が向上することが分かる。
【0075】
また、複合粉体である製造例1は混合粉体である比較例1と比較して、SPF数値では約18%上昇、PA数値では約20%上昇したことが分かり、製造例3は比較例2と比較して、SPF数値では約20%上昇し、PA数値では約32%上昇したことが分かる。したがって、単純混合よりは複合粉体がさらに高い紫外線遮断効果向上効果を示すことが分かる。
【0076】
また、比較例2よりは比較例1でSPF数値とPA数値が高い値を示し、製造例3よりは製造例1でSPF数値とPA数値が高い値を示した。したがって、赤外線遮断粉体と紫外線遮断粉体の重量比として、70:30がSPF値とPA値を向上させることが分かる。
【0077】
【表6】
【0078】
実験例4.化粧料組成物の紫外線遮断効果実験
前記製造例6によって製造されたパウダーファウンデーション化粧料組成物、及び比較例3によって製造された化粧料組成物の紫外線遮断効果を実験例3の方法と同一な方法で測定し、その結果を下記の表7に示す。下記の表7から分かるように、製造例6は比較例3に比較して、SPF数値では約32%上昇し。PA数値では約36%上昇したことが分かる。したがって、複合粉体のSPF数値とPA数値の紫外線遮断の向上効果は、化粧料組成物でも同一なSPF数値とPA数値の紫外線遮断向上効果を示すことが分かる。
【0079】
【表7】
【0080】
実験例5.製造例6と比較例3〜5のパウダーファウンデーションの官能評価
前記製造例6と比較例3〜5で作られたパウダーファウンデーションをそれぞれ皮膚に塗った場合の使用感(官能評価試験結果)に対して、女性20人の志願者に使用時官能評価を実施して、均一な化粧膜、化粧膜が白く浮かない
、適当なつや感、良好な延展性、良好な付着性、見掛けの色と塗布色の色差、及びソフトフォーカス効果に対して下記に示した基準によって評価を行った。その結果の平均値を表8に示す。
【0081】
【表8】
【0082】
◎:最適な使用感または感触が得られる
○:良好な使用感または感触が得られる
△:若干の違和感がある
×:明確な違和感がある
【0083】
表8からも明らかなように、本発明に関する複合粉体を配合したパウダーファウンデーション(製造例6)は、前記基本的特性、すなわち均一な化粧膜、白く浮かない化粧膜、適当なつや感、良好な延展性、良好な付着性、見掛けの色と塗布色の色差、及びソフトフォーカス効果等において特別に優秀であることが分かり、混合粉体の比較例3と比較してすべての評価項目で複合粉体が優秀であることが分かった。
【0084】
さらに付け加えると、本発明による赤外線遮断粒子と紫外線遮断粒子の複合粉体は、単純な混合粉体では得ることができない均一な化粧膜、白く浮かない化粧膜、適当なつや感、良好な延展性、良好な付着性、見掛けの色と塗布色の色差、及びソフトフォーカス効果を得ることができ、これは、混合粉体では得ることができない紫外線遮断粉体MPT−136の均一な分散効果、すなわち均一な化粧膜によるものであることが分かった。
【0085】
実験例6.化粧料組成物の赤外線遮断効果実験
本発明の複合粉体を含む化粧料組成物の赤外線遮断効果を測定するために、次のような実験を行った。
【0086】
前記製造例6、及び比較例4〜5による化粧料組成物それぞれを腕の上膊部分の皮膚に適正量(2mg/cm
2)塗布した後、赤外線ランプ(125W)を用いて60cmの距離で10分間照射後、Laser Radiation Gun Thermometerを用いて非接触式で皮膚の温度を測定してその結果を表9に示した。
【0087】
表9から分かるように、赤外線遮断粉体で製造した化粧料組成物(比較例5)と本発明の複合粉体で製造した化粧料組成物(製造例6)は、無処置及び紫外線遮断粉体で製造した化粧料組成物(比較例4)と比較して、赤外線照射時に皮膚温度の上昇が少ないことが分かる。したがって、製造例6と比較例5の場合は赤外線遮断効果があることが分かる。
【0088】
また、赤外線遮断粉体で製造した化粧料組成物(比較例5)と本発明の複合粉体で製造した化粧料組成物(製造例6)は、赤外線遮断効果がほとんど類似に示された。これは、赤外線遮断粉体に紫外線遮断粉体をコーティングしても赤外線遮断効果をそのまま維持することを示唆するものである。したがって、本発明の複合粉体は赤外線遮断効果があることを示している。
【0089】
【表9】
【0090】
また、前記製造例7と比較例6によるソンスクリン化粧料組成物をそれぞれ皮膚に適正量(2mg/cm
2)を顔半分に均一に塗布した後、赤外線ランプ(125W)を用いて60cmの距離で10分間照射後、医療業界で使用する熱火傷皮膚温度測定機であるサーモグラフィ(IRIS−5000)を用いて頬部分の温度を測定した結果を
図9に示した。
【0091】
図9から分かるように、紫外線遮断粉体で製造した組成物(比較例6)と本発明の複合粉体で製造した化粧料組成物(製造例7)を比較時、複合粉体で製造した製造例7が頬部分で赤い色が少なく、青い部分が広いことが分かる。これをプログラムで通じて温度に換算すると、平均的に約0.5℃低いことが分かる。これは熱発生の原因である赤外線遮断の効果を示したものである。
【0092】
実験例7.複合粉体分散物の白濁度評価実験
本発明の複合粉体を含む分散物の白色度を測定するために、次のような実験を行なった。前記製造例8と比較例7〜10で製造した分散物を白濁度評価に使用した。腕の上膊の2×2cm
2の正四角形6ヶ所の素肌に対してまず色彩計(Minolta CR−200)を用いてL値を測定した後、それぞれの場所に製造例8、比較例7〜10のサンプルそれぞれ0.1gを正確に秤量して指で30回擦った後、5分後に色彩計で測定して素肌のL値と測定されたL値間の差を評価した。前記L値の差が大きいほど白濁度が大きいことを示し、L値の差が小さいほど白濁度が小さいことを示す。
【0093】
その結果、製造例8の場合のL値の差は4.5で、比較例7の場合のL値の差は9.85、比較例8の場合のL値の差は1.63、比較例9の場合のL値の差は7.41、比較例10のL値の差は6.30だった。
【0094】
したがって、複合粉体である製造例8の白濁度は、皮膚に塗布時に透明であることが知られている紫外線遮断粉体単独の比較例8の白濁度よりは高いが、顔料級二酸化チタンである比較例7及び混合粉体である比較例10の白濁度よりは低いことが分かる。したがって、複合粉体はパウダー剤形、ソンスクリン剤形、ホワイトニング乳化基礎剤形等、多様な製品に使用することができるということが分かる。
【0095】
実験例8.皮膚刺激性試験
前記製造例1〜3の複合粉体、比較例1、2の混合粉体、製造例6の化粧料及び比較例3の化粧料を用いて、皮膚刺激がないことが知られている溶媒スクアレンにそれぞれの試料を均一に分散させて、試験対象20人に対して皮膚パッチテストを実施して皮膚刺激性を試験した。その結果を表10に示す。表10に見られるように、全体的に皮膚トラブルは示されず、製造例2、6及び比較例3の場合は微弱なトラブルが1人ずつ示されたが、試験対象者中、1人は敏感性皮膚であることが皮膚分析の結果示された。したがって、皮膚に安全なことが示された。
【0096】
【表10】