特許第5973178号(P5973178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CKD株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5973178-液体制御装置 図000002
  • 特許5973178-液体制御装置 図000003
  • 特許5973178-液体制御装置 図000004
  • 特許5973178-液体制御装置 図000005
  • 特許5973178-液体制御装置 図000006
  • 特許5973178-液体制御装置 図000007
  • 特許5973178-液体制御装置 図000008
  • 特許5973178-液体制御装置 図000009
  • 特許5973178-液体制御装置 図000010
  • 特許5973178-液体制御装置 図000011
  • 特許5973178-液体制御装置 図000012
  • 特許5973178-液体制御装置 図000013
  • 特許5973178-液体制御装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973178
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】液体制御装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/22 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B01D1/22 Z
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-19466(P2012-19466)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-154336(P2013-154336A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 雅之
(72)【発明者】
【氏名】板藤 寛
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−057193(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/057693(WO,A1)
【文献】 特許第4673449(JP,B2)
【文献】 特開2009−194246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/22
B01J 7/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の広がり方を制御する液体制御装置であって、
前記液体の供給される被供給面を有する本体と、
網目状に編まれ、前記被供給面に接するように設けられた網状体と、
を備え、
前記被供給面には、第1の溝が設けられ、
前記本体には、前記本体の内部から前記第1の溝へ気体を導入する導入口が設けられており、
前記第1の溝及び前記導入口は、前記網状体によって覆われており、
前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口が設けられ、
前記本体の内部には、前記被供給面を加熱するヒータが設けられ、
前記被供給面の広がり方向において前記第1の溝と前記ヒータとの間に前記供給口が配置されていることを特徴とする液体制御装置。
【請求項2】
前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口が設けられ、
前記本体の内部には、前記被供給面の温度を検出する温度センサが設けられ、
前記被供給面の広がり方向において前記第1の溝と前記センサとの間に前記供給口が配置されている請求項に記載の液体制御装置。
【請求項3】
液体の広がり方を制御する液体制御装置であって、
前記液体の供給される被供給面を有する本体と、
網目状に編まれ、前記被供給面に接するように設けられた網状体と、
を備え、
前記被供給面には、第1の溝が設けられ、
前記本体には、前記本体の内部から前記第1の溝へ気体を導入する導入口が設けられており、
前記第1の溝及び前記導入口は、前記網状体によって覆われており、
前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口が設けられ、
前記本体の内部には、前記被供給面の温度を検出する温度センサが設けられ、
前記被供給面の広がり方向において前記第1の溝と前記センサとの間に前記供給口が配置されていることを特徴とする液体制御装置。
【請求項4】
前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口と、前記被供給面の周囲の空間から前記本体の内部へ流体を排出する排出口とが設けられ、
前記第1の溝と前記排出口との間に前記供給口が配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体制御装置。
【請求項5】
液体の広がり方を制御する液体制御装置であって、
前記液体の供給される被供給面を有する本体と、
網目状に編まれ、前記被供給面に接するように設けられた網状体と、
を備え、
前記被供給面には、第1の溝が設けられ、
前記本体には、前記本体の内部から前記第1の溝へ気体を導入する導入口が設けられており、
前記第1の溝及び前記導入口は、前記網状体によって覆われており、
前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口と、前記被供給面の周囲の空間から前記本体の内部へ流体を排出する排出口とが設けられ、
前記第1の溝と前記排出口との間に前記供給口が配置されていることを特徴とする液体制御装置。
【請求項6】
前記被供給面には前記排出口に接続された第2の溝が設けられている請求項4又は5に記載の液体制御装置。
【請求項7】
前記第2の溝は、前記被供給面において前記供給口から前記排出口への方向に対して略垂直な方向へ延びている請求項に記載の液体制御装置。
【請求項8】
前記第2の溝には、前記排出口から前記供給口への方向に延びてから、前記供給口から前記排出口への方向に対して略垂直な方向へ前記被供給面の外縁まで延びる延長部が設けられている請求項に記載の液体制御装置。
【請求項9】
前記導入口は、前記気体が前記被供給面に対して略平行に前記第1の溝へ導入されるように形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体制御装置。
【請求項10】
前記被供給面が上側となるように前記本体が配置されている請求項1〜のいずれか1項に記載の液体制御装置。
【請求項11】
前記本体には、前記被供給面の周囲の空間から前記本体の内部へ流体を排出する排出口が設けられ、
前記排出口に接続されて流体を排出する排出通路と、
前記排出通路の下部から分岐する分岐通路と、
を備えている請求項10に記載の液体制御装置。
【請求項12】
前記網状体に対して前記本体側と反対側で接するように設けられた誘導部材を備える請求項1〜11のいずれか1項に記載の液体制御装置。
【請求項13】
前記第1の溝と前記誘導部材とが重なる重なり部分を有し、
前記導入口は、前記重なり部分に配置されている請求項12に記載の液体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面に接した液体の広がり方を制御する液体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液体制御装置において、蓄熱板の上面にメッシュ(網状体)を重ねて配置することにより、蓄熱板上に微細な凹凸を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のものによれば、蓄熱板の上面とメッシュとの間に供給された液体が、界面張力によって広がるため、メッシュの広い面積に液体を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4673449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のものでは、微細な凹凸による界面張力を利用して、蓄熱板の上面に液体を広げることができるものの、面に接した液体を所望の方向へ優先的に広げる上で、未だ改善の余地を残すものとなっている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、面に接した液体を所望の方向へ優先的に広げることのできる液体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
第1の手段は、液体の広がり方を制御する液体制御装置であって、前記液体の供給される被供給面を有する本体と、網目状に編まれ、前記被供給面に接するように設けられた網状体と、を備え、前記被供給面において前記網状体と接する部分に第1の溝が設けられ、前記本体には、前記本体の内部から前記第1の溝へ気体を導入する導入口が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、網状体は、網目状に編まれ、本体の被供給面に接するように設けられているため、被供給面と網状体との間に複数の界面が形成される。したがって、被供給面に供給された液体は、複数の界面における界面張力により、被供給面に沿って広がることとなる。
【0009】
ここで、被供給面において網状体と接する部分に第1の溝が設けられているため、その第1の溝の部分では被供給面と網状体との間に界面が形成されず、液体の広がりが抑制される。したがって、第1の溝の配置を調整することにより、被供給面に接した液体が広がる方向を制御することができ、液体を所望の方向へ優先的に広げることができる。しかも、本体の内部から導入口を通じて気体が第1の溝へ導入されるため、第1の溝と網状体とで形成される流路内を気体が流通することとなる。その結果、第1の溝内を流通して網状体の網目から吹き出す気体により、第1の溝を超えて液体が広がることを効果的に抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記導入口は、前記気体が前記被供給面に対して略平行に前記第1の溝へ導入されるように形成されている。
【0011】
上記構成によれば、導入口を通じて気体が被供給面に対して略平行に第1の溝へ導入されるため、第1の溝内において気体が被供給面に対して平行な方向へ流通し易くなる。このため、溝内の気体が網状体の網目から直ちに吹き出すことを抑制することができ、第1の溝に沿って気体を流通させ易くなる。その結果、第1の溝の広範囲において網状体の網目から気体を吹き出させることができ、第1の溝の広範囲において液体の広がりを効果的に抑制することができる。
【0012】
第3の手段では、前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口と、前記被供給面の周囲の空間から前記本体の内部へ流体を排出する排出口とが設けられ、前記第1の溝と前記排出口との間に前記供給口が配置されている。
【0013】
上記構成によれば、供給口を通じて本体の内部から被供給面へ液体が供給され、網状体の作用により液体が被供給面に沿って広がることとなる。被供給面に沿って広がる液体は、蒸発が促進されて蒸気になるとともに、第1の溝の部分では広がりが抑制される。ここで、第1の溝と排出口との間に供給口が配置されているため、第1の溝内を流通して網状体の網目から吹き出す気体により、液体や液体の蒸気が第1の溝から排出口の方向へ押されることになる。その結果、液体や液体の蒸気を排出口から排出させ易くなる。
【0014】
第4の手段では、前記被供給面には前記排出口に接続された第2の溝が設けられている。
【0015】
上記構成によれば、排出口に接続された第2の溝が被供給面に設けられているため、第2の溝内に流入した液体や液体の蒸気を排出口へ導き易くなる。その結果、液体や液体の蒸気を排出口から円滑に排出することができる。
【0016】
第5の手段では、前記第2の溝は、前記被供給面において前記供給口から前記排出口への方向に対して略垂直な方向へ延びている。
【0017】
上記構成によれば、被供給面において供給口から排出口への方向に対して略垂直な方向へ第2の溝が延びているため、供給口から排出口への方向から外れて広がる液体や液体の蒸気を、第2の溝により回収し易くなる。
【0018】
第6の手段では、前記第2の溝には、前記排出口から前記供給口への方向に延びてから、前記供給口から前記排出口への方向に対して略垂直な方向へ前記被供給面の外縁まで延びる延長部が設けられている。
【0019】
被供給面の外縁では、その外縁に他の部材が接していない場合には液体が被供給面内に留まろうとして外縁に沿って広がるとともに、その外縁に他の部材が接している場合には液体が被供給面と他の部材との境界(被供給面の外縁)に沿って広がることとなる。
【0020】
この点、上記構成によれば、被供給面の外縁に沿って広がる液体が、排出口から供給口への方向に延びてから、供給口から排出口への方向に対して略垂直な方向へ被供給面の外縁まで延びる延長部に流入することとなる。このため、被供給面の外縁に沿って広がる液体を、第2の溝により効率的に排出口へ導くことができる。
【0021】
第7の手段では、前記被供給面が上側となるように前記本体が配置されている。
【0022】
上記構成によれば、被供給面が上側となるように本体が配置されているため、第1の溝内に流入した液体が第1の溝の底部に溜まるようになる。このため、第1の溝内に流入した液体が、網状体側へ逆流することを抑制することができる。その結果、第1の溝を超えて液体が広がることを効果的に抑制することができる。
【0023】
また、第4の手段に第7の手段を組み合わせた場合には、第2の溝内に流入した液体が第2の溝の底部に溜まるようになる。そして、第2の溝内に溜まった液体が、第2の溝に沿って排出口へ導かれ易くなる。したがって、第2の溝内に流入する液体を、排出口から更に円滑に排出することができる。
【0024】
第8の手段では、前記本体には、前記被供給面の周囲の空間から前記本体の内部へ流体を排出する排出口が設けられ、前記排出口に接続されて流体を排出する排出通路と、前記排出通路の下部から分岐する分岐通路と、を備えている。
【0025】
上記構成によれば、本体に設けられた排出口を通じて、被供給面の周囲の空間から本体の内部へ気体が排出される。そして、排出口に接続された排出通路を通じて、本体内部から気体が排出される。ここで、被供給面が上側となるように前記本体が配置されているため、排出口を通じて排出通路内に流入した液体は排出通路の下部に溜まることとなる。そして、排出通路の下部から分岐通路が分岐しているため、排出通路の下部に溜まった液体を分岐通路から排出することができる。その結果、排出通路内を流通する気体と液体とを適切に分離することができる。
【0026】
第9の手段では、前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口が設けられ、前記本体の内部には、前記被供給面を加熱するヒータが設けられ、前記被供給面の広がり方向において前記第1の溝と前記ヒータとの間に前記供給口が配置されている。
【0027】
上記構成によれば、被供給面に設けられた第1の溝により、供給口からヒータと反対側への液体の広がりが抑制される。そして、ヒータと反対側への液体の広がりを抑制することにより、ヒータ側への液体の広がりを促進させることができる。その結果、ヒータによる液体の加熱を促進させることができ、液体の蒸発を更に促進させることができる。
【0028】
第10の手段では、前記本体には、前記本体の内部から前記被供給面へ前記液体を供給する供給口が設けられ、前記本体の内部には、前記被供給面の温度を検出する温度センサが設けられ、前記被供給面の広がり方向において前記第1の溝と前記センサとの間に前記供給口が配置されている。
【0029】
被供給面に供給された液体が蒸発した場合には、その気化熱により被供給面の温度が低下する。このため、被供給面の温度を検出することにより、液体の気化度合を推測することができる。
【0030】
この点、上記構成によれば、被供給面に設けられた第1の溝により、供給口から温度センサと反対側への液体の広がりが抑制される。そして、温度センサと反対側への液体の広がりを抑制することにより、温度センサ側への液体の広がりを促進させることができる。その結果、液体の気化による被供給面の温度低下が、温度センサの検出値に敏感に反映されるため、液体の気化度合を推測する精度を向上させることができる。
【0031】
第11の手段では、前記網状体に対して前記本体側と反対側で接するように設けられた誘導部材を備える。
【0032】
上記構成によれば、網状体に対して本体側と反対側で接するように誘導部材が設けられているため、網状体と誘導部材との間にも複数の界面が形成される。したがって、網状体と誘導部材との間においても、界面張力により液体を広げることができる。このため、誘導部材の設けられた部分では、液体の広がりを他の部分よりも促進させることができる。その結果、誘導部材の配置を調整することにより、被供給面に接した液体を所望の方向へ優先的に広げることができる。
【0033】
第12の手段では、前記第1の溝と前記誘導部材とが重なる重なり部分を有し、前記導入口は、前記重なり部分に配置されている。
【0034】
第1の溝と誘導部材とが重なっている場合には、誘導部材を伝わって第1の溝を超えて液体が広がるおそれがある。
【0035】
この点、上記構成によれば、上記重なり部分に配置された導入口から溝へ気体が導入されるため、誘導部材に吹き付けられる気体の量を増加させることができる。その結果、誘導部材を伝わって第1の溝を超えて液体が広がることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】液体気化器を示す図。
図2】液体気化器を示す図。
図3】液体制御装置を示す斜視図。
図4】液体制御装置の本体を示す斜視図。
図5】液体制御装置の分解斜視図。
図6】メッシュの拡大平面図。
図7】本体の上面及びメッシュの拡大断面図。
図8】本体の上面及びメッシュの拡大断面図。
図9】本体の上面、メッシュ、及びメッシュバンドの拡大断面図。
図10】本体の上面、メッシュ、及び遮蔽部材の拡大断面図。
図11】液体制御装置の本体の変形例を示す斜視図。
図12】液体制御装置の本体の他の変形例を示す斜視図。
図13】液体制御装置の本体の他の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、薬液を気化させて不活性ガスと混合させつつ排出する液体気化器として具体化している。
【0038】
図1において、(a)は液体気化器10を示す平面図であり、(b)は(a)の1B−1B線断面図である。同図に示すように、液体気化器10は、第1ハウジング11、第2ハウジング20、液体制御装置30、弁装置60、ヒータ80、熱電対83,84等を備えている。
【0039】
第1ハウジング11は、中空の直方体状に形成されており、内部に底面長円形の柱状空間Sが形成されている。柱状空間Sは、第1ハウジング11の側面11aにおいて、長円形の開口部12によって開口している。第1ハウジング11の下面11bには、弁装置60を挿入する挿入孔13が形成されている。第1ハウジング11の上面11cには、ガラス板14を取り付ける取付孔15が形成されている。
【0040】
柱状空間Sには、開口部12から液体制御装置30が挿入されている。また、上記挿入孔13には、弁装置60が挿入されている。第1ハウジング11と弁装置60との間は、シール部材によりシールされている。上記取付孔15には、締結部材によりガラス板14が取り付けられている。第1ハウジング11とガラス板14との間は、シール部材によりシールされている。作業者は、ガラス板14を介して、上方から第1ハウジング11の内部を観察することができる。
【0041】
図2(a)は、図1の2A−2A線から見た第2ハウジング20の側面図である。図2(a)を併せて参照すると、第2ハウジング20は、直方体状に形成されており、第1ハウジング11の側面11aに取り付けられている。第1ハウジング11と第2ハウジング20との間は、シール部材によりシールされている。第2ハウジング20において、第1ハウジング11の側面11aに対向する面は側面20bとなっている。第2ハウジング20には、第1気体流路21、第2気体流路22、薬液流路23、ヒータ挿入孔24、及び熱電対挿入孔25a,25bが形成されている。
【0042】
第1気体流路21は、第2ハウジング20において、上記側面20bから、上面20aへと貫通している。第2気体流路22(排出通路)は、側面20bから、側面20bと反対側の側面20cへと貫通している。第1気体流路21及び第2気体流路22は、上面20aの長手方向において、両端寄りの位置にそれぞれ設けられている。薬液流路23は、側面20b及び側面20cの略中央において、側面20bから側面20cへと貫通している。ヒータ挿入孔24は、第2気体流路22と薬液流路23との間において、側面20bから側面20cへと貫通している。熱電対挿入孔25a,25bは、薬液流路23とヒータ挿入孔24との間において、側面20bから側面20cへと貫通している。
【0043】
第2ハウジング20には、締結部材等により、第1ブロック26、第2ブロック27、薬液ブロック28が取り付けられている。
【0044】
第1ブロック26は、第2ハウジング20の上記上面20aに取り付けられている。第1ブロック26には、その下面から上面へと貫通する第1ブロック流路26aが設けられている。第1ブロック流路26aの一端は、上記第1気体流路21に接続している。第1ブロック流路26aの他端には、第1気体配管26bが接続されている。そして、第1気体配管26bから第1ブロック26へ気体が導入される。
【0045】
第2ブロック27は、第2ハウジング20の上記側面20cに取り付けられている。第2ブロック27には、その側面から上面へと貫通する第2ブロック流路27a(排出通路)が設けられている。第2ブロック流路27aの一端は、上記第2気体流路22に接続している。第2ブロック流路27aの他端には、第2気体配管27bが接続されている。そして、第2ブロック27から第2気体配管27bへ気体が排出される。また、第2ブロック流路27aの下部から、液体流路29a(分岐通路)が分岐している。液体流路29aの端部には、液体配管29bが接続されている。そして、第2ブロック27から液体配管29bへ液体が排出される。液体配管29bは、鉛直方向から水平方向へ曲がっている。液体配管29bの下部には、液体を検知する液体センサ29cが取り付けられている。液体センサ29cは、液体配管29b内を流通する液体を検知する。
【0046】
薬液ブロック28は、第2ハウジング20の上記側面20cに取り付けられている。薬液ブロック28には、その側面から下面へと貫通する薬液ブロック流路28aが設けられている。薬液ブロック流路28aの一端は、上記薬液流路23に接続している。薬液ブロック流路28aの他端には、薬液配管28bが接続されている。そして、薬液配管28bから薬液ブロック28へ薬液が導入される。
【0047】
図2(b),(c)は、それぞれ図1の2B−2B線断面図,2c−2c線断面図である。図2(b),(c)を併せて参照すると、液体制御装置30は、本体31を備えている。
【0048】
本体31は、上記柱状空間Sに対応して底面長円形の柱状に形成されており、柱状空間Sよりも一回り小さく形成されている。上述したように、第1ハウジング11の柱状空間Sには、開口部12から液体制御装置30が挿入されている。そして、液体制御装置30は、本体31に形成された貫通孔Bに締結部材を用いて、第2ハウジング20の側面20bに取り付けられている。これにより、上記第1ハウジング11の内周面と本体31との間には、長円形の筒状の隙間が形成されている。本体31において、第2ハウジング20の側面20bに対向する面は側面31bとなっている。
【0049】
本体31には、第1本体流路33、第2本体流路34、薬液流路35、ヒータ挿入孔36、熱電対挿入孔37a,37b、及び凹部38が形成されている。
【0050】
第1本体流路33は、本体31においてその側面から上面へと貫通している。第1本体流路33の一端は、上記第1気体流路21に接続している。第1本体流路33の他端は、第2ハウジング20から第1ハウジング11への方向(本体31の上面31cの短手方向)において、本体31の略中央で開口している。
【0051】
第2本体流路34(排出通路)は、本体31においてその側面から上面へと貫通している。第2本体流路34の一端は、上記第2気体流路22に接続している。第2本体流路34の他端は、本体31の上面31cの短手方向において、本体31の略中央で開口している。第1本体流路33及び第2本体流路34は、上面31cの長手方向において、両端寄りの位置にそれぞれ設けられている。
【0052】
薬液流路35は、本体31において、側面31bから上面31cへと貫通している。薬液流路35の一端は、上記薬液流路23に接続している。薬液流路35の他端は、本体31の上面31cの短手方向において、本体31の略中央で開口している。
【0053】
ヒータ挿入孔36は、上記ヒータ挿入孔24に接続しており、側面31bから反対側の側面31d付近まで延びている。そして、ヒータ挿入孔24,36にヒータ80が挿入されており、ヒータ80により上面31cが加熱される。
【0054】
熱電対挿入孔37aは、上記熱電対挿入孔25aに接続しており、本体31の上面31cの短手方向において、本体31の略中央まで延びている。熱電対挿入孔37aは、本体31において上面31c近傍に形成されている。そして、熱電対挿入孔25a,37aに第1熱電対83(温度センサ)が挿入されており、第1熱電対83により上面31c近傍の温度が検出される。
【0055】
熱電対挿入孔37bは、上記熱電対挿入孔25bに接続しており、本体31の上面31cの短手方向において、本体31の中央よりも手前(約1/4の位置)まで延びている。熱電対挿入孔37bは、本体31において下面31e寄りの位置に形成されている。そして、熱電対挿入孔25b,37bに第2熱電対84(温度センサ)が挿入されており、第2熱電対84により下面31e寄りの位置の温度が検出される。
【0056】
本体31において、上記第1ハウジング11の挿入孔13に対向する位置には、凹部38が形成されている。挿入孔13及び凹部38には、弁装置60が挿入されており、締結部材等により本体31に弁装置60が取り付けられている。本体31と弁装置60との間は、シール部材によりシールされている。凹部38は、上記薬液流路35と連通している。薬液流路35と凹部38との連通部分には、弁座39が設けられている。本体31には、作動気体流路40が形成されている。作動気体流路40は、第1ハウジング11の上面11cの長手方向において第1ハウジング11の側面11dから第1ハウジング11の略中央まで延び、上面11cの短手方向へ曲がって挿入孔13に連通している。そして、液体制御装置30の制御部により、作動気体流路40への作動気体の導入及び排出が制御される。
【0057】
弁装置60は、本体61、ピストン62、ダイアフラム弁体63、ばね64、ばね押さえ65等を備えている。
【0058】
本体61は、円筒状に形成されており、その内部にピストン62が収容されている。本体61及びピストン62は、互いの中心軸線が一致している。
【0059】
ピストン62は、本体61によって、中心軸線方向に摺動可能に支持されている。本体61と第1ハウジング11との間、本体61と液体制御装置30の本体31との間、及び本体61とピストン62との間は、それぞれシール部材によってシールされている。
【0060】
ピストン62の先端には、ダイアフラム弁体63の弁本体63aが取り付けられている。ダイアフラム弁体63のダイアフラム63bは、その外縁部が液体制御装置30の本体31及び本体61によって挟持されている。
【0061】
ばね64において、その一端はピストン62に当たっており、他端はばね押さえ65によって支持されている。ピストン62は、ばね64によって、上記弁座39の方向へ付勢されている。これにより、自然状態において、ダイアフラム弁体63の弁本体63aが弁座39に押し付けられ、上記薬液流路35が遮断されている。
【0062】
本体61には、作動気体流路66が形成されている。作動気体流路66の一端は、第1ハウジング11の作動気体流路40に接続されている。作動気体流路66の他端は、本体61において、ピストン62のフランジ部62aを挟んでばね64と反対側の加圧室67に連通している。そして、作動気体流路40,66を通じて、作動気体が導入されることにより、ピストン62が弁座39から離れる方向へ移動させられる。これにより、薬液流路35が連通させられ、液体制御装置30の本体31の上面31cに薬液が供給される。
【0063】
次に、液体制御装置30の構成を詳細に説明する。図3は液体制御装置30を示す斜視図であり、図4は液体制御装置30の本体31を示す斜視図である。同図に示すように、液体制御装置30は、本体31、メッシュ47、第1遮蔽部材50、第2遮蔽部材51、メッシュバンド52、メッシュ押さえ55a,55b、及び固定部材56を備えている。本体31は、薬液に対する耐腐食性が比較的高く且つ薬液の濡れ性が比較的高い材料、例えば薬液が疎水化処理液である場合には、ステンレス材又はアルミニウム材で形成されている。
【0064】
本体31の上面31cには、上記第1本体流路33が開口しており、気体の導入口33aが形成されている。本体31の上面31cには、上記第2本体流路34が開口しており、流体の排出口34aが形成されている。本体31の上面31c(被供給面)には、上記薬液流路35が開口しており、薬液の供給口35aが形成されている。
【0065】
そして、導入口33aと排出口34aとは、供給口35a、熱電対挿入孔37a,37b(熱電対83,84)及びヒータ挿入孔36(ヒータ80)を挟んで設けられている。すなわち、上面31cの広がり方向において、導入口33aと排出口34aとの間に、供給口35a、熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36が設けられている。供給口35aは、導入口33aと排出口34aとの間、詳しくは導入口33aと排出口34aとの間において若干導入口33a寄りに設けられている。
【0066】
供給口35aは、上面31cの広がり方向において、導入口33aと、熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36との間に設けられている。すなわち、供給口35aは、熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36よりも、導入口33a側に設けられている。
【0067】
熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36は、上面31cの広がり方向において、供給口35aと排出口34aとの間に設けられている。すなわち、熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36は、供給口35aよりも排出口34a側に設けられている。
【0068】
熱電対挿入孔37a,37bは、上面31cの広がり方向において、ヒータ挿入孔36よりも供給口35a側に設けられている。熱電対挿入孔37aは、上面31cの広がり方向において、熱電対挿入孔37bよりも供給口35a側に設けられている。
【0069】
排出口34aは、導入口33aよりも大きく形成されている。詳しくは、導入口33aから排出口34aへ向かう方向に垂直な方向(上面31cの短手方向)において、排出口34aは導入口33aよりも長く延びている。
【0070】
本体31の上面31cには、排出口34aに連通する(接続された)集気溝34bが形成されている。上面31cの短手方向において、集気溝34b(第2の溝)は、排出口34aの両端からそれぞれ延びている。集気溝34bは、上面31cの短手方向において、全長にわたって設けられている。すなわち、集気溝34bは、上面31cにおいて、供給口35a(導入口33a)から排出口34aへの方向に対して略垂直な方向へ延びている。集気溝34bには、排出口34aから導入口33aへの方向(上面31cの長手方向)に延びてから、供給口35aから排出口34aへの方向に対して略垂直な方向へ上面31cの外縁まで延びる延長部34cが設けられている。導入口33aから排出口34aへ向かう方向において、集気溝34bの幅は排出口34aの幅よりも若干狭く形成されている。集気溝34bの深さは、導入口33aから排出口34aの方向へ流通する気体を、集気溝34bに沿って排出口34aへと集めることのできる深さ、例えば0.5〜1.5mmに設定されており、望ましくは1.0mmに設定されている。集気溝34bの幅は、例えば1.0〜2.0mmに設定されており、望ましくは1.5mmに設定されている。
【0071】
本体31の上面31cには、供給口35aから、ヒータ挿入孔36(ヒータ80)と反対側、及び熱電対挿入孔37a,37b(熱電対83,84)と反対側への薬液の広がりを抑制する抑制溝41(第1の溝)が形成されている。抑制溝41は、円弧部41a及び直線部41cを備えている。
【0072】
円弧部41aは、半円の円弧として形成されており、ヒータ挿入孔36側、及び熱電対挿入孔37a,37b側を除いて供給口35aの周囲を囲んでいる。すなわち、円弧部41aは、供給口35aの導入口33a側半周(排出口34aと反対側半周)を囲んでいる。
【0073】
排出口34a、供給口35a、熱電対挿入孔37a,37b(熱電対83,84)、及びヒータ挿入孔36(ヒータ80)に対して、抑制溝41は導入口33aと同様の位置関係になっている。すなわち、上面31cの広がり方向において、抑制溝41と排出口34aとの間に、供給口35a、熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36が設けられている。供給口35aは、上面31cの広がり方向において、抑制溝41と、熱電対挿入孔37a,37b及びヒータ挿入孔36との間に設けられている。
【0074】
直線部41cは、円弧部41aの端部から、上面31cの短手方向のうち上面31cの外側へ延びている。直線部41cの長さは、円弧部41aの半径よりも短くなっている。直線部41cは、上面31cの長手方向において端部まで延びている。抑制溝41の幅及び深さは、上記集気溝34bの幅及び深さと同様に設定されている。
【0075】
上面31cにおいて、円弧部41a(抑制溝41)の中央部の側方、詳しくは供給口35aと反対側には、凹部42が設けられている。凹部42は、略円形に形成されており、抑制溝41の円弧部41aに連通している。凹部42の内縁には、段部42aが設けられている。本体31(液体制御装置30)は、供給口35aの設けられた被供給面が上面31cとなるように配置されている。この状態において、段部42aの上面は、凹部42の底面よりも高くなっている。上記導入口33aは、凹部42の略中央、すなわち抑制溝41からずれた位置に設けられている。導入口33a、供給口35a、及び排出口34aは、同一直線上に配置されている。
【0076】
本体31の下面31eには、その長手方向の両端部に、メッシュ押さえ55a,55b、及び固定部材56を係合させる係合溝45がそれぞれ形成されている。係合溝45は、所定の幅及び深さで、下面31eの短手方向に沿って延びるように形成されている。
【0077】
メッシュ押さえ55a,55bは、断面「L」型の棒状に形成されている。固定部材56は、断面「T」型の棒状に形成されている。メッシュ押さえ55a,55b、及び固定部材56の長さは、下面31eの短手方向の長さと等しくなっている。
【0078】
係合溝45の幅及び深さは、第1メッシュ押さえ55a、第2メッシュ押さえ55b、及び固定部材56を順に組み付けた場合に、これらが固定されるように設定されている。なお、固定部材56は、第2メッシュ押さえ55bを本体31に締結する締結部材として構成されていてもよい。
【0079】
本体31の曲面31fには、上面31cの短手方向に直線状に延びるように凹部44がそれぞれ形成されている。
【0080】
本体31の外周には、網目状に編まれたメッシュ47(網状体)が、上面31c及び曲面31fに接するように設けられている。したがって、凹部42、導入口33a、抑制溝41、排出口34a、及び集気溝34bは、上面31cにおいてメッシュ47と接する部分に設けられている。
【0081】
メッシュ47は、矩形状に形成されており、上面31c及び曲面31fを覆うことのできる大きさで形成されている。詳しくは、上面31cの短手方向の長さとメッシュ47の短手方向の長さとが一致しており、上面31cの長手方向の長さ及び曲面31fの外周の長さを合わせた長さよりも、メッシュ47の長手方向の長さが長くなっている。
【0082】
そして、上面31c及び2つの曲面31fに、メッシュ47が巻き付けられている。このため、導入口33a、供給口35a、抑制溝41、集気溝34b、及び排出口34aは、メッシュ47によって覆われている。
【0083】
メッシュ47の編み目の粗さは、メッシュ47の開口に薬液が膜を作り易い粗さ、例えば1インチあたりの開口数が100である100メッシュとなっている。詳しくは、メッシュ47では、線径が0.1mm、線間距離が0.15mmとなっている。メッシュ47の粗さは、メッシュ47に対する薬液の濡れ性や、本体31に対する薬液の濡れ性、薬液の粘度等に応じて、適切に設定することが望ましい。ここでは、上記抑制溝41及び集気溝34bの幅はメッシュ47の線間距離の6倍以上となっており、抑制溝41及び集気溝34bの深さはメッシュ47の線径の5倍以上となっている。メッシュ47は、薬液に対する耐腐食性が比較的高く且つ薬液の濡れ性が比較的高い材料、例えば薬液が疎水化処理液である場合にはステンレス材で形成されている。
【0084】
供給口35aに対応する位置には、供給口35aを覆うように第1遮蔽部材50が設けられている。詳しくは、第1遮蔽部材50(遮蔽部材、誘導部材)は、供給口35a及びその近傍のみを覆っており、上記抑制溝41の円弧部41aによって囲まれている。第1遮蔽部材50は、メッシュ47の外側に設けられており、メッシュ47に接している。すなわち、第1遮蔽部材50はメッシュ47に対して本体31側と反対側で接しており、本体31の上面31cと第1遮蔽部材50とでメッシュ47を挟んでいる。
【0085】
このため、第1遮蔽部材50は本体31の上面31cに接しておらず、メッシュ47によって上面31cと第1遮蔽部材50との間に薬液の流路が確保されている。第1遮蔽部材50も、薬液に対する耐腐食性が比較的高く且つ薬液の濡れ性が比較的高い材料で形成されている。
【0086】
凹部42に対応する位置には、凹部42の内周面に嵌まるように第2遮蔽部材51が設けられている。第2遮蔽部材51は凹部42の内周面に圧入されており、第2遮蔽部材51の下面が凹部42の段部42aの上面に当たっている。このため、導入口33aは、第2遮蔽部材51により覆われている。凹部42と第2遮蔽部材51とで囲まれる空間は、抑制溝41へ気体を導入する導入口33bで開口している。このため、本体31の内部から、導入口33a、上記空間、及び導入口33bを通じて、気体が抑制溝41へ導入される。ここで、導入口33bは、抑制溝41の側壁に配置されている。すなわち、導入口33bは、気体が上面31cに対して略平行に(第2遮蔽部材51の下面に沿って)抑制溝41へ導入されるように形成されている。導入口33bは、導入口33aから供給口35aの方向へ開口している。
【0087】
第2遮蔽部材51の上面は、本体31の上面31cよりも低くなっている。そして、第2遮蔽部材51の上側、すなわち第2遮蔽部材51に対して本体31と反対側にメッシュ47が設けられている。この状態において、第2遮蔽部材51とメッシュ47との間には隙間が形成されている。すなわち、第2遮蔽部材51とメッシュ47との間には界面が形成されていない。
【0088】
また、第2遮蔽部材51は、抑制溝41の幅方向において抑制溝41の一部を覆うように張り出している。すなわち、第2遮蔽部材51は、抑制溝41の全幅にはわたっておらず、抑制溝41の幅の中間(略半分)まで張り出している。このため、第2遮蔽部材51が設けられた部分においても、抑制溝41によって上面31cが非連続とされている。
【0089】
本体31(メッシュ47)の外周には、導入口33aから排出口34aの方向(上面31cの長手方向)に沿って延びるように、網目状に編まれたメッシュバンド52が設けられている。
【0090】
メッシュバンド52(誘導部材)は、導入口33a、導入口33bの上部、供給口35a(第1遮蔽部材50)、及び排出口34aを覆っている。すなわち、メッシュバンド52は、導入口33aから、順に導入口33b、供給口35a、熱電対挿入孔37a,37b(熱電対83,84)、ヒータ挿入孔24(ヒータ80)、排出口34aへ向かって延びている。そして、導入口33bは、抑制溝41とメッシュバンド52とが重なる部分(重なり部分)に配置されている。
【0091】
メッシュバンド52は、第2遮蔽部材51、メッシュ47、及び第1遮蔽部材50の外側に設けられており、メッシュ47及び第1遮蔽部材50に接している。すなわち、メッシュバンド52はメッシュ47に対して本体31側と反対側で接しており、本体31の上面31cとメッシュバンド52とでメッシュ47を挟んでいる。また、メッシュ47とメッシュバンド52とで第1遮蔽部材50を挟んでいる。
【0092】
メッシュバンド52は、矩形状(帯状)に形成されており、導入口33a、導入口33bの上部、及び第1遮蔽部材50(供給口35a)を覆うことのできる大きさで形成されている。詳しくは、第1遮蔽部材50の径とメッシュバンド52の短手方向の長さとが略等しくなっている。上面31cの長手方向の長さ及び曲面31fの外周の長さを合わせた長さよりも、メッシュバンド52の長手方向の長さが長くなっている。
【0093】
そして、上面31c及び2つの曲面31fに、メッシュ47が巻き付けられている。メッシュバンド52の編み目の粗さも、メッシュバンド52の開口に薬液が膜を作り易い粗さ、例えば1インチあたりの開口数が100である100メッシュとなっている。メッシュバンド52も、薬液に対する耐腐食性が比較的高く且つ薬液の濡れ性が比較的高い材料で形成されている。
【0094】
上記メッシュ47及びメッシュバンド52の長手方向の両端部は、それぞれメッシュ押さえ55a,55b、及び固定部材56によって固定されている。詳しくは、係合溝45内において、メッシュ47及びメッシュバンド52の端部は、第1メッシュ押さえ55aによって押さえられており、第1メッシュ押さえ55aは第2メッシュ押さえ55bによって押さえられている。
【0095】
メッシュ47及びメッシュバンド52の端部は、第1メッシュ押さえ55aと第2メッシュ押さえ55bとの間から外側へと導かれている。すなわち、メッシュ47及びメッシュバンド52の端部は、第1メッシュ押さえ55aと第2メッシュ押さえ55bとで挟み込まれている。
【0096】
そして、第2メッシュ押さえ55bが固定部材56によって押さえられた状態で、固定部材56が係合溝45に係合させられている。これにより、メッシュ押さえ55a,55b、及び固定部材56は、係合溝45に係合した状態で固定されている。なお、図示は省略するが、固定部材56がねじで構成されている場合には、第2メッシュ押さえ55bがねじによって本体31に締結されている。
【0097】
ここで、メッシュ47及びメッシュバンド52は、それらの長手方向に引っ張られた状態で固定されている。このため、本体31の上面31c及び曲面31fにメッシュ47が密着した状態となっており、メッシュ47にメッシュバンド52が密着した状態となっている。また、第1遮蔽部材50は、メッシュ47及びメッシュバンド52に密着した状態となっている。
【0098】
次に、液体制御装置30を組み立てる手順を説明する。図5は、液体制御装置30の分解斜視図である。同図に示すように、上記第1遮蔽部材50は、円板状の円板部50aと、針状のピン50bとを備えている。円板部50a(第1部分)の中心には、貫通孔50cが形成されている。ピン50b(第2部分)において、一端は針状に尖った尖端部となっており、他端は他の部分よりも径の大きい頭部となっている。ピン50bの頭部の径は貫通孔50cの径よりも大きくなっており、ピン50bの頭部以外の部分の径は貫通孔50cの径よりも小さくなっている。ピン50bの尖端部の径は、上記メッシュ47の線間距離0.15mmよりも小さくなっている。
【0099】
まず、本体31の凹部42に第2遮蔽部材51を圧入する。これにより、凹部42の上部が第2遮蔽部材51により覆われ、凹部42の内周面と第2遮蔽部材51の下面とで、導入口33aから導入口33b、そして抑制溝41へと繋がる気体通路(空間)が形成される。その後、本体31の上面31cの長手方向とメッシュ47の長手方向とを合わせて、本体31の外周にメッシュ47を巻き付ける。このとき、メッシュ47は、上面31c及び曲面31fの全体を覆って、更に両端が余った状態となる。また、メッシュ47は、第2遮蔽部材51、抑制溝41、供給口35a、排出口34a、集気溝34b、及び延長部34cの設けられた部分を除いて、上面31cに接した状態となる。
【0100】
次に、メッシュ47の外側から供給口35aを覆うように、第1遮蔽部材50の円板部50aを配置する。このとき、供給口35aの中心の位置と、円板部50aの中心(貫通孔50c)の位置とを合わせる。そして、円板部50aの貫通孔50cにピン50bを尖端部から挿入し、メッシュ47を貫通させてピン50bを供給口35aへ挿入する。このとき、ピン50bの尖端部の径はメッシュ47の線間距離よりも小さくなっているため、メッシュ47の線材と線材との間に尖端部を挿入することができる。そして、ピン50bの頭部を円板部50aに当てて、ピン50bの挿入を完了する。
【0101】
次に、本体31の上面31cの長手方向とメッシュバンド52の長手方向とを合わせて、本体31の外周にメッシュバンド52を巻き付ける。詳しくは、導入口33a、導入口33b、供給口35a(第1遮蔽部材50)、及び排出口34aに重なるように、メッシュバンド52を巻き付ける。このとき、メッシュバンド52は、上面31c及び曲面31fを覆って、更に両端が余った状態となる。
【0102】
次に、図2(b),(c)及び図3に示すように、係合溝45において第1メッシュ押さえ55aによって、メッシュ47及びメッシュバンド52の両端部をそれぞれ仮止めする。この状態、又は第2メッシュ押さえ55bによって第1メッシュ押さえ55aを押さえた状態で、メッシュ47及びメッシュバンド52をそれぞれ長手方向に引っ張る。これにより、メッシュ47及びメッシュバンド52の皺を伸ばすとともに、メッシュ47及びメッシュバンド52に張力が発生した状態とする。そして、固定部材56によってメッシュ押さえ55a,55bを固定して、液体制御装置30の組み立てを終了する。
【0103】
こうして組み立てられた液体制御装置30は、上述したように、本体31に形成された貫通孔Bに締結部材を用いて、第2ハウジング20の側面20bに取り付けられている。そして、上記第1ハウジング11の内周面と本体31との間には、長円形の筒状の隙間が形成されている。
【0104】
メッシュ47及びメッシュバンド52が本体31の外周に巻き付けられて固定された状体では、メッシュ47及びメッシュバンド52と上記曲面31fの凹部44との間に隙間が生じることとなる。そこで、凹部44に係合するように、第1ハウジング11とメッシュ47及びメッシュバンド52との間に、本体31の軸線方向(上面31cの短手方向)から挿入部材57が挿入されている。
【0105】
挿入部材57は、丸棒状に形成されており、その断面の半径は凹部44の曲率半径と略等しくなっている。挿入部材57の先端部は、他の部分よりも若干細くなっており、その先端部からメッシュ47及びメッシュバンド52を凹部44へ押し付けつつ挿入されている。これにより、凹部44とメッシュ47及びメッシュバンド52との間の隙間が縮められ、メッシュ47及びメッシュバンド52に発生する張力を増加させることができる。その結果、メッシュ47及びメッシュバンド52が、本体31に強く密着させられた状態となる。
【0106】
次に、本体31の上面31cに接した薬液を、メッシュ47、メッシュバンド52、及び第1遮蔽部材50によって広げる原理について説明する。図6は、メッシュ47の拡大平面図である。メッシュ47は、縦線材48a,48b,48c,48dと横線材49a,49b,49c,49dとを、相互に網目状に編む(織る)ことによって形成されている。
【0107】
メッシュ47には、平面視において縦線材及び横線材で囲まれた網目空間が形成されている。網目空間は、直方体(平面視において正方形)であり、メッシュ47の縦方向及び横方向に等間隔で形成されている。例えば、網目空間T1は、2本の縦線材48b,48cと2本の横線材49b,49cとによって囲まれた微細な空間(0.15mm×0.15mm×メッシュ47の厚み)である。
【0108】
網目空間T1は微細な空間であるため、線材48b,48c,49b,49cと薬液との間には比較的大きな分子間力が作用する。その結果、網目空間T1に薬液が吸引され、網目空間T1を閉じるように薬液の膜が形成される(毛細管現象)。この状態では、薬液が各網目空間に吸引されており、薬液がメッシュ47の面に沿って広がろうとする作用は比較的小さい。
【0109】
図7は、本体31の上面31c及びメッシュ47の拡大断面図である。同図に示すように、本体31の上面31cとメッシュ47との間には、側面視において上面31c、縦線材及び横線材で囲まれた流通空間T2が形成されている。流通空間T2は、上面31cと、縦線材及び横線材との間の隙間を接続した空間であり、上面31cに沿って広がっている。
【0110】
縦線材48a,48b,48c,48dが上面31cに接する部分(線材同士の交差部分)では、横線材49a,49b,49c,49dは上面31cから離れている。一方、横線材49a,49b,49c,49dが上面31cに接する部分(線材同士の交差部分)では、縦線材48a,48b,48c,48dは上面31cから離れている。このため、流通空間T2は、縦線材及び横線材によって遮断されることはなく、上面31cに沿って連続している。
【0111】
そして、上面31cと縦線材及び横線材との間には、多数の微細な界面が形成されている。したがって、上面31cに供給された薬液は、多数の微細な界面における界面張力により、流通空間T2を通じて上面31cに沿って広がることとなる(毛細管現象)。さらに、薬液は、上面31c、縦線材及び横線材に対して濡れ性を有しているため、上面31cに沿った薬液の広がりが促進される。
【0112】
図8は、本体31の上面31c及びメッシュ47の拡大断面図である。ここでは、横線材49bの一部が上面31cから離れており、ギャップGが生じた状態を示している。このような状態であっても、流通空間T2では界面張力により薬液が広げられる。すなわち、上面31cと縦線材及び横線材とは、一部が離れていてもよい。
【0113】
図9は、本体31の上面31c、メッシュ47、及びメッシュバンド52の拡大断面図である。同図に示すように、上記流通空間T2に加えて、メッシュ47とメッシュバンド52との間には、側面視においてメッシュ47の縦線材及び横線材と、メッシュバンド52の縦線材及び横線材とで囲まれた流通空間T3が形成されている。流通空間T3は、メッシュ47の縦線材及び横線材と、メッシュバンド52の縦線材及び横線材との間の隙間を接続した空間であり、上面31cと略平行に広がっている。
【0114】
メッシュバンド52の縦線材53a,53b,53c,53dがメッシュ47の横線材に接する部分(線材同士の交差部分)では、メッシュバンド52の横線材はメッシュ47の横線材から離れている。一方、メッシュバンド52の横線材がメッシュ47の縦線材に接する部分(線材同士の交差部分)では、メッシュバンド52の縦線材53a,53b,53c,53dはメッシュ47の縦線材から離れている。このため、流通空間T3は、縦線材及び横線材によって遮断されることはなく、上面31cと略平行に連続している。
【0115】
そして、メッシュ47の縦線材及び横線材とメッシュバンド52の縦線材及び横線材との間には、多数の微細な界面が形成されている。したがって、上面31cに供給された薬液は、多数の微細な界面における界面張力により、流通空間T2を通じて上面31cに沿って広がるとともに、流通空間T3を通じて上面31cと略平行に広がることとなる(毛細管現象)。さらに、薬液は、上面31c、メッシュ47の縦線材及び横線材、並びにメッシュバンド52の縦線材及び横線材に対して濡れ性を有しているため、薬液の広がりが促進される。なお、同図では、メッシュ47の縦線材とメッシュバンド52の縦線材との位置、及びメッシュ47の横線材とメッシュバンド52の横線材との位置が、互いに一致している状態を示したが、これらが互いにずれていてもよい。
【0116】
図10は、本体31の上面31c、メッシュ47、及び第1遮蔽部材50の拡大断面図である。同図に示すように、上記流通空間T2に加えて、第1遮蔽部材50の円板部50aとメッシュ47との間には、側面視において円板部50a、縦線材及び横線材で囲まれた流通空間T4が形成されている。流通空間T4は、上記流通空間T2と同様に形成されており、円板部50aの下面と、縦線材及び横線材との間の隙間を接続した空間であり、円板部50aの下面に沿って広がっている。
【0117】
したがって、上面31cに供給された薬液は、多数の微細な界面における界面張力により、流通空間T2を通じて上面31cに沿って広がるとともに、流通空間T4を通じて円板部50aの下面に沿って広がることとなる(毛細管現象)。さらに、薬液は、上面31c、円板部50aの下面、縦線材及び横線材に対して濡れ性を有しているため、薬液の広がりが促進される。
【0118】
次に、図1,3を参照して、液体気化器10の作用を説明する。ここでは、液体制御装置30により気化させられる薬液(例えば疎水化処理液)を、不活性ガス(例えば窒素)と混合して次の装置へと供給する場合を例として説明する。
【0119】
第1気体配管26bから不活性ガスが導入されると、第1気体流路21及び第1本体流路33を通じて、本体31の導入口33aから不活性ガスが吹き出す。ここで、導入口33aは凹部42の段部42a分の間隔をおいて第2遮蔽部材51により覆われているため、凹部42と第2遮蔽部材51とで形成される通路を通じて不活性ガスが導入口33bへ導かれる。導入口33bは抑制溝41の側壁に配置されているため、不活性ガスは本体31の上面31cに対して略平行に抑制溝41へ導入される。抑制溝41に導入された不活性ガスは、上面31cに対して平行な方向へ進み、抑制溝41に沿って流通することとなる。このため、不活性ガスがメッシュ47の網目から直ちに吹き出すことが抑制される。また、抑制溝41がメッシュ47により覆われていることによっても、不活性ガスが抑制溝41に沿って流通し易くなる。不活性ガスは、抑制溝41の広範囲まで流通しつつ、メッシュ47の網目から吹き出す。その結果、第1ハウジング11内の柱状空間Sへ不活性ガスが導入される。
【0120】
そして、不活性ガスは、第1ハウジング11の内周面と液体制御装置30の本体31との間に形成される隙間を流通して排出口34aへ流入する。排出口34aへ流入した不活性ガスは、第2本体流路34及び第2気体流路22を通じて、第2気体配管27bから排出される。第2気体配管27bは次の装置に接続されており、第2気体配管27bから排出される不活性ガスは次の装置へと供給される。
【0121】
薬液配管28bから薬液が供給されると、薬液流路23,35を通じて、本体31の供給口35aから上面31cへと薬液が供給される。このとき、供給口35aから供給される薬液は、供給口35aを覆う第1遮蔽部材50に当たるため、薬液がメッシュ47やメッシュバンド52を通過して噴出されることが抑制される。また、第1遮蔽部材50のピン50bが供給口35aに挿入されているため、第1遮蔽部材50に薬液の圧力が作用したとしても、第1遮蔽部材50が供給口35aからずれることが抑制される。さらに、ピン50bを、供給口35aに対する第1遮蔽部材50の位置決めに利用することもできる。
【0122】
本体31の上面31cと第1遮蔽部材50の円板部50aとの間では、図10に示したように、供給された薬液は、多数の微細な界面における界面張力により、流通空間T2を通じて上面31cに沿って広がるとともに、流通空間T4を通じて円板部50aの下面に沿って広がる。したがって、この部分では、上面31cに対してメッシュ47のみが設けられている部分よりも、薬液が速く広がることとなる。
【0123】
薬液は、第1遮蔽部材50の円板部50aの下を流通して更に周囲へと広がる。上面31cに対してメッシュ47のみが設けられている部分では、図7に示したように、薬液は、多数の微細な界面における界面張力により、流通空間T2を通じて上面31cに沿って広がる。一方、上面31cに対してメッシュ47及びメッシュバンド52が設けられている部分では、図9に示したように、薬液は、多数の微細な界面における界面張力により、流通空間T2を通じて上面31cに沿って広がるとともに、流通空間T3を通じて上面31cと略平行に広がる。したがって、第1遮蔽部材50の円板部50aの下を流通した薬液は、メッシュバンド52に沿って優先的に広がることとなる。
【0124】
また、上面31cに沿って第1遮蔽部材50の周囲へと広がった薬液の一部は、上面31cの抑制溝41に到達する。抑制溝41が形成された部分では、上面31cとメッシュ47との間に界面が形成されないため、薬液の広がりが抑制される。さらに、メッシュ47において抑制溝41を覆う部分では網目から不活性ガスが吹き出しているため、薬液が抑制溝41を超えて広がることが効果的に抑制される。すなわち、抑制溝41の部分においてメッシュ47の網目から吹き出す不活性ガスが、薬液を遮断するエアカーテンの役割を果たす。
【0125】
特に、抑制溝41とメッシュバンド52とが重なる部分では、メッシュバンド52を伝わることにより抑制溝41を超えて薬液が広がるおそれがある。この点、抑制溝41とメッシュバンド52とが重なる部分に配置された導入口33bから、不活性ガスがメッシュバンド52に対して吹き付けられるため、メッシュバンド52を伝わって抑制溝41を超えて薬液が広がることを抑制することができる。
【0126】
また、第2遮蔽部材51は、抑制溝41の全幅にはわたっておらず、第2遮蔽部材51が設けられた部分においても、抑制溝41によって上面31cが非連続とされている。このため、第2遮蔽部材51を伝わって抑制溝41を超えて薬液が広がることを抑制することができる。
【0127】
また、第2遮蔽部材51とメッシュ47とが重なる部分では、第2遮蔽部材51とメッシュ47との間に隙間が形成されている。このため、第2遮蔽部材51とメッシュ47との間に界面が形成されず、第2遮蔽部材51を超えて薬液が広がることを抑制することができる。
【0128】
ここで、抑制溝41の円弧部41aは、ヒータ挿入孔36(ヒータ80)側及び熱電対挿入孔37a,37b(熱電対83,84)側を除いて供給口35aの周囲を囲んでいるため、ヒータ80及び熱電対83,84側以外の方向への薬液の広がりが抑制される。その結果、ヒータ80側及び熱電対83,84側へ流通する薬液の量が増加し、ヒータ80側及び熱電対83,84側へ薬液の広がりが促進される。抑制溝41の直線部41cによっても、ヒータ80側及び熱電対83,84側への薬液の広がりが促進される。
【0129】
ヒータ挿入孔36にはヒータ80が挿入されており、ヒータ80により本体31の上面31cが加熱される。ここで、メッシュバンド52及び抑制溝41により、ヒータ80側への薬液の広がりが促進されるため、ヒータ80により薬液を加熱する効率を向上させることができる。さらに、メッシュバンド52は網目状に編まれて形成されているため、メッシュバンド52が板状や膜状に形成されている場合と比較して、メッシュバンド52を介した薬液の蒸発が促進される。したがって、メッシュバンド52により、薬液の良好な蒸発を維持しつつ、ヒータ80側への薬液の広がりを促進させることができる。
【0130】
上面31cに供給された薬液が蒸発した場合には、その気化熱により上面31cの温度が低下する。このため、第1熱電対83により上面31c近傍の温度を検出することにより、薬液の気化度合を推測することができる。ここで、メッシュバンド52及び抑制溝41により、第1熱電対83側への薬液の広がりが促進されるため、薬液の気化による上面31cの温度低下が第1熱電対83の検出値に敏感に反映される。したがって、薬液の気化度合を推測する精度を向上させることができる。なお、第2熱電対84により本体31の下面31e寄りの位置の温度を検出することができるため、この検出値をヒータ80により上面31cを加熱する制御に利用することもできる。
【0131】
また、抑制溝41の部分においてメッシュ47の網目から吹き出した不活性ガスは、供給口35a、第1熱電対83、ヒータ80の上を順に通過して、排出口34aから排出される。このため、不活性ガスによっても、供給口35aからヒータ80側及び熱電対83,84側への薬液の広がりが促進される。薬液が蒸発して生成された蒸気は、不活性ガスにより押されて排出口34aの方向へ導かれる。ここで、抑制溝41は、供給口35aに対して排出口34aと反対側に、本体31の短手方向の全長にわたって設けられている。このため、抑制溝41の部分においてメッシュ47の網目から吹き出す不活性ガスにより、薬液の蒸気を排出口34aの方向へ効果的に導くことができる。
【0132】
排出口34aには、供給口35aから排出口34aへの方向に対して略垂直な方向へ延びる集気溝34bが接続されている。このため、供給口35aから排出口34aへの方向から外れて広がる薬液や薬液の蒸気が、集気溝34bにより排出口34aへ導かれる。
【0133】
ここで、上面31cの外縁では、本体31と上記第2ハウジング20との境界に沿って、詳しくは本体31の上面31cと第2ハウジング20の側面20bとの境界に沿って、薬液が界面張力により広がり易くなる。この点、上面31cの外縁に沿って広がる薬液が、排出口34aから供給口35aへの方向に延びてから、供給口35aから排出口34aへの方向に対して略垂直な方向へ上面31cの外縁まで延びる延長部34cに流入することとなる。このため、上面31cの外縁に沿って広がる薬液を、集気溝34bにより効率的に排出口34aへ導くことができる。
【0134】
排出口34aを通じて第2本体流路34へ流入した薬液は、第2本体流路34及び第2気体流路22を流通する。そして、第2気体流路22の下部に溜まった薬液は、液体配管29bから排出される。液体配管29bに薬液が流入すると、薬液の流入が液体センサ29cにより検知される。したがって、供給口35aから供給される薬液が多過ぎる場合や、ヒータ80のスイッチが入っていない場合に、薬液が適切に蒸発していないことを検知することができる。
【0135】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0136】
・メッシュ47は、網目状に編まれ、本体31の上面31cに接するように設けられているため、上面31cとメッシュ47との間に複数の界面が形成される。したがって、上面31cに供給された薬液は、複数の界面における界面張力により、上面31cに沿って広がることとなる。
【0137】
ここで、上面31cにおいてメッシュ47と接する部分に抑制溝41が設けられているため、その抑制溝41の部分では上面31cとメッシュ47との間に界面が形成されず、薬液の広がりが抑制される。したがって、抑制溝41の配置を調整することにより、上面31cに接した薬液が広がる方向を制御することができ、薬液を所望の方向へ優先的に広げることができる。しかも、本体31の内部から導入口33bを通じて不活性ガスが抑制溝41へ導入されるため、抑制溝41とメッシュ47とで形成される流路内を不活性ガスが流通することとなる。その結果、抑制溝41内を流通してメッシュ47の網目から吹き出す不活性ガスにより、抑制溝41を超えて薬液が広がることを効果的に抑制することができる。
【0138】
・導入口33bを通じて不活性ガスが上面31cに対して略平行に抑制溝41へ導入されるため、抑制溝41内において不活性ガスが上面31cに対して平行な方向へ流通し易くなる。このため、抑制溝41内の不活性ガスがメッシュ47の網目から直ちに吹き出すことを抑制することができ、抑制溝41に沿って不活性ガスを流通させ易くなる。その結果、抑制溝41の広範囲においてメッシュ47の網目から不活性ガスを吹き出させることができ、抑制溝41の広範囲において薬液の広がりを効果的に抑制することができる。
【0139】
・供給口35aを通じて本体31の内部から上面31cへ薬液が供給され、メッシュ47の作用により薬液が上面31cに沿って広がることとなる。上面31cに沿って広がる薬液は、蒸発が促進されて蒸気になるとともに、抑制溝41の部分では広がりが抑制される。ここで、抑制溝41と排出口34aとの間に供給口35aが配置されているため、抑制溝41内を流通してメッシュ47の網目から吹き出す不活性ガスにより、薬液や薬液の蒸気が抑制溝41から排出口34aの方向へ押されることになる。その結果、薬液や薬液の蒸気を排出口34aから排出させ易くなる。
【0140】
・排出口34aに接続された集気溝34bが上面31cに設けられているため、集気溝34b内に流入した薬液や薬液の蒸気を排出口34aへ導き易くなる。その結果、薬液や薬液の蒸気を排出口34aから円滑に排出することができる。
【0141】
・上面31cにおいて供給口35aから排出口34aへの方向に対して略垂直な方向へ集気溝34bが延びているため、供給口35aから排出口34aへの方向から外れて広がる薬液や薬液の蒸気を、集気溝34bにより回収し易くなる。
【0142】
・上面31cが上側となるように本体31が配置されているため、抑制溝41内に流入した薬液が抑制溝41の底部に溜まるようになる。このため、抑制溝41内に流入した薬液が、メッシュ47側へ逆流することを抑制することができる。その結果、抑制溝41を超えて薬液が広がることを効果的に抑制することができる。また、集気溝34b内に流入した薬液が集気溝34bの底部に溜まるようになる。そして、集気溝34b内に溜まった薬液が、集気溝34bに沿って排出口34aへ導かれ易くなる。したがって、集気溝34b内に流入する薬液を、排出口34aから更に円滑に排出することができる。
【0143】
・本体31に設けられた排出口34aを通じて、上面31cの周囲の空間から本体31の内部へ薬液の蒸気と不活性ガスとの混合ガスが排出される。そして、排出口34aに接続された第2本体流路34及び第2気体流路22を通じて、本体31内部から混合ガスが排出される。ここで、上面31cが上側となるように本体31が配置されているため、排出口34a及び第2本体流路34を通じて第2気体流路22内に流入した薬液は第2気体流路22の下部に溜まることとなる。そして、第2気体流路22の下部から液体配管29bが分岐しているため、第2気体流路22の下部に溜まった薬液を液体配管29bから排出することができる。その結果、第2気体流路22内を流通する混合ガスと薬液とを適切に分離することができる。
【0144】
・何らかの異常等により第2気体流路22に薬液が流入した場合には、薬液の流入を液体センサ29cにより検知することができる。
【0145】
・上面31cに設けられた抑制溝41により、供給口35aからヒータ80と反対側への薬液の広がりが抑制される。そして、ヒータ80と反対側への薬液の広がりを抑制することにより、ヒータ80側への薬液の広がりを促進させることができる。その結果、ヒータ80による薬液の加熱を促進させることができ、薬液の蒸発を更に促進させることができる。
【0146】
・上面31cに設けられた抑制溝41により、供給口35aから熱電対83,84と反対側への薬液の広がりが抑制される。そして、熱電対83,84と反対側への薬液の広がりを抑制することにより、熱電対83,84側への薬液の広がりを促進させることができる。その結果、薬液の気化による上面31cの温度低下が、熱電対83,84の検出値に敏感に反映されるため、薬液の気化度合を推測する精度を向上させることができる。
【0147】
・メッシュ47に対して本体31側と反対側で接するようにメッシュバンド52が設けられているため、メッシュ47とメッシュバンド52との間にも複数の界面が形成される。したがって、メッシュ47とメッシュバンド52との間においても、界面張力により薬液を広げることができる。このため、メッシュバンド52の設けられた部分では、薬液の広がりを他の部分よりも促進させることができる。その結果、メッシュバンド52の配置を調整することにより、上面31cに接した薬液を所望の方向へ優先的に広げることができる。
【0148】
・抑制溝41とメッシュバンド52とが重なる部分に配置された導入口33bから抑制溝41へ不活性ガスが導入されるため、メッシュバンド52に吹き付けられる不活性ガスの量を増加させることができる。その結果、メッシュバンド52を伝わって抑制溝41を超えて薬液が広がることを抑制することができる。
【0149】
なお、上記実施形態を、次のように変形して実施することもできる。上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0150】
図11は、液体制御装置30の本体31の変形例を示す斜視図である。同図に示すように、抑制溝141の円弧部141aに導入口33aが直接連通している構成を採用することもできる。こうした構成によっても、本体31の内部から導入口33aを通じて不活性ガスが抑制溝141へ導入されるため、抑制溝141とメッシュ47とで形成される流路内に不活性ガスを流通させることができる。そして、抑制溝141内を流通してメッシュ47の網目から吹き出す不活性ガスにより、抑制溝141を超えて薬液が広がることを抑制することができる。
【0151】
図12は、液体制御装置30の本体31の他の変形例を示す斜視図である。同図に示すように、本体31の上面31cにおいて、導入口33bと排出口34aとを接続する抑制溝241を採用することもできる。こうした構成によれば、上述した集気溝34bに流入する薬液だけでなく、抑制溝241に流入する薬液も排出口34aに導くことができる。さらに、抑制溝241は供給口35aの全周を囲んでいる。このため、上面31cから薬液が溢れ出すことを抑制することができる。
【0152】
図13は、液体制御装置30の本体31の他の変形例を示す斜視図である。同図に示すように、本体131には、上面31cの対角線上に導入口33a及び排出口34aが形成されている。そして、上面31cにおいて集気溝34bに平行な抑制溝341が設けられており、導入口33aが抑制溝341に連通している。こうした構成によっても、抑制溝341に導入される不活性ガスが抑制溝341に沿って流通する。そして、抑制溝341の部分においてメッシュ47の網目から吹き出す不活性ガスが、供給口35a、熱電対挿入孔37a,37b(熱電対83,84)、ヒータ挿入孔36(ヒータ80)の上を順に通過して、排出口34aから排出される。したがって、不活性ガスによって、供給口35aからヒータ80側及び熱電対83,84側への薬液の広がりや、薬液の蒸気の流通を促進することができる。
【0153】
・第1遮蔽部材50を、メッシュバンド52の外側に設けることもできる。また、第1遮蔽部材50は、供給口35aを覆うものであればよく、その形状を任意に変更することができる。
【0154】
・メッシュ47やメッシュバンド52の編み方(織り方)は、平織りに限らず、綾織り等の他の織り方を採用することもできる。また、メッシュ47やメッシュバンド52の粗さは、それらに対する薬液の濡れ性や、本体31に対する薬液の濡れ性、薬液の粘度等に応じて、100〜500メッシュ程度の範囲で適切に設定することが望ましい。
【0155】
・上記の各実施形態では、メッシュバンド52が網目状に編まれていたが、これらを膜状に形成することもできる。この場合には、膜状に形成されたバンドが第1遮蔽部材50の機能を果たすため、第1遮蔽部材50を省略してもよい。また、薬液の供給圧力が低く、薬液がメッシュ47やメッシュバンド52を通過して噴出する可能性が低い場合にも、第1遮蔽部材50を省略してもよい。反対に、第1遮蔽部材50の設けられている部分には、メッシュバンド52を設けないようにしてもよい。すなわち、第1遮蔽部材50の設けられてない部分にのみ、メッシュバンド52を設けることもできる。なお、メッシュバンド52を、板状に形成することもできる。
【0156】
・本体31の形状は、底面長円形の柱状に限らず、直方体状等の他の形状を採用することもできる。また、本体31の上面31c(被供給面)は、平面に限らず、曲面を採用することもできる。
【0157】
・薬液として、疎水化処理液(HMDS)に限らず、シンナー系溶剤、シランカップリング剤等、他の薬液を採用することもできる。その際には、メッシュ47やメッシュバンド52の材質を、薬液との濡れ性に応じて変更することが望ましい。これらの材質として、例えばステンレス材以外の金属や樹脂等を用いることもできる。また、液体制御装置30は、液体気化器10に限らず、液体塗布器、成膜装置等、他の機器に適用することもできる。
【符号の説明】
【0158】
10…液体気化器、11…第1ハウジング、20…第2ハウジング、30…液体制御装置、31,131…本体、31c…上面(被供給面)、33a,33b…導入口、34a…排出口、34b…集気溝、35a…供給口、41,141,241,341…抑制溝(第1の溝)、42…凹部、47…メッシュ(網状体)、50…第1遮蔽部材(遮蔽部材、誘導部材)、51…第2遮蔽部材、52…メッシュバンド(誘導部材)、60…弁装置、80…ヒータ、83,84…熱電対(温度センサ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13