特許第5973179号(P5973179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973179
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】粘着テープロール
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20160809BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   B65D63/10 L
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-25490(P2012-25490)
(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-159766(P2013-159766A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142034
【氏名又は名称】株式会社共和
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 正
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−091547(JP,A)
【文献】 特開2006−006514(JP,A)
【文献】 実開昭50−070161(JP,U)
【文献】 実開昭51−036681(JP,U)
【文献】 特開2003−154776(JP,A)
【文献】 特開2007−282997(JP,A)
【文献】 特開平10−101128(JP,A)
【文献】 実開昭55−087341(JP,U)
【文献】 実開昭47−028483(JP,U)
【文献】 実開昭52−110064(JP,U)
【文献】 特開2000−297262(JP,A)
【文献】 実開昭64−033544(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B65D 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを巻回してなる粘着テープロールであって、
前記粘着テープには、前記基材を貫通する切れ目と、隣接する前記切れ目の間に残された未切断部とを交互に有し、かつ、前記粘着テープの長手方向に対する傾斜方向に沿って形成されたミシン目が、前記傾斜方向と直交する方向に一定の間隔をあけて平行に複数形成され、
前記複数のミシン目のうち、隣接するミシン目の隣接する切れ目同士が、前記粘着テープの幅方向に整列していることを特徴とする粘着テープロール。
【請求項2】
前記傾斜方向が前記長手方向となす角度は、5〜85度であることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープロール。
【請求項3】
前記切れ目は第1の長さを有し、前記未切断部は、前記第1の長さよりも長い第2の長さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の粘着テープロール。
【請求項4】
前記粘着テープの基材は一軸延伸または二軸延伸フィルムであり、当該一軸延伸フィルムの延伸方向または前記二軸延伸フィルムの一延伸方向が前記粘着テープの長手方向に沿っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項5】
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを巻回してなる粘着テープロールの製造方法であって、
前記粘着テープに、前記基材を貫通する切れ目と、隣接する前記切れ目の間に残された未切断部とを交互に有し、かつ、前記粘着テープの長手方向に対する傾斜方向に沿って形成されたミシン目を、前記傾斜方向と直交する方向に一定の間隔をあけて平行に複数形成する工程を有し、
前記複数のミシン目のうち、隣接するミシン目の隣接する切れ目同士が、前記粘着テープの幅方向に整列していることを特徴とする粘着テープロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着テープロールに関し、より詳しくは、粘着テープを引き出したときに当該粘着テープを指で容易かつ綺麗に切断することができる粘着テープロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セロハンフィルムの片面に粘着剤を塗布したものを帯状に構成し、接着剤を塗布したこの帯状フィルムをロール状に巻回してなるセロハンテープロール(一般に、セロハンテープと称される)がある。セロハンテープは、安価でしかも紙などの多様なものに接着できるため、多くの場面で使用されている。しかしながら、セロハンは経時変化により劣化しやすいため、セロハンテープは長期間の接着には不向きである。また、テープカッターが装着されていない場合や鋏などの切断具が近くにない場合には、指でセロハンテープを切断する必要がある。しかしながら、指で切断しようとすると、セロハンテープが伸びてしまったり、或いはセロハンテープに皺ができてしまい、セロハンテープを綺麗かつ速やかに切断できないというという問題があった。
【0003】
特許文献1には、テープ基材の幅方向中央部に、長手方向に沿って所要長さのスリットを断続的に配列してなる結束用粘着テープロールが開示されている。ユーザは、この結束用テープロールから結束用テープを引き出し、引き出した結束用テープを所望長さに切断し、切断した結束用テープをネギの結束に使用する。この結束用テープでネギを結束した後、ネギの束と結束用テープの隙間に臨むスリットを人差し指の腹で押圧することにより、スリットの一端部および他端部から結束用テープが幅方向に断裂する。結束用テープが断裂することにより、ネギの結束が解かれる。
【0004】
しかしながら、この結束用テープロールにおいては、当該ロールから引き出された結束用テープを指で所望長さに切断するための工夫はなされていない。よって、この結束用テープロールから引き出された結束用テープを所望の長さに切断するためには、鋏などの切断具が必要である。また、引き出された結束用テープを指で切断しようとすると、切断部の形が歪な形となる。歪な形となった切断部(端部)を結束用テープロールの表面に戻した後、当該切断部を結束用テープロールから引き剥がそうとすると、切断部が歪な形であるために、結束用テープがロールの表面からうまく剥がれず、速やか且つ綺麗に結束用テープを引き出すことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−178893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、粘着テープを引き出したときに当該粘着テープを指で容易かつ綺麗に切断することができる粘着テープロールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを巻回してなる粘着テープロールであって、
上記粘着テープには、上記基材を貫通する切れ目と、隣接する上記切れ目の間に残された未切断部とを交互に有し、かつ、上記粘着テープの長手方向に対する傾斜方向に沿って形成されたミシン目が、上記傾斜方向と直交する方向に一定の間隔をあけて平行に複数形成され、上記複数のミシン目のうち、隣接するミシン目の隣接する切れ目同士が、上記粘着テープの幅方向に整列していることを特徴とする。
【0008】
第1の発明における「傾斜方向」には、長手方向と平行な方向および直角な方向は含まれない。
第1の発明によれば、粘着テープには、その長手方向に対する傾斜方向に沿って手切り切断用のミシン目が形成されているので、粘着テープを引き出したときに当該粘着テープを指で容易かつ綺麗に切断することができる。粘着テープに幅方向に沿ったミシン目を形成した場合、長手方向への引張り強度が極端に小さくなり、粘着テープをロールから勢いよく引き出すと粘着テープが切れてしまったり、粘着テープを貼った後に少しの力で粘着テープが切れてしまう可能性がある。一般に、粘着テープで2つの物(例えば紙)を結合する際、人の習性として、当該物の端縁に対して粘着テープの長手方向が直角または平行になるように粘着テープを貼り付ける傾向がある。粘着テープに幅方向に沿ったミシン目を形成し、物の端縁に対して粘着テープの長手方向が直角になるように当該粘着テープを貼り付けた場合、テープの幅方向全体においてミシン目と物の端縁の位置が一致し、ミシン目に集中応力が加わり、テープが破断してしまう可能性がある。また、粘着テープに長手方向に沿ったミシン目を形成した場合、長手方向への引張り強度が極端に大きくなり、ロールから引き出した粘着テープを指で切断することが困難となる。また、粘着テープに長手方向に沿ったミシン目を形成し、物の端縁に対して粘着テープの長手方向が平行になるように当該粘着テープを貼り付けた場合、テープの長手方向全体においてミシン目と物の端縁の位置が一致し、ミシン目に集中応力が加わり、テープが破断してしまう可能性がある。これに対し、粘着テープに傾斜方向に沿ったミシン目を形成した場合、粘着テープをロールから勢いよく引き出しても切れることがなく、粘着テープを貼った後も切れにくくなり、しかも、ロールから引き出した粘着テープを指で容易に切断することができる。
【0010】
また、の発明によれば、貫通する切れ目を断続的に形成することによって、指による切断容易性を高めることができる。
【0012】
また、第1の発明によれば、粘着テープをロールから引き出した状態で、テープを任意の位置で切断することができる。
【0013】
の発明は、第の発明において、
上記傾斜方向が上記長手方向となす角度は、5〜85度であることを特徴とする。
【0014】
の発明によれば、第1の発明の効果をより確実に奏することができる。
【0017】
の発明は、第の発明または第2の発明において、
上記切れ目は第1の長さを有し、上記未切断部は、上記第1の長さよりも長い第2の長さを有することを特徴とする。
【0018】
未切断部を切れ目よりも長くすることで、未切断部を切れ目より短くした場合よりも、ミシン目の引張強度が大きくなる。これにより、粘着テープをロールから勢いよく引き出した時に当該粘着テープが切れる可能性、粘着テープを貼った後に当該粘着テープが切れる可能性を一層低減することができる。
【0019】
の発明は、第の発明乃至第3の発明において、
上記粘着テープの基材は一軸延伸または二軸延伸フィルムであり、当該一軸延伸フィルムの延伸方向または上記二軸延伸フィルムの一延伸方向が上記粘着テープの長手方向に沿っていることを特徴とする。
【0020】
の発明によれば、粘着テープの延伸方向が当該粘着テープの長手方向に沿っているので、粘着テープをロールから勢いよく引き出した時に当該粘着テープが切れる可能性、粘着テープを貼った後に当該粘着テープが切れる可能性を一層低減することができる。
【0021】
第5の発明は、
基材の一方の面に粘着面が形成された粘着テープを巻回してなる粘着テープロールの製造方法であって、
上記粘着テープに、上記基材を貫通する切れ目と、隣接する上記切れ目の間に残された未切断部とを交互に有し、かつ、上記粘着テープの長手方向に対する傾斜方向に沿って形成されたミシン目を、上記傾斜方向と直交する方向に一定の間隔をあけて平行に複数形成する工程を有し、上記複数のミシン目のうち、隣接するミシン目の隣接する切れ目同士が、上記粘着テープの幅方向に整列していることを特徴とする粘着テープロールの製造方法である。
【0022】
の発明によれば、第1の発明に係る粘着テープロールを製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、粘着テープを引き出したときに当該粘着テープを指で容易かつ綺麗に切断することができる粘着テープロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る粘着テープロールを示す図
図2】(A)図1に示される粘着テープを拡大して示す図、(B)ミシン目を拡大して示す図
図3】人が粘着テープを貼るときの習性を示す図
図4】人が粘着テープを貼るときの習性を示す図
図5】粘着テープに幅方向に沿ったミシン目を形成した場合の、当該粘着テープの使用例を示す図
図6】粘着テープに長手方向に沿ったミシン目を形成した場合の、当該粘着テープの使用例を示す図
図7】本発明に係る粘着テープの使用例を示す図
図8】本発明に係る粘着テープの使用例を示す図
図9】粘着テープを引張試験機のクランプ部にクランプさせた状態を示す図
図10】引張強度時試験の試験結果を数値で示す図
図11図10に示される試験結果をグラフで表した図
図12】手切れ性試験の試験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態)
本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る粘着テープロールを示す図である。図2は、図1に示される粘着テープのミシン目を拡大して示す図である。
【0026】
本実施形態に係る粘着テープロール1は、一方の面に粘着面2が形成された粘着テープ3を巻回することにより構成される。粘着テープ3は、合成樹脂フィルムからなる基材と、この基材の裏面に設けられた粘着剤層とを備え、この粘着剤層が粘着面2を構成している。
【0027】
粘着テープ3には、その長手方向H1に対する傾斜方向H2に沿って手切り切断用のミシン目4が形成されている。図2に示されるように、ミシン目4は、基材を貫通する切れ目5と、隣接する切れ目5の間に残された未切断部6とを交互に有する。粘着テープ3においては、ミシン目4の列が、長手方向H1に微小間隔をおいて互いに平行に多数形成されている。ここで言う微小間隔の値は特に限定されないが、ユーザが、あたかも粘着テープ3をその長手方向の任意の位置で切断できると感じる程度の間隔であることが好ましい。そのような間隔として、例えば、2mmに設定することができる。
【0028】
切れ目5は微小な第1の長さL1を有し、未切断部6は、第1の長さL1よりも長い第2の長さL2を有する。L1、L2の値は特に限定されるものではないが、例えば、L1を0.05〜1.0mmの間で設定することが好ましく、より好ましくは0.08〜0.75mm、さらに好ましくは0.1〜0.5mmの間で設定される。代表的な例として、例えば、L1を0.2mm、L2を2mmに設定することができる。切れ目5の存在密度は特に限定されないが、例えば、縦20mm、横20mmとする400mm2のテープ面積中、100個程度の切れ目5を形成することが好ましい。
【0029】
粘着テープ3の基材は、セロハンよりも引張強度(破断強度)が大きい素材から構成され、例えば、一軸延伸ポリプロピレンまたは二軸延伸ポリプロピレン(以下、OPPと称する)のフィルムであり、一軸延伸ポリプロピレンフィルムの延伸方向または二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一延伸方向が粘着テープ3の長手方向に沿っている。なお、粘着テープ3の基材の材質は上記の例に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)から構成することも可能である。
【0030】
また、粘着テープ3の基材は、セロハンテープよりも長手方向への引張強度が高く、かつ、セロハンテープよりも経時低変質性の素材から構成されている。傾斜方向H2が長手方向H1となす角度は、粘着テープ3のミシン目4がミシン目の無いセロハンテープと同程度の引張強度および同程度の手切れ性を有する値に設定されている。例えば、傾斜方向H2が長手方向H1となす角度は、45〜78.75度である。
【0031】
次に、粘着テープロール1の使用方法について説明する。
まず、粘着テープロール1の表面から粘着テープ3を引き出す。次いで、引き出した粘着テープ3の一方の側縁部を両手の指で持ち、その指で粘着テープ3にせん断力を与える。そのせん断力により、粘着テープ3はミシン目4を境として切断される。これにより、所望長さの粘着テープ3を得ることができる。切断して得た所望長さの粘着テープ3は、適所に貼り付けられ、例えば図画工作等に使用することができる。
【0032】
粘着テープロール1によれば、粘着テープ3には、その長手方向H1に対する傾斜方向H2に沿って手切り切断用のミシン目4が形成されているので、粘着テープ3をロール1から引き出したときに当該粘着テープ3を指で容易かつ綺麗に(直線状に)切断することができる。粘着テープ3に幅方向に沿ったミシン目4を形成した場合、長手方向H1への引張り強度が極端に小さくなり、粘着テープ3をロール1から勢いよく引き出すと粘着テープ3が切れてしまったり、粘着テープ3を貼った後に少しの力で粘着テープ3が切れてしまったりする可能性がある。
【0033】
一般に、粘着テープ100で2つの物(例えば紙)を結合する際、人の習性として、図3、4に示されるように、当該物8の端縁9に対して粘着テープ100の長手方向が直角または平行になるように粘着テープ100を貼り付ける傾向がある。図5に示されるように、粘着テープ101に幅方向に沿ったミシン目102を形成し、物8の端縁9に対して粘着テープ101の長手方向が直角になるように当該粘着テープ101を貼り付けた場合、ミシン目102の方向と物8の端縁9の方向が一致し、ミシン目101に集中応力が加わり、テープ101が破断してしまう可能性がある。また、粘着テープ3に、長手方向H1に沿ったミシン目4を形成した場合、長手方向H1への引張り強度が極端に大きくなり、粘着テープ3をロールから引き出した状態で、指で切断することが困難となる。また、図6に示されるように、粘着テープ103に長手方向に沿ったミシン目104を形成し、物8の端縁9に対して粘着テープ103の長手方向が平行になるように当該粘着テープ103を貼り付けた場合、ミシン目104の方向と物8の端縁9の方向が一致し、ミシン目104に集中応力が加わり、テープ103が破断してしまう可能性がある。
【0034】
これに対し、粘着テープ3に、傾斜方向H2に沿ったミシン目4を形成した場合、粘着テープ3をロール1から勢いよく引き出しても切れることがない。また、図7、8に示されるように、粘着テープ3のミシン目4の方向と物8の端縁9の方向が一致しにくいので、粘着テープ3を貼った後も切れにくくなる。しかも、粘着テープ3をロール1から引き出した状態で、指で容易に切断することができる。
【0035】
また、粘着テープロール1によれば、貫通する切れ目5を断続的に形成することによって、指による切断容易性を高めることができる。
【0036】
また、粘着テープロール1によれば、ミシン目4の列が、微小間隔をおいて多数形成されているので、粘着テープ3をロール1から引き出した状態で、粘着テープ3を任意の位置で切断することができる。
【0037】
また、粘着テープロール1によれば、未切断部6を切れ目5よりも長くすることで、未切断部6を切れ目5より短くした場合よりも、ミシン目4の引張強度が大きくなる。これにより、粘着テープ3をロール1から勢いよく引き出した時に粘着テープ3が切れる可能性、粘着テープ3を貼った後に当該粘着テープ3が切れる可能性を一層低減することができる。
【0038】
また、粘着テープロール1によれば、粘着テープ3の延伸方向が当該粘着テープ3の長手方向H1に沿っているので、粘着テープ3をロール1から勢いよく引き出した時に当該粘着テープ3が切れる可能性、粘着テープ3を貼った後に当該粘着テープ3が切れる可能性を一層低減することができる。
【0039】
また、粘着テープロール1によれば、粘着テープ3がセロハンテープよりも長手方向への引張強度が高く、かつ、セロハンテープよりも経時低変質性の素材から構成され、傾斜方向H2が長手方向H1となす角度を45〜78.75度としたので、セロハンテープと同程度の引張強度および手切れ性を有し、かつ、セロハンテープよりも経時低変質性の粘着テープ3を得ることができる。
【0040】
次に、粘着テープ3の試験について説明する。
<引張強度試験>
まず、ミシン目の傾斜角度が異なる複数の粘着テープを用意し、各粘着テープを図9に示される引張試験機の2つのクランプ部7にクランプさせた。一方のクランプ部7は、粘着テープの長手方向一端側に位置し、他方のクランプ部7は、粘着テープの長手方向他端側に位置し、互いが「ハ」字をなすように配置した。クランプ部7同士がなす角度の初期値は例えば30度である。2つのクランプ部7は、間隔が小さい側の間隔d1が、間隔が大きい側の間隔d2に等しくなるまで向きを変えて行く。つまり、2つのクランプ部7は、互いが平行になるまで向きを変えて行く(矢印の向きに変位する)。これにより、粘着テープの間隔d1に大きな引張応力が発生し、許容引張応力を超えた時点で粘着テープは間隔d1側から破断する。なお、クランプ部7の引張りにより発生する応力は、人が指で切断する際に発生するせん断応力に近い値である。
【0041】
ミシン目の傾斜角度は、粘着テープの長手方向に対してミシン目がなす角度である。傾斜角度が、(1)90.00度、(2)78.75度、(3)67.50度、(4)56.25度、(5)45.00度、(6)33.75度、(7)22.50度、(8)11.25度、(9)0.00度、に設定された粘着テープについてそれぞれ3回ずつ試験を行い、破断強度の3回分の平均値を算出した。なお、(1)はミシン目が粘着テープの幅方向に沿って形成されていることを意味し、(9)はミシン目が粘着テープの長手方向に沿って形成されていることを意味する。
【0042】
なお、粘着テープの基材の材質または切れ目の状態が異なるものを以下の3種類用意し、それぞれについて上記(1)〜(9)の角度変更を行って実験した。1種類目は、(a)材質がOPPであって幅方向両端部に切れ目が無いもの、2種類目は、(b)材質がOPPであって幅方向両端部に切れ目があるもの、3種類目は、(c)材質がPETであって幅方向両端部に切れ目があるものであった。試験結果を図10、11に示す。図10は、試験結果を数値で示す図である。図11は、図10に示される数値をグラフで表した図である。図10には、セロハンテープについての試験結果も掲載した。図11には、セロハンテープの試験結果である引張強度の最大値と最小値の間の領域を横長長方形で併せて示した。図11において、実線のグラフは上記(a)の条件、一点鎖線のグラフは上記(b)の条件、破線のグラフは上記(c)の条件に対応する。
【0043】
(試験結果)
図10、11からわかるように、ミシン目の傾斜角度が小さくなるにつれて、つまりミシン目の方向が粘着テープの長手方向に近づくにつれて、次第に破断に要する引張力が大きくなることがわかる。上記引張強度が小さいほど手切れ性が良くなる反面、長手方向の引張りに弱くなるので、適切な角度設定が必要となる。図11からわかるように、セロハンテープと同程度の引張強度(破断強度)を有するためには、上記(a)の条件では、例えば、90度傾斜角度23度が好ましく、上記(b)の条件では、例えば、90度傾斜角度39度が好ましく、上記(c)の条件では、例えば、90度傾斜角度45度が好ましい。
【0044】
次に、粘着テープ3の手切れ性試験について説明する。
<手切れ性試験>
本発明に係る粘着テープ3(実施例)の手切れ性と、比較例の手切れ性について感応試験を行った。具体的には、以下の実施例1〜4、比較例1〜3に係る粘着テープロールを20個用意し、各粘着テープロールから粘着テープを引き出し、引き出された粘着テープを指で幅方向に切断する動作を行い、切断のし易さについて試験した。
【0045】
(実施例1)
実施例1に係る粘着テープロールの粘着テープは、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム製であり、幅20mm、厚さ40μm、幅方向両端部(各端部幅1〜1.5mm)に切れ目5無し、長手方向H1に対してミシン目4がなす角度56.25度、ミシン目4の切れ目5の長さ0.2mm、未切断部6の長さ2mmであった。
【0046】
(実施例2)
実施例2に係る粘着テープロールの粘着テープは、OPP製であり、幅20mm、厚さ40μm、幅方向両端部(各端部幅1〜1.5mm)に切れ目5無し、長手方向H1に対してミシン目4がなす角度45度、ミシン目4の切れ目5の長さ0.2mm、未切断部6の長さ2mmであった。
【0047】
(実施例3)
実施例3に係る粘着テープロールの粘着テープは、OPP製であり、幅20mm、厚さ40μm、幅方向両端部(各端部幅1〜1.5mm)に切れ目5無し、長手方向H1に対してミシン目4がなす角度22.5度、ミシン目4の切れ目5の長さ0.2mm、未切断部6の長さ2mmであった。
【0048】
(実施例4)
実施例4に係る粘着テープロールの粘着テープは、OPP製であり、幅20mm、厚さ40μm、幅方向両端部に切れ目5有り、長手方向H1に対してミシン目4がなす角度15度、ミシン目4の切れ目5の長さ0.2mm、未切断部6の長さ2mmであった。
【0049】
(比較例1)
比較例1に係る粘着テープロールの粘着テープは、セロハン製であり、幅20mm、フィルム厚さ36μm、ミシン目無しであった。
【0050】
(比較例2)
比較例2に係る粘着テープロールの粘着テープは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)製であり、幅20mm、フィルム厚さ25μm、ミシン目無しであった。
【0051】
(比較例3)
比較例3に係る粘着テープロールの粘着テープは、OPP製であり、幅20mm、フィルム厚さ40μm、ミシン目無し、幅方向両端部(各端部幅5mm)にランダムに多数の穴明けをしたものであった。
【0052】
(試験結果)
図12に試験結果を示す。図12に示されるように、実施例1〜4に係る粘着テープは、いずれも、20回すべて問題なく容易に切断することができた。また、いずれの粘着テープもミシン目で切断されるので、切断部は直線状であった。このため、引き出された粘着テープをロール表面に戻しても、粘着テープを剥がして再度引き出すことは容易であった。
【0053】
これに対し、比較例1に係る粘着テープは、長手方向に近い予期しない角度で歪な形で切れること(斜め切れ)が多かった。このため、引き出された粘着テープをロール表面に戻し、粘着テープを剥がして再度引き出すことが容易ではなかった。また、比較例2に係る粘着テープは、20回すべて切断することができなかった。無理に切とうとすると粘着テープが大きく伸びてしまった。また、比較例3に係る粘着テープは、最初に力を加えたときに切れない場合があり、その場合は力を加える位置を少しずらすと切れた。比較例3に係る粘着テープは、切りにくいという印象であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、粘着テープを引き出したときに当該粘着テープを指で容易かつ綺麗に切断することができる粘着テープロール等に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 粘着テープロール
2 粘着面
3 粘着テープ
4 ミシン目
5 切れ目
6 未切断部
7 クランプ部
H1 長手方向
H2 傾斜方向
d1 狭い側の間隔
d2 広い側の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12