特許第5973188号(P5973188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973188
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B60N2/44
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-45553(P2012-45553)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-180654(P2013-180654A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】田村 宏
(72)【発明者】
【氏名】尾沼 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 輝充
(72)【発明者】
【氏名】牧口 文哉
(72)【発明者】
【氏名】宇野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 可定
(72)【発明者】
【氏名】小暮 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野木森 亘
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−200509(JP,A)
【文献】 特開2008−253570(JP,A)
【文献】 特開2006−043445(JP,A)
【文献】 実開昭61−196740(JP,U)
【文献】 特開2000−280813(JP,A)
【文献】 再公表特許第2003/084786(JP,A1)
【文献】 特開2002−071830(JP,A)
【文献】 特開2011−194050(JP,A)
【文献】 特開2000−037256(JP,A)
【文献】 特開2011−105277(JP,A)
【文献】 特開2001−080402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート高さ方向の中間部にシート幅方向に延びるフレーム部材又はパッド保持部材を有し、かつシートバックの骨格を形成するシートバックフレームと、
前記シートバックフレームに取付けられると共に、乗員が着座した際にシート後方側が前記フレーム部材に当接することが可能とされたシートバックパッドと、
前記シートバックパッドの前面側に設けられると共に、着座乗員の胸郭対向部位に配置されかつシート正面視で前記フレーム部材又は前記パッド保持部材と重ならないように該フレーム部材又は該パッド保持部材と近接する位置に配置され、前記着座乗員の呼吸状態を検出する生体センサと、
を備え、
シート幅方向を長手方向とする帯状に形成された前記生体センサがシート幅方向に延びるように設けられた車両用シート。
【請求項2】
前記フレーム部材がシート機能部品の取付け部とされた請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記生体センサは、前記シートバックパッドのシート前方側の面でかつ表皮材の内側に取付けられている請求項1又は請求項2記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体センサをシートバックに設けることによって、シートに着座した乗員の生体情報を検出する車両用シートが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−61490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートバックに設けられた生体センサによって、シートに着座した乗員の呼吸状態(胸郭変動)を検出する場合、この呼吸状態の検出精度の更なる向上が望まれている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートに着座した乗員の呼吸状態の検出精度を向上させることができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両用シートは、シート高さ方向の中間部にシート幅方向に延びるフレーム部材又はパッド保持部材を有し、かつシートバックの骨格を形成するシートバックフレームと、前記シートバックフレームに取付けられると共に、乗員が着座した際にシート後方側が前記フレーム部材に当接することが可能とされたシートバックパッドと、前記シートバックパッドの前面側に設けられると共に、着座乗員の胸郭対向部位に配置されかつシート正面視で前記フレーム部材又は前記パッド保持部材と重ならないように該フレーム部材又は該パッド保持部材と近接する位置に配置され、前記着座乗員の呼吸状態を検出する生体センサと、を備え、シート幅方向を長手方向とする帯状に形成された前記生体センサがシート幅方向に延びるように設けられている。
【0007】
請求項1記載の本発明の作用は以下の通りである。
乗員が車両用シートに着座してシートバックに凭れ掛かると、シートバックパッドはシート後方側へ湾曲するように変形(弾性変形)する。ここで、シートバックパッドにおけるフレーム部材又はパッド保持部材との当接部位はフレーム部材又はパッド保持部材に支持されているため、この部位におけるシートバックパッドの変形が規制される。即ち、乗員の呼吸に伴う胸郭変動によるシートバックパッドの変形の追従性がフレーム部材又はパッド保持部材によって規制される。従って、生体センサがシート正面視でフレーム部材又はパッド保持部材と重なるように配置された場合、この生体センサの変位量が規制される。
【0008】
しかしながら、本発明では、生体センサがシート正面視でフレーム部材又はパッド保持部材と重ならないように配置されている。そのため、この生体センサが設けられている部位におけるシートバックパッドの変形の追従性が、フレーム部材又はパッド保持部材によって規制され難くなる。即ち、この生体センサの変位量が規制され難くなる。
【0010】
また、請求項記載の本発明では、生体センサがシート幅方向に延びるように設けられている。そのため、着座乗員の胸郭変動をシート幅方向の広範囲で検出することが可能となる。
【0011】
請求項記載の本発明に係る車両用シートは、請求項記載の車両用シートにおいて、前記フレーム部材がシート機能部品の取付け部とされたことを特徴としている。
【0012】
請求項記載の本発明では、フレーム部材がシート機能部品の取付け部とされているため、シートバックに設けられたシート機能部品を安定して取付けることが可能となる。
請求項記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2記載の車両用シートにおいて、前記生体センサは、前記シートバックパッドのシート前方側の面でかつ表皮材の内側に取付けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び請求項3記載の本発明に係る車両用シートは、シートに着座した乗員の呼吸状態の検出精度を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0014】
請求項記載の本発明に係る車両用シートは、シートバックに設けられたシート機能部品を安定して取付けることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の車両用シートを該シートの斜め前方側から見た斜視図である。
図2】マッサージ切替バルブや送風ファン及びリトラクタが取付けられたシートバックフレームをシートの斜め後方側から見た拡大斜視図である。
図3】(A)はシートバックを図2の3A−3A線に沿って切断した断面を示す断面図であり、(B)はシートバックを図2の3B−3B線に沿って切断した断面を示す断面図である。
図4図1の4−4線に沿って切断した断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、シート前後方向前方側を矢印FRで示し、シート幅方向を矢印Wで示し、シート上下方向上側を矢印UPで示す。また、以下の説明で、特記なく前後、上下の方向を用いる場合は、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、1人の乗員が着座することが可能とされたセパレートシートとされている。具体的には、車両用シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、乗員の上体を支持するシートバック14と、を備えている。以下、先ずシートクッション12について説明し、次いでシートバック14について説明する。
【0018】
(シートクッション12)
シートクッション12は、シート幅方向の両端部がシート上方側に向けて突設するように形成されると共に表皮材によって被われたシートクッションパッド18が、図示しないシートクッションフレームに固定されることによって構成されている。また、シートクッションフレームは一対のサイドフレームを備えており、後述するシートバックフレーム20の下端部がこのサイドフレームの後端部に傾倒可能に接続されている。
【0019】
(シートバック14)
シートバック14は、該シートバック14の骨格を形成するシートバックフレーム20と、このシートバックフレーム20をシート前方側から被うように取付けられたシートバックパッド22と、を備えている。このシートバックパッド22には、着座乗員の呼吸状態(胸郭変動)を検出する生体センサ16が設けられている。また、シートバックフレーム20には、シートベルト装置24のウェビング26を巻き取るリトラクタ28及び乗員の背中を刺激(マッサージ)するマッサージ切替バルブ30が取付けられている。さらに、シートバック14には、乗員の背中に向けて空気を送風する送風ファン32が設けられている。以下、シートバックフレーム20、シートバックパッド22、生体センサ16、リトラクタ28、マッサージ切替バルブ30及び送風ファン32についてこの順で説明する。
【0020】
図2に示されるように、シートバックフレーム20は、シート下方側に開口し略U字状に形成されたシートバックフレーム本体部34を備えている。また、このシートバックフレーム本体部34は、シート幅方向の両端部に配置されると共にシート上下方向に延びる一対の縦壁部34A,34Bと、この一対の縦壁部34A,34Bの上端部同士を繋ぐ基壁部34Cと、を含んで形成されている。さらに、シートバックフレーム20は、この一対の縦壁部34A,34Bをシート幅方向に繋ぐフレーム部材としての第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38を備えている。この、第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38はパイプ状に形成されていると共にシート上下方向に沿って並列するように配置されている。
【0021】
図1に示されるように、シートバックパッド22は、ウレタンフォームによって形成されていると共に、シートバック14のクッション層を構成している。具体的には、図3(A)及び(B)に示されるように、このシートバックパッド22は、シートバック14のシート幅方向中央部に配置されたパッド本体部22Aと、このパッド本体部22Aのシート幅方向両側に配置されたサイドサポート部22Bと、を備えている。また、パッド本体部22Aとサイドサポート部22Bとの境界部には、シート前側に開口しシート高さ方向に延びる溝部22Cがそれぞれ形成されている。さらに、パッド本体部22Aは乗員が着座することによってシート後方側が第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38に当接することが可能となっている。なお、シートバックパッド22の表面は、布や皮革等を用いて形成された表皮材40(図1参照)によって覆われている。
【0022】
図1及び図4に示されるように、生体センサ16は、帯状の圧力センサとされている。また、本実施形態では2つの生体センサ16がシート上下方向に沿って設けられていると共に、シート幅方向を長手方向としてパッド本体部22Aのシート前方側の面(かつ表皮材40の内側)に取付けられている。さらに、図4に示されるように、この生体センサ16は、着座乗員Hの胸郭対向部位に配置されかつシート正面視で第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38と重ならないように配置されている。なお、二点差線で示された着座乗員Hの輪郭は、日本人の標準男性のダミー(JM50)を日本及び欧州で採用されている側面衝突試験法(ECE R95)及び米国で採用されている側面衝突試験法(FMVSS214)で定められた着座姿勢にてシートに着座させた状態の輪郭である。
【0023】
図1及び図2に示されるように、シート機能部品としてのリトラクタ28は、ウェビング26を巻き取る図示しないスプール、ロック機構及びプリテンショナ機構等を備えている。図2に示されるように、このリトラクタ28は、シートバックの後方側かつ第1サブフレーム36の上方側に配置されると共に、ブラケット42を介して第1サブフレーム36に固定されている。
【0024】
図1及び図2に示されるように、アクチュエータとしてのマッサージ切替バルブ30の内部には、振動を発生する振動発生装置が設けられている。この振動発生装置が作動することによって、マッサージ切替バルブ30自体が数ヘルツから数十ヘルツの振動数で振動し、乗員の背中が刺激(マッサージ)される構成である。このマッサージ切替バルブ30は、着座乗員H(図4参照)の胸郭対向部位に配置されかつ第1サブフレーム36の上方側及び下方側にそれぞれ設けられている。さらに、このマッサージ切替バルブ30はブラケット44,46を介して第1サブフレーム36に固定されている。
【0025】
図1に示されるように、シート機能部品としての送風ファン32は第2サブフレーム38の後方側に設けられている。
【0026】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0027】
乗員が、図1に示された車両用シート10に着座すると共にシートバック14に凭れ掛かると、このシートバック14を構成するシートバックパッド22はシート後方側へ湾曲するように変形(弾性変形)する。ここで、シートバックパッド22における第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38と当接する部位は、第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38に支持されているため、この部位におけるシートバックパッド22の変形が規制される。即ち、乗員の呼吸に伴う胸郭変動によるシートバックパッド22の変形が第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38によって規制される。従って、生体センサ16がシート正面視で第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38と重なるように配置された場合、この生体センサ16の変位量が規制され、その結果、乗員の胸郭変動に対する生体センサ16の検出精度が低下することが考えられる。
【0028】
しかしながら、本実施形態では、生体センサ16がシート正面視で第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38と重ならないように配置されている。そのため、この生体センサ16が設けられている部位におけるシートバックパッド22の変形が、第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38によって規制され難い。即ち、この生体センサ16の変位量が規制され難い。その結果、本実施形態では、生体センサ16による胸郭変動の検出精度を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、帯状の生体センサ16がシート幅方向に延びるように設けられている。そのため、着座乗員の胸郭変動をシート幅方向の広範囲で検出することが可能となる。その結果、本実施形態では、生体センサ16による胸郭変動の検出精度をより一層向上させることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、日本人の標準男性のダミー(JM50)を所定の姿勢で着座させた状態における胸郭対向部位に生体センサ16を配置した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。このダミー(着座乗員)の体格は車両が販売される地域の人々の標準体型等を考慮して適宜設定すれば良い。
【0032】
さらに、本実施形態では、シート上下方向に沿って2つの生体センサ16を設けた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、1つの生体センサ或いは3つ以上の生体センサを設けた構成としてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、生体センサ16がシート正面視で第1サブフレーム36及び第2サブフレーム38と重ならないように配置された例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シートの幅方向に延びるパッド保持部材としてのシートクッションワイヤが設けられている車両用シートにおいては、生体センサ16をシート正面視でシートクッションワイヤと重ならないように配置することによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10 車両用シート
14 シートバック
16 生体センサ
20 シートバックフレーム
22 シートバックパッド
28 リトラクタ(シート機能部品)
30 マッサージ切替バルブ(シート機能部品)
32 送風ファン(シート機能部品)
36 第1サブフレーム(フレーム部材)
38 第2サブフレーム(フレーム部材)
H 着座乗員
図1
図2
図3
図4