特許第5973198号(P5973198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973198紫外線照射で視認可能なインクジェット印刷用インク組成物及び隠しマーク付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973198
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】紫外線照射で視認可能なインクジェット印刷用インク組成物及び隠しマーク付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20160809BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20160809BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20160809BHJP
   C09D 11/50 20140101ALI20160809BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20160809BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20160809BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160809BHJP
   B41J 2/01 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
   B65D25/20 Q
   B65D23/00 H
   C09D11/328
   C09D11/50
   C09B57/10
   C09B67/46 A
   B41M5/00 E
   !B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-71963(P2012-71963)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-203801(P2013-203801A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239080
【氏名又は名称】福岡パッキング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由樹子
(72)【発明者】
【氏名】南 弘一
(72)【発明者】
【氏名】梅川 雅弘
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−059831(JP,A)
【文献】 特開2000−160083(JP,A)
【文献】 特表2001−507052(JP,A)
【文献】 特開2003−020422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
C09B 57/10
C09B 67/46
B65D 25/20
B65D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器外表面に、紫外線照射で視認可能な隠しマークがインクジェット印刷により形成されて成る隠しマーク付き容器において、前記隠しマークが、
ベース樹脂、青系蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤から成り、前記青系蛍光着色剤が2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)であるインクジェット用インク組成物から成る青色系隠しマークと、
ベース樹脂、蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤を含有してなるインクジェット用インク組成物であって、前記蛍光着色剤が、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)、及び4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムから成る酸化ユウロピウム系染料の組み合わせから成り、該酸化ユウロピウム系染料(赤系蛍光着色剤)と前記2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)(青系蛍光着色剤)の比率(赤系蛍光着色剤/青系蛍光着色剤)が、1.0乃至8.4(重量比)であり、前記赤系蛍光着色剤及び青系蛍光着色剤から成る蛍光着色剤がベース樹脂100重量部に0.8〜23.0重量部の量で含有されている、インクジェット用インク組成物から成る赤色系隠しマークの両方を有することを特徴とする隠しマーク付き容器。
【請求項2】
前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂がエポキシ系樹脂である請求項1記載の隠しマーク付容器。
【請求項3】
前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂100重量部当り、導電剤が0.08乃至17.0重量部、レベリング剤が0.4乃至8.0重量部の量で含有されている請求項1又は2記載の隠しマーク付容器
【請求項4】
容器外表面に、紫外線照射で視認可能な隠しマークがインクジェット印刷により形成されて成る隠しマーク付き容器の製造方法において、
前記隠しマークが、ベース樹脂、青系蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤から成り、前記青系蛍光着色剤が2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)であるインクジェット用インク組成物から成る青色系隠しマークと、
ベース樹脂、蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤を含有してなるインクジェット用インク組成物であって、前記蛍光着色剤が、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)、及び4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムから成る酸化ユウロピウム系染料の組み合わせから成り、該酸化ユウロピウム系染料(赤系蛍光着色剤)と前記2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)(青系蛍光着色剤)の比率(赤系蛍光着色剤/青系蛍光着色剤)が、1.0乃至8.4(重量比)であり、前記赤系蛍光着色剤及び青系蛍光着色剤から成る蛍光着色剤がベース樹脂100重量部に0.8〜23.0重量部の量で含有されている、インクジェット用インク組成物から成る赤色系隠しマークの両方を有すると共に、
前記赤色系隠しマークが、容器の仕上げニス焼付け後に印字されることを特徴とする隠しマーク付き容器の製造方法。
【請求項5】
前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂がエポキシ系樹脂である請求項4記載の隠しマーク付容器の製造方法。
【請求項6】
前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂100重量部当り、導電剤が0.08乃至17.0重量部、レベリング剤が0.4乃至8.0重量部の量で含有されている請求項4又は5記載の隠しマーク付容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射で視認可能なインクジェット印刷用インク組成物に関するものであり、より詳細には多数の印字が重なり合った場合にも印字の識別が容易なインクジェット印刷用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製造工程や流通経路の追跡や、偽造品の防止対策のために、紫外線を照射することにより視認し得る隠しマークを有する容器は知られており、このような隠しマークは、紫外線を照射すると蛍光発光し、視認可能になるインクジェット印刷用インクを用いてマーキングすることが広く行われている。
【0003】
従来の紫外線照射により視認可能なインクジェット印刷用インクを用いて形成された隠しマークは、容器がレトルト殺菌等の高温高湿度条件下におかれると、樹脂劣化による白化や着色により、隠しマークが通常の状況(可視光線下)で視認されてしまう場合や、或いは容器表面に形成された隠しマークが退色等することにより、隠しマークを確実に表示できないおそれがあった。
このような問題を解決するために、本出願人等は、レトルト処理、製缶工程でのオーブンキュア等の熱処理を伴う工程を経た後にも隠しマークが白化や黄変して顕在化することや、隠しマークのにじみや退色等が防止された、可視光線下では不可視であるが、紫外線を照射した際に容易に視認することの可能なインク組成物を提案した(特許文献1)。
【0004】
また上記特許文献1記載のインク組成物は紫外線照射により青色系に発色するものであるが、紫外線照射により赤色系に発色するインク組成物も知られている(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−59831号公報
【特許文献2】特開平8−253715号公報
【特許文献3】特開2000−160083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載のインク組成物においては、紫外線照射による視認性に優れていると共に、レトルト殺菌による白化等が防止された隠しマークを形成可能であり、レトルト殺菌等を必須とする容器に好適に使用することができる。
しかしながら、このようなインク組成物を用いた容器であっても、隠しマークにより各製造工程に応じた管理を行うために複数の隠しマークを所定の場所に形成した場合には、複数の印字マークが重なり合って、隠しマークの確実な識別が困難になる場合が生じた。
例えば、絞りしごき缶、ストレッチドロー缶、ストレッチドローしごき缶、あるいは絞り再絞り缶などのシームレス缶においては、トリマーやネッカー等の各工程で複数の機械やポケットが使用されることから、各ポケット番号、製造時間等が記号化されて、缶底部やチャイム部等の所定の位置に印字される。このため、所定の位置に多数の同色の印字マークが重なり合うことにより、各マークの識別が困難になってしまう。
また、このように重なった多数のマークを識別するために、上記特許文献1に記載されたインク組成物から成る青色系の隠しマークと、上記特許文献2及び3から成る赤色系の隠しマークを組合せで用いることも考えられるが、上記特許文献2及び3に記載されたインク組成物は、加熱されると発色が得られなくなると共に、耐レトルト白化性にも劣るため、インク性能として、耐熱性、レトルト殺菌等を必須とする容器には用いることが困難である。
【0007】
従って本発明の目的は、紫外線照射により確実に赤色系発色可能であり、レトルト殺菌等の高温高湿度条件に付された場合にも、白化や黄変することが無いインクジェット印刷用インク組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、紫外線照射により、青色系に発色する隠しマーク及び赤色系に発色する隠しマークが形成され、多数の隠しマークが形成された場合にも容易に隠しマークを識別可能であると共に、レトルト殺菌等に賦された場合にも白化や黄変することない隠しマーク付き容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、容器外表面に、紫外線照射で視認可能な隠しマークがインクジェット印刷により形成されて成る隠しマーク付き容器において、前記隠しマークが、ベース樹脂、青系蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤から成り、前記青系蛍光着色剤が2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)であるインクジェット用インク組成物から成る青色系隠しマークと、ベース樹脂、蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤を含有してなるインクジェット用インク組成物であって、前記蛍光着色剤が、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)、及び4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムから成る酸化ユウロピウム系染料の組み合わせから成り、該酸化ユウロピウム系染料(赤系蛍光着色剤)と前記2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)(青系蛍光着色剤)の比率(赤系蛍光着色剤/青系蛍光着色剤)が、1.0乃至8.4(重量比)であり、前記赤系蛍光着色剤及び青系蛍光着色剤から成る蛍光着色剤がベース樹脂100重量部に0.8〜23.0重量部の量で含有されている、インクジェット用インク組成物から成る赤色系隠しマークの両方を有することを特徴とする隠しマーク付き容器が提供される。
【0009】
本発明の隠しマーク付容器においては、
1.前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂がエポキシ系樹脂であること、
2.前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂100重量部当り、導電剤が0.08乃至17.0重量部、レベリング剤が0.4乃至8.0重量部の量で含有されていること、
が好適である。
【0010】
本発明によればまた、容器外表面に、紫外線照射で視認可能な隠しマークがインクジェット印刷により形成されて成る隠しマーク付き容器の製造方法において、前記隠しマークが、ベース樹脂、青系蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤から成り、前記青系蛍光着色剤が2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)であるインクジェット用インク組成物から成る青色系隠しマークと、ベース樹脂、蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤を含有してなるインクジェット用インク組成物であって、前記蛍光着色剤が、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)、及び4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムから成る酸化ユウロピウム系染料の組み合わせから成り、該酸化ユウロピウム系染料(赤系蛍光着色剤)と前記2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)(青系蛍光着色剤)の比率(赤系蛍光着色剤/青系蛍光着色剤)が、1.0乃至8.4(重量比)であり、前記赤系蛍光着色剤及び青系蛍光着色剤から成る蛍光着色剤がベース樹脂100重量部に0.8〜23.0重量部の量で含有されている、インクジェット用インク組成物から成る赤色系隠しマークの両方を有すると共に、
前記赤色系隠しマークが、容器の仕上げニス焼付け後に印字されることを特徴とする隠しマーク付き容器の製造方法が提供される。
本発明の隠しマーク付容器の製造方法においては、
1.前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂がエポキシ系樹脂であること、
2.前記赤色系隠しマークを形成するインクジェット用インク組成物のベース樹脂100重量部当り、導電剤が0.08乃至17.0重量部、レベリング剤が0.4乃至8.0重量部の量で含有されていること、
が好適である
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物においては、紫外線を照射すると赤色系に発色することから、従来隠しマーク用インクとして使用されていた青色系インクと併用しても容易に識別可能であり、複数の隠しマークが形成された場合にも赤色系と青色系の違いがあるため確実に識別できる。
また、本発明のインク組成物は、レトルト殺菌や熱水処理等の高温条件に付されても白化や黄変することがない。更に、加熱後は青色に発色するため、隠しマークの視認時期に応じて使い分けることもできる。
【0012】
本発明の隠しマーク付き容器においては、赤色系と青色系の隠しマークが形成されていることにより、複数の隠しマークが部分的に重なり合って形成されていても容易に各マークの内容を識別することができるので、多工程におけるロット管理が必要な容器にも適用できる。
また、紫外線照射により赤色系に発色するインク組成物及び青色系に発色するインク組成物のいずれも、レトルト殺菌や熱水処理等の高温条件に付されても白化や黄変することがなく、レトルト殺菌等が必須の容器として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、ベース樹脂、蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤を含有して成り、蛍光着色剤が、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)、及び4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムから成る酸化ユウロピウム系染料の組み合わせから成ることが重要な特徴である。
【0014】
(ベース樹脂)
本発明のインク組成物のベース樹脂としては、従来インクジェット印刷用インク組成物に使用されていたものを使用することができ、これに限定されないが、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレンーアクリル酸系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂等を挙げることができるが、特に耐レトルト白化性の点からエポキシ樹脂を好適に使用することができる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂を臭素等のハロゲンにより置換した難燃性エポキシ樹脂、若しくはこれらのエポキシ樹脂の末端にあるエポキシ基を各種の封鎖剤で封鎖した末端封鎖エポキシ樹脂等が挙げられる。
封鎖剤としては、例えばフェノール、P−アルキルフェノール、ビスフェノールA等のフェノール類、カルボン酸やトルエンスルホン酸等の有機酸類、及びアミン類等を使用することができる。
【0015】
エポキシ樹脂は、軟化温度が100℃以上の樹脂を使用することが、耐レトルト白化性等の観点から特に好ましい。尚、軟化温度が100℃未満のエポキシ樹脂は、全樹脂量の30重量%の範囲内で、軟化温度が100℃以上のエポキシ樹脂に混合して使用することができる。
また、ブロック化イソシアネートやフェノール系樹脂、イミダゾール系硬化剤、或いはアミンアダクト樹脂等の、加熱によりエポキシ樹脂の硬化を促進する成分を配合してもよい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量(グラム当量)は1,000乃至10,000程度であることが好ましい。
【0016】
(蛍光着色剤)
本発明のインク組成物においては、用いる蛍光着色剤として、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)、及び4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムから成る酸化ユウロピウム系染料、の両方を組合せで用いることが重要な特徴である。
本発明において、酸化ユウロピウム系染料は、紫外線照射により赤色系の発色を呈するための蛍光着色剤であるが、酸化ユウロピウム系染料は、加熱されると発色されないことから、本発明のインク組成物においては、酸化ユウロピウム系染料と共に、耐熱性に優れ、紫外線照射により青色系の発色が可能な2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)を組み合わせで使用する。これにより本発明のインク組成物は、例えば、前述したシームレス缶の製缶工程における印刷後の仕上げニスの焼付け工程後、或いはレトルト殺菌等の高温条件に賦される前は、紫外線照射により赤色系の発色の視認が可能であると共に、高温条件に賦された後においても青色系の発色が視認されることが可能になる。
【0017】
本発明において青色系発色のために使用する、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)は、従来公知の青色系発色を有する蛍光着色剤の中でも、耐光堅牢度、優れた耐熱性、及び高い化学的安定性を有しており、特に、レトルト殺菌のような高温高湿度条件に賦される用途に好適に使用できる。
【0018】
本発明において赤色系発色のために使用する酸化ユウロピウム系染料は、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン化合物と酸化ユウロピウムを反応させることにより得られるものである。
酸化ユウロピウム系染料の調製方法としては、これに限定されないが、酸化ユウロピウム水溶液を過塩素酸等の存在下に、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン、水酸化ナトリウム、アセトン、水から成る溶液中に添加して反応させた後、アセトンを除去し、得られた固体をエチルアルコール等の溶剤で溶解した後、水中に滴下して析出させることにより調製することができる。
【0019】
(導電剤)
本発明のインク組成物においては、インクジェット印刷による印字を安定的に行うために配合する導電剤として、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択された導電剤を使用する。
上記導電剤は、エポキシ樹脂をベース剤として用いた場合に特に好適なものであり、レトルト処理に対しても白化耐性があり、且つ蛍光強度の低下の少ないインク組成物とすることができる。
これらの塩類におけるアルキル基としては特に制限はないが、炭素数1乃至10、特に炭素数2乃至5のアルキル基が好ましい。またこの塩は、塩化物、臭化物及びp−トルエンスルホネート等の適当なアニオンを含むことができる。
導電剤の具体例としては、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド及びテトラエチルアンモニウムp−トルエンスルホネート等が挙げられ、これらは、市販品として入手することができる。これらの導電剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
(有機溶剤)
本発明のインク組成物に使用する有機溶剤としては、特に制限はなく、通常インク組成物に使用される有機溶剤はいずれも使用することができる。
好適には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のグリコールエーテル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、またインク組成物を構成する成分の溶解性を損なわない範囲で、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール等のアルコール類を混合してもよい。
【0021】
(その他)
本発明のインク組成物においては、インクジェット印刷による印字又はマーキングを行う際に、容器表面に均一な色濃度の印字を行うために、レベリング剤を使用することが好ましい。
レベリング剤としては、通常の界面活性剤、潤滑剤、モダーフロー等のレベリング剤、シリコーン系及びフッソ系滑剤等が使用できるが、好ましいレベリング剤としては、ポリオキシエチレン変性シリコーン等や他のアルキル変性シリコーン等のシリコーン系レベリング剤、フッソ系滑剤等を挙げることができる。
本発明においては、上記成分の以外に、インク組成物の性状を損なわない範囲で、可塑剤、界面活性剤、粘着剤、高沸点溶剤、助色剤、安定剤等他の従来インクジェット印刷用インク組成物に用いられていた配合剤を添加することができる。
これらの配合量は、ベース樹脂100重量部に対して83.0重量部以下であることが好適である。
【0022】
(インク組成物の調製)
本発明のインク組成物においては、蛍光着色剤における赤系蛍光着色剤である酸化ユウロピウム系染料と青系蛍光着色剤である2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)の比率(赤系蛍光着色剤/青系蛍光着色剤)は、1.0乃至8.4(重量比)の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりも比率が小さく、酸化ユウロピウム系染料が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して印字マークの赤みが薄く識別しにくく、一方上記範囲よりも比率が大きいと相対的に青みが薄くなりレトルト後などの加熱後に識別しにくくなるおそれがある。
また、上記酸化ユウロピウム系染料と2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)から成る蛍光着色剤は全体として、ベース樹脂100重量部当り0.8乃至23.0重量部、特に1.7乃至10.0重量部の量で含有されていることが望ましい。上記範囲よりも蛍光着色剤の量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して十分な発色を得ることができず、一方上記範囲よりも蛍光着色剤の量が多い場合には、上記範囲にある場合に比して、インクの吐出性が劣るようになるだけでなく、経済性の点からも満足するものではない。
また、導電剤は、ベース樹脂100重量部当り0.08乃至17.0重量部、特に1.7乃至8.0重量部の量で含有されていることが望ましい。
更に、上述したように、本発明のインク組成物においては、レベリング剤を含有していることが均一な色濃度の印字を行う上で望ましく、レベリング剤は、ベース樹脂100重量部当たり、0.4乃至8.0重量部、特に0.8乃至4.2重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0023】
本発明のインク組成物においては、一般に、上記の各成分や必要に応じ添加される他の成分を有機溶剤に溶解させて調製されるが、有機溶剤の量とベース樹脂等の固形分の量の重量比が19:1乃至7:3の範囲となるように調製することが好適である。
また、インクの粘度は、用いるヘッドの種類やインクの乾燥条件などによっても一概に規定できないが、1.0乃至20.0mPa・sの範囲にあることが好ましい。
本発明のインク組成物は、加熱(約180℃以上)されることにより赤色系の発色はされないので、加熱乾燥することなく、風乾燥することが望ましい。
【0024】
[隠しマーク付き容器]
本発明の隠しマーク付き容器においては、前述した本発明のインク組成物から形成される赤色系隠しマークと、ベース樹脂、蛍光着色剤、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩から選択される導電剤、及び有機溶剤から成り、前記蛍光着色剤が2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)であるインクジェット用インク組成物から成る青色系隠しマーク、の両方を有することが重要な特徴である。
【0025】
(青色系隠しマーク形成用インク組成物)
青色系隠しマークを構成するインク組成物は、前述した本発明のインク組成物において、蛍光着色剤として酸化ユウロピウム系染料を用いず、蛍光着色剤の全量を2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)とする以外は同様に調製することができる。
【0026】
(容器)
本発明において、隠しマークを施す容器としては、シームレス缶、溶接缶等の金属容器、ガラス容器、プラスチック又は金属箔及びプラスチックフィルムの積層体等から成るパウチ、あるいはプラスチックを用いた単層、多層から成るボトル、トレイ、カップ、チューブ等の従来公知の容器等を挙げることができる。 本発明においては特に、表面処理鋼板或いはアルミニウム合金板等の金属板、或いはそれらの金属板の片面あるいは両面にポリエステルなどの熱可塑性樹脂を被覆した樹脂被覆金属板を絞りしごき成形、ストレッチドロー成形、ストレッチドローしごき成形、あるいは絞り再絞り成形することにより成形されたシームレス缶を好適に使用することができる。
【0027】
(隠しマークの印字)
隠しマークは容器表面に直接インクジェット印刷により印字することができる。シームレス缶等の金属缶に適用する場合には、缶底外面、チャイム部外面、側壁外面基材上、側壁ベースコート層上、印刷層上、仕上げニス層上等に印字することができるが、缶底外面やチャイム部外面に印字することが特に好ましい。これにより、製缶ラインや充填ラインでの搬送時に、隠しマークが他の缶やシュートと接触することを防止でき、隠しマークが擦れや摩耗によって判読できなくなることを避けることができる。
尚、前述した通り、本発明のインク組成物により形成される赤色系隠しマークは、熱処理に賦された後は青色として発色することから、赤色系の発色を得るためには、容器の印刷後の仕上げニスを焼付けした後、レトルト処理の後等、熱処理の後に容器に印字する必要がある。
例えば、これに限定されないが、青色系隠しマークは熱処理前に容器に印字し、印刷後の仕上げニスを焼付け硬化した後、赤色系隠しマークを印字し、赤色系隠しマークの印字は加熱することなく乾燥させるか、或いは熱処理後に青色系及び赤色系の隠しマークを印字し、何れの隠しマークも加熱することなく乾燥させる等、製造工程や流通過程等、何れの時点で識別するかによって、印字のタイミングを種々変更することができる。
尚、印刷層を隠しマークよりも上に形成する場合であっても、通常包装容器に用いられている印刷インク及び印刷手法により印刷層を形成する場合は、隠しマークの視認性が損なわれることはない。
【0028】
本発明の隠しマーク付き容器においては、隠しマークの上に或いは下に仕上げニス層が形成されていてもよく、仕上げニスとしては、従来公知のものを使用することができ、これに限定されないが、アクリルエポキシ系樹脂、アクリルアミノ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルアミノ系樹脂をベース樹脂とする透明塗料を挙げることができる。
またベースコートとしては、上述した仕上げニスに用いられる樹脂と同様の樹脂をベース樹脂とすることができ、このベース樹脂に二酸化チタン等の顔料、雲母等の光輝性顔料等が配合されていてもよい。
また、樹脂被覆金属板や表面処理金属板から常法に従って成形された金属缶等においては、ベースコート層を形成することなく、ポリエステル樹脂被覆や表面処理層上に隠しマーク印字を施すことができるし、また成形後の金属缶に常法に従って表面処理を行い、この表面処理層上に隠しマーク印字を施すこともできる。
【0029】
本発明の隠しマーク付き容器は、容器を熱処理(仕上げニスの焼付け等)に賦する前には、ブラックライト等により紫外線を照射することにより、赤色系隠しマーク及び青色系隠しマークの2色の隠しマークを視認し判読することができ、容器を熱処理に賦した後は、紫外線照射により、全て青色系隠しマークとして視認される。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
(使用インク組成物)
(1)赤色系インク組成物
酸化ユウロピウム(和光純薬工業社製)2.0gを純水5.56gに混合した水溶液に60%過塩素酸(和光純薬工業社製)7.11gを添加し、室温で30分撹拌して酸化ユウロピウム水溶液を作製した。次に、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン(和光純薬工業社製)9.17g、水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)1.78g、アセトン(和光純薬工業社製)138.89g、純水2.78gから成る溶液中に、得られた酸化ユウロピウム水溶液を滴下し、1時間撹拌して反応させた後、アセトンを除去し、黄色ペースト状固体を得た。得られた固体をエチルアルコール(和光純薬工業社製)27.78gで溶解した後、撹拌しながら純水166.7g中に滴下して析出させ、析出した白色固体を濾別乾燥して酸化ユウロピウム系染料(赤系蛍光着色剤)8.6gを調製した。
【0031】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製#1009)100重量部、赤系蛍光着色剤として上記で得られた酸化ユウロピウム系染料6.7重量部、青系蛍光着色剤として2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)(BASF社製TINOPAL―OB)5.0重量部、可塑剤としてフタル酸ベンジルブチル(和光純薬工業社製)33.3重量部、導電剤としてテトラーn―ブチルホスホニウムブロミド(東京化成工業社製)4.2重量部、レベリング剤として合成シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、商品名FZ2123)1.7重量部を、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK、三洋化成品社製)546重量部及びメタノール(三洋化成品社製)137重量部に溶解して、粘度が3.5mPa・sの赤色系インク組成物を調製した。
【0032】
(2)青色系インク組成物
ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製#1009)100重量部、青系蛍光着色剤として2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)(BASF社製TINOPAL―OB)5.0重量部、可塑剤としてフタル酸ベンジルブチル(和光純薬工業社製)33.3重量部、導電剤としてテトラーn―ブチルホスホニウムブロミド(東京化成工業社製)4.2重量部、レベリング剤として合成シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、商品名FZ2123)1.7重量部を、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK、(三洋化成品社製))552重量部及びメタノール(三洋化成品社製)137重量部に溶解して、粘度が3.5mPa・sの青色系インク組成物を調製した。
【0033】
(隠しマーク付シームレス缶の作製)
板厚0.225mmのテインフリースチールの内面側にポリエステルフィルム、外面側に酸化チタン顔料含有ポリエステルフィルムを熱ラミネートして両面ポリエステルフィルム被覆鋼板を作製した。このポリエステルフィルム被覆鋼板を常法によりブランキング、ストレッチドローしごき成形、ヒートセット、トリミングを行い直径52mmで高さ108mmのシームレス缶を作製した。このシームレス缶に、次に示すインクジェット印刷を行った後、ネック加工、フランジ加工を行い、容量190mlの隠しマーク付きシームレス缶とした。
【0034】
(インクジェット印刷)
作製したシームレス缶をマンドレルに挿入し、バキュームでマンドレル内に固定し、マンドレルを回転させ、シームレス缶の底外面へ上記インク組成物を用いて、インクジェット印刷を行った。
まず上記青色系インク組成物を用いて、文字列を「ABABABAB」とし、文字列全体として縦4mm横22mmのサイズにし、缶周方向に長くなるようにして、20缶に青色系隠しマークを印字した。次に上記青色系インク組成物を用いて、文字列を「ACACACAC」とし、同じサイズで同じ缶に同様に青色系隠しマークを印字した。次に仕上げニス焼付を想定した200℃1分の焼付をした。次に、上記赤色系インク組成物を用いて、文字列「ADADADAD」を同じサイズで同じシームレス缶に同様に赤色系隠しマークを印字し、次に文字列「AEAEAEAE」を同じサイズで同じシームレス缶に同様に赤色系隠しマークを印字した。印字場所は4回の印字ともシームレス缶の底中央から20mmの位置にした。シームレス缶を回転させているので周方向の印字位置はランダムであった。
【0035】
(評価)
<空缶読取性>
得られた隠しマーク付きシームレス缶の隠しマーク部にブラックライトで紫外線を照射し、隠しマークの読み取り性を評価した。得られた20缶を視覚評価し、最も読みにくい隠しマーク付きシームレス缶を評点とした。これは内容物充填前の空缶段階での工程記録の判読性を想定した試験であり、4種類の印字を迅速に判読できることが望ましい。
○:迅速に読み取れる
△:読み取れる
×:非常に読み取りにくい
【0036】
<レトルト後識別性>
得られた隠しマーク付きシームレス缶に水道水を185g充填し、蓋を二重巻締し、125℃30分のレトルト処理した後、隠しマーク部にブラックライトで紫外線を照射し、隠しマークの識別可能性を評価した。得られた20缶を視覚評価し、最も読みにくい缶を評点とした。これは内容物充填後の隠しマーク判読性を想定した試験であり、時間はある程度かかっても4種類の隠しマークを判読可能であることが望ましい。
○:読み取れる
△:時間がかかるが読み取れる
×:読み取れない
【0037】
<レトルト後白化性>
レトルト後識別性評価と同様にしてレトルト処理を行った後、赤色系隠しマークの白化程度を評価した。
○:白化がない
△:やや白化があるが許容範囲である
×:白化が大きい
【0038】
実施例1の印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
尚、表中、「焼付前2」及び「焼付後2」はそれぞれ「焼付前に2回印字」及び「焼付後に2回印字」を意味し、「赤部」及び「青部」はそれぞれ「赤系蛍光着色剤」および「青系蛍光着色剤」を意味する。
【0039】
(実施例2)
レベリング剤をなくした以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0040】
(実施例3)
赤色系インク組成物の青系蛍光着色剤量を6.7重量部にした以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0041】
(実施例4)
赤色系インク組成物の青系蛍光着色剤量を0.8重量部にした以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0042】
(実施例5)
赤色系インク組成物の赤系蛍光着色剤量を0.4重量部、青系蛍光着色剤量を0.4重量部にした以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0043】
(実施例6)
赤色系インク組成物の赤系蛍光着色剤量を18.0重量部、青系蛍光着色剤量を5.0重量部にした以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0044】
(実施例7)
赤色系インク組成物のベース樹脂種類をスチレンマレイン酸系樹脂にした以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0045】
(実施例8)
青色系隠しマークの代わりに赤色系隠しマークを用いた以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。
【0046】
(比較例1)
赤色系隠しマークの代わりに青色系隠しマークを用いた以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。空缶読取性が不良であった。
【0047】
(比較例2)
赤色系インク組成物に赤系蛍光着色剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。空缶読取性が不良であった。
【0048】
(比較例3)
赤色系インク組成物に青系蛍光着色剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして隠しマーク付きシームレス缶を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。印字時期、赤色系インク組成、評価結果を表1に示した。レトルト後に赤色系隠しマークが消えたため識別性が不良であった。
【0049】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のインク組成物は、熱処理工程の前後で青色系と赤色系の2色の発色が可能であることから、複雑な製造工程で多数の隠しマークの印字が必要な絞りしごき缶等のシームレス缶に好適に用いることができる。
また、レトルト殺菌等に賦された場合にも白化や黄変することが有効に防止されているため、水、熱水、蒸気、高温加熱等、種々の暴露に耐性が要求される、熱処理工程を伴う製品管理用マークの形成に好適に使用することができ、飲料やレトルト食品等を収納する、金属缶、ガラス容器、ボトルやプラスチックパウチ等のプラスチック容器、陶磁器、紙容器、又はプラスチック、紙等の複合材料等により構成された容器、あるいは金属、プラスチック等から成る蓋やシール蓋等に、インクジェット印刷によって、ロット番号や暗号等の隠しマークの印字に好適に使用できる。更に、盗難、詐欺、模倣等を防止するためのセキュリティーマークや、バーコード用マーク等の形成に幅広く適用することができる。
本発明の隠しマーク付き容器は、レトルト殺菌に賦された場合にも隠しマークが白化や黄変することがなく、レトルト殺菌等を必須とする容器に好適に使用することができる。