特許第5973207号(P5973207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973207
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】マスクレス露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160809BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20160809BHJP
   G02B 27/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G03F7/20 505
   H05K3/00 H
   G02B27/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-81236(P2012-81236)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210517(P2013-210517A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】田巻 純一
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−071116(JP,A)
【文献】 特開2010−182933(JP,A)
【文献】 特開2010−182934(JP,A)
【文献】 特開2010−061174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢変化によって光の反射方向を切り替え可能な複数の光変調素子を2次元配列させた光変調素子アレイと、
コヒーレント性のある第1の光を、第1方向に沿って前記光変調素子アレイに入射させるとともに、第1の光に対して位相差があってコヒーレント性のある第2の光を、第1方向とは異なる第2方向に沿って、前記第1の光が入射する前記光変調素子アレイに入射させる照明システムと、
前記光変調素子アレイで反射した第1および第2の光をパターン形成面に結像させる結像光学系と、
パターンデータに従って、前記複数の光変調素子それぞれの姿勢を制御する露光制御部とを備え、
前記複数の光変調素子各々が、第1の光を前記結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第1位置と、第2の光を前記結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第2位置に姿勢をとることが可能であり、
前記露光制御部が、前記複数の光変調素子を、パターンに応じて第1位置と第2位置のいずれかに選択的に位置決めすることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記照明システムが、第1の光と第2の光とを、前記光変調素子アレイの垂直方向に対し、絶対値が同じ入射角度で入射させることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記露光制御部が、前記複数の光変調素子のうち、非露光対象エリアを間に挟んで相対する露光対象エリアに光を投影する光変調素子であって、非露光対象エリアにおいて光強度分布が互いに重なり合う光を投影する光変調素子に対し、一方の露光対象エリアへ光を投影する光変調素子を第1位置、他方の露光対象エリアへ光を投影する光変調素子を第2位置に位置決めすることを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項4】
各光変調素子が、フラット状態から第1の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第1位置と、フラット状態から第2の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第2位置との間で姿勢変化可能であり、
前記露光制御部が、前記複数の光変調素子のうちパターン光を投影する光変調素子を第1位置および第2位置のうちの一方に位置決めし、また、非露光対象エリアに応じた光変調素子を他方に位置決めし、
前記照明システムが、非露光対象エリアに応じた光変調素子に入射する第1の光、第2の光のうち一方の光を、他方の光に対して相対的に光強度を小さくして照射することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
各光変調素子が、フラット状態から第1の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第1位置と、フラット状態から第2の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第2位置と、フラット状態との間で姿勢変化可能であり、
前記露光制御部が、パターン光を投影する光変調素子を、第1の光入射に対して第1位置に位置決めし、第2の光入射に対して第2位置に位置決めし、そして、パターン光を投影しない光変調素子を、フラットな状態に位置決めすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項6】
前記露光制御部が、第1、第2の光を微小露光エリア幅サイズ分だけ空けて結像させるように、前記複数の光変調素子を位置決めすることを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項7】
第1、第2の光の強度が、パターンを基板感光表面に形成するのに必要な露光エネルギー以上のエネルギーになるように、感光材の感度に従って定められていることを特徴とする請求項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記照明システムが、第1の光を照射する第1光源と、第2の光を照射する第2光源と、第1の光もしくは第2の光に対して位相をシフトさせる位相シフト光学系とを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の露光装置。
【請求項9】
前記照明システムが、照明光を照射する光源と、照明光を第1の光と第2の光に分割する分割光学系と、第1の光もしくは第2の光に対して位相をシフトさせる位相シフト光学系とを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の露光装置。
【請求項10】
第1の光と第2の光が、互いに1/2波長分の位相差をもつコヒーレント光であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の露光装置。
【請求項11】
姿勢変化によって光の反射方向を切り替え可能な複数の光変調素子を2次元配列させた光変調素子アレイと、
コヒーレント性のある第1の光を、第1方向に沿って前記光変調素子アレイに入射させるとともに、第1の光に対して位相差があってコヒーレント性のある第2の光を、第1方向とは異なる第2方向に沿って、前記第1の光が入射する前記光変調素子アレイに入射させる照明光学系と、
前記光変調素子アレイで反射した第1および第2の光をパターン形成面に結像させる結像光学系とを備え、
前記複数の光変調素子各々が、第1の光を前記結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第1位置と、第2の光を前記結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第2位置に姿勢をとることが可能であり、
前記複数の光変調素子が、パターンに応じて第1位置と第2位置いずれかに選択的に位置決めされることを特徴とする露光ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子アレイを用いてパターンを形成するマスクレス露光装置に関し、特に、マスクレス露光装置の露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクレス露光装置は、通常、マイクロミラーを二次元配列させたDMD(Digital Micro-mirror Device)を備えており、パターンに応じて各マイクロミラーをON/OFF制御することにより、パターン光が基板に投影される。光変調素子アレイによる投影エリア(露光エリア)が基板に対して相対移動するのに伴い、その露光エリアの位置に応じたパターン光が順次投影される。
【0003】
マスクレス露光装置におけるパターンの分解能は、ミラーサイズ、縮小投影光学系の倍率、NAなどによって決定される。分解能を向上させる方法としては、一方のビームの位相を1/2波長だけずらした2つのビームを基板に同時照射する位相シフト露光が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
そこでは、2つのDMDを配置してそれぞれにビームを照射する。このとき、隣接画素に別々のビームを照射させるため、各DMDのミラーを一つおきにON/OFF制御する。画素間でビームの位相が半波長分ずれることにより、隣接画素間の部分が光の干渉によって暗部になる。その結果、マスク露光装置でレベンソン型の位相シフトマスクを利用したときと同じような分解能向上が得られる。
【0005】
また、第1ビームによる投影像と第2ビームによる投影像を縦横両方向に沿って半画素ピッチ分だけずらし、半波長分の位相差をもつ2つのビームを照射することも可能である。この場合、各DMDの全ミラーを利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−71116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
位相シフトマスクをマスクレス露光装置へ展開した従来の位相シフト露光は、画素単位での解像度向上を目的とし、隣接画素間に露光エネルギー量0に近い部分を作り出している。その部分が暗部となることによって、パターン解像度を向上させる。しかしながら、マスクレス露光装置の場合、パターン幅の微細化が常に最重要課題となるわけではない。
【0008】
例えばプリント基板等を製造対象としてマスクレス露光装置を使用する場合、露光波長に近いパターンを形成するような縮小投影露光ではなく、倍率およそ1倍前後の結像レンズを用いて露光することが多い。これは、解像度がマイクロミラーサイズによりある程度制限されること、また、大型サイズ基板の描画処理を目的とした場合、パターン幅が露光波長よりも十分大きいことなどに起因する。
【0009】
その一方で、マスクレス露光装置に組み込まれる結像レンズは、定められた解像度の要求を確実に満たす観点から、焦点深度が比較的浅い。そのため、焦点位置がわずかにずれるとボケが生じやすく、パターン解像度の低下につながる。ボケを抑えるためには、パターン像のコントラストを向上させなければならない。
【0010】
しかしながら、従来の露光方法は、結像レンズの焦点位置、焦点深度内で結像している状況下において解像度を上げることはできても、結像レンズの焦点深度から外れた時のパターンの解像性を確保する、すなわち、十分なコントラストを維持する露光方法に該当しない。
【0011】
したがって、光変調素子アレイを使用しながら、コントラスト向上を実現する露光を行なうことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の露光装置は、姿勢変化によって光の反射方向を切り替え可能な複数の光変調素子を2次元配列させた光変調素子アレイと、コヒーレント性のある第1の光と、第1の光に対して位相差があってコヒーレント性のある第2の光とを、それぞれ第1方向、第2方向に沿って光変調素子アレイに入射させる照明システムと、光変調素子アレイで反射した第1および第2の光をパターン形成面に結像させる結像光学系と、パターンデータに従って、複数の光変調素子それぞれの姿勢を制御する露光制御部とを備える。
【0013】
複数の光変調素子各々は、第1の光を結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第1位置と、第2の光を結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第2位置に姿勢をとることが可能である。別の言い方をすれば、複数の光変調素子がとりうる第1位置、第2位置の姿勢で位置決めしたときに結像光学系へ第1、第2の光を反射するように、光変調素子アレイに対する第1、第2の光入射角、および結像光学系の位置が定められている。
【0014】
DMDなどを光変調素子アレイとして使用する場合、各光変調素子は、フラット状態から第1の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第1位置と、フラット状態から第2の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第2位置と、フラット状態との間で姿勢変化可能である。特に、ON状態、OFF状態を第1位置、第2位置(もしくはその逆)とすることができる。
【0015】
照明システムとしては、様々な構成を適用することが可能である。例えば、照明システムは、第1の光を照射する第1光源と、第2の光を照射する第2光源と、第1の光もしくは第2の光に対して位相をシフトさせる位相シフト光学系を備えるようにすればよい。
【0016】
あるいは、照明システムは、照明光を照射する光源と、照明光を第1の光と第2の光に分割する分割光学系と、第1の光もしくは第2の光に対して位相をシフトさせる位相シフト光学系とを備えるようにしてもよい。
【0017】
本発明では、露光制御部が、複数の光変調素子を、パターンに応じて第1位置と第2位置のいずれかに選択的に位置決めする。第1の光と第2の光が回折光として基板に投影すると、第1の光の強度分布と第2の光の強度分布が重なる場所では、位相差に基づく光の干渉作用で暗部が際立つ部分が生じる。その結果、パターンエッジなどで輝度差が十分に確保される。
【0018】
このように、本発明の露光処理は、パターン形成に応じて光変調素子を選択的に位置決めし、回折光による干渉露光を生じさせるものであり、いわゆるレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスクなどで実現される解像度向上(パターン幅微細化)を目的とする干渉露光を、コントラスト拡大の干渉露光に展開したものである。この干渉露光は、各光変調素子の姿勢によって2つの光の干渉箇所を自在に設定できるため、パターン形状、種類に応じて様々な干渉露光を実現することが可能である。
【0019】
第1の光と第2の光の位相差については、光強度分布が重なる範囲で位相をシフトさせればよく、パターン間隔などに基づいて回折光による干渉でエネルギー分布が減ずる部分に非露光部分あるいはパターン境目が当てはまるように位相をシフトさせればよい。例えば、第1の光と第2の光を、互いに1/2波長分の位相差をもつコヒーレント光にすることができる。
【0020】
例えば、パターン配列が規則的な間隔をもつ配列の場合、露光制御部は、複数の光変調素子のうち、パターン光を投影する(基板表面に光を導く)光変調素子であって光強度分布が互いに重なり合う光を投影する光変調素子に対し、一方の光変調素子を第1位置、他方の光変調素子を第2位置に位置決めすることが可能である。干渉作用により、非露光対象となるエリア(以降、非露光対象エリアという)において位相の異なる回折光が重なった部分に暗部が形成され、コントラストが向上する。
【0021】
特に、露光制御部は、前記複数の光変調素子のうち、非露光対象エリアを間に挟んで相対する露光対象エリアに光を投影する光変調素子であって、非露光対象エリアにおいて光強度分布が互いに重なり合う光を投影する光変調素子に対し、一方の露光対象エリアへ光を投影する光変調素子を第1の位置、他方の露光対象エリアに光を投影する光変調素子を第2の位置に位置決めすることが可能である。
【0022】
このような干渉露光を行なう場合、露光制御部は、パターン光を投影する光変調素子を、第1の光入射に対して第1位置に位置決めし、第2の光入射に対して第2位置に位置決めすることが可能である。また、露光制御部は、パターン光を投影しない光変調素子を、フラットな状態に位置決めすればよい。
【0023】
一方、露光制御部は、複数の光変調素子のうちパターン光を投影する光変調素子を第1位置および第2位置のうちの一方に位置決めし、また、感光させない非露光対象エリアに応じた光変調素子を他方に位置決めすることが可能である。この場合、照明システムは、非露光対象エリアに応じた光変調素子に入射する第1の光、第2の光のうち一方の光を、他方の光に対して相対的に光強度を小さくして照射する(例えば、第1の光に対して数パーセントの光強度)。これにより、非露光対象エリアは感光せず、一方で暗部が明瞭となる。
【0024】
例えば、各光変調素子が、フラット状態から第1の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第1位置と、フラット状態から第2の光の入射方向を向く所定角度だけ傾斜した第2位置との間で姿勢変化可能である場合、前記露光制御部は、パターン光を投影する光変調素子を第1位置および第2位置のいずれか一方に位置決めし、非露光対照エリアに応じた光変調素子を他方の位置に位置決めすればよい。
【0025】
本発明の他の局面における露光ヘッドは、姿勢変化によって光の反射方向を切り替え可能な複数の光変調素子を2次元配列させた光変調素子アレイと、コヒーレント性のある第1の光と、第1の光に対して位相差があってコヒーレント性のある第2の光とを、それぞれ第1方向、第2方向に沿って光変調素子アレイに入射させる照明光学系と、光変調素子アレイで反射した第1および第2の光をパターン形成面に結像させる結像光学系とを備え、複数の光変調素子各々が、第1の光を結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第1位置と、第2の光を結像光学系の光軸に沿った方向へ反射させる第2位置に姿勢をとることが可能であり、複数の光変調素子が、パターンに応じて第1位置と第2位置いずれかに選択的に位置決めされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、マスクレス露光装置において、コントラストのあるパターン画像を形成し、ボケを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】露光装置の概略的ブロック図である。
図2】照明システムの概略的構成図である。
図3】露光ヘッド内部の概略的構成図である。
図4】マイクロミラーの姿勢状態と光の反射方向を示した図である。
図5】DMDにおけるミラー像と反射光の種別を示した図である。
図6】露光面における光強度分布を示した図である。
図7】第2の実施形態における照明システムの概略的構成図である。
図8】第3の実施形態における照明システムの概略的構成図である。
図9】第3の実施形態における露光ヘッド内部の概略的構成図である。
図10】第3の実施形態におけるマイクロミラーの姿勢と光の反射方向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0029】
図1は、第1の実施形態である露光装置の概略的ブロック図である。
【0030】
露光装置(描画装置)10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Sへ光を照射することによってパターンを形成するマスクレス露光装置である。システムコントロール回路19は、露光動作全体を制御する。
【0031】
露光装置10は、照明システム20、DMD30、結像光学系40を備える。照明システム20は、2つのレーザー光源、照明光学系(ここでは図示せず)を備え、照明光をDMD30へ照射する。照明システム20、DMD30、結像光学系40は、いわゆる露光ヘッドを構成する。光源駆動部15は、レーザー光源をそれぞれ駆動する。
【0032】
ベクタデータなどで構成されるCAD/CAMデータが露光装置10へ入力されると、ラスタ変換、露光データ変換回路16に送られる。ラスタ変換、露光データ変換回路16では、ベクタデータがラスタデータに変換されるとともに、生成されたラスタデータに基づき、後述する干渉露光用の露光データが生成される。生成された露光データは、バッファメモリ17に一時的に格納された後、DMD駆動回路18へ送られる。
【0033】
DMD30は、微小マイクロミラーを2次元配列させた光変調素子アレイ(光変調器)であり、各マイクロミラーは、姿勢を変化させることによって光の反射方向を選択的に切り替える。DMD駆動回路18によって各ミラーが姿勢制御されることにより、パターンに応じた光が結像光学系40に入射する。結像光学系40は、入射した光を基板Sの表面に結像し、これによってパターン光が投影される。
【0034】
描画テーブル11は、ステージ駆動部13によりX、Y方向に沿って移動可能である。ステージ駆動部13は、ステージ制御回路14からの制御信号に従い、描画テーブル11を移動させる。位置検出センサ12は、描画テーブル11の位置、すなわち基板Sの位置を検出する。
【0035】
露光中、描画テーブル11は、走査方向に沿って一定速度で移動する。DMD30全体による投影エリア(以下、露光エリアという)は、基板Sの移動に伴って基板上を相対的に移動する。バッファメモリ17には露光データが順次入力されており、検出される露光エリアの相対位置に応じデータが、バッファメモリ17からDMD駆動回路18へ送られる。
【0036】
露光動作は、所定の露光ピッチに従って行なわれ、露光期間に合わせてマイクロミラーがパターン光を投影するように制御される。DMD30の各マイクロミラーの制御タイミングを露光エリアの相対位置に従って調整することにより、露光エリアの位置に描くべきパターンの光が順次投影される。基板S全体を走査することによって、基板S全体にパターンが形成される。
【0037】
なお、露光方式としては、一定速度で移動する連続移動方式だけでなく、間欠的に移動するステップ&リピートも可能である。また、露光ショット時の投影エリアを部分的に重ねる多重露光(オーバラップ露光)も可能である。また、ここでは1つの露光ヘッドを備えた露光装置を説明しているが、複数の露光ヘッドを用いて描画処理を行うことも可能である。
【0038】
図2は、照明システムの概略的構成図である。図3は、露光ヘッド内部の概略的構成図である。マイクロミラーの姿勢状態と光の反射方向を示した図である。図4は、マイクロミラーの姿勢状態と光の反射方向を示した図である。図2〜4を用いて、照明システム20の構成およびDMD30の各マイクロミラーによる光変調について説明する。
【0039】
露光ヘッド100を構成する照明システム20は、ともにレーザー発振器である第1、第2レーザー光源21A、21Bを備え、各レーザー光源は、コヒーレント光を放射する。この段階では、2つのビームの間に位相差は実質存在しない。
【0040】
第1レーザー光源21Aから放射された第1の光は、照明光学系22Aを通り、ミラー24Aを介してDMD30に入射する。一方、第2レーザー光源21Bから放射された第2の光は、照明光学系22Bを通過した後、位相板23に入射する。位相板23は、光路差を設けて光の位相を半波長分シフトさせる波長板であり、第2の光は、第1の光に対して1/2波長位相がずれた光となってミラー24Bに入射する。ミラー24Bに入射した第2の光は、DMD30へ導かれる。
【0041】
第1の光と第2の光の光軸E1、E2は、ミラー24A、24Bの進行方向に向けて互いに一致しており、ミラー24A、24Bは、その光軸E1、E2に対して同じ傾斜角度分だけ傾いた状態で配置されている。そして、ミラー24A、24Bは、DMD30の垂直方向Vに対し、第1の光と第2の光を(絶対値が)同じ入射角度で入射させる。
【0042】
図4では、DMD30における1つのマイクロミラーMの姿勢変化を示している。ただし、マイクロミラーMは誇張して大きく描いている。マイクロミラーMは、静電界作用によって中心軸周りに軸回転可能であって、3つの姿勢のうちいずれかの姿勢で位置決め可能である。他のマイクロミラーも同様である。
【0043】
マイクロミラーMがON状態のとき、傾きのないフラット状態(0度)から第1の光の入射方向を向くように12°傾く。一方、マイクロミラーMがOFF状態の場合、その反対側であって第2の光の入射方向へ向くように同じ角度(−12°)傾斜する。さらに、マイクロミラーMは、ON/OFF状態の姿勢に加え、フラット状態(0°)で位置決めすることが可能である。
【0044】
結像光学系40の光軸E3は、DMD30の表面垂直方向Vと一致する。第1の光と第2の光は、DMD表面垂直方向V、すなわち光軸E3に関して対称的な方角からDMD30へ進行する。垂直方向Vに対する傾斜角度はともにその絶対値θ(=24°)で等しい。
【0045】
マイクロミラーMがON状態の場合、第1の光は光軸E3方向へ反射する。また、マイクロミラーMがOFF状態の場合、第2の光は光軸E3方向へ反射する。従って、マイクロミラーMがON状態のときに第1の光を入射させ、マイクロミラーMがOFF状態のときに第2の光を入射させることにより、第1、第2の光がともに結像光学系40によって基板Sの表面に結像される。
【0046】
一方、マイクロミラーMがON状態(12°)で第2の光がマイクロミラーMに入射し、マイクロミラーMがOFF状態(−12°)で第1の光がマイクロミラーMに入射すると、結像光学系40の光軸Eから外れた方向(48°、−48°)へ第1、第2の光が進行する。
【0047】
また、マイクロミラーMがフラット状態で位置決めされた場合、マイクロミラーMは、第1の光、第2の光を、それぞれ第2の光、第1の光の進行方向に向けて反射する。したがって、フラット状態は、第1の光、第2の光いずれも基板外へ導く。なお、マイクロミラーMが厳格にフラット状態に位置決めできないような場合においても、捨光の目的であることから、およそフラット状態に位置決めできればよい。以上のマイクロミラーON/OFF、フラット状態における光の進行については、他のマイクロミラーも同じである。
【0048】
本実施形態では、通常のマイクロミラーの光変調方式のように、パターン形成時にマイクロミラーMをON状態、パターン形成しないときOFF状態に切り替えるのではなく、各マイクロミラーMの姿勢を、ON状態、OFF状態、フラット状態のいずれかに選択する。
【0049】
具体的には、パターン形成に寄与する場合、各マイクロミラーMはON/OFF状態いずれかの姿勢に切り替えられる。これによって、第1の光と第2の光のうち一方の光が選択されて基板Sに投影される。このとき、選択されていない光は基板外へ導かれるため、影響はない。一方、パターン光を照射しない(露光OFFとなる)領域に該当するマイクロミラーMは、第1の光、第2の光両方を捨光するため、フラット状態の姿勢となる。
【0050】
その結果、露光エリア全体に対して投影されるパターン光は、第1の光と第2の光の両方を含む光束によって構成されることになり、位相差のある光、すなわち位相が正反対の光が相互干渉する干渉露光が行なわれる。この干渉露光が、露光動作の度に行なわれる。ここではポジティブ露光の場合について説明したが、ネガティブ露光の場合、マイクロミラーのパターン形成部分が逆転するため、基板Sに到達する光の干渉を考慮してDMDのON/OFF状態を適宜選択する。
【0051】
各マイクロミラーが第1の光、第2の光いずれを選択するかは、そのときに形成するパターン形状等に従う。ここでは、隣り合うパターンエッジ部分を形成する光同士に位相差をもたせ、干渉露光させる。以下、干渉露光について説明する。
【0052】
図5は、DMDにおけるミラー像と反射光の種別を示した図である。図6は、露光面における光強度分布を示した図である。
【0053】
図5では、互いに隣接する3つのマイクロミラーMPA1、MPA2、MPA3の変調状態を示している。マイクロミラーMPA1、MPA2、MPA3の投影エリア(以下、微小露光エリアという)PA1、PA2、PA3(図3参照)は、基板上を相対移動し、露光動作時の位置に形成すべきパターンによって、光を基板に投影、もしくは基板外へ導く。
【0054】
図3に示すように、1つ分の微小露光エリア幅サイズの非露光対象エリア(パターン光を投影しないエリア)を間にして直線状パターンを繰り返すパターンを形成する場合を考える。なお、図3は第1の光と第2の光の光軸のみ示しており、各マイクロミラーの反射する個々の光は図示していない。ある露光動作においては、マイクロミラーMPA1、MPA2、MPA3に入射する光がそれぞれ投影、捨光、投影となるように変調される。すなわち、マイクロミラーMPA1、MPA3は、基板に光を投影する姿勢(ON状態もしくはOFF状態)に位置決めされ、マイクロミラーMPA2は、基板外へ光を導く姿勢(フラット状態)に位置決めされる。ここで基板外へ光を導くとは、具体的には結像光学系40へ光を入射させず、図示しない光吸収手段に光を導くことを表す。
【0055】
ここでは、マイクロミラーMPA1が第1の光を反射し、マイクロミラーMPA3が第2の光を反射する。したがって、マイクロミラーMPA1がON状態、マイクロミラーMPA3がOFF状態に位置決めされる。パターン内部に光を投影するマイクロミラーに関しては、同じ位相の光(第1もしくは第2の光)で投影すればよい。マイクロミラーMPA1、MPA3に照射される第1の光、第2の光の強度は、位相差があるため正負反対で表している(図5参照)。
【0056】
図6には、干渉露光と非干渉露光における光の位相、強度分布、および干渉後の光強度分布を示している。実際に基板に到達する第1の光、第2の光の強度分布は、回折光を含むため緩やかな山なりのカーブとなり、隣の微小露光エリアPA2にまで及ぶ。そのため、基板上の光強度分布Lには、微小露光エリアPA2内において第1の光と第2の光が干渉し、光強度0に近い部分が生じる。
【0057】
非干渉露光の光強度分布L0と、干渉露光の光強度分布Lとを比較すると、光強度分布L0では、微小露光エリアPA2において位相および強度がともに正であるため、第1の光、第2の光の作る強度分布の谷部の強度が増加する。そのため、光強度分布は微小露光エリアPA2において0付近まで落ち込まず、微小露光エリアPA1、PA2との間における強度差(輝度差)は小さい。
【0058】
一方、干渉露光によって現れる光強度分布Lでは、微小露光エリアPA2において強度0に近い部分が存在するため、微小露光エリアPA1、PA2間の強度差が大きくなり、光強度分布が急峻になり、結果的にコントラストが上がる。
【0059】
このように、互いに位相の異なる2つの光を微小露光エリア1つ分空けて結像させると、その間に挟まれた非投影の微小露光エリアPA2において回折光の干渉が生じ、隣接する微小露光エリア間で輝度差の大きい光強度分布Lが生じる。
【0060】
一般に、パターンを基板の感光表面に形成するためには、感光材の感度に従う露光エネルギー量RL(以下、適正露光量RLという)以上のエネルギーになるよう光の強度を定め、パターン光を投影する必要がある。しかしながら、基板の変形、歪などが原因で結像光学系40の焦点深度から外れた場合、光強度分布Lは、より緩やかな曲線分布となる。そのため、最大強度部分あるいは最小強度部分と適正露光量RLとの差が小さくなる。
【0061】
非干渉露光の場合、微小露光エリアPA2における光強度と適正露光量RLとの差が元来大きくないため、焦点深度から外れた場合、微小露光エリアPA1と微小露光エリアPA3のパターンとが切れ目なく繋がり、パターンエッジが形成されない恐れがある。
【0062】
一方、干渉露光の場合、結像位置が焦点深度の範囲から外れるような状況になっても投影部分と非投影部分との間のコントラストが大きく、強度0に近い範囲が明瞭であるため、微小露光エリアPA1と微小露光エリアPA3のパターンは分離される。そのため、パターンエッジがしっかりと形成され、ボケの影響がパターン像に現れない。
【0063】
干渉の必要のないパターン光については、第1の光を照射するようにラスタデータをONデータに設定すればよい。また、露光OFFのエリアについては、マイクロミラーがフラット状態となるようにラスタデータを設定する。なお、第1の光と第2の光を逆にしてラスタデータを設定することも可能である。
【0064】
以上のように本実施形態によれば、互いに半波長分の位相差をもち、コヒーレント性のある第1、第2の光を、DMD30に入射させる。DMD30の各マイクロミラーは、パターンを形成する場合、各露光動作において、第1の光を投影するマイクロミラーをON状態(第1位置)、第2の光を投影するマイクロミラーをOFF状態(第2位置)に切り替えることにより、第1の光もしくは第2の光を微小露光エリア単位で基板へ投影させる。一方、露光OFF(捨光)するエリアの場合、マイクロミラーはフラット状態に位置決めされる。
【0065】
互いに位相差のある2つの光を1つのDMDに対して別々の方向から照射し、DMDの各マイクロミラーを3つの姿勢で制御することにより、2つの光から成るパターン光が露光エリアに投影される。そして、微小露光エリア幅を挟んで隣り合うパターンの非露光対象エリアにおいて干渉露光が行なわれる。その結果、パターン像のコントラストが向上する。
【0066】
このような干渉露光を行なうことにより、基板の凹凸やねじれによって焦点ズレが生じても、ボケのないパターンを形成することができる。特に、マスクレス露光装置に使用される大型基板の場合、基板表面の微小な凹凸やねじれが製造プロセス上存在し、焦点深度の浅い結像光学系を用いる場合が多いが、ピンボケを抑え、解像度の低下を招くことなくパターンを形成することが可能となる。
【0067】
また、各マイクロミラーの姿勢はあらかじめ決められているのではなく、パターンに応じて選択的に決定される。そのため、様々なパターン形状に対しても、コントラストを拡大させる必要のあるパターンエッジ部分を抽出し、その部分のラスタデータを干渉露光用データに変換するだけで干渉露光を実現させることができる。特に、単一のDMDを使用しながら干渉露光を実現するため、簡易な構成で位相シフト、干渉を利用した様々な露光を実現することができる。
【0068】
なお、本実施形態の干渉露光は、パターンエッジ部分など隣接画素間で光強度差を拡大させるように第1の光、第2の光を投影可能にしているが、半波長分の位相差があって光強度が極めて小さい光をパターン周囲に照射することによっても、光強度分布を急峻にすることが可能である。
【0069】
この場合、パターン光については、すべて第1の光(もしくは第2の光)によって構成し、該当するマイクロミラーはON状態に位置決めされる。一方、第2の光(もしくは第1の光)については、半波長分の位相差をもたせるとともに、非常に小さな光強度(例えば、第1の光の数パーセントの光強度)で光源部から照射させる。
【0070】
そして、露光OFFに該当するマイクロミラーは、第2の光を基板へ投影させるように、OFF状態に位置決めされる。その結果、第1の光によるパターン周囲には第1の光と第2の光の干渉作用によって谷が生じ、急峻な光強度分布を生成することができる。第2の光の光強度が十分小さいため、露光OFF部分にパターンが形成されることはない。
【0071】
第1の光と第2の光の位相差については、正確に半波長分の位相差をもたせることに限定されない。光強度分布曲線の分布幅などに従い、光の干渉(山と谷の重なり)が生じるように、位相差をもたせればよい。
【0072】
次に、図7を用いて、第2の実施形態である露光装置について説明する。第2の実施形態では、1つの光源から2つの光を生成し、DMDに入射させる。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0073】
図7は、第2の実施形態における照明システムを示した構成図である。
【0074】
照明システム120の光源121は、レーザー発振器、またはLD、放電灯などによって構成されており、コヒーレント性のある光を放出する。光源121から放出された光は、ビームスプリッターなどの光分割光学系127によって分割される。分割によって得られた2つのビーム(以下、第1の光、第2の光という)は、互いに逆方向に向けて光分割光学系127から出射する。
【0075】
第1の光は、ミラー125A、126Aを介して照明光学系122Aに入射し、ミラー124Aで反射した後、DMD30に入射する。一方、第2の光は、ミラー125B、126B、位相シフト板123を介して照明光学系122Bに入射し、ミラー124Bで反射した後、DMD30に入射する。
【0076】
そして、第1の実施形態と同様に、第1の光と第2の光が選択的に基板Sに照射される。第2の光は第1の光と半波長分位相差をもつため、干渉露光が実現し、光強度0付近の範囲が明瞭になる。その結果、コントラストのあるパターンを形成することができる。
【0077】
次に、図8〜10を用いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、DMDによって光源からの光を分割し、位相差を作り出した後に2つの光を選択的に照射する。
【0078】
図8は、第3の実施形態における照明システムを示した図である。図9は、第3の実施形態における露光ヘッド内部の概略的構成図である。そして、図10は、第3の実施形態におけるマイクロミラーの姿勢と光の反射方向を示した図である。
【0079】
照明システム220の光源部221は、レーザー発振によって構成されており、コヒーレント光を放出する。光源121から放出された光は、照明光学系222、ミラー223を介してDMD30に入射する。
【0080】
図8に示すように、光源121からの光は、DMD30の表面垂直方向Vに対して所定角度(ここでは、24°)で入射する。マイクロミラーMは、ON状態(12°)のときに光を表面垂直方向Vに向けて反射し、OFF状態(−12°)のときに光を所定方向(−48°)へ反射する。
【0081】
したがって、ON状態、OFF状態の姿勢を選択的に照射することにより、2つの光(以下、第1の光、第2の光という)が生成される。各マイクロミラーMのON/OFF状態を選択的に切り替えることにより、第1、第2の光を含むパターン光が基板Sに向けて進行する。
【0082】
一方、マイクロミラーMがフラット状態の場合、マイクロミラーMは、第1、第2の光の進行する方向とは異なる方向(−24°)へ入射光を反射させる。したがって、マイクロミラーをフラット状態に位置決めすることにより、光を基板外へ導く。
【0083】
図8に示すように、第1の光は、ミラー224Aを介してハーフミラー等の光分離手段を備えた光合成光学系225に入射する。第1の光は、光合成光学系225で90°進行方向を変える。光合成光学系225から出射した第1の光は、結像光学系40の光軸E3に沿って結像光学系40に入射する。
【0084】
一方、第2の光は、ミラー224Bで反射し、位相シフト板224を通過した後、光合成光学系225に入射する。第2の光は、位相シフト板224によって第1の光と半波長分の位相差をもつ。第2の光は、光合成光学系225のハーフミラーを通過し、結像光学系40の光軸に沿って結像光学系40に入射する。なお、光合成光学系としてはキューブプリズムなどがある。
【0085】
その結果、半波長分の位相差がある第1の光と第2の光が基板Sに選択的に入射し、干渉露光が実現される。干渉露光を行なうためのマイクロミラーの姿勢については、パターン光を形成するマイクロミラーに対し、第1、第2の光いずれかを基板に投影する。特に、隣り合うパターンを形成する場合、パターンを分離する(間に挟まれる)非露光対象エリアにもパターン光の回折光が投影される。パタ−ンを形成するため光を投影するマイクロミラーに対し、一方のパターンに応じたマイクロミラーをON状態、他方のパターンに応じたマイクロミラーをOFF状態に設定し、さらに、非露光対象エリアに該当するマイクロミラーに対してはフラット状態に設定すればよい。
【0086】
また、ハーフトーン位相マスクと同等の干渉露光を実現するため、パターン光を投影するマイクロミラーをON状態、非露光エリアに該当するマイクロミラーをOFF状態に位置決めしてもよい。この場合、第2の光の強度を第1の光に対し数パーセントに抑えるようにするため、非露光エリアは第2の光と第1の光のパターン回折光とが干渉して光強度を弱める光学素子を配置する構成などを、適用することが可能である。
【0087】
このように第3の実施形態によれば、光源部221から照射された照明光は、DMD30のパターン光を形成する各マイクロミラーの姿勢によって第1の光、第2の光に分離される。そして、第2の光は、半波長分位相をシフトさせた状態で、第1の光と合成される。第1の光、第2の光から成るパターン光が基板に投影される。一方、非露光エリアに該当するマイクロミラーはフラット状態に位置決めされ、その結果基板に照射されない。
【0088】
このように、照明光から第1の光、第2の光を生成し、互いに半波長分の位相差をもつようにした後に基板へ照射することにより、干渉露光が実現される。照明光学系から結像光学系までの光学系の構成に基づいて第1、第2の光を生成するため、従来の光源部をそのまま利用しながら、干渉露光を実現することが可能である。
【0089】
なお、第1、第2の実施形態においては、光源としてレーザー発振器を適用しているが、LED、あるいは放電ランプなどを用いて、コヒーレント性のある光を照射するようにしてもよい。また、照明光学系、結像光学系、光分割光学系など上述した光学系についても、露光装置等の仕様に従った構成にすることが可能である。
【0090】
第1、第2の実施形態では、マイクロミラーが光を投影しない非露光対象エリアにおいて光強度分布が互いに重なる光に対して半波長分の位相差をもたせる干渉露光と、露光エリアと非露光エリアで互いに半波長分の位相差および強度差をもつ光を投影する干渉露光を説明している。しかしながら、これ以外の位相シフトに基づいた干渉露光を実現することも可能である。干渉露光により、非露光対象エリアもしくは露光対象エリアがパターン形成時に明瞭な暗部となり、その暗部が際立ってコントラストが向上するように、各マイクロミラーが独立して第1の光、第2の光を選択的に反射すればよい。
【符号の説明】
【0091】
10 露光装置
20 照明システム
30 DMD(光変調素子アレイ)
40 結像光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10