【実施例1】
【0030】
図1は、本発明に係る注射器70において、組み立てが概ね完了した状態における、注射器70の概略構成を示す断面図である。また、
図2は、注射器70を組み立てるための、その構成部の装填順序を示す図である。注射器70は、
図2に示すように、その本体となるハウジング5の内部に、注射器70の構成部である、電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4が順次装填され、最後に固定リング6によって、これらの構成部がハウジング5に対して固定され、組み立てられることになる。
【0031】
詳細には、ハウジング5は、その内部が中空状に形成され、軸方向の一端側に、電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4がハウジング内に装填可能となるように装填用開口部52が形成されている。一方で、ハウジング5の軸方向の他端側には、後述するようにハウジング5に最初に装填される電源部1に設けられた押ボタンスイッチ11の頂部が露呈するように設けられた開口部53が形成されている。そして、ハウジング5内の中空部分は、その内周面が連続したテーパ面50として形成され、テーパ面50の半径(ハウジング5の内径)は、開口部53から装填用開口部52に進むに従い、換言すれば、ハウジング5の軸に沿ってその増大するように形成されている。なお、本実施例では、注射器70において、ハウジング5の開口部53側を上流側と称し、装填用開口部52側を下流側と称する。これは、各構成部がハウジング5に装填され注射器70が組み立て完了となった状態において、注射液34が射出されるときの流れの方向に基づいたものである。
【0032】
ここで、注射器70においては、個別に機能を有し、独立して形成される構成部として、電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4が、ハウジング5の装填用開口部52を介して、順次その内部に装填されて、
図1に示す装填状態が形成される。電源部1は、後述する駆動部2に設けられた点火器22に電力供給を行うための電源であり、ユーザが押ボタンスイッチ11を押下すると、内部に保有するバッテリの電力を利用して、電源側電極12間に印加電圧を発生させる。この電源側電極12は、注射器70(ハウジング5)の中心軸上に位置する突起状の第一電極と、当該電極から所定の距離だけ離れた突起状の第二電極との一対の電極として形成される。
【0033】
次に、駆動部2は、その内部にガス発生剤25を有し、ガス発生剤25が燃焼することで生じる燃焼ガスの圧力を、後述する保持部3に収容される注射液の射出エネルギーとして付与する。具体的には、電源部1の電源側電極12に対応する駆動部側電極21が、駆動部2の端面に形成されている。この駆動部側電極21は、注射器70(ハウジング5)の中心軸上に位置する微小円形の第一電極と、当該第一電極を中心として上記所定の距離と同じ半径を有する円周形状に形成された第二電極との一対の電極として形成される。このように駆動部側電極21が形成されることで、駆動部2に対する電源部1の相対位置(注射器70の中心軸を中心とする回転方向の相対位置)を問わず、駆動部側電極21と電源部側電極12との接触を良好に維持することができる。
【0034】
そして、駆動部側電極21は、駆動部2内に設けられた点火器22に接続されている。点火器22は、公知の電気式の点火装置である。駆動部側電極21間に電源部1から電圧印加されると電流が流れ、それにより点火器22内に設けられた点火薬が燃焼する。このとき、点火薬の燃焼による燃焼生成物は、点火器22に隣接する燃焼室24に配置されているガス発生剤25側へと流れ込み、その結果、燃焼室24内でガス発生剤25の燃焼が開始される。そして、ガス発生剤25の燃焼により燃焼ガスが急激に発生することで、燃焼室24に隣接して設けられた金属製のピストン23に対して圧力が付与され、ピストン23が、注射器70の下流側に向かって推進していくことになる。
図1ではピストン23で閉塞されている燃焼室24の保持部3側端部が駆動部側開口部となる。
【0035】
なお、点火器22において用いられる点火薬として、好ましくは、ジルコニウムと過塩
素酸カリウムを含む火薬(ZPP)、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(THPP)、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(TiPP)、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(APP)、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬(ABO)、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬(AMO)、アルミニウムと酸化銅を含む火薬(ACO)、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬(AFO)、もしくはこれらの火薬のうちの複数の組合せからなる火薬が挙げられる。これらの火薬は、点火直後の燃焼時には高温高圧のプラズマを発生させるが、常温となり燃焼性生物が凝縮すると気体成分を含まないために発生圧力が急激に低下する特性を示す。
【0036】
また、燃焼室24内に配置されるガス発生剤25としては、好ましくは、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%からなるシングルベース無煙火薬が挙げられる。また、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。このガス発生剤25は、上記点火薬と異なり、燃焼時に発生した所定のガスは常温においても気体成分を含む。なお、ガス発生剤25は必ずしも使用しなくてもよく、点火器22とピストン23とで駆動部2が構成されていてもよい。
【0037】
次に、保持部3は、注射器70によって注射される注射目的物質である注射液34を、その内部に収容する。具体的には、保持部3の中央には、該保持部3が
図1に示すようにハウジング5内に装填された状態において、ハウジング5の中心軸上に沿うように、貫通孔(収容孔)33が形成されている。そして、この貫通孔33において、上流栓31と下流栓32との間の空間に、注射液34が収容されている。そして、上流栓31および下流栓32は、注射液34の収容時に該注射液が漏れ出さないように、且つ後述するようにピストン23の摺動に伴って注射液34が円滑に貫通孔33内を移動できるように、表面にシリコンオイルを薄く塗布したゴム製のものである。そして上流線31で閉塞されている貫通孔(収容孔)33の駆動部2側端部が収容孔側端部となる。
【0038】
次に、ノズル部4は、保持部3が収容している注射液34を、注射器70の外部の注射対象物(注射対象領域)に射出するための流路を有している。具体的には、ノズル部4には、注射液34を射出するためのノズル43が形成されるとともに、
図1に示すようにノズル部4がハウジング5内に装填された状態において、下流栓32と対向する箇所に、下流栓32を収容可能な凹部41が形成されている。この凹部41は、下流栓32とほぼ同じ径を有し、下流栓32の長さより若干長い深さを有する。これにより、駆動部2からの射出エネルギーで注射液34に圧力が掛かったときに、下流栓32が凹部41内に収容されることが可能となる。凹部41に下流栓32が収容されると、加圧された注射液34は、保持部3の貫通孔33内の空間から解放されることになる。その開放された注射液34を、ノズル43まで導くための流路42が、注射器70の中心軸に垂直な方向に延在するように設けられている。これにより、解放された注射液34は、流路42を経てノズル43から注射対象物へ射出されることになる。また、凹部41が下流栓32を収容する深さを有することで、注射液34の射出が下流栓32によって阻害されることを回避できる。
【0039】
なお、ノズル43は、ノズル部4に複数形成されてもよく、または、一つ形成されてもよい。複数のノズル43が形成される場合には、各ノズル43に対して解放された注射液が送り込まれるように、各ノズル43に対応する流路42が形成される。さらに、複数のノズル43が形成される場合には、注射器70の中心軸の周囲に等間隔で各ノズル43が配置されるのが好ましい。また、ノズル43の径は、注射対象物、注射液34に掛かる射出圧力、注射液の物性(粘性)等を考慮して適宜設定される。
【0040】
上述までのように、注射器70においては、電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4が、それぞれ独立して構成され、各構成部が、
図2に示すように、ハウジング5に対し
て順次装填されることで、
図1に示す装填状態が形成されることになる。
【0041】
このように、注射器70の構成部を、それぞれ独立して構成することで、ユーザは、注射目的に応じた構成部を選択して、それらを組み合わせて最終的な注射器70を組み立てることができる。例えば、注射液34に掛ける圧力プロファイルを変えて、注射対象物における注射深さを調整できるように、ガス発生剤25の種類や量を異ならせた複数種類の駆動部2を準備することができる。また、注射対象物に射出する注射液34の種類や量を、その注射対象物の状態等に応じて調整できるように(例えば、注射対象物が大人の皮膚構造体である場合と子供の皮膚構造体である場合とでは、投与すべき注射液の量も異なる点を踏まえて、その投与量を調整できるように)、注射液の種類や量を異ならせた複数種類の保持部3を準備することができる。また、注射対象物に応じた好適な注射液34の射出形態を選択できるように、ノズル43の数やそのノズル径等を異ならせた複数種類のノズル部4を準備することができる。そして、ユーザは、自己が行う所定の注射目的を達成するために、一つの駆動部2と、一つの保持部3と、一つのノズル部4とを選択し、
図2に示すように各構成部を装填用開口部52を介して、ハウジング5に装填し注射器70が使用できる状態に至らせる。これにより、様々な目的に応じた注射液の射出が容易に実現される。
【0042】
なお、ユーザが、ハウジングに対して、注射準備を行うために一つの駆動部2と、一つの保持部3と、一つのノズル部4とを選択しやすいように、各構成部は、その外形を所定の統一した塗装やデザインを付すのが好ましい。例えば、駆動部2は青色の塗装で統一し、保持部3は黄色の塗装で統一し、ノズル部4は赤色の塗装で統一する等である。これにより、複数の駆動部2を選択してしまう等のユーザのミスを抑制することができる。
【0043】
ところで、
図1、
図2に示すように、ハウジング5に最初に装填されるのは電源部1である。電源部1が、押ボタンスイッチ11の面からハウジング5内に装填されると、押ボタンスイッチ11の周囲に設けられた段部13が、ハウジング5の開口部53の周囲に設けられた段部54に突き当てられて、電源部1の装填位置が決定される。この装填位置において、押ボタンスイッチ11の頂面と、ハウジング5の開口部53側の端面が面一の状態となる。
【0044】
ここで、注射器70においては、電源部1からの印加電圧を駆動部2が受けて、ガス発生剤25を燃焼させ、それにより生じた燃焼ガスで注射液34を加圧し、加圧された注射液34をノズル43から外部に射出するという構成から、ハウジング5への各構成部の装填順序は、
図2に示すように、電源部1の後は、駆動部2、保持部3、ノズル部4でなければならない。仮にこの順序を間違えて装填してしまうと、注射器70によって注射液34を射出することができない。
【0045】
そこで、注射器70においては、各構成部のハウジング5への装填順序が適正なものとなるように、換言すれば、仮にユーザが各構成部の装填順序を誤った場合には、直ちにユーザがその誤りを認識できるように、ハウジング5内での各構成部の装填位置を規定するための構成が採用されている。具体的には、ハウジング5の内周面であるテーパ面50(第二テーパ面)に対応するように、各構成部の外周面がテーパ面(第一テーパ面)として形成されている。上記の通り、テーパ面50については、上流側から下流側に向けて、テーパ面50を形成する半径(外径)が増大するようになっている。そして、このテーパ面50に対応するように、ハウジング50に装填されるべき順序に従って、換言すれば、
図1のように各構成部がハウジング5内でその軸方向に重ねあわされた状態で、ハウジング5側のテーパ面50に対応するように電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4の外周面が連続したテーパ面(第一テーパ面)を形成するように、各構成部の外周面10、20、30、40が形成される。
【0046】
このように各構成部の外周面10、20、30、40が、重ね合わされたときに連続したテーパ面となるように形成されることで、注射器70を使用できる状態にするためには、ハウジング5内での各構成部の装填位置が、
図1に示すように一義的に決定されることになる。仮に、駆動部2より先に保持部3をハウジング5に装填してしまうと、保持部3は、自己の外周面30と、それに対応するテーパ面50の一部とが接触する位置、すなわち保持部30が装填されるべき装填位置よりも奥(上流側)には進むことができない。そのため、その後にユーザが駆動部2を装填しようとしたときに、駆動部2が装填できない状態となっているため、ユーザは装填順序を誤っていることに速やかに気付くことができる。したがって、ハウジング5のテーパ面50(第二テーパ面)と、各構成部の外周面10、20、30、40が重ね合わされて形成される連続したテーパ面(第一テーパ面)が、本発明に係る規定手段に相当する。
【0047】
そして、
図1に示すように各構成部がハウジング5内に装填されると、最も下流側に位置するノズル部4の端面に接触するように、固定リング6をハウジング5内に挿入する。固定リング6が、その外周に雄ネジが切ってあり、ハウジング5の内周面の端部(装填用開口部52)近傍に設けられた雌ネジ部51と螺合する。これにより、ノズル部4を介して、ハウジング5内に装填されている各構成部を押圧し、固定することができる。
【0048】
<変形例1>
上記実施例では、電源部1も、他の構成部とともに、装填用開口部52を介してハウジング5内に装填されたが、その形態に代えて、
図3に示すように、駆動部2等とは別に電源部1はハウジング5に対して上流側から装填するようにしてもよい。このとき、電源部1の押ボタンスイッチ11が設けられている端面とは反対側の端面の周囲に段部14が設けられる。そして、ハウジング5の開口部53側には、電源部1が収容される凹部55が設けられるとともに、この凹部55と、テーパ面50で画定されるハウジング5内の空間とを連結する空間に突部56が設けられる。そして、凹部55に電源部1が装填されると、電源部1側の段部14が、ハウジング5側の突部56に突き当てられることで、電源部1の装填位置が決まることになる。なお、装填された電源部1は、公知の固定手段等(例えば電源部1が有するスナップフィットなどで、ハウジングに対して着脱可能な状態で)でハウジング5に固定される。このようにハウジング5に電源部1が装填されると、電源部側電極12が、テーパ面50で画定されるハウジング5内の空間に向けて露呈された状態になり、
図1と同じように、装填用開口部52を介して装填された駆動部2の駆動部側電極21と接触可能な状態となる。
【0049】
電源部1は、その蓄電容量次第では、駆動部2への電力供給を数回にわたって実行することが可能である。そのような場合に、
図1に示すように、駆動部2等の他の構成部と同じように、注射液34の射出の度に電源部1をハウジング5へ装填するのは、煩わしい場合もある。そこで、
図3に示すように、電源部1のみを他の構成部とは別に装填することで、換言すると、電源部1を上述したテーパ面同士による装填位置の規定の対象としないようにすることで、電源部1の装填に関する煩わしさを軽減することができる。なお、電源部1の蓄電容量に応じた所定回数の電力供給を行った後は、ハウジングから電源部1を取り外し、新しい電源部1を装填すればよい。
【0050】
<変形例2>
図4に、本変形例に係る駆動部2と保持部3との相対関係を示す。燃焼室24にはガス発生剤25が配置され、点火器22の点火によりガス発生剤25が燃焼し、その燃焼ガスによりピストン23が押圧されることになる。このとき、ピストン23は、燃焼室24の駆動部3側の開口部(駆動部側開口部)24aから保持部3側に移動することになる。一方で、保持部3側では、上流栓31、注射液34、下流栓32が配置される貫通孔33の
端部(収容孔側端部)33aを介して、ピストン23が進入することで、ガス発生剤25の燃焼ガスによる射出エネルギーが、上流栓31を介して注射液34に伝わることになる。
【0051】
ここで、駆動部2の、保持部3側の端面に、開口部24aを囲むように環状の突起部26が設けられている。この環状の突起部26は、アルミニウム等の比較的軟らかい金属で形成されており、
図1に示すように各構成部がハウジング5内に装填され、固定リング6によって固定されると、そのときに係る押圧力で駆動部2と保持部3との間で潰れて変形する。なお、この変形によって、ピストン23から上流栓31への射出エネルギーの伝達は阻害されない。この結果、変形した環状の突起部26が、燃焼室24、貫通孔33を中心とした駆動部2と保持部3との間の空間を囲むように密封することになるため、ガス発生剤25の燃焼ガスが、駆動部2と保持部3の間から外に漏出するのを抑制することができ、以て、注射液34への効果的な射出エネルギーの伝達を図ることができる。
【0052】
<変形例3>
図5に、本変形例に係る駆動部2と保持部3との相対関係を示す。
図5には、
図4に示す環状の突起部26に代えて、環状の突部27および環状の溝部28を設けて、同じように注射液34への効果的な射出エネルギーの伝達を図ろうとする構成が開示されている。具体的には、駆動部2の、保持部3側の端面に、開口部24aを囲むように環状の突部27が設けられている。この環状の突部27は、上記環状の突起部26とは異なり、ハウジング5での固定時に変形はせず、保持部3の、駆動部2側の端面において端部33aを囲むように設けられた環状の溝部28に嵌り込む。環状の溝部28の深さは、環状の突部27の高さよりやや深く設定されている。
【0053】
この結果、環状の突部27と環状の溝部28との嵌合が、燃焼室24、貫通孔33を中心とした駆動部2と保持部3との間の空間を囲むように密封することになる。そのため、ガス発生剤25の燃焼ガスが、駆動部2と保持部3の間から外に漏出するのを抑制することができ、以て、注射液34への効果的な射出エネルギーの伝達を図ることができる。
【実施例2】
【0054】
図6に基づいて、注射器70の第二の実施例について、特に、ハウジング5内に装填される各構成部の装填位置を規定する規定手段について説明する。なお、第二の実施例に係る注射器70において、規定手段以外の構成については上記第一の実施例に係る注射器70と同一であるから、そのような同一の構成については同一の参照番号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施例では、ハウジング5に装填される電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4の外形を概ね円柱状に形成するとともに、各構成部の外周面の半径(外径)が、電源部1の外周面100、駆動部2の外周面200、保持部3の外周面300、ノズル部4の外周面400の順に、大きくなるように設計されている。したがって、本実施例の場合、ハウジング5内で各構成部を重ねあわせると、各構成部の外周面は、上記第一の実施例のように連続したテーパ面を形成するのではなく、段状の不連続な外周面を形成することになる。そして、ハウジング5側の内周面については、各構成部の外周面に対応させて形成される。具体的には、電源部1の外周面100に対応して内周面501が設けられ、駆動部2の外周面200に対応して内周面502が設けられ、保持部3の外周面300に対応して内周面503が設けられ、ノズル部4の外周面400に対応して内周面504が設けられる。そして、内周面501、502、503、504の順で、それぞれの半径(内径)は大きく設定される。そのため、ハウジング5の内周面についても、段状の不連続な面として形成される。
【0056】
このように各構成部の外周面100、200、300、400が、重ね合わされたときに段状の不連続な外周面となるように形成され、且つハウジング5の内周面が当該外周面に対応するように形成されることで、注射器70を使用できる状態にするためには、ハウジング5内での各構成部の装填位置が、
図1に示すように一義的に決定されることになる。このため、ユーザは装填順序を誤るとそれに速やかに気付くことができる。したがって、ハウジング5側の段状の内周面501、502、503、504と、各構成部の外周面100、200、300、400が重ね合わされて形成される段状の外周面が、本発明に係る規定手段に相当する。
【0057】
また、各構成部の外形は、上述した円柱状に代えて、外周面がテーパ面となるように円錐台形状としてもよい。
【0058】
<その他の実施例>
本発明に係る注射器70によれば、上述した注射液を皮膚構造体に注射する場合以外にも、例えば、ヒトに対する再生医療の分野において、注射対象となる細胞や足場組織・スキャフォールドに培養細胞、幹細胞等を播種することが可能となる。例えば、特開2008−206477号公報に示すように、移植される部位及び再細胞化の目的に応じて当業者が適宜決定し得る細胞、例えば、内皮細胞、内皮前駆細胞、骨髄細胞、前骨芽細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、皮膚細胞、筋肉細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、腸管細胞、幹細胞、その他再生医療の分野で考慮されるあらゆる細胞を、注射器70により注射することが可能である。より具体的には、上記播種すべき細胞を含む液(細胞懸濁液)を保持部3に収容し、それに対してガス発生剤25の燃焼により加圧することで、移植される部位に所定の細胞を注射、移植する。
【0059】
さらには、特表2007−525192号公報に記載されているような、細胞や足場組織・スキャフォールド等へのDNA等の送達にも、本発明に係る注射器70を使用することができる。この場合、針を用いて送達する場合と比較して、本発明に係る注射器70を使用した方が、細胞や足場組織・スキャフォールド等自体への影響を抑制できるためより好ましいと言える。
【0060】
さらには、各種遺伝子、癌抑制細胞、脂質エンベロープ等を直接目的とする組織に送達させたり、病原体に対する免疫を高めるために抗原遺伝子を投与したりする場合にも、本発明に係る注射器70は好適に使用される。その他、各種疾病治療の分野(特表2008−508881号公報、特表2010−503616号公報等に記載の分野)、免疫医療分野(特表2005−523679号公報等に記載の分野)等にも、当該注射器70は使用することができ、その使用可能な分野は意図的には限定されない。