(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973231
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/14 20060101AFI20160809BHJP
B60T 11/20 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
B60T13/14
B60T11/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-116364(P2012-116364)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-241130(P2013-241130A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昭彦
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−198796(JP,A)
【文献】
特開平11−240440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/14
B60T 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
そのハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストンと、
その加圧ピストンと同軸上に配設され、運転者により操作可能なブレーキ操作部材に連携させられた入力ピストンと、
前記加圧ピストンの前方に設けられ、ブレーキシリンダに接続された前方加圧室と、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、電気的な制御により出力液圧を制御可能な出力液圧制御装置に接続された背面室と、
前記入力ピストンの前方の前記ハウジングとの間に設けられ、前記入力ピストンの前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力に応じた力を受ける操作反力受面が対向する反力室と
を含むシリンダ装置であって、
前記入力ピストンが、その入力ピストンの前部に設けられ、前記加圧ピストンに向かって前方に開く凹部を含み、
前記ハウジングが、少なくとも一部が前記凹部の内側に位置する概して筒状を成したスリーブを含み、
前記加圧ピストンが、その加圧ピストンの後部に設けられ、前記凹部の内側において、前記スリーブに、液密と気密との少なくとも一方の状態で摺動可能に嵌合された軸方向ロッド部を含み、
前記操作反力受け面が前記入力ピストンの凹部を形成する筒部の前端面とされ、
前記軸方向ロッド部と前記凹部の底部との間が、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間の相対移動に伴って容積が変化可能な容積室とされ、その容積室が、低圧源と大気とのいずれかに接続されたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
ハウジングと、
そのハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストンと、
その加圧ピストンと同軸上に配設され、運転者により操作可能なブレーキ操作部材に連携させられた入力ピストンと、
前記加圧ピストンの前方に設けられ、ブレーキシリンダに接続された前方加圧室と、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、電気的な制御により出力液圧を制御可能な出力液圧制御装置に接続された背面室と、
前記入力ピストンの前方の前記ハウジングとの間に設けられ、前記入力ピストンの前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力に応じた力を受ける操作反力受面が対向する反力室と
を含むシリンダ装置であって、
前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの一方が、他方に向かって開く凹部を含み、
前記ハウジングが、少なくとも一部が前記凹部の内側に位置する概して筒状を成したスリーブを含むとともに、そのスリーブが、軸方向の両側に開口を有する円筒部と、その円筒部より大径のフランジ部とを有し、そのフランジ部が前記加圧ピストンの後方かつ前記入力ピストンの前方に位置し、前記フランジ部の前方が前記背面室とされ、前記フランジ部の後方が前記反力室とされ、
前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの他方が、前記凹部の内側において、前記スリーブに、液密と気密との少なくとも一方の状態で摺動可能に嵌合された軸方向ロッド部を含み、
前記軸方向ロッド部と前記凹部の底部との間が、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間の相対移動に伴って容積が変化可能な容積室とされ、その容積室が、低圧源と大気とのいずれかに接続されたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項3】
前記凹部が、前記加圧ピストンの後部に、後方に向かって開口する状態で設けられ、
前記入力ピストンの前部に前記軸方向ロッド部である小径部が設けられるとともに、前記入力ピストンの中間部に前記小径部より大径の大径部が設けられ、
前記入力ピストンの前記小径部と前記大径部との段部の前端面が前記操作反力受面とされた請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記容積室が、前記低圧源と前記大気とのいずれかに、常時、連通させられた請求項1ないし3のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた液圧ブレーキシステムのシリンダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(a)ハウジングと、(b)ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストン110,130と、(c)加圧ピストン110,130の前方に設けられ、ホイールシリンダに接続された前方加圧室140,141と、(d)加圧ピストン110の後方に設けられ、液圧制御装置600に接続されたコントロール室230と、(e)加圧ピストン110の後部に設けられ、コントロール室230の液圧を受けて加圧ピストンに伝達するコントロールピストン210と、(f)ブレーキペダル300に連結された入力ピストン(圧力部材)260と、(g)コントロール室230の後方に配設され、後退が抑制されたペダルシミュレータピストン251と、(h)コントロールピストン210から後方に伸び出させられ、ペダルシミュレータピストン251を貫通し、かつ、入力ピストン260の前部に設けられた凹部263に摺動可能に嵌合されたロッド400と、(i)入力ピストン260とペダルシミュレータピストン251との間に配設されたシミュレータピストン253と、(j)シミュレータピストン253と、ペダルシミュレータピストン251,入力ピストン260との間に、それぞれ設けられたスプリング255,257とを含むシリンダ装置が記載されている。
このシリンダ装置において、コントロール室230に液圧制御装置600によって制御された液圧が供給されると、加圧ピストン110、130が前進させられ、前方加圧室140、141に液圧が発生させられ、ホイールシリンダに供給される。また、ブレーキペダル300の踏込みに伴って入力ピストン260が前進させられるが、コントロールピストン210の前進に伴ってロッド400が前進するため、凹部263の隙間が確保され、入力ピストン260の加圧ピストン110に対する相対移動が許容される。
コントロール室230に制御圧が供給されない場合には、ブレーキペダル300の踏み込みにより入力ピストン260が前進させられ、ロッド400を介して加圧ピストン110,130が前進させられる。また、ペダルシミュレータピストン251が前進させられ、コントロールピストン210に当接し、加圧ピストン110が前進させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0179485号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、入力ピストンと加圧ピストンとが相対移動可能なシリンダ装置の改良であり、例えば、入力ピストンと加圧ピストンとが相対移動させられる場合に、入力ピストンの移動の加圧ピストンへの影響を小さくすることである。
【0005】
本願発明に係るシリンダ装置においては、反力室が入力ピストンとハウジングとの間に設けられ、容積室が入力ピストンと加圧ピストンとの間に設けられ、容積室が低圧源と大気とのいずれか一方に接続される。また、加圧ピストンと入力ピストンとのいずれか一方に凹部が設けられ、他方に軸方向ロッド部が設けられ、凹部と軸方向ロッド部とが、凹部の内側において、スリーブを介して、液密と気密との少なくとも一方の状態で摺動可能に嵌合される。
(a)仮に、凹部を形成する筒部と軸方向ロッド部との間(加圧ピストンと入力ピストンとの間)にスリーブが設けられていない場合、例えば、凹部を形成する筒部と軸方向ロッド部とが直接、液密あるいは気密に摺動可能に嵌合されている場合には、これらの間に生じる摩擦力により、入力ピストンの前進に伴って加圧ピストンが前進させられることがある。
それに対して、凹部を形成する筒部と軸方向ロッド部との間にスリーブを介在させれば、これらの間の摩擦力に起因する入力ピストンの前進に伴う加圧ピストンの前進を抑制することができ、前方加圧室の液圧の制御精度を向上させることができる。
(b)仮に、反力室が入力ピストンと加圧ピストンとの間に設けられた場合(容積室も反力室としての機能を有する場合も含む)には、入力ピストンに加えられる前進方向の力に起因する加圧ピストンの前進を防止する前進防止機構を設ける必要がある。また、前進防止機構を設けても、入力ピストンに加えられる前進方向の力に起因して加圧ピストンが前進させられることがあり、ブレーキ操作力に応じた反力を良好にブレーキ操作部材に付与することは困難である。
それに対して、反力室が入力ピストンとハウジングとの間に設けられ、容積室が低圧源と大気とのいずれか一方に接続されれば、入力ピストンに加えられる前進方向の力に起因する加圧ピストンの前進を良好に防止することができる。そのため、前進防止機構を設ける必要がなくなり、設計の自由度を向上させることができる。また、ブレーキ操作力に応じた力を反力としてブレーキ操作部材に付与することが可能となり、操作フィーリングを向上させることができる。
(c)仮に、容積室が、加圧ピストンの後端面と入力ピストンの前端面との間に形成されると、シリンダ装置の全長が長くなる。
それに対して、加圧ピストンと入力ピストンとのいずれか一方の凹部の内側に、他方の軸方向ロッド部が位置し、これらの間に容積室が形成されるようにすれば、シリンダ装置の全長を短くすることができる。
【0006】
以下、本願において特許請求が可能と認識されている発明、あるいは、発明の特徴点について説明する。
【0007】
(1)ハウジングと、
そのハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストンと、
その加圧ピストンと同軸上に配設され、運転者により操作可能なブレーキ操作部材に連携させられた入力ピストンと、
前記加圧ピストンの前方に設けられ、ブレーキシリンダに接続された前方加圧室と、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、電気的な制御により出力液圧を制御可能な出力液圧制御装置に接続された背面室と、
前記入力ピストンの前方の前記ハウジングとの間に設けられ、前記入力ピストンの前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力に応じた力を受ける操作反力受面が対向する反力室と
を含むシリンダ装置であって、
前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの一方が、他方に向かって開く凹部を含み、
前記ハウジングが、少なくとも一部が前記凹部の内側に位置する概して筒状を成したスリーブを含み、
前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの他方が、前記凹部の内側において、前記スリーブに、液密と気密との少なくとも一方の状態で摺動可能に嵌合された軸方向ロッド部を含み、
前記軸方向ロッド部と前記凹部の底部との間が、前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間の相対移動に伴って容積が変化可能な容積室とされ、その容積室が、低圧源と大気とのいずれかに接続されたことを特徴とするシリンダ装置。
スリーブはハウジングの構成要素であり、軸方向の移動が抑制された部材(例えば、固定部材)である。スリーブは、例えば、軸方向の両側に開口を有する円筒状を成したものとすることができ、その場合には、凹部の底部と軸方向ロッド部の端面とが対向し、これらの間が容積室とされる。
軸方向ロッド部とスリーブとの間の液密と気密との少なくとも一方の状態とは、これらの間における流体の漏れが非常に少ない状態である。また、液密と気密との少なくとも一方の状態で嵌合される場合には、軸方向ロッド部とスリーブとの間にシールが設けられることが多いが、シールを設けることは不可欠ではない。シールが設けられなくても、例えば、高い精度の加工を施すことにより、これらの間の流体の漏れが非常に少ない状態を実現することができる。
低圧源は、流体(液体あるいは気体)が収容されたタンクであり、収容された流体の圧力は、ほぼ大気圧にあることが多い。
(2)前記容積室が、前記低圧源と前記大気とのいずれかに、常時、連通させられた(1)項に記載のシリンダ装置。
例えば、容積室と低圧源や大気とが直接、すなわち、容積室と低圧源や大気との間に開閉弁等が設けられることなく、接続されるようにすることができる。容積室と低圧源や大気との間に開閉弁を設ければ、これらの間の連通、遮断が制御されるようにすることもできるが、開閉弁等を設けず、常に連通させられるようにすれば、構造を簡単にでき、コストダウンを図ることができる。
なお、本項に記載のシリンダ装置において、容積室、反力室は、流体(液体であっても気体であってもよい)が収容される流体室とされ、前方加圧室、背面室は、液体としての作動液が収容される液室とされる。
(3)前記凹部が、前記加圧ピストンの後部に、後方に向かって開口する状態で設けられ、
前記入力ピストンの前部に前記軸方向ロッド部である小径部が設けられるとともに、前記入力ピストンの中間部に前記小径部より大径の大径部が設けられ、
前記入力ピストンの前記小径部と前記大径部との段部の前端面が前記操作反力受面とされた(1)項または(2)項に記載のシリンダ装置。
加圧ピストンの後部に凹部が設けられ、入力ピストンの前部に軸方向ロッド部が設けられる。入力ピストンは段付き形状を成したものとされ、小径部(軸方向ロッド部)が加圧ピストンと対向し、小径部と大径部との間の段部がハウジングと対向する。
(4)前記加圧ピストンの凹部を形成する筒部が、前記スリーブの外側に液密と気密との少なくとも一方の状態で摺動可能に嵌合されるとともに、前記ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合され、かつ、前記加圧ピストンの凹部の前記筒部の後端面の後方が前記背面室とされた(3)項に記載のシリンダ装置。
容積室と背面室とが液密と気密との少なくとも一方の状態で遮断され、背面室には出力液圧制御装置が接続され、容積室は低圧源あるいは大気に連通させられる。
また、容積室と反力室とが液密と気密との少なくとも一方の状態で遮断される。例えば、反力室がブレーキ操作力に応じた液圧を発生させる液圧室である場合には、反力室が容積室から液密に遮断されることにより、反力室の液圧をブレーキ操作力に応じた大きさとすることができ、反力室の液圧をブレーキ操作部材に良好に付与することが可能となる。
(5)前記凹部が、前記入力ピストンの前部に、前方に向かって開口する状態で設けられ、
前記軸方向ロッド部が、前記加圧ピストンの後部に設けられ、
前記入力ピストンの凹部を形成する筒部の前端面が前記操作反力受面とされた(1)項または(2)項に記載のシリンダ装置。
入力ピストンの前部に凹部が設けられ、加圧ピストンの後部に軸方向ロッド部が設けられる。
(6)前記加圧ピストンの中間部に、前記軸方向ロッド部である小径部より大径の大径部が設けられ、その大径部が前記ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合され、その加圧ピストンの大径部と小径部との段部の後端面の後方が背面室とされた(5)項に記載のシリンダ装置。
(7)前記反力室が、作動液が収容された液室とされ、ストロークシミュレータの一部を構成するものであり、前記操作反力受面が前記反力室の液圧を受ける(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
反力室にストロークシミュレータが接続される。ストロークシミュレータは、ハウジングと、そのハウジングに摺動可能に嵌合されたピストンと、ピストンの一方の側に設けられたスプリングと、他方の側に設けられた液室とを含み、反力室と液室とが接続されるのであり、反力室は液室の一部であると考えることができる。液室および反力室の液圧は、ブレーキ操作部材の操作力に応じた大きさとなり、その液圧が操作反力受面によって受けられ、ブレーキ操作部材に付与される。
(8)前記反力室の、前記操作反力受面と前記ハウジングとの間に、前記入力ピストンの前記ハウジングに対する相対移動に伴って弾性力を発生させるスプリングが設けられた(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
操作反力受面はスプリングの弾性力を受ける。スプリングは、入力ピストンとハウジングの一部であるスリーブとの間に設けられることが多い。反力室は、例えば、大気に連通させられるようにすることができる。
(9)前記軸方向ロッド部と前記凹部の底部との間の距離が、前記操作反力受面と前記ハウジングとの間の距離より小さくされた(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
ブレーキ操作部材が操作されると、入力ピストンが前進させられる。
(a)背面室に液圧が供給されず、加圧ピストンが後退端位置にある状態においては、入力ピストンの前進に伴って軸方向ロッド部と凹部の底部とが互いに接近させられる。
(b)それに対して、背面室に制御圧が供給されると、加圧ピストンが前進させられるのであり、加圧ピストンと入力ピストンとは、それぞれ、別個に前進させられる。この場合において、入力ピストンの前進量より加圧ピストンの前進量の方が大きくなるように設計されれば、軸方向ロッド部と凹部の底部とが当接することはない。
これら(a)の場合においても(b)の場合においても、ブレーキ操作部材には操作反力受面を介して反力が付与される。操作反力受面が操作力に応じた力を受け得る状態にあるのであり、ハウジングと操作反力受面とが離間した状態にある。
(c)出力液圧制御装置の異常時等、背面室に制御圧が供給されない場合には、入力ピストンの前進により、軸方向ロッド部と凹部の底部とが当接させられる。加圧ピストンが前進させられ、前方加圧室に液圧が発生させられる。入力ピストンには前方加圧室の液圧に応じた力が作用し、反力としてブレーキ操作部材に加えられる。出力液圧制御装置が異常である場合等には、軸方向ロッド部の端部と凹部の底部との間の距離は小さい方がよい。
以上の事情から、入力ピストン、加圧ピストンが後退端位置にある状態における軸方向ロッド部の端部と凹部の底部との間の距離da、操作反力受面とハウジングとの間の距離dbが決められるのであり、前者の距離daが後者の距離dbより小さくされる(da<db)。
(10)前記スリーブが、軸方向の両端部に開口を有する円筒部と、その円筒部より大径のフランジ部とを有し、そのフランジ部が前記加圧ピストンの後方に位置し、前記フランジ部の前方が前記背面室とされた(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
(11)前記スリーブが、軸方向の両端部に開口を有する円筒部と、その円筒部より大径のフランジ部とを有し、そのフランジ部が前記入力ピストンの前記操作反力受面の前方に位置し、そのフランジ部の後方が前記反力室とされた(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
スリーブのフランジ部は、加圧ピストンと入力ピストンとの間に位置し、フランジ部の前方が背面室とされ、後方が反力室とされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係るシリンダ装置が含まれる液圧ブレーキシステムを表す回路図である。
【
図2】上記液圧ブレーキシステムの一部を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2に係るシリンダ装置の一部を示す図(断面図)である。
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るシリンダ装置を含む液圧ブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。
本液圧ブレーキシステムは、例えば、ハイブリッド車両、電気自動車等に搭載することができる。ハイブリッド車両、電気自動車等においては、車輪に、駆動源に含まれる電動モータの回生制動力と液圧ブレーキシステムによる液圧制動力とを加えることができるのであり、回生制動力のみが加えられる場合、回生制動力と液圧制動力との両方が加えられる場合、液圧制動力のみが加えられる場合がある。回生制動力のみが加えられる場合には、運転者によってブレーキ操作部材が操作されても、ブレーキシリンダに液圧は供給されない。
また、本液圧ブレーキシステムは、エンジンのみで駆動される車両に搭載することもできる。その場合には、ブレーキシリンダの液圧が、背面室の液圧の制御により制御される。
【実施例1】
【0010】
<液圧ブレーキシステムの構成>
図1に示す液圧ブレーキシステムにおいて、10がシリンダ装置であり、12がブレーキ操作部材としてのブレーキペダルであり、14FL,14FR,14RL,14RRが前後左右の各車輪にそれぞれ設けられた液圧ブレーキ15FL,15FR,15RL,15RRのブレーキシリンダであり、16が出力液圧制御装置としての背面液圧制御装置である。
[シリンダ装置の構成]
シリンダ装置10は、(i)ハウジング20と、(ii)ハウジング20に液密かつ摺動可能に嵌合された2つの加圧ピストン22,24と、(iii)加圧ピストン22,24と同軸(軸線L)上に設けられ、ハウジング20に液密かつ摺動可能に嵌合された入力ピストン26とを含む。
加圧ピストン22,24の前方は、それぞれ、前方加圧室30,32とされる。前方加圧室30には、左右前輪の液圧ブレーキ15FL,15FRのブレーキシリンダ14FL,14FRが接続され、前方加圧室32には、左右後輪の液圧ブレーキ15RL,15RRのブレーキシリンダ14RL,14RRが接続される。ブレーキシリンダ14FL,14FR,14RL,14RRに液圧が供給されると、液圧ブレーキ15FL,15FR,15RL,15RRが作動させられ、それぞれ、前後左右の各輪の回転を抑制する。ブレーキシリンダ14FL,14FR,14RL,14RRと前方加圧室30,32との間には、複数の電磁開閉弁を含むスリップ制御弁装置34が設けられる。以下、ブレーキシリンダ14,液圧ブレーキ15は、車輪の位置で区別する必要がある場合には、車輪の位置を表す添え字(FL,FR,RL,RR)を付し、車輪の位置で区別する必要がない場合には、添え字を付すことなく用いる。
なお、加圧ピストン22,24の間には、離間限度規定部36が設けられ、加圧ピストン22,24の間の離間距離が規定される。
【0011】
加圧ピストン24の後部には後方に開口する凹部40が設けられる。凹部40は、軸方向(軸線Lの方向)に延びた筒部41と、底部42とによって形成され、筒部41の開口側の端部(底部42とは反対側の端部)には半径方向外方へ突出してフランジ部43が設けられる。
また、凹部40と重ねてスリーブ44が設けられる
。スリーブ44は、軸線Lの方向の両側が開口とされた円筒部46と、その円筒部46から半径方向外方へ突出したフランジ部48とを有し、円筒部46が凹部40の内側に位置し、フランジ部48がフランジ部4
3の後方に位置する姿勢で配設される。スリーブ44はハウジング20の一部を構成するものであり、固定の、すなわち、軸線Lの方向の移動が阻止された部材である。
加圧ピストン24の凹部40の筒部41が、スリーブ44の円筒部46の外側にシール部49aを介して液密かつ摺動可能に嵌合され、加圧ピストン24のフランジ部43が、ハウジング20にシール部49bを介して液密かつ摺動可能に嵌合される。その結果、加圧ピストン24のフランジ部43とスリーブ44のフランジ部48との間が背面室50とされ、背面液圧制御装置16に接続される。なお、加圧ピストン24のフランジ部43の前方は環状室52とされ、常に、リザーバ54に連通させられている。
【0012】
入力ピストン26の後部にはブレーキペダル12がオペレーティングロッド58を介して連携させられる。また、入力ピストン26の前部には軸方向ロッド部としての小径ロッド60が設けられ、中間部には小径ロッド60より大径の大径部62が設けられる。小径ロッド60は、加圧ピストン24の凹部40の内側に至るまで軸線Lの方向に伸び、凹部40の内側において、スリーブ44の円筒部46にシール部63を介して液密かつ摺動可能に嵌合される。小径ロッド60の前端面と凹部40の底部42との間が容積室64とされるのであり、容積室64には環状室52を介してリザーバ54が常に連通させられる。
また、入力ピストン26の小径ロッド60と大径部62との段部の前端面66は操作反力受面とされ、操作反力受面66とスリーブ44のフランジ部48との間が反力室68とされる。反力室68にはストロークシミュレータ70が接続される。反力室68の液圧は、入力ピストン26に加えられる前進方向の力(ブレーキペダル12に加えられる操作力)に応じた大きさとなり、操作反力受面66を介してブレーキペダル12に反力として付与される。
このように、本実施例においては、反力室68と容積室64とが、シール部63を介して液密に遮断され、容積室64にリザーバ54が接続され、反力室68にストロークシミュレータ70が接続される。容積室64と反力室68とは互いに独立して設けられるため、反力室68には、容積室64の容積変化の影響を受けることなく、ブレーキ操作力に応じた液圧を良好に発生させることができる。また、容積室64はリザーバ54に直接接続されているため、加圧ピストン24に対して入力ピストン26が前進させられても、入力ピストン26に加えられる前進方向の力が加圧ピストン24に伝達されることがない。
なお、スプリング72は入力ピストン26を後退端位置に付勢するリターンスプリングである。また、入力ピストン26のスプリング72を保持する面を操作反力受面の一部と考えることもできる。
【0013】
反力室68には、ストロークシミュレータ70と並列に、電磁開閉弁80を介してリザーバ54が接続される。電磁開閉弁80は、ソレノイドに電流が供給されない間開状態にある常開弁であり、ソレノイドへの供給電流のON・OFFにより開閉させられる。電磁開閉弁80の開状態において、反力室68の液圧はリザーバ54に供給されるため、ストロークシミュレータ70は非作動状態とされる。電磁開閉弁80の閉状態においては、反力室68の液圧がストロークシミュレータ70に供給されることにより、ストロークシミュレータ70が作動させられる。この意味において、電磁開閉弁80は、ストロークシミュレータ作動許可・禁止弁と称することができる。
また、電磁開閉弁80と並列にリザーバ54から反力室68への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁82が設けられる。逆止弁82により反力室68が負圧になることが良好に回避される。
【0014】
[背面液圧制御装置の構成]
背面室50には背面液圧制御装置16が接続される。背面液圧制御装置16は、レギュレータ90,高圧源92,リニア弁装置94等を含む。
レギュレータ90は、背面室50,高圧源92,リニア弁装置94,リザーバ54の間に設けられ、レギュレータ90において、高圧源92の液圧、リザーバ54の液圧を利用して、出力液圧が、リニア弁装置94の制御によって制御される。
レギュレータ90は、
図2に示すように、ハウジング100と、ハウジング100に直列に、液密かつ摺動可能に嵌合された複数の可動部材102〜106とを含む。
ハウジング100には、互いに軸線Mの方向に隔てて、背面室50に接続された出力ポート110、高圧源92に接続された高圧ポート112、リザーバ54に接続された低圧ポート114、リニア弁装置94に接続された入力ポート116、前方加圧室32に接続されたパイロットポート118が設けられる。
【0015】
可動部材102は、パイロットポート118の液圧により移動可能とされている。
可動部材104は、小径部120と大径部122とを有する段付き形状を成したものであり、大径部側の端面が、入力ポート116の液圧、すなわち、リニア弁装置94によって制御された液圧を受ける受圧面とされ、リニア弁装置94によって制御された液圧によって移動可能とされている。
可動部材106は、互いに連通させられた軸方向に延びた軸方向通路124と、出力ポート110に連通させられる出力通路126とを有する。また、可動部材106は小径部128と大径部130とを有する段付き形状を成したものであり、小径部128の外周面に設けられた軸線Mの方向に伸びた環状凹部132が高圧ポート112に連通させられる。この小径部128と大径部130との段部(弁子)134とハウジング100に設けられた段部(弁座)136とにより高圧供給弁138が構成される。高圧供給弁138の開閉により、環状凹部132と出力通路126とが連通させられたり遮断されたりする。高圧供給弁138は、可動部材106とハウジング100との間に設けられたスプリング140により閉状態に付勢される。
また、可動部材104の小径部120は、可動部材106の軸方向通路124の内側に位置し、可動部材104の小径部120と大径部122との段部(弁子)144と、可動部材106の軸方向通路124の開口縁部(弁座)146とによって低圧遮断弁148が構成される。低圧遮断弁148の開閉により、低圧ポート116と出力ポート110とが連通させられたり遮断されたりする。低圧遮断弁148は、可動部材104と可動部材106との間に設けられたスプリング150により開状態に付勢される。
なお、可動部材106の可動部材104とは反対側の端部とハウジング100との間に弾性部材152が設けられる。弾性部材152の弾性変形により、可動部材106の矢印P方向への移動が許容される。
【0016】
高圧源92は、ポンプ160およびポンプモータ162を備えたポンプ装置163と、アキュムレータ164と、アキュムレータ164の液圧を検出するアキュムレータ圧センサ166とを含む。ポンプモータ162は、アキュムレータ圧が設定範囲内に保たれるように制御される。
リニア弁装置94は、高圧源92と入力ポート116との間に設けられた増圧リニア弁170と、入力ポート116とリザーバ54との間に設けられた減圧リニア弁172とを含む。増圧リニア弁170、減圧リニア弁172は、ソレノイドへの供給電流量に応じた大きさに前後の差圧を制御可能なものであり、増圧リニア弁170はソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にあり、減圧リニア弁172はソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある。増圧リニア弁170,減圧リニア弁172の制御により、入力ポート116の液圧が所望の大きさに制御される。
【0017】
液圧ブレーキシステムには、コンピュータを主体とするブレーキECU200(
図1参照)が設けられる。ブレーキECU200には、アキュムレータ圧センサ166,ブレーキペダル12の操作ストロークを検出するストロークセンサ210,背面室50の液圧を検出する背面液圧センサ212,反力室68の液圧を検出する反力センサ214が接続されるとともに、電磁開閉弁80,リニア弁装置94,ポンプモータ162等が接続される。
反力センサ214の検出値は、ブレーキペダル12に加えられる操作力に応じた大きさであるため、操作力センサと称することもできる。
【0018】
<液圧ブレーキシステムにおける作動>
以上のように構成された液圧ブレーキシステムの作動について説明する。
ブレーキペダル12が非操作状態にある場合において、シリンダ装置10において、入力ピストン26,加圧ピストン22,24は後退端位置にある。反力室68,前方加圧室30,32はリザーバ54に連通させられた状態にあり、液圧ブレーキ15は非作動状態にある。背面液圧制御装置16において、増圧リニア弁170,減圧リニア弁172のソレノイドに電流が供給されず、レギュレータ90は図示する原位置にある。低圧遮断弁148が開状態、高圧供給弁138が閉状態にあり、出力ポート110が高圧ポート112から遮断されて、低圧ポート114に連通させられる。背面室50がリザーバ54に連通させられた状態にある。
【0019】
液圧ブレーキシステムが正常である場合には回生協調制御が行われる。ストロークセンサ210,反力センサ214の検出値に基づいて、運転者の意図する要求制動力が求められる。そして、要求制動力が、回生制動力と液圧制動力との少なくとも一方によって満たされるように、背面室50の液圧が制御される。
【0020】
要求制動力が回生制動力によって満たされる場合には、背面室50に液圧が供給されることがない。
背面液圧制御装置16において、増圧リニア弁170,減圧リニア弁172のソレノイドに電流が供給されず、背面室50はリザーバ54に連通させられた状態にある。
シリンダ装置10において、電磁開閉弁80が閉状態とされる。ブレーキペダル
12の操作により入力ピストン26が前進させられ、反力室68がリザーバ54から遮断され、ブレーキ操作力に応じた液圧が発生させられる。反力室68の液圧がストロークシミュレータ70に供給され、ストロークシミュレータ70が作動させられる。ブレーキペダル12には、反力室68の液圧に応じた反力が加えられる。また、入力ピストン26の小径ロッド60は加圧ピストン24の凹部40に対して前進させられる。容積室64はリザーバ54に連通させられているため、容積室64には液圧が発生させられず、入力ピストン26に加えられる前進方向の力が加圧ピストン24に伝達されることがない。前方加圧室30,32に液圧が発生せず、ブレーキシリンダ14に液圧が供給されず、液圧ブレーキ15は非作用状態にある。
【0021】
この場合において、小径ロッド60と凹部40の筒部41との間にスリーブ44が介在され、入力ピストン26と加圧ピストン24とが直接摺動させられることがない。そのため、これらの間に摩擦力が生じ難くされ、入力ピストン26の前進に伴う加圧ピストン24の前進が良好に抑制される。
また、反力室68が入力ピストン26とハウジング20との間に設けられ、かつ、反力室68が容積室64から液密に遮断されている。そのため、反力室68の液圧を、良好にブレーキ操作力に応じた大きさとすることができ、操作フィーリングを向上させることができる。
一方、容積室64が入力ピストン26の前端面と加圧ピストン24の後端面との間に設けられる場合には、シリンダ装置10の全長が長くなるという問題がある。それに対して、加圧ピストン24に設けられた凹部40の内側に入力ピストン26に設けられた小径ロッド62が位置し、これらの間が容積室64とされるため、シリンダ装置10の全長を短くできるという利点がある。
【0022】
要求制動力が回生制動力で不足する場合には、背面室50に液圧が供給される。
背面液圧制御装置16において、増圧リニア弁170、減圧リニア弁172のソレノイドへの供給電流の制御により、レギュレータ90の入力ポート116の液圧が制御される。レギュレータ90において、可動部材104が可動部材106に接近させられ(P方向へ移動させられ)、低圧遮断弁148が閉状態とされ、出力ポート110が低圧ポート114から遮断される。また、可動部材106がP方向へ移動させられ、高圧供給弁138が開状態とされ、出力ポート110が高圧ポート112に連通させられる。出力ポート110の液圧、すなわち、背面室50の液圧は、入力ポート116の液圧に応じた大きさに制御されて、背面室50に液圧が供給される。
シリンダ装置10において、背面室50の液圧により、加圧ピストン24,22が前進させられる。前方加圧室30,32の液圧は、背面室50の液圧に応じた大きさとされ、ブレーキシリンダ14に供給される。車輪には、回生制動力と液圧制動力とが加えられ、これらによって要求制動力が満たされるように、背面室50の液圧(液圧制動力)が制御される。また、スリーブ44により、入力ピストン26と加圧ピストン24との間に摩擦力が生じ難くされるため、これらの摩擦力に起因する入力ピストン26の前進に伴う加圧ピストン24の前進が抑制され、前方加圧室30,32の液圧を精度よく制御することができる。
【0023】
背面液圧制御装置16の異常時等にはリニア弁装置94,電磁開閉弁80のソレノイドに電流は供給されない。
シリンダ装置10において、電磁開閉弁80は開状態にあるため、反力室68はリザーバ54に連通させられた状態にある。ブレーキペダル12が操作されると、入力ピストン26が前進させられ、小径ロッド62が凹部40の底部に当接し、加圧ピストン24、22が前進させられる。前方加圧室30,32には、ブレーキ操作力に応じた液圧が発生させられる。前方加圧室30,32の液圧はブレーキシリンダ14に供給され、液圧ブレーキ15が作動させられる。なお、ストロークシミュレータ70は非作動状態にあるが、ブレーキペダル12には前方加圧室30,32の液圧に応じた反力が加えられる。
背面液圧制御装置16において、レギュレータ90のパイロットポート118に前方加圧室32の液圧が供給される。それにより、可動部材102が可動部材104に接近する向き(P方向)に移動させられ、可動部材106がP方向に移動させられる。低圧遮断弁148が閉状態とされ、高圧供給弁138が開状態とされる。アキュムレータ164に液圧が蓄えられている間、出力ポート110の液圧が高くされ、背面室50に供給される。加圧ピストン24に助勢力が加えられるのであり、前方加圧室30,32の液圧が高くなる。
【実施例2】
【0024】
実施例1においては、加圧ピストンに凹部が設けられたが、入力ピストンに凹部を設けることもできる。その一例を
図3に示す。他の部分については、実施例1における場合と同様であるため、説明および図示を省略する。
図3のシリンダ装置において、入力ピストン300の前部に前方に開口を有する凹部302が設けられる。
また、凹部302に重ねてスリーブ304が配設される。スリーブ304は、円筒部305とフランジ部306とを有し、円筒部305の一部が入力ピストン300の凹部302の内周側に位置し、フランジ部306が、入力ピストン300の凹部302を形成する筒部302aの前端面308の前方に位置する。筒部302aの前端面308とフランジ部306との間が反力室310とされ、ストロークシミュレータ70等に接続される。
なお、前端面308が操作反力受面とされ、筒部302aがスリーブ304の円筒部305の外側にシール部309を介して液密かつ気密に摺動可能に嵌合される。
また、スリーブ304は、軸線Lの方向の移動が阻止されたものであり、固定のものである。
【0025】
加圧ピストン320の後部には軸方向ロッド部としての小径ロッド322が設けられ、入力ピストン300の凹部302の内側に至るまで軸線Lの方向に伸びている。また、小径ロッド322は、スリーブ304の筒状部305の内側に、シール部323を介して、気密かつ液密に、摺動可能に嵌合される。小径ロッド322と凹部302の底部302bとの間が容積室324とされ、大気通路326を介して大気に連通させられる。
加圧ピストン320の中間部には小径ロッド322より大径の大径部330が設けられ、大径部330においてハウジング20にシール部331を介して、液密かつ摺動可能に嵌合される。大径部330とスリーブ308のフランジ部306との間が背面室332とされ、背面液圧制御装置16に接続される。
【0026】
本実施例においても、容積室324と反力室310とが、シール部309を介して気密かつ液密に遮断され、容積室324が大気に連通させられ、反力室310がストロークシミュレータ70に接続される。その結果、入力ピストン300に加えられる前進方向の力が加圧ピストン320に伝達されないようにすることができ、操作フィーリングを向上させることができる。
また、筒部302aと小径ロッド322とがスリーブ304を介して摺動可能に嵌合されるため、これらの間の摩擦力に起因する入力ピストン300の前進に伴う加圧ピストン320の前進を良好に抑制することができ、前方加圧室の液圧の制御精度を向上させることができる。
【0027】
以上、複数の実施例について説明したが、液圧ブレーキシステムは、上記構造のものに限定されない。
例えば、背面液圧制御装置16において、レギュレータ90を設けることは不可欠ではない。背面室50の液圧は、ポンプモータ162の制御により制御されるようにしたり、リニア弁装置94の制御により制御されるようにしたりすること等もできる。また、レギュレータ90の構造も問わない。
また、反力室を大気に連通させるとともに、操作反力受面とハウジングとの間にスプリングを設けることもできる。ブレーキペダル12に反力を付与する機構は、ドライ型のものであってもよいのである。
【符号の説明】
【0028】
10:シリンダ装置 12:ブレーキペダル 14:ブレーキシリンダ 16:背面液圧制御装置 24,320:加圧ピストン 26,300:入力ピストン 40:凹部 42:フランジ部 44:スリーブ 46:筒部 48:フランジ部 50:背面室 54:リザーバ 60:小径ロッド 62:大径部 64:容積室 66:操作反力受面 68:反力室 70:ストロークシミュレータ 80:電磁開閉弁 302:凹部 304:スリーブ 308:操作反力受面 310:反力室 322:小径ロッド 324:容積室 326:大気通路 330:大径部 332:背面室