(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973234
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ガス濃度算出方法およびガス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20160809BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20160809BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20160809BHJP
G01N 27/16 20060101ALI20160809BHJP
G01N 27/18 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
G01N1/00 C
G01N35/00 A
G01N27/12 A
G01N27/16 Z
G01N27/18
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-119145(P2012-119145)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-246013(P2013-246013A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 広勝
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅之
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−064339(JP,A)
【文献】
特開2004−132841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
G01N 27/12 − 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスについて設定された高濃度域用測定レンジおよび低濃度域用測定レンジのいずれかの測定レンジが、ガスセンサにより取得されるセンサ出力値に基づいて、選択されて、当該検知対象ガスのガス濃度が算出されるガス濃度算出方法であって、
前記ガスセンサについて、前記高濃度域用測定レンジのフルスケール濃度値の大きさとの関係で設定された前記低濃度域用測定レンジにおけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第1のスパン出力値が閾値として設定されていると共に、
前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値と前記第1のスパン出力値とに基づいて設定される低濃度域用検量線データ、および、当該第1のスパン出力値と、前記ガスセンサについて、前記高濃度域用測定レンジにおけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第2のスパン出力値とに基づいて設定される高濃度域用検量線データが設定されており、
被検ガスについて前記ガスセンサにより取得されるセンサ出力値が当該閾値以下である場合には、前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値が演算処理上のゼロ点とされ、前記低濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度が算出され、当該センサ出力値が当該閾値を超える場合には、当該閾値が演算処理上のゼロ点とされ、前記高濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度が算出されることを特徴とするガス濃度算出方法。
【請求項2】
前記高濃度域用測定レンジが%LELオーダーの分解能で設定され、
前記低濃度域用測定レンジがppmオーダーの分解能で設定されることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度算出方法。
【請求項3】
ガスセンサとして可燃性ガスセンサが用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス濃度算出方法。
【請求項4】
ガスセンサと、検知対象ガスのガス濃度を当該ガスセンサにより取得されるセンサ出力値に基づいて算出するガス濃度算出機構とを具え、高濃度域用測定レンジおよび低濃度域用測定レンジの2つの測定レンジが設定されたガス検出装置であって、
前記ガスセンサについて、前記高濃度域用測定レンジのフルスケール濃度値の大きさとの関係で設定された前記低濃度域用測定レンジにおけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第1のスパン出力値が閾値として設定されていると共に、
前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値と前記第1のスパン出力値とに基づいて設定される低濃度域用検量線データ、および、当該第1のスパン出力値と、前記ガスセンサについて、前記高濃度域用測定レンジにおけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第2のスパン出力値とに基づいて設定される高濃度域用検量線データが設定されており、
前記ガス濃度算出機構は、被検ガスについて前記ガスセンサにより取得されるセンサ出力値が当該閾値以下である場合には、前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値を演算処理上のゼロ点とし、前記低濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度を算出し、当該センサ出力値が当該閾値を超える場合には、当該閾値を演算処理上のゼロ点とし、前記高濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度を算出する機能を有することを特徴とするガス検出装置。
【請求項5】
高濃度域用測定レンジが%LELオーダーの分解能で設定されており、
低濃度域用測定レンジがppmオーダーの分解能で設定されていることを特徴とする請求項4に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記ガスセンサが可燃性ガスセンサであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度算出方法およびガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃焼性ガスの検知は、低濃度から高濃度までの広い濃度範囲において実行されることが必要である。この要請に応えるために、例えば、複数の測定レンジが設定されており、ガスセンサにより取得されるセンサ出力値に基づいて測定レンジが選択的に切り換え可能に構成されたガス検出装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
例えば、低濃度域用測定レンジおよび高濃度域用測定レンジの2つの測定レンジが設定されたガス検出装置においては、
図2を参照して説明すると、当該ガスセンサについてゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値と、各々の測定レンジにおけるフルスケール値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるスパン出力値(SpL,SpH)とに基づいて、各々の測定レンジについて検量線(
図2における破線で示す直線(a)が高濃度域用検量線データ、
図2における二点鎖線で示す直線(b)が低濃度域用検量線データである。)が設定されている。
ガス濃度の算出にあっては、例えば低濃度域用測定レンジ(Low)のフルスケール濃度値(SpL)が閾値として設定され、被検ガスについてガスセンサによって取得されるセンサ出力値(R)が当該閾値以下である場合には、低濃度域用検量線データ(b)が利用されてガス濃度が算出され、一方、当該センサ出力値(R)が当該閾値を超える場合には、高濃度域用検量線データ(a)が利用されてガス濃度が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−064339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、このような構成のガス検出装置においては、次のような問題が生ずることが明らかになった。すなわち、測定レンジを切り換える閾値に対応する高濃度域用測定レンジ(High)におけるセンサ出力値は、当該高濃度域用測定レンジにおける低濃度域用測定レンジ(Low)のフルスケール濃度値に相当する値(SpL’)とされており、高濃度域用測定レンジおよび低濃度域用測定レンジの測定レンジ間において不一致となることがある。この理由としては、例えばガスセンサの個体差、センサ出力信号処理回路における誤差、ガスセンサ自体の出力特性、設定されるスパン点のバラツキなどが考えられる。従って、ガスセンサよりのセンサ出力値(R)が、低濃度域測定用レンジにおける閾値に対応するセンサ出力値(SpL)と、高濃度域測定用レンジにおける閾値に対応するセンサ出力値(SpL’>SpL)との間の範囲内にあるときには、測定レンジの切り換えが、閾値として設定された低濃度域用測定レンジのフルスケール値(SpL)を基準に行われる構成上、例えば低濃度域用の検量線による演算処理および高濃度域用の検量線による演算処理のいずれの演算処理を行うかを判断する処理が交互に繰り返す(交互演算)といった現象が生じる。実際上は、低濃度域用検量線データを用いて得られた結果および高濃度域用検量線データを用いて得られた結果のうち、いずれか濃度の高い方の結果が出力されており、従って、得られるガス検知結果に高い信頼性が得られない、という問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、例えば燃焼性ガスについて、低濃度から高濃度の広い濃度範囲にわたって高い精度でガス濃度を算出することのできるガス濃度算出方法および信頼性の高いガス検出を行うことのできるガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス濃度算出方法は、検知対象ガスについて設定された高濃度域用測定レンジおよび低濃度域用測定レンジのいずれかの測定レンジが、ガスセンサにより取得されるセンサ出力値に基づいて、選択されて、当該検知対象ガスのガス濃度が算出されるガス濃度算出方法であって、
前記ガスセンサについて、
前記高濃度域用測定レンジのフルスケール濃度値の大きさとの関係で設定された前記低濃度域用測定レンジ
におけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第1のスパン出力値が閾値として設定され
ていると共に、
前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値と前記第1のスパン出力値とに基づいて設定される低濃度域用検量線データ、および、当該第1のスパン出力値と、前記ガスセンサについて、前記高濃度域用測定レンジにおけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第2のスパン出力値とに基づいて設定される高濃度域用検量線データが設定されており、
被検ガスについて前記ガスセンサにより取得されるセンサ出力値が当該閾値以下である場合には、前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値が演算処理上のゼロ点とされ、前記
低濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度が算出され、当該センサ出力値が当該閾値を超える場合には、当該閾値が演算処理上のゼロ点とされ、前記
高濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度が算出されることを特徴とする。
【0009】
本発明のガス濃度算出方法においては、前記高濃度域用測定レンジが%LELオーダーの分解能で設定され、
前記低濃度域用測定レンジがppmオーダーの分解能で設定される。
【0010】
本発明のガス検出装置は、ガスセンサと、検知対象ガスのガス濃度を当該ガスセンサにより取得されるセンサ出力値に基づいて算出するガス濃度算出機構とを具え、高濃度域用測定レンジおよび低濃度域用測定レンジの2つの測定レンジが設定されたガス検出装置であって、
前記ガスセンサについて、
前記高濃度域用測定レンジのフルスケール濃度値の大きさとの関係で設定された前記低濃度域用測定レンジ
におけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第1のスパン出力値が閾値として設定され
ていると共に、
前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値と前記第1のスパン出力値とに基づいて設定される低濃度域用検量線データ、および、当該第1のスパン出力値と、前記ガスセンサについて、前記高濃度域用測定レンジにおけるフルスケール濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第2のスパン出力値とに基づいて設定される高濃度域用検量線データが設定されており、
前記ガス濃度算出機構は、被検ガスについて前記ガスセンサにより取得されるセンサ出力値が当該閾値以下である場合には、前記ガスセンサについて、ゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値であるゼロ点出力値を演算処理上のゼロ点とし、
前記低濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度を算出し、当該センサ出力値が当該閾値を超える場合には、当該閾値を演算処理上のゼロ点とし、
前記高濃度域用検量線データに基づいて当該被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度を算出する機能を有することを特徴とする。
【0013】
さらにまた、本発明のガス検出装置においては、高濃度域用測定レンジが%LELオーダーの分解能で設定されており、
低濃度域用測定レンジがppmオーダーの分解能で設定された構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガス濃度算出方法によれば、ガスセンサについて、低濃度域用測定レンジ内において設定された濃度値をスパン点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第1のスパン出力値が閾値として設定され、被検ガスについてガスセンサにより取得されるセンサ出力値が当該閾値以下である場合には、当該ガスセンサについてのゼロ点出力値を演算処理上のゼロ点として低濃度域用測定レンジが利用されて検知対象ガスのガス濃度が算出される。一方、当該センサ出力値が当該閾値を超える場合には、当該閾値を演算処理上のゼロ点として、前記高濃度域用測定レンジが利用されて検知対象ガスのガス濃度が算出される。これにより、ガスセンサの個体差等が補償されて、実際のセンサの特性に即した、ガス濃度域に応じたガス濃度算出を行うことができるので、低濃度域から高濃度域の広い範囲にわたって高い精度でガス濃度を算出することができる。
【0015】
本発明のガス検出装置によれば、上記の特定のガス濃度算出方法により検知対象ガスのガス濃度が算出されるので、信頼性の高いガス検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のガス検出装置の一例における構成の概略を示すブロック図である。
【
図2】本発明のガス濃度算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のガス検出装置の一例における構成の概略を示すブロック図である。
このガス検出装置は、ガスセンサ11を具えたガス検知機構10と、このガス検知機構10におけるガスセンサ11からのガス検知信号に基づいて検知対象ガスのガス濃度を算出するガス濃度算出機構20と、ガス濃度の算出に係るデータが記録されたメモリ(図示せず)とを具えている。このガス検出装置においては、高濃度の検知対象ガスを検出するための高濃度域用測定レンジおよび低濃度の検知対象ガスを検出するための低濃度域用測定レンジの2つの測定レンジが設定されている。ここに、高濃度域用測定レンジは、例えば%LELオーダーの分解能で設定され、低濃度域用測定レンジは、例えばppmオーダーの分解能で設定される。
【0018】
ガス検知機構10におけるガスセンサ11としては、例えば接触燃焼式ガスセンサ、熱伝導式ガスセンサなどの可燃性ガスセンサを用いることができる。
【0019】
ガス濃度算出機構20は、ガスセンサ11よりのガス検知信号を増幅する増幅手段21と、この増幅手段21より出力された信号をデジタル信号(A/D値)に変換するA/D変換手段22と、このA/D変換手段22の出力信号に基づいてガス濃度を算出する演算手段23とを具えている。
【0020】
メモリには、当該ガス検出装置に搭載されたガスセンサ11について適宜の校正処理を行うことにより取得されたセンサ出力値に係るデータ(基準センサ出力データ)、ガスセンサ11のセンサ出力値と検知対象ガスのガス濃度値との関係を示す検量線データ(出力特性データ)などが記録されている。
【0021】
基準センサ出力データには、当該ガスセンサ11についてゼロ点出力校正を行うことにより取得されたセンサ出力値であるゼロ点出力値、低濃度域測定レンジ内において設定される濃度値例えばフルスケール濃度値をスパン校正点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第1のスパン出力値SpL、高濃度域用測定レンジの範囲内において設定された濃度値例えばフルスケール濃度値をスパン校正点としてスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値である第2のスパン出力値SpHが含まれる。ここに、低濃度域測定レンジのフルスケール濃度値は、高濃度域測定レンジのフルスケール濃度値の大きさとの関係において、ガス検出装置の使用目的に応じて適宜に設定される。具体的には例えば、検知対象ガスがメタンガスである場合には、高濃度域測定レンジのフルスケール濃度値の例えば5〜20%の範囲内において選ばれた大きさに設定される。 検知対象ガスがメタンガスである場合の具体的な一例を示すと、低濃度域用測定レンジは、例えば0〜5000ppm(分解能25ppm)、高濃度域用測定レンジは、例えば10〜100%LEL(分解能1%LEL)に設定される。なお、高濃度域用測定レンジの下限値10%LELは、低濃度域用測定レンジのフルスケール濃度値5000ppmに相当する。
【0022】
また、検量線データは、低濃度域用測定レンジの範囲についてゼロ点出力値と第1のスパン出力値SpLとに基づいて設定される低濃度域用検量線データ(
図2における線分(c))と、高濃度域用測定レンジの範囲について第1のスパン出力値SpLと、第2のスパン出力値SpHとに基づいて設定される高濃度域用検量線データ(
図2における線分(d))とを有する。
【0023】
以下、上記のガス検出装置におけるガス濃度算出方法について
図2を参照して説明する。
先ず、ガスセンサ11のゼロ点出力校正を行うことにより取得されるセンサ出力値をゼロ点出力値としてメモリに記録する。
また、規定濃度(低濃度域用測定レンジ(Low)におけるフルスケール濃度値例えば2000ppm)の可燃性ガス(検知対象ガス)を含むスパン校正用ガスによって、ガスセンサ11のスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値を第1のスパン出力値SpLとしてメモリに記録する。
さらに、規定濃度(高濃度域用測定レンジ(High)におけるフルスケール濃度値例えば100%LEL)の可燃性ガス(検知対象ガス)を含むスパン校正用ガスによって、ガスセンサのスパン校正を行うことにより取得されるセンサ出力値を第2のスパン出力値SpHとしてメモリに記録する。
そして、当該ガスセンサ11についての低濃度域用測定レンジの範囲における低濃度域用検量線データ(
図2における線分(c))を、ゼロ点出力値と第1のスパン出力値SpLとに基づいて取得すると共に、高濃度域用測定レンジの範囲における高濃度域用検量線データ(
図2における線分(d))を第1のスパン出力値SpLと第2のスパン出力値SpHに基づいて取得し、これにより得られた、当該ガスセンサ11についての検量線データをメモリに記録する。
【0024】
検知対象ガスの検出にあっては、ガスセンサ11よりのガス検知信号がガス濃度算出機構20に入力され、ガス濃度算出機構20において、当該ガス検知信号に対して適宜の信号処理がなされた後、演算手段23によって被検ガス中の検知対象ガスのガス濃度が算出される。
具体的には例えば、
図2に示すように、ガスセンサ11により取得されるセンサ出力値Rが、閾値として設定された第1のスパン出力値SpL以下である場合には、ゼロ点出力値を演算処理上のゼロ点として低濃度域用検量線データ(c)に基づいてガス濃度が算出される。一方、センサ出力値Rが閾値として設定された第1のスパン出力値SpLより高い場合には、第1のスパン出力値SpLを演算処理上のゼロ点(このときのガス濃度X)として高濃度域用検量線データ(d)に基づいてガス濃度が算出される。すなわち、センサ出力値Rの第1のスパン出力値SpLに対する出力変化量ΔRに応じたガス濃度変化量ΔXが算出されてガス濃度(X+ΔX)が算出される。
【0025】
而して、上記のガス濃度算出方法によれば、ガスセンサ11により取得されるセンサ出力値Rが閾値として設定された第1のスパン出力値(低濃度域用測定レンジにおけるフルスケール値)SpL以下である場合には、ゼロ点出力値を演算処理上のゼロ点として低濃度域用検量線データ(c)に基づいてガス濃度が算出され、一方、センサ出力値Rが第1のスパン出力値SpLを超える場合には、当該第1のスパン出力値SpLを演算処理上のゼロ点として高濃度域用検量線データ(d)に基づいてガス濃度が算出される。すなわち、高濃度域用測定レンジにおいては、ゼロ点出力値からの変化量ではなく、第1のスパン出力値SpLからの変化量に基づいてガス濃度が算出されることにより、閾値に係るガス濃度と同等のガス濃度の検知対象ガスを含む被検ガスが導入された場合であっても、上述した交互演算が生ずることがなく、検知対象ガスのガス濃度を高い精度で算出することができる。
従って、このような方法によってガス濃度が算出される上記のガス検出装置によれば、ガス検出結果に高い信頼性を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 ガス検出機構
11 ガスセンサ
20 ガス濃度算出機構
21 増幅手段
22 A/D変換手段
23 演算手段