特許第5973249号(P5973249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973249
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】有機溶剤含有ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   F23G7/06 101C
   F23G7/06ZAB
   F23G7/06 101D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-137599(P2012-137599)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-1894(P2014-1894A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 瞬
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 尚貴
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−201373(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0070549(US,A1)
【文献】 特開2011−072919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/14 − 5/18
F23G 7/06 − 7/08
B01D 53/73 − 53/96
B01J 20/00 − 20/34
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収して酸化分解する有機溶剤含有ガス処理システムであって、
有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子を含み、原ガスとキャリアガスとを時間的に交互に前記吸脱着素子に接触させることによって有機溶剤を原ガスからキャリアガスに移動させる吸脱着処理装置と、
有機溶剤を含有するキャリアガスを加熱することで有機溶剤を酸化分解させる燃焼装置と、
前記吸脱着処理装置にキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、
前記吸脱着処理装置から排出された有機溶剤を含有するキャリアガスを前記燃焼装置に供給する搬送路と、
前記搬送路上に設けられた流路切替弁とを備え、
前記燃焼装置は、蓄熱材が収容された第1蓄熱室および第2蓄熱室と、酸化分解触媒および当該酸化分解触媒を加熱する加熱手段が設けられた反応室とを含む一方で、有機溶剤を含有するキャリアガスに含まれる有機シリコン化合物を除去するための前処理材を有しておらず
前記流路切替弁は、前記燃焼装置に供給される有機溶剤を含有するキャリアガスが、前記燃焼装置内において前記第1蓄熱室、前記反応室、前記第2蓄熱室の順で通流する第1通流状態と、前記燃焼装置内において前記第2蓄熱室、前記反応室、前記第1蓄熱室の順で通流する第2通流状態とに時間的に交互に切り替えるものであり、
前記吸脱着処理装置に供給されるキャリアガスが前記燃焼装置内を通流するガスと熱交換可能となるように、前記キャリアガス供給路が前記燃焼装置に熱接触する熱交換部を有し
前記熱交換部が、前記第1蓄熱室と前記反応室との間の空間および前記反応室と前記第2蓄熱室との間の空間において前記燃焼装置に熱接触するように設けられている、有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項2】
前記熱交換部を挟んで位置する前記キャリアガス供給路の上流側部分と下流側部分とを接続するバイパス路をさらに備え、
前記バイパス路に流量制御弁が設けられている、請求項1に記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項3】
前記キャリアガスが、空気である、請求項1または2に記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項4】
前記流路切替弁に接続され、前記燃焼装置内に前記流路切替弁を介してパージガスを供給するパージガス供給路をさらに備え、
前記流路切替弁が、前記第1通流状態から前記第2通流状態への切り替えの合間に、有機溶剤を含有するキャリアガスの前記燃焼装置への供給を停止するとともに、前記パージガス供給路を前記燃焼装置に接続することで前記燃焼装置内においてパージガスを前記第1蓄熱室、前記反応室、前記第2蓄熱室の順で通流させ、前記第2通流状態から前記第1通流状態への切り替えの合間に、有機溶剤を含有するキャリアガスの前記燃焼装置への供給を停止するとともに、前記パージガス供給路を前記燃焼装置に接続することで前記燃焼装置内においてパージガスを前記第2蓄熱室、前記反応室、前記第1蓄熱室の順で通流させる、請求項1からのいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項5】
前記パージガスが、空気である、請求項に記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項6】
前記酸化分解触媒が、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムおよびそれらの酸化物からなる群から選択された1種以上の材料を含んでいる、請求項1からのいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤含有ガス処理システムに関し、より特定的には、有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収して酸化分解する有機溶剤含有ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸脱着素子としての吸着材を用いて有機溶剤の吸着処理および脱着処理を行なって有機溶剤を原ガスからキャリアガスに移動させるとともに、キャリアガスに移動させた有機溶剤を燃焼させることにより、原ガスの清浄化と有機溶剤の分解処理とを同時に実現可能にした有機溶剤含有ガス処理システムが知られている。
【0003】
この種の有機溶剤含有ガス処理システムは、一般に、原ガスおよび高温の状態にあるキャリアガスを時間的に交互に吸着材に接触させるための吸脱着処理装置と、当該吸脱着処理装置から排出される有機溶剤を含有するキャリアガスを加熱することによって有機溶剤を燃焼させて酸化分解させるための燃焼装置とを備えている。
【0004】
ここで、燃焼装置としては、バーナー等を用いて有機溶剤を直接燃焼させる直接燃焼方式のものや、酸化分解触媒を利用しつつ有機溶剤を燃焼させる触媒燃焼方式のもの、燃焼時に発生する熱を蓄熱材を用いて蓄熱してこれを予熱として利用しつつ有機溶剤を燃焼させる蓄熱燃焼方式のもの等がある。
【0005】
たとえば、特開2009−63210号公報(特許文献1)や特開2010−201372号公報(特許文献2)、特開2010−201373号公報(特許文献3)には、上述した触媒燃焼方式と蓄熱燃焼方式とを組み合わせた燃焼方式であるいわゆる蓄熱式触媒燃焼方式が採用された蓄熱式触媒燃焼装置を具備してなる有機溶剤含有ガス処理システムが開示されている。
【0006】
当該蓄熱式触媒燃焼装置を具備した有機溶剤含有ガス処理システムとすれば、酸化分解触媒の作用によって有機溶剤の酸化分解が促進されるとともに、蓄熱材の作用によって高い熱回収率が実現できるため、低いエネルギー消費量でかつ高効率に有機溶剤の分解処理が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−63210号公報
【特許文献2】特開2010−201372号公報
【特許文献3】特開2010−201373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、上記蓄熱式触媒燃焼装置を具備した有機溶剤含有ガス処理システムにおいては、燃焼装置内を通流するガスの温度が燃焼装置内の各部においてそれぞれ所望の温度となるように十分に制御されていることが重要である。当該ガスの温度が十分に制御できていない場合には、たとえば有機溶剤や酸化分解触媒の加熱が不十分となって有機溶剤の分解処理が不十分になってしまうといった問題や、燃焼装置内の温度が上昇し過ぎて熱暴走(異常燃焼)を起こしてしまうといった問題が生じ得る。
【0009】
一方、上述したように、上記蓄熱式触媒燃焼装置を具備した有機溶剤含有ガス処理システムにおいては、低消費電力でかつ高効率に有機溶剤の分解処理が可能になるものの、当該有機溶剤含有ガス処理システムにおいて、原ガスに対する高い清浄化能力を維持しつつ、さらなるエネルギー消費量の低減が要求されていることは言うまでもない。
【0010】
また、有機溶剤含有ガスの中に有機シリコン化合物が含まれている場合は、酸化分解触媒に有機シリコンが吸着してしまい、排ガス分解性能が低下するという問題がある。これを解決するために、酸化分解触媒の上流側に前処理材を設置し、当該前処理材によって有機シリコン化合物を吸着して除去する手法が多用されているが、酸化分解触媒の劣化を抑制するためには、当該前処理材を適切な温度に加熱する必要があり、エネルギー消費量の増加につながってしまう。
【0011】
したがって、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、原ガスに対する高い清浄化能力を維持しつつ、安定して高効率に有機溶剤の分解処理ができるとともに、エネルギー消費量の低減が図られた有機溶剤含有ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムは、有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収して酸化分解するものであって、吸脱着処理装置と、燃焼装置と、上記吸脱着処理装置にキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、上記吸脱着処理装置から排出された有機溶剤を含有するキャリアガスを上記燃焼装置に供給する搬送路と、上記搬送路上に設けられた流路切替弁とを備えている。上記吸脱着処理装置は、有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子を含んでおり、原ガスとキャリアガスとを時間的に交互に上記吸脱着素子に接触させることによって有機溶剤を原ガスからキャリアガスに移動させるものである。上記燃焼装置は、有機溶剤を含有するキャリアガスを加熱することで有機溶剤を酸化分解させるものであり、蓄熱材が収容された第1蓄熱室および第2蓄熱室と、酸化分解触媒および当該酸化分解触媒を加熱する加熱手段が設けられた反応室とを含んでいる一方で、有機溶剤を含有するキャリアガスに含まれる有機シリコン化合物を除去するための前処理材を有していない。上記流路切替弁は、上記燃焼装置に供給される有機溶剤を含有するキャリアガスが、上記燃焼装置内において上記第1蓄熱室、上記反応室、上記第2蓄熱室の順で通流する第1通流状態と、上記燃焼装置内において上記第2蓄熱室、上記反応室、上記第1蓄熱室の順で通流する第2通流状態とに時間的に交互に切り替えるものである。上記キャリアガス供給路は、上記吸脱着処理装置に供給されるキャリアガスが上記燃焼装置内を通流するガスと熱交換可能となるように、上記燃焼装置に熱接触する熱交換部を有している。上記熱交換部は、上記第1蓄熱室と上記反応室との間の空間および上記反応室と上記第2蓄熱室との間の空間において上記燃焼装置に熱接触するように設けられている。
【0015】
上記本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムは、さらに、上記熱交換部を挟んで位置する上記キャリアガス供給路の上流側部分と下流側部分とを接続するバイパス路を備えていることが好ましい。その場合には、上記バイパス路に流量制御弁が設けられていることが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記キャリアガスが、空気であることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムは、さらに、上記流路切替弁に接続され、上記燃焼装置内に上記流路切替弁を介してパージガスを供給するパージガス供給路を備えていることが好ましい。その場合には、上記流路切替弁が、上記第1通流状態から上記第2通流状態への切り替えの合間に、有機溶剤を含有するキャリアガスの上記燃焼装置への供給を停止するとともに、上記パージガス供給路を上記燃焼装置に接続することで上記燃焼装置内においてパージガスを上記第1蓄熱室、上記反応室、上記第2蓄熱室の順で通流させることが好ましく、また、上記第2通流状態から上記第1通流状態への切り替えの合間に、有機溶剤を含有するキャリアガスの上記燃焼装置への供給を停止するとともに、上記パージガス供給路を上記燃焼装置に接続することで上記燃焼装置内においてパージガスを上記第2蓄熱室、上記反応室、上記第1蓄熱室の順で通流させることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記パージガスが、空気であることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記酸化分解触媒が、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムおよびそれらの酸化物からなる群から選択された1種以上の材料を含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、原ガスに対する高い清浄化能力を維持しつつ、安定して高効率に有機溶剤の分解処理ができるとともに、エネルギー消費量の低減が図られた有機溶剤含有ガス処理システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。
図2図1に示す有機溶剤含有ガス処理システムの第2処理状態を示す部分拡大図である。
図3図1に示す有機溶剤含有ガス処理システムの第3処理状態を示す部分拡大図である。
図4図1に示す有機溶剤含有ガス処理システムの第4処理状態を示す部分拡大図である。
図5】本発明の実施の形態2における有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。
図6】比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。
図7】実施例および比較例における性能評価の結果を示す表である。
図8参考形態における有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図であり、図2ないし図4は、図1に示す有機溶剤含有ガス処理システムの第2ないし第4処理状態を示す部分拡大図である。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aの構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aは、吸脱着処理装置10と、燃焼装置20と、流路切替弁30と、ブロワ41〜44と、配管ラインL1〜L8とを主として備えている。
【0026】
吸脱着処理装置10には、配管ラインL1,L2がそれぞれ接続されている。配管ラインL1は、吸脱着処理装置10に有機溶剤含有ガスである原ガスを供給するための配管ラインであり、当該配管ラインL1には、原ガスを圧送するためのブロワ41が付設されている。配管ラインL2は、吸脱着処理装置10にて原ガスから有機溶剤が除去されることで清浄化された清浄ガスを吸脱着処理装置10から排出するための配管ラインである。
【0027】
また、吸脱着処理装置10には、配管ラインL3,L4が接続されている。配管ラインL3は、吸脱着処理装置10にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給路に相当する配管ラインであり、当該配管ラインL3には、キャリアガスを圧送するためのブロワ42が付設されている。配管ラインL4は、吸脱着処理装置10にて有機溶剤が含有させられたキャリアガス(以下、これを一次処理ガスとも称する)を吸脱着処理装置10から排出するための配管ラインである。
【0028】
吸脱着処理装置10は、有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子11を含んだいわゆるロータ式の吸脱着処理装置にて構成されている。吸脱着処理装置10は、吸脱着素子11の任意の部分に対して原ガスとキャリアガスとを時間的に交互に接触させることによって有機溶剤を原ガスからキャリアガスに移動させるものである。
【0029】
吸脱着素子11は、略円柱状の外形を有する吸着材からなり、その軸中心に中心軸を有している。当該中心軸には、モータ12が接続されている。これにより、吸脱着素子11は、当該中心軸を回転中心としてモータ12によって回転駆動される。
【0030】
吸脱着処理装置10は、吸着部11aと脱着部11bとを含んでいる。吸着部11aには、上述した配管ラインL1,L2がそれぞれ接続されており、脱着部11bは、上述した配管ラインL3,L4がそれぞれ接続されている。
【0031】
また、吸脱着処理装置10は、配管ラインL3と脱着部11bとの間にヒータ13を有している。当該ヒータ13は、吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスが所定の脱着温度(有機溶剤の脱着に適した温度)にまで昇温されていない場合に、キャリアガスを加熱することでこれを所定の脱着温度にまで昇温させて脱着部11bに供給するための補助的な加熱手段である。
【0032】
吸脱着素子11の回転に伴い、吸脱着素子11の任意の部分は、吸着部11aと脱着部11bとの間で時間的に交互に移動する。吸着部11aにおいては、吸脱着素子11に原ガスを接触させることで原ガスに含有されている有機溶剤の吸着処理が行なわれる。脱着部11bにおいては、吸脱着素子11に所定の脱着温度にまで昇温されたキャリアガスを接触させることで有機溶剤の脱着処理が行なわれる。
【0033】
すなわち、吸脱着処理装置10においては、配管ラインL1を介して吸着部11aに原ガスが供給されることで有機溶剤が吸脱着素子11によって吸着され、これにより原ガスから有機溶剤が分離されることで原ガスが清浄化されて清浄ガスとして配管ラインL2を介して外部に排出されるととともに、配管ラインL3を介して脱着部11bに所定の脱着温度にまで昇温されたキャリアガスが供給されることで有機溶剤が吸脱着素子11から脱着され、これにより有機溶剤を含有するキャリアガスが配管ラインL4に排出される。
【0034】
なお、吸脱着素子11は、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭、ゼオライトのいずれかを含む吸着材にて構成される。好適には、吸脱着素子11は、粒状、粉体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトによって構成される。活性炭やゼオライトは、低濃度の有機化合物を吸着および脱着する機能に優れている。
【0035】
燃焼装置20には、配管ラインL7,L8がそれぞれ接続されている。配管ラインL7,L8は、燃焼装置20に上述した一次処理ガスを供給するための配管ラインであるとともに、燃焼装置20にて一次処理ガス中に含まれる有機溶剤が酸化分解された後の処理ガスを燃焼装置20から排出するための配管ラインである。
【0036】
燃焼装置20は、蓄熱材23a,23bおよび酸化分解触媒24a,24bを含んだいわゆる蓄熱式触媒燃焼方式の燃焼装置にて構成されている。燃焼装置20は、一次処理ガスを加熱することで一次処理ガスに含まれる有機溶剤を酸化分解させるものである。
【0037】
燃焼装置20は、処理槽21を含んでおり、処理槽21の内部には、第1蓄熱室22Aと、第2蓄熱室22Bと、反応室22Cとが設けられている。第1蓄熱室22Aおよび第2蓄熱室22Bには、蓄熱材23a,23bがそれぞれ収容されており、反応室22Cには、酸化分解触媒24a,24bと、当該酸化分解触媒24a,24bを加熱する加熱手段としてのヒータ25a,25bとが設けられている。
【0038】
第1蓄熱室22Aには、上述した配管ラインL7が接続されており、第2蓄熱室22Bには、上述した配管ラインL8が接続されている。また、反応室22Cは、第1蓄熱室22Aと第2蓄熱室22Bとによって挟みこまれるように配置されており、第1蓄熱室22Aおよび第2蓄熱室22Bのそれぞれに連通している。
【0039】
なお、処理槽21は、図示するように、同一方向に沿って延在するように並行して配置された第1蓄熱室22Aおよび第2蓄熱室22Bの一端部同士を連結するように反応室22Cが配置された構成とされていることが好ましいが、これとは異なる構成とされていてもよく、たとえば第1蓄熱室22A、第2蓄熱室22Bおよび反応室22Cが直線上に並んで配置された構成とされていてもよい。
【0040】
蓄熱材23a,23bは、通流するガスに接触することで当該ガスとの間で熱交換を行なうものであり、高温のガスに接触することで当該ガスから熱を奪ってこれを一時的に蓄熱し、低温のガスに接触することで当該ガスに熱を与えることでその加熱を行なうものである。蓄熱材23a,23bは、内部にガスが通流可能な流路が形成されたハニカム状または格子状等の形状を有する成形体にて構成されていることが好ましく、その材質としては、たとえばコージライトに代表される如くのセラミックスが好適に利用できる。
【0041】
酸化分解触媒24a,24bは、有機溶剤の酸化分解を促進させるための触媒であり、たとえば内部にガスが通流可能な流路が形成されたハニカム状または格子状等の形状を有する成形体にて構成されていることが好ましい。酸化分解触媒24a,24bとしては、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムおよびそれらの酸化物のうちの少なくともいずれかを含むものが好適に利用できる。
【0042】
ヒータ25a,25bは、酸化分解触媒24a,24bを加熱することができるものであればどのようなものでもその使用が可能であるが、安全性や安定性、省エネルギー化の観点等から、好ましくは電気ヒータが利用される。
【0043】
流路切替弁30には、上述した配管ラインL4,L7,L8に加え、配管ラインL5,L6が接続されている。流路切替弁30は、これら5つの配管ラインL4〜L8の接続状態を所定の4つの接続状態に時間的に切り替えるものであり、いわゆる5ポート4ポジション弁に該当する。この4つの接続状態が、それぞれ後述する第1ないし第4処理状態に対応することになる。
【0044】
配管ラインL4は、燃焼装置20に流路切替弁30を介して一次処理ガスを供給するための配管ラインであり、上述したようにその一端が吸脱着処理装置10の脱着部11bに接続されている。配管ラインL5は、燃焼装置20に流路切替弁30を介してパージガスを供給するためのパージガス供給路に相当する配管ラインであり、当該配管ラインL5には、パージガスを圧送するためのブロワ43が付設されている。配管ラインL6は、燃焼装置20にて一次処理ガス中に含まれる有機溶剤が酸化分解された後の処理ガスを燃焼装置20から排出するための配管ラインであり、当該配管ラインL6には、処理ガスを圧送するためのブロワ44が付設されている。
【0045】
流路切替弁30は、上述した4つの接続状態のうちの特定の2つの接続状態において、配管ラインL4を介して燃焼装置20に供給される一次処理ガスの当該燃焼装置20内における流動方向を切り替える。
【0046】
具体的には、流路切替弁30を介して配管ラインL4と配管ラインL7とが接続されるとともに、流路切替弁30を介して配管ラインL6と配管ラインL8とが接続された状態においては、配管ラインL7が燃焼装置20に対して一次処理ガスを供給するための配管ラインとして機能する(すなわち、当該状態においては、配管ラインL4と配管ラインL7とが吸脱着処理装置10から排出された一次処理ガスを燃焼装置20に供給する搬送路に相当することになる)とともに、配管ラインL8が燃焼装置20から処理ガスを排出するための配管ラインとして機能することになる。
【0047】
これにより、当該状態においては、一次処理ガスが、燃焼装置20内において第1蓄熱室22A、反応室22C、第2蓄熱室22Bの順で通流することになり、当該状態が第1通流状態に相当することになる。
【0048】
一方、流路切替弁30を介して配管ラインL4と配管ラインL8とが接続されるとともに、流路切替弁30を介して配管ラインL6と配管ラインL7とが接続された状態においては、配管ラインL8が燃焼装置20に対して一次処理ガスを供給するための配管ラインとして機能する(すなわち、当該状態においては、配管ラインL4と配管ラインL8とが吸脱着処理装置10から排出された一次処理ガスを燃焼装置20に供給する搬送路に相当することになる)とともに、配管ラインL7が燃焼装置20から処理ガスを排出するための配管ラインとして機能することになる。
【0049】
これにより、当該状態においては、一次処理ガスが、燃焼装置20内において第2蓄熱室22B、反応室22C、第1蓄熱室22Aの順で通流することになり、当該状態が第2通流状態に相当することになる。
【0050】
上記第1通流状態および上記第2通流状態のいずれの場合にも、燃焼装置20に供給された一次処理ガスは、燃焼装置20の入口部分において蓄熱材23a,23bのいずれか一方に接触することで加熱されて予熱され、その後、反応室22Cへと流入することで燃焼させられるとともに加熱された状態にある酸化分解触媒24a,24bに接触することで当該一次処理ガス中に含まれる有機溶剤が酸化分解される。有機溶剤の酸化分解が行なわれた後の処理ガスは、燃焼装置20の出口部分において蓄熱材23a,23bの残る一方に接触することで冷却され、燃焼装置20から排出される。
【0051】
ここで、蓄熱材23a,23bの上記残る一方による処理ガスの冷却に伴い、処理ガスが有する熱の一部が奪われて当該蓄熱材によって蓄熱されることになる。この蓄熱材によって蓄えられた熱は、上述した第1通流状態と第2通流状態との切り替えに伴い、燃焼装置20に供給された一次処理ガスの予熱に再利用されることになる。
【0052】
すなわち、燃焼装置20においては、配管ラインL4および配管ラインL7,L8のいずれか一方を介して供給された一次処理ガス中に含まれる有機溶剤の酸化分解処理が行なわれ、これによって清浄化された後の処理ガスが、配管ラインL7,L8の残る一方および配管ラインL6を介して外部に排出される。
【0053】
なお、上述した4つの接続状態のうちの残る2つの状態は、上述した配管ラインL5が燃焼装置20に接続されることで燃焼装置20内のパージ処理が行なわれる状態であるが、その詳細については後述することとする。
【0054】
図1に示すように、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aにおいては、吸脱着処理装置10にキャリアガスを供給するための配管ラインL3が、燃焼装置20の一部と熱接触するように構成されている。より具体的には、配管ラインL3の一部が燃焼装置20内に導入されており、当該燃焼装置20に導入された部分の配管ラインL3が熱交換部L3bとして機能している。なお、当該熱交換部L3bを挟んで位置する配管ラインL3の上流側部分L3aおよび下流側部分L3cのうち、上流側部分L3aは、ブロワ42に接続されており、下流側部分L3cは、吸脱着処理装置10に接続されている。
【0055】
本実施の形態においては、当該熱交換部L3bが、燃焼装置20の第1蓄熱室22Aと反応室22Cとの間の部分(空間)22A1および反応室22Cと第2蓄熱室22Bとの間の部分(空間)22B1に導入されており、この部分22A1,22B1において燃焼装置20と熱接触している。当該部分22A1,22B1は、燃焼装置20を安定的に運転する観点(すなわち、燃焼装置20において熱暴走が生じないようにする観点)から見た場合に、最も制御性よくその温度が制御される必要がある部分であり、想定以上にこの部分22A1,22B1の温度が上昇しないように制御することが必要な部分である。
【0056】
そのため、上述したように、当該部分22A1,22B1に配管ラインL3の熱交換部L3bが設けられることにより、配管ラインL3を通流するキャリアガスによって当該部分22A1,22B1の温度が上昇し過ぎないように冷却が行なわれることになり、制御性よくその温度が制御されることになり、結果として反応室22Cにおける温度もより安定化することになる。したがって、燃焼装置20の熱暴走が抑制されることになり、安定的に有機溶剤含有ガス処理システム1Aを運転することが可能になるとともに、安定して高効率に有機溶剤の分解処理が行なえることが可能になる。
【0057】
一方、吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスは、上述したように所定の脱着温度にまで上昇されていることが必要である。仮に吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスの温度が所定の脱着温度にまで昇温されていない場合には、有機溶剤の効率的な脱着処理が行なえないことになり、原ガスの清浄化能力が劣ってしまうことになる。
【0058】
そのため、上述したように、当該部分22A1,22B1に配管ラインL3の熱交換部L3bが設けられることにより、配管ラインL3を通流するキャリアガスが燃焼装置20の廃熱によって加熱されることになり、吸脱着処理装置10に設けられたキャリアガスを加熱するためのヒータ13を補助的なものとすることができ、その消費電力を大幅に削減することができる。さらには、運転条件次第によっては、熱交換部L3bにおいて加熱されたキャリアガスの温度を上述した所定の着脱温度に安定させることも可能であり、その場合には、上述したヒータ13の設置自体を廃止することも可能になる。したがって、原ガスに対する高い清浄化能力を維持しつつ、エネルギー消費量の低減を図ることが可能になる。
【0059】
なお、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aにおいては、各種の有機化合物を含有するガスを原ガスとして処理することが可能であるが、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の揮発性有機化合物を含むいわゆるVOCガスの処理に特に適したものである。
【0060】
また、上述したキャリアガスおよびパージガスとしては、空気や不活性ガス、水蒸気等、種々のものが利用可能であるが、特に空気を利用することとすれば、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0061】
次に、上述した図1ないし図4を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aの具体的な動作について、上述した4つの接続状態のそれぞれに従ってより詳細に説明する。なお、以下に示す第1ないし第4処理状態は、第1処理状態、第2処理状態、第3処理状態、第4処理状態の順で実施され、第4処理状態が完了した後においては再び第1処理状態に復帰することになり、その処理が繰り返し実施される。
【0062】
図1に示すように、第1処理状態においては、流路切替弁30を介して配管ラインL4と配管ラインL7とが接続され、配管ラインL6と配管ラインL8とが接続され、配管ラインL5が他のいずれの配管とも非接続とされる。当該第1処理状態においては、吸脱着処理装置10における吸着処理および脱着処理が行なわれるとともに、吸脱着処理装置10から排出された一次処理ガスが燃焼装置20に供給されることにより、当該一次処理ガス中に含まれる有機溶剤の酸化分解処理が行なわれる。
【0063】
すなわち、第1処理状態においては、燃焼装置20内におけるガスの通流状態が上述した第1通流状態とされる。これにより、燃焼装置20に供給された一次処理ガスは、第1蓄熱室22Aにおいて蓄熱材23aに接触することで加熱されて予熱され、熱交換部L3bが設置された上記部分22A1において温度調節され、その後、反応室22Cへと流入することで燃焼させられるとともに加熱された状態にある酸化分解触媒24a,24bに接触することで当該一次処理ガス中に含まれる有機溶剤が酸化分解される。有機溶剤の酸化分解が行なわれた後の処理ガスは、熱交換部L3bが設置された上記部分22B1を通過において温度調節され、第2蓄熱室22Bにおいて蓄熱材23bに接触することで冷却され、その後、燃焼装置20から排出される。その際、蓄熱材23bによる処理ガスの冷却に伴い、処理ガスが有する熱の一部が奪われて当該蓄熱材23bによって蓄熱される。
【0064】
図2に示すように、第2処理状態においては、流路切替弁30を介して配管ラインL5と配管ラインL7とが接続され、配管ラインL6と配管ラインL8とが接続され、配管ラインL4が他のいずれの配管とも非接続とされる。当該第2処理状態においては、パージガスが燃焼装置20に供給されることにより、燃焼装置20内に位置する残留ガスがパージガスに置換される。
【0065】
その際のパージガスおよび当該パージガスによって置換される残留ガスの流れは、いずれも上述した第1通流状態に準じたものとなり、反応室22Cに未だ到達していない残留ガス(すなわち、流路切替弁30による流路の切り替えの際に、現に配管ラインL7、第1蓄熱室22Aおよび上記部分22A1中に位置している一次処理ガス)もすべて反応室22Cを経由することになり、当該残留ガス中に含有された有機溶剤の酸化分解処理が行なわれた後に燃焼装置20から排出されることになる。
【0066】
なお、当該第2処理状態においては、キャリアガスを導入するためのブロワ42の駆動を停止することで脱着処理を一時的に中断するか、またはこれに加えてモータ12の駆動を停止することで吸脱着処理装置10の運転自体を一時的に停止するか、のいずれかとすることが好ましい。
【0067】
このようにすることにより、燃焼装置20への一次処理ガスの供給が停止されることになり、配管ラインL4に一次処理ガスが滞留してしまうことが防止可能となる。したがって、その後に実施される酸化分解処理の際の燃焼装置20における熱暴走を未然に防止することが可能になる。
【0068】
図3に示すように、第3処理状態においては、流路切替弁30を介して配管ラインL4と配管ラインL8とが接続され、配管ラインL6と配管ラインL7とが接続され、配管ラインL5が他のいずれの配管とも非接続とされる。当該第3処理状態においては、吸脱着処理装置10における吸着処理および脱着処理が行なわれるとともに、吸脱着処理装置10から排出された一次処理ガスが燃焼装置20に供給されることにより、当該一次処理ガス中に含まれる有機溶剤の酸化分解処理が行なわれる。
【0069】
すなわち、第3処理状態においては、燃焼装置20内におけるガスの通流状態が上述した第2通流状態とされる。これにより、燃焼装置20に供給された一次処理ガスは、第2蓄熱室22Bにおいて蓄熱材23bに接触することで加熱されて予熱され、熱交換部L3bが設置された上記部分22B1において温度調節され、その後、反応室22Cへと流入することで燃焼させられるとともに加熱された状態にある酸化分解触媒24b,24aに接触することで当該一次処理ガス中に含まれる有機溶剤が酸化分解される。有機溶剤の酸化分解が行なわれた後の処理ガスは、熱交換部L3bが設置された上記部分22A1を通過において温度調節され、第1蓄熱室22Aにおいて蓄熱材23aに接触することで冷却され、その後、燃焼装置20から排出される。その際、蓄熱材23aによる処理ガスの冷却に伴い、処理ガスが有する熱の一部が奪われて当該蓄熱材23aによって蓄熱される。
【0070】
図4に示すように、第4処理状態においては、流路切替弁30を介して配管ラインL5と配管ラインL8とが接続され、配管ラインL6と配管ラインL7とが接続され、配管ラインL4が他のいずれの配管とも非接続とされる。当該第4処理状態においては、パージガスが燃焼装置20に供給されることにより、燃焼装置20内に位置する残留ガスがパージガスに置換される。
【0071】
その際のパージガスおよび当該パージガスによって置換される残留ガスの流れは、いずれも上述した第2通流状態に準じたものとなり、反応室22Cに未だ到達していない残留ガス(すなわち、流路切替弁30による流路の切り替えの際に、現に配管ラインL8、第2蓄熱室22Bおよび上記部分22B1中に位置している一次処理ガス)もすべて反応室22Cを経由することになり、当該残留ガス中に含有された有機溶剤の酸化分解処理が行なわれた後に燃焼装置20から排出されることになる。
【0072】
なお、当該第4処理状態においては、キャリアガスを導入するためのブロワ42の駆動を停止することで脱着処理を一時的に中断するか、またはこれに加えてモータ12の駆動を停止することで吸脱着処理装置10の運転自体を一時的に停止するか、のいずれかとすることが好ましい。
【0073】
このようにすることにより、燃焼装置20への一次処理ガスの供給が停止されることになり、配管ラインL4に一次処理ガスが滞留してしまうことが防止可能となる。したがって、その後に実施される酸化分解処理の際の燃焼装置20における熱暴走を未然に防止することが可能になる。
【0074】
以上において説明したように、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aとすることにより、原ガスに対する高い清浄化能力を維持しつつ、安定して高効率に有機溶剤の分解処理ができるとともに、エネルギー消費量の低減が図られた有機溶剤含有ガス処理システムとすることができる。
【0075】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。次に、この図5を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bについて説明する。なお、有機溶剤含有ガス処理システム1Bにおける第2ないし第4処理状態は、上述した本発明の実施の形態1にいて説明した第2ないし第4処理状態に準じるため、その図示は省略している。
【0076】
図5に示すように、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bは、上述した本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aと比較して、吸脱着処理装置10にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給路である配管ラインL3にバイパス路としての配管ラインL9および流量制御弁50をさらに付設した点においてのみ相違している。
【0077】
具体的には、配管ラインL9は、熱交換部L3bを挟んで位置する配管ラインL3の上流側部分L3aと下流側部分L3cとを接続するように設けられ、流量制御弁50は、当該配管ラインL9に設けられている。流量制御弁50は、当該流量制御弁50に設けられた弁体の開度を可変に調節することにより、配管ラインL9を通流するキャリアガスの流量を任意に制御するものであり、場合によってはその通流自体を停止するものである。
【0078】
当該配管ラインL9および流量制御弁50は、熱交換部L3bを通流することで昇温された高温のキャリアガスに、熱交換部L3bを通流することなく配管ラインL9を通流することで昇温されていない低温のキャリアガスを混入することにより、吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスの温度が上述した脱着温度となるように調整するために設けられたものである。すなわち、流量制御弁50を用いて配管ラインL9を通流する低温のキャリアガスの流量を制御することにより、高温のキャリアガスに混入される低温のキャリアガスの量が調節されることになるため、吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスの温度を所望の着脱温度に調整することが可能になる。
【0079】
ここで、流量制御弁50の開度は、たとえば吸脱着処理装置10に接続された部分の配管ラインL3に図示しない温度センサを設け、当該温度センサにて検出されたキャリアガスの温度に応じて調節されるようにすればよい。
【0080】
このように構成することにより、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果に加え、吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスの温度をさらに安定的に脱着温度に維持することが可能になる。したがって、原ガスに対する高い清浄化能力をより確実に維持することが可能になる。
【0081】
(実施例)
以下、上述した本発明の実施の形態2における有機溶剤含有ガス処理システム1Bを実際に試作し、これを運転することによってその性能を評価した結果につき、これを実施例として説明する。なお、比較のために、後述する比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xを実際に試作し、これを運転することによってその性能を評価した結果についても、これを以下においてあわせて説明する。
【0082】
図6は、比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。なお、比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xにおける第2ないし第4処理状態は、上述した本発明の実施の形態1にいて説明した第2ないし第4処理状態に準じるため、その図示は省略している。
【0083】
図6に示すように、比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xは、上述した本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aと比較して、吸脱着処理装置10にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給路である配管ラインL3が、燃焼装置20に熱接触することなく吸脱着処理装置10に直接接続されている点においてのみ相違している。当該構成の有機溶剤含有ガス処理システム1Xにおいては、キャリアガスの温度を所定の脱着温度にまで昇温するための加熱が、吸脱着処理装置10に設けられたヒータ13のみによって行なわれることになる。
【0084】
実施例および比較例においては、有機溶剤含有ガス処理システム1B,1Xを以下に示す条件に基づいて運転した。
【0085】
原ガスとしては、イソプロピルアルコールを100ppmの濃度で含む30℃のガスを用い、これを500m3/minの風量で吸脱着処理装置10に供給した。
【0086】
キャリアガスとしては、室温の空気を用い、これを130℃に加熱して20m3/minの風量で吸脱着処理装置10に供給した。ここで、実施例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Bにおいては、当該キャリアガスの加熱を燃焼装置20の廃熱を利用することで行ない、具体的には、キャリアガスの一部が配管ラインL3に設けた熱交換部L3bを通流するようにするとともに、キャリアガスの残る一部が配管ラインL9を通流するようにし、これらが配管ラインL3の下流側部分L3cにおいて合流することで吸脱着処理装置10に供給されるキャリアガスの温度が安定的に130℃に維持されるようにした。なお、比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xにおいては、上述したように、当該キャリアガスの昇温をヒータ13のみによって行なった。
【0087】
パージガスとしては、室温の空気を用い、これを20m3/minの風量で燃焼装置20に供給した。
【0088】
上述した第1および第3処理状態(すなわち、燃焼装置20に一次処理ガスを供給して一次処理ガスに含まれる有機溶剤を酸化分解させる処理状態)におけるそれぞれの1回当たりの処理時間は、これを1分とした。また、上述した第2および第4処理状態(すなわち、燃焼装置20に対する一次処理ガスの供給を停止して、代わりにパージガスを供給することで燃焼装置20内の一次処理ガスをパージガスに置換させる処理状態)におけるそれぞれの1回当たりの処理時間は、これを8秒とした。
【0089】
図7は、実施例および比較例における性能評価の結果を示す表である。当該表においては、実施例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Bの運転に要する消費電力と、比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xの運転に要する消費電力とを特に示している。
【0090】
上述したように、実施例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Bと比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xとでは、キャリアガスの加熱方法が異なるのみであるため、吸脱着処理装置10から排出される清浄ガスにおけるイソプロピルアルコールの濃度は、いずれも1ppm以下となり、その除去率は99%以上となることが確認された。
【0091】
また、吸脱着処理装置10から排出された一次処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの濃度は、実施例および比較例のいずれの場合も2500ppmであり、当該一次処理ガスの風量はいずれも20m3/minであり、温度はいずれも70℃であった。
【0092】
一方、図7に示すように、ブロワ41,42,43、ヒータ13,25a,25b、モータ12およびその他の電力消費源における消費電力を比較したところ、実施例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Bにおいては、比較例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Xに比較して、ブロワ42,44において若干の増加があったものの、ヒータ13において大幅な削減が可能であることが確認された。これは、一意にキャリアガスの加熱を燃焼装置20の廃熱によって賄った結果であると考えられ、その総消費電力量を比較した場合には、削減率は27%超となることが確認された。
【0093】
なお、実施例に係る有機溶剤含有ガス処理システム1Bにおいては、安定して高効率に有機溶剤の分解処理ができることも同時に確認されている。
【0094】
参考形態
図8は、参考形態における有機溶剤含有ガス処理システムの第1処理状態を示す図である。次に、この図8を参照して、参考形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Cについて説明する。なお、有機溶剤含有ガス処理システム1Cにおける第2ないし第4処理状態は、上述した本発明の実施の形態1において説明した第2ないし第4処理状態に準ずるため、その図示は省略している。
【0095】
図8に示すように、参考形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Cは、上述した本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aと比較して、燃焼装置20内に前処理材26a,26bを付設した点においてのみ相違している。
【0096】
具体的には、前処理材26a,26bは、いずれも燃焼装置20の内部に設けられたガスの流路上に設置されており、前処理材26aは、第1蓄熱室22Aと反応室22Cとの間であってかつ熱交換部L3bが設けられた部分と反応室22Cとの間に配置されており、前処理材26bは、反応室22Cと第2蓄熱室22Bとの間であってかつ反応室22Cと熱交換部L3bが設けられた部分との間に配置されている。
【0097】
前処理材26a,26bは、通流するガスに有機シリコン化合物が含まれている場合に、これを除去するためのものである。ここで、有機シリコン化合物の除去とは、酸化分解触媒24a,24bの排ガス分解性能を低下させる原因となる触媒毒としての上記有機シリコン化合物を分解させたり、その被毒性を低下させたり、あるいは吸着したりすること等を含む。
【0098】
前処理材26a,26bは、内部にガスが通流可能な流路が形成されたハニカム状または格子状等の形状を有する成形体にて構成されていることが好ましく、たとえばゼオライト、活性アルミナ、ケイ酸カルシウム水和物および粘土鉱物のうちの少なくともいずれかを含むものにて構成される。
【0099】
当該前処理材26a,26bによる有機シリコン化合物の除去を確実にするためには、当該前処理材26a,26bが所定の高温の状態に維持されることが必要である。たとえば、前処理材26a,26bとして活性アルミナを使用した場合には、200℃以上600℃以下に維持されることが必要である。
【0100】
ここで、参考形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Cにあっては、上述した本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aと同様に、熱交換部L3bが、第1蓄熱室22Aと反応室22Cとの間の部分(空間)22A1および反応室22Cと第2蓄熱室22Bとの間の部分(空間)22B1に設けられている。そのため、熱交換部L3bによって当該部分22A1,22B1の温度が上昇し過ぎないように冷却が行なわれることに伴い、上述した前処理材26a,26bが設置された部分においても、制御性よくその温度が制御されることになる。その結果、前処理材26a,26bの温度が所定の高温の状態に安定的に維持できることになる。
【0101】
したがって、このように構成することにより、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果に加え、エネルギー消費量の増大を抑制しつつ燃焼装置20内に設置された前処理材26a,26bの温度を適切な温度に安定的に維持することが可能になる。そのため、低いエネルギー消費量で原ガスに対する高い清浄化能力をより確実に実現することができるようになる。
【0102】
以上において説明した本発明の実施の形態1および2においては、ロータ式の吸脱着処理装置10を備えた有機溶剤含有ガス処理システム1A,1Bに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、吸脱着素子が収容された2つの処理槽を具備し、これらが時間的に交互に吸着槽および脱着層に切り替えられるように構成された、いわゆる2槽式の吸脱着処理装置を備えた有機溶剤含有ガス処理システムに本発明を適用することも可能である。また、必ずしも連続的に原ガスを処理する必要がない場合等には、吸脱着処理装置を単一の処理槽を具備したものにて構成することも可能である。
【0103】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1および2においては、第1蓄熱室22Aと反応室22Cとの間および反応室22Cと第2蓄熱室22Bとの間に空間を設けて、当該空間(すなわち、上記部分22A1,22B1)にキャリアガス供給路である配管ラインL3が導入されることで熱交換部L3bが構成された場合を例示したが、必ずしも燃焼装置20の内部にまで配管ラインL3を導入する必要はなく、当該空間を規定する燃焼装置20の処理槽21の外表面に接触するように配管ラインL3を配置することで熱交換部L3bが構成されていてもよい
【0104】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0105】
1A〜1C 有機溶剤含有ガス処理システム、10 吸脱着処理装置、11 吸脱着素子、11a 吸着部、11b 脱着部、12 モータ、13 ヒータ、20 燃焼装置、21 処理槽、22A 第1蓄熱室、22B 第2蓄熱室、22C 反応室、22A1,22B1 部分(空間)、23a,23b 蓄熱材、24a,24b 酸化分解触媒、25a,25b ヒータ、26a,26b 前処理材、30 流路切替弁、41〜44 ブロワ、50 流量制御弁、L1〜L9 配管ライン、L3a 上流側部分、L3b 熱交換部、L3c 下流側部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8