(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の構成では、チューナを2つ搭載したことによるコストアップの問題が避けられない。例えば、廉価版の放送受信機ではコスト面での制約が厳しいため、チューナを2つ搭載する構成を安易には採用できない。そこで、再生中又は録画中の番組の受信を極僅かな期間(例えば5ms程度の極僅かな期間)だけ一時的にミュートし、指定した他の周波数チャネルを受信してその受信電波の電界強度やノイズレベルを検出し、検出結果に基づいて放送局リストを更新するための機能が知られている。この機能(以下、「Station Check コマンド」と記す。)を用いて放送局リスト(より正確には周波数チャネルのリスト)の更新を行うと、放送番組の再生等が各周波数チャネルのサーチ期間(上記5ms)に応じて断続的に途絶えるが、各サーチ期間が極めて短いため、番組の再生等を中断してサーチ処理を行っていることがユーザに知覚され難い。そのため、放送番組の再生処理等と放送局リストの更新処理とが並行に実施されているとみなすことができる。
【0006】
ところが、Station Check コマンドは、受信電波の電界強度の検出結果にだけ基づいて(受信データのデコードまで行わずに)放送局リストの更新を行うため、放送電波の受信環境に依存してリスト(受信可能な周波数チャネルのリスト)の更新精度が劣化するという欠点を抱えている。そのため、例えば、放送電波の受信品質が保証されていない環境下で使用される移動体向けの放送受信機での利用には不向きな面を持つ。その一方で、放送受信機に対するコストダウンの要請も恒常的に存在する。そのため、Station Check コマンドを導入してコストダウンを図りつつリストの更新精度の劣化を抑えるのに好適な放送受信機の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る放送受信機は、
放送局リストを構成する周波数チャネルのチャンネル情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されたチャンネル情報に基づいて所定の表示画面に
放送局リストを表示する表示制御手段と、受信する周波数チャネルを間欠的に変化させて各周波数チャネルの電界強度を検出する電界強度検出手段と、電界強度検出手段により検出された電界強度に基づいて
放送局リストを更新する更新手段とを備える。この更新手段は、電界強度検出手段により検出された電界強度に基づいて周波数チャネルの受信が困難か否かを判定し、
放送局リストを構成するチャンネル情報のうち、受信が困難と判定された連続回数が第1の所定回数に達した周波数チャネルに対応するチャンネル情報の表示を
放送局リストから消去する。
【0008】
本発明の一形態によれば、周波数チャネルの受信が第1の所定回数連続して困難と判定されない限り、そのチャンネル情報の表示が
放送局リストから消去されない。そのため、Station Check コマンドによる周波数チャネルのサーチを行いつつも、例えば放送電波の受信品質が保証されていない環境下で起こり得る突発的なエラーに起因する放送局リストの更新精度の劣化が抑えられる。
【0009】
また、更新手段は、電界強度検出手段により検出された電界強度に基づいて周波数チャネルからチャンネル情報を取得するのが困難か否かを判定し、
放送局リストを構成するチャンネル情報のうち、取得が困難と判定された連続回数が第2の所定回数に達した周波数チャネルに対応するチャンネル情報を記憶手段から削除する構成としてもよい。
【0010】
また、更新手段は、周波数チャネルの受信又はチャンネル情報の取得が困難でないと判定したとき、該周波数チャネルについて、困難と判定された連続回数をリセットしてもよい。
【0011】
また、放送受信機は、電界強度検出手段により検出された電界強度を記憶する電界強度記憶手段を備えた構成としてもよい。この場合、更新手段は、電界強度検出手段により検出された電界強度に基づいて
放送局リストにリストするチャンネル情報を決定する。
【0012】
上記電界強度記憶手段は、更新手段により受信が困難と判定された周波数チャネルの電界強度を所定の値で除算した上で記憶してもよい。この場合、更新手段は、放送局リストにおいて、電界強度記憶手段により記憶された電界強度が高い順にチャンネル情報をソートする。
【0013】
また、放送受信機は、受信中の周波数チャネルの放送局に対応する代替局をサーチする代替局サーチ手段と、放送局に対応する代替局の数に応じて、電界強度検出手段による電界強度の検出が予定される、該代替局以外の周波数チャネルの数を決定する決定手段とを備える構成としてもよい。この場合、電界強度検出手段は、代替局サーチ手段により受信可能な代替局がサーチされない場合に、決定手段により決定された数の、該代替局以外の周波数チャネルについて、電界強度の検出を行う。また、更新手段は、電界強度検出手段により検出された、代替局以外の周波数チャネルの電界強度に基づいて、
放送局リストを更新する。
【0014】
また、放送受信機は、移動体に搭載されたものであってもよい。移動体に搭載される放送受信機には、例えば車載カーナビゲーション装置(PND(Portable Navigation Device)も含む。)や、スマートフォン、フィーチャフォン、携帯ゲーム機等の携帯情報端末が含まれる。
【0015】
また、本発明の一形態に係る放送局リスト管理方法は、
放送局リストを構成する周波数チャネルのチャンネル情報を所定の記憶媒体に記憶する記憶ステップと、記憶媒体に記憶されたチャンネル情報に基づいて所定の表示画面に
放送局リストを表示する表示制御ステップと、受信する周波数チャネルを間欠的に変化させて各周波数チャネルの電界強度を検出する電界強度検出ステップと、電界強度検出ステップにて検出された電界強度に基づいて
放送局リストを更新する更新ステップであって、該電界強度に基づいて周波数チャネルの受信が困難か否かを判定し、該
放送局リストを構成するチャンネル情報のうち、受信が困難と判定された連続回数が第1の所定回数に達した周波数チャネルに対応するチャンネル情報の表示を
放送局リストから消去する更新ステップとを含む方法である。
【0016】
また、更新ステップにて、電界強度検出ステップにて検出された電界強度に基づいて周波数チャネルからチャンネル情報を取得するのが困難か否かを判定し、
放送局リストを構成するチャンネル情報のうち、取得が困難と判定された連続回数が第2の所定回数に達した周波数チャネルに対応するチャンネル情報を記憶媒体から削除してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一形態に係る放送受信機及び放送局リスト管理方法によれば、周波数チャネルの受信が第1の所定回数連続して困難と判定されない限り、そのチャンネル情報の表示が
放送局リストから消去されない。そのため、Station Check コマンドによる周波数チャネルのサーチを行いつつも、放送電波の受信品質が保証されていない環境下で起こり得る突発的なエラーに起因する放送局リストの更新精度の劣化が抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の放送受信機について説明する。本実施形態の放送受信機は、RDS(Radio Data System)方式の多重放送の受信に適したラジオ受信機であるが、別の多重放送方式の受信に適したラジオ受信機やテレビ受像機も本発明の範疇である。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の放送受信機1の構成を示すブロック図である。放送受信機1は、車載型の放送受信機(例えばディスプレイ付オーディオや車載型ナビゲーション装置を構成するもの)であり、一般乗用車等の車両に装備される。車載型ナビゲーション装置には、PNDも含まれる。放送受信機1は、RDS方式による多重放送に適合して設計されており、当該放送方式の信号フォーマットによる放送信号を受信して処理するように構成されている。なお、放送受信機1は、スマートフォン、フィーチャフォン、携帯ゲーム機など、携帯情報端末を構成するものとしてもよい。
【0021】
図1に示されるように、放送受信機1は、アンテナ101、チューナ102、ラジオ信号処理回路103、オーディオ信号処理回路104、パワーアンプ105、スピーカ106、RDS復調器107、PLL(Phase Locked Loop)回路108、マイクロコンピュータ109、入力インタフェース110、ディスプレイ111を備えている。
【0022】
放送受信機1は、放送電波をアンテナ101で受信してチューナ102に出力する。チューナ102は、マイクロコンピュータ109によるPLL回路108を介した制御により、受信電波から選択局のRF(Radio Frequency)信号を抽出する。抽出されたRF信号は、フィルタリング等の信号処理に適した中間周波数に周波数変換される。チューナ102は、周波数変換によって得たIF(Intermediate Frequency)信号をラジオ信号処理回路103に出力する。
【0023】
選択局は、例えば入力インタフェース110に対するユーザ操作により指定される。選択局の指定情報は、マイクロコンピュータ109の内蔵RAM(Random Access Memory)に記憶される。マイクロコンピュータ109は、例えば放送受信機1の電源投入直後、内蔵RAMの記憶情報に従ってPLL回路108を介したチューナ102の選局動作を制御する。なお、入力インタフェース110には、ハードウェア又はソフトウェア若しくはこれらを組み合わせた種々のUI(User Interface)が想定され、具体的には、放送受信機1本体のフロントパネルに実装されたメカニカルスイッチキー、メンブレンキー、タッチパネル環境下で提供されるGUI(Graphical User Interface)、操作キーが実装されたリモートコントローラ等が挙げられる。
【0024】
ラジオ信号処理回路103は、IF検波(IF-Detection)回路、ノイズキャンセラ(Noise Canceller)、弱電界処理(Multiplex)回路を有している。ラジオ信号処理回路103に入力したIF信号は、IF検波回路でオーディオ信号に検波後、ノイズキャンセラによってノイズが除去される。オーディオ信号は、弱電界処理回路により、ミュート、ハイカット、セパレーション制御等の選択局の受信状態に応じた処理が施されてオーディオ信号処理回路104に出力される。
【0025】
オーディオ信号処理回路104に入力したオーディオ信号は、所定のオーディオ信号処理後、パワーアンプ105によるボリュームに応じた利得調節を経てスピーカ106から音声として出力再生される。
【0026】
ラジオ信号処理回路103には、例えばSメータが内蔵されている。Sメータは、アナログオーディオ信号復調時の検波電圧の値を所定のサンプリング周期で測定してマイクロコンピュータ109に出力する。上記検波電圧値は、受信電波に比例した直流電圧(受信した放送電波の電界強度)である。
【0027】
ラジオ信号処理回路103で検波された信号はRDS復調器107にも出力される。検波信号は、RDS復調器107による復調処理後、マイクロコンピュータ109のRDS復号器でRDSデータ(RDS方式の多重データ)にデコードされて内蔵RAM内の受信可能局データベース109DBに登録される。RDSデータは周波数チャネルのチャンネル情報を表すデータであり、PS(Programme Service)、RT(Radio Text)、AF(Alternative Frequencies)リスト、PI(Programme Identification)コード、PTY(Programme Type)、TP(Traffic Programme)等が含まれている。
【0028】
マイクロコンピュータ109は、受信可能局データベース109DBに登録されたRDSデータに基づいて、PS、RT、PTY等からなる放送局リスト(Station List)を作成してディスプレイ111の表示画面に表示すると共に、AFリストやPIコードの情報に従ってPLL回路108を介してチューナ102の選局動作を制御する。
図2は、ディスプレイ111の表示画面例を示す。
図2の表示画面例では、放送局リスト(Station List)が表示されており、項目として、周波数チャネル、プリセット番号、PTY(Rock, Country, Oldies 等)がレイアウトされている。
【0029】
図3(a)は、受信可能局データベース109DB(初期状態、例えば製品出荷時)の構造を示す図である。
図3(a)に示されるように、受信可能局データベース109DBは、各周波数チャネルについて、受信情報(Level、PTY)及びカウンタ情報(RC、DDC)を格納することができる。Level(単位:dB)は、例えばSメータにより検出される受信電波の電界強度を示す。RC(Receivable Counter)は、周波数チャネルのLevelが所定の第1の閾値以下のときにカウント値がデクリメントされるカウンタである。DDC(Data Delete Counter)は、周波数チャネルのLevelが所定の第2の閾値以下のときにカウント値がデクリメントされるカウンタである。何れのカウンタも0が下限であり、マイナスの値にまではデクリメントされない。本実施形態では、以下に説明するように、RC、DDCの各カウンタのカウント値に応じて、放送局リストへの表示又は表示消去と、RDSデータの削除又は維持とを別個独立に制御する。
【0030】
初期状態の受信可能局データベース109DBは、全ての値が0又はNullである。そのため、マイクロコンピュータ109は、放送局リストを作成することができない。従って、
図3(b)に示されるように、ディスプレイ111の表示画面上の放送局リストには、周波数チャネルもPTYも表示されない。なお、RC、DDCの各カウンタをデクリメントするか否かは、周波数チャネルのLevelだけでなく周波数ズレやCN比、ノイズ等を総合的に考慮して判定してもよい。
【0031】
[本実施形態の受信可能局データベース109DBの更新処理]
図4は、マイクロコンピュータ109により実行される受信可能局データベース109DBの更新処理のフローチャートを示す。説明の便宜上、本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。なお、受信可能局データベース109DBは、放送番組の再生処理又は録画処理と並行にStation Check コマンドが実行されたり、ユーザの操作に従って通常のチャンネルサーチ処理が実行されたりした結果、90.0MHz(放送局A)、90.2MHz(放送局B)、90.4MHz(放送局C)のLevelが第1及び第2の閾値(後述)以上あるため、
図5(a)の状態に更新されているものとする。すなわち、受信可能局データベース109DBには、受信状態が良好と判断された3つの周波数チャネルについて、Level、PTYが格納されると共に、RCが第1の規定値(=3)にセットされ、DDCが第2の規定値(=5)にセットされている。このとき、ディスプレイ111の表示画面には、3つの周波数チャネル及びPTYをリストした放送局リストが表示される(
図5(b)参照)。
【0032】
〈
図4のS1(チューニング処理)〉
マイクロコンピュータ109は、チューナ102を用いてチューニング動作を行う。マイクロコンピュータ109は、例えばStation Check コマンドにより、放送番組の再生処理又は録画処理の合間に周波数チャネルの受信状態をチェックする。
【0033】
〈
図4のS2(受信判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図4のS1の処理(チューニング処理)にてチェックされた周波数チャネルのLevelが第1の閾値以上あるか否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、チェックされた周波数チャネルのLevelが第1の閾値以上の場合(S2:YES)、当該周波数チャネルの受信が良好であるとして、処理を
図4のS7(RCのリセット処理)に進める。チェックされた周波数チャネルのLevelが第1の閾値に満たない場合(S2:NO)には、当該周波数チャネルの受信が困難であるとして、処理を
図4のS3(RCのデクリメント処理)に進める。なお、第1の閾値は、例えばサーチ時やシーク時の有局判定に用いる閾値と同じである。
【0034】
〈
図4のS3(RCのデクリメント処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図4のS2の処理(受信判定処理)にて周波数チャネルのLevelが第1の閾値に満たないと判定されると、当該周波数チャネルのRCのカウント値を1デクリメントする。カウント値が既に0の場合は、デクリメントしない。
【0035】
〈
図4のS4(Levelの値の除算処理)〉
ここで、放送局リストは、各周波数チャネルのレコードがLevelの項目に格納されている値の高い順にソートされて、ディスプレイ111の表示画面に表示される。また、放送局リストにリスト可能なレコード数は例えば最大で10である。マイクロコンピュータ109は、受信困難とされる周波数チャネルのレコードを積極的に放送局リストの下位にソートし又は放送局リストから除外するため、RCのカウント値が1デクリメントされた周波数チャネルのLevelの値を10で除算し、除算して得られた値を格納(上書き保存)する。除算処理に用いる値(ここでは10)は、電界強度を検出する素子の性能(例えば何dBで飽和するか等)や、サーチ時・シーク時の有局判定に用いる閾値等を総合的に考慮して設定される。
【0036】
また、
図4のS2の処理(受信判定処理)においては、周波数チャネルのLevelに代えて、周波数チャネルのノイズを判定材料として用いてもよい。この場合、放送局リストは、周波数チャネルのLevelとノイズの両方を加味してソートされることになる。ノイズの情報は、
図4のS2の処理(受信判定処理)にて用いられるだけであるため、メモリに保存する必要がない。従って、ノイズの情報を記憶するメモリ領域を特に確保する必要がない。
【0037】
〈
図4のS5(RCのカウント値の判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、RCのカウント値が0か否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、RCのカウント値が0の場合(S5:YES)、処理を
図4のS6(チャンネル情報の表示消去処理)に進める。RCのカウント値が0でない場合(S5:NO)には、処理を
図4のS9(DDC設定条件判定処理)に進める。
【0038】
〈
図4のS6(チャンネル情報の表示消去処理)〉
RCのカウント値が0にまでデクリメントされた周波数チャネルは、本フローチャートの処理が3回実行され、各回の
図4のS2の処理(受信判定処理)において(つまり3回連続して)Levelが第1の閾値に満たないと判定されていることから、現在受信が困難な状況にある(ユーザの視聴に耐える状態にない)と確定される。そのため、マイクロコンピュータ109は、RCのカウント値が0の周波数チャネルについて、ディスプレイ111の表示画面上での放送局リストからその情報(ここでは周波数チャネル及びPTY等のチャンネル情報)の表示を消去する。次いで、マイクロコンピュータ109は、処理を
図4のS9(DDC設定条件判定処理)に進める。
【0039】
〈
図4のS7(RCのリセット処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図4のS2の処理(受信判定処理)にて周波数チャネルのLevelが第1の閾値以上と判定されると、受信状態が良好である(困難でない)から、RCのカウント値を第1の規定値(=3)にリセットする。
【0040】
〈
図4のS8(Level格納処理)〉
マイクロコンピュータ109は、RCのカウント値が第1の規定値(=3)にリセットされると、
図4のS1の処理(チューニング処理)にてチェックされた周波数チャネルのLevelを格納する。
【0041】
〈
図4のS9(DDC設定条件判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図4のS1の処理(チューニング処理)にてチェックされた周波数チャネルのLevelが所定の第2の閾値以上あるか否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、チェックされた周波数チャネルのLevelが第2の閾値以上の場合(S9:YES)、RDSデータを正常にデコードできるとして、処理を
図4のS13(DDCのリセット処理)に進める。チェックされた周波数チャネルのLevelが第2の閾値に満たない場合(S9:NO)には、RDSデータのデコードが困難であるとして、処理を
図4のS10(DDCのデクリメント処理)に進める。なお、ユーザの視聴に耐える(聴感上許容される)Levelと、RDSデータのデコードが可能なLevelは、必ずしも一致しない。本実施形態では、第2の閾値を第1の閾値よりも高い値に設定している。但し、別の実施形態では、第2の閾値を第1の閾値と同じ値に設定してもよく又は低い値に設定してもよい。
【0042】
〈
図4のS10(DDCのデクリメント処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図4のS2の処理(受信判定処理)にて周波数チャネルのLevelが第2の閾値に満たないと判定されると、当該周波数チャネルのDDCのカウント値を1デクリメントする。カウント値が既に0の場合は、デクリメントしない。
【0043】
〈
図4のS11(DDCのカウント値の判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、DDCのカウント値が0か否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、DDCのカウント値が0の場合(S11:YES)、処理を
図4のS12(チャンネル情報の削除処理)に進める。DDCのカウント値が0でない場合(S11:NO)には、処理中の周波数チャネルについて本フローチャートの処理を終了させ、次の周波数チャネルについて本フローチャートの処理を実行する。
【0044】
〈
図4のS12(チャンネル情報の削除処理)〉
DDCのカウント値が0にまでデクリメントされた周波数チャネルは、本フローチャートの処理が5回実行され、各回の
図4のS9の処理において(つまり5回連続して)Levelが第2の閾値に満たないと判定されていることから、RDSデータのデコードが困難な状況にあると確定される。そのため、マイクロコンピュータ109は、現在の受信状態を受信可能局データベース109DBに正確に反映させるため、DDCのカウント値が0の周波数チャネルについて、受信可能局データベース109DBに登録されているRDSデータを削除する。次いで、マイクロコンピュータ109は、処理中の周波数チャネルについて本フローチャートの処理を終了させ、次の周波数チャネルについて本フローチャートの処理を実行する。
【0045】
〈
図4のS13(DDCのリセット処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図4のS9の処理(DDC設定条件判定処理)にて周波数チャネルのLevelが第2の閾値以上と判定されると、RDSデータのデコードが可能であるから、DDCのカウント値を第2の規定値(=5)にリセットし、処理中の周波数チャネルについて本フローチャートの処理を終了させ、次の周波数チャネルについて本フローチャートの処理を実行する。
【0046】
[受信可能局データベース109DBの更新例]
図6(a)及び
図7(a)に、
図4の更新処理により更新された受信可能局データベース109DBを例示する。受信可能局データベース109DBは、
図5(a)に示される内容を基点として、90.0MHz(放送局A)、90.2MHz(放送局B)、90.4MHz(放送局C)の各周波数チャネルに対して
図4の更新処理が3回実行され、90.0MHz(放送局A)については3回連続でLevelが第1及び第2の閾値以上であり、90.2MHz(放送局B)については3回連続でLevelが第1及び第2の閾値未満であり、90.4MHz(放送局C)については3回連続でLevelが第1の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、
図6(a)の内容に更新される。
図6(a)に示されるように、90.0MHz(放送局A)については、RC、DDCが共に規定値に維持されており、それぞれ、「3」、「5」となっている。また、90.2MHz(放送局B)については、RC、DDCが共に規定値より3デクリメントされており、それぞれ「0」、「2」となっている。また、90.4MHz(放送局C)については、RCが規定値に維持されている一方、DDCが規定値より3デクリメントされており、それぞれ「3」、「2」となっている。
【0047】
90.0MHz(放送局A)については、RC、DDCが共に0でないため、
図4のS6の処理(チャンネル情報の表示消去処理)及び
図4のS12の処理(チャンネル情報の削除処理)が実行されない。つまり、車両の移動に伴って動的に変化する受信環境下において、良好な受信状態が維持されている周波数チャネルについては、放送局リスト上での表示が維持されると共に受信可能局データベース109DBからRDSデータが削除されることもない(
図6(b)参照)。附言するに、複数回連続して受信状態の劣化が検出されない限り、放送局リスト上での表示消去及びRDSデータの削除を行わないようにすることで、突発的なエラーに起因する放送局リストの更新精度の劣化が抑えられる。
【0048】
また、90.2MHz(放送局B)については、RCが0であるため、
図4のS6の処理(チャンネル情報の表示消去処理)の実行により、放送局リストから表示が消去される。一方、DDCは0でないため、
図4のS12の処理(チャンネル情報の削除処理)が実行されず、受信可能局データベース109DBからRDSデータが削除されることはない。つまり、受信が困難な状況にある(ユーザの視聴に耐える状態にない)とされる周波数チャネルについては、放送局リストから消去して選択操作できないようにしつつも、良好な受信状態に復帰する可能性を考慮して、RDSデータについては保持する(
図6(b)参照)。この場合に、放送局リストから表示が消去された周波数チャネルが良好な受信状態に復帰したとき、例えば放送番組の再生処理中又は録画処理中のためにRDSデータを再取得できない状況下にあっても、PTY等のチャンネル情報を再び表示させることができる。
【0049】
また、90.2MHz(放送局B)については、
図4のS4の処理(Levelの値の除算処理)の実行により、Levelの項目に格納される値が1/10に除算される。そのため、90.2MHz(放送局B)は、放送局リストの最下位にソート(設定によっては放送局リストから除外)される。
【0050】
また、90.4MHz(放送局C)については、90.0MHz(放送局A)と同様に、RC、DDCが共に0でないため、
図4のS6の処理(チャンネル情報の表示消去処理)及び
図4のS12の処理(チャンネル情報の削除処理)が実行されない。
【0051】
受信可能局データベース109DBは、
図6(a)に示される内容を基点として、90.0MHz(放送局A)、90.2MHz(放送局B)、90.4MHz(放送局C)の各周波数チャネルに対して
図4の更新処理が2回実行され、引き続き、90.0MHz(放送局A)については2回連続でLevelが第1及び第2の閾値以上であり、90.2MHz(放送局B)については2回連続でLevelが第1及び第2の閾値未満であり、90.4MHz(放送局C)については2回連続でLevelが第1の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、
図7(a)の内容に更新される。
図7(a)に示されるように、90.0MHz(放送局A)については、RC、DDCが共に規定値に維持されており、それぞれ、「3」、「5」となっている。また、90.2MHz(放送局B)については、DDCが下限値までデクリメントされており、それぞれ「0」、「0」となっている。また、90.4MHz(放送局C)については、RCが規定値に維持されている一方、DDCが下限値までデクリメントされており、それぞれ「3」、「0」となっている。
【0052】
90.0MHz(放送局A)については、
図6(a)の例と同じである。
【0053】
また、90.2MHz(放送局B)については、RCだけでなくDDCも0にまでデクリメントされたため、
図4のS12の処理(チャンネル情報の削除処理)も実行される。つまり、受信が困難な状況にあり(ユーザの視聴に耐える状態にない)かつRDSデータがデコードできないとされる周波数チャネルについては、良好な受信状態に復帰する可能性が低いとして、放送局リストから表示が消去されると共にRDSデータが削除される(
図7(b)参照)。
【0054】
また、90.4MHz(放送局C)については、RCが0でないため、
図4のS6の処理(チャンネル情報の表示消去処理)が実行されない。一方、DDCは0であるため、
図4のS12の処理(チャンネル情報の削除処理)が実行されて、受信可能局データベース109DBからRDSデータが削除される。RDSデータの削除に伴い、例えば
図2の3行目のリストのように、放送局リストからPTY等のチャンネル情報が消去される。つまり、ユーザの視聴に耐える(聴感上許容される)が、RDSデータがデコードできないとされる周波数チャネルについては、放送リスト上での表示を残しつつ、現在の受信状態を受信可能局データベース109DBに正確に反映させるため、RDSデータを削除する。
【0055】
[別の実施形態の受信可能局データベース109DBの更新処理]
RDS方式に適合して設計された放送受信機は、例えば車両の移動に伴い、現在受信している放送局の放送エリアを外れると(受信状態が劣化すると)、RDSデータに含まれるAFリストを参照して同一の又は関連する番組を放送する放送局(代替局)をサーチし、受信可能な代替局への受信切替を自動的に行う。この代替局サーチは、受信可能な代替局がサーチされるまで継続する。そのため、代替局の受信状態が悪い場合は代替局サーチが終了せず、受信可能局データベース109DBに登録された、代替局以外の放送局の周波数チャネルについて
図4の更新処理を行うことができない。このような不都合を解消するため、別の実施形態では、代替局サーチと
図4の更新処理とを一連の処理で実行する。
図8に、かかる処理のフローチャートを示す。
【0056】
〈
図8のS101(受信状態悪化判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、現在受信中の周波数チャネル(例えば電界強度やデコード結果)をモニタリングして、受信状態が悪化したか否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、受信状態が悪化していないと判定される場合(S101:NO)、本フローチャートの処理を終了させる。受信状態が悪化したと判定される場合(S101:YES)は、処理を
図8のS102(代替局の設定処理)に進める。
【0057】
〈
図8のS102(代替局の設定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、RDSデータに含まれるAFリストに基づいてサーチ対象の代替局を設定する。
【0058】
〈
図8のS103(代替局に対する更新処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図8のS102の処理(代替局の設定処理)にて設定された1つの代替局に対して
図4の更新処理を実行する。
【0059】
〈
図8のS104(代替局の受信判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図8のS103の処理(設定された代替局に対する更新処理)にて代替局の受信が可能(例えばLevelが第1の閾値以上)と判定された場合(S104:YES)、処理を
図8のS105(代替局の受信処理)に進める。
図8のS103の処理(設定された代替局に対する更新処理)にて代替局の受信が困難(例えばLevelが第1の閾値未満)と判定された場合(S104:NO)は、一定期間待機後、処理を
図8のS106(終了判定処理)に進める。
【0060】
〈
図8のS105(代替局の受信処理)〉
マイクロコンピュータ109は、放送番組の再生処理又は録画処理を行う周波数チャネルを、
図8のS101の処理(受信状態悪化判定処理)にて受信状態が悪化したと判定された周波数チャネルから、受信可能と判定された上記代替局に変更して、本フローチャートの処理を終了させる。
【0061】
〈
図8のS106(終了判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、AFリストに含まれる全ての代替局に対して
図8のS103の処理(設定された代替局に対する更新処理)等を実行したか否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、全ての代替局に対して
図8のS103の処理(設定された代替局に対する更新処理)等を実行したと判定した場合(S106:YES)、処理を
図8のS107(カウンタの設定処理)に進める。
図8のS103の処理(設定された代替局に対する更新処理)等が未実行の代替局が残存すると判定した場合(S106:NO)は、処理を
図8のS102(代替局の設定処理)に戻す。
【0062】
〈
図8のS107(カウンタの設定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、所定のカウンタのカウント値ZをAFリストに含まれる代替局の数に応じて設定する。カウント値Zは、AFリストにリストされた代替局の数が多いほど大きな値に設定される。一例として、カウント値ZはAFリスト内の代替局の数と同じ値に設定される。
【0063】
〈
図8のS108(カウント値Zの判定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、カウント値Zが0か否かを判定する。マイクロコンピュータ109は、カウント値Zが0の場合(S108:YES)、本フローチャートの処理を終了させる。カウント値Zが0でない場合(S108:NO)は、処理を
図8のS109(周波数チャネルの設定処理)に進める。
【0064】
〈
図8のS109(周波数チャネルの設定処理)〉
マイクロコンピュータ109は、受信可能局データベース109DBに登録されている代替局以外の放送局の周波数チャネルの中から、サーチ対象を設定する。
【0065】
〈
図8のS110(代替局以外の放送局に対する更新処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図8のS109の処理(周波数チャネルの設定処理)にて設定された1つの周波数チャネルに対して
図4の更新処理を実行する。
【0066】
〈
図8のS111(カウント値Zのデクリメント処理)〉
マイクロコンピュータ109は、
図8のS110(代替局以外の放送局に対する更新処理)にて1つの周波数チャネルに対する更新処理が終了すると、カウント値Zを1デクリメントして一定期間待機後、処理を
図8のS108(カウント値Zの判定処理)に戻す。マイクロコンピュータ109は、
図8のS108〜S111の処理をZ回繰り返すことにより、代替局以外のZ局数分の周波数チャネルについて受信可能局データベース109DBの更新を行うことができる。
【0067】
別の実施形態によれば、代替局サーチと
図4の更新処理とを一連の処理で実行することにより、代替局サーチが終了しないことによって代替局以外の放送局の周波数チャネルの更新処理を行うことができないという不都合が避けられる。また、代替局サーチの実行中は、代替局以外の放送局の周波数チャネルの更新処理を行うことができない。そのため、代替局サーチの直後は、受信可能局データベース109DBが現在の受信環境を反映した内容になっていない傾向にあり、代替局サーチの時間が長いほどその傾向が大きく現れる虞がある。そこで、別の実施形態では、代替局数(言い換えると、代替局サーチの時間)に比例した数の、代替局以外の放送局の周波数チャネルについて
図4の更新処理を行うことにより、代替局サーチ直後における受信可能局データベース109DBの一時的な更新精度の低下を抑えている。
【0068】
なお、上記においては、全ての代替局に対するサーチの終了後に、代替局以外の放送局の周波数チャネルに対する更新処理を行っているが、変形例では、各代替局に対するサーチと、代替局以外の各放送局の周波数チャネルに対する更新処理とを交互に行ってもよい。
【0069】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。