(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0012】
実施形態に係るゴム組成物においては、ゴム成分として、ヘテロ原子を含む官能基を持つ変性スチレンブタジエン共重合体ゴムを用いる。該官能基は、ポリマー鎖の末端に導入されてもよく、あるいはまたポリマー鎖中に導入されてもよいが、好ましくは末端に導入されることである。
【0013】
変性スチレンブタジエン共重合体ゴムの官能基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子などのヘテロ原子を含むものであり、例えば、水酸基(−OH)、アミノ基、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸誘導体基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基(−SH)、及びハロゲンなどが挙げられる。これらはそれぞれ1種のみ導入されてもよく、あるいはまた2種以上組み合わせて導入されてもよい。これらの官能基は、シリカ表面のシラノール基(Si−OH)と相互作用があるものであり、すなわち、シラノール基との間で化学結合し得る反応性又は水素結合などの親和性を持つものである。また、これらの官能基は、後述する変性液状ポリブタジエンの官能基との間でも相互作用を有する。そのため、シリカの分散性を向上させたり、変性液状ポリブタジエンとの相溶性を向上させたりすることができる。
【0014】
詳細には、アミノ基としては、1級アミノ基だけでなく、2級もしくは3級アミノ基でもよい。カルボキシル基としては、例えば、マレイン酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。カルボン酸誘導体基としては、これらカルボン酸由来のエステル基(カルボン酸エステル基)や、マレイン酸やフタル酸などのジカルボン酸の無水物からなる酸無水物基が挙げられる。カルボン酸エステル基としては、例えば、アクリレート基(-O-CO-CH=CH
2)及び/又はメタクリレート基(-O-CO-C(CH
3)=CH
2)(以下、(メタ)アクリレート基という。)が好ましい例として挙げられる。
【0015】
また、アルコキシ基(−OR、但しRはアルキル基)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。アルコキシシリル基は、シリル基の3つの水素のうち少なくとも1つがアルコキシ基で置換されたものをいい、これには、トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基が含まれる。更に、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、塩素、臭素が好ましい。
【0016】
これらの官能基の中でも、シリカのシラノール基及び変性液状ポリブタジエンの官能基との相互作用を高める点から、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸誘導体基、アルコキシ基及びアルコキシシリル基などの、酸素原子を含む官能基が好ましい。酸素原子を含む官能基とともに、他のヘテロ原子を含む官能基を持つ変性スチレンブタジエン共重合体ゴムを用いることも、好ましい態様である。
【0017】
このような官能基を有する変性スチレンブタジエン共重合体ゴム自体は公知であり、その製造方法等は限定されるものではない。例えば、アニオン重合で合成された溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴムを変性剤で変性することで、上記官能基を導入してもよく、あるいはまた、上記官能基を有する単量体を、ベースポリマーを構成する単量体であるスチレン及びブタジエンとともに共重合することでポリマー鎖に導入してもよい。
【0018】
変性スチレンブタジエン共重合体ゴムのガラス転移温度(Tg)は、特に限定しないが、−70〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−60〜−20℃である。更に、スチレン含量(St)が5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。なお、ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて(測定温度範囲:−150℃〜50℃)測定される値である。スチレン含量は、
1HNMRスペクトルの積分比により算出される値である。
【0019】
本実施形態に係るゴム組成物において、ゴム成分は、該変性スチレンブタジエン共重合体ゴムをゴム成分100質量部のうち30質量部以上にて含有する。ゴム成分は、該変性スチレンブタジエン共重合体ゴム単独でもよいが、他のジエン系ゴムとのブレンドでもよい。任意成分である他のジエン系ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、未変性のスチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、ブタジエンイソプレン共重合体、またはこれらの2種以上の組み合わせ等が挙げられる。好ましくは、ブタジエンゴム及び/又は天然ゴムを用いることである。
【0020】
本実施形態に係るゴム組成物において、ゴム成分100質量部は、該変性スチレンブタジエン共重合体ゴム30〜100質量部と、他のジエン系ゴム70〜0質量部からなり、より好ましくは、該変性スチレンブタジエン共重合体ゴム50〜90質量部と、他のジエン系ゴム50〜10質量部からなる。
【0021】
本実施形態に係るゴム組成物には、変性液状ポリブタジエンが配合される。変性液状ポリブタジエンは、常温(23℃)で液状のポリマーであり、常温で固形状をなす上記ゴム成分には含まれない。該変性液状ポリブタジエンは、数平均分子量(Mn)が通常1,000〜10万であり、数平均分子量が通常20万以上である上記ゴム成分のジエン系ゴムとは明確に区別される。該変性液状ポリブタジエンの数平均分子量は、1,500〜5万であることが好ましく、より好ましくは1,500〜10,000であり、更に好ましくは2,000〜5,000である。数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)、溶媒:THF(テトロヒドロフラン)、40℃で測定される値である。
【0022】
本実施形態では、該変性液状ポリブタジエンとして、1,2−ビニル結合量が50モル%以上のポリブタジエンを水素添加して得られる水添ポリブタジエンが用いられる。このような高ビニルのミクロ構造を有する液状ポリブタジエンを用いることにより、ゴム表面へのブリードを抑えることができる。これは、1,4−結合成分の多い水添ポリブタジエンでは、極性が小さくなりすぎて、変性スチレンブタジエン共重合体ゴムとの相溶性が低下するためと考えられる。また、液状ポリブタジエンとして水添したものを用いることにより、湿潤路面におけるグリップ性能を向上することができる。これは、水添することにより、ゴム成分のマトリックス中で、水添ポリブタジエンの分子が動きやすくなるためと考えられる。
【0023】
1,2−ビニル結合量は、水添前のポリブタジエンについて、そのポリマー中に含まれるブタジエンユニットの含有量に対する1,2−ビニル結合ユニットの含有量であり、
1HNMRスペクトルの積分比により算出される。なお、1,2−ビニル結合ユニットは水添によりビニル基がエチル基になるが、炭素数2の炭化水素基の側鎖を持つという1,2−結合の形態自体は保持されるので、水添及び未水添の1,2−ビニル結合ユニットを併せて1,2−結合成分とすれば、該水添ポリブタジエンは1,2−結合成分を50モル%以上含むものである。水添前の1,2−ビニル結合量は、70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80〜95モル%である。
【0024】
該変性液状ポリブタジエンの水素添加率(水添前のポリブタジエンの二重結合に対する水添された二重結合の比率)は、特に限定されないが、20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上であり、更に好ましくは80〜95モル%である。水素添加率は、
1HNMRスペクトルにおける不飽和結合部のスペクトル減少率から算出される。なお、水添は、パラジウムなどの触媒を使用した公知の方法で行うことができ、特に限定されない。
【0025】
本実施形態では、該変性液状ポリブタジエンとして、ヘテロ原子を含む官能基を有する官能基変性液状ポリブタジエンが用いられる。該官能基としては、ヘテロ原子として酸素原子を含むものが好ましく、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸誘導体基、及びエポキシ基などが挙げられ、これらはそれぞれ1種のみ導入されてもよく、あるいはまた2種以上組み合わせて導入されてもよい。これらの官能基は、シリカ表面のシラノール基(Si−OH)と相互作用があるものであり、すなわち、シラノール基との間で化学結合し得る反応性又は水素結合などの親和性を持つものである。また、これらの官能基は、上記変性スチレンブタジエン共重合体ゴムの官能基との間でも相互作用を有する。そのため、ゴム成分に対する相溶性を向上して耐摩耗性能の向上に寄与するとともに、シリカの分散性を向上して、低発熱性能や湿潤路面におけるグリップ性能を改良することができる。
【0026】
ここで、カルボキシル基としては、例えば、マレイン酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。カルボン酸誘導体基としては、これらカルボン酸由来のエステル基(カルボン酸エステル基)や、マレイン酸やフタル酸などのジカルボン酸の無水物からなる酸無水物基が挙げられる。カルボン酸エステル基としては、上記の(メタ)アクリレート基が好ましい例として挙げられる。
【0027】
このような官能基変性液状ポリブタジエンは、例えば、液状ポリブタジエンを水素添加した水添ポリブタジエンに対して官能基を有する化合物を反応させて化学修飾することにり、分子末端に上記官能基を有する液状ポリブタジエンを得ることができる。但し、その製造方法は特に限定するものではない。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物には、該変性液状ポリブタジエンを、上記ゴム成分100質量部に対して、1〜25質量部にて配合することができる。該変性液状ポリブタジエンは、例えば、プロセスオイルなどのオイルの少なくとも一部を置換して用いることができる。上記のように高ビニル品を水添してなりかつ官能基で化学修飾された変性液状ポリブタジエンを、オイルと置換して上記配合量にて用いることにより、ゴム表面にブリードさせることなく、加工性と低発熱性能と湿潤路面におけるグリップ性能のバランスを改良することができる。変性液状ポリブタジエンの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、5〜20質量部であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記ゴム成分100質量部に対して、シリカを30〜120質量部にて配合することができる。シリカの配合量は、より好ましくは、ゴム成分100質量部に対して30〜100質量部である。
【0030】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも湿式シリカが好ましい。シリカのコロイダル特性は特に限定しないが、BET法による窒素吸着比表面積(BET)150〜250m
2/gであるものが好ましく用いられ、より好ましくは180〜230m
2/gである。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物において、フィラーとしては、上記シリカ単独でもよく、シリカと他のフィラーとのブレンドでもよい。他のフィラーとしては、カーボンブラックが好ましいが、クレー、タルク、マイカなどを用いることもできる。カーボンブラックを含む他のフィラーの配合量は、フィラー全体に占める比率が50質量%以下であることが好ましく、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくはタイヤへの色付け等のためにカーボンブラックを2〜10質量部配合することである。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物には、シリカの分散性を向上するために、シランカップリング剤を配合することができる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカ100質量部に対して2〜25質量部であることが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシランカップリング剤; 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシランカップリング剤; 3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランカップリング剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0033】
本実施形態に係るゴム組成物には、プロセスオイルなどのオイルを配合することができる。本実施形態では、オイルの代わりに上記変性液状ポリブタジエンを用いるため、オイルは必須ではないが、オイルの一部を上記変性液状ポリブタジエンで置換することも好ましい態様と考えられる。その場合のオイルの配合量は、変性液状ポリブタジエンの配合量によっても異なるので特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜40質量部である。
【0034】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記の各成分の他に、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0035】
該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ゴム成分に対し、上記シリカ及び変性液状ポリブタジエンとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0036】
以上よりなる本実施形態に係るゴム組成物は、空気入りタイヤや、防振ゴム、コンベアベルトなどのゴム部分を形成する各種ゴム組成物に用いることができる。好ましくは、タイヤに用いることであり、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。特には、空気入りタイヤのトレッドゴムに用いることが好ましく、低燃費性能に優れたタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0039】
[ゴム成分]
・未変性SBR:ランクセス株式会社製「VSL5025−0HM」(Tg=−14℃、スチレン含量(St)=25質量%、ブタジエン部中の1,2−ビニル結合量(Vi)=68モル%)
・変性SBR1:水酸基末端変性溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム、日本ゼオン株式会社製「Nipol NS616」(Tg=−25℃、St=21質量%、Vi=62モル%)
・変性SBR2:アミノ基及びアルコキシ基末端変性溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム、JSR株式会社製「HPR350」(Tg=−35℃、St=20質量%、Vi=55モル%)
・BR:ブタジエンゴム、宇部興産株式会社製「BR150B」
[液状ポリブタジエン]
・液状ポリブタジエン1:日本曹達株式会社製「BI-3000」(未変性の水添液状ポリブタジエン、Mn=3,300、水添前の1,2−ビニル結合量(Vi)=90モル%、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン2:日本曹達株式会社製「GI-3000」(OH末端変性水添液状ポリブタジエン、Mn=3,100、水添前のVi=90モル%、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン3:日本曹達株式会社製「TEAI-1000」(アクリレート基末端変性水添液状ポリブタジエン、Mn=2,000、水添前のVi=90モル%、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン4:株式会社クラレ製「L-1502」(OH変性水添液状ポリブタジエン、Mn=7,000、水添前のVi=40モル%以下、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン5:JX日鉱日石エネルギー株式会社製「EC1336」(アミン変性液状ポリブタジエン、Mn=1,800 、未水添、Vi=65モル%)
・液状ポリブタジエン6:出光興産株式会社製「Poly pbR45HT」(OH変性液状ポリブタジエン、Mn=2,500、未水添、Vi=20モル%以下)
[その他の成分]
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールAQ」(BET=205m
2/g)
・カップリング剤:スルフィドシランカップリング剤、エボニック・デグサ社製「Si69」
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製「ダイヤブラックN341」
・オイル:昭和シェル石油株式会社製「エキストラクト4号S」
・亜鉛華:三井金属鉱業株式会社製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:住友化学工業株式会社製「アンチゲン6C」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナックSー20」
・ワックス:日本精鑞株式会社製「OZOACE0355」
・硫黄:鶴見化学工業株式会社製「5%油入微粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学工業株式会社製「ソクシノールCZ」
【0040】
各ゴム組成物について、未加硫状態で加工性を評価するとともに、150℃で30分間加硫した所定形状の試験片を用いて、低発熱性能とウェットグリップ性能と表面ブリードを評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0041】
・加工性:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。指数が小さいほど、粘度が小さく、加工性に優れることを意味する。
【0042】
・低発熱性能:JIS K6394に準じて、東洋精機(株)製粘弾性試験機を用いて、温度60℃、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み1%の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低発熱性能の指標として一般に用いられているものであり、該指数が小さいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、即ち低発熱性能に優れ、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0043】
・ウェットグリップ性能:温度を0℃に変え、その他は低発熱性能の評価と同様にして、損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。0℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、湿潤路面に対するグリップ性能の指標として一般に用いられているものであり、該指数が大きいほどtanδが大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0044】
・表面ブリード:加硫ゴム片を40℃に温度調節したギアーオーブン中に入れて3週間放置した後、加硫ゴム片の表面を目視により観察して下記の基準で外観性を評価した。
【0045】
○:ゴム表面は黒くほとんどブリードなし
△:ゴム表面がやや白っぽく、ブリード確認できる
×:ゴム表面が白く濁り、明らかにブリードあり。
【0046】
結果は、表1に示す通りであり、未変性SBRを用いた比較例1に対し、変性SBRを用いた比較例2,3では、低発熱性能は改善されたものの、加工性及びウェットグリップ性能に劣っていた。該比較例2に対して、オイルの一部を未変性の水添液状ポリブタジエンで置換した比較例4では、加工性及びウェットグリップ性能は改善されたものの、変性SBRによる低発熱性能が損なわれていた。このことから、水添液状ポリブタジエンを用いた場合であっても、官能基で変性してないものでは、低発熱性能の改善効果が得られないことがわかる。
【0047】
比較例5では、液状ポリブタジエンとして、官能基変性の水添ポリブタジエンを用いているが、低ビニル品を水添したものであるため、ゴム表面にブリードが生じた。比較例6では、液状ポリブタジエンとして、官能基変性ポリブタジエンを用いているが、水添していないものであったため、ウェットグリップ性能に劣っていた。比較例7では、液状ポリブタジエンとして、低ビニル品でかつ官能基変性のポリブタジエンを用いており、加工性及び低発熱性能には優れるものの、ウェットグリップ性能に劣っていた。また、比較例7では、低ビニル品を用いているがゴム表面へのブリードは見られなかった。このことから、低ビニル品は、水添しなければ、表面ブリードは生じないものの、水添した場合に比べてウェットグリップ性能に劣ることがわかる。
【0048】
比較例8では、高ビニル品を水添した官能基変性液状ポリブタジエンを用いたものの、ゴム成分として未変性SBRを用いたため、低発熱性能の改良効果に劣っていた。
【0049】
これに対し、高ビニル品を水添した官能基変性液状ポリブタジエンでオイルの一部を置換するとともに、ゴム成分として変性SBRを用いた実施例1〜6であると、ゴム表面にブリードさせることなく、加工性と低発熱性能とウェットグリップ性能がバランス良く改良されていた。すなわち、実施例1〜6では、比較例1に対して、ウェットグリップ性能を維持ないし向上しつつ、加工性と低発熱性能が改良されていた。背反性能である低発熱性能とウェットグリップ性能について、一方の性能を維持ないし改良しながら、他方の性能を改良することができ、しかも加工性も改良されており、そのため、これら3性能がバランス良く改良されていると言える。
【0050】
【表1】