特許第5973270号(P5973270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5973270-コンクリートの養生方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973270
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】コンクリートの養生方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20160809BHJP
   E04G 9/10 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   E04G21/02 104
   E04G9/10 101B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-158273(P2012-158273)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-20069(P2014-20069A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】熊部 淳
(72)【発明者】
【氏名】柳井 修司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢三
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 有寿
(72)【発明者】
【氏名】温品 達也
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−049371(JP,A)
【文献】 特開平01−111961(JP,A)
【文献】 実開昭63−073445(JP,U)
【文献】 特開平01−111959(JP,A)
【文献】 実開昭57−198245(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E04G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠の内面に養生シートを貼付してコンクリートを打設し、打設されたコンクリートの硬化後に前記型枠を解体した後に、前記養生シートを前記コンクリートの表面に接着した状態で残置するコンクリートの養生方法であって、前記養生シートはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニルのフィルムのいずれかから選択される合成樹脂製シートが積層されたもので、積層させる合成樹脂製シート相互の接着力は合成樹脂製シートコンクリートの表面に接着する接着力よりも弱くし、型枠を解体後は一番上の合成樹脂製シートのみをコンクリートの表面に接着した状態で残置することを特徴とするコンクリートの養生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物には、コンクリートの硬化後に所定の強度や耐久性を発揮することが要求されている。コンクリートは、硬化中に低温、乾燥、急激な温度変化などの有害な影響を受けると、強度や耐久性が低下する。このため、コンクリート表面を保護して、強度や耐久性を十分に発揮させるべく、養生を行う必要がある。
【0003】
この種のコンクリートの養生方法では、コンクリート表面を適度な湿潤状態に保つことが望ましく、従来から行われている養生方法は、せき板を長期間存置する方法と、コンクリートが所定の強度になった時点で、せき板を撤去した後に、養生を行う方法とに大別される。
【0004】
このうち、前者のせき板を長期間存置する養生方法は、型枠の転用が制限されるので、施工性に劣る。加えて、型枠を長期間存置した場合、型枠材(木製)のアク等が付着するため、構造物の美観を損なうおそれがある。
【0005】
後者のせき板を撤去した後に、養生を行う養生方法には、(1)散水を行って、コンクリート表面を湿潤状態に保つ散水養生方法、(2)コンクリート表面にパラフィンなどで膜を形成し、水の蒸発を防ぐ膜養生方法がある。
【0006】
(1)の散水を行う養生方法では、散水を適正に行うと、長期間湿潤状態に保つこともできるが、乾燥を避けるためには散水を適宜行わないため、かなりの施工手間を要する。加えて、コンクリートの硬化過程において構造物内部の温度が高い時期に低温の散水を行った場合、構造物の内外温度差が顕著となり、表面にひび割れを発生させる原因となる場合もある。
【0007】
さらに、(2)の膜養生方法では、コンクリート体の表面に被膜を形成するため、垂直壁状のコンクリート体に採用すると、被膜形成剤が垂れるなどの問題があって、均一な被膜を形成することが難しく、長期間一定の湿潤状態を保つことが困難であった。
【0008】
そこで、直射日光や風などによる表面の乾燥を防止するために、シートで覆う養生方法が行われ、型枠を取り外した後にビニールシートでコンクリート表面を覆う。
【0009】
このように、型枠を取り外した後に養生を行うと、作業工程が増えて煩雑になるだけでなく、手間と労力もかかるので、一般に、型枠を取り外した後の養生が、軽くみられる傾向にあって、コンクリートの品質を低下させる一因となっていた。
【0010】
下記特許文献は、養生作業の省力化が可能になるとともに、コンクリートの品質を向上させることができる養生方法を提供するものとして、型枠の内面に養生シートを貼付してコンクリートを打設し、打設されたコンクリートの硬化後に前記型枠を解体した後に、前記養生シートを前記コンクリートの表面に接着した状態で残置するコンクリートの養生方法である。
【特許文献1】特許第3047799号公報
【0011】
この特許文献1によれば、型枠を解体した後に、養生シートをコンクリートの表面に接着した状態で残置し、この養生シートがあるので、コンクリートが暑中下の日射や寒中期の低温などの温度変化から遮断されるとともに、乾燥を防止して、湿潤状態を維持することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前記特許文献1においても、養生シートをコンクリートの表面に接着した状態で残置した後での脱型後の型枠は、新たな養生シートを再度内面に貼付してセットしなければならず、型枠の迅速な転用はできなかった。
【0013】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、コンクリート型枠を取り外したら、そのままで更なるシート等を使用することなくコンクリート面の湿潤養生が行われ、コンクリートの品質を向上させるための養生工の省力化が図れるコンクリートの養生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、型枠の内面に養生シートを貼付してコンクリートを打設し、打設されたコンクリートの硬化後に前記型枠を解体した後に、前記養生シートを前記コンクリートの表面に接着した状態で残置するコンクリートの養生方法であって、前記養生シートはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニルのフィルムのいずれかから選択される合成樹脂製シートが積層されたもので、積層させる合成樹脂製シート相互の接着力は合成樹脂製シートコンクリートの表面に接着する接着力よりも弱くし、型枠を解体後は一番上の合成樹脂製シートのみをコンクリートの表面に接着した状態で残置することを要旨とするものである。
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、コンクリートの養生のためにビニールシート等でコンクリート表面を覆う作業は煩雑であり、コンクリート型枠を取り外したら、そのままで更なるシート等を使用することなくコンクリート面の湿潤養生が行うことができる。また、コンクリート打設型枠に養生シートを予め取り付けておくことにより、脱型後の封印養生を継続させることが可能となる。
【0016】
そして、養生シートは、不透水性フィルムタイプでミルフィーユ状に多層に仕込まれているものとすれば、1枚ずつ剥がしていくことで、型枠の転用を複数行うことができる。さらに、型枠面が毎回更新されるので、型枠面の清掃を省略できる。
【0017】
また、合成樹脂製シートがコンクリートの表面に接着する接着力が積層させる合成樹脂製シート相互の積層の接着力よりもまさるので、型枠を脱型する際に手で積極的に剥がすことなく一番上の合成樹脂製シートが積層から剥がれ、コンクリートの表面側に残置される。いわゆる、手で剥がす行為を行わないですむ。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように本発明のコンクリートの養生方法は、コンクリート型枠を取り外したら、そのままで更なるシート等を使用することなくコンクリート面の湿潤養生が行われ、コンクリートの品質を向上させるための養生工の省力化が図れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリートの養生方法の1実施形態を示す縦断側面図で、図中1は型枠である。型枠1は合板型枠、鋼製型枠、合成樹脂製型枠のいずれを問わない。合板型枠の場合は、通常あるように、セパレータ2で支承するもので、図示の詳細は省略するが、型枠1の外側には押えとして型枠パイプやバタパイプがホームタイおよび三型リブ座により固定される。
【0020】
本発明は、型枠1の内面(コンクリート打設側)に養生シート3を貼付しておく。また、養生シート3は、合成樹脂製シート3aを積層させたものとする。
【0021】
該合成樹脂製シート3aとしては、一般にクリアファイルと称されている書類等を収納するためのファイルに用いる多少の硬さを有するフィルムシートを用いる。
【0022】
合成樹脂製シート3aの材質は、ポリプロピレン製のフィルムが好適であるが、これに限定されず、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニルのフィルムを使用することもできる。
【0023】
合成樹脂製シート3aを積層させるに際しては、相互に重ね合わせるだけで接着剤材を使用しなくても静電気により相互に接着するが、ごく弱い接着力の接着剤を介在させてもよい。
【0024】
また、積層させる合成樹脂製シート3aの端は切り揃えるが、一枚づつ剥がしやすいように、図3図4に示すように剥がししろ3bを耳として形成してもよい。図3は剥がししろ3b間に隙間を介在させた場合、図4は段違いにして、外側から突出長を多くして順に摘み易くした場合である。この剥がししろ3bは多少厚手のシートとして形成するか、紙等の部材で形成する。
【0025】
合成樹脂製シート3aを積層させた養生シート3の型枠1の内面への取付方法は特に限定はないが、接着、クリップ止め、ホルダー止め等が考えられる。この取付は型枠1の工場出荷時に行う場合と現場で行う場合の双方があり、現場で行う場合、セパレータ2を使用することに対応できるように型枠1に穴を開けるのに養生シート3にも予めセパレータ2の貫通用の穴をあけておく。
【0026】
前記内面に養生シート3を貼付した型枠1を用いてコンクリート4を打設し、打設されたコンクリート4の硬化後に前記型枠1を解体する。
【0027】
その際、積層させる養生シート3の一番上の合成樹脂製シート3aのみをコンクリートの表面に接着した状態で残置する。コンクリートが硬化する際、コンクリートと合成樹脂製シート3aとの界面に付着力が発生するからである。
【0028】
この残置は一番上の合成樹脂製シート3aのみを手で積層から剥がして、コンクリート4側に貼り付けてもいいが、積層させる養生シート3の合成樹脂製シート3a相互の積層の接着力は合成樹脂製シート3aがコンクリート4の表面に接着する接着力よりも弱くしておけば、手で剥がさなくて、型枠1を脱型する時に、一番上の合成樹脂製シート3aのみがコンクリート4の表面に接着した状態で残置される。
【0029】
前記剥がししろ3bがある場合は、これを掴んで一番上の合成樹脂製シート3aを剥がすことができ、また、コンクリート4が硬化して養生の必要がなくなった場合にコンクリート4の表面から合成樹脂製シート3aを剥がす場合にも剥がししろ3bを掴んで行うことができる。
【0030】
型枠1には残りの合成樹脂製シート3aが積層した養生シート3が付いており、けれん等の清掃作業を行うことなく、そのまますぐに転用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のコンクリートの養生方法の1実施形態を示す型枠設置時の縦断側面図である。
図2】本発明のコンクリートの養生方法の1実施形態を示す型枠脱型後縦断側面図である。
図3】本発明のコンクリートの養生方法で使用する養生シートの応用例を示す要部の縦断側面図である。
図4】本発明のコンクリートの養生方法で使用する養生シートの他の応用例を示す要部の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…型枠 2…セパレータ
3…養生シート 3a…合成樹脂製シート
3b…剥がししろ 4…コンクリート
図1
図2
図3
図4