(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973274
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電気分配システム
(51)【国際特許分類】
H01H 59/00 20060101AFI20160809BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
H01H59/00
B81B3/00
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-164288(P2012-164288)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-232391(P2013-232391A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】13/194,002
(32)【優先日】2011年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・フランチェスコ・アイミ
(72)【発明者】
【氏名】アルーン・ビルパクシャ・ゴウダ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンジュン・ジャング
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/117051(WO,A1)
【文献】
米国特許第04674180(US,A)
【文献】
特開2004−214112(JP,A)
【文献】
国際公開第03/015128(WO,A1)
【文献】
特開2004−127871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 59/00
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導体と、
第2の導体と、
接続スパンに沿って前記第1の導体と第2の導体の間に並列電気接続を形成する複数の伝導経路と
を備える装置であって、前記伝導経路の各々がそれぞれ同様な公称電気抵抗を有し、
前記第1の導体および第2の導体のそれぞれの断面積が、前記接続スパンに沿って反対方向に減少している、装置。
【請求項2】
前記複数の伝導経路が、N個の伝導経路から成り、前記第1の導体および第2の導体のそれぞれの断面積が、前記接続スパンに沿って1つの伝導経路から隣接する伝導経路に移るとき大きさA/Nだけ減少し、Aが、前記接続スパンの端における前記第1の導体および第2の導体のそれぞれの断面積の大きさである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1の導体および第2の導体および前記伝導経路が、電流が前記第1の導体から前記第2の導体へ選択的に流れるように電流を選択的に伝導するように構成されており、さらに、前記第1の導体の断面積が、前記接続スパンに沿って電流の流れの方向に減少し、さらに前記第2の導体の断面積が、前記接続スパンに沿って電流の流れの方向に増加している、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の導体および第2の導体の各々が、それぞれ第1および第2の抵抗率を有し、前記伝導経路の少なくとも1つの経路抵抗率が、前記第1の抵抗率の約10倍以下でかつ前記第2の抵抗率の約10倍以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第1の導体および第2の導体が、長さ方向に沿って細長く、前記伝導経路の各々が、前記長さ方向に直交する成分を有する方向にそれぞれ延びている、請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記伝導経路の各々が、一緒に駆動されるように構成されているスイッチをそれぞれ含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
第1のトレースと、
第2のトレースと、
接続スパンに沿って前記第1のトレースと第2のトレースの間に並列電気接続を形成する複数の伝導経路と
を備える装置であって、前記伝導経路の各々がそれぞれ同様な公称電気抵抗を有し、
前記第1のトレースおよび第2のトレースのそれぞれの断面積が、前記接続スパンに沿って反対方向に減少している、装置。
【請求項8】
前記伝導経路各々が、電気的に直列に接続されかつ一緒に駆動されるように構成された一対の実質的に同様なMEMSスイッチをそれぞれ含む、請求項7記載の装置。
【請求項9】
各対のMEMSスイッチをそれぞれ相互接続する中間導体をさらに備え、前記中間導体が、より高い抵抗の領域によってそれぞれ分離されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記MEMSスイッチが、カンチレバーをそれぞれ含み、前記中間導体がアンカ構造を含み、このアンカ構造から前記カンチレバーが延びている、請求項9の装置。
【請求項11】
主表面を有する基板をさらに備え、前記第1のトレースおよび第2のトレースおよび前記伝導経路が、前記主表面によって支持されている、請求項7乃至10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記第1のトレースおよび第2のトレースの各々が、前記主表面に平行な長さ方向に沿って細長く、前記トレースの各々が、前記主表面に対して垂直な実質的に等しい厚さを有し、さらに前記トレースが、前記主表面に対して平行でかつ前記長さ方向に対して横方向のそれぞれの幅を有し、前記幅が前記接続スパンに沿って反対方向に減少している、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記複数の伝導経路が、N個の伝導経路から成り、前記第1のトレースおよび第2のトレースの幅が、前記接続スパンに沿って1つの伝導経路から隣接する伝導経路に移るとき大きさA/Nだけ減少し、Aが、前記接続スパンから離れた前記第1のトレースおよび第2のトレースのそれぞれの断面積の大きさである、請求項12記載の装置。
【請求項14】
膜を基板上に堆積させるステップと、
前記膜をパターニングして第1および第2のトレースを形成するステップと、
複数のスイッチが、接続スパンに沿って前記第1のトレースと第2のトレースの間に並列電気接続を形成するように構成されるように、前記基板上に前記複数のスイッチを同時に微差加工するステップと
を含む方法であって、
前記第1のトレースおよび第2のトレースのそれぞれの断面積が前記接続スパンに沿って反対方向に減少するように、前記膜がパターニングされる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分配システムなどの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分配システムは、しばしば電圧供給源などの供給源から1つまたは複数の電気負荷に電気エネルギーを分配する働きをするシステムである。電気分配システムは、例えば、大電流を伝導する働きをする一連のバスバー、小電流を伝導するように構成された電線などの他の導体、様々な電流伝導部品(バスバー、電線)間に電流分配を選択的に行うことができるようにする電気スイッチおよびスイッチギヤ、エネルギー貯蔵デバイス(例えば、電池、コンデンサ、その他)、および/または抵抗器、誘導子、およびトランジスタなどの能動および受動部品を含むことができる。
【0003】
いくつかの場合には、電気分配システムは、並列配列に接続された複数の導体を含むことができる。並列導体に比較的一様に電流を分配することによって、並列導体の全電流伝導能力は、非一様電流分配に比べて高くなり得る。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、電気分配システムなどの装置が提供される。この装置は、第1の導体と第2の導体を含むことができる。複数の伝導経路が、接続スパンに沿って第1の導体と第2の導体の間に並列電気接続を形成することができ、各伝導経路はそれぞれ同様な公称電気抵抗を有している。第1の導体および第2の導体のそれぞれの断面積は、前記接続スパンに沿って反対方向に減少することができる。
【0005】
他の態様では、電気分配システムなどの装置が提供される。この装置は、第1のトレースと第2のトレースを含むことができる。複数の伝導経路が、接続スパンに沿って第1のトレースと第2のトレースの間に並列電気接続を形成することができ、各伝導経路はそれぞれ同様な公称電気抵抗を有している。第1のトレースおよび第2のトレースのそれぞれの断面積は、前記接続スパンに沿って反対方向に減少することができる。
【0006】
さらに他の態様では、例えば電気分配システムを製作する方法が提供される。この方法は、基板上に膜を堆積させるステップを含むことができる。この膜をパターニングして第1および第2のトレースを形成することができる。複数のスイッチが接続スパンに沿って第1のトレースと第2のトレースの間に並列電気接続を形成するように構成されるように、それらの複数のスイッチを基板上に同時に微細加工することができる。第1のトレースおよび第2のトレースのそれぞれの断面積が接続スパンに沿って反対方向に減少するように、その膜をパターニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す透視図である。
【
図2】
図1の電気分配システムを含む回路を示す回路図である。
【
図3】
図1の電気分配システムを示す側面図である。
【
図4】
図1の面4−4に沿った
図1の電気分配システムの断面図である。
【
図5】
図1の電気分配システムを示す平面図である。
【
図6】他の例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す平面図である。
【
図7】さらにまた他の例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す平面図である。
【
図8】
図1の電気分配システムを示す平面図であり、この電気分配システムの電流経路を模式的に示している。
【
図9】従来の電気分配システムを示す平面図である。
【
図10】
図9の電気分配システムを示す平面図であり、この電気分配システムの電流経路を模式的に示している。
【
図11】さらに他の例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す平面図である。
【
図12】さらにまた他の例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す平面図である。
【
図14】さらに他の例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す平面図である。
【
図16】
図1の電気分配システムを製作する方法を表す模式的な側面図である。
【
図17】
図1の電気分配システムを製作する方法を表す模式的な側面図である。
【
図18】
図1の電気分配システムを製作する方法を表す模式的な側面図である。
【
図19】
図1の電気分配システムを製作する方法を表す模式的な側面図である。
【
図20】
図1の電気分配システムを製作する方法を表す模式的な側面図である。
【
図21】
図1の電気分配システムを製作する方法を表す模式的な側面図である。
【
図22】さらにまた他の例の実施形態に従って構成された電気分配システムを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例の実施形態が、以下で添付の図面に関連して詳細に説明され、図面では、同じ参照数字は図面全体を通して同じ部分を示している。これらの実施形態のいくつかは、上述および他の要求に対処することができる。
【0009】
図1〜5を参照すると、電気分配システム100などの装置が示されている。システム100は、第1のトレース102などの第1の導体および第2のトレース104などの第2の導体を含むことができる。第1のトレース102は、例えば入力バス106に接続することができ、第2のトレース104は、出力バス108に接続することができる。入力および出力バス106、108は、電圧供給源110などのエネルギー源の相対する側に接続することができる。基板112は、トレース102、104およびバス106、108を支持するように働く主表面114を含むことができる。一実施形態では、基板112は、例えばシリコンウェーハを含むことができ、トレース102、104および/またはバス106、108は、厚さ(基板に対して垂直方向の)がマイクロメートルからナノメートルの範囲で横寸法がミリメートルからナノメートルの範囲のメタライゼーション(例えば、銅)を含むことができる。
【0010】
複数の伝導経路116は、第1と第2のトレース102、104の相対する長さの間に並列電気接続を形成することができる。例えば、第1および第2のトレース102、104は、表面114に平行な長さ方向Lに沿って延びていてよく、各伝導経路は、この長さ方向に直交する成分を有する方向にそれぞれ延びることができる。このようにして、電力は、電圧供給源110から入力バス106を通って第1のトレース102に送られ、それから伝導経路116を通って第2のトレース104および出力バス108に送られる。トレース102、104の相対する部分の間に伝導経路116が延びている長さは、接続スパン118と呼ばれる。全ての伝導経路116は、それぞれ同様な公称電気抵抗を有するように構成される。すなわち、電気入力および出力の構成が同様であるとすれば、個々に分析される各伝導経路116は、ほぼ同様な電気抵抗を示すと考えられるだろう。
【0011】
各伝導経路116は、スイッチ120をそれぞれ含むことができる。各スイッチ120は、例えば、一般に微小電気機械システム(MEMS)スイッチと呼ばれるものであってよい。MEMSスイッチ120は、1つのトレース102に接続するアンカ構造124から延びるカンチレバー122をそれぞれ含むことができる。いくつかの実施形態では、スイッチ120(および伝導経路116の全部)は、銅などの金属で形成されていてよい。作動パッド126は、電荷を選択的に受け取るように構成され、帯電されたとき静電力によってカンチレバー122を他のトレース104と接触させるように配置される(これはスイッチの「閉」位置と呼ばれ、他方は「開」位置である)。MEMSスイッチ120は、互いに実質的に同様であってよい。例えば、MEMSスイッチは、規模が比較的小さく、また、構造が全て実質的に同じような複数のスイッチをバッチ処理することができる標準的な微細加工技術によって形成されることが多い。MEMSスイッチ120は、一緒に駆動されるように構成可能であり、このようにして、スイッチのアレイが「スイッチ素子」として働いて、電力を電圧供給源110から伝導経路116を通して選択的に供給することができる。
【0012】
トレース102、104は、それぞれの断面積A(長さ方向Lに対して横方向に測定された)が接続スパン118に沿って反対方向に減少するように構成することができる。例えば、トレース102、104は、厚さt(表面114に対して垂直に測定された)が一定で、幅W(長さ方向Lと表面114に垂直な方向との両方に対して横方向に測定された)が接続スパン118に沿って反対方向に減少することができる。いくつかの実施形態では、トレース102、104の幅Wは、接続スパン118に沿って連続的に減少することができる。例えば、表面114に対して垂直な方向に沿ってトレース102、104を見るとき、これらのトレースは、三角形であってよい(例えば、
図1および5に示されるような直角三角形、
図6に示されるような正三角形、その他)。
図7を参照すると、いくつかの実施形態では、トレース102、104の幅Wは、接続スパン118に沿って不連続に階段的に減少することができる。全体的に、トレース102、104の形は、変化する形および/または厚さのトレースを利用することを含めて、接続スパン118に沿った断面積Aの減少の目標を達成するように様々なやり方で選ぶことができる。
【0013】
図2および8を参照にすると、上述のように、電力は、電圧供給源110から入力バス106を通って第1のトレース102に、次にスイッチ120(このスイッチが閉位置にあるとき)を通って第2のトレース104および出力バス108に送ることができる。そのような場合には、電流Iは、同じ経路に沿って流れることができる。第1のトレース102の断面積は、接続スパン118に沿って電流の流れの方向に減少することができる。代わりに、第2のトレース104の断面積は、接続スパン118に沿って電流の流れの方向に増加することができる。
【0014】
上述の説明に従って構成された電気分配システム(例えば、
図1の電気分配システム100)は、従来の電気分配システムよりも一様な電流分配を示すことができる。例えば、
図9を参照すると、電気分配システム200の一部が示されている。このシステム200は、入力バス(図示されない)から電流を受け取るように構成された第1のトレース202と、出力バス(図示されない)に電流を供給するように構成された第2のトレース204を含むことができる。これらのトレースは、金属(例えば、銅)などの導電材料で形成されていてよい。トレース202、204の幅Wおよび厚さ(
図9でページから外へ測定された)は、これらのトレースの断面積が比較的一様であるようにほぼ一様であってよい。
【0015】
複数の伝導経路216は、第1および第2のトレース202、204の相対する長さの間に並列電気接続を形成することができる。全ての伝導経路216は、それぞれ同様な公称電気抵抗を持つように構成される(同様な構造のスイッチのアレイを使用する従来の電気分配システムに関して、一般的なシナリオ)。例えば、伝導経路216は、金属(例えば、銅)で形成することができる。
図10を参照すると、動作中に、電流Iは、第1のトレース202に沿って流れ、伝導経路216を通り、それから第2のトレース204を通って流れることができる。そのようなシステムでは、伝導経路216の抵抗率が、トレース202、204の抵抗率とほぼ同じオーダの大きさである場合(例えば、トレースと伝導経路の両方が、銅のような金属で形成されている場合)、電流が様々な伝導経路の間にいくらか不均一に分配される傾向があることを、出願者は発見した。この不均一分配が、伝導経路216のアレイの全電流伝導能力を制限することができる。
【0016】
電気分配システム200とは対照的に、接続スパンに沿って反対方向に減少する断面積を有するトレースを作るようにトレースの形を適切に構成することによって、それぞれの伝導経路により一様な電流分配を実現することができることを、出願者は発見した。例えば、
図11を参照すると、他の例の実施形態に従って構成された電気分配システム300が示されている。電気分配システム300は、トレース302、304と、接続スパン318に沿ってこれらのトレースを接続する伝導経路316とを含むことができる。トレース302、304の厚さ(
図11でページから外へ測定された)は一定であり、幅Wは接続スパンに沿って反対方向に減少することができる。電気分配システム300は、N個の伝導経路を有することができる(
図11では、N=6)。接続スパン318の各端330で、トレース302、304のそれぞれの1つの幅はW
0であってよい。さらに、トレース302、304の幅は、接続スパン318に沿って1つの伝導経路316から隣接する伝導経路に移るとき、大きさW
0/Nだけ減少することができる。例えば、特定の伝導経路316aおよび316bを考えると、第1のトレース302の幅は、伝導経路316aから伝導経路316bに移るときW
0/6だけ減少し、また第2のトレース304の幅は、伝導経路316bから伝導経路316aに移るときW
0/6だけ減少する。トレース幅のこの減少は、接続スパン318に沿って連続的であるかもしれなし(例えば、
図5に示されるように)、または不連続なインクリメントで実現されるかもしれない(
図11に示されるように)。トレース302、304の断面積の他の減少率もまた可能であり、選ばれる減少率は、システム300の電気特性並びに回路配置に対する任意の制限(例えば、電気分配システムが集積回路の一部である場合にはルーティング要件)に依存する。
【0017】
伝導経路の実効抵抗がトレースよりも小さいかトレースと同じオーダの大きさであるとき、より一様な電流分配を伝導経路316に生じさせるようにトレース302、304を形作ることが、いっそう重要になる可能性がある。すなわち、伝導経路316が比較的高い抵抗を表す場合には、電流はトレース302、304に沿って速く流れ、伝導経路の間にかなり均等に分配される。しかし、伝導経路316が表す抵抗が、トレース302、304が表す抵抗と同様であるか小さい場合には、電流は、トレースに沿って十分に分配されることなく伝導経路を流れることができる。
【0018】
図12および13を参照すると、他の例の実施形態に従って構成された電気分配システム400のいくつかの図が示されている。電気分配システム400は、トレース402、404と、接続スパン418に沿ってこれらのトレースを接続する伝導経路416とを含むことができる。各伝導経路416は、一対のスイッチ、例えば実質的に同様なMEMSスイッチ420を含むことができる。MEMSスイッチ420は、アンカ構造424から延びるカンチレバー422をそれぞれ含むことができる。
【0019】
各伝導経路416のスイッチ420は、電気的に直列に接続され(例えば、アンカ構造424が中間導体432中に含まれている
図13に示される「背中合わせ」構成で)、かつ一緒に駆動されるように構成されてもよい。中間導体432は、様々なMEMSスイッチ420をそれぞれ相互接続するように働くことができ、さらにまた、両方のスイッチ420が開いて各伝導経路416がトレース402、404および電気分配システム400の残りのものから電気的に分離されたとき、接地(接続は図示されていない)に選択的に接続して(例えば、スイッチを通して)、伝導経路416に電荷の蓄積が起こるのを防ぐことができる。
図14および15を参照すると、いくつかの実施形態では、トレース502と504の間に延びるMEMSスイッチ520の各対は、それぞれの中間導体532によって相互接続され、隣接する中間導体は、より高い抵抗の領域534によって電気的に接続されている。より高い抵抗の領域534を導入することによって、スイッチ520が閉位置にあるとき、電流の大部分は、中間導体532を通ってではなくトレース502、504を通って導かれるようになる。
【0020】
図1を参照すると、上述のように、トレース102、104、バス106、108、およびMEMSスイッチ120を含めて電気分配システム100の様々な部品の多くは、薄膜堆積および/または成長、フォトリソグラフィ、および選択的成長および/またはエッチングによる膜パターニングを含めて標準的な微細加工技術によって形成することができる。このようにして、バッチ処理を使用して一様な厚さを有するようにトレース102、104を一度に形成すること、および、スイッチのアレイ中の全てのスイッチが形状および組成の点で実質的に同様であるようにスイッチ120を一緒に製作することが可能であることがある。例えば、
図1および16〜21を参照すると、電気分配システム100を製作するプロセスは、例えば物理的または化学的蒸着によって基板112に膜140を堆積させることから始まることができる(例えば、
図16を参照されたい)。一実施形態では、膜140は、銅などの金属膜であってよい。膜140を例えばフォトリソグラフィでパターニングして、それぞれの断面積が反対方向に減少している第1および第2のトレース102、104を形成することができる(例えば、
図17を参照されたい)。トレース102、104より前か後かのどちらかで、複数のMEMSスイッチ120を基板上に同時に微細加工することができる。例えば、犠牲層142をパターニングし(例えば、
図18を参照されたい)、それからこの犠牲層の上に膜144を堆積させることができる(例えば、
図19を参照されたい)。膜144をパターニングしてスイッチ120を形成することができ(例えば、
図20を参照されたい)、このスイッチ120は、接続スパン118に沿って第1と第2のトレース102、104の間に並列電気接続を形成するように構成することができる。その後で、犠牲層142を除去することができる(例えば、
図21を参照されたい)。
【0021】
本明細書で本発明の或る特徴だけを図示し説明したが、多くの修正物および変化物が当業者の心に浮かぶであろう。例えば、上述の議論は、伝導経路のアレイで相互接続される単一対のトレースに焦点を合わせたが、
図22を参照すると、いくつかの実施形態では、各組の隣接するトレース602、604が、アレイ650として配列された複数の伝導経路616によって接続されることによって、トレース602、604のアレイが相互接続されることができる。各伝導経路616は、背中合わせ構成に配列された一対のスイッチ620を含むことができる。単一中間導体632は、全てのアレイ650の全てのスイッチ620を相互接続するように働くことができる。したがって、理解されるべきことであるが、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれるような全ての修正物および変化物に及ぶことが意図されている。
【符号の説明】
【0022】
100 電気分配システム
102 第1のトレース
104 第2のトレース
106 入力バス
108 出力バス
112 基板
114 主表面
116 伝導経路
118 接続スパン
110 電圧供給源
120 MEMSスイッチ
122 カンチレバー
124 アンカ構造
126 アクチュエータパッド
200 電気分配システム
202 第1のトレース
204 第2のトレース
216 伝導経路
300 電気分配システム
302 第1のトレース
304 第2のトレース
318 接続スパン
400 電気分配システム
402、404 トレース
416 伝導経路
418 接続スパン
420 MEMSスイッチ
422 カンチレバー
424 アンカ構造
500 伝導経路
420 MEMSスイッチ
424 アンカ構造
432 中間導体
502、504 トレース
520 MEMSスイッチ
532 中間導体
534 より高い抵抗の領域
140 膜
142 犠牲層
144 膜
602、604 トレース
616 伝導経路
620 スイッチ
632 中間導体
A トレースの断面積
W
0 接続の端でのトレースの幅