(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、生体組織内で局所的に存在するグルコース、コレステロール、中性脂肪、尿酸、血中蛋白質、総アルブミン、総グルブリン、赤血球濃度等の体液成分及び水分の各物質量の測定を手軽に行うためには、生体組織に対して低侵襲性である近赤外線を用いた分光光度測定法が最適である。しかしながら、上記の従来技術では、以下のように、生体組織内部で深さ方向に局所的に存在する前記物質量や水分量の定量的な測定を精度良く行うことができないという問題があった。
【0014】
前記の肌水分計は、肌表面の水分を測定する装置であるが、皮下数mmから数cmにある特定領域の水分量を測定することは困難である。
【0015】
前記の特許文献2及び3に記載の測定方法は、被測定部位からの反射光を利用する際に、反射光が被測定部位のどの深さから得られるのかを特定することができず、深さ方向で局所的に存在する前記の物質量を把握することが難しい。前記の特許文献3の
図2には、反射ビームを前後方向に移動させて、反射ビームの浸透角度を好みに応じて変えることができると記載されているものの、反射ビームの移動は高精度の調整が必要であるため熟練を要し、簡便な測定方法とは言えない。加えて、反射ビームの浸透角度を変える場合は反射光を観測する場所が被測定部位の水平方向でわずかずつ異なるため、局所的に存在する前記の物質量を高精度で測定することは光学的に制約がある。
【0016】
また、前記の特許文献4に記載の酸素飽和度測定方法と装置は、測定対象が酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの2種類であるときに適用することができるが、生体組織内部の体液成分や水分のように1種類に限られる場合には測定精度が大きく低下するという問題がある。これは、皮下の特定の深さの位置にある正規焦点面と非正規焦点面の領域で、入射光が減衰する要素、例えば両者の面の間で発生する「光反射」による光減衰と「光吸収」による光減衰を区別できないためである。前記の特許文献4に記載されているように酸素飽和度の算出であれば、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの両方で「光反射」による光減衰が発生するため、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比を算出する際に、この問題は相殺されるか、若しくは両者の面の反射による入射光強度の比が既知であるため考慮しなくてもよくなる。しかし、体液成分量や水分量の測定は、1種類の測定対象の量から算出する必要があるため、「光反射」による光減衰が相殺できず、「光反射」と「光吸収」による光減衰が区別できないという問題を解決する方法が必要となる。
さらに、前記の特許文献4に記載の「反射光がどの深さ位置から反射しているかを把握する技術」は、フーリエ解析による複雑な計測手段と計算手順が必要になる。
【0017】
前記の特許文献5に記載の共焦点光学系は、反射光がどの深さ位置から反射しているか把握できる光学系であり、対物レンズの作る共焦点光学系の焦点面の位置が光波長によって異なる色収差の性質を利用するため、複数波長光を入射光として使用している。しかし、この技術を体液成分量や水分量測定に適用するには、異なる波長の光同士の入射光強度を等しくする技術が必要である。使用できる波長が、体液成分や水分子のように特異的に吸収される波長に限られる場合は、入射光強度が等しくなる複数波長光を利用することはできず、体液成分量や水分量の測定を行う光学系として適当なものではない。
【0018】
このように、生体組織内部の体液成分や水分等の物質量を測定するためには、まず、生体組織内部の情報を得ることが前提条件の課題となる。その前提条件の第一の課題は、共焦点光学系を使って、任意の深さ位置にある正規焦点面だけから発する正規反射光の強度と、非正規焦点面だけから発する非正規反射光の強度を、同時に取得できないことである。
【0019】
前記の前提条件の第二の課題は、近赤外線が入射光として体内に侵入したとき、生体組織の表面から深さに依存して入射光が減衰する要因は、体液成分や水分子による「光吸収」以外に「反射」があり、入射光が減衰する要因を「光吸収」だけに出来ないことである。
【0020】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、生体組織内部に局所的に存在する水分を含む各種の物質量を、非侵襲で簡便に、且つ精度良く測定することができる生体組織内に存在する物質量の測定方法及びその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、近赤外線を用いて各種の物質量を測定することに着目して鋭意検討した結果、生体組織内部を透過して特定部位から反射する近赤外線を受光して特定部位間に存在する各種の物質量を測定するととともに、共焦点光学系を用いて任意の異なる深さにある2個の焦点面(正規焦点面と非正規焦点面)の反射光を同時に又は時系列的に取得する技術と、正規焦点面と非正規焦点面の領域で発生する「光吸収」と「光反射」による光減衰を区別して、「光反射」の要素を相殺して「光吸収」だけの要素にする技術とを組み合わせることができる最適な測定方法と測定装置の構成を見出すことによって上記の課題を解決できることが分かり本発明に到った。
【0022】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、生体組織内に存在し、近赤外域に特異的な光吸収を有する物質の含有量の測定方法であって、次の(A)、(B)、(C)及び(D)、すなわち(A)前記の特異的な光吸収を示す波長の少なくとも1つの波長λ1を測定用波長とし、前記の物質に光吸収されにくい波長の少なくとも1つの波長λ2を補正用波長として選び、生体組織の表面から深さの異なる測定位置を正規焦点面及び非正規焦点面としたときに、
前記正規焦点面からの反射光及び前記非正規焦点面からの反射光をそれぞれ別の共焦点光学系で同時に検出することによって、前記の波長λ1及び波長λ2において前記の正規焦点面及び非正規焦点面の反射光強度を測定する手段、(B)前記の補正用波長λ2における正規焦点面の反射光強度と非正規焦点面の反射光強度との強度比(正規反射光強度/非正規反射光強度)によって補正係数を算出する手段、(C)前記の測定用波長λ1における入射光の減衰要素である光反射と光吸収のうち、光反射の要素を相殺するために、前記の補正係数を前記の測定用波長λ1における非正規焦点面の反射光強度に乗算して補正済非正規反射光強度を算出する手段、及び(D)前記の補正済非正規反射光強度及び前記の測定用波長λ1において測定される正規焦点面の反射光強度を用いて、ランベルト・ベールの法則に従って、前記の正規焦点面と非正規焦点面との間に挟まれた領域に存在する前記物質の含有量を求める手段、を有することを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定方法を提供する。
[
2]本発明は、
生体組織内に存在し、近赤外域に特異的な光吸収を有する物質の含有量の測定方法であって、次の(A’)、(B)、(C)及び(D)、すなわち(A’)前記の特異的な光吸収を示す波長の少なくとも1つの波長λ1を測定用波長とし、前記の物質に光吸収されにくい波長の少なくとも1つの波長λ2を補正用波長として選び、生体組織の表面から深さの異なる測定位置を正規焦点面及び非正規焦点面としたときに、前記
正規焦点面からの反射光及び
前記非正規焦点面からの反射光を焦点位置の切り替えが可能な共焦点光学系で時系列的に検出することによって
、前記の波長λ1及び波長λ2において前記の正規焦点面及び非正規焦点面の反射光強度を測定する手段、(
B)前記の補正用波長λ2における正規焦点面の反射光強度と非正規焦点面の反射光強度との強度比(正規反射光強度/非正規反射光強度)によって補正係数を算出する手段、(C)前記の測定用波長λ1における入射光の減衰要素である光反射と光吸収のうち、光反射の要素を相殺するために、前記の補正係数を前記の測定用波長λ1における非正規焦点面の反射光強度に乗算して補正済非正規反射光強度を算出する手段、及び(D)前記の補正済非正規反射光強度及び前記の測定用波長λ1において測定される正規焦点面の反射光強度を用いて、ランベルト・ベールの法則に従って、前記の正規焦点面と非正規焦点面との間に挟まれた領域に存在する前記物質の含有量を求める手段、を有することを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定方法を提供する。
[
3]本発明は、前記
[1]に記載の(A)〜(D)
又は前記[2]に記載の(A’)〜(D)の手段を、前記生体組織内の深さ方向に設ける2箇所以上の深さ位置で繰り返して、前記生体組織における深度と前記生体組織内に存在する前記物質の含有量との関係を把握することによって、測定対象生体組織と測定対象外生体組織の前記物質の含有量を可視化して区別することを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定方法を提供する。
また、本発明は、前記の波長λ1が、前記の特異的な光吸収を示す吸光度スペクトルにおいて吸収ピーク値の1/2以上の吸光度を示す波長領域内に含まれる少なくとも1つの波長であり、前記の波長λ2が、前記の吸光度スペクトルにおいて吸収ピーク値の1/2未満の吸光度を示し、前記の波長領域内に含まれない波長の少なくとも1つの波長であることを特徴とする前記[1]〜[
3]
の何れかに記載の生体組織内に存在する物質量の測定方法であってもよい。
[
4]本発明は、前記の生体組織内に存在する物質量が、水分量であることを特徴とする前記[1]〜[
3]の何れかに記載の生体組織内に存在する物質量の測定方法を提供する。
[
5]本発明は、生体組織内に存在し、近赤外域に特異的な光吸収を有する物質の含有量の測定装置であって、少なくとも、前記の特異的な光吸収を示す波長の少なくとも1つの波長λ1で発光する近赤外線光源及び前記の物質に光吸収されにくい波長の少なくとも1つの波長λ2において発光する近赤外線光源と、無限系対物レンズ若しくは有限系対物レンズと、入射光又は反射光を分けるためのビームスプリッターと、生体組織の表面から深さの異なる測定位置を正規焦点面及び非正規焦点面としたときに、前記の正規焦点面及び非正規焦点面からの反射光強度をそれぞれ別の共焦点光学系によって収束させる手段と、波長λ1の近赤外線強度を識別できる近赤外線検出器及び波長λ2の近赤外線強度を識別できる近赤外線検出器と、前記の補正用波長λ2における正規焦点面の反射光強度と非正規焦点面の反射光強度との強度比(正規反射光強度/非正規反射光強度)によって算出される補正係数を前記の測定用波長λ1における非正規焦点面の反射光強度に乗算することによって得られる補正済非正規反射光強度及び前記の測定用波長λ1において測定される正規焦点面の反射光強度を用いて、ランベルト・ベールの法則に従って、前記の正規焦点面と非正規焦点面との間に挟まれた領域に存在する物質の含有量を計算するための演算処理手段と、を有することを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定装置を提供する。
また、本発明は、前記[
5]に記載の測定装置において、前記の波長λ1又は波長λ2の近赤外光がそれぞれ生体組織内に存在する物質に照射されるときに前記の正規焦点面又は非正規焦点面から発する反射光は、前記の無限系の対物レンズを通り、次いで前記のビームスプリッターの通過によって少なくとも2個以上に分けられ、前記2個以上に分けられた反射光のうち、前記の正規焦点面からの反射光は、前記のビームスプリッターから距離aだけ離れた共焦点光学系ユニットの共焦点用結像レンズを通った後、前記の共焦点結像レンズから距離bだけ離れた共焦点用ピンホールを通過して、近赤外線検出器で検出できるように構成され、さらに前記のビームスプリッターの通過後の反射光のうち、前記の非正規焦点面からの反射光は、前記のビームスプリッターから距離cだけ離れた前記の共焦点光学系ユニットとは別の共焦点光学系ユニットの共焦点用結像レンズを通り、該共焦点結像レンズから距離dだけ離れた前記の共焦点用ピンホールとは別の共焦点用ピンホールを通過して、前記の近赤外線検出器とは別の近赤外線検出器で検出できるように構成されており、前記のaとcとの距離及び前記のbとdとの距離を対比するとき、a=c及びb≠d、a≠c及びb=d、若しくはa≠c及びb≠dとなるように、前記の異なる共焦点光学系ユニットのそれぞれが配置されることを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定装置であってもよい。
また、本発明は、前記[
5]に記載の測定装置において、前記の波長λ1又は波長λ2の近赤外光がそれぞれ生体組織内に存在する物質に照射されるときに前記の正規焦点面又は非正規焦点面から発する反射光は、前記の有限系の対物レンズを通り、次いで前記のビームスプリッターの通過によって少なくとも2個以上に分けられ、前記2個以上に分けられた反射光のうち、前記の正規焦点面からの反射光は、前記のビームスプリッターから距離eだけ離れた共焦点光学系ユニットの共焦点用ピンホールを通った後、近赤外線検出器で検出できるように構成され、さらに前記のビームスプリッターの通過後の反射光のうち、前記の非正規焦点面からの反射光は、前記のビームスプリッターから距離fだけ離れた前記の共焦点光学系ユニットとは別の共焦点光学系ユニットの共焦点用結像ピンホールを通った後、前記の近赤外線検出器とは別の近赤外線検出器で検出できるように構成されており、前記のeとfとの距離を対比するとき、e≠fとなるように、前記の異なる共焦点光学系ユニットのそれぞれが配置されることを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定装置であってもよい。
[
6]本発明は、前記[
5]に記載の測定装置が、前記の正規焦点面及び非正規焦点面の深さ位置の調整を容易にするために、前記のビームスプリッターの通過によって少なくとも2個以上に分かれた反射光のうち、集光する光を並行光にする凹レンズを、少なくとも1つの光路の光軸上に搭載することによって、前記の2個以上のそれぞれの光路の光軸上に配置されるレンズの屈折率の合計が前記のそれぞれの光路で異なるように構成されることを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定装置を提供する。
[
7]本発明は、生体組織内に存在し、近赤外域に特異的な光吸収を有する物質の含有量の測定装置であって、少なくとも、前記の特異的な光吸収を示す波長の少なくとも1つの波長λ1で発光する近赤外線光源及び前記の物質に光吸収されにくい波長の少なくとも1つの波長λ2で発光する近赤外線光源と、無限系対物レンズ若しくは有限系対物レンズと、入射光又は反射光を分けるためのビームスプリッターと、生体組織の表面から深さの異なる測定位置を正規焦点面及び非正規焦点面としたときに、前記の正規焦点面及び非正規焦点面からの反射光強度を、光軸方向に移動可能な結像レンズとピンホールとを有する共焦点光学系、及び前記の無限系対物レンズ若しくは有限系対物レンズと前記の共焦点光学系との間に配置する光軸方向に移動可能なレンズ又は交換可能な焦点距離の異なるレンズ群から構成される焦点位置の切り替えが可能な光学系によって収束させる手段と、波長λ1の近赤外線強度を識別できる近赤外線検出器及び波長λ2の近赤外線強度を識別できる近赤外線検出器と、前記の補正用波長λ2における正規焦点面の反射光強度と非正規焦点面の反射光強度との強度比(正規反射光強度/非正規反射光強度)によって算出される補正係数を、前記の測定用波長λ1における非正規焦点面の反射光強度に乗算することによって得られる補正済非正規反射光強度及び前記の測定用波長λ1において測定される正規焦点面の反射光強度を用いて、ランベルト・ベールの法則に従って、前記の正規焦点面と非正規焦点面との間に挟まれた領域に存在する物質の含有量を計算するための演算処理手段とを有することを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定装置を提供する。
また、本発明は、前記の共焦点光学系ユニットの共焦点用結像レンズ、共焦点用ピンホール、近赤外線光検出器、及び凹レンズの少なくとも1つ以上の部品が光軸方向に移動可能な部品を有することを特徴とする前記[
5]〜[
7]の何れかに記載の生体組織内に存在する物質量の測定装置であってもよい。
また、本発明は、前記[
5]〜[
7]
の何れかに記載の測定装置が、さらに、前記測定装置を支持固定し、前記測定装置と前記生体組織の表面との距離を、前記生体組織内の深さ方向に設ける2箇所以上の深さ位置に応じて所要の長さに調整することによって測定深度を変えることができる手段を有することを特徴とする生体組織内に存在する物質量の測定装置であってもよい。
また、本発明は、前記の前記の生体組織内に存在する物質の含有量が、水分量であることを特徴とする前記[
5]〜[
7]
の何れかに記載の生体組織内に存在する物質量の測定装置であってもよい。
[発明の効果]
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、近赤外線が生体内部に届く範囲且つ対物レンズの作動距離の範囲で、共焦点光学系を使用するため、任意の深さ位置にある正規焦点面だけから発する正規反射光の強度と、非正規焦点面だけから発する非正規反射光の強度とを、同時に、又は時系列的に取得することができる。また、近赤外線が入射光として生体組織内に侵入したとき、生体組織の表面から深さに依存して入射光が減衰する要因を「光吸収」と「光反射」から、「光吸収」だけにできる。さらに、近赤外線が生体内部に届く範囲且つ対物レンズの作動距離の範囲で近赤外線を使うことで、ランベルト・ベールの法則に従って、任意の深さ領域に存在する体内成分や水等の物質量を測定できるようになる。それらの効果によって、生体組織内部に局所的に存在する水分を含む各種の物質量を、非侵襲で簡便に、且つ精度良く測定することができる。
【0024】
また、本発明による測定方法を応用して、測定装置と測定対象部位である生体組織との距離を自由に調整することによって測定深度を変えることができる手段を設けることによって、測定装置の内部の光学系を変動させることなく、測定装置の測定深度を変えることができるようになる。それによって、測定対象部位の深度に応じた体液成分や水分の含有量が上記と同じように簡便に測定でき、測定対象部位の深度を厳密に把握していなくても、測定対象生体組織と測定対象外生体組織(例えば血管内や水分量の多い部位など)の体液成分量や水分量を可視化し、区別することが容易となる。そのため、測定対象外生体組織を除いた領域の体液成分量や水分量をより精度良く知ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、生体組織内部の第一焦点面と第二焦点面の反射光強度の差からランベルト・ベールの法則に従い、第一焦点面と第二焦点面との間に存在する体内成分や水分の物質量の測定を行う方法である。その際には、上記でも述べたような前提条件の第一及び第二の課題が生じるため、本発明はそれらの課題を解決する手段として次に示すような特徴を有する。
【0027】
第1の特徴は、共焦点光学系の対物レンズと共焦点ユニットの間にハーフミラー
等のビームスプリッターを設置して光路を2個に分け、2個の光路上両方に光検出器を設置し、2個の光路それぞれに対してハーフミラー
等のビームスプリッターと光検出器
との間に、共焦点ユニットの共焦点用結像レンズと共焦点用ピンホールを設置し、少なくとも片方の光路に並行光でない光を平行にする凹レンズの機能を有する光学レンズを設置し、それぞれの光路で1個の焦点面だけからの反射光が共焦点用ピンホールを通過できる機能を有し、異なる深さにある2個の焦点面を正規焦点面と非正規焦点面として、正規焦点面だけからの反射光を正規反射光として、非正規焦点面からの反射光を非正規反射光として、正規反射光と非正規反射光をそれぞれの光検出器から同時に取得する機能を有する装置である。
【0028】
第2の特徴は、本発明の共焦点光学系の正規焦点面と非正規焦点面に対して、皮膚から浅い方から正規焦点面と非正規焦点面とすると、体液成分や水分子に吸収されにくい近赤外線の補正用波長λ2を生体組織内部に照射し、共焦点光学系を用いて測定する正規反射光と非正規反射光の強度の比(正規反射光の強度/非正規反射光の強度)を計算し、計算結果を補正係数として、水分子に吸収されやすい近赤外線の測定用波長λ1の非正規反射光に補正係数を掛け合わせて補正済非正規反射光とし、測定用波長の正規反射光と補正済非正規反射光を比較して、ランベルト・ベールの法則に従って生体組織内で局所的に存在する体液成分量や水分量を測定する方法である。
【0029】
まず、本発明の第1の特徴である共焦点光学系について説明する。
【0030】
本発明の共焦点光学系は、1つの焦点面から発する光のみを検出する共焦点光学系を基本構成とするものである。この基本構成は、
図1に示すように、通常の共焦点光学系と同じである。
図1において、共焦点光学系は、正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7と、入射光源として例えば体液成分又は水分子に吸収され易い波長を有する近赤外線光源1と、対物レンズとして例えば無限系の対物レンズ3と、正規焦点面16から発する正規反射光200だけ取得し、非正規焦点面17から発する非正規反射光201をカットするために用いる、光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7と正規光路の共焦点用ピンホール11と正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8から成る正規光路の共焦点ユニット103と正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5から構成される。
【0031】
通常、共焦点光学系は、無限系の対物レンズ3の代わりに有限系の対物レンズを使用することも可能である。また、この共焦点光学系は、蛍光物質を励起する励起光を入射光、蛍光物質から発する蛍光を反射光とし、入射光と反射光の波長が異なる場合に、入射光を反射して反射光を通過させるダイクロイックミラーを使用する。しかし、本発明の共焦点光学系のように、入射光と反射光の波長が等しい場合は、
図1のように、入射光および反射光を共に半分を反射させ半分を通過させる入射光用ハーフミラー19を用いることとする。
【0032】
通常、共焦点光学系の機能は、無限系の対物レンズ3の焦点面を正規焦点面16とし、正規焦点面以外の焦点面を非正規焦点面17とすると、正規光路の共焦点ユニット103は、非正規焦点面17から反射する非正規反射光201をカットし、正規焦点面16から反射する正規反射光200だけを通過させ、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5で正規反射光200を取得する機能を有することを特徴とする。
【0033】
本発明は、ランベルト・ベールの法則に従って生体組織内部に含まれる物質量を算出するために、異なる深さの焦点面からの発する反射光強度を比較する必要がある。
図1に示す共焦点光学系を使用して深さの異なる焦点面から発する反射光強度を比較するためには、無限系の対物レンズ3を正規光路光200の光軸方向に移動させ、移動前と移動後の正規反射光200の強度を正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5で取得する必要がある。ここで、
図1に示す共焦点光学系では、無限系の対物レンズ3を移動させる必要があることが問題となる。
【0034】
測定対象が、人体などの生体組織内部の体液成分量や水分量である場合、無限系の対物レンズ3を移動させる時間中に、前記の体液成分量や水分量が変化したり、人体自身が動いたり、血管などの拍動により生体組織が動いたりする可能性があり、無限系の対物レンズ3を移動させる必要があることは問題である。これが、上記でも述べたように、本発明における第一の課題である。
【0035】
この第一の課題は、深さの異なる焦点面から発する反射光を同時に取得することができれば解決できるため、共焦点光学系を使う場合に、任意の深さ位置にある正規焦点面だけから発する正規反射光の強度と、正規焦点面と深さの異なる非正規反射光だけから発する非正規反射光の強度を、同時に取得する必要がある。それを実現するために、本発明で使用する共焦点光学系は、次の三つの形態に分けて構成することができる。
【0036】
本発明で使用する無限系の対物レンズを使用した共焦点光学系に対して、対物レンズと共焦点ユニットの間にハーフミラー
等のビームスプリッターを設置して光路が2個に分けられる。ここで、共焦点ユニットとは、共焦点用のピンホールと、光を集光する機能を有する光学レンズを有するものとする。このとき、ハーフミラー
等のビームスプリッターを設置する位置は、出来るだけ対物レンズに近いことが望ましい。ハーフミラーは2個の光路の光強度
が等しい強度で分けられる
ため望ましい。ハーフミラーの角度は、光路に対して45度の角度で設置し、2個の光路の角度が90度になることが望ましい。ただし、ここで光路を分ける数は2個と記載したが、これは説明を簡潔にするためのものであって、光路を2個以上に分けた装置として設計することも可能である。また、入射光源の光路は、内容を分かりやすくするため省略する。
【0037】
この共焦点光学系において、まず第一の形態として、2個の光路上両方に光検出器を設置し、2個の光路それぞれに対してハーフミラーと光検出器の間に、共焦点用のピンホールと光を集光する機能を有する光学レンズを有する共焦点ユニット設置し、少なくとも片方の光路に並行光でないやがて一点に集光する光を並行光にする凹レンズの機能を有する光学レンズを設置する。このとき、対物レンズは1つの焦点面からの光を平行光にする機能を有するものとする。よって無限系の対物レンズの焦点面(正規焦点面)から発する反射光(正規反射光)を取得するための光路を正規光路とすると、正規光路の反射光は対物レンズと共焦点ユニットとの間に、ハーフミラーや光学フィルター以外の光学部品を設置しないで共焦点ユニット及び光検出器に受光させるものとする。
【0038】
もう片方の光路の反射光は、無限系の対物レンズの焦点面とは異なる深さから発する反射光であるとする。この光路は、対物レンズを通過しても並行光にならずに、対物レンズから離れると、やがて集光するような焦点位置(非正規焦点面)から発する反射光(非正規反射光)の光路とし、非正規光路と定義する。この非正規光路の非正規焦点面の深さ位置は、対物レンズとハーフミラーを経由して凹レンズに達するまで一点に集光しない非正規反射光の焦点位置であるとする。非正規光路の凹レンズの性能と設置は、凹レンズを通過すると非正規反射光が並行光になるように凹レンズの性能と設置位置を調節する。この調節によって、非正規焦点面から発した非正規反射光は、対物レンズとハーフミラーを経由すると、やや集光しながら凹レンズに達し、凹レンズを通過すると非正規反射光は並行光になり、その後、共焦点ユニットの共焦点用ピンホールを通過して光検出器に検出される。よって、非正規焦点面の深さ位置は、対物レンズと凹レンズの性能に依存するものとする。
【0039】
本発明で使用する共焦点光学系の第二の形態としては、非正規光路において凹レンズを使用せず、共焦点ユニットの結像レンズの位置を光軸方向に駆動させ、非正規反射光が共焦点用ピンホールを通過するように調節する方法が挙げられる。この方法は、非正規焦点面の焦点位置を凹レンズの性能に依存しないで決定することが可能な方法である。必要に応じて凸レンズをリレーレンズのように使用して、反射光が一点に集光する位置を増やすことで、非正規反射光が共焦点用ピンホールを通過させることも想定できるものとする。この形態は、対物レンズが有限系の共焦点光学系であるときに適用することが望ましい。
【0040】
本発明で使用する共焦点光学系の第三の形態としては、対物レンズ以外に新たにレンズを設置して、焦点位置の切り替えを行う方法が挙げられる。まず、正規焦点面に焦点位置を合わせて、正規焦点面からの反射光を測定する。次に、非正規焦点面からの反射光を検知する際に、対物レンズと共焦点ユニットとの間にレンズを設置して該レンズから遠い光を一回焦点を結ばせた後に平行光にし、その平行光が再度焦点を結ぶように、ピンホールと結像レンズを移動させて焦点位置の切り替えを行い焦点位置を調整する。この方法によって、一つの共焦点光学系で深さの異なる焦点面から発する反射光を時系列的に取得することができる。
【0041】
上記の手段によって、近赤外線を生体組織の表面に照射し、生体組織内部に存在する正規焦点面と非正規焦点面の近赤外線反射光(正規反射光と非正規反射光)を同時に、又は時系列的に取得できる機能を有することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の特徴であるランベルト・ベールの法則に従って生体組織内で局所的に存在する体内成分量や水分量を測定する方法について説明する。
【0043】
共焦点光学系に限らず、通常、入射光は物質内部に侵入すると、内部に進むに従って入射光強度が減衰をする。これは、例えば、
図2のように、水分子に吸収され易い近赤外線光源1から、測定用波長λ1の入射光27を体表15に照射した場合、測定用波長λ1の入射光27は、例えば、正規焦点面16から非正規焦点面17までの領域の間に、「反射」と「吸収」によって入射光が減衰し、正規焦点面と非正規焦点面に達する入射光強度差が、「反射」と「吸収」の原因によって生じる。ランベルト・ベールの法則に従って水分量を算出するためには、正規焦点面と非正規焦点面に達する入射光減衰の原因を「吸収」のみに補正する必要がある。
【0044】
このように、近赤外線が入射光として体内に侵入したとき、生体組織の表面から深さに依存して入射光が減衰する要因は、水分子による「光吸収」以外に「反射」があり、入射光が減衰する要因を「光吸収」だけに出来ないことである。これが、上記でも述べたように、本発明における第二の課題である。
【0045】
この第二の課題を解決する手段として、体液成分や水分子に吸収されやすく他の生体物質に吸収されにくい近赤外線を測定用波長λ1とすると、体液成分や水分子に吸収されにくく他の生体物質にも吸収されにくい近赤外線の補正用波長λ2を用意し、補正用波長λ2の反射光から補正係数を算出し、測定用波長λ1の反射光を補正する方法を用いる。本発明において、測定用波長λ1は、前記の特異的な光吸収を示す吸光度スペクトルにおいて吸収ピーク値の1/2以上の吸光度を示す波長領域内に含まれる少なくとも1つの波長である。また、補正用波長λ2は、前記の吸光度スペクトルにおいて吸収ピーク値の1/2未満の吸光度を示し、前記の波長領域内に含まれない波長の少なくとも1つの波長である。測定用波長λ1と補正用波長λ2における吸光度差が小さくなると、ランベルト・ベールの法則によって求める濃度の測定誤差が大きくなる傾向にあり、測定の許容誤差を考慮すると、吸光度スペクトルの吸収ピーク値は1/2を基準として測定用波長λ1と補正用波長λ2を区分けすることが好ましい。
【0046】
測定波長λ1及び補正用波長λ2として、例えば、体液成分としてグルコース量を測定する場合は、それぞれ2098nm及び1100nmを選ぶことができる。また、測定波長λ1として960nm又は1700nmを選び、補正用波長λ2として850nmを選んでも良い。コレステロール量を測定する場合は、測定波長λ1として1720nm、1730nm及び1680nmの何れかを選び、補正用波長λ2は1580〜1620nmの範囲にある波長の何れかを選ぶ。また、水分量を測定する場合は、測定用波長λ1を1421nmとすると、補正用波長λ2は1321nmか1521nm程度であることが望ましい。ただし、この波長は本発明を分かり易くするための例であり、他の波長でも可能である。また、測定用波長λ1及び補正用波長λ2は、それぞれ1種類だけではなく、測定精度を上げる目的で2種類以上を使用してもよい。
【0047】
測定精度を向上するために、補正用波長λ2は測定用波長λ1に近くに設定され、λ1−200nm≦λ2≦λ1+200nmがより好ましく、さらに、λ1−100nm≦λ2≦λ1+100nmの範囲にあることが特に好ましい。測定用波長λ1と補正用波長λ2が近くすることによって、波長の違いに起因する光学的な測定誤差を小さくでき、測定精度の向上を図ることができる。
【0048】
本発明においては、測定用波長λ1及び補正用波長λ2を上記のように設定することが好ましいが、体内組織内の測定対象物質によっては、上記のような範囲で波長を選択できず、測定用波長λ1と補正用波長λ2との吸光度差が小さくなる場合がある。その場合でも本発明は測定が可能であり、補正用波長λ1は測定用波長λ2と吸光度が異なれば良い。そのときは、測定用波長λ1の体液成分又は水分子に対するモル吸光度係数をε
xとして、補正用波長λ2の体液成分又は水分子に対するモル吸光度係数をε
yとすると、計算上の測定用波長の体液成分又は水分子に対するモル吸光度係数をε = ε
x−ε
yとして計算し、εをランベルト・ベールの法則式に適用するモル吸光度係数とする。
【0049】
補正係数を算出するためには、本発明の機能を有する共焦点光学系を使って、補正用波長を生体組織の表面に照射し、正規焦点面と非正規焦点面からの反射光(正規反射光と非正規反射光)を取得し、正規焦点面と非正規焦点面では、正規焦点面の方が生体組織の表面から浅い焦点面であるとすると、補正用波長の正規反射光と非正規反射光の強度比(正規反射光強度/非正規反射光強度)を計算することで算出する。この補正係数の概念は、補正用波長の入射光減衰の要素が「反射」のみによるものとし、正規反射光と非正規反射光の強度差は「反射」による入射光減衰で生じるものとし、また、体液成分や水分子以外の生体物質にも入射光が吸収される場合、入射光が、補正用波長と測定用波長で等しい割合で光吸収されて減衰するものとし、光減衰の「反射」の要素と一緒に補正係数として補正するものとする。よって、補正係数の概念は、「反射」や「体液成分や水分子以外の光吸収」による入射光減衰が無ければ、補正用波長の正規反射光と非正規反射光の強度が等しくなるように補正する係数とする。すなわち、補正係数Kは、以下の計算式(1)で計算されるものとする。
【0050】
補正係数K = (補正用波長の正規反射光強度)÷(補正用波長の非正規反射光強度) (1)
【0051】
補正係数Kを算出後、本発明の機能を有する共焦点光学系を使って、測定用波長の正規反射光と非正規反射光を取得し、測定用波長の非正規反射光の強度に補正係数を掛け合わせて補正済非正規反射光とし、測定用波長の正規反射光の強度と、補正済非正規反射光の強度を比較して、ランベルト・ベールの法則に従って、体内の局所的な体液成分や水分量を測定するものである。すなわち、測定用波長の反射光を取得後、下記の計算式(2)及び(3)を用いて計算して、正規焦点面と非正規焦点面に挟まれた領域の水分子のモル濃度cを計算する。
【0052】
補正済非正規反射光の強度 = (測定用波長の非正規反射光強度)×補正係数K
(2)
【0054】
ここで、正規反射光と非正規反射光は、正規焦点面と非正規焦点面の往復分の光路差があるため、片道分の光路差に変換するために分母に2を掛けている。補正係数は、入射光が減衰する要素の「反射」と「吸収」うち、「反射」の要素を相殺するために掛け合わせる。この作業によって、測定用波長の光減衰が「吸収」だけの要素に近似し、ランベルト・ベールの法則を適用できるものとする。
【0055】
上記の補正係数の概念を
図3を用いて説明する。
図3は、測定用波長λ1と補正用波長λ2において、正規焦点面と非正規焦点面へ進む入射光の強度が異なる要素で減少することを示す原理図である。
図3の(a)に示すように、体液成分や水分子に吸収され易い波長の近赤外線光源1から、測定用波長λ1の入射光27を生体組織の表面15に照射した場合、測定用波長λ1の入射光27は、正規焦点面16から非正規焦点面17までの領域の間に、「反射」と「吸収」によって入射光が減衰し、正規焦点面と非正規焦点面に達する入射光強度差が、「反射」と「吸収」の原因によって生じる。一方、
図3の(b)に示すように、体液成分や水分子に吸収されにくい波長の近赤外線光源2から、測定用波長λ2の入射光28を生体組織の表面15に照射する場合、測定用波長λ2の入射光28は「吸収」がほとんどないために、「反射」のみの要素によって入射光が減衰し、正規焦点面16と非正規焦点面17に達する入射光強度差が、「反射」のみの原因によって生じる。上記の補正係数は、
図3の(a)に示す「反射」と「吸収」の減衰要素から、
図3の(b)に示す「反射」の要素だけを相殺して、「吸収」のみの要素によって入射光が減衰するように補正するために使用する。それによって、正規焦点面と非正規焦点面に達する入射光強度差が、「吸収」のみの原因によって生じるように処理することができる。このように、補正係数の概念を用いることが、本発明における第二の課題を解決する手段としての特徴である。
【0056】
本発明の測定方法及び測定装置を具体的な実施形態によって以下に説明する。
【0057】
<第1の実施形態>
図4は、本発明の第一の実施形態の基本形となる共焦点光学系の原理図である。
図4に示す共焦点光学装置は、1つの焦点面からの光のみを検出可能な共焦点光学系において、水分子に吸収され易い近赤外線光源1と、水分子に吸収され難い近赤外線光源2と、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5と、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6と、対象物からの反射光が対物レンズを通過すると反射光が平行光になるタイプの無限系の対物レンズ3と、入射光を反射して対象物に照射するための入射光用ハーフミラー19と、1本の反射光を2本に分離する反射光用ハーフミラー4と、正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7と正規光路の共焦点用ピンホール11と正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8から成る正規光路の共焦点ユニット103と、非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9と非正規光路の共焦点用ピンホール12と非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10から成る非正規光路の共焦点ユニット104を有する。
【0058】
図4に示すように、水分子に吸収され易い近赤外線光源1から発する波長λ1の入射光を対象物の生体組織の表面15に照射し、対象物内部である生体組織内部18の正規焦点面16から発する正規反射光200と、非正規焦点面17から発する非正規反射光201が、無限系の対物レンズ3を通り、次に無限系の対物レンズ3を通過した正規反射光200と非正規反射光201が、「無限系の対物レンズ」から「反射光用ハーフミラー」までの距離304(以下、距離304と省略する。)が出来るだけ近くなるように設置された反射光用ハーフミラー4を通って、正規光路100と非正規光路101の2個に分け、次に、反射光用ハーフミラー4を通って少なくとも2個に分かれた反射光のうち、少なくとも正規反射光200は、反射光用ハーフミラー4から可能な限り近い距離aに設置された正規光路の共焦点ユニット103の正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7を通り、正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7から距離bだけ離れた正規光路の共焦点用ピンホール11を通過し、正規光路の共焦点用ピンホール11から距離gだけ離れた位置に設置された正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8を通過して、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5で検出できる設計を有する水分量測定用の共焦点光学装置であり、正規反射光200とは別の波長λ2の非正規反射光201は、反射光用ハーフミラー4から可能な限り近い距離cに設置された非正規光路101の共焦点ユニット104の非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9を通り、非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9から距離dだけ離れた非正規光路の共焦点用ピンホール12を通過し、非正規光路の共焦点用ピンホール12から距離hだけ離れた位置に設置された非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10を通過して、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6で検出できる設計を有することを特徴とする体液成分量又は水分量測定用の共焦点光学装置である。
【0059】
本実施形態の最大の特徴は以下の通りである。
【0060】
本実施形態は、「反射光用ハーフミラー」から「正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ」までの距離300(以下、距離300と省略する)を距離aとし、「正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ」から「正規光路の共焦点用ピンホール」までの距離20(以下、距離20と省略する。)を距離bとし、「正規光路の共焦点用ピンホール」から「正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ」までの距離21(以下、距離21と省略する。)を距離gとし、「反射光用ハーフミラー」から「非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ」までの距離301(以下、距離301と省略する)を距離cとし、「非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ」から「非正規光路の共焦点用ピンホール」までの距離22(以下、距離22と省略する。)を距離dとし、「非正規光路の共焦点用ピンホール」から「非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ」までの距離23(以下、距離23と省略する。)を距離hとすると、距離aと距離cを比較し、距離bとdを比較したとき、aとc、bとdの距離が、少なくてもどちらかが異なる距離となるように設計された水分量測定用の共焦点光学装置である。つまり、本装置は、(a=c、 b≠d)、(a≠c、 b=d)、及び(a≠c、b≠d)のいずれかの特徴を有する水分量測定用の共焦点光学装置である。
【0061】
一方、距離gおよび距離hについては、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5に受光する正規反射光光径302と、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6に受光する非正規反射光光径303が出来るだけ等しくなるように調節された設計であれば良いものとする。
【0062】
本実施形態では、正規光路の共焦点ユニット103および非正規光路の共焦点ユニット104の設置位置としては、以下の手順に従ってキャリブレーションを実施して調整する。
【0063】
(I−1)まず、最初の手順は、
図4の生体組織の表面15の位置に反射板を設置し、反射板を無限系の対物レンズ3から距離zだけ離して、反射板の反射面が正規光路100の光軸に垂直になるように設置する。距離zは任意の距離であるが、無限系の対物レンズ3の作動距離と等しいことが理想である。
(I−2)次に、無限系の対物レンズから距離zの位置にある反射板に対して、体液成分や水分子に吸収され易い近赤外線光源1の入射光(波長λ1)を、入射光用ハーフミラー19で反射させて反射板に照射し、反射板から反射した反射光を無限系の対物レンズ3に入光させる。
(I−3)反射光に対し、反射光用ハーフミラー4を通過させる。
(I−4)正規光路の共焦点ユニット103の正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7を、反射光用ハーフミラー4から出来るだけ近い位置に設置し、反射光を通過させる。
(I−5)正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7からできるだけ近い位置に、正規光路の共焦点用ピンホール11を設置し、正規光路の共焦点用ピンホール11を、反射光が通過するように設置する。
(I−6)正規光路の共焦点用ピンホール11を通過した反射光が最も強くなるように、正規光路の共焦点用ピンホール11の位置を正規光路100の光軸方向に移動し、調整する。
(I−7)正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8を使用する場合に行う。正規光路の共焦点用ピンホール11を通過した反射光が、収束しながら正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5に入光できるように、正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8を設置し、正規光路100の光軸方向に移動させながら位置を調整する。
(I−8)反射板を、対物レンズから距離Z+ΔZ(≠Z)の距離に設置する。この時、距離Zと距離Z+ΔZは、正規焦点面16と非正規焦点面17に相当させることが望ましい。
(I−9)対物レンズから距離Z+ΔZの位置にある反射板に対して、体液成分や水分子に吸収され易い近赤外線光源1の入射光(波長λ1)を、入射光用ハーフミラー19で反射させて反射板に照射し、反射板から反射した反射光を無限系の対物レンズ3に入光させる。
(I−10)反射光を反射光用ハーフミラー4で反射させる。
(I−11)非正規光路の共焦点ユニット104の非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9を、反射光用ハーフミラー4から出来るだけ近い位置に設置し、反射光を通過させる。
(I−12)非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9からできるだけ近い位置に、非正規光路の共焦点用ピンホール12を設置し、非正規光路の共焦点用ピンホール12を、反射光が通過するように設置する。
(I−13)非正規光路の共焦点用ピンホール12を通過した反射光が最も強くなるように、非正規光路の共焦点用ピンホール12の位置を非正規光路101の光軸方向に移動し、調整する。
(I−14)非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10を使用する場合に行う。非正規光路の共焦点用ピンホール12を通過した反射光が、収束しながら、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6に入光できるように、非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10を設置し、非正規光路101の光軸方向に移動させながら位置を調整する。
【0064】
同様に、体液成分や水分子に吸収されにくい近赤外光源2の入射光(波長λ2)についても、正規光路の共焦点ユニット103および非正規光路の共焦点ユニット104の設置位置は、上記と同じ手順に従ってキャリブレーションを実施して調整する。
【0065】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態の基本形となる共焦点光学系の原理図である。
図5に示すように、本実施形態は、第1の実施形態の無限系の対物レンズの代わりに、対象物からの反射光が対物レンズを通過すると反射光が一点に集まるタイプの有限系の対物レンズ102を使用し、体液成分や水分子に吸収され易い近赤外線光源1と、体液成分や水分子に吸収され難い近赤外線光源2と、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5と、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6と、入射光を反射して対象物に照射するための入射光用ハーフミラー19と、1本の反射光を2本に分離する反射光用ハーフミラー4と、正規光路の共焦点用ピンホール11と正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8から成る正規光路の共焦点ユニット103と、非正規光路の共焦点用ピンホール12と非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10から成る非正規光路の共焦点ユニット104を有することを特徴とした水分量測定用の共焦点光学装置である。
【0066】
本実施形態は、第1の実施形態と同様に、
図5に示すように、体液成分や水分子に吸収され易い近赤外線光源1から発する入射光(波長λ1)を対象物の生体組織の表面15に照射し、対象物内部である生体組織内部18の正規焦点面16から発する正規反射光200と、非正規焦点面17から発する非正規反射光201が、有限系の対物レンズ102を通り、次に有限系の対物レンズ102を通過した正規反射光200と非正規反射光201が、「有限系の対物レンズ」から「反射光用ハーフミラー」までの距離24(以下、距離24と省略する。)が出来るだけ近くなるように設置された反射光用ハーフミラー4を通って、正規光路100と非正規光路101の2個に分け、次に、反射光用ハーフミラー4を通って少なくとも2個に分かれた反射光のうち、少なくとも正規反射光200は、反射光用ハーフミラー4から可能な限り近い距離eに設置された正規光路の共焦点ユニット103の正規光路の共焦点用ピンホール11を通過し、正規光路の共焦点用ピンホール11から距離gだけ離れた位置に設置された正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8を通過して、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5で検出できる設計を有する水分量測定用の共焦点光学装置であり、正規反射光200とは別の波長λ2の非正規反射光201は、反射光用ハーフミラー4から可能な限り近い距離fに設置された非正規光路101の共焦点ユニット104の共焦点用ピンホール12を通過し、非正規光路の共焦点用ピンホール12から距離hだけ離れた位置に設置された非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10を通過して、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6で検出できる設計を有することを特徴とする水分量測定用の共焦点光学装置である。
【0067】
次に、本実施形態の最大の特徴は以下の通りである。
【0068】
本実施形態は、「反射光用ハーフミラー」から「正規光路の共焦点用ピンホール」までの距離25(以下、距離25と省略する)を距離eとし、「反射光用ハーフミラー」から「非正規光路の共焦点用ピンホール」までの距離26(以下、距離26と省略する。)を距離fとし、「正規光路の共焦点用ピンホール」から「正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ」までの距離21(以下、距離21と省略する。)を距離gとし、「非正規光路の共焦点用ピンホール」から「非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ」までの距離23(以下、距離23と省略する。)を距離hとすると、距離eと距離fを比較したとき、eとfの距離が異なる距離となるように設計された水分量測定用の共焦点光学装置である。つまり、本装置は、(e≠f)の特徴を有する水分量測定用の共焦点光学装置である。
【0069】
一方、本実施形態の距離gおよび距離hについては、第1の実施形態と同様に、正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5に受光する正規反射光光径302と、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6に受光する非正規反射光光径303が出来るだけ等しくなるように調節された設計であれば良いものとする。
【0070】
本実施形態では、正規光路の共焦点ユニット103および非正規光路の共焦点ユニット104の設置位置としては、以下の手順に従ってキャリブレーションを実施して調整するものとする。
【0071】
(II−1)まず、最初の手順は、
図5の生体組織の表面15の位置に反射板を設置し、反射板を有限系の対物レンズ102から距離zだけ離して、反射板の反射面が正規光路100の光軸に垂直になるように設置する。距離zは任意の距離であるが、有限系の対物レンズ102の作動距離と等しいことが理想である。
(II−2)次に、無限系の対物レンズから距離zの位置にある反射板に対して、体液成分や水分子に吸収され易い近赤外線光源1の入射光(波長λ1)を、入射光用ハーフミラー19で反射させて反射板に照射し、反射板から反射した反射光を有限系の対物レンズ102に入光させる。
(II−3)反射光に対し、反射光用ハーフミラー4を通過させる。
(II−4)正規光路の共焦点ユニット103の正規光路の共焦点用ピンホール11を、反射光用ハーフミラー4から出来るだけ近い位置に設置し、正規光路の共焦点用ピンホール11を、反射光が通過するように設置する。
(II−5)正規光路の共焦点用ピンホール11を通過した反射光が最も強くなるように、正規光路の共焦点用ピンホール11の位置を正規光路100の光軸方向に移動し、調整する。
(II−6)正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8を使用する場合に行う。正規光路の共焦点用ピンホール11を通過した反射光が、収束しながら正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器5に入光できるように、正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8を設置し、正規光路100の光軸方向に移動させながら位置を調整する。
(II−7)反射板を、対物レンズから距離Z+ΔZ(≠Z)の距離に設置する。この時、距離Zと距離Z+ΔZは、正規焦点面16と非正規焦点面17に相当させることが望ましい。
(II−8)対物レンズから距離Z+ΔZのところにある反射板に対して、水分子に吸収され易い近赤外線光源1の入射光(波長λ1)を、入射光用ハーフミラー19で反射させて反射板に照射し、反射板から反射した反射光を有限系の対物レンズ102に入光させる。
(II−9)反射光を反射光用ハーフミラー4で反射させる。
(II−10)非正規光路の共焦点ユニット104の非正規光路の共焦点用ピンホール12を、反射光用ハーフミラー4から出来るだけ近い位置に設置し、非正規光路の共焦点用ピンホール12を、反射光が通過するように設置する。
(II−11)非正規光路の共焦点用ピンホール12を通過した反射光が最も強くなるように、非正規光路の共焦点用ピンホール12の位置を非正規光路101の光軸方向に移動し、調整する。
(II−12)非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10を使用する場合に行う。非正規光路の共焦点用ピンホール12を通過した反射光が、収束しながら、非正規焦点面からの反射光を取得する近赤外線検出器6に入光できるように、非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10を設置し、非正規光路101の光軸方向に移動させながら位置を調整する。
【0072】
同様に、体液成分や水分子に吸収されにくい近赤外光源2の入射光(波長λ2)についても、正規光路の共焦点ユニット103および非正規光路の共焦点ユニット104の設置位置は、上記と同じ手順に従ってキャリブレーションを実施して調整する。
【0073】
上記の第1及び第2の実施形態で使用する各光学部品について、さらに詳細に説明する。
【0074】
上記の第1及び第2の実施形態において、測定用波長λ1と補正用波長λ2の入射光27、28は、対物レンズと体表の間に入射光用ハーフミラー19を設置し(
図4及び
図5)、入射光源として近赤外線レーザ光を入射光用ハーフミラーに入射させ、入射光用ハーフミラーから反射した近赤外線レーザの入射光が、生体組織の表面15に対して垂直に照射されるように設計する。この時、近赤外線レーザのレーザ光は並行光線であり、レーザースポット径が約1〜3mmとなるように設計することが望ましい。
【0075】
上記の第1の実施形態において、入射光源の入射光は、
図6に示すように無限系の対物レンズ3と反射光用ハーフミラー4の間に入射光用ハーフミラー19を設置し、入射光を入射光用ハーフミラー19に入射させ、入射光用ハーフミラー19から反射した入射光が、生体組織の表面15に対して垂直に照射されるように設計することも可能である。
図6は、第1の実施形態の基本形において入射光の入射位置が異なる共焦点光学系の原理図であり、第1の実施形態の変形例に該当するものである。ここで、無限系の対物レンズ3の代わりに、
図5に示すような有限系の対物レンズ102を使用する第2の実施形態についても、
図6と同様の光学系を構築することができる。
【0076】
上記の第1及び第2の実施形態において、例えば、水分子に吸収され易い近赤外線光源1は、波長が1421 nmの近赤外線レーザを測定用波長27として使用する。ただし、水分子に吸収されやすい波長であれば、他の波長のレーザでも良いものとする。一方、水分子に吸収され難い近赤外線光源2は、波長が例えば1321 nm付近であり、測定用波長27より水分子に吸収されにくい近赤外線レーザを、補正用波長28として使用する。このとき、測定用波長27と、補正用波長28は、光路切り替えポートによって波長を切り替えられるように設計し、測定用波長27と補正用波長28の反射光は同一の光路を通るものとして設計する。
【0077】
上記の第1及び第2の実施形態において、レーザ1台で2種類以上の近赤外線波長が出力できる場合は、光路切り替えポートの代わりに、片方の光をカットする光学フィルターをセットできるように設計する。
【0078】
上記の第1及び第2の実施形態において、入射光源は、共焦点顕微鏡に適した入射光源であれば、レーザ以外の光源でも特定の波長だけを照射可能な光源であれば、使用可能である。
【0079】
上記の第1及び第2の実施形態において、対物レンズの倍率は、2倍、4倍、10倍、20倍程度の倍率であることが望ましい。
【0080】
上記の第1及び第2の実施形態において、入射光用ハーフミラー19および反射光用ハーフミラーは、一本の光を等しい強度で2本に分けられるハーフミラーを使用することが望ましい。
【0081】
上記の第1及び第2の実施形態において、正規光路の共焦点ユニット103および非正規光路の共焦点ユニット104は、同一の性能を有する共焦点ユニットとする。
【0082】
上記の第1及び第2の実施形態において、入射光として使用するレーザ光に対して、光軸に垂直なXY方向に走査する手段として、電動XYステージを設置し、電動XYステージに対象物を乗せ、観測対象を動かしながら、XY座標ごとに水分量測定を行う機能を追加することも可能である。
【0083】
上記の第1及び第2の実施形態において、共焦点光学系の正規光路の共焦点ユニット103および非正規光路の共焦点ユニット104において(
図4及び
図5)、正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ7、正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ8、正規光路の共焦点用ピンホール11、非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9、非正規光路の共焦点用ピンホール後の共焦点用結像レンズ10、非正規光路の共焦点用ピンホール12のうち、少なくともいづれかが、正規光路100または非正規光路101の光軸方向に移動できるように、例えばピエゾ素子のような任意に移動距離を調節可能な駆動源を設置し、結像レンズまたは共焦点ピンホールの移動距離と、焦点面の移動距離を予めキャリブレーションしておくことで、測定したい焦点面の位置を変える機能を追加することも可能である。
【0084】
そこで、上記の第1又は第2の実施形態において、実際に被検体としてマウスの肺を用いて肺の所定部分の水分量を測定した。
図4又は
図5において、水分子に吸収され易い近赤外線光源1は、波長が1421 nmの近赤外線レーザを測定用波長27として使用する。一方、水分子に吸収され難い近赤外線光源2は、波長が1321 nm付近であり、測定用波長27より水分子に吸収されにくい近赤外線レーザを、補正用波長28として使用する。
【0085】
マウス肺内の所定部分の水分量をそれぞれ5回測定した結果、水分量は5.8〜6.2ml/kgの範囲であった。また、マウス肺内の所定部分の水分量を厳密に測定するため、前記と同じマウス肺の所定部分を切り出して加熱乾燥して、加熱乾燥前後における肺の重量変化を測定した。その重量変化によって測定された水分量は、5.7mg/kgである。切り出し箇所を測定箇所と完全に一致させることは難しく、加えて、固体差及び実験誤差等を考慮すると、医学分野で許容されている測定誤差は慣用的に30%以下であることが知られている。それに対して、本発明の測定方法は、重量変化による測定方法との測定値の差異が小さいことから、高精度の測定方法として適用できることが確認された。
【0086】
上記の第1又は第2の実施形態において、近赤外光源からの入射光を体内組織に導出し、さらに、体内組織からの反射光を近赤外光検出器へ導入するための光学系は、光ファイバによって構築して、それぞれ光源用光ファイバ及び検出のための補修用光ファイバを有する光学ヘッドからなる内視鏡として実現しても良い。例えば、光学ヘッドとしては、光源用光ファイバの束が光学ヘッドの中央領域でファイバ端部が揃えられて成端された後、充填材に埋め込まれて環状スペーサ要素によって包囲され、補修用光ファイバが、前記の環状スペーサ要素を包囲し、再び充填材によって埋め込まれ、かつ外部ケーシングによって包囲されて、光ファイバ端部が環状領域で成端される構造を有するものを用いることができる。光源用光ファイバ及び補修用光ファイバは、それぞれ近赤外光源及び上述したハーフミラー、レンズ及び共焦点光学系ユニットを経て近赤外検出器に結合される。そのとき、光学ヘッド中の光源用光ファイバ及び補修用光ファイバは、これらの近赤外光源と近赤外検出器との最適な結合を得るように、配列を適応させる。
【0087】
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施形態の基本形となる共焦点光学系の原理図である。上記第1の実施形態における体液成分量や水分量測定用の共焦点光学装置(
図4)は、
図7に示すように、非正規光路101に対して、反射光用ハーフミラー4と、非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9の間に、集光する光を並行光にする凹レンズ13を搭載することを特徴とした水分量測定用の共焦点光学装置とすることも可能である。
【0088】
ここで、凹レンズ13の搭載によって、距離300を距離aとし、距離301を距離cとし、距離20を距離bとし、距離22を距離dとすると、距離aとcを比較し、距離bと距離cを比較したとき、aとc、bとdの距離が、等しくなるような設計が可能な体液成分量や水分量測定用の共焦点光学装置である。つまり、本形態は、(a=c,b≠d)、(a≠c, b=d)、及び(a≠c, b≠d)のいずれかの形態に加え、(a=c,b=d)の形態をとることが可能であるという特徴を有する水分量測定用の共焦点光学装置となる。
【0089】
また、上記の第2の実施形態における水分量測定用の共焦点光学装置(
図5)の非正規光路101に対して、反射光用ハーフミラー4と、非正規光路の共焦点用ピンホール前の共焦点用結像レンズ9の間に、集光する光を並行光にする凹レンズ13を搭載することを特徴とした水分量測定用の共焦点光学装置とすることも可能である。
【0090】
ここで、凹レンズ13の搭載によって、
図5に示す距離25を距離eとし、距離26を距離fとし、距離eと距離fを比較したとき、eとfの距離が等しくなるような設計が可能な水分量測定用の共焦点光学装置である。つまり、本形態は、(e≠f)の形態に加え、(e=f)の形態をとることが可能であるという特徴を有する水分量測定用の共焦点光学装置である。
【0091】
上記の第1及び第2の実施形態で使用いた共焦点光学系において、凹レンズ13は非正規焦点面の非正規光路だけでなく、正規焦点面の正規光路面に対して搭載してもよい。それによって、凹レンズ13を使用した本実施形態において、正規光路の共焦点ユニット103、非正規光路の共焦点ユニット104の最適位置は、反射光用ハーフミラー4と共焦点ユニットの間に設置した凹レンズ13の屈折率によって決定されるため、位置調整が容易になる。よって、非正規焦点面17の深さ位置の調節は、例えば、複数の凹レンズ13を顕微鏡に搭載し、凹レンズ13の屈折率を切り替えることで調節することが可能である。本実施形態において、凹レンズ13は、共焦点ユニットの中に設置することも可能である。
【0092】
上記の全形態における水分量測定用の共焦点光学装置に対して、入射光源および光検出器はコンピュータで動作を管理することが望ましい。
【0093】
<第4の実施形態>
図8は、本発明の第4の実施形態の基本系となる焦点位置の切り替え可能な共焦点光学系の原理図である。まず、
図8の(a)に示すように、無限系の対物レンズ(3)若しくは有限系の対物レンズ(102)と共焦点ユニットとの間に平行光にするためのレンズ29を設置して、レンズ29から遠い光を一回焦点を結ばせた後に平行光にし、その平行光が再度焦点を結ぶように、ピンホール11と結像レンズ7によって、1地点目となる正規焦点面に焦点位置を合わせて、正規焦点面からの反射光を測定する。次に、
図8の(b)に示すように、2地点目となる非正規焦点面からの反射光を検知する際に、ピンホール11と結像レンズ7を移動させることによって、2地点目の非焦点面に焦点を結ぶように焦点位置の切り替えを行って焦点位置を調整する。ここで、レンズ29及びピンホール11と結像レンズ7は、焦点位置切り替えが容易にできるように、光軸方向に移動式となっている。この方法によって、一つの共焦点光学系で深さの異なる焦点面から発する反射光を時系列的に取得することができる。
【0094】
本発明は、レンズ29を光軸方向に移動する方法の代わりに、
図8の(c)に示すように、あらかじめ焦点距離を変えたレンズを複数個備える円盤30を用いて、正規焦点面と非正規焦点面との距離に応じて、その距離に適合したレンズ29を配置できるように回転方式で交換する方法を採用しても良い。円盤30に備えられている複数のレンズはそれぞれ焦点距離が異なっており、正規焦点面と非正規焦点面との距離をあらかじめ設定すれば、焦点距離が自動的に決まる。正規焦点面と非正規焦点面との距離を変えて行う測定の回数が限られていれば、備えるレンズの枚数は少なくすることができる。レンズの交換は、モータ31によって回転駆動されて自動的に行われるが、手動で行っても良い。また、本発明においては、レンズを複数個備える円盤30から適当な焦点距離を有するレンズ29を選んで光軸上に配置した後、焦点距離を微調整する目的で該レンズ29を光軸方向に移動することも可能である。このようにすれば、大きな反射光強度を検出できるため、測定精度の向上が図れる。
【0095】
<第5の実施形態>
本発明の第二の課題を解決するために、実際に体液成分量や水分量を求めるときに実施する演算処理手段について説明する。上記の第1〜第4の実施形態において、正規焦点面及び非正規焦点面からの反射光強度を測定するために構築した共焦点光学装置を用いて、光検出器から識別される反射光強度は、コンピュータ等の演算処理手段によって以下のフローチャートに従って体液成分量や水分量を計算する。
【0096】
(V−1)まず、体液成分や水分子に吸収されにくく他の生体物質にも吸収されにくい近赤外線の補正用波長λ2を体表に照射する第一のステップS1を行う。
(V−2)補正用波長λ2の正規反射光と非正規反射光を取得する第二のステップS2を行う。
(V−3)補正係数を補正用波長λ2の正規反射光と非正規反射光の強度比から求めるために、「補正係数K=(補正用波長の正規反射光強度)÷(補正用波長の非正規反射光強度)」の計算を行う第三のステップS3を行う。
(V−4)補正係数Kをコンピュータに記憶させる第四のステップS4を行う。
(V−5)体液成分や水分子に吸収されやすく他の生体物質に吸収されにくい近赤外線の測定用波長λ1を生体組織の表面に照射する第五のステップS5を行う。
(V−6)測定用波長λ1の正規反射光と非正規反射光を取得する第六のステップS6を行う。
(V−7)測定用波長λ1の非正規反射光の強度を補正するために、「補正済非正規反射光=測定用波長の非正規反射光強度×補正係数K」の計算を行う第七のステップS7を行う。
(V−8)ランベルト・ベールの法則に従って体液成分や水分量を算出するために、光軸上における正規焦点面と非正規焦点面の距離と、測定用波長λ1の体液成分や水分子に対する計算上のモル吸光度係数とを予めキャリブレーションして求めておくことで、測定用波長λ1の正規反射光の強度と測定用波長λ1の補正済非正規反射光の強度を取得することにより、上記の計算式(3)に従って計算を実施する第八のステップS8を行うことで、近赤外線の照射部位の正規焦点面と非正規焦点面に挟まれた領域に含まれる体液成分や水分子のモル濃度cを算出する。
【0097】
本実施形態において、補正用波長λ2の体液成分や水分子に対する計算上のモル吸光度係数の大きさが無視できない場合、測定用波長λ1の体液成分や水分子に対するモル吸光度係数をε
xとし、補正用波長λ2の体液成分や水分子に対するモル吸光度係数をε
yとすると、計算上の測定用波長λ1の体液成分や水分子に対するモル吸光度係数をε = ε
x−ε
yとして補正し、εをランベルト・ベールの法則式に適用するモル吸光度係数とすることが望ましい。
【0098】
<第6の実施形態>
本発明は、
図9に示すように、測定深度を変えて体内組織内に存在する物質量を把握するための測定方法にも応用することができる。測定深度に応じた物質量、例えば、水分量の測定方法は、次のようにして行われる。
【0099】
(VI−1)
図9の(a)に示すように、地点A(地点A〜A’の領域)の水分量を測定する。ここで、地点A及び地点A’は、それぞれ正規焦点面及び非正規焦点面となる位置である。
(VI−2)測定深度を変えて地点Bの水分量を測定する。地点Bの場合も、地点Aの場合と同じように、正規焦点面(B)及び非正規焦点面(B’)を設定する。
(VI−3)更に、地点C、地点D・・・と測定深度を変えて水分量を測定する。地点C、地点D、・・・の場合も、それぞれ個別の正規焦点面及び非正規焦点面を設ける。
(VI−3)これらの測定データをコンピュータ等の演算処理手段によって編集し、「測定深度」と「水分量」の関係を可視化する。
【0100】
本実施形態では、さらに、以下の方法を採用することができる。
(i)地点A’位置は、地点Bと等しい場合でも良いものとする。この場合は、地点Bが非正規焦点面として処理される。以下、地点B’を地点Cと等しい場合とするように、それより深度が深い地点においても同様の取扱いをすることができる。
(ii)測定深度を変えられる範囲は、使用する対物レンズの作動距離(WD)に依存する。よって、例えばWD=1.2cmの倍率20倍の対物レンズであれば、測定深度は0〜1.2cmの範囲とする。ただし、対物レンズに他のレンズを組み合わせることで、合計の作動距離を変えた場合、対物レンズの作動距離とは異なる測定深度の範囲を測定できるものとする。
(iii)測定深度を変える手段は、本機能を有している測定装置(対物レンズ、近赤外線光源、共焦点ユニット、検出器、ハーフミラーなどを含む)と、測定装置支えで構成される。この測定装置支えは、測定装置支えを測定対象に接触させることで、測定装置を固定しやすくするためのものである。また、この測定装置支えは、例えばピエゾ素子またはステッピングモータなどを有しており、電気的に測定装置支え長さを変動させられることが望ましい。この測定装置支え長さを変えることで、測定装置の内部を変動させることなく、測定装置の測定深度を変えることができる。
【0101】
このようにして、
図9の(b)に示すように、測定対象部位における深度と前記測定対象部位に存在する水分の含有量との関係が把握できる。本機能によって、測定対象部位の深度を厳密に把握していなくても、測定対象生体組織と測定対象外生体組織(例えば血管内や水分量の多い部位など)の水分量を可視化し、区別することができる(血管内の水分量を約100%と仮定した場合に限る)。よって、測定対象外組織を除いた領域の水分量を知ることができると期待できる。
【0102】
以上のように、上記の第1、第2、第3及び第4の何れかの実施形態によって、近赤外線が生体内部に届く範囲且つ対物レンズの作動距離の範囲で、共焦点光学系を使用して、任意の深さ位置にある正規焦点面だけから発する正規反射光の強度と、非正規焦点面だけから発する非正規反射光の強度を、同時に取得することを本発明の第一の効果とする。
【0103】
上記の第5の実施形態によって、近赤外線が入射光として体内に侵入したとき、体表から深さに依存して入射光が減衰する要因を「光吸収」だけに近似することを本発明の第二の効果とする。
【0104】
本発明の第1〜第4の何れかの実施形態と第5の実施形態とを組み合わせて、近赤外線が生体内部に届く範囲且つ対物レンズの作動距離の範囲で、近赤外線を使って、ランベルト・ベールの法則に従って、任意の深さ領域の水分量を算出することを本発明の第三の効果とする。
【0105】
さらに、本発明は、第6の実施形態のように、測定対象部位の深度を厳密に把握していなくても、測定対象生体組織と測定対象外生体組織(例えば血管内や水など)の水分量を可視化し、区別することができる測定方法としての応用が可能である。それによって、測定対象外生体組織を除いた領域の水分量をより精度良く知ることを本発明の第四の効果とする。
【0106】
以上のように、近赤外線は、可視光よりも生体組織の透過性が高く、X線よりも低侵襲性であることが注目されており、血管壁構造の新しい評価方法として利用できる可能性と、皮膚から浅い部位に存在する臓器の体液成分量や水分量を測定できる可能性がある。そのため、この近赤外線の特徴を生かした本発明は、薬を使わない生体組織のモニタリングとして、今後の医療分野に利用できる。さらに、本発明は、医療分野だけでなく、半導体製造プロセスや食品等の分野において、例えば水分量の測定や管理等にも適用することができ、その有用性は極めて高い。