(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係るブレーキ制御装置が適用される作業車両の一実施の形態について説明する。
―第1の実施の形態―
図1は、本実施の形態の作業車両の一例としてのホイール式油圧ショベル(以下、ホイールショベル100と記す)の側面図である。なお、説明の便宜上、
図1に示したように前後および上下方向を規定する。
【0009】
ホイールショベル100は、走行体101と、走行体101上に旋回可能に搭載された旋回体102とを有する。走行体101には、走行用の油圧モータ(以下、走行モータと記す)が搭載され、走行モータの駆動によりタイヤ105が回転する。旋回体102には運転室104およびフロント作業装置110が設けられている。旋回体102の後部には、作業時の機体のバランスをとるためのカウンタウエイト109が取り付けられている。
【0010】
フロント作業装置110は、ブーム106、アーム107、および、バケット108を備える。ブーム106およびアーム107は、ブームシリンダ116およびアームシリンダ117によってそれぞれ駆動されて起伏する。バケット108は、アーム107の先端において、アーム107に対して上下方向に回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ118によって駆動される。
【0011】
図2は、ブレーキ制御装置の概略構成を示す図である。エンジン190により駆動されるメインポンプ130からの圧油は、弁ユニット140を介して走行モータ115、ブームシリンダ116およびアームシリンダ117に供給される。弁ユニット140は、各油圧アクチュエータ115,116,117に供給される圧油の流れを制御するオープンセンタ型の方向制御弁145,146,147を備えている。各方向制御弁145,146,147は、メインポンプ130とタンク199とを接続するセンタバイパスライン191に設けられている。
【0012】
エンジン190により駆動されるパイロットポンプ131からの圧油は、走行操作ペダル155、ブーム操作レバー156、アーム操作レバー157のそれぞれが備えるパイロットバルブに供給される。各操作部材155,156,157を操作すると、各パイロットバルブによりパイロット2次圧力が発生する。各パイロットバルブで発生したパイロット2次圧力は、走行用の方向制御弁145、ブーム用の方向制御弁146、および、アーム用の方向制御弁147のそれぞれのパイロットポートに作用する。このため、各操作部材155,156,157の操作量に応じて、操作された操作部材155,156,157に対応する方向制御弁145,146,147のスプールが駆動される。
【0013】
走行モータ115の回転は、トランスミッション150によって変速され、車軸(不図示)、アクスル(不図示)を介してタイヤ105に伝達され、ホイールショベル100が走行する。
【0014】
トランスミッション150は、図示しないサンギア、プラネタリギア、リングギアからなる遊星減速機構と、サンギア側およびリングギア側にそれぞれ設けられたクラッチ150a,150bとを有する周知のものである。図示は省略するが、クラッチ150a,150bは、それぞればねを内蔵したクラッチ用シリンダを有し、ばねの付勢力によりクラッチ用シリンダがディスクに押圧されることで、クラッチ150a,150bは係合状態とされる。ばね力に抗して作用するパイロットポンプ131からの油圧力によりクラッチ用シリンダの押圧力が除去されることで、クラッチ150a,150bは解放状態とされる。クラッチ150a,150bに作用する油圧力は、電磁切換弁151の駆動によって制御される。なお、ばねの付勢力によって係合状態とされ、油圧力によって解放状態とされるようなクラッチをネガティブ型のクラッチと呼ぶ。
【0015】
電磁切換弁151は、変速スイッチ158や駐車ブレーキスイッチ159の操作に応じてコントローラ120から出力される制御信号によって切り換わる。電磁切換弁151が位置(A)に切り換わると、パイロットポンプ131からの圧油がクラッチ150aに作用する。これによりクラッチ150aが解放、クラッチ150bが係合状態とされ、トランスミッション150は所定の変速比R1(ローギア)となり、低速高トルクの1速走行が可能となる。
【0016】
電磁切換弁151が位置(B)に切り換わると、パイロットポンプ131からの圧油がクラッチ150bに作用する。これによりクラッチ150bが解放、クラッチ150aが係合状態とされ、トランスミッション150は所定の変速比R2(ハイギア)となり、高速低トルクの2速走行が可能となる。なお、変速比R1は変速比R2より大きい。
【0017】
電磁切換弁151が位置(C)に切り換わると、クラッチ150a,150bはタンク199に連通する。この場合は、クラッチ150aおよび150bはばね力によって係合状態とされるため、トランスミッション150がロックされて車軸の回転が阻止される。
【0018】
本実施の形態では、車軸の回転を阻止させるクラッチ150a,150bを、ホイールショベル100を駐車させるための駐車ブレーキとして用いる。駐車ブレーキを解除する場合は、一方のクラッチ150aまたは150bに圧油(ブレーキ解除圧)を作用させ、クラッチ150aまたは150bを解放状態とする。なお、ばねの付勢力によって作動し、油圧力によって解除されるようなブレーキをネガティブ型の駐車ブレーキと呼ぶ。電磁切換弁151は、後述するブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152により自動モードが設定されている場合であって、駐車ブレーキ作動条件が成立したときには位置(C)に切り換わり、駐車ブレーキ作動条件が成立していないときには変速スイッチ158の操作位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わる。
【0019】
ホイールショベル100には、ブレーキペダル161の操作に応じた制動力を発生する周知の油圧フットブレーキ(サービスブレーキ)が設けられている。フットブレーキ用のパイロット回路は、エンジン190によって駆動されて圧油を生成する油圧源132と、ブレーキペダル161の踏み込みに応じてパイロット2次圧力(ブレーキ作動圧)を発生するブレーキバルブ162とを有する。ブレーキペダル161の操作により、ブレーキバルブ162からのブレーキ作動圧が、それぞれ前輪用のブレーキ部163および後輪用のブレーキ部164に作用する。これによりブレーキペダル161の操作に応じてブレーキ部163,164が作動し、ブレーキ部163,164を走行時にサービスブレーキとして用いることができる。
【0020】
ブレーキバルブ162には、電磁切換弁165を介してパイロットポンプ131が接続されている。電磁切換弁165は、作業ブレーキスイッチ154の操作に応じてコントローラ120からの信号により切り換わる。電磁切換弁165が位置(A)に切り換わると、パイロットポンプ131からのパイロット圧がブレーキバルブ162に作用する。これによりブレーキバルブ162が駆動され、油圧源132からの圧油がブレーキ部163,164に作用する。このためブレーキペダル161を操作しなくても、作業ブレーキスイッチ154を操作することでブレーキ部163,164を作動でき、ブレーキ部163,164を作業時に作業ブレーキとして用いることができる。すなわち、本実施の形態のホイールショベル100では、油圧源132からの圧油によってブレーキ部163,164を油圧ロックしてブレーキ部163,164を継続して動作させることで、ブレーキ部163,164を作業ブレーキとして用いる。
【0021】
一方、電磁切換弁165が位置(B)に切り換わると、パイロットポンプ131からブレーキバルブ162へのパイロット圧の作用が停止する。この状態では、作業ブレーキが解除され、ブレーキペダル161の操作によりブレーキ部163,164を作動できる。電磁切換弁165は、後述するブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152により自動モードが設定されている場合であって、作業ブレーキ作動条件が成立したときには位置(A)に切り換わり、ブレーキペダル161の操作に拘らず作業ブレーキが作動し、作業ブレーキ作動条件が成立していないときには位置(B)に切り換わる。
【0022】
コントローラ120は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されている。コントローラ120は、ホイールショベル100のシステム全体の制御を行っており、作業ブレーキや駐車ブレーキの作動の制御も行っている。
【0023】
コントローラ120には、作業操作が行われているか否かを検出するための圧力センサ171と、走行操作が行われているか否かを検出するための圧力センサ172と、ホイールショベル100が走行状態であるか停止状態であるかを検出するための車速センサ173と、変速スイッチ158と、駐車ブレーキスイッチ159と、作業ブレーキスイッチ154と、ブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152とが接続されている。車速センサ173は、車速を検出するセンサである。
【0024】
圧力センサ171と、ブーム操作レバー156およびアーム操作レバー157との間には、複数の高圧選択弁196,197,198が配置されており、ブーム操作レバー156およびアーム操作レバー157のそれぞれのパイロットバルブから出力されるパイロット2次圧力のうちで最も高い圧力が圧力センサ171によって検出される。
【0025】
圧力センサ172と、走行操作ペダル155との間には、高圧選択弁195が配置されており、走行操作ペダル155のパイロットバルブから出力される前進または後進指示信号としてのパイロット2次圧力のうちで高い圧力が圧力センサ172によって検出される。
【0026】
変速スイッチ158は、トランスミッション150を1速または2速に変速するための操作スイッチである。変速スイッチ158は、1速に選択されるとトランスミッション150をローギアとする信号をコントローラ120に出力し、2速に選択されるとトランスミッション150をハイギアとする信号をコントローラ120に出力する。
【0027】
駐車ブレーキスイッチ159は、駐車ブレーキの作動または解除を指示するための操作スイッチである。駐車ブレーキスイッチ159は、オンされると駐車ブレーキの作動を指示する信号(駐車ブレーキ作動信号)をコントローラ120に出力し、オフされると駐車ブレーキの解除を指示する信号(駐車ブレーキ解除信号)をコントローラ120に出力する。
【0028】
作業ブレーキスイッチ154は、作業ブレーキの作動または解除を指示するための操作スイッチである。作業ブレーキスイッチ154は、オンされると作業ブレーキの作動を指示する信号(作業ブレーキ作動信号)をコントローラ120に出力し、オフされると作業ブレーキの解除を指示する信号(作業ブレーキ解除信号)をコントローラ120に出力する。
【0029】
駐車ブレーキスイッチ159と作業ブレーキスイッチ154とは、同時にオンされることがないように構成されている。たとえば1つのダイヤルによって、駐車ブレーキのみを作動させる選択位置と、作業ブレーキのみを作動させる選択位置を択一的に選択するように構成される。このため、駐車ブレーキスイッチ159がオンされると、作業ブレーキスイッチ154がオフされ、作業ブレーキスイッチ154がオンされると駐車ブレーキスイッチ159がオフされる。
【0030】
したがって、駐車ブレーキ作動信号と作業ブレーキ作動信号とが同時にコントローラ120に出力されることはない。これは、たとえば作業ブレーキを作動させて掘削作業を行う際に、掘削作業の負荷によって作業ブレーキの制動力に抗してホイールショベル100の車体が移動してしまうと、駐車ブレーキが作動している場合には駐車ブレーキ(すなわちトランスミッション150)に過大な負荷が掛かるおそれがあるからである。
【0031】
ブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152は、手動モードと自動モードとを設定するスイッチである。手動モードが設定されると、コントローラ120は、上記したように、作業ブレーキスイッチ154および駐車ブレーキスイッチ159からの信号に応じて作業ブレーキおよび駐車ブレーキの作動または解除を制御する。自動モードが設定されると、コントローラ120は、作業ブレーキスイッチ154および駐車ブレーキスイッチ159からの信号を無効として、後述する所定の条件に応じて自動で作業ブレーキおよび駐車ブレーキの作動または解除を制御する。
【0032】
コントローラ120は、圧力センサ171で検出された圧力P1が閾値Pt1以上であるか否かを判定する作業操作判定部121と、圧力センサ172で検出された圧力P2が閾値Pt2未満であるか否かを判定する走行操作判定部122と、車速センサ173で検出された車速Vが閾値Vt未満であるか否かを判定する走行/停止状態判定部123とを機能的に備える。
【0033】
閾値Pt1,Pt2,Vtは、予め記憶装置に記憶されている。閾値Pt1は、フロント作業装置110の操作が行われているか否かを判定するために用いられる閾値である。閾値Pt1は、操作装置156,157のパイロットバルブで発生するパイロット2次圧力において、フロント作業装置110が駆動を開始するパイロット2次圧力を考慮して設定される。作業操作判定部121は、圧力センサ171で検出された圧力P1が閾値Pt1未満であるときには作業操作が行われていないと判定し、圧力センサ171で検出された圧力P1が閾値Pt1以上であるときには作業操作が行われていると判定する。
【0034】
閾値Pt2は、走行操作が行われているか否かを判定するために用いられる閾値である。閾値Pt2は、走行操作ペダル155のパイロットバルブで発生するパイロット2次圧力において、ホイールショベル100が走行を開始するパイロット2次圧力を考慮して設定される。走行操作判定部122は、圧力センサ172で検出された圧力P2が閾値Pt2未満であるときには走行操作が行われていないと判定し、圧力センサ172で検出された圧力P2が閾値Pt2以上であるときには走行操作が行われていると判定する。
【0035】
閾値Vtは、ホイールショベル100が走行状態であるか停止状態であるかを判定するために用いられる閾値であり、たとえば、1km/h程度に設定される。走行/停止状態判定部123は、車速Vが閾値Vt未満であるときには停止状態と判定し、車速Vが閾値Vt以上であるときには走行状態と判定する。
【0036】
コントローラ120は、走行/停止状態判定部123により停止状態であることが判定され、かつ、走行操作判定部122により走行操作が行われていないことが判定され、かつ、作業操作判定部121により作業操作が行われていることが判定されると、作業ブレーキ作動条件が成立したと判定する作業ブレーキ作動条件判定部124を機能的に備える。
【0037】
コントローラ120は、走行/停止状態判定部123により停止状態であることが判定され、かつ、走行操作判定部122により走行操作が行われていないことが判定され、かつ、作業操作判定部121により作業操作が行われていないことが判定されると、駐車ブレーキ作動条件が成立したと判定する駐車ブレーキ作動条件判定部125を機能的に備える。
【0038】
ブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152により自動モードに設定されると、駐車ブレーキスイッチ159および作業ブレーキスイッチ154は機能しなくなり、所定の条件に応じて、作業ブレーキおよび駐車ブレーキの作動または解除が制御される。
【0039】
自動モードで、駐車ブレーキ作動条件判定部125により駐車ブレーキ作動条件が成立したことが判定されると、コントローラ120は、電磁切換弁151を位置(C)に切り換える制御信号を電磁切換弁151に出力し、駐車ブレーキを作動させる。また、自動モードで、駐車ブレーキ作動条件判定部125により駐車ブレーキ作動条件が成立したことが判定されると、コントローラ120は、電磁切換弁165を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力し、作業ブレーキを解除する。
【0040】
自動モードで、作業ブレーキ作動条件判定部124により作業ブレーキ作動条件が成立したことが判定されると、コントローラ120は、電磁切換弁165を位置(A)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力し、作業ブレーキを作動させる。また、自動モードで、作業ブレーキ作動条件判定部124により作業ブレーキ作動条件が成立したことが判定されると、コントローラ120は、電磁切換弁151を位置(C)以外の位置であって、変速スイッチ158の選択位置に応じた1速位置である位置(A)または2速位置である位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁151に出力し、駐車ブレーキを解除する。
【0041】
自動モードで、判定部125,124により駐車ブレーキ作動条件および作業ブレーキ作動条件が共に非成立であることが判定されると、コントローラ120は、電磁切換弁165を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力し、作業ブレーキを解除する。また、自動モードで、判定部125,124により駐車ブレーキ作動条件および作業ブレーキ作動条件が共に非成立であることが判定されると、電磁切換弁151を変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁151に出力し、駐車ブレーキを解除する。
【0042】
図3は、コントローラ120により実行されるブレーキ制御プログラムによる処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチのオンにより開始され、図示しない初期設定を行った後、所定の制御周期ごとにステップS111以降の処理が繰り返し実行される。なお、初期設定において、コントローラ120は、フラグIおよびフラグJをそれぞれ0に設定する。本図では、自動モードが設定されているときの処理について示している。
【0043】
ステップS111において、コントローラ120は、車速センサ173で検出された車速情報、圧力センサ171,172のそれぞれで検出された圧力情報を取得し、ステップS121へ進む。
【0044】
ステップS121において、コントローラ120は、ステップS111で取得した車速Vが閾値Vt未満か否かを判定する。ステップS121において肯定判定されるとステップS131へ進み、否定判定されるとステップS175へ進む。
【0045】
ステップS131において、コントローラ120は、ステップS111で取得した圧力P2が閾値Pt2未満か否かを判定する。ステップS131において肯定判定されるとステップS141へ進み、否定判定されるとステップS175へ進む。
【0046】
ステップS121やステップS131で否定判定された場合、ステップS175において、コントローラ120は、変速スイッチ158の選択位置に応じて電磁切換弁151を位置(A)または位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁151に出力して駐車ブレーキを解除し、電磁切換弁165を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力して作業ブレーキを解除し、ステップS177に進む。
【0047】
ステップS177において、コントローラ120は、フラグIおよびJをそれぞれ0に設定して、
図3のフローチャートに示す処理を終了する。
【0048】
ステップS141において、コントローラ120は、ステップS111で取得した圧力P1が閾値Pt1以上か否かを判定する。ステップS141において肯定判定されるとステップS150へ進み、否定判定されるとステップS160へ進む。
【0049】
ステップS150において、コントローラ120は、フラグIが1に設定されているか否かを判定する。ステップS150において否定判定されるとステップS151へ進み、肯定判定されるとステップS155へ進む。
【0050】
ステップS151において、コントローラ120は、内蔵するタイマ(不図示)を0に設定した後、時間の計測を開始して、ステップS153へ進む。
【0051】
ステップS153において、コントローラ120は、タイマによる計測時間tが閾値t1以上であるか否かを判定する。タイマによる計測は、計測時間tが閾値t1を経過するまで行われる。コントローラ120は、ステップS153の処理を肯定判定されるまで繰り返し実行し、肯定判定されるとステップS155へ進む。閾値t1は、予め記憶装置に記憶されており、たとえば数秒程度に設定されている。
【0052】
ステップS155において、コントローラ120は、変速スイッチ158の選択位置に応じて電磁切換弁151を位置(A)または位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁151に出力して駐車ブレーキを解除し、電磁切換弁165を位置(A)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力して作業ブレーキを作動させ、ステップS157に進む。ステップS157において、コントローラ120は、フラグIを1に設定するとともにフラグJを0に設定して、
図3のフローチャートに示す処理を終了する。
【0053】
ステップS141において、圧力P1が閾値Pt1未満であると判定されると、コントローラ120はステップS160において、フラグJが1に設定されているか否かを判定する。ステップS160において否定判定されるとステップS161へ進み、肯定判定されるとステップS165へ進む。
【0054】
ステップS161において、コントローラ120は、内蔵するタイマ(不図示)を0に設定した後、時間の計測を開始して、ステップS163へ進む。
【0055】
ステップS163において、コントローラ120は、タイマによる計測時間tが閾値t2以上であるか否かを判定する。タイマによる計測は、計測時間tが閾値t2を経過するまで行われる。コントローラ120は、ステップS163の処理を肯定判定されるまで繰り返し実行し、肯定判定されるとステップS165へ進む。閾値t2は、予め記憶装置に記憶されており、たとえば数秒程度に設定されている。
【0056】
ステップS165において、コントローラ120は、電磁切換弁151を位置(C)に切り換える制御信号を電磁切換弁151に出力して駐車ブレーキを作動させ、電磁切換弁165を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力して作業ブレーキを解除し、ステップS167に進む。ステップS167において、コントローラ120は、フラグJを1に設定するとともにフラグIを0に設定して、
図3のフローチャートに示す処理を終了する。なお、上記したように、ステップS157,167,177のフラグ設定処理が終了した後は、所定の制御周期でステップS111以降の処理が繰り返し実行される。
【0057】
第1の実施の形態において、ブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152により自動モードが設定された状態での動作をまとめると次のようになる。
(α)ホイールショベル100が走行状態である場合には、電磁切換弁165は位置(B)に切り換わり、電磁切換弁151は変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わる(ステップS121,S175)。その結果、作業操作および走行操作に拘らず、作業ブレーキおよび駐車ブレーキは解除状態となる。
【0058】
(β)走行操作が行われた場合、(i)と同様に、電磁切換弁165は位置(B)に切り換わり、電磁切換弁151は変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わる(ステップS131,S175)。その結果、作業ブレーキおよび駐車ブレーキは解除状態となる。
【0059】
(γ)ホイールショベル100が停止状態である場合であって、かつ、走行操作が行われていない場合において(ステップS121,S131,S141)
(γ−i)作業操作が行われていない場合には、電磁切換弁151は位置(C)に切り換わり、電磁切換弁165は位置(B)に切り換わる(ステップS141,S165)。その結果、駐車ブレーキは作動状態となり、作業ブレーキは解除状態となる。
(γ−ii)作業操作が行われている場合には、電磁切換弁165は位置(A)に切り換わり、電磁切換弁151は変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わる(ステップS141,S155)。その結果、作業ブレーキは作動状態となり、駐車ブレーキは解除状態となる。
【0060】
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)作業ブレーキ作動条件が成立したと判定されると、すなわち、停止状態であることが検出され、かつ、走行操作が行われていないことが検出され、かつ、作業操作が行われていることが検出されると、ブレーキペダル161の操作に拘わらず作業ブレーキを作動させるようにした。これにより、走行中のホイールショベル100を停止させ、作業を開始する際、作業ブレーキスイッチ154を操作しなくても自動で作業ブレーキが作動される。その結果、オペレータの操作負担を軽減できる。
【0061】
(2)走行状態であることが検出され、あるいは、走行操作が行われていることが検出され、あるいは、作業操作が行われていないことが検出されると、作業ブレーキを解除させるようにした。これにより、ホイールショベル100による作業を中止し、走行を開始する際、作業ブレーキスイッチ154を操作しなくても自動で作業ブレーキが解除される。その結果、オペレータの操作負担を軽減できる。
【0062】
(3)駐車ブレーキ作動条件が成立したと判定されると、すなわち、停止状態であることが検出され、かつ、走行操作が行われていないことが検出され、かつ、作業操作が行われていないことが検出されると、駐車ブレーキを作動させるようにした。これにより、作業または走行を終了する際、駐車ブレーキスイッチ159を操作しなくても自動で駐車ブレーキが作動される。その結果、オペレータの操作負担を軽減できる。
【0063】
(4)走行状態であることが検出され、あるいは、走行操作が行われていることが検出され、あるいは、作業操作が行われていることが検出されると、駐車ブレーキを解除させるようにした。これにより、駐車状態から作業または走行を開始する際、駐車ブレーキスイッチ159を操作しなくても自動で駐車ブレーキが解除される。その結果、オペレータの操作負担を軽減できる。
【0064】
(5)(1)〜(4)のとおり、本実施の形態によれば、運転操作性が向上されているため、作業効率の向上を図ることができる。
【0065】
(6)作業ブレーキ作動条件が成立してから所定時間t1を経過したときに作業ブレーキを作動させ、駐車ブレーキ作動条件が成立してから所定時間t2を経過したときに駐車ブレーキを作動させるようにした。これにより、走行中のホイールショベル100を停止させる際、急に作業ブレーキまたは駐車ブレーキが作動して、ショックが発生することが防止される。一方、走行を開始する際には、走行操作ペダル155の操作が検出されることにより、作業ブレーキおよび駐車ブレーキを解除するため、速やかに発進できる。
【0066】
―第2の実施の形態―
図4〜
図6を参照して第2の実施の形態に係るブレーキ制御装置について説明する。図中、第1の実施の形態と同一または相当部分には同一符号を付し、相違点について主に説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を示す図である。
【0067】
第1の実施の形態では、圧力センサ171,172と、作業操作判定部121および走行操作判定部122とにより走行操作や作業操作が行われているかを検出する構成とされていた。これに対して、第2の実施の形態では、パイロット式切換弁281,282により走行操作や作業操作が行われているかを検出する構成とされている。なお、第2の実施の形態では、ブレーキ手動/自動モード切換えスイッチ152、作業ブレーキスイッチ154、駐車ブレーキスイッチ159は設けられていない。
【0068】
第2の実施の形態に係るブレーキ制御装置は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置の圧力センサ171,172に代えて、パイロット式の第1切換弁281および第2切換弁282が設けられている。また、第2の実施の形態では、
図5に示す駐車ブレーキ用パイロット回路28を備え、電磁切換弁151に代えて、パイロット部251aを備える電磁切換弁251が設けられている。
【0069】
第1切換弁281は、ブーム操作レバー156およびアーム操作レバー157のそれぞれのパイロットバルブから出力されるパイロット2次圧力(作業用操作圧)のうちで最も高い圧力をパイロット部で検出する。つまり、第1切換弁281は、作業操作が行われているか否かを検出するパイロット式切換弁であって、第1切換弁281に所定値以上の圧力が作用すると、第1切換弁281が中立位置(A)から位置(B)に切り換わる。
【0070】
第2切換弁282は、走行操作ペダル155のパイロットバルブから出力される前進または後進指示信号としてのパイロット2次圧力(走行用操作圧)のうちで高い圧力をパイロット部で検出する。つまり、第2切換弁282は、走行操作が行われているか否かを検出するパイロット式切換弁であって、第2切換弁282に所定値以上の圧力が作用すると、第2切換弁282が中立位置(A)から位置(B)に切り換わる。
【0071】
図5は、駐車ブレーキ用のパイロット回路を示す図である。
図5に示すように、第2の実施の形態では、
図4の構成に加え、
図5に示す駐車ブレーキ用パイロット回路28を備えている。駐車ブレーキ用パイロット回路28は、エンジン190によって駆動されて圧油を生成する油圧源285と、作業用操作圧と走行用操作圧のうちで最も高い圧力を選択する高圧選択弁289と、高圧選択弁289からの圧油が供給されるパイロット式切換弁280と、パイロット式切換弁280と電磁切換弁251との間に介装される電磁切換弁287とを備えている。
【0072】
パイロット式切換弁280は、パイロット部に所定値未満の圧力が作用している状態では位置(A)で保持され、パイロット部に所定値以上の圧力が作用すると位置(B)に切り換わる。後述する電磁切換弁287が位置(A)に保持されている状態で、パイロット式切換弁280が位置(A)に切り換わると、油圧源285からのパイロット圧が電磁切換弁251のパイロット部251aに作用する。一方、パイロット式切換弁280が位置(B)に切り換わると、後述する電磁切換弁287が位置(A)に切り換えられている状態であっても油圧源285からのパイロット圧は遮断され、電磁切換弁251のパイロット部251aへのパイロット圧の作用が停止する。
【0073】
電磁切換弁287は、走行/停止状態判定部123により、走行状態が判定されたときに位置(B)に切り換わり、停止状態が判定されたときに位置(A)に切り換わるように制御される。電磁切換弁287が位置(B)に切り換わると、上記したパイロット式切換弁280が位置(A)に切り換えられている状態であっても油圧源285からのパイロット圧は遮断される。
【0074】
電磁切換弁251は、パイロット部251aに油圧源285からのパイロット圧が作用すると、変速スイッチ158の選択位置に拘らず、位置(C)に切り換わる。
【0075】
第2の実施の形態では、コントローラ220は、車速センサ173で検出された車速Vが閾値Vt未満であるか否かを判定する走行/停止状態判定部123を機能的に備えている。走行/停止状態判定部123は、車速Vが閾値Vt未満であるときには停止状態と判定し、車速Vが閾値Vt以上であるときには走行状態と判定する。
【0076】
コントローラ220は、走行/停止状態判定部123により停止状態であることが判定されると、電磁切換弁165を位置(A)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力する。コントローラ220は、走行/停止状態判定部123により走行状態であることが判定されると、電磁切換弁165を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力する。
【0077】
さらに、コントローラ220は、走行/停止状態判定部123により停止状態であることが判定されると、電磁切換弁287を位置(A)に切り換える制御信号を電磁切換弁287に出力する。コントローラ220は、走行/停止状態判定部123により走行状態であることが判定されると、電磁切換弁287を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁287に出力する。
【0078】
図6は、コントローラ220により実行されるブレーキ制御プログラムによる処理の一例を示すフローチャートであり、
図3のフローチャートのステップS111,S175に代えて、ステップS211,S275,S285の処理を実行し、
図3のフローチャートのステップS131〜S167およびS177の処理については実行しない。このフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチのオンにより開始され、所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。
【0079】
図6に示すように、ステップS211において、コントローラ220は、車速センサ173で検出された車速情報を取得し、ステップS121へ進む。ステップS121において、コントローラ220は、ステップS211で取得した車速Vが閾値Vt未満か否かを判定する。ステップS121において肯定判定されるとステップS285へ進み、否定判定されるとステップS275へ進む。
【0080】
ステップS285において、コントローラ220は、電磁切換弁287を位置(A)に切り換える制御信号を電磁切換弁287に出力するとともに変速スイッチ158の選択位置に応じて電磁切換弁251を位置(A)または位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁251に出力する。さらに、コントローラ220は、電磁切換弁165を位置(A)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力して、
図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0081】
ステップS275において、コントローラ220は、電磁切換弁287を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁287に出力するとともに変速スイッチ158の選択位置に応じて電磁切換弁251を位置(A)または位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁251に出力する。さらに、コントローラ220は、電磁切換弁165を位置(B)に切り換える制御信号を電磁切換弁165に出力し、
図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0082】
第2の実施の形態に係るブレーキ制御装置の動作をまとめると次のようになる。
(α)ホイールショベル100が走行状態である場合には、電磁切換弁165および電磁切換弁287はそれぞれ位置(B)に切り換わる(ステップS121,S275)。電磁切換弁165が位置(B)に切り換わると、パイロットポンプ131からのパイロット圧がブレーキバルブ162に作用することはなく、作業ブレーキは解除状態となる。電磁切換弁287が位置(B)に切り換わると、油圧源285からのパイロット圧が電磁切換弁251のパイロット部251aに作用することはなく、電磁切換弁251は変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わる。その結果、駐車ブレーキは解除状態となる。つまり、ホイールショベル100が走行状態であることがコントローラ220により判定されると、作業操作および走行操作に拘らず、作業ブレーキおよび駐車ブレーキは解除状態となる。
【0083】
(β)走行操作が行われた場合、パイロット式切換弁280が位置(B)に切り換わる。このため、油圧源285からのパイロット圧が電磁切換弁251のパイロット部251aに作用することはなく、電磁切換弁251は変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わる。その結果、駐車ブレーキは解除状態となる。さらに、第2切換弁282は位置(B)に切り換わる。このため、パイロットポンプ131からのパイロット圧がブレーキバルブ162に作用することはなく、作業ブレーキは解除状態となる。
【0084】
(γ)ホイールショベル100が停止状態である場合には、電磁切換弁165,287はそれぞれ位置(A)に切り換わる。
(γ−i)停止状態である場合において、作業操作および走行操作のいずれも行われていない場合には、パイロット式切換弁280は位置(A)に切り換わる。その結果、油圧源285からのパイロット圧が電磁切換弁251のパイロット部251aに作用し、電磁切換弁251が変速スイッチ158の選択位置に拘らず、位置(C)に切り換わる。その結果、駐車ブレーキが作動状態となる。一方、第1切換弁281および第2切換弁282はそれぞれ位置(A)に切り換わるため、パイロットポンプ131からのパイロット圧がブレーキバルブ162に作用することはなく、作業ブレーキは解除状態となる。
【0085】
(γ−ii)停止状態である場合において、作業操作が行われ、かつ、走行操作が行われていない場合には、第1切換弁281が位置(B)に切り換わり、第2切換弁282は位置(A)に切り換わる。その結果、パイロットポンプ131からのパイロット圧がブレーキバルブ162に作用して、作業ブレーキは作動状態となる。一方、パイロット式切換弁280は位置(B)に切り換わる。その結果、油圧源285からのパイロット圧が電磁切換弁251のパイロット部251aに作用することはなく、電磁切換弁251は変速スイッチ158の選択位置に応じた位置(A)または位置(B)に切り換わり、駐車ブレーキは解除状態となる。
【0086】
なお、
図5に示すように、駐車ブレーキ用のパイロット回路28には、スローリターンバルブ288が設けられている。このため、走行中のホイールショベル100を停止させる際、急に駐車ブレーキが作動して、ショックが発生することが防止される。
【0087】
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した(1)〜(5)と同様の作用効果を奏する。
【0088】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
[変形例]
(1)上記した実施の形態では、走行状態であるか停止状態であるかを検出するために車速センサ173を用いたが、本発明はこれに限定されない。走行モータ115の回転数を検出するモータ回転数センサを用いて、ホイールショベル100が走行状態であるか停止状態であるかを検出するようにしてもよい。
【0089】
(2)第1の実施の形態では、ブーム操作レバー156のパイロットバルブで発生するパイロット2次圧力、および、アーム操作レバー157のパイロットバルブで発生するパイロット2次圧力に基づいて、作業操作が行われているか否かを判定するようにしたが、本発明はこれに限定されない。バケット操作レバーのパイロットバルブで発生するパイロット2次圧力に基づいて、作業操作が行われているか否かを判定してもよい。
【0090】
(3)第1の実施の形態では、作業操作を検出するために圧力センサ171を用い、走行操作を検出するために圧力センサ172を用いたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、操作レバーの操作角度を検出する角度センサを用いてもよい。
【0091】
(4)上記した実施の形態では、駐車ブレーキにトランスミッション150を利用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。トランスミッション150とは別に駐車ブレーキ装置を備えてもよい。
【0092】
(5)上記した実施の形態では、作業ブレーキにサービスブレーキ(フットブレーキ)を利用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。サービスブレーキとは別に作業ブレーキ装置を備えてもよい。
【0093】
(6)上記した実施の形態では、ホイールショベルに本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、ホイールローダ、フォークリフトなどの種々のホイール式作業車両のブレーキ制御装置に適用することができる。
【0094】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。