特許第5973329号(P5973329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973329
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/64 20060101AFI20160809BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20160809BHJP
   A62C 37/08 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   A62C35/64
   A62C35/68
   A62C37/08
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-260785(P2012-260785)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104247(P2014-104247A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】茨木 博
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−192440(JP,A)
【文献】 特開平10−192441(JP,A)
【文献】 特開平10−57518(JP,A)
【文献】 特開昭59−206511(JP,A)
【文献】 特開2011−24793(JP,A)
【文献】 特開2009−189700(JP,A)
【文献】 特開2012−161502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/00−37/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の高さ方向に設置された給水本管に消火用水を加圧供給する消火ポンプと、
前記消火ポンプを駆動するモータと、
前記建物の階別に前記給水本管から引き出された分岐管毎に設けられた複数のスプリンクラーヘッドと、
前記建物の分岐管に設けられ、弁開度の調整により1次側圧力を減圧して2次側圧力を所定圧力に制御する2次圧調整機能を備えた流水検知装置と、
周波数の設定に基づいて前記モータの回転数を制御するインバータを備え、火災に伴い前記スプリンクラーヘッドが作動した場合に前記モータによる消火ポンプの駆動で消火用水を加圧供給して放水させる制御装置と、
を備えた消火設備に於いて、
前記流水検知装置に弁開度を検出する開度検出器を設け、
前記制御装置は、
前記流水検知装置を設けた階数毎に、前記モータの回転数を制御する前記インバータの周波数データとして、前記スプリンクラーヘッドが作動した場合の所定の第1周波数データと、前記スプリンクラーヘッドの作動中に流量が増加した場合の、前記第1周波数データより高い所定の第2周波数データを予め記憶する記憶手段と、
火災発生階で前記スプリンクラーヘッドが作動した場合、前記火災発生階の階数に基づき、前記記憶手段から対応する第1周波数データを読み出して前記インバータにより前記モータの回転数を制御し、前記スプリンクラーヘッドの作動中に、前記開度検出器により前記流水検知装置の所定開度を超える弁開度の増加を検知した場合に、前記火災発生階の階数に基づき、前記記憶手段から対応する第2周波数データを読み出して前記インバータにより前記モータの回転数を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備に於いて、
前記開度検出器は、前記流水検知装置の開度が所定開度に増加した場合にオン又はオフするリミットスイッチであり、
前記制御装置は、前記スプリンクラーヘッドの作動中に、前記リミットスイッチのオン信号又はオフ信号を受信した場合、前記火災発生階の階数に基づき、前記記憶手段から対応する第2周波数データを読み出して前記インバータにより前記モータの回転数を制御することを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備に於いて、
前記開度検出器は、弁開度に応じて変化する開度検出信号を出力するポテンショメータであり、
前記制御装置は、前記スプリンクラーヘッドの作動中に、前記ポテンショメータからの開度検出信号が、所定開度を越えて増加した場合に、前記火災発生階の階数に基づき、前記記憶手段から対応する第2周波数データを読み出して前記インバータにより前記モータの回転数を制御することを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備に於いて、
前記開度検出器は、弁開度に応じて変化する開度検出信号を出力する非接触変位センサであり、
前記制御装置は、前記スプリンクラーヘッドの作動中に、前記非接触変位センサからの開度検出信号が、所定開度を越えて増加した場合に、前記火災発生階の階数に基づき、前記記憶手段から対応する第2周波数データを読み出して前記インバータにより前記モータの回転数を制御することを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水検知装置を介してスプリンクラーヘッドに消火用水を供給すると共にインバータによるモータ制御で消火ポンプを駆動する消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル等に設置されるスプリンクラー消火設備において、消火ポンプ設備に近い低層階などでは、スプリンクラーヘッドの放水圧力が規定の上限を超える場合がある。このような部分には、流水検知機能と減圧機能を備えた2次圧調圧機能付きの流水検知装置を設置している。
【0003】
流水検知装置は、1次側圧力の変動に係らず、2次側圧力が規定の放水圧力となるように、弁開度を自動的に制御する。また、火災の拡大によりスプリンクラーヘッドの作動台数が増加して放水流量に変化が生じた場合においても、2次側圧力が規定の放水圧力となるように、流水検知装置は弁開度を自動的に制御する。
【0004】
一方、近年にあっては、インバータの普及に伴い、消火ポンプを駆動するモータの制御にインバータを使用する消火設備が提案され、普及が始まっている。
【0005】
インバータ駆動の消火設備は、建物のフロア毎に消火ポンプの全揚程が決まることから、この全揚程に対応したポンプ駆動に必要なモータ回転数を与えるインバータの周波数をフロア毎に設定したデータテーブルを制御盤に予め記憶し、火災によりスプリンクラーヘッドが作動した場合、フロアに設けた2次圧調圧機能を持たない通常の流水検知装置の作動による流水検知信号を制御盤で受信し、データテーブルから火災フロアに対応したインバータ周波数を設定してモータ回転数を制御して最適な消火ポンプの運転を行うにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−024793号公報
【特許文献2】特開2009−189700号公報
【特許文献3】特開2012−161502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のインバータ駆動の消火設備にあっては、消火ポンプ駆動モータの回転数を制御するインバータの周波数データがフロア単位で設定されるため、例えば同一フロアの放水区画で火災拡大によりスプリンクラーヘッドの作動台数が増加して放水流量に変化があった場合、制御盤は放水流量の変化に応じたインバータ制御を行うことができず、消火ポンプ駆動モータの回転数は同じであるため、放水流量の増加に伴い放水圧力が低下する問題がある。
【0008】
このような問題は、2次側調圧機能付き流水検知装置を設けた消火設備をインバータ駆動とした場合に同様に起きる。即ち、インバータ駆動とした場合、消火ポンプ駆動モータの回転数を制御するインバータの周波数データをフロア単位で設定しており、火災の拡大によりスプリンクラーヘッドの作動台数が増加して放水流量に変化があった場合、流水検知装置は低下した2次側圧力を規定の放水圧力に回復するように弁開度を大きくする方向に制御するが、放水量の増加したことで例えば全開に制御しても2次側圧力が規定放水圧力に回復せずに制御不能となる場合があり、放水流量の増加に伴い放水圧力が低下してしまう問題がある。
【0009】
本発明は、スプリンクラーヘッドの作動台数の増加により放水流量が変化しても、消火ポンプ駆動モータのインバータ制御により流水検知装置による2次側圧力の自動制御を可能とする消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(消火設備)
建物の高さ方向に設置された給水本管に消火用水を加圧供給する消火ポンプと、
消火ポンプを駆動するモータと、
建物の階別に給水本管から引き出された分岐管毎に設けられた複数のスプリンクラーヘッドと、
建物の分岐管に設けられ、消火用水流水時に流水現象を検出すると共に弁開度の調整により2次側圧力を所定圧力に制御する2次圧調整機能を備えた流水検知装置と、
周波数の設定に基づいて前記モータの回転数を制御するインバータを備え、火災に伴いスプリンクラーヘッドが作動した場合にモータによる消火ポンプの駆動で消火用水を加圧供給して放水させる制御装置と、
を備えた消火設備に於いて、
流水検知装置に弁開度を検出する開度検出器を設け、
制御装置は、
流水検知装置を設けた階数毎に、モータの回転数を制御するインバータの周波数データとして、スプリンクラーヘッドが作動した場合の所定の第1周波数データと、スプリンクラーヘッドの作動中に流量が増加した場合の、前記第1周波数データより高い所定の第2周波数データを予め記憶する記憶手段と、
火災発生階でスプリンクラーヘッドが作動した場合、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する第1周波数データを読み出してインバータによりモータの回転数を制御し、スプリンクラーヘッドの作動中に、開度検出器により流水検知装置の所定開度を超える弁開度の増加を検知した場合に、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する第2周波数データを読み出してインバータによりモータの回転数を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
(リミットスイッチ)
開度検出器は、流水検知装置の開度が所定開度に増加した場合にオン又はオフするリミットスイッチであり、
制御装置は、スプリンクラーヘッドの作動中に、リミットスイッチのオン信号又はオフ信号を受信した場合、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する第2周波数データを読み出してインバータによりモータの回転数を制御する。
【0012】
(ポテンショメータ)
開度検出器は、弁開度に応じて変化する開度検出信号を出力するポテンショメータであり、
制御装置は、スプリンクラーヘッドの作動中に、ポテンショメータからの開度検出信号が、所定開度を越えて増加した場合に、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する第2周波数データを読み出してインバータによりモータの回転数を制御する。
【0013】
(非接触変位センサ)
開度検出器は、弁開度に応じて変化する開度検出信号を出力する非接触変位センサであり、
制御装置は、スプリンクラーヘッドの作動中に、非接触変位センサからの開度検出信号が、所定開度を越えて増加した場合に、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する第2周波数データを読み出してインバータによりモータの回転数を制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の消火設備によれば、火災によりスプリンクラーヘッドの1台が最初に作動して放水した場合、制御手段は、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する第1周波数データを読み出してポンプモータを最適回転数にインバータ制御し、スプリンクラーヘッドの作動中に、開度検出器により流水検知装置の所定開度を超える弁開度の増加を検知した場合に、火災発生階の階数に基づき、記憶手段から対応する、第1周波数データより高い第2周波数データを読み出してポンプモータの回転数を増加させるようにしたため、火災の拡大に伴いスプリンクラーヘッドの作動台数が増えて放水水量が増加しても、これに伴うインバータ制御によりポンプモータの回転数が増加され、流水検知装置の1次側圧力を高くすることで、スプリンクラーヘッドに必要放水圧力の消火水を供給することができ、消火抑制性能を維持することができる。
【0015】
そして、流水検知装置の1次側圧力を高くしたことによって、開度検出器が所定の弁開度以下となる弁開度信号を検知した場合は、制御装置はポンプのモータ回転数を低下させることなく、先に増加された回転数でポンプの運転制御をおこなう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による消火設備の実施形態を示した説明図
図2】制御装置に記憶するインバータ制御に用いるデータテーブルを示した説明図
図3図2のデータテーブルの作成に使用する放水流量とポンプ全揚程の関係を示したグラフ図
図4図1に設けた流水検知装置の実施形態を示した説明図
図5】スプリンクラーヘッドの作動台数の増加に対しインバータ周波数を変えない場合のモータ回転数、1次側圧力、弁開度、2次側圧力を示したタイムチャート
図6】本発明によりスプリンクラーヘッドの作動台数の増加に対しインバータ周波数を変えた場合のモータ回転数、1次側圧力、弁開度、2次側圧力を示したタイムチャート
図7図1に設けた流水検知装置の他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[消火設備の概要]
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、建物の地下階などのポンプ室に消火ポンプ10が設置され、インバータ制御可能なモータ(誘導モータ)12により駆動される。モータ12はポンプ制御盤32のインバータ制御により回転数を可変可能とする。消火ポンプ10はモータ12により駆動され、吸込み管により水源水槽14から消火用水を吸入し、建物の高さ方向に設置した給水本管16に消火用水を加圧供給する。
【0018】
消火ポンプ10に対しては起動用の空気タンク28を設けている。空気タンク28は給水本管16に接続し、配管内の加圧消火用水を導入して内部の空気を圧縮している。空気タンク28には圧力スイッチ30を設け、圧力スイッチ30は給水本管16の管内圧力が規定圧力以下に低下したことを検出してポンプ制御盤32に圧力低下検出信号を出力し、これによりモータ12を起動して消火ポンプ10の運転を開始する。
【0019】
給水本管16からは分岐管が放水区画、例えば建物の各階毎に引き出されている。低層階となる1F,2Fの分岐管の分岐部分には2次圧調圧機能付きの流水検知装置18(以下「調圧型流水検知装置」という)を設けている。また高層階となる3F,4Fの分岐管の分岐部分には2次圧調圧機能を持ない流水検知装置20を設けている。
【0020】
調圧型流水検知装置18は、分岐管にスプリンクラーヘッド22からの散水に伴う流動が生じると、弁を開くと共に、弁開度の調整により1次側圧力を減圧して2次側圧力を規定の放水圧力に制御すると共に、流水検出器24の作動により流水検知信号を火災受信盤38へ出力する。また調圧型流水検知装置18には弁開度を検出する開度検出器26を設けており、その検出信号をポンプ制御盤32へ出力する。
【0021】
2次圧調圧機能を持たない流水検知装置20は、分岐管にスプリンクラーヘッド22からの散水に伴う流動が生じると、弁体を開いて流水検出器24を作動し、流水検知信号を火災受信盤38へ出力する。
【0022】
調圧型流水検知装置18及び流水検知装置20の2次側の分岐管には閉鎖型のスプリンクラーヘッド22を複数設置している。閉鎖型のスプリンクラーヘッド22は感熱ヘッドとその作動により消火用水を散水する弁機構を一体に備えている。分岐管の末端側には末端試験弁23を設け、排水側に接続している。
【0023】
[ポンプ制御盤の構成]
(ポンプ制御盤の機能構成)
ポンプ制御盤32は、制御手段として機能する制御部34、記憶手段として機能する記憶部35、及びインバータ36を備えている。制御部34及び記憶部35のハードウェアとしては、CPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0024】
記憶部35は、調圧型流水検知装置18を設けた建物の階数毎に、モータ12の回転数を制御するインバータ36の周波数データとして、スプリンクラーヘッド22が作動した場合の所定の第1周波数データと、スプリンクラーヘッド22の作動中に流量が増加した場合の、第1周波数データより高い所定の第2周波数データを設定したデータテーブルを予め記憶している。
【0025】
図2はポンプ制御盤の記憶部に格納するデータテーブルの説明図であり、図2(A)は記憶内容を符号で示し、図2(B)は具体的な数値例を示している。
【0026】
図2(A)に示すように、データテーブルは、建物の階数として1階〜4階を縦欄とし、第1周波数データと第2周波数データを横欄とした2次元テーブルである。
【0027】
建物の1階を例にとると、スプリンクラーヘッド22が作動した場合の第1周波数データとしてf11を設定し、スプリンクラーヘッド22の作動中に流量が増加した場合の第2周波数データとしてf12を設定している。ここで、f11<f12の関係にある。インバータ周波数f11,f12の決め方は、図3を参照して説明すると次のようになる。
【0028】
図3は、図2(A)のデータテーブルの作成に使用する流量とポンプ水頭の関係を示したグラフ図であり、1階のインバータ周波数f11,f12を決める場合を例にとっている。
【0029】
図3において、横軸は流量を示し、縦軸は水頭を示している。図1の1Fの場合は負荷曲線R1となり、負荷曲線R1の水頭は、流量が零の場合について示すように、消火ポンプ10から1Fまでの高さによる水頭H1と、スプリンクラーヘッド22の規定放水圧力による端末圧H2に分けられる。
【0030】
ここでスプリンクラーヘッド22が1台作動した場合の流量をQ1,2台作動した場合の流量をQ2とすると、これらの流量Q1,Q2を得るための動作点は、流量Q1,Q2からの点線が負荷曲線R1と交わる動作点P1,P2となる。
【0031】
そこで、動作点P1,P2を通るH−Q特性を与える消火ポンプ10の回転数を決めるインバータ周波数は、スプリンクラーヘッドが作動した場合の動作点P1では第1周波数f11となり、スプリンクラーヘッドの作動中に例えば2台目が作動して流量が増加した場合の動作点P2ではそれより高い第2周波数f12となり、これを図2(A)のデータテーブルに格納する。
【0032】
図1の2Fについても、図3に示したと同様に、2Fの負荷曲線に基づき、スプリンクラーヘッドが作動した場合の第1周波数f21と、スプリンクラーヘッドの作動中に2台目が作動して流量が増加した場合のそれより高い第2周波数f22を決定し、これを図2(A)のデータテーブルに格納する。
【0033】
また、図2(A)のデータテーブルにあっては、2次調圧機能を持たない流水検知装置20を設けた3F,4Fの第1周波数データf31,f41も格納しており、これは図3に示したと同様に、3F,4Fの負荷曲線に基づき、1台作動の周波数f31,f41のみを決定し、これを図2(A)のデータテーブルに格納する。
【0034】
図2(B)は、データテーブルの具体例であり、インバータ36に設定する最上階となる4Fの第1周波数データf41を100%とし、調圧型流水検知装置18を設けた1F,2Fでスプリンクラーヘッドが作動した場合にインバータ36に設定する第1周波数データf11,f21は50%とし、スプリンクラーヘッドの作動中に流量が増加してインバータ36に設定する第2周波数データf12,f22は100%としている。また3Fのスプリンクラーヘッドが作動した場合にインバータ36に設定する第1周波数データf31も、4Fと同じ100%としている。
【0035】
ここで、100%とするインバータ周波数は、最上階となる4Fのインバータ周波数f41とする以外に、消火ポンプ10の最大定格回転数を与える最大定格インバータ周波数としても良い。
【0036】
再び図1を参照するに、ポンプ制御盤32の制御部34は、火災受信盤38を経由して受信した流水検知信号、例えば1Fの調圧型流水検知装置18に設けた流水検出器24から受信した流水検知信号に基づき、火災発生階1Fとそこでのスプリンクラーヘッド22の作動を判別し、記憶部35に格納している例えば図2(B)のデータテーブルを参照し、1階に対応した第1周波数データ50%を読み出し、インバータ36に第1周波数データ50%を設定する。
【0037】
制御部34は空気タンク28に設けた圧力スイッチ30から圧力低下検出信号を受信した場合、第1周波数データ50%を設定しているインバータ36によりモータ12の回転数を50%に制御して消火ポンプ10を駆動する制御を行う。
【0038】
また制御部34は、周波数データ50%によるインバータ制御中に、1Fの調圧型流水検知装置18に設けた開度検出器26により所定開度、例えば80%を超える弁開度の増加を検出した場合に、新たなスプリンクラーヘッドの作動等による流量増加と判断し、記憶部35に格納している例えば図2(B)のデータテーブルを参照し、1階に対応した第2周波数データ100%を読み出し、インバータ36に周波数データ100%を設定してモータ12の回転数を、それまでの50%から100%と倍増する回転数に制御して消火ポンプ10を駆動する。
【0039】
なお、調圧型流水検知装置18の2次側に補助散水栓を設けている場合は、補助散水栓を使用したことによる放水流量の増加についても、制御部34は、2台目のスプリンクラーヘッドが作動して流量が増加した場合と同様にして、インバータ36の第1周波数データ50%を第2周波数データ100%に変更して消火ポンプ10を駆動する制御を行うことを可能とする。
【0040】
[流水検知装置の構成]
図4図1に設けた調圧型流水検知装置の実施形態を示した説明図である。図4において、調圧型流水検知装置18は、弁ボディ102の下側に1次側の流入口104を形成し、ここに仕切弁106を介して1次側配管108を接続している。弁ボディ102の上側には2次側となる流出口110を形成し、ここに2次側配管112を接続し、2次側配管112の先にはスプリンクラーヘッドや補助散水栓が接続されている。
【0041】
弁ボディ102の内部には、後方にピストンを一体に形成した本弁114をシリンダ室120に摺動自在に組み込んでおり、弁ボディ102側に一体に形成した弁シート116に当接して、通常監視状態では閉鎖状態となっている。
【0042】
本弁114には同軸にガイドロッド122を連結し、ガイドロッド122の先端は右側に取り出されている。本弁114の背後(右側)にはスプリング118を設け、本弁114を閉鎖方向に付勢している。本弁114は、本弁1次側の加圧水をピストン背後側のシリンダ室120へ流入/流出することにより開閉される。
【0043】
本弁114が当接する弁シート116からは配管138を介して圧力スイッチを用いた流水検出器24を接続し、本弁114の開動作により2次側に供給する圧力水を導入するようしにている。流水検出器24は、本弁114が開放した場合に2次側圧力水を導入し、流水検出器24内に圧力水が流入した時にタイマを起動し、所定時間後に流水検知信号を外部に出力する。
【0044】
ピストンを一体に形成した本弁114とシリンダ室120は、調圧型流水検知装置18に設けた本弁114の本弁駆動機構を構成し、本弁駆動機構は本弁114の1次側と2次側を接続する配管130に設けた制御弁150により制御される。
【0045】
配管130に設けた制御弁150は、不作動流水量弁部152と調圧パイロット弁部154を同一軸上に一体に配置した弁構造を備えている。
【0046】
配管130は弁ボディ102の1次側から取り出し、ストレーナ142及び逆止弁144を介して制御弁150に設けた不作動流水量弁部152のポートaと調圧パイロット弁部154のポートcにそれぞれ分岐して接続している。また配管131は制御弁150に設けた不作動流水量弁部152のポートbから取り出し、定流量弁148を介して弁ボディ102の2次側に接続している。また配管133は制御弁150に設けた調圧パイロット弁部154のポートdから配管131を介して弁ボディ102の2次側に接続し、2次側圧力をポートdに導入している。
【0047】
制御弁150に設けた調圧パイロット弁部154は調圧制御用のポートeを持ち、ポートeは配管135を介してシリンダ室120のポートに接続している。
【0048】
シリンダ室120のポートには手動開放弁115を接続している。手動開放弁115は、調圧型流水検知装置18の本弁114の開制御が何らかの原因でできなくなった異常時に、手動開放弁115を開放することで、シリンダ室120の1次側圧力水を強制的に排水し、1次側圧力による本弁114の押上げで全開位置に作動できるようにしている。
【0049】
また流水検出器24に対する配管138は排水側に接続され、そこにオートドリップ136と逆止弁134を設けている。また弁ボディ102の2次側には排水管128が接続され、そこに排水弁138を設けている。
【0050】
制御弁150に設けた不作動流水量弁部152から引き出された2次側に対する配管126の途中には定流量弁148を設け、不作動流水量弁部152の制御で流す不作動流水量を一定流量とするようにしている。
【0051】
調圧型流水検知装置18の1次側には1次側圧力計156が接続され、2次側には2次側圧力計158が接続される。
【0052】
通常監視状態にあっては、本弁114は閉鎖状態にあり、このとき2次側配管112の圧力は予め定めた締切設定圧力となっている。
【0053】
通常監視状態で2次側配管112側の漏水などにより2次側圧力が締切設定圧力より低下すると、それまで閉鎖状態にあった不作動流水量弁部152が開作動し、配管130から開放した不作動流水量弁部152を通って、更に定流量弁148で決まる一定の不作動流水量の流水を2次側に供給し、低下した2次側圧力を締切設定圧力に回復させる。このとき本弁114は閉鎖状態にあり流水検出器24は作動しないことから、このときの流水を不作動流水と呼んでいる。
【0054】
火災などによりスプリンクラーヘッドが作動し、2次側配管に一定量を超える流水が発生すると、2次側圧力は締切設定圧力から急速に低下し、まず不作動流水量弁部152が開いて配管130により1次側圧力水を定流量弁148で決まる一定の流水量で2次側に供給するが、これでは2次側圧力は回復せず、締切設定圧力に対し低い圧力に設定した調圧パイロット設定圧力を下回ると、本弁114の開放による調圧制御が開始される。
【0055】
ここで調圧パイロット弁部154は、2次側圧力が調圧パイロット設定圧力(規定放水圧力)に低下するまではシリンダ室120をポートeからポートcを介して1次側の配管130との連通した状態としており、シリンダ室120に圧力水を保持し、本弁114は1次側圧力水の押圧とスプリング118による付勢により弁シート116に押付けられた閉鎖状態を維持している。
【0056】
この状態で2次側圧力が低下して調圧パイロット設定圧力以下になると、調圧パイロット弁部154はポートeからポートdを介してシリンダ室120の圧力水を2次側に排出する切替え状態となる。このためシリンダ室120から圧力水が排出されて本弁114を右方向にストロークさせ、本弁114の開放が行われる。
【0057】
本弁114が開放すると、1次側加圧水が2次側に供給されることで2次側圧力が回復し、2次側圧力が調圧パイロット設定圧力を超えると調圧パイロット弁部154はシリンダ室120をポートeからポートcを介して1次側の配管130に連通することで、シリンダ室120に1次側加圧水を導入して再び本弁114が閉鎖方向に移動し、以下、本弁114を移動させてシリンダ室120の流量調整を繰り返しながら、調圧パイロット設定圧力を維持するように1次側圧力水を2次側に継続的に供給することになる。
【0058】
調圧型流水検知装置18に設けたガイドロッド122の取出し側には、開閉検出器26としてリミットスイッチ160を設けている。リミットスイッチ160は取付部材166によりカバー外側のガイドロッド122の取出し位置に支持され、ガイドロッド122の先端に装着したコマ162に対し先端にローラを備えたスイッチレバー164を配置している。
【0059】
主弁114が開放方向にストロークするとガイドロッド122が外側(図示右側)へ移動し、主弁114の開度が所定開度、例えば開度80%に開いた場合に、コマ162はコマ162aに示す位置に移動し、スイッチレバー164を回動してリミットスイッチ160をオン又はオフし、開度検出信号を図1に示したポンプ制御盤32へ出力する。
【0060】
[スプリンクラーヘッドの作動台数が増加した場合の動作]
(インバータ周波数の固定による制御)
図5は、スプリンクラーヘッドの作動台数の増加に対しインバータ周波数を変えない場合のタイムチャートであり、図5(A)にスプリンクラーヘッド作動台数を、図5(B)にモータ回転数を、図5(C)に1次側圧力を、図5(D)に弁開を、図5(E)に2次側圧力を、それぞれ示している。
【0061】
図5において、IFで発生した火災により時刻t1でスプリンクラーヘッドの1台が作動して消火用水の散水を開始すると、この散水に伴う2次側圧力の低下に対し、2次側圧力を回復するために調圧型流水検知装置18の弁が開き始め、この圧力低下は分岐管から給水本管16へ伝わり、所定圧力以下に低下すると空気タンク28に設けた圧力スイッチ30がオンして圧力低下検出信号をポンプ制御盤32に出力する。
【0062】
ポンプ制御盤32の制御部34は、圧力スイッチ30からの圧力低下検出信号を受信すると、インバータ36により時刻t2でモータ12を起動して消火ポンプ10の運転を開始する。
【0063】
また、調圧型流水検知装置18の弁が時刻t1から開き始めると、その流水検出器24が流水検知信号を火災受信盤38に出力して火災警報を出力させると共に、火災受信盤38を経由して流水検知信号をポンプ制御盤32の制御部34に送っている。
【0064】
このため制御部34は受信した流水検知信号から火災発生階を認識し、記憶部35に格納している例えば図2(B)のデータテーブルを参照し第1周波数データ50%を取得し、インバータ36に第1周波数データ50%を設定し、その後、時刻t2で空気タンク28に設けた圧力スイッチ30から圧力低下検出信号を受信した場合に、周波数データ50%を設定しているインバータ36によりモータ12を起動し、50%の回転数に制御する。
【0065】
モータ12のインバータ制御による消火ポンプ10の駆動により、低下した1次側圧力は時刻t1から増加して回復し、1次側圧力の回復に伴い2次側圧力も回復し、調圧型流水検知装置18は2次側圧力を規定の放水圧力に制御するように弁開度を調整し、例えば弁開度を50%付近で調整する2次圧調圧制御を行っている。
【0066】
続いて、火災の拡大に伴い時刻t3で2台目のスプリンクラーヘッド22が作動したとする。このため放水流量が増加し、2次側圧力が低下する。この2次側圧力の低下に対し、調圧型流水検知装置18は2次側圧力を回復するように弁開度を開く。しかしながら、放水流量が多いために、弁開度を開いても2次側圧力は回復せず、弁開度が100%(全開)となると、それ以上の調圧制御はできなくなり、2次側圧力の低下に伴い1次側圧力も低下し、作動した2台のスプリンクラーヘッド22からは規定の放水圧力による散水はできず、消火抑制性能が低下した状態となる。このような問題は、次に説明する本発明の消火設備のインバータ制御により解消される。
【0067】
(インバータ周波数を変更する制御)
図6は、スプリンクラーヘッド作動中の流量増加に対しインバータ周波数を変えるようした本発明の消火設備の動作を示したタイムチャートであり、図6(A)にスプリンクラーヘッド作動台数を、図6(B)にモータ回転数を、図6(C)に1次側圧力を、図6(D)に弁開度を、図6(E)に2次側圧力を、それぞれ示している。
【0068】
図6において、スプリンクラーヘッドの1台が作動した場合の動作は図5の場合と同様である。これに対し本発明によるインバータ制御では、火災の拡大に伴い時刻t3で2台目のスプリンクラーヘッド22が作動して流量が増加すると、2次側圧力の低下に対し、調圧型流水検知装置18は2次側圧力を回復するように弁開度を開き、弁開度が時刻t4で所定の弁開度、例えば80%に達すると、図4に示したように、開度検出器26として設けたリミットスイッチ160がオンし、開度検出信号をポンプ制御盤32の制御部34へ出力する。
【0069】
制御部34は開度検出信号の受信に基づき、スプリンクラーヘッド作動中の流量増加を認識し、記憶部35に格納している例えば図2(B)のデータテーブルを参照して火災発生階となる1階に対応した第2周波数データ100%を取得し、それまで第1周波数データ50%を設定して制御中のインバータ36を、第2周波数データ100%の設定による制御に切替え、これによりモータ12の回転数が略2倍に増加し、低下していた1次側圧力が回復する。
【0070】
1次側圧力が増加すると、これに伴い2次側圧力も回復し、調圧型流水検知装置18は80%を超えた弁開度を閉じる方向に動作して、2次側圧力を規定放水圧力に制御する正常な調圧制御を回復し、2台のスプリンクラーヘッドの作動で流量が増加しても、規定の放水圧力による散水を行わせ、それぞれ本来の消火抑制性能を発揮することができる。
【0071】
なお、図6にあっては、2台目のスプリンクラーヘッドが作動した時刻t3以降について、図5の状態を想像線により比較のために示している。
【0072】
[流水検知装置の他の実施形態]
図7図1に設けた調圧型流水検知装置の他の実施形態を示した説明図であり、本実施形態は、調圧型流水検知装置に設けた開度検出器にポテンショメータを使用したことを特徴とする。
【0073】
図7において、調圧型流水検知装置18に設けたガイドロッド122の取出し側には、開閉検出器26としてポテンショメータ170を設けている。ポテンショメータ170はカバー外側のガイドロッド122の取出し位置に固定され、ポテンショメータ170のロッド172と調圧型流水検知装置18側のガイドロッド122を連結部材174で連結し、主弁114の移動をポテンショメータ170内の摺動接点に伝えている。このためポテンショメータ170は調圧型流水検知装置18の開度に比例した開度検出信号を、図1に示すポンプ制御盤32の制御部34へ出力する。
【0074】
ポンプ制御盤32の制御部34は、1台目のスプリンクラーヘッドの作動に基づくインバータ制御中に、ポテンショメータ170から受信した開度検出信号から得た検出開度を、予め設定した所定開度例えば開度80%の閾値開度と比較しており、検出開度が閾値開度80%に達すると、スプリンクラーヘッド作動中の流量増加を認識し、記憶部34に格納したデータテーブルから対応する第2周波数データを読出してインバータ36に設定し、モータ12の回転数を増加させるインバータ制御を行う。
【0075】
このように調圧型流水検知装置18の開度検出器26としてポテンショメータ170を設けた場合には、図4の実施形態のように、リミットスイッチ160が開度80%でオン又はオフするように取付位置を正確に設定する調整作業を不要とし、また、2台目のスプリンクラーヘッドの作動を判別する開度を必要に応じて簡単に設定変更できるメリットがある。
【0076】
なお、それ以外の構成及び動作は、図4の流水検知装置の場合と同じになることから、説明は省略する。
【0077】
[本発明の変形例]
本発明の消火設備に設ける調圧型流水検知装置は、上記の実施形態に限定されず、2次圧調圧機能を備えたものであれば、適宜の構造の流水検知装置でよい。
【0078】
また、上記の実施形態は、インバータに設定する周波数を第1周波数からそれより大きい第2周波数へ2段階に変更しているが、更に、3段階以上の多段階に分けて順次増加する周波数を予め記憶しておき、スプリンクラー作動中に弁開度が所定開度を超えた場合に流量増加を認識し、その都度、記憶している次の段階の周波数をインバータに設定してモータ回転数を3段階以上に亘り増加させるようにしても良い。
【0079】
また、上記調圧型流水検知装置の弁開度検出器は、リミットスイッチやポテンショメータを例にとっているが、近接センサや渦電流式変位センサなどの非接触変位センサを適用してガイドロッドの変位を検出しても良い。
【0080】
また、上記の消火設備は、閉鎖型スプリンクラーヘッドから散水する消火設備を例にとっているが、開放型スプリンクラーヘッドから散水する設備であっても良く、また消火栓にホースを接続して放水する消火設備であっても良い。
【0081】
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0082】
10:消火ポンプ
12:モータ
14:水源水槽
16:給水本管
18:調圧型流水検知装置
20:流水検知装置
22:スプリンクラーヘッド
24:流水検出器
26:開度検出器
28:空気タンク
30:圧力スイッチ
32:ポンプ制御盤
34:制御部
35:記憶部
36:インバータ
38:火災受信盤
102:弁ボディ
114:主弁
120:シリンダ室
122:ガイドロッド
160:リミットスイッチ
170:ポテンショメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7