特許第5973338号(P5973338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973338
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】水難溶解性成分含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20160809BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160809BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160809BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20160809BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20160809BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160809BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20160809BHJP
【FI】
   A61K9/48
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/02
   A61K31/121
   A61K47/36
   A23L33/105
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-275264(P2012-275264)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-118391(P2014-118391A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】大濱 寧之
【審査官】 天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/000279(WO,A1)
【文献】 特開2009−263638(JP,A)
【文献】 特開2014−101315(JP,A)
【文献】 特開2012−180337(JP,A)
【文献】 米国特許第06238696(US,B1)
【文献】 特開平10−279478(JP,A)
【文献】 日本医薬品添加剤協会訳編,改訂 医薬品添加物ハンドブック,(株)薬事日報社,2007年,265〜268頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/48
A23L 33/105
A61K 31/121
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/36
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水難溶解性物質が分散している水溶性溶液を内包するカプセル製剤であって、該水溶性溶液にグリセリン40〜70質量%、水、食塩1〜8質量%を含有する、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをカプセル構成成分とするカプセル製剤。
【請求項2】
水難溶解性物質の平均粒子径が1μm以下である請求項1記載のカプセル製剤。
【請求項3】
水難溶解性物質が分散している水溶性溶液中の水分が40%以下である請求項1または2記載のカプセル製剤。
【請求項4】
水難溶解性物質がクルクミノイドである請求項1〜のいずれかに記載のカプセル製剤。
【請求項5】
増粘性多糖類を含有する請求項4に記載のカプセル製剤。
【請求項6】
増粘性多糖類がガティガムである請求項5に記載のカプセル製剤。
【請求項7】
クルクミノイドを内包液中に7質量%以上含有している請求項6に記載のカプセル製剤。
【請求項8】
内包液中の水分が25〜36質量%、グリセリンが44〜63質量%、食塩が1.25〜6質量%である請求項5〜7のいずれかに記載のカプセル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子化したクルクミノイドなどの水性溶媒に難溶解性物質が分散した水溶性溶液を内包する硬質カプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水に溶解しにくい物質を経口で摂取するために、食用油などの油性の溶媒に溶解させて投与する方法が知られている。この場合、投与物質は油性の溶媒とともに消化管で乳化分散されて吸収される。しかし物質によっては乳化の際に沈殿が生じて吸収性が低下するなどの問題がある。また油への溶解性が低いため、一回あたり投与総量が増大してしまう問題がある。水難溶解性物質としてクルクミン、シリマリン等の各種の植物エキスが挙げられる。
水に難溶解性の天然着色料として古くから知られているショウガ科の植物ウコン(Curcuma longa L.)の根茎から得られるクルクミノイドは近年健康増進の素材として注目を集めている。クルクミノイドは、クルクミンとその類縁体であるデメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンを含む化合物の総称であり、ポリフェノールの一種でもある。
尚、本発明においてクルクミノイドとは、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ヤクチノンA、ヤクチノンB、テトラヒドロクルクミン、及びジヒドロキシテトラヒドロクルクミン等の直鎖状ジアリルヘプタノイドのほか、これら直鎖状ジアリルヘプタノイドの塩、エステル、並びにその他直鎖状ジアリルヘプタノイドの類縁化合物、たとえばクルクミンの重合物と呼ばれているカシュムニンA、カシュムニンB、及びカシュムニンCなどの総称である。
【0003】
クルクミノイドは耐熱性、耐酸化性及び耐還元性に優れている物質である。クルクミノイドの粉末を打錠した錠剤やカプセル化したサプリメント製剤は安定である。このためこれらの製剤が広く普及している。しかしクルクミノイドは熱水、エタノール、プロピレングリコール、氷酢酸には溶解するものの、水(冷水や常温水)には難溶性であるという特性を有している。したがって、クルクミノイドの粉末や、ウコンの粉末を経口的に飲用しても、クルクミノイドが水に難溶なため消化管では殆ど吸収されずに排泄されてしまうことが明らかになっている(非特許文献1:Biological & Pharmaceutical Bulletin 34(5), 660-665, 2011 )。このため、サプリメントとしてクルクミノイドを摂取する場合は、吸収効率が低いことを考慮して大量に摂取することが必要であった。これを解決するため、クルクミノイドの体内吸収性を改善し、in vivoで優れた薬効を発揮する、水溶性のクルクミノイド配糖体を用いることが提案されている(特許文献1:特開2005−41817号公報)。この技術は、配糖体化した芳香族アルデヒド化合物を出発原料としてアセチルアセトン−酸化ホウ素錯体と縮合してクルクミノイド配糖体とし、かつ反応生成物を低級アルコールと加熱することでホウ素を除去することにより、水溶性のクルクミン配糖体を得るものである。しかし、得られたクルクミン配糖体の消化管での吸収率や安全性は明らかにされていないため、食品や健康食品等に使用することは事実上困難である。
【0004】
一方クルクミノイドを食品色素として利用することが広く行われている。この分野の研究からクルクミノイドを水可溶化(分散化)する技術が提案されている。
例えば、水性物質にウコン色素で着色するために水性ウコン色素製剤が開発され、これを用いて着色する方法が提案されている(特許文献2:特開2005−185237号公報)。特許文献2の技術は水溶性のポリソルベートにクルクミンを溶解させたのち、このポリソルベートを水に分散させるものであるが、保存中にクルクミンが沈殿(不溶化)する。
【0005】
その他の例としては、クルクミンやテトラヒドロクルクミン等の水難溶性成分を溶解したアルコール溶液を水に分散することによって、まず難溶性成分を微粒子化し、次いでこの微粒子を乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ステアリン酸乳酸カルシウム、レシチン類、シクロデキストリンなど)に結合させることにより、長期間安定で透明な可溶化液を得る方法(特許文献3:特開2005−328839号公報)などがある。
また特許文献4(特開2009−263638号公報)にはガティガムとクルクミノイドを含有する水溶液を超高圧ホモジナイザーなどで高圧処理をして、不溶性のクルクミノイド粒子をナノサイズ(1μm以下の粒子径)まで再凝集の起こらない超微粒子分散液として得る技術が提案されている。
特許文献4の組成物は、ヒトに経口投与したとき、吸収率(AUC)が、30倍に高まることが確認されている(非特許文献1)。そしてこの特許文献4の発明の組成物は吸収性の良いクルクミン(商品名:セラクルクミン)として市販されている。
この商品は、水を30%以上含有する水溶性の組成物であり、飲料や食品に配合するに適している。しかし、このような飲料や食品の場合、日常的に体内に吸収されるべきであるとするクルクミン量を摂取するためには、飲料の場合であれば100ml以上を摂取する必要があり、このような量を摂取することが困難な場合も多い。
一方サプリメントの錠剤やカプセル剤とすることは困難である。特に、カプセル剤とする場合には含有する水分によってカプセルが溶けてしまい、製造困難である。
クルクミノイドで発生する上記の問題は水難溶解性の物質を水など水溶性溶媒に分散させた組成物を硬質カプセルに充填する場合に常に付きまとう問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−41817号公報
【特許文献2】特開2005−185237号特
【特許文献3】特開2005−328839号公報
【特許文献4】特開2009−263638号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biological & Pharmaceutical Bulletin 34(5), 660-665, 2011.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クルクミノイドやその他の水難溶解性物質が分散している水系溶液を充填した、硬質カプセル製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者がクルクミノイドを内包するカプセル製剤の研究を進めたところ、特定の素材からなるカプセルと内包させるクルクミノイド組成物の組み合わせによって製剤が安定化することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
本発明は以下の構成である。
(1)水難溶解性物質が分散している水溶性溶液を内包するカプセル製剤であって、該水溶性溶液にグリセリン40〜70質量%、水、食塩1〜8質量%を含有する、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをカプセル構成成分とするカプセル製剤。
(2)水難溶解性物質の平均粒子径が1μm以下である(1)記載のカプセル製剤。
(3)水難溶解性物質が分散している水溶性溶液中の水分が40%以下である(1)または(2)記載のカプセル製剤。
(4)水難溶解性物質がクルクミノイドである(1)〜(3)のいずれかに記載のカプセル製剤。
(5)増粘性多糖類を含有する(4)に記載のカプセル製剤。
(6)増粘性多糖類がガティガムである(5)に記載のカプセル製剤。
(7)クルクミノイドを内包液中に7質量%以上含有している(6)に記載のカプセル製剤。
(8) 内包液中の水分が25〜36質量%、グリセリンが44〜63質量%、食塩が1.25〜6質量%である(5)〜(7)のいずれかに記載のカプセル製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施により、水難溶解性物質が分散している水可溶性溶液を内包する硬質カプセル製剤が提供される。また、本発明の実施により、保存安定性が高く、クルクミノイドの吸収率が従来のクルクミン粉末を充填したカプセル製剤に比べて30倍に高まったカプセル製剤が提供される。また飲料や食品に比較して摂取量が少量で済むため、飲用にあたり負担がないので、日常の管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】市販されている硬質カプセルの材質による耐水性を試験した結果の画像である。
図2】各種濃度の塩化ナトリウムとグリセリン、クルクミノイドを含有する溶液を内包する硬質カプセルの保存後状態を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水難溶解性の物質としてクルクミノイドを例示して本発明を説明する。クルクミノイド以外の水難溶解性物質についてはクルクミノイドに準じて実施することができる。
(1)クルクミノイド溶液およびその製造方法
本発明のカプセル剤に内包するクルクミノイド溶液(以下、「クルクミノイド液状組成物」ともいう。)は、ガティガム、平均粒子径が1μm以下のクルクミノイド、グリセリンおよび水を含有することを特徴とする。このクルクミノイド溶液は、特許文献4(特開2009−263638号公報)の記載に従って調製することが出来る。この溶液中には、カプセルに充填したとき水とグリセリンに加えて、他の溶媒を含んでもよい。例えば、水と相溶性のあるエタノールなどの低級アルコール:プロピレングリコールなどの多価アルコール:果糖ブドウ糖液、ショ糖液、異性化糖液などの糖液などが挙げられる。水は40質量%以下、好ましくは25〜36質量%である。
食塩を添加することでグリセリンの配合量を減らすことができる。食塩を1質量%以上添加することでグリセリンを80質量%以下にすることが可能となる。好ましくはグリセリン40〜70質量%、食塩1〜8質量%とする。
このような水難溶解性物質を分散させる水溶性溶液とすることで、クルクミノイドが7質量%以上分散している内包溶液を調製することができる。
【0014】
水とグリセリン、その他の溶媒の混合溶媒中に増粘多糖類を溶解させる。このときクルクミノイドが溶解しないような組成とする必要がある。水は、クルクミノイド液状組成物中に、増粘多糖類と等量以上配合されていることが好ましい。
【0015】
本発明でいう「クルクミノイド」は、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LINNE)の根茎から得られた、クルクミンを主成分とし、クルクミン以外にデメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ヤクチノンA、ヤクチノンB、テトラヒドロクルクミン、及びジヒドロキシテトラヒドロクルクミン等の直鎖状ジアリルヘプタノイドのほか、これら直鎖状ジアリルヘプタノイドの塩、エステル、並びにその他直鎖状ジアリルヘプタノイドの類縁化合物、たとえばクルクミンの重合物と呼ばれているカシュムニンA、カシュムニンB、及びカシュムニンCなどを含有するもので、これらの成分全てが含有されていなくとも、差し支えない。また食品添加物として使用されるウコン色素であって、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LINNE)の根茎の乾燥物を粉末にしたウコン末、該ウコン末を適当な溶媒(例えば、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトンなど)を用いて抽出して得られる粗クルクミン或いはオレオレジン(ターメリックオレオレジン)、および精製したクルクミンであっても良い。
【0016】
「クルクミノイド」として好ましくは、ウコンの根茎の乾燥品(ウコン粉末)からエタノール若しくはプロピレングリコール、ヘキサンまたはアセトンで抽出して調製されるクルクミンである。更に好ましくは、ウコン粉末に由来する苦味や辛み、並びにウコン臭が低減もしくは除去される程度に精製されたクルクミンを用いることが好ましい。より好ましくは結晶状態のクルクミンである。このようなクルクミンは、ウコン粉末をヘキサン及びアセトンによって抽出し、その抽出溶液を濾過後、乾燥させて溶媒を揮発させることによって調製することができる。
なお、簡便には、市販されているクルクミノイド(クルクミンの粉末)を使用することができる。
【0017】
本発明で用いる増粘多糖類としてはガティガム、キサンタンガム、グアガム、ローカストビンガム、タマリンドガム、カラギナン、カラヤガム、ペクチン、ジェランガムなどが挙げられる。増粘多糖類としてはガティガムが特に好ましい。ガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる多糖類を主成分とするものであり、増粘安定剤(食品添加物)として公知のガム質である。本発明で使用するガティガムは商業的に入手可能である。このようなものとして例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガティガムSDを挙げることができる。
【0018】
増粘多糖類は予め溶媒に溶解させ、増粘多糖類溶液とし、次いでこれにクルクミノイドを添加して混合することが好ましい。増粘多糖類を溶解させる溶媒としては、食品に用いられる溶媒であってクルクミノイドが溶解しない溶媒であれば特に限定されないが、好ましくは水とグリセリンに加えて水と相溶性のある溶媒と水との混合溶媒を挙げることができる。かかる溶媒としては、例えばエタノールなどの低級アルコール:プロピレングリコール多価アルコール:果糖ブドウ糖液、ショ糖液、異性化糖液などの糖液などが挙げられる。
増粘多糖類は、1〜10質量%となるように、水含有溶媒(好ましくは水)に溶解する。
次いでこの増粘多糖類含水溶液にクルクミノイドを添加し混合する。
増粘多糖類含水溶液とクルクミノイドの混合物は、次いで微粒子化処理する。微粒子化処理の方法としては、物理的破砕法が好ましい。物理的破砕法としては、クルクミノイドを平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下となるまで微粒子化することができる湿式粉砕機を用いた処理を挙げることができる。湿式粉砕機として、具体的には、ウルトラビスコミルおよびダイノミルを挙げることができる。また、サンドミルやコボールミル等の湿式粉砕機も用いることができる。
クルクミノイドの平均粒子径が1μm以下となるまで微粒子化することで、クルクミノイドが水中に安定して分散し、腸管内での吸収が促進される。さらに長期保存した場合でも凝集や沈殿が有意に抑制された状態でクルクミノイドを水含有溶媒中に安定に分散させたクルクミノイドを得ることができる。
【0019】
上記微粒子化処理により平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.5μm以下となるように調製する。クルクミノイドは、増粘多糖類含水溶液中でこの平均粒子径以下になるように調製することで、消化管内での吸収性の向上、水溶液中での分散性および分散安定性、経時的な凝集や沈殿の抑制効果、体内吸収性の向上効果がより発揮されやすくなる。
【0020】
本発明のクルクミノイド液状組成物中でのクルクミノイドの平均粒子径(メジアン径)、言い換えると増粘多糖類溶液中のクルクミノイドの平均粒子径(メジアン径)は、(湿式)レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)を用いて測定することができる(条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021〜2000μm、粒度分布:体積基準)。
さらに微粒子化するために再度均質化処理を行うこともできる。均質化処理の方法としては、微粒子化したクルクミノイドなどの成分を均質に分散する方法であれば特に制限されず、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモジナイザー等の乳化・分散装置、超音波分散機を使用して行うことができる。均質化処理をすることにより、微粒子化されたクルクミノイドの凝集がほぐれて水への分散性及び分散安定性がより向上する。
【0021】
このクルクミノイド液状組成物は電荷的に安定である。しかし必要に応じて適宜pHを調整することもできる。好ましくはpH8以下に調整する。用いるpH調整剤としては、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸類を例示することができる。クエン酸が特に好ましい。
【0022】
このようにして調製されたクルクミノイド液状組成物は市販されており、これを購入してさらに所望の濃度調整を行った後硬質カプセルに充填しても良い。市販されているクルクミノイド液状組成物としては、株式会社セラバリューズ社製の「セラクルミン(CR−011L、CR−031P)」を例示することができる。なお市販されているクルクミノイド液状組成物は、通常水含量が30%、グリセリン含量が40%程度に調整されているため、更にグリセリンを添加し、グリセリン含有量を70%以上に調整しなければならない。グリセリンを加えて調整した場合は再度高圧ホモジナイザーなどを用いて均質化操作を行うことが好ましい。
【0023】
このクルクミノイドを含有する液状組成物を充填するヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下「HPMC」)カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを基材として調製される。一例として、特開平03−279325公報に製造方法が記載されており、クオリカプス株式会社やカプスゲルジャパンから市販されている。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の内容を以下の実施例、試験例でさらに説明する。

<参考例1>
特開2009−263638号に基づくクルクミノイド液状組成物の調製方法

表1に示す組成のクルクミノイド液状組成物の調製
【0025】
【表1】
【0026】
ガティガム(ガティガムSD:三栄源エフ・エフ・アイ(株))を水に加え、さらにグリセリンを添加して水溶液を調製した。
次いで、その水溶液中に、クルクミノイドの粉末(粉末クルクミンNo.3705:三栄源エフ・エフ・アイ(株)、平均粒子径(d50):13.81μm、結晶状)を添加し分散混合した後、水で質量調整を行った。
クルクミノイドの粉末を分散させた混合液を湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミルKDL)に供して湿式粉砕を行った後、ホモジナイザー(APV GAULIN社製高圧ホモジナイザー15MR-8TA)にて分散均一化処理して、液状のクルクミノイド(クルクミノイド液状組成物)を得た。
【0027】
得られたクルクミノイド液状組成物の平均粒子径を、メジアン径(d50)を測定することで評価した。メジアン径(d50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)(湿式)(測定条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021-2000μm、粒度分布:体積基準)を用いて測定した。粒子径は0.19μmであった。
【0028】
<試験例1>
水溶性溶液に対して耐性のある硬質カプセルの選定。

参考例として表1に示すクルクミノイド液状組成物を用いて、これにグリセリンを添加して以下の表2に示す組成の組成物を調製し、これを各種硬質カプセルに充填した。
【0029】
【表2】
【0030】
試料1〜試料4をプルラン製カプセル、ゼラチン製カプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセル(いずれもカプスゲルジャパン社製 2号カプセル)に400mgずつ充填し、クルクミノイドを内包するカプセル製剤を製造した。
各カプセルを室温、相対湿度40〜50%の室内に静置して状態を観察した。
【0031】
<結果>
観察結果を図1に示す。
各試料の観察結果から、試料3及び試料4のヒドロキプロピルメチルセルロースカプセルに充填した製剤だけが安定であった。この結果に基づいて、以下の試験はヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルを用いて行った。
【0032】
<試験例2>
グリセリンと食塩の添加がヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセルの安定性に寄与していることを確認するため以下の試験をおこなった。
まず加温した水に、食塩を溶解し、これをグリセリンで希釈して表3に示すような水含量が20〜32質量%、食塩0〜8質量%、グリセリン60〜80質量%の濃度となるように濃度調整した水溶液を作製した。調整は、秤量した各種食塩濃度の水溶液とグリセリンをディスパーサーで均一になるまで混合・撹拌(非加熱)し、均一に混合されたことを目視で確認し、試験溶液とした。ついでヒドロキシプロピルメチルセルロース製2号ハードカプセル(カプスゲル株式会社製)にそれぞれ400mgずつ充填した。各カプセルを室温、相対湿度40〜50%の室内に静置して状態を観察した。室温での安定性を確認した。
【0033】
試験溶液は表3の組成である。
【0034】
【表3】
【0035】
<結果>
各カプセルの状態を観察した画像を図2に示す。
表3、図2から以下のことが明らかとなった。
(1)食塩を添加しない場合、水分含量20%、グリセリン80%に調整した溶液を充填した場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルは安定であった。また水分含量30%、グリセリン70%の場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルの変形が発生した。
(2)食塩を3〜8%添加することで、グリセリンを60〜70%配合して水分含量を27〜32%に上げても、ヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルの安定性を保つことが可能であった。
(3)食塩を添加することで、グリセリン量を減少させ、水分含量を増大させることが可能であることが判明した。
【0036】
<試験例3>
クルクミノイド分散溶液を充填したヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルの安定性試験

試験例2の試験と同様の手順で、表1に示すクルクミノイド液状組成物を用いて、これにグリセリン、食塩を添加して以下の表4に示す組成の組成物を調製し、これを試験例2と同様にヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルに充填した。なお1カプセルあたり30mg以上のクルクミン含有カプセルとすることを目標として内包溶液を処方した。
各カプセルを室温、相対湿度40〜50%の室内に静置して状態を観察した。室温での安定性を確認した。
【0037】
【表4】
【0038】
<結果>
上記のとおり、試料10〜12は、クルクミノイドを1カプセルあたり30mg以上を内包し、安定なカプセル剤であった。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース製硬質カプセルに内包溶液400mgを充填し、安定なカプセル製剤とするためには次のような条件が必要であった。
(1)グリセリン濃度44〜63%、食塩1.25〜6質量%としたとき、水分25〜35質量%とすること。
(2)食塩濃度を上げることで、グリセリン量を減少させ、相対的水分含量を増大させ、クルクミン含有量を増大できること。
【0039】
<ヒトの吸収試験>
上述したBiological & Pharmaceutical Bulletin 34(5), 660-665, 2011に記載されたヒト試験の方法に準じて健常人の吸収を確認した。上記試験例3の試料10のカプセル及び粉末のクルクミノイド32mgを内包させたヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセルを各10粒経口投与し(一人当たり)、4時間後の血中に出現するクルクミンを測定した。本発明のカプセル製剤を投与した場合は血中クルクミンが検出されたが、粉末クルクミノイドを投与した場合は血中にクルクミンが検出されなかった。
図1
図2