(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブロックガス供給手段は、さらに、前記基板よりも前記第1方向の上流側且つ上方から、前記第1方向に沿って、前記第3速度よりも速い第4速度で前記ブロックガスを供給することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<CVD装置の全体構成>
図1は、本実施の形態が適用されるCVD装置1の全体構成図である。
また、
図2は、CVD装置1で用いられる、膜の積層対象となる基板Sおよび基板Sを積載する積載体113の斜視図である。
成膜装置の一例としてのCVD装置1は、SiC(シリコンカーバイド)単結晶で構成された基板Sに、所謂熱CVD方式にて、4H−SiCの膜をエピタキシャル成長させたSiCエピタキシャルウェハを製造するために用いられる。
【0012】
このCVD装置1は、積載体113に積載された基板Sを収容する内部空間100aが設けられ、基板S上に膜を成長させるための気相反応が行われる収容室100と、内部空間100aに連通する排出空間400aが設けられ、内部空間100a内のガスを外部に排出するための排気ダクト400と、を含む反応容器10を有している。
【0013】
また、CVD装置1は、反応容器10に加えて、収容室100の内部空間100aに、供給ダクト210に設けられた供給空間200aを介して、膜の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給部200と、収容室100の内部空間100aに、水平方向に沿った原料ガスの搬送をアシストするとともに原料ガスの上方への移動をブロックするブロックガスを供給するブロックガス供給部300と、収容室100において基板Sおよび基板Sの周囲を加熱する加熱機構500と、排気ダクト400に設けられた排出空間400aを介して、収容室100の内部空間100aから搬入されてくる使用ガス(原料ガス(反応済のものも含む)やブロックガス等)を外部に排出する使用ガス排出部600と、収容室100における要部(詳細は後述する)を冷却する冷却機構700と、収容室100において積載体113を介して基板Sを回転させる回転駆動部800とをさらに備える。なお、使用ガス排出部600は、排出空間400aを介して内部空間100a内を減圧する際にも使用される。また、本実施の形態では、排気ダクト400および使用ガス排出部600が、排出手段の一例としての機能を有している。
【0014】
ここで、積載体113は、円盤状の形状を有しており、その上面の中央部には、基板Sを設置するための凹部113aが設けられている。この積載体113は、グラファイト(カーボン)で構成されている。このグラファイトには、SiCやTaCなどによるコートが施されていてもよい。
【0015】
また、基板Sとしては、数多くのポリタイプを有するSiC単結晶のうち、いかなるポリタイプのものを用いてもかまわないが、基板S上に形成する膜が4H−SiCである場合には、基板Sとしても4H−SiCを用いることが望ましい。ここで、基板Sの結晶成長面に付与するオフ角としては、いずれのオフ角を用いてもかまわないが、SiC膜のステップフロー成長を確保しつつ基板Sの製造にかかるコストを削減するという観点からすれば、オフ角を0.4°〜8°程度に設定したものを用いることが好ましい。
【0016】
なお、基板Sの外径である基板直径Dsとしては、2インチ、3インチ、4インチあるいは6インチ等、各種サイズから選択することができる。このとき、積載体113における凹部113aの内径である積載体内径Diは、基板直径Dsよりもわずかに大きい値に設定され、積載体113の外径である積載体外径Doは、積載体内径Diよりも大きな値に設定される(Ds<Di<Do)。
【0017】
また、原料ガス供給手段の一例としての原料ガス供給部200を用いて収容室100に供給する原料ガスとしては、収容室100での気相反応に伴って基板S上にSiCを形成し得るガスから適宜選択して差し支えないが、通常は、Siを含むシリコン含有ガスと、Cを含むカーボン含有ガスとが用いられる。なお、この例では、シリコン含有ガスとしてモノシラン(SiH
4)ガスが、カーボン含有ガスとしてプロパン(C
3H
8)ガスが、それぞれ用いられる。また、本実施の形態の原料ガスは、上記モノシランガスとプロパンガスとに加えて、さらにキャリアガスとしての水素(H
2)ガスを含んでいる。なお、原料ガス供給部200は、キャリアガスのみを供給することもできる。
【0018】
さらに、ブロックガス供給部300を用いて収容室100に供給するブロックガスとしては、上記原料ガスとの反応性が乏しいガス(原料ガスに対して不活性なガス)を用いることが望ましい。この例では、ブロックガスとして水素ガスを用いている。
【0019】
なお、基板S上に積層するSiCエピタキシャル膜を、正孔伝導型(p型)あるいは電子伝導型(n型)に制御する場合には、SiCエピタキシャル膜の積層時に、異元素のドーピングを行う。ここで、SiCエピタキシャル膜をp型に制御する場合には、SiCエピタキシャル膜中にアクセプタとしてアルミニウム(Al)をドープすることが望ましい。この場合には、上述した原料ガス中に、さらにトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを含有させるようにすればよい。また、SiCエピタキシャル膜をn型に制御する場合は、SiCエピタキシャル膜中にドナーとして窒素をドープすることが望ましい。この場合には、上述した原料ガス中あるいはブロックガス中に、さらに窒素(N
2)ガスを含有させるようにすればよい。
【0020】
[反応容器の構成]
図3は、CVD装置1における反応容器10の縦断面図である。また、
図4は
図3におけるIV−IV断面図であり、
図5は
図3におけるV−V断面図である。
なお、以下の説明では、
図3において、図中右側から左側へと向かう方向をX方向とし、図中手前側から奥側へと向かう方向をY方向とし、図中下側から上側へと向かう方向をZ方向とする。そして、この例では、Z方向が鉛直方向に対応しており、X方向およびY方向が水平方向に対応している。また、本実施の形態では、X方向が第1方向に、−Z方向が第2方向に、それぞれ対応している。
【0021】
反応容器10は、内部空間100aからみてZ方向上流側(下方)においてXY平面に沿って設けられ、積載体113が配置される床部110と、内部空間100aからみてZ方向下流側(上方)においてXY平面に沿って設けられ、床部110と対向する天井120と、内部空間100aからみてY方向上流側においてXZ平面に沿って設けられる第1側壁130と、内部空間100aからみてY方向下流側においてXZ平面に沿って設けられ、第1側壁130と対向する第2側壁140と、内部空間100aからみてX方向上流側においてYZ平面に沿って設けられる第3側壁150と、内部空間100aからみてX方向下流側においてYZ平面に沿って設けられ、第3側壁150と対向する第4側壁160とを有している。
【0022】
ここで、第3側壁150のZ方向上流側(下方)端部には、原料ガス供給部200と反応容器10(収容室100)とを接続する供給ダクト210が取り付けられており、供給ダクト210の内部には、内部空間100aと連通し、原料ガス供給部200からの原料ガスを拡散した状態で内部空間100aに供給するための供給空間200aが設けられている。そして、供給空間200aと内部空間100aとの連通部すなわち供給空間200aの出口は、Y方向に沿う側を長辺とし且つZ方向に沿う側を短辺とする長方形状を呈している。
【0023】
また、床部110は、第3側壁150からX方向に沿って延びた後、排出空間400aに対応して、X方向および−Z方向に沿って斜め下方に傾斜し、さらに−Z方向に沿って下方に延びるように形成されている。一方、第4側壁160は、天井120から−Z方向に沿って延びた後、排出空間400aに対応して、X方向および−Z方向に沿って斜め下方に傾斜し、さらに−Z方向に沿って下方に延びるように形成されている。そして、第1側壁130および第2側壁140も、排出空間400aに対応し、上記床部110および第4側壁160に倣って延伸されている。
【0024】
床部110は、第1側壁130、第2側壁140および第3側壁150と一体化してなり、その中央部には円形状の開口が形成された固定部111と、固定部111に設けられた開口に配置され、基板Sを積載した積載体113が取り付けられるとともに、回転駆動部800(
図1参照)によって矢印A方向に回転駆動される回転台112とを備える。
【0025】
床部110を構成する固定部111は、内部空間100aに露出して配置された第1内壁1111と、内部空間100aからみて第1内壁1111の背面側に設けられた第1外壁1112とを有している。ここで、第1内壁1111はグラファイト(カーボン)からなる基材の表面(内部空間100aと対向する側)にTaC(タンタルカーバイド)によるコート層を設けてなるTaCコート付きグラファイトで構成されており、第1外壁1112はステンレス(この例ではSUS316:以下同じ)で構成されている。そして、床部110においては、第1内壁1111にて第1外壁1112を覆うことにより、内部空間100aおよび排出空間400aに、第1外壁1112が露出しないようになっている。
【0026】
また、床部110を構成する回転台112も、内部空間100aに露出して配置されており、第1内壁1111と同じくTaCコート付きグラファイトで構成されている。また、回転台112の上面且つ中央部には、積載体113を取り付けるための受け部112a(凹部)が形成されている。
【0027】
天井120は、ステンレス製の板材で構成されており、内部空間100aには、ステンレスが露出している。また、天井120には、複数の板状部材で構成され、内部空間100aにおける各種ガスの流れを整える整流部170が取り付けられている。なお、整流部170の詳細については後述する。
【0028】
第1側壁130は、内部空間100aに露出して配置された第1内壁131と、内部空間100aからみて第1内壁131の背面側に設けられた第1外壁132とを有している。ここで、第1内壁131はTaCコート付きグラファイトで構成されており、第1外壁132はステンレスで構成されている。そして、第1側壁130においては、第1内壁131にて第1外壁132を覆うことにより、内部空間100aに、第1外壁132が露出しないようになっている。
【0029】
第2側壁140は、内部空間100aに露出して配置された第2内壁141と、内部空間100aからみて第2内壁141の背面側に設けられた第2外壁142とを有している。ここで、第2内壁141はTaCコート付きグラファイトで構成されており、第2外壁142はステンレスで構成されている。そして、第2側壁140においては、第2内壁141にて第2外壁142を覆うことにより、内部空間100aに、第2外壁142が露出しないようになっている。
【0030】
第3側壁150は、内部空間100aに露出して配置された第3内壁151と、内部空間100aからみて第3内壁151の背面側に設けられた第3外壁152と、第3内壁151の下端側からX方向に突出して配置される突出部材153とを有している。ここで、第3内壁151および突出部材153はTaCコート付きグラファイトで構成されており、第3外壁152はステンレスで構成されている。そして、第3側壁150においては、第3内壁151にて第3外壁152を覆うことにより、内部空間100aに、第3外壁152が露出しないようになっている。
また、第3側壁150に設けられた突出部材153は、
図3において左下方向に傾斜する傾斜面を有している。そして、突出部材153の先端(X方向下流側の端部)は、後述する第1仕切部材171の直下となる位置まで延びている。
【0031】
第4側壁160は、内部空間100aに露出して配置された第4内壁161と、内部空間100aからみて第4内壁161の背面側に設けられた第4外壁162とを有している。ここで、第4内壁161はTaCコート付きグラファイトで構成されており、第4外壁162はステンレスで構成されている。そして、第4側壁160においては、第4内壁161にて第4外壁162を覆うことにより、内部空間100aおよび排出空間400aに、第4外壁162が露出しないようになっている。
【0032】
なお、上述した第1内壁131〜第4内壁161や突出部材153など、この例においてTaCコート付きグラファイトで構成されている構造物は、例えば、断熱機能を持ち600℃以上の耐熱性を有するカーボン系の材料あるいは金属材料で構成することも可能である。
【0033】
本実施の形態の整流部170は、それぞれがステンレス製の板状部材にて構成されるとともに、内部空間100aを複数の領域に仕切る第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173を備えている。ここで、仕切部材の一例としての第1仕切部材171〜第3仕切部材173は、それぞれの上方側の端部が天井120に取り付けられるとともに−Z方向に沿って延び、それぞれの下方側の端部が内部空間100a内に位置している。また、第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173は、X方向に沿ってこの順で配置されている。そして、第1仕切部材171は第3側壁150と対向する位置に、第3仕切部材173は第4側壁160と対向する位置に、第2仕切部材172は第1仕切部材171と第3仕切部材173とに挟まれた位置に、それぞれ配置される。
【0034】
収容室100における内部空間100aにおいては、床部110の回転台112に置かれた積載体113および積載体113に積載された基板Sの直上を避けて、第1仕切部材171〜第3仕切部材173が配置されるようになっている。より具体的に説明すると、本実施の形態では、第2仕切部材172の直下となる位置と第3仕切部材173との直下となる位置との間となる部位に、積載体113が配置される。
【0035】
そして、本実施の形態では、内部空間100aに上記第1仕切部材171〜第3仕切部材173を取り付けることで、内部空間100aが、5つの領域、より具体的には、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、第4領域A4および第5領域A5に仕切られている。
【0036】
これらのうち、第1領域A1は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第3側壁150と、第1仕切部材171とによって囲まれた領域をいう。
また、第2領域A2は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第1仕切部材171と、第2仕切部材172とによって囲まれた領域をいう。
さらに、第3領域A3は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第2仕切部材172と、第3仕切部材173とによって囲まれた領域をいう。
さらにまた、第4領域A4は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第3仕切部材173と、第4側壁160とによって囲まれた領域をいう。
そして、第5領域A5は、内部空間100aのうち、上記第1領域A1〜第4領域A4に含まれていない床部110側の領域をいう。
【0037】
本実施の形態では、第5領域A5のZ方向下流側(上方)に、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3および第4領域A4が、X方向に沿ってこの順で配置されている。そして、第5領域A5は、第1領域A1〜第4領域A4のそれぞれと、個々に連通している。また、第5領域A5は、第5領域A5のX方向上流側で供給空間200aと連通し、第5領域A5のX方向下流側で排出空間400aと連通している。
【0038】
なお、以下の説明においては、
図5に示したように、反応容器10の収容室100(内部空間100a)において、第1側壁130から第2側壁140に至るY方向の長さを、室内幅Wと呼ぶ。
【0039】
そして、本実施の形態のブロックガス供給部300は、
図1に示したように、天井120に設けられた貫通孔(図示せず)を介して、上方から第1領域A1内にブロックガス(第1ブロックガス)を供給する第1ブロックガス供給部310と、上方から第2領域A2内にブロックガス(第2ブロックガス)を供給する第2ブロックガス供給部320と、上方から第3領域A3内にブロックガス(第3ブロックガス)を供給する第3ブロックガス供給部330と、上方から第4領域A4内にブロックガス(第4ブロックガス)を供給する第4ブロックガス供給部340とを有している。なお、本実施の形態のブロックガス供給部300(第1ブロックガス供給部310〜第4ブロックガス供給部340)は、ブロックガス(第1ブロックガス〜第4ブロックガス)を、特に予備加熱を行うことなく、そのまま内部空間100aに供給するようになっている。ここで、本実施の形態では、第1ブロックガス供給部310〜第4ブロックガス供給部340がブロックガス供給手段として、それぞれ機能している。
【0040】
また、加熱手段の一例としての加熱機構500は、
図3に示したように、床部110における回転台112の下方に設けられている。この加熱機構500は、回転台112の上に取り付けられた積載体113の下方に配置された第1ヒータ510と、第1ヒータ510の周縁よりも外側に配置された第2ヒータ520と、第2ヒータ520の周縁よりも外側に配置された第3ヒータ530と、第1ヒータ510〜第3ヒータ530の下方に設けられ、これら第1ヒータ510〜第3ヒータ530から下方に向かって発せられた熱を回転台112側に反射する反射部材540とを有している。これら第1ヒータ510〜第3ヒータ530は、例えばグラファイト(カーボン)で構成されており、図示しない電源より供給された電流によって、自身が発熱する自己発熱型ヒータである。また、本実施の形態では、反射部材540も、グラファイト(カーボン)で構成されている。
【0041】
なお、本実施の形態のCVD装置1では、回転台112および加熱機構500の下方から内部空間100aに向けて、アルゴン(Ar)ガスからなるパージガスを供給することで、内部空間100aから固定部111と回転台112との間の隙間を介して、加熱機構500側に原料ガス等が流入するのを抑制している。なお、パージガスとしてアルゴンガスを用いているのは、パージガスとして水素ガスを使用した場合に、加熱機構500による基板Sの加熱効率が低下してしまうことによる。
【0042】
さらに、冷却手段の一例としての冷却機構700は、
図1に示したように、第1仕切部材171に冷却のための水を給排水する第1給排水部710と、第2仕切部材172に冷却のための水を給排水する第2給排水部720と、第3仕切部材173に冷却のための水を給排水する第3給排水部730とを備える。なお、本実施の形態では、これら第1仕切部材171〜第3仕切部材173と同様に内部空間100aにステンレスが露出した状態で取り付けられる天井120については、冷却機構700を用いた冷却を行っていない。ただし、第1側壁130における第1外壁132、第2側壁140における第2外壁142、第3側壁150における第3外壁152、第4側壁160における第4外壁162および天井120については、これら第1仕切部材171〜第3仕切部材173と同じように、冷却機構700を用いた冷却を行ってもかまわない。
【0043】
そして、反応容器10は、第1領域A1のZ方向下流側(上方)で天井120と対向して設けられ、第1ブロックガス供給部310から−Z方向に沿って第1領域A1内に供給されてきた第1ブロックガスを、水平方向(X方向およびY方向)に拡散させつつ降下させる第1ブロックガス拡散部材181と、第2領域A2のZ方向下流側で天井120と対向して設けられ、第2ブロックガス供給部320から−Z方向に沿って第2領域A2内に供給されてきた第2ブロックガスを、水平方向に拡散させつつ降下させる第2ブロックガス拡散部材182と、第3領域A3のZ方向下流側で天井120と対向して設けられ、第3ブロックガス供給部330から−Z方向に沿って第3領域A3内に供給されてきた第3ブロックガスを、水平方向に拡散させつつ降下させる第3ブロックガス拡散部材183と、第4領域A4のZ方向下流側で天井120と対向して設けられ、第4ブロックガス供給部340から−Z方向に沿って第4領域A4内に供給されてきた第4ブロックガスを、水平方向に拡散させつつ降下させる第4ブロックガス拡散部材184とをさらに備えている。ここで、第1ブロックガス拡散部材181は、XY平面に沿い且つ複数の穿孔が形成された矩形状の板状部材を、Z方向に複数(この例では5枚)積み重ねて構成される。また、他の第2ブロックガス拡散部材182〜第4ブロックガス拡散部材184も、第1ブロックガス拡散部材181と共通の構成を有している。
【0044】
[第1仕切部材の構成]
図6は、収容室100に設けられた第1仕切部材171の構成を説明するための図である。ここで、
図6(a)は、第1仕切部材171をY方向からみた図であり、
図6(b)は第1仕切部材171をX方向からみた図である。なお、詳細は説明しないが、第2仕切部材172および第3仕切部材173も、第1仕切部材171と共通の構成を有している。
【0045】
第1仕切部材171は、直方体状の外観を呈し、その内部には中空状の内部配管1711aが形成された板状部材1711と、内部配管1711aの一端に取り付けられ、内部配管1711aに対する水の入口となる給水管1712と、内部配管1711aの他端に取り付けられ、内部配管1711aからの水の出口となる排水管1713とを有している。なお、第1仕切部材171を構成する板状部材1711、給水管1712および排水管1713は、それぞれがステンレスで構成されている。第1仕切部材171において、給水管1712および排水管1713の両者は、板状部材1711のうち、CVD装置1を構成した際に天井120(
図3等を参照)と対向する面に取り付けられる。そして、これら給水管1712および排水管1713は、天井120に設けられた図示しない孔を介して内部空間100aの外に外部に突出し、図示しない外部配管を介して第1給排水部710(
図1参照)と接続される。なお、第1仕切部材171を構成する板状部材1711のY方向の長さは、上述した室内幅Wに設定されている。これにより、CVD装置1を構成した際に、第1仕切部材171における板状部材1711のY方向の上流側の端面は、第1側壁130と接触し、第1仕切部材171における板状部材1711のY方向の下流側の端面は、第2側壁140と接触するようになっている。
【0046】
[反応容器の寸法]
図7は、反応容器10内の各種寸法を説明するための図である。
まず、反応容器10の収容室100(内部空間100a)において、床部110から天井120に至るZ方向の距離を、室内高さHrとする。また、第1仕切部材171のZ方向の長さを第1仕切高さHp1とし、第2仕切部材172のZ方向の長さを第2仕切高さHp2とし、第3仕切部材173のZ方向の長さを第3仕切高さHp3とする。さらに、床部110から第1仕切部材171の下端に至るZ方向の距離を第1空間高さHt1とし、床部110から第2仕切部材172の下端に至るZ方向の距離を第2空間高さHt2とし、床部110から第3仕切部材173の下端に至るZ方向の距離を第3空間高さHt3とする。このとき、Hr=Hp1+Ht1=Hp2+Ht2=Hp3+Ht3である。
【0047】
また、供給空間200aの出口(内部空間100aとの連通部)におけるZ方向の距離を供給口高さHiとし、排出空間400aの入口(内部空間100aとの連通部)におけるZ方向の距離を排出口高さHoとする。
【0048】
さらに、第1領域A1のX方向の長さを第1領域長さL1とし、第2領域A2のX方向の長さを第2領域長さL2とし、第3領域A3のX方向の長さを第3領域長さL3とし、第4領域A4のX方向の長さを第4領域長さL4とする。
【0049】
なお、第1領域A1〜第5領域A5のY方向の長さは、それぞれ、上述したように共通の室内幅Wとなっている(
図5を参照)。
【0050】
本実施の形態において、第1仕切高さHp1、第2仕切高さHp2および第3仕切高さHp3は、Hp1>Hp2=Hp3の関係を有している。そして、室内高さHrとこれら第1仕切高さHp1〜第3仕切高さHp3とは、それぞれ、Hp1≧Hr/2、Hp2≧Hr/2、Hp3≧Hr/2の関係を有している。ここで、室内高さHrおよび第1仕切高さHp1〜第3仕切高さHp3は、それぞれ天井120を上端の位置の基準としているため、第1仕切部材171〜第3仕切部材173の下端は、それぞれ、天井120よりも床部110に近い側に位置していることになる。
【0051】
また、供給口高さHiと、第1空間高さHt1〜第3空間高さHt3と、排出口高さHoとは、Hi<Ht1<Ht2=Ht3=Hoの関係を有している。ここで、供給口高さHi、第1空間高さHt1〜第3空間高さHt3および排出口高さHoは、それぞれ床部110を下端の位置の基準としているため、供給口の上端に比べて、排出口の上端が、より高い位置に存在していることになる。
【0052】
さらに、第1領域長さL1〜第4領域長さL4は、L1<L4<L2<L3の関係を有している。そして、第1領域長さL1は、他の第2領域長さL2〜第4領域長さL4と比べて、例えば4分の1以下となる大きさに設定されている。
【0053】
さらにまた、基板Sを積載する積載体113の積載体外径Doと、積載体113の直上に位置する第3領域A3の第3領域長さL3とは、Do<L3の関係を有している。ここで、積載体外径Doおよび基板Sの基板直径Dsは、Ds<Doの関係を有している(
図2を参照)ことから、第3領域長さL3と基板直径Dsとは、Ds<L3の関係を有していることになる。
【0054】
<CVD装置を用いた成膜動作>
では次に、本実施の形態のCVD装置1を用いた成膜動作について説明を行う。
まず、膜の形成面を外側に向けた基板Sを、積載体113の凹部113aに積載する。次に、CVD装置1における床部110の回転台112(受け部112a)に、基板Sを積載した積載体113をセットする。
【0055】
続いて、使用ガス排出部600を用いて内部空間100a、供給空間200aおよび排出空間400aの脱気を行うとともに、原料ガス供給部200を用いて供給空間200aから内部空間100aにキャリアガスを供給し、且つ、ブロックガス供給部300を用いて内部空間100aにブロックガスを供給する。これにより、内部空間100a、供給空間200aおよび排出空間400aの雰囲気を水素ガス(ブロックガスおよびキャリアガス)で置換するとともに、常圧から予め決められた圧力(この例では200hPa)まで減圧する。このとき、ブロックガス供給部300を構成する第1ブロックガス供給部310、第2ブロックガス供給部320、第3ブロックガス供給部330および第4ブロックガス供給部340による第1ブロックガス、第2ブロックガス、第3ブロックガスおよび第4ブロックガスのそれぞれの供給量は、例えば10L(リットル)〜30L/minの範囲から選択される。また、原料ガス供給部200によるキャリアガスの供給量は、例えば1〜100L/minの範囲から選択される。
【0056】
それから、回転駆動部800を用いて床部110の回転台112を駆動する。これに伴い、回転台112にセットされた積載体113および積載体113に積載された基板Sは、矢印A方向に回転する。このとき、回転台112(基板S)の回転速度は、10〜20rpmである。
【0057】
また、冷却機構700を用いた整流部170の冷却を開始する。より具体的に説明すると、第1給排水部710による第1仕切部材171への給排水、第2給排水部720による第2仕切部材172への給排水、および、第3給排水部730による第3仕切部材173への給排水を開始する。
【0058】
冷却機構700を用いた整流部170の冷却が開始された後、加熱機構500を構成する第1ヒータ510〜第3ヒータ530への給電を開始し、第1ヒータ510〜第3ヒータ530をそれぞれ発熱させることで、回転台112および積載体113を介して基板Sを加熱する。ここで、第1ヒータ510〜第3ヒータ530への給電は個別に制御されるようになっており、基板Sの温度が1500℃〜1800℃から選ばれた成膜温度(この例では1600℃)となるように加熱制御を行う。また、加熱機構500による加熱動作が開始されるのに伴って、パージガスとしてのアルゴンガスの供給が開始される。そして、基板Sが成膜温度まで加熱された後、加熱機構500は、基板Sが成膜温度に維持されるように加熱制御を変更する。
【0059】
加熱機構500によって基板Sが成膜温度まで加熱された後、ブロックガス供給部300による内部空間100aへのブロックガスの供給を、上述した条件で引き続き行いつつ、原料ガス供給部200から供給ダクト210(供給空間200a)を介した、内部空間100aに対する原料ガスの供給を開始する。すなわち、原料ガス供給部200は、キャリアガスに加えて、シリコン含有ガス(この例ではモノシランガス)およびカーボン含有ガス(この例ではプロパンガス)を供給し始める。このとき、シリコン含有ガスおよびカーボン含有ガスは、同時に供給し始めるのが好ましい。ここで、「同時に供給」とは、完全に同一時刻であることは要しないが、数秒以内であることを意味する。
【0060】
このとき、シランガスの供給量は、例えば50sccm〜300sccmの範囲から選択され、プロパンガスの供給量は、例えば12sccm〜200sccmの範囲から選択される。ただし、カーボンとシリコンとの濃度比C/Siが、0.8〜2.0の範囲内に収まるように、シランガスおよびプロパンガスの供給量が決定される。また、このときのキャリアガスの供給量は、上述したように例えば1〜100L/minの範囲から選択される。
【0061】
そして、原料ガス供給部200からX方向に沿って供給された原料ガスは、供給ダクト210内でY方向に拡がった状態となった後、X方向に沿って内部空間100aに搬入される。
【0062】
なお、この例では、シリコン含有ガスとしてモノシランガスを、また、カーボン含有ガスとしてプロパンガスを、それぞれ用いているが、これに限られない。シリコン含有ガスとして、例えばジシラン(Si
2H
6)ガス等を用いてもよい。また、カーボン含有ガスとして、エチレン(C
2H
4)ガスやエタン(C
2H
6)ガス等を用いることもできる。さらに、シリコン含有ガスとして、Clを含むジクロロシランガスやトリクロロシランガス等を用いることも可能である。さらにまた、この例では、キャリアガスとして水素(H
2)ガスを単体で用いているが、水素(H
2)ガス中に塩酸(HCl)ガスを含ませたものを用いてもかまわない。
【0063】
原料ガス供給部200により、X方向に沿って内部空間100aに搬入されてきた原料ガスは、ブロックガスによってX方向に導かれるとともにZ方向(上方)への浮き上がりが抑制された状態で、矢印A方向に回転する基板Sの周辺に到達する。基板Sの周辺に到達した原料ガスのうち、モノシランガスは、基板S等を介して伝達される熱によりシリコンと水素とに分解され、プロパンガスは、基板S等を介して伝達される熱によりカーボンと水素とに分解される。そして、熱分解によって得られたシリコンとカーボンとが、基板Sの表面に規則性を保ちつつ順次堆積していくことで、基板S上には、4H−SiCの膜がエピタキシャル成長していく。
【0064】
そして、内部空間100aにおいてX方向に移動する原料ガス(反応済のものも含む)およびブロックガスは、使用ガス排出部600による脱気動作によってさらにX方向へと移動し、内部空間100aから排気ダクト400に設けられた排出空間400aへと搬入され、さらに反応容器10の外部へと排出される。
【0065】
そして、基板S上に、SiCエピタキシャルウェハに必要な厚さの4H−SiCエピタキシャル膜の成膜が完了すると、原料ガス供給部200は、内部空間100aに対する原料ガスの供給を停止する。また、加熱機構500は、4H−SiCエピタキシャル膜が積層された基板Sの加熱を停止し、回転駆動部800は回転台112の駆動(基板Sの回転)を停止する。さらに、基板Sが十分に冷却された状態で、ブロックガス供給部300を用いたブロックガスの供給、パージガスの供給、冷却機構700を用いた整流部170の冷却を停止し、一連の成膜動作が完了する。そして、使用ガス排出部600による脱気動作を停止して内部空間100a内が常圧下に戻された後、反応容器10から、4H−SiCエピタキシャル膜を積層した基板SすなわちSiCエピタキシャルウェハが積載体113ごと取り出され、積載体113からSiCエピタキシャルウェハが取り外される。
【0066】
[収容室内における原料ガスおよびブロックガスの流れ]
図8は、収容室100内における原料ガスおよびブロックガスの流れを模式的に示した図である。
【0067】
まず、原料ガス供給部200(
図1参照)から供給空間200aを介して内部空間100aに供給されてきた原料ガスGsは、第1領域A1の下方となる部位から第5領域A5に搬入される。そして、第5領域A5に搬入された原料ガスGsは、原料ガス供給部200によって付与された推進力と、使用ガス排出部600(
図1参照)の脱気動作による吸引力とにより、床部110と対向しつつ、積載体113(基板S)に向かいX方向に沿って移動していく。
【0068】
また、第1ブロックガス供給部310(
図1参照)から第1領域A1に供給されてきた第1ブロックガスGb1は、―Z方向に沿って下降しつつ、第1ブロックガス拡散部材181によって、第1領域A1の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第1ブロックガス拡散部材181を通過した第1ブロックガスGb1は、第1領域A1内をさらに−Z方向に沿って下降し、第1領域A1から第5領域A5に搬入される。ここで、第1領域A1の下方には、第3側壁150に設けられた突出部材153が位置している。このため、第5領域A5に搬入されてきた第1ブロックガスGb1は、突出部材153に設けられた傾斜面によって案内されるとともに、使用ガス排出部600(
図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。−Z方向からX方向に移動方向を変えている間に、第1ブロックガスGb1は、第5領域A5内をX方向に沿って移動する原料ガスGsに突き当たる。そして、移動方向がX方向に変えられた第1ブロックガスGb1は、原料ガスGsとともに、第5領域A5のうち第2領域A2の下方となる部位に向かい、X方向に沿って移動していく。このとき、X方向に移動する第1ブロックガスGb1は、同じくX方向に移動する原料ガスGsの上部を覆った状態となり、X方向に移動する原料ガスGsの上方(第1領域A1側)への浮き上がりを抑制する。その結果、原料ガスGsが第1領域A1に進入すること、ひいては、天井120のうち第1領域A1の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0069】
ここで、供給空間200aを介して、内部空間100aの第5領域A5のうち第1領域A1の下方となる部位に移動してきた原料ガスGsは、内部空間100a内の圧力が供給空間200a内の圧力よりも低くなっていることにより、一気に膨張しようとする。また、第5領域A5のうち第1領域A1の下方となる部位から第2領域A2の下方となる部位に移動してきた原料ガスGsは、回転台112を介した加熱機構500による加熱を受けて膨張し、下方から上方へと浮き上がろうとする。このとき、原料ガスGsとともにX方向に沿って移動する第1ブロックガスGb1は、この原料ガスGsの上方への浮き上がりを抑制する。
【0070】
また、第2ブロックガス供給部320(
図1参照)から第2領域A2に供給されてきた第2ブロックガスGb2は、−Z方向に沿って下降しつつ、第2ブロックガス拡散部材182によって、第2領域A2の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第2ブロックガス拡散部材182を通過した第2ブロックガスGb2は、第2領域A2内をさらに−Z方向に沿って下降し、第2領域A2から第5領域A5に搬入される。したがって、−Z方向に沿って第2領域A2から第5領域A5に搬入されてきた第2ブロックガスGb2は、第5領域A5のうち第2領域A2の下方となる部位に存在する原料ガスGsおよび第1ブロックガスGb1を、上方から押すことになる。これにより、−Z方向に沿って第5領域A5に搬入されてきた第2ブロックガスGb2は、X方向に沿って移動する原料ガスGsの上方(第2領域A2側)への浮き上がりを、第1ブロックガスGb1とともに抑制する。その結果、原料ガスGsが第2領域A2に進入すること、ひいては、天井120のうち第2領域A2の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0071】
なお、−Z方向に沿って移動してきた第2ブロックガスGb2は、使用ガス排出部600(
図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。そして、移動方向がX方向に変えられた第2ブロックガスGb2は、原料ガスGsおよび第1ブロックガスGb1とともに、第5領域A5のうち第3領域A3の下方となる部位に向かい、X方向に沿って移動していく。
【0072】
第5領域A5のうち第2領域A2の下方となる部位から第3領域A3の下方となる部位に移動してきた原料ガスGsは、回転台112、積載体113および基板Sを介した加熱機構500による加熱を受けて膨張し、下方から上方へと浮き上がろうとする。このとき、原料ガスGsとともにX方向に沿って移動する第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2は、この原料ガスGsの上方への浮き上がりを抑制する。
【0073】
また、第3ブロックガス供給部330(
図1参照)から第3領域A3に供給されてきた第3ブロックガスGb3は、−Z方向に沿って下降しつつ、第3ブロックガス拡散部材183によって、第3領域A3の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第3ブロックガス拡散部材183を通過した第3ブロックガスGb3は、第3領域A3内をさらに−Z方向に沿って下降し、第3領域A3から第5領域A5に搬入される。したがって、−Z方向に沿って第3領域A3から第5領域A5に搬入されてきた第3ブロックガスGb3は、第5領域A5のうち第3領域A3の下方となる部位に存在する原料ガスGs、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2を、上方から押すことになる。これにより、−Z方向に沿って搬入されてきた第3ブロックガスGb3は、X方向に沿って移動する原料ガスGsの上方(第3領域A3)への浮き上がりを、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2とともに抑制する。その結果、原料ガスGsが第3領域A3に進入すること、ひいては、天井120のうち第3領域A3の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0074】
なお、−Z方向に沿って移動してきた第3ブロックガスGb3は、使用ガス排出部600(
図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。そして、移動方向がX方向に変えられた第3ブロックガスGb3は、原料ガスGs、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2とともに、第5領域A5のうち第4領域A4の下方となる部位に向かい、X方向に沿って移動していく。
【0075】
ここで、第5領域A5のうち第3領域A3の下方に位置する部位には、上述したように、積載体113および積載体113に積載された基板Sが配置されている。そして、この部位において、原料ガスGsは、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3を用いて基板S側に押し付けられており、基板Sの周囲には、原料ガスGsの多くが存在するようになっている。このとき、基板Sは、加熱機構500(
図3参照)によって成膜温度に加熱されており、基板Sの周囲に存在する原料ガスGsのうち、モノシランガスおよびプロパンガスは、基板S等を介した加熱に伴って熱分解し、基板S上には、熱分解によって得られたSiおよびCによる4H−SiC単結晶がエピタキシャル成長する。ただし、熱分解によって得られたSiおよびCのすべてが基板S上でのエピタキシャル成長に用いられるわけではなく、その一部は、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに、X方向に移動していく。また、モノシランガスおよびプロパンガスを熱分解することによって得られた水素ガス(反応済のガス)は、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに、X方向に沿って移動していく。さらに、モノシランガスの一部およびプロパンガスの一部は、基板Sの周囲で熱分解されることなく、そのままX方向に沿って移動していく。
【0076】
第5領域A5のうち第3領域A3の下方となる部位から第4領域A4の下方となる部位に移動してきた原料ガスGs(未反応および反応済のガスを含む)は、回転台112を介した加熱機構500による加熱を受けて膨張し、下方から上方へと浮き上がろうとする。このとき、原料ガスGsとともにX方向に沿って移動する第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3は、この原料ガスGsの上方への浮き上がりを抑制する。
【0077】
また、第4ブロックガス供給部340(
図1参照)から第4領域A4に供給されてきた第4ブロックガスGb4は、−Z方向に沿って下降しつつ、第4ブロックガス拡散部材184によって、第4領域A4の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第4ブロックガス拡散部材184を通過した第4ブロックガスGb4は、第4領域A4内をさらに−Z方向に沿って下降し、第4領域A4から第5領域A5に搬入される。したがって、−Z方向に沿って第4領域A4から第5領域A5に搬入されてきた第4ブロックガスGb4は、第5領域A5のうち第4領域A4の下方となる部位に存在する原料ガスGs、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3を、上方から押すことになる。これにより、−Z方向に沿って搬入されてきた第4ブロックガスGb4は、X方向に沿って移動する原料ガスGsの上方(第4領域A4)への浮き上がりを、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに抑制する。その結果、原料ガスGsが第4領域A4に進入すること、ひいては、天井120のうち第4領域A4の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0078】
なお、−Z方向に沿って移動してきた第4ブロックガスGb4は、使用ガス排出部600(
図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。そして、移動方向がX方向に変えられた第4ブロックガスGb4は、原料ガスGs、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに、第5領域A5と排出空間400aとの連通部に向かい、X方向に沿って移動していく。そして、これら原料ガスGsおよび第1ブロックガスGb1〜第4ブロックガスGb4は、使用ガス排出部600により、排出空間400aを介して外部に排出される。
【0079】
この間、冷却機構700を構成する第1給排水部710、第2給排水部720および第3給排水部730は、整流部170を構成する第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173に対して、それぞれ冷却水の給排水を行う。これにより、第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173の温度は、それぞれの下端を含め200℃以下に維持されている。また、天井120は、加熱機構500から遠ざけられていること、第1領域A1〜第4領域A4を介して第5領域A5にブロックガスの供給を行っていること、そして、第1仕切部材171〜第3仕切部材173が冷却されていることにより、直接に冷却が行われていないのにも関わらず、50℃以下の温度に維持される。
【0080】
このように、本実施の形態では、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2が、X方向に沿って原料ガスGsを基板S側に案内する役割を、第3ブロックガスGb3が、X方向に沿って基板S上を通過する原料ガスGsを、上方から基板Sに向かって押さえ付ける役割を、そして、第4ブロックガスGb4が、基板S上を通過した原料ガスGsを、X方向に沿って排気ダクト400側に導く役割を、それぞれ担っている。
【0081】
ここで、第1領域A1から第5領域A5に搬入されてくる第1ブロックガスGb1の移動速度を第1ブロックガス流速Vb1、第2領域A2から第5領域A5に搬入されてくる第2ブロックガスGb2の移動速度を第2ブロックガス流速Vb2、第3領域A3から第5領域A5に供給されてくる第3ブロックガスGb3の移動速度を第3ブロックガス流速Vb3、第4領域A4から第5領域A5に供給されてくる第4ブロックガスGb4の移動速度を第4ブロックガス流速Vb4とする。第1ブロックガスGb1〜第4ブロックガスGb4の供給量を、例えばそれぞれ10L(リットル)/minとした場合、それぞれの流速は、XY平面における第1領域A1〜第4領域A4の面積で決まる。本実施の形態では、上述したように、これら第1領域A1〜第4領域A4のY方向の長さが室内幅Wで一定であることから、面積の大小は、これら第1領域A1〜第4領域A4のX方向の長さで決まることになる。そして、本実施の形態では、上述したように、第1領域A1〜第4領域A4のそれぞれのX方向の長さである第1領域長さL1、第2領域長さL2、第3領域長さL3および第4領域長さL4が、L1<L4<L2<L3の関係を有している。したがって、XY平面における面積は、A1<A4<A2<A3となり、流速は、Vb3<Vb2<Vb4<Vb1の関係を有していることになる。なお、本実施の形態では、第3ブロックガス流速Vb3が第1速度に、第4ブロックガス流速Vb4が第2速度に、第2ブロックガス流速Vb2が第3速度に、第1ブロックガス流速Vb1が第4速度に、それぞれ対応している。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態では、収容室100の内部空間100aに収容された基板Sに対し、基板Sの側方からX方向に沿って原料ガスGsを供給し、基板Sの直上から、−Z方向に沿って第3ブロックガスGb3を第3ブロックガス流速Vb3で供給するとともに、基板SよりもX方向の下流側且つ上方から、−Z方向に沿って、第3ブロックガス流速Vb3よりも速い第4ブロックガス流速Vb4で、第4ブロックガスGb4を供給するようにした。これにより、基板S上を通過した原料ガス(反応済のものも含む)は、内部空間100aにおいてX方向の下流側且つ下方に配置された排出口に導かれやすくなる。したがって、基板S上を通過した原料ガスGs(反応済のものも含む)の内部空間100a内での滞留を抑制することが容易になる。
【0083】
また、本実施の形態では、基板SよりもX方向の上流側且つ上方から、−Z方向に沿って、第3ブロックガス流速Vb3と第4ブロックガス流速Vb4との間となる第2ブロックガス流速Vb2で、第2ブロックガスGb2を供給するようにした。これにより、基板Sに向かってX方向に移動する原料ガスGsが、Z方向に浮き上がりにくくなる。したがって、基板S上に到達する前の原料ガスGsの拡散を抑制できることになり、4H−SiC膜の形成における原料ガスGsの使用効率をさらに向上させることができる。
【0084】
さらに、本実施の形態では、基板SよりもX方向の上流側且つ上方から、X方向に沿って、第2ブロックガス流速Vb2〜第4ブロックガス流速Vb4よりも速い第1ブロックガス流速Vb1で、第1ブロックガスGb1を供給するようにした。これにより、基板Sに向かってX方向に移動する原料ガスGsが、さらにZ方向に浮き上がりにくくなる。それゆえ、基板S上に到達する前の原料ガスGsの拡散をさらに抑制できることになり、4H−SiC膜の形成における原料ガスGsの使用効率をさらに向上させることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、基板Sを収容する収容室100の内部空間100aに、第1仕切部材171〜第3仕切部材173で構成された整流部170を設けることで、内部空間100aを、第1領域A1〜第5領域A5に仕切るようにした。そして、基板Sが配置される第5領域A5には、第5領域A5の側方からX方向に沿って原料ガスGsを供給するとともに、第1領域A1〜第4領域A4のそれぞれから第5領域A5に向かう−Z方向に沿って第1ブロックガスGb1〜第4ブロックガスGb4を供給するようにした。これにより、原料ガスGsが内部空間100aにおいて上方側に移動すること、および、内部空間100aの上方に位置する天井120に原料ガスGsが到達すること、を抑制することができる。したがって、天井120の近辺で原料ガスGsが反応することによる、天井120への反応生成物の付着を抑制することができる。それゆえ、天井120からの反応生成物が基板S上に落下する、という事態を発生させにくくすることができる。
【0086】
ここで、本実施の形態では、成膜時に、上記整流部170を構成する第1仕切部材171〜第3仕切部材173を、冷却機構700(第1給排水部710〜第3給排水部730)を用いて冷却するようにした。これら第1仕切部材171〜第3仕切部材173は、上記天井120よりも基板S(加熱機構500)に近い側まで延びて配置されているため、加熱機構500によって加熱されやすくなっており、且つ、天井120よりも原料ガスGsが到達しやすくなっている。このため、特に第1仕切部材171〜第3仕切部材173の下端側には、原料ガスGsに起因する反応生成物が付着しやすい状態にあるといえる。ただし、本実施の形態では、冷却機構700を用いて整流部170の冷却を行うことにより、第1仕切部材171〜第3仕切部材173の下端側においても、原料ガスGsの熱分解が生じ難い環境としている。それゆえ、基板Sの上方に位置するこれら第1仕切部材171〜第3仕切部材173にも反応生成物の付着を抑制することが可能となり、第1仕切部材171〜第3仕切部材173からの反応生成物が基板S上に落下する、という事態を発生させにくくすることができる。
【0087】
その結果、本実施の形態のCVD装置1を用いて製造されるSiCエピタキシャルウェハの歩留まりを向上させることができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、SiC単結晶で構成された基板Sに、4H−SiCの膜をエピタキシャル成長させる場合を例として説明を行ったが、これに限られるものではなく、基板Sおよび基板S上に形成する膜については、適宜設計変更して差し支えない。
さらに、本実施の形態では、収容室100内に1枚ずつ基板Sを収容する所謂枚葉式を採用していたが、これに限られるものではなく、複数の基板Sを収容してまとめて成膜を行うバッチ方式を採用してもかまわない。