(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のケース、前記ケースに設けられた当該ケースの内外を貫通する1又は複数の貫通孔を封止する絶縁部材、前記ケース内に設けられた圧力検知素子、及び、前記圧力検知素子の端子に電気的に接続されかつ前記貫通孔内に前記絶縁部材を貫通するように設けられた複数のリードピンを備えた圧力検知エレメントと、(b)筒形状に形成され、前記圧力検知エレメントが収容されるカバー部材と、(c)前記カバー部材の一端部を塞ぐ継手部材と、(d)前記カバー部材内に設けられ、前記複数のリードピンの周囲を囲うようにして前記ケースの外側面に接合された接着剤と、を有する圧力検知ユニットにおいて、
前記ケースの外側面における前記接着剤が接合された箇所には、前記接着剤における前記ケースの外側面に在る外周縁及び内周縁を仕切るように配置された環状の粗面化部が形成されていることを特徴とする圧力検知ユニット。
(a)ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のケース、前記ケースに設けられた当該ケースの内外を貫通する1又は複数の貫通孔を封止する絶縁部材、前記ケース内に設けられた圧力検知素子、及び、前記圧力検知素子の端子に電気的に接続されかつ前記貫通孔内に前記絶縁部材を貫通するように設けられた複数のリードピンを備えた圧力検知エレメントと、(b)筒形状に形成され、一端部を塞ぐように前記筒形状の内側に前記リードピンを向けた状態の前記圧力検知エレメントが収容されるカバーと、(c)前記カバー内に設けられ、前記複数のリードピンを覆うようにして前記ケースの外側面に接合された接着剤と、を有する圧力検知ユニットにおいて、
前記ケースの外側面における前記接着剤が接合された箇所には、前記接着剤における前記ケースの外側面に在る周縁と前記複数のリードピンとを仕切るように配置された環状の粗面化部が形成されていることを特徴とする圧力検知ユニット。
(a)ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のケース、前記ケースに設けられた当該ケースの内外を貫通する1又は複数の貫通孔を封止する絶縁部材、前記ケース内に設けられた圧力検知素子、及び、前記圧力検知素子の端子に電気的に接続されかつ前記貫通孔内に前記絶縁部材を貫通するように設けられた複数のリードピンを備えた圧力検知エレメントと、(b)筒形状に形成され、一端部を塞ぐように前記筒形状の内側に前記リードピンを向けた状態の前記圧力検知エレメントが収容される銅製、銅合金製又は合成樹脂製のカバーと、(c)前記カバー内に設けられ、前記複数のリードピンを覆うようにして前記ケースの外側面に接合された第1接着剤と、(d)前記ケースと前記カバーの一端部との間の全周にわたって設けられ、それらの間を封止するように前記ケースと前記カバーの一端部のそれぞれに接合された第2接着剤と、を有する圧力検知ユニットにおいて、 前記ケースの外側面における前記第1接着剤が接合された箇所には、前記第1接着剤における前記ケースの外側面に在る周縁と前記複数のリードピンとを仕切るように配置された環状の粗面化部が形成されていることを特徴とする圧力検知ユニット。
前記複数の溝が、互いに平行な直線状に形成された第1の複数の溝部と、前記第1の複数の溝部と交差する方向に互いに平行な直線状に形成された第2の複数の溝部と、を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の圧力検知ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の圧力検知ユニットの各実施形態について、
図1〜
図19を参照して説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態の説明で参照される
図1〜
図11と、第3の実施形態及び第4の実施形態の説明で参照される
図12〜
図19との各図面群においては、それぞれ各構成要素について独立して符号を付している。つまり、
図1〜
図11と
図12〜
図19とでは、同一の符号が付されていても異なる構成要素を示すことがある。
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態の圧力センサについて、
図1〜
図7を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態の圧力センサの縦断面図である。
図2は、
図1の圧力センサの平面図である。
図3は、
図1の圧力センサが備える圧力検知エレメントの構成を示す図であって、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)の粗面化部の一部を拡大した図である(粗面化部が、エレメント本体の上端面に形成された互いに平行な直線状の複数の溝で構成されている)。
図4は、
図1の圧力センサの製造工程(継手部材の溶接工程)の概略を説明する縦断面図である。
図5は、
図1の圧力センサの製造工程(端子台の取付工程)の概略を説明する縦断面図である。
図6は、
図1の圧力センサの製造工程(蓋部材及び外部リード線の取付工程)の概略を説明する縦断面図である。
図7は、
図1の圧力センサの製造工程(カバー部材の取付工程)の概略を説明する縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は、
図1における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0026】
図1に示したように、第1の実施形態の圧力センサ1は、液封型の圧力センサである。圧力センサ1は、流路12が形成された継手部材14と、流路12内の流体の圧力を検出する圧力検知エレメント16とを備えている。
【0027】
圧力センサ1は、継手部材14の流路12と対面するように、圧力検知エレメント16が配置され、その周縁部で継手部材14と溶接され固着されている。
【0028】
圧力検知エレメント16は、例えば、ステンレス、アルミニウム又はニッケルなどの金属製のエレメント本体18を備えている。エレメント本体18には、その中央部分を貫通する中央開口20が形成されている。この中央開口20内には、ハーメチックガラス22が嵌め込まれて固着されており、中央開口20はハーメチックガラス22によって封止されている。エレメント本体18は、ケースの一例に相当し、ハーメチックガラス22は、絶縁部材の一例に相当し、中央開口20は、貫通孔の一例に相当する。
【0029】
また、
図1に示したように、圧力検知エレメント16のエレメント本体18と、金属製のダイヤフラム24と、連通孔26が形成されたダイヤフラム保護カバー28とが、それらの外周縁部において溶接によって一体的に固着されている。
【0030】
そして、この構造によって、エレメント本体18の中央開口20の部分において、ハーメチックガラス22とダイヤフラム24との間に、オイルが封入される液封室30が形成されている。
【0031】
一方、
図1に示したように、ハーメチックガラス22の液封室30の側面部には、ワンチップ構造のセンサチップ32が接着剤によって固定されている。即ち、センサチップ32は、エレメント本体18内に設けられている。
【0032】
このセンサチップ32は、液封室30内に配設されており、圧力を検出する圧力素子と、この圧力素子の出力信号を処理する集積化された電子回路とが一体に形成された圧力センサチップとして構成されている。センサチップ32は、圧力検知素子の一例に相当する。
【0033】
また、ハーメチックガラス22には、センサチップ32に対する信号の入出力を行うための複数個のリードピン34が、それぞれ、貫通状態で、ハーメチック処理により固定されている。つまり、複数のリードピン34は、中央開口20内にハーメチックガラス22を貫通して配設されている。この実施形態では、リードピン34は全部で8本設けられている。すなわち、入出力用の端子として後述する、外部リード線62a(Vcc)、62b(Vout)、62c(GND)用の3本のリードピン34と、センサチップ32の調整用の端子として5本のリードピン34とが設けられている。
【0034】
リードピン34は、例えば、金製またはアルミニウム製のワイヤー36によって、センサチップ32と導通接続(ワイヤーボンディング)され、センサチップ32の外部出力端子や外部入力端子を構成している。
【0035】
そして、継手部材14の流路12から圧力室40内に伝達された流体圧は、ダイヤフラム保護カバー28の連通孔26を通ってダイヤフラム24の表面を押圧し、この押圧力を液封室30内のセンサチップ32により検知するようにしている。
【0036】
圧力検知エレメント16には、
図3(a)、(b)に示すように、その上端面18a(エレメント本体18における図中上方を向く面)には、中央開口20を囲むようにして、環状の粗面化部7が設けられている。この粗面化部7については後述する。
【0037】
また、
図1に示したように、圧力検知エレメント16の上部には、空間形成部材の第1の空間形成部材を構成する端子台38が、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の上方に隣接して配置され、例えば、接着剤によって、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の上端面18aに固定されている。
【0038】
この端子台38は、
図1に示したように、略円筒形状であって、その略中央部に、リードピン34を挿通するための挿通孔42aが形成された端子固定用壁42が形成されている。そして、この端子固定用壁42から下方に延設された下方側壁44と、端子固定用壁42から上方に延設された上方側壁46が形成されている。
【0039】
これにより、
図1に示したように、圧力検知エレメント16と端子台38との間に、端子固定用壁42と下方側壁44に囲まれた第1の空間S1が形成されている。
【0040】
そして、圧力検知エレメント16のリードピン34の先端34aは、挿通孔42aに挿通され、端子台38の上方側壁46を貫通するように設けられた端子48に、接続部52において、例えば、溶接により電気的に接続されている。
【0041】
なお、この実施形態では、図示しないが、後述する
図2に示したように、外部リード線62a(Vcc)、62b(Vout)、62c(GND)用の3本の端子48が設けられている。
【0042】
さらに、
図1、
図2に示したように、端子台38の上方側壁46には、嵌合用段部50が形成されており、この嵌合用段部50に嵌合するように、空間形成部材の第2の空間形成部材を構成する蓋部材54が端子台38に隣接して配置されている。
【0043】
すなわち、蓋部材54は、上板部56と側壁58とを備えた略カップ形状であり、側壁58が、端子台38の上方側壁46に形成された嵌合用段部50に嵌合するように構成されている。
【0044】
これにより、
図1に示したように、蓋部材54と端子台38との間に、端子台38の端子固定用壁42と上方側壁46と、蓋部材54の上板部56と側壁58とに囲まれた第2の空間S2が形成されている。
【0045】
すなわち、このように構成することによって、
図1に示したように、端子台38と、端子台38に隣接して配置された蓋部材54によって、圧力検知エレメント16を覆う、上記の空間S1と空間S2とから構成される大きな空間が形成されていることになる。すなわち、端子台38の端子固定用壁42において、上記の空間S1、S2との間は連通状態となっており、これにより、端子台38と蓋部材54によって、圧力検知エレメント16を覆う大きな空間が形成されていることになる。
【0046】
さらに、
図1、
図2に示したように、蓋部材54の側壁58には、外側に突設するリード線係止部60が形成されている。このリード線係止部60は、
図2に示したように、略矩形形状であり、3本の外部リード線62、すなわち、外部リード線62a(Vcc)、62b(Vout)、62c(GND)に対応して、それぞれ、リード線係止部60の係止切欠孔60a、60b、60cが形成されている。
【0047】
すなわち、外部リード線62a(Vcc)、62b(Vout)、62c(GND)は、
図1、
図2の矢印Aで示したように、係止切欠孔60a、60b、60cに嵌め込まれ、固定されるようになっている。
【0048】
一方、
図1に示したように、端子台38の上方側壁46を貫通するように設けられた端子48の外端部48aに、外部リード線62が、接続部64において、例えば、半田付け、溶接などにより電気的に接続されている。
【0049】
また、
図1の矢印Bで示したように、継手部材14側から、カバー部材66の開口部66b側が挿入され、カバー部材66の内側に突設するフランジ形状の基端部66aが、継手部材14のフランジ部14aと当接した状態となっている。
【0050】
これにより、
図1に示したように、カバー部材66の内部に間隙S3が形成されており、この間隙S3に、カバー部材66の開口部66b側から、接着剤を構成する封入樹脂が充填され、封入樹脂部68が形成されている。
【0051】
封入樹脂部68は、間隙S3に充填されることにより、該間隙S3における図中下部において圧力検知エレメント16のエレメント本体18の外側面の一部(本実施形態において、具体的には上端面18a及び外周面18b)と接合される。このとき、封入樹脂部68は、エレメント本体18の中央開口20(及び、中央開口20内に配置された複数のリードピン34)を囲むように配置される。また、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68aは、エレメント本体18の外周面18bの図中下方に位置し、内周縁68bは、エレメント本体18の上端面18aの端子台38との固定箇所付近に位置する。
【0052】
なお、この場合、
図1に示したように、封入樹脂部68の上端68jが、蓋部材54のリード線係止部60の上面60dの高さと同一平面以下の高さ、好ましくは、リード線係止部60の上面60dと下面60eとの間に位置するのが望ましい。
【0053】
ここで、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の上端面18aに設けられた粗面化部7について説明する。
【0054】
粗面化部7は、
図3(a)、(b)に示すように、平面視環状に形成されており、エレメント本体18の上端面18aにおける封入樹脂部68が接合された箇所に、中央開口20を囲むように設けられている。換言すると、粗面化部7は、エレメント本体18の外側面(エレメント本体18の外側を向く表面部分であり、具体的には、上端面18a、外周面18b及び下端面18c)における封入樹脂部68が接合された箇所に、封入樹脂部68における外側面に在る外周縁68aと内周縁68bとの間を仕切るように環状に配置されている。これにより、エレメント本体18の外側面と封入樹脂部68との界面において、水分が、外周縁68aから内周縁68bを横切って進み、エレメント本体18の中央開口20内にある複数のリードピン34まで到達するためには、必ず粗面化部7を通過することになる。
【0055】
粗面化部7は、レーザー照射によって、エレメント本体18の上端面18aを荒らすことにより粗面化して形成されている。そのため、封入樹脂部68は、粗面化部7の凹部に進入して上端面18aと封入樹脂部68との接着性が向上し、これにより、封入樹脂部68との界面の耐水性が向上する。
【0056】
本実施形態において、粗面化部7は、
図3(b)に示すように、互いに平行な直線状に形成された複数の溝8で構成されている。これら複数の溝8は、レーザー照射位置を溝ピッチ分ずつずらしながら所定の一方向に複数回走査して形成されている。複数の溝8の深さは、100nm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜3μmであり、より好ましくは1.0μm±0.5μmである。
【0057】
次に、上述した圧力センサ1の作用について説明する。
【0058】
圧力センサ1が、水などの液体に長期間曝されると、例えば継手部材14とカバー部材66との間から水分が入り込む。そして、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68aの箇所から、エレメント本体18の外側面と封入樹脂部68との界面に水分が浸入する。しかし、この界面に浸入した水分は、粗面化部7によって進行を妨げられ、粗面化部7に囲まれた複数のリードピン34まで水分が到達することを抑制できる。
【0059】
このように構成される本実施形態の圧力センサ1は、
図4〜
図7に示した工程によって製造される。
【0060】
すなわち、
図4に示したように、一体的に予め組み立てられた圧力検知エレメント16を用意する。このとき、圧力検知エレメント16には、その上端面18aに粗面化部7が予め形成されている。そして、この圧力検知エレメント16に継手部材14を溶接する。
【0061】
次に、
図5に示したように、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の上部に、端子台38の下方側壁44を配置して、例えば、接着剤により固定する。この状態で、圧力検知エレメント16のリードピン34の先端34aは、端子台38の端子固定用壁42の挿通孔42aに挿通された状態となっている。
【0062】
この状態で、圧力検知エレメント16のリードピン34の先端34aは、挿通孔42aに挿通され、端子台38の上方側壁46を貫通するように設けられた端子48に、リードピン34の先端34aを、接続部52において、例えば、溶接により電気的に接続する。
【0063】
なお、この状態で、
図5に示したように、圧力検知エレメント16と端子台38との間に、端子固定用壁42と下方側壁44に囲まれた第1の空間S1が形成されている。
【0064】
そして、
図5に示したように、端子台38の上方側壁46を貫通するように設けられた端子48の外端部48aに、外部リード線62を、接続部64において、例えば、溶接、半田付けなどにより電気的に接続する。
【0065】
また、端子台38の上方側壁46に形成された嵌合用段部50に嵌合するように、蓋部材54を端子台38に隣接して配置する。
【0066】
これにより、
図6に示したように、蓋部材54と端子台38との間に、端子台38の端子固定用壁42と上方側壁46と、蓋部材54の上板部56と側壁58とに囲まれた第2の空間S2が形成されている状態となる。
【0067】
また、
図2、
図6の矢印Aで示したように、外部リード線62a(Vcc)、62b(Vout)、62c(GND)を、リード線係止部60の係止切欠孔60a、60b、60cにそれぞれ嵌め込み、固定する。
【0068】
この状態で、
図7に示したように、継手部材14側から、カバー部材66の開口部66b側を挿入して、カバー部材66の内側に突設するフランジ形状の基端部66aが、継手部材14のフランジ部14aと当接した状態とする。また、必要に応じて、継手部材14のフランジ部14aとカバー部材66の基端部66aとを、例えば、溶接などによって固定する。
【0069】
最後に、
図1に示したように、カバー部材66の内部に形成された間隙S3に、カバー部材66の開口部66b側から、接着剤を構成する封入樹脂を充填して、封入樹脂部68を形成する。これら工程を経て、圧力センサ1が完成する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の圧力センサ1は、(a)ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のエレメント本体18、エレメント本体18に設けられた中央開口20に充填されたハーメチックガラス22、エレメント本体18内に設けられたセンサチップ32、及び、センサチップ32の端子に電気的に接続されかつ中央開口20内にハーメチックガラス22を貫通するように設けられた複数のリードピン34を備えた圧力検知エレメント16と、(b)複数のリードピン34の周囲を囲うようにしてエレメント本体18の外側面に接合された封入樹脂部68と、を有している。そして、圧力センサ1は、エレメント本体18の上端面18aにおける封入樹脂部68が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68a及び内周縁68bを仕切るように配置された環状の粗面化部7が設けられている。
【0071】
また、圧力センサ1は、粗面化部7が、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8で構成されている。
【0072】
また、圧力センサ1は、複数の溝8が、互いに平行な直線状に形成されている。
【0073】
以上より、本実施形態によれば、ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のエレメント本体18の外側面に、複数のリードピン34を囲うようにして封入樹脂部68が接合されており、このエレメント本体18の外側面の一部である上端面18aにおける封入樹脂部68が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68a及び内周縁68bを仕切るように配置された環状の粗面化部7が設けられている。そのため、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68aからエレメント本体18と封入樹脂部68との界面に浸入した水分は、複数のリードピン34に至るためには必ず粗面化部7を通過しなければならない。そして、粗面化部7では、レーザー照射による粗面化により生じた凹部に接着剤が入り込み、エレメント本体18と封入樹脂部68との接着性が向上するので、エレメント本体18の粗面化部7と封入樹脂部68との界面の耐水性が高まる。これにより、粗面化部7において、水分の通過を妨げ、水分が複数のリードピン34に到達することを抑制して、防水性を向上できる。また、粗面化部7が、レーザー照射により形成されているので、例えば、プラズマ洗浄や紫外線照射などにより粗面化部を形成した場合に比べて、粗面化部を容易に所望の形状とすることができる。そのため、環状の粗面化部を容易に設けることができる。
【0074】
また、粗面化部7が、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8で構成されている。そのため、簡易なレーザー制御によって粗面化部7をさらに容易に形成することができる。
【0075】
また、粗面化部7の複数の溝8が、互いに平行な直線状に形成されている。そのため、非常に簡易なレーザー制御によって粗面化部をさらに容易に形成することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態の圧力センサを、
図8、
図9を参照して説明する。
【0077】
図8は、本発明の第2の実施形態の圧力センサの縦断面図である。
図9は、
図8の圧力センサが備える圧力検知エレメントの構成を示す図であって、(a)は、側面図であり、(b)は、(a)の粗面化部の一部を拡大した図である(粗面化部が、エレメント本体の外周面に形成された互いに平行な直線状の複数の溝で構成されている)。なお、以下の説明における「上下」の概念は、
図8における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0078】
図8に示す圧力センサ(図中、符号1Aで示す)は、上述した第1の実施形態の圧力センサ1において、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の上端面18aに設けられた粗面化部7に代えて、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の外周面18bに設けられた粗面化部7Aを有し、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明において、第1の実施形態の圧力センサ1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
粗面化部7Aは、
図9(a)、(b)に示すように、圧力検知エレメント16のエレメント本体18の外周面18bに、その周方向に沿う環状に形成されている。つまり、粗面化部7Aは、エレメント本体18の外側面(エレメント本体18の外側を向く表面部分であり、具体的には、上端面18a、外周面18b及び下端面18c)における封入樹脂部68が接合された箇所に、封入樹脂部68における外側面に在る外周縁68aと内周縁68bとの間を仕切るように環状に配置されている。これにより、エレメント本体18の外側面と封入樹脂部68との界面において、水分が、外周縁68aから内周縁68bを横切って進み、複数のリードピン34まで到達するためには、必ず粗面化部7Aを通過することになる。
【0080】
粗面化部7Aは、レーザー照射によって、エレメント本体18の外周面18bを荒らすことにより粗面化して形成されている。そのため、封入樹脂部68は、粗面化部7Aの凹部に進入して外周面18bと封入樹脂部68との接着性が向上し、これにより、封入樹脂部68との界面の耐水性が向上する。
【0081】
本実施形態において、粗面化部7Aは、
図9(b)に示すように、エレメント本体18の外周面18bの周方向に互いに平行な直線状(環状)に形成された複数の溝8Aで構成されている。これら複数の溝8Aは、レーザー照射位置を周方向と直交する方向に溝ピッチ分ずつずらしながら周方向に複数回走査して形成されている。つまり、複数の溝8Aは、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成されている。複数の溝8Aの深さは、100nm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜3μmであり、より好ましくは1.0μm±0.5μmである。
【0082】
このような圧力センサ1Aの作用は、上述した第1の実施形態の圧力センサ1Aの作用と同様であり、エレメント本体18と封入樹脂部68との界面に浸入した水分は、エレメント本体18の外周面18bまで到達すると、粗面化部7Aによって進行を妨げられ、そのため、水分がそれ以上進行せず、複数のリードピン34まで水分が到達することを抑制できる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の圧力センサ1Aは、(a)ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のエレメント本体18、エレメント本体18に設けられた中央開口20に充填されたハーメチックガラス22、エレメント本体18内に設けられたセンサチップ32、及び、センサチップ32の端子に電気的に接続されかつ中央開口20内にハーメチックガラス22を貫通するように設けられた複数のリードピン34を備えた圧力検知エレメント16と、(b)複数のリードピン34の周囲を囲うようにしてエレメント本体18の外側面に接合された封入樹脂部68と、を有している。そして、圧力センサ1Aは、エレメント本体18の外周面18bにおける封入樹脂部68が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68a及び内周縁68bを仕切るように配置された環状の粗面化部7Aが設けられている。
【0084】
また、圧力センサ1Aは、粗面化部7Aが、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8Aで構成されている。
【0085】
また、圧力センサ1Aは、複数の溝8Aが、互いに平行な直線状に形成されている。
【0086】
また、圧力センサ1Aは、複数の溝8Aが、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成されている。
【0087】
以上より、本実施形態によれば、ステンレス製、アルミニウム製又はニッケル製のエレメント本体18の外側面に、複数のリードピン34を囲うようにして封入樹脂部68が接合されており、このエレメント本体18の外側面の一部である外周面18bにおける封入樹脂部68が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68a及び内周縁68bを仕切るように配置された環状の粗面化部7Aが設けられている。そのため、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68aからエレメント本体18と封入樹脂部68との界面に浸入した水分は、複数のリードピン34に至るためには必ず粗面化部7Aを通過しなければならない。そして、粗面化部7Aでは、レーザー照射による粗面化により生じた凹部に接着剤が入り込み、エレメント本体18と封入樹脂部68との接着性が向上するので、エレメント本体18の粗面化部7Aと封入樹脂部68との界面の耐水性が高まる。これにより、粗面化部7Aにおいて、水分の通過を妨げ、水分が複数のリードピン34に到達することを抑制して、防水性を向上できる。また、粗面化部7Aが、レーザー照射により形成されているので、例えば、プラズマ洗浄や紫外線照射などにより粗面化部を形成した場合に比べて、粗面化部を容易に所望の形状とすることができる。そのため、環状の粗面化部を容易に設けることができる。
【0088】
また、粗面化部7Aが、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8Aで構成されている。そのため、簡易なレーザー制御によって粗面化部7Aをさらに容易に形成することができる。
【0089】
また、粗面化部7Aの複数の溝8Aが、互いに平行な直線状に形成されている。そのため、非常に簡易なレーザー制御によって粗面化部をさらに容易に形成することができる。
【0090】
また、粗面化部7Aの複数の溝8Aが、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成されているので、これら複数の溝8Aが、エレメント本体18と封入樹脂部68との界面に浸入した水分に対して、掘(壕)のように幾重にも立ちふさがり、水分が複数のリードピン34に到達することをさらに抑制して、防水性をより向上できる。
【0091】
以上、本発明について、好ましい実施形態として第1の実施形態及び第2の実施形態を挙げて説明したが、本発明の圧力検知ユニットはこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0092】
例えば、上述した第1の実施形態では、粗面化部7が、互いに平行な直線状に形成された複数の溝8で構成されているものであったが、これに限定されるものではない。このような粗面化部7に代えて、
図10(a)、(b)に示すように、複数のリードピン34が配置された中央開口20を囲む環状でかつ互いに交差しない同心状に形成された複数の溝8Bで構成された環状の粗面化部7Bを有する構成としてもよい。このような構成とすることで、これら複数の溝8Bが、エレメント本体18の上端面18aと封入樹脂部68との界面に浸入した水分に対して、掘(壕)のように幾重にも立ちふさがり、水分が複数のリードピン34に到達することをさらに抑制して、防水性をより向上できる。
【0093】
または、このような粗面化部7に代えて、
図11(a)、(b)に示すように、互いに平行な直線状に形成された第1の複数の溝部81と、第1の複数の溝部81と交差する方向に互いに平行な直線状に形成された第2の複数の溝部82と、を含む複数の溝8Cで構成された粗面化部7Cを有する構成としてもよい。このようにすることで、簡易なレーザー制御によって、防水性をより向上させた粗面化部7Cを容易に形成することができる。
【0094】
または、このような粗面化部7に代えて、レーザー照射により、互いに間隔をあけて設けられた水玉模様状の複数の穴で構成された粗面化部としてもよい。
【0095】
または、上述した第2の実施形態において、粗面化部7Aの複数の溝8Aに代えて、
図3(b)、
図11(b)に示すような複数の溝8、8Cを設けてもよい。
【0096】
また、上述した第1の実施形態では、粗面化部7が平面視で円形環状に形成されており、第2の実施形態では、粗面化部7Aが、円筒環状に形成されているものであったが、これに限定されるものではない。例えば、円形環状の粗面化部7に代えて、エレメント本体18の上端面18aに複数のリードピン34が配置された中央開口20を囲む矩形環状に形成された粗面化部が設けられていたりしてもよく、または、エレメント本体18の上端面18a及び外周面18b全体が単一の封入樹脂部68で覆われた構成において、これら上端面18a及び外周面18bにまたがって中央開口20を囲む環状に形成されていたりしてもよく、本発明の目的に反しない限り、粗面化部は、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面にある外周縁68aから内周縁68b(即ち、複数のリードピン34)に向かう場合に必ず粗面化部7、7Aを通るように、エレメント本体18の外側面に、封入樹脂部68におけるエレメント本体18に在る外周縁68aと内周縁68bとの間を仕切る環状に形成されていればよい。
【0097】
また、上述した第1の実施形態では、粗面化部7が、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68a及び内周縁68bの間に配置されたものであったが、これに限定されるものではない。例えば、粗面化部7の外縁が外周縁68aと内周縁68bとの間の箇所にあり、粗面化部7の内縁が内周縁68bよりも内側の複数のリードピン寄りの箇所にあってもよい。または、粗面化部7の外縁が外周縁68aの外側の箇所にあり、粗面化部7の内縁が内周縁68bよりも内側の複数のリードピン寄りの箇所にあってもよい。このような構成においても、粗面化部7(具体的には、粗面化部7の一部)が、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68aと内周縁68bとを仕切るように配置された構成に含まれる。即ち、本発明の目的に反しない限り、粗面化部7(その一部又は全部)は、封入樹脂部68におけるエレメント本体18の外側面に在る外周縁68aと内周縁68bとを仕切るように配置されていれば、その構成は任意である。
【0098】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態の圧力検知ユニットを、
図12、
図13を参照して説明する。
【0099】
図12は、本発明の第3の実施形態の圧力検知ユニットの縦断面図である。
図13(a)は、
図12の圧力検知ユニットが備える圧力検知エレメントの平面図であり、(b)は、(a)の粗面化部の一部を拡大した図である(粗面化部が、ケース上端面に形成された互いに平行な直線状の複数の溝で構成されている)。なお、以下の説明における「上下」の概念は、
図12における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0100】
図12に示す圧力検知ユニット(図中、符号2で示す)は、圧力検知エレメント5と、電気接続部20と、継手部30と、カバー40と、第1接着剤51と、第2接着剤52と、を備えている。
【0101】
圧力検知エレメント5は、ベース11及び受け部材12からなる略円柱形状のケース10と、ダイヤフラム13と、圧力検知素子14と、複数のリードピン19と、を備えている。
【0102】
ベース11は、円板状のベース本体11aと、ベース本体11aの周縁から図中下方に向けて直角に立設された鍔部11bと、を備える蓋状に形成されている。
【0103】
ベース本体11aには、後述する受圧空間17へのオイル封入用のオイル充填孔11cが、当該ベース本体11aを貫通して形成されている。このオイル充填孔11cは、オイル充填後にボール15によって封じられる。また、ベース本体11aには、複数のリードピン取出孔11dが、当該ベース本体11aを貫通して形成されている。この複数のリードピン取出孔11dには、例えば銅などの導電材料を用いて棒状に形成された複数のリードピン19が挿通されるとともに、絶縁部材としてのハーメチックシール16によってオイル漏れがないように封じられている。これにより、複数のリードピン19は、ハーメチックシール16によってベース11に電気的に絶縁された状態で固定される。リードピン取出孔11dは、貫通孔の一例に相当し、ハーメチックシール16は、絶縁部材の一例に相当する。
【0104】
受け部材12は、円板状の受け部材本体12aと、受け部材本体12aの周縁にその中心から離れるように図中斜め上方向に向けて立設された鍔部12bと、を備える皿状に形成されている。鍔部12bの先端は、受け部材本体12aと略平行な平坦に形成されている。受け部材本体12aの中心部分には開口12cが形成されている。ベース11と受け部材12とは、ベース11の鍔部11bの先端と受け部材12の鍔部12bとの先端が後述するダイヤフラム13を挟んで重なるように配置されている。受け部材12の図中下方を向く面は、ケース10の下端面10cである。この下端面10cは、環状下面12e、外側テーパ周面12f及び環状下面12gが互いに同心に連なって構成されている。
【0105】
ダイヤフラム13は、円形の膜状に形成されており、その外周縁部13aが、ベース11の鍔部11bの先端と受け部材12の鍔部12bとの先端に挟まれるように配置されている。
【0106】
ベース11の鍔部11bの先端、受け部材12の鍔部12bの先端、及び、ダイヤフラム13の外周縁部13aは、それら接合箇所Sがレーザー溶接等によって互いに溶接されて、この接合箇所Sにおいて互いに一体的かつ密封して連結・固定されている。ベース11と受け部材12とが互いに接合されることにより、これらは圧力検知エレメント5の外形となるケース10を構成し、そして、ダイヤフラム13は、ケース10内の空間を仕切るように該ケース10に取り付けられる。ベース11とダイヤフラム13との間には、オイルが封入される受圧空間17が形成され、受け部材12とダイヤフラム13との間には加圧空間18が形成されている。
【0107】
ベース11、受け部材12及びダイヤフラム13は、ステンレスを材料として構成されていることが好ましい。または、これらの一部又は全部が、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)又はニッケル(ニッケル合金を含む)を材料として構成されていてもよい。
【0108】
圧力検知素子14は、(a)シリコン基板の裏面中央部をエッチングして形成されたダイヤフラム部(シリコンダイヤフラム)と、(b)複数の検知素子部(ピエゾ抵抗素子)を含んでダイヤフラム部に形成されたブリッジ回路、並びに、該ブリッジ回路の出力信号を処理する増幅回路、直線補正回路、温度補正回路及び補正データ保持回路などを有する電子回路部と、が半導体回路集積化技術により集積化されている。圧力検知素子14は、ダイヤフラム部からなる受圧部14aに加えられた圧力に応じた圧力信号を出力する。
【0109】
圧力検知素子14は、受圧空間17内に配置された状態でベース11に取り付けられている。つまり、圧力検知素子14は、ケース10内に設けられている。圧力検知素子14の金属端子部(ボンディングパッド)は、複数のリードピン19の一端と受圧空間17内にてボンディングワイヤ61により接続されている。これにより、圧力検知素子14は、ベース11のベース本体11aを貫通して形成されている複数のリードピン取出孔11dを通して延びる複数のリードピン19を通じて、後述する電気接続部20の基板21に電気的に接続されている。
【0110】
図13(a)、(b)に示すように、ケース10の上端面10a(ベース11のベース本体11aの図中上方を向く面)には、複数のリードピン取出孔11dを囲むようにして、環状の粗面化部7が設けられている。この粗面化部7については後述する。
【0111】
電気接続部20は、後述するカバー40内に配置されており、基板21と、基板21に接続されたコネクタ23と、コネクタ23に接続されたリード線24とを有している。基板21には複数のリードピン19の他端が接続されており、つまり、複数のリードピン19を通じて、基板21と圧力検知素子14とが電気的に接続されている。これにより、圧力検知素子14から出力された圧力信号が、リードピン19、基板21及びコネクタ23を通じて、リード線24から外部へと取り出される。
【0112】
継手部30は、銅を材料として構成されている。または、継手部30は、真鍮などの銅合金や後述するカバー40と同一の合成樹脂等を材料として構成されていてもよい。継手部30は、略筒状でその図中上方の一端部が段階的に縮径する階段状に形成されている。継手部30は、その一端部の先端30aが受け部材12の開口12cに挿入されることにより、継手部30の内側の流体導入通路32と加圧空間18とが連通される。また、継手部30は、その一端部の先端30aと受け部材12の開口12cの周縁とがそれら間を密封するようにロウ付けされることにより、受け部材12に固定して取り付けられている。
【0113】
継手部30の他端部内側には、雌ねじが切られた結合用ねじ部31が設けられており、図示しない流体導入管を螺合して接続可能とされている。つまり、継手部30は流管部材を構成し、受け部材12は、流管部材である継手部30が接続される流管接続部材を構成する。
【0114】
継手部30の結合用ねじ部31に流体導入管が接続されると、継手部30の流体導入通路32を通じて、流体の圧力が加圧空間18に導入されてダイヤフラム13に伝達される。ダイヤフラム13は極めて薄いため圧力損失が生ずることなく圧力伝達が行われる。この圧力を圧力検知素子14の受圧部14aで受けて、受圧部14aで受けた圧力に応じてピエゾ抵抗素子から発せられた電気信号が電子回路部で処理されて、圧力信号としてリードピン19に出力される。
【0115】
カバー40は、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)等の合成樹脂を材料として筒形状(略筒形状を含む)に構成されている。または、カバー40は、銅又は銅合金(真鍮など)を材料として構成されていてもよい。カバー40は、電気接続部20のコネクタ23及びリード線24を収容する図中上方の部分が、小径端部41として形成されており、圧力検知エレメント5を収容する図中下方の部分が、小径端部41より内径を大きくして且つ筒状スカート状に延びる大径端部42(カバー40の一端部)として形成されている。
【0116】
小径端部41の内周面には、その全周にわたり突出した突出部41aが形成されている。この突出部41aは、カバー40内の後述する第1空間47に充填された第1接着剤51の抜け止めとして機能する。
【0117】
大径端部42の内周側には、ベース11の外径とほぼ同径の環状段部42aが形成されている。この環状段部42aには、ベース11がその外径角部である環状角部11eにおいて嵌合し且つ座着するように載置される。これにより、ベース11が、環状段部42aに載置されることにより、圧力検知エレメント5(具体的には、ベース11及び受け部材12からなるケース10)が大径端部42の図中下方の開口を塞ぐように配置される。このとき、ケース10から突き出た複数のリードピン19がカバー40の内側(小径端部41側)を向くように配置されている。
【0118】
大径端部42の内周側における環状段部42aよりも図中下方の開口寄りの箇所には、ケース10(具体的にはベース11)の外径よりも大径の筒状内周面42bが設けられている。この筒状内周面42bと、ケース10の外周面10b(具体的には、ベース11の外周面11f及び受け部材12の周面12d)との間に、後述する第2接着剤52が充填される環状隙間45が全周に渡って形成されている。環状隙間45は、大径端部42の図中下方の開口付近において、後述する開き空間46と連なって、第2空間48を構成する。
【0119】
カバー40の内側は、カバー40に収容されたケース10で区切られており、ベース11のベース本体11aから小径端部41側には、第1空間47が形成されている。この第1空間47には、電気接続部20(具体的には、基板21、コネクタ23及びリード線24)が収容されている。
【0120】
第1空間47には、第1接着剤51が充填、硬化されている。第1接着剤51は、カバー40やリード線24との接着性が高く、且つ弾性が高い、例えば、エポキシ系接着剤などが用いられる。勿論、第1接着剤51として他の種類の接着剤(ウレタン系接着剤やシリコーン系接着剤など)を用いてもよい。
【0121】
第1接着剤51は、第1空間47に充填後硬化されることにより、リードピン19、基板21、コネクタ23及びリード線24が埋設状態になり、これらのパーツをカバー40内に封止する。つまり、第1接着剤51は、複数のリードピン19を覆うようにしてケース10の上端面10aに接合されている。
【0122】
カバー40の大径端部42の図中下方の開口付近には、第2空間48が形成されている。この第2空間48は、環状隙間45及び開き空間46を含んで構成されている。
【0123】
環状隙間45は、上述したように、ケース10の外周面10bとこの外周面10bに対向する大径端部42の筒状内周面42bとの間に形成されている比較的幅の狭い環状空間である。
【0124】
開き空間46は、環状隙間45に連なる空間であって、受け部材12の鍔部12bの周面12dに連なる環状下面12e、及び、この環状下面12eに連なる外側テーパ周面12fと、大径端部42の筒状内周面42bの開口端側部分及びそれに連なる傾斜端面42cと、によって囲まれる空間である。
【0125】
第2空間48には、第2接着剤52が充填される。即ち、
図12において第2接着剤52が充填されている空間が第2空間48である。この第2接着剤52は、ステンレス製のベース11や受け部材12、銅製の継手部30及び合成樹脂製のカバー40との接着性が高く且つ弾性の高い、エポキシ系接着剤が用いられている。または、第2接着剤52は、ウレタン系接着剤又はシリコーン系接着剤でもよい。
【0126】
第2接着剤52は、第2空間48に充填されることにより、圧力検知エレメント5のケース10とカバー40の大径端部42との間の全周にわたって設けられる。そのため、第2接着剤52が、第2空間48に充填後硬化されると、ケース10とカバー40との間を全周にわたって封止するように接着する。これにより、ケース10とカバー40との固定強度やそれら間の密封性が更に高められる。
【0127】
第2接着剤52は、ケース10の外周面10bの一部(ベース11の外周面11fの一部及び受け部材12の周面12d)とケース10の下端面10cの一部(受け部材12の環状下面12e及び外側テーパ周面12f)とに接合されている。また、第2接着剤52は、カバー40の大径端部42の筒状内周面42bの一部と傾斜端面42cとに接合されている。
【0128】
カバー40は、合成樹脂(又は銅、銅合金)を材料として構成されているので、カバー40と第1接着剤51及び第2接着剤52との界面の耐水性(具体的には、当該界面への水分の浸入しにくさ)は比較的高い。また、圧力検知エレメント5のケース10はステンレス(又はアルミニウム、ニッケル)を材料として構成されているので、ケース10と第1接着剤51及び第2接着剤52との界面の耐水性は、カバー40と第1接着剤51及び第2接着剤52との界面の耐水性に比べて低い。つまり、カバー40と第1接着剤51及び第2接着剤52との界面よりも、ケース10と第1接着剤51及び第2接着剤52との界面の方が、水分が浸入しやすいので、防水性を向上させるためには、ケース10と第1接着剤51又は第2接着剤52との界面の耐水性を向上させる必要がある。
【0129】
ここで、圧力検知エレメント5のケース10の上端面10aに設けられた粗面化部7について説明する。
【0130】
粗面化部7は、
図13(a)、(b)に示すように、平面視環状に形成されており、ケース10の上端面10aにおける第1接着剤51が接合された箇所に、複数のリードピン19を囲むように設けられている。換言すると、ケース10の外側面(ケース10の外側を向く表面部分であり、具体的には、上端面10a、外周面10b及び下端面10c)における第1接着剤51及び複数のリードピン19との位置関係で見た場合に、粗面化部7は、ケース10の外側面における第1接着剤51が接合された箇所に、第1接着剤51における上端面10aに在る周縁51aと複数のリードピン19との間を仕切るように環状に配置されている。これにより、ケース10の上端面10aと第1接着剤51の界面において、水分が、周縁51aから複数のリードピン19に到達するためには、必ず粗面化部7を通過することになる。
【0131】
粗面化部7は、レーザー照射によって、ケース10の上端面10aを荒らすことにより粗面化して形成されている。そのため、第1接着剤51は、粗面化部7の凹部に進入して上端面10aと第1接着剤51との接着性が向上し、これにより、第1接着剤51との界面の耐水性が向上する。
【0132】
本実施形態において、粗面化部7は、
図13(b)に示すように、互いに平行な直線状に形成された複数の溝8で構成されている。これら複数の溝8は、レーザー照射位置を溝ピッチ分ずつずらしながら所定の一方向に複数回走査して形成されている。複数の溝8の深さは、100nm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜3μmであり、より好ましくは1.0μm±0.5μmである。
【0133】
次に、上述した圧力検知ユニット2の本発明に係る作用について説明する。
【0134】
圧力検知ユニット2が、水などの液体に長期間曝されると、第2接着剤52におけるケース10の下端面10cに在り且つカバー40の外側に在る周縁52aの箇所から、ケース10の下端面10cと第2接着剤52との界面に水分が浸入する。この界面に浸入した水分は、徐々にケース10の下端面10cから外周面10b、上端面10aへと伝わる。
【0135】
そして、第1接着剤51のケース10の上端面10aに在る周縁51aの箇所から、ケース10の上端面10aと第1接着剤51との界面に水分が浸入する。しかし、この界面に浸入した水分は、粗面化部7によって進行を妨げられ、粗面化部7に囲まれた複数のリードピン19まで水分が到達することを抑制できる。
【0136】
以上説明したように、本実施形態の圧力検知ユニット2は、(a)ステンレス製のケース10、ケース10に設けられた当該ケース10の内外を貫通する複数のリードピン取出孔11dを封止するハーメチックシール16、ケース10内に設けられた圧力検知素子14、及び、圧力検知素子14の端子に電気的に接続されかつ複数のリードピン取出孔11d内にハーメチックシール16を貫通するように設けられた複数のリードピン19を備えた圧力検知エレメント5と、(b)複数のリードピン19を覆うようにしてケース10の上端面10aに接合された第1接着剤51と、を有している。そして、ケース10の上端面10aにおける第1接着剤51が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、第1接着剤51におけるケース10の上端面10aに在る周縁51aと複数のリードピン19とを仕切るように配置された環状の粗面化部7が設けられている。
【0137】
また、圧力検知ユニット2は、粗面化部7が、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8で構成されている。
【0138】
また、圧力検知ユニット2は、複数の溝8が、互いに平行な直線状に形成されている。
【0139】
以上より、本実施形態によれば、ステンレス製のケース10の上端面10aに、複数のリードピン19を覆う第1接着剤51が接合されており、このケース10の上端面10aにおける第1接着剤51が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、第1接着剤51におけるケース10の上端面10aに在る周縁51aと複数のリードピン19とを仕切るように配置された環状の粗面化部7が設けられている。そのため、第1接着剤51におけるケース10の上端面10aに在る周縁51aからケース10の上端面10aと第1接着剤51との界面に浸入した水分は、複数のリードピン19に至るためには必ず粗面化部7を通過しなければならない。そして、粗面化部7では、レーザー照射による粗面化により生じた凹部に第1接着剤51が入り込み、ケース10の上端面10aと第1接着剤51との接着性が向上するので、ケース10の粗面化部7と第1接着剤51との界面の耐水性が高まる。これにより、粗面化部7において、水分の通過を妨げ、水分が複数のリードピン19に到達することを抑制して、防水性を向上できる。また、粗面化部7が、レーザー照射により形成されているので、例えば、プラズマ洗浄や紫外線照射などにより粗面化部を形成した場合に比べて、粗面化部7を容易に所望の形状とすることができる。そのため、環状の粗面化部7を容易に設けることができる。
【0140】
また、粗面化部7が、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8で構成されているので、例えば、断続的にレーザーを照射するようなレーザー制御に比べて、簡易なレーザー制御によって粗面化部7をさらに容易に形成することができる。
【0141】
また、粗面化部7の複数の溝8が、互いに平行な直線状に形成されているので、非常に簡易なレーザー制御によって粗面化部7をさらに容易に形成することができる。
【0142】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態の圧力検知ユニットを、
図14、
図15を参照して説明する。
【0143】
図14は、本発明の第4の実施形態の圧力検知ユニットの縦断面図である。
図15(a)は、
図14の圧力検知ユニットが備える圧力検知エレメントの側面図であり、(b)は、(a)の粗面化部の一部を拡大した図である(粗面化部が、ケース外周面に形成された互いに平行な直線状の複数の溝で構成されている)。なお、以下の説明における「上下」の概念は、
図14における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0144】
図14に示す圧力検知ユニット(図中、符号2Aで示す)は、上述した第3の実施形態の圧力検知ユニット2において、圧力検知エレメント5のケース10の上端面10aに設けられた粗面化部7に代えて、圧力検知エレメント5のケース10の外周面10bに設けられた粗面化部7Aを有し、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明において、第3の実施形態の圧力検知ユニット2と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0145】
粗面化部7Aは、
図15(a)、(b)に示すように、圧力検知エレメント5のケース10の外周面10bに、その周方向に沿う環状に形成されている。つまり、ケース10の外側面(ケース10の外側を向く表面部分であり、具体的には、上端面10a、外周面10b及び下端面10c)において第2接着剤52及び複数のリードピン19との位置関係で見た場合に、粗面化部7Aは、ケース10の外側面における第2接着剤52が接合された箇所に、第2接着剤52における外側面(下端面10c)に在りかつカバー40の外側に在る周縁52aと複数のリードピン19との間を仕切るように環状に配置されている。これにより、ケース10の外周面10b及び下端面10cと第2接着剤52の界面において、水分が、周縁52aから複数のリードピン19に到達するためには、必ず粗面化部7Aを通過することになる。
【0146】
粗面化部7Aは、レーザー照射によって、ケース10の外周面10bを荒らすことにより粗面化して形成されている。そのため、第2接着剤52は、粗面化部7Aの凹部に進入して外周面10bと第2接着剤52との接着性が向上し、これにより、第2接着剤52との界面の耐水性が向上する。
【0147】
本実施形態において、粗面化部7Aは、
図15(b)に示すように、ケース10の外周面10bの周方向に互いに平行な直線状(環状)に形成された複数の溝8Aで構成されている。これら複数の溝8Aは、レーザー照射位置を周方向と直交する方向に溝ピッチ分ずつずらしながら周方向に複数回走査して形成されている。つまり、複数の溝8Aは、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成されている。複数の溝8Aの深さは、100nm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜3μmであり、より好ましくは1.0μm±0.5μmである。
【0148】
次に、上述した圧力検知ユニット2Aの本発明に係る作用について説明する。
【0149】
圧力検知ユニット2Aが、水などの液体に長期間曝されると、第2接着剤52におけるケース10の下端面10cに在り且つカバー40の外側に在る周縁52aの箇所から、ケース10の下端面10cと第2接着剤52との界面に水分が浸入する。しかし、この界面に浸入した水分は、ケース10の外周面10bまで到達すると、粗面化部7Aによって進行を妨げられる。そのため、水分がそれ以上進行せず、複数のリードピン19まで水分が到達することを抑制できる。
【0150】
本実施形態の圧力検知ユニット2Aは、(a)ステンレス製のケース10、ケース10に設けられた当該ケース10の内外を貫通する複数のリードピン取出孔11dを封止するハーメチックシール16、ケース10内に設けられた圧力検知素子14、及び、圧力検知素子14の端子に電気的に接続されかつ複数のリードピン取出孔11d内にハーメチックシール16を貫通するように設けられた複数のリードピン19を備えた圧力検知エレメント5と、(b)筒形状に形成され、一端部である大径端部42を塞ぐように前記筒形状の内側にリードピン19を向けた状態の圧力検知エレメント5が収容される合成樹脂製のカバー40と、(c)ケース10とカバー40の大径端部42との間の全周にわたって設けられ、それらの間を封止するようにケース10とカバー40の大径端部42それぞれに接合された第2接着剤52と、を有している。そして、圧力検知ユニット2Aは、ケース10の外側面における第2接着剤52が接合された箇所に、レーザー照射によって形成され、第2接着剤52におけるケース10の外側面でかつカバー40の外側に在る周縁52aと複数のリードピン19とを仕切るように配置された環状の粗面化部7Aが設けられている。
【0151】
また、圧力検知ユニット2Aは、粗面化部7Aが、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8Aで構成されている。
【0152】
また、圧力検知ユニット2Aは、複数の溝8Aが、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成されている。
【0153】
以上より本実施形態によれば、圧力検知エレメント5が、筒形状に形成された合成樹脂製のカバー40に、その一端部である大径端部42を塞ぐように内側にリードピン19を向けた状態で収容される。また、第2接着剤52が、ステンレス製のケース10とカバー40の大径端部42との間の全周にわたって設けられ、それらの間を封止するようにケース10とカバー40の大径端部42のそれぞれに接合される。そして、ケース10の外側面における第2接着剤52が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、第2接着剤52におけるケース10の外側面に在りかつカバー40の外側に在る周縁52aと複数のリードピン19とを仕切るように配置された環状の粗面化部7Aが設けられている。そのため、第2接着剤52におけるケース10の外側面に在り且つカバー40の外側に在る周縁52aからケース10と第2接着剤52との界面に浸入した水分は、複数のリードピン19に至るためには必ず粗面化部7Aを通過しなければならない。そして、粗面化部7Aでは、レーザー照射による粗面化により生じた凹部に第2接着剤52が入り込み、ケース10と第2接着剤52との接着性が向上するので、ケース10の粗面化部7Aと第2接着剤52との界面の耐水性が高まる。これにより、粗面化部7Aにおいて、水分の通過を妨げ、水分が複数のリードピン19に到達することを抑制して、防水性を向上できる。また、粗面化部7Aが、レーザー照射により形成されているので、例えば、プラズマ洗浄や紫外線照射などにより粗面化部を形成した場合に比べて、粗面化部7Aを容易に所望の形状とすることができる。そのため、環状の粗面化部7Aを容易に設けることができる。
【0154】
また、粗面化部7Aが、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8Aで構成されているので、例えば、断続的にレーザーを照射するようなレーザー制御に比べて、簡易なレーザー制御によって粗面化部7Aをさらに容易に形成することができる。
【0155】
また、粗面化部7Aの複数の溝8Aが、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成されているので、これら複数の溝8Aが、ケース10と第2接着剤52との界面に浸入した水分に対して、掘(壕)のように幾重にも立ちふさがり、水分が複数のリードピン19に到達することをさらに抑制して、防水性をより向上できる。
【0156】
(第5の実施形態)
以下に、本発明の第5の実施形態の圧力検知ユニットを、
図16、
図17を参照して説明する。
【0157】
図16は、本発明の第5の実施形態の圧力検知ユニットの縦断面図である。
図17(a)は、
図16の圧力検知ユニットが備える受け部材の平面図であり、(b)は、(a)の粗面化部の一部を拡大した図である(粗面化部が、ケース下端面に形成された互いに平行な直線状の複数の溝で構成されている)。なお、以下の説明における「上下」の概念は、
図16における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0158】
図16に示す圧力検知ユニット(図中、符号2Bで示す)は、上述した第3の実施形態の圧力検知ユニット2において、圧力検知エレメント5のケース10の上端面10aに設けられた粗面化部7に代えて、圧力検知エレメント5のケース10の下端面10c(具体的には、受け部材12の外側テーパ周面12f)に設けられた粗面化部7Bを有し、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明において、第3の実施形態の圧力検知ユニット2と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0159】
粗面化部7Bは、
図17(a)、(b)に示すように、圧力検知エレメント5のケース10の下端面10c(具体的には、受け部材12における外側テーパ周面12f)に、その周方向に沿う環状に形成されている。つまり、ケース10の外側面(ケース10の外側を向く表面部分であり、具体的には、上端面10a、外周面10b及び下端面10c)において第2接着剤52及び複数のリードピン19との位置関係で見た場合に、粗面化部7Bは、ケース10の外側面における第2接着剤52が接合された箇所に、第2接着剤52における外側面(下端面10c)に在りかつカバー40の外側に在る周縁52aと複数のリードピン19との間を仕切るように環状に配置されている。これにより、ケース10の外周面10b及び下端面10cと第2接着剤52の界面において、水分が、周縁52aから複数のリードピン19に到達するためには、必ず粗面化部7Bを通過することになる。
【0160】
粗面化部7Bは、レーザー照射によって、ケース10の下端面10c(具体的には受け部材12の外側テーパ周面12f)を荒らすことにより粗面化して形成されている。そのため、第2接着剤52は、粗面化部7Bの凹部に進入して下端面10cと第2接着剤52との接着性が向上し、これにより、第2接着剤52との界面の耐水性が向上する。
【0161】
本実施形態において、粗面化部7Bは、
図17(b)に示すように、互いに平行な直線状に形成された複数の溝8Bで構成されている。これら複数の溝8Bは、レーザー照射位置を溝ピッチ分ずつずらしながら所定の一方向に複数回走査して形成されている。複数の溝8Bの深さは、100nm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜3μmであり、より好ましくは1.0μm±0.5μmである。
【0162】
次に、上述した圧力検知ユニット2Bの本発明に係る作用について説明する。
【0163】
圧力検知ユニット2Bが、水などの液体に長期間曝されると、第2接着剤52におけるケース10の下端面10cに在り且つカバー40の外側に在る周縁52aの箇所から、ケース10の下端面10cと第2接着剤52との界面に水分が浸入する。しかし、この界面に浸入した水分は、ケース10の粗面化部7Bによって進行を妨げられる。そのため、水分がそれ以上進行せず、複数のリードピン19まで水分が到達することを抑制できる。
【0164】
本実施形態の圧力検知ユニット2Bは、(a)ステンレス製のケース10、ケース10に設けられた当該ケース10の内外を貫通する複数のリードピン取出孔11dを封止するハーメチックシール16、ケース10内に設けられた圧力検知素子14、及び、圧力検知素子14の端子に電気的に接続されかつ複数のリードピン取出孔11d内にハーメチックシール16を貫通するように設けられた複数のリードピン19を備えた圧力検知エレメント5と、(b)筒形状に形成され、一端部である大径端部42を塞ぐように前記筒形状の内側にリードピン19を向けた状態の圧力検知エレメント5が収容される合成樹脂製のカバー40と、(c)ケース10とカバー40の大径端部42との間の全周にわたって設けられ、それらの間を封止するようにケース10とカバー40の大径端部42それぞれに接合された第2接着剤52と、を有している。そして、圧力検知ユニット2Bは、ケース10の外側面における第2接着剤52が接合された箇所に、レーザー照射によって形成され、第2接着剤52におけるケース10の外側面でかつカバー40の外側に在る周縁52aと複数のリードピン19とを仕切るように配置された環状の粗面化部7Bが設けられている。
【0165】
また、圧力検知ユニット2Bは、粗面化部7Bが、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8Bで構成されている。
【0166】
以上より本実施形態によれば、圧力検知エレメント5が、筒形状に形成された合成樹脂製のカバー40に、その一端部である大径端部42を塞ぐように内側にリードピン19を向けた状態で収容される。また、第2接着剤52が、ステンレス製のケース10とカバー40の大径端部42との間の全周にわたって設けられ、それらの間を封止するようにケース10とカバー40の大径端部42のそれぞれに接合される。そして、ケース10の外側面における第2接着剤52が接合された箇所には、レーザー照射によって形成され、第2接着剤52におけるケース10の外側面に在りかつカバー40の外側に在る周縁52aと複数のリードピン19とを仕切るように配置された環状の粗面化部7Bが設けられている。そのため、第2接着剤52におけるケース10の外側面に在り且つカバー40の外側に在る周縁52aからケース10と第2接着剤52との界面に浸入した水分は、複数のリードピン19に至るためには必ず粗面化部7Bを通過しなければならない。そして、粗面化部7Bでは、レーザー照射による粗面化により生じた凹部に第2接着剤52が入り込み、ケース10と第2接着剤52との接着性が向上するので、ケース10の粗面化部7Bと第2接着剤52との界面の耐水性が高まる。これにより、粗面化部7Bにおいて、水分の通過を妨げ、水分が複数のリードピン19に到達することを抑制して、防水性を向上できる。また、粗面化部7Bが、レーザー照射により形成されているので、例えば、プラズマ洗浄や紫外線照射などにより粗面化部を形成した場合に比べて、粗面化部7Bを容易に所望の形状とすることができる。そのため、環状の粗面化部7Bを容易に設けることができる。
【0167】
また、粗面化部7Bが、レーザーを複数回走査して形成された複数の溝8Bで構成されているので、例えば、断続的にレーザーを照射するようなレーザー制御に比べて、簡易なレーザー制御によって粗面化部7Bをさらに容易に形成することができる。
【0168】
以上、本発明について、好ましい実施形態として第3の実施形態、第4の実施形態及び第5の実施形態を挙げて説明したが、本発明の圧力検知ユニットはこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0169】
例えば、上述した第3の実施形態では、粗面化部7が、互いに平行な直線状に形成された複数の溝8で構成されているものであったが、これに限定されるものではない。このような粗面化部7に代えて、
図18(a)、(b)に示すように、複数のリードピン19を囲む環状でかつ互いに交差しない同心状に形成された複数の溝8Cで構成された環状の粗面化部7Cを有する構成としてもよい。このような構成とすることで、これら複数の溝8Cが、ケース10の上端面10aと第1接着剤51との界面に浸入した水分に対して、掘(壕)のように幾重にも立ちふさがり、水分が複数のリードピン19に到達することをさらに抑制して、防水性をより向上できる。
【0170】
または、このような粗面化部7に代えて、
図19(a)、(b)に示すように、互いに平行な直線状に形成された第1の複数の溝部81と、第1の複数の溝部81と交差する方向に互いに平行な直線状に形成された第2の複数の溝部82と、を含む複数の溝8Dで構成された粗面化部7Dを有する構成としてもよい。このようにすることで、簡易なレーザー制御によって、防水性をより向上させた粗面化部7Dを容易に形成することができる。
【0171】
または、このような粗面化部7に代えて、レーザー照射により、互いに間隔をあけて設けられた水玉模様状の複数の穴で構成された粗面化部としてもよい。上述した第5の実施形態においても、これら第3の実施形態の変形例として示した構成を適用してもよい。
【0172】
または、上述した第4の実施形態において、粗面化部7Aにおいて、複数の溝8Aに代えて、
図13(b)、
図19(b)に示すような複数の溝8、8Dを設けてもよい。
【0173】
また、上述した第3の実施形態及び第5の実施形態では、粗面化部7が平面視で円形環状に形成されており、第4の実施形態では、粗面化部7Aが、円筒環状に形成されているものであったが、これに限定されるものではない。例えば、円形環状の粗面化部7に代えて、ケース10の上端面10aに複数のリードピン19を囲む矩形環状に形成された粗面化部が設けられていたりしてもよく、または、ケース10の上端面10a及び外周面10b全体が単一の接着剤で覆われた構成において、これら上端面10a及び外周面10bにまたがって複数のリードピン19を囲む環状に形成されていたりしてもよく、本発明の目的に反しない限り、粗面化部は、接着剤におけるケース外周面にある周縁から複数のリードピンに向かう場合に必ず粗面化部を通るように、ケースの外側面に接着剤におけるケース外側面にある周縁と複数のリードピンとを仕切る環状に形成されていればよい。
【0174】
また、上述した第3の実施形態、第4の実施形態及び第5の実施形態では、圧力検知エレメント5及び電気接続部20がカバー40に収容された構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、カバー40を備えずに、単一の接着剤で、上記圧力検知エレメント5及び電気接続部20を覆う構成としてもよい。この場合、上記接着剤は、少なくとも圧力検知エレメント5の複数のリードピン19を覆うようにしてケース10の外側面に接合して設けられていればよく、また、粗面化部が、ケース10の外側面における上記接着剤が接合された箇所に、レーザー照射によって環状に形成され、上記接着剤におけるケース10の外側面に在る周縁と複数のリードピン19とを仕切るように配置されていればよい。
【0175】
なお、前述した第1〜第5の実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の圧力検知ユニットの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0176】
(評価)
本発明者らは、本発明の効果を確認するために、以下の実施例1〜5及び比較例1に示す圧力検知ユニットを作製して、これら圧力検知ユニットを用いて以下の評価試験を実施した。
【0177】
(実施例1)
上述した第3の実施形態の圧力検知ユニット2において、レーザーパワーを80%(レーザー平均出力13W)、走査速度(スキャンスピード)を500mm/秒、照射周波数を20kHz、走査間隔(ピッチ)を100μm、レーザースポット径を40μm、レーザー焦点(フォーカス)を±0μm、として、
図13(a)、(b)に示すように、ケース10の上端面10aに、互いに平行な直線状の複数の溝8で構成された、複数のリードピン19を囲む環状の粗面化部7を形成したものを、実施例1として作製した。実施例1において、複数の溝は、その幅の平均値が67.1μmとされている。
【0178】
(実施例2)
上記実施例1において、粗面化部7に代えて、
図18(a)、(b)に示すように、ケース10の上端面10aに、それぞれ環状でかつ互いに交差しない同心状に形成された複数の溝8Cで構成された、複数のリードピン19を囲む環状の粗面化部7Cを形成し、それ以外は実施例1と同一構成としたものを、実施例2として作製した。実施例2において、複数の溝は、その幅の平均値が67.1μmとされている。
【0179】
(実施例3)
上記実施例1において、粗面化部7に代えて、レーザーパワーを100%、走査間隔(ピッチ)を300μm、として、
図19(a)、(b)に示すように、ケース10の上端面10aに、互いに平行な直線状に形成された第1の複数の溝部81と、第1の複数の溝部81と直交する方向に互いに平行な直線状に形成された第2の複数の溝部82と、を含む複数の溝8Dで構成された、複数のリードピン19を囲む環状の粗面化部7Dを形成し、それ以外は実施例1と同一構成としたものを、実施例3として作製した。実施例3において、複数の溝は、その幅の平均値が77.6μmとされている。
【0180】
(実施例4)
上記実施例1において、粗面化部7に代えて、レーザーパワーを50%、照射周波数を10kHz、走査間隔(ピッチ)を20μm、レーザー焦点(フォーカス)を+20μm、として、
図19(a)、(b)に示すように、ケース10の上端面10aに、互いに平行な直線状に形成された第1の複数の溝部81と、第1の複数の溝部81と直交する方向に互いに平行な直線状に形成された第2の複数の溝部82と、を含む複数の溝8Cで構成された、複数のリードピン19を囲む環状の粗面化部7Cを形成し、それ以外は実施例1と同一構成としたものを、実施例4として作製した。実施例4において、複数の溝は、その幅の平均値が50.3μmとされている。
【0181】
(実施例5)
上述した第2の実施形態の圧力検知ユニット2Aにおいて、レーザーパワーを80%(レーザー平均出力13W)、走査速度(スキャンスピード)を500mm/秒、照射周波数を20kHz、走査間隔(ピッチ)を100μm、レーザースポット径を40μm、レーザー焦点(フォーカス)を±0μm、として、
図15(a)、(b)に示すように、ケース10の外周面10bに、周方向に互いに平行な直線状(環状)に形成された複数の溝8Aで構成された粗面化部7Aを形成したものを、実施例5として作製した。実施例5において、複数の溝は、その幅の平均値が67.1μmとされている。
【0182】
(比較例1)
上記実施例1において、
図20に示すように、粗面化部7を省略し、それ以外は実施例1と同一構成としたものを、比較例1として作製した。
【0183】
(試験1:水中放置試験)
上記実施例1〜5及び比較例1を水槽内に設置して、80度の水に120時間浸した後、それらを分解して内部の浸水状態を確認し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
○・・・複数のリードピン19まで水分が到達していない。
×・・・複数のリードピン19まで水分が到達している。
【0184】
(試験2:水中ヒートショック試験)
上記実施例1〜5及び比較例1を水槽内に設置して、水に浸した状態で水温を0度〜80度の範囲で周期的に複数回(30回)変化させたのち、それらを分解して内部の浸水状態を確認し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
○・・・複数のリードピン19まで水分が到達していない。
×・・・複数のリードピン19まで水分が到達している。
【0185】
(試験3:気中ヒートショック試験)
上記実施例1〜5及び比較例1を恒温槽内に設置して、気温を−40度〜135度の範囲で周期的に複数回(100回)変化させたのち、24時間水没させ、その後それらを分解して内部の浸水状態を確認し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
○・・・複数のリードピン19まで水分が到達していない。
×・・・複数のリードピン19まで水分が到達している。
【0186】
(総合評価)
試験1〜3の結果に基づき、以下の評価基準に基づいて、防水性を総合的に評価した。
○・・・全ての試験において複数のリードピン19まで水分が到達していない。
×・・・少なくとも1つの試験置いて複数のリードピン19まで水分が到達している。
【0187】
表1に、実施例1〜5及び比較例1の構成、並びに、評価結果を示す。
【0189】
(考察)
表1に示すように、粗面化部が設けられていない比較例1では、全ての試験において、複数のリードピン19まで水分が浸入してしまっていた。一方、粗面化部が設けられた実施例1〜5では、全ての試験において、複数のリードピンまで水分が浸入することがなかった。この結果から、粗面化部を設けることにより防水性を向上できることが確認でき、実際に圧力検知ユニットを用いて行った評価試験においても、本発明の効果を確認することができた。なお、この評価結果から、第1の実施形態の圧力センサ1及び第2の実施形態の圧力センサ1Aにおいても、同様の効果が得られると考えられる。