(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グリースガンは、内部にグリースが収容される筒体と、該筒体に設けられグリースを給脂対象に注入する注入ノズルと、前記筒体に設けられ当該筒体に収容されたグリースを注入ノズル側に押出すハンドル部とにより構成し、
前記グリースガン保持具は、前記運転席支持面上を左,右方向に延び前記グリースガンの筒体を支持する筒体支持部と、該筒体支持部の左,右方向一側に設けられ前記注入ノズルを保持するノズル保持部と、前記筒体支持部よりも前側に位置し前記筒体支持部が前記グリースガンの筒体を保持した状態で前記グリースガンのハンドル部に係合することにより当該ハンドル部の動きを規制するストッパ部とにより構成してなる請求項1または2に記載のキャノピ仕様の油圧ショベル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1による小型の油圧ショベルでは、カバー体と燃料タンク等との隙間(スペース)にグリースガンを収納する構成としている。しかし、例えばさらに小型の油圧ショベルは、上部旋回体が一層小さくなるので、カバー体の内部にグリースガンを収納するスペースを形成することが困難な場合があり、このような場合には、運転席の周囲にグリースガンを収納することが考えられる。
【0008】
しかし、小型の油圧ショベルは、上部旋回体が小さいことから運転席も狭く、この狭い運転席にグリースガンを収納すると、さらにオペレータの居住範囲が狭くなり、オペレータの居心地が悪くなるという問題がある。また、運転席の周囲には、種々の操作レバーや作業機器等が錯綜しているので、グリースガンを運転席の周囲に収納すると、例えばグリースガンが、周辺部品や作業機器等と干渉してしまい、オペレータの作業性を損なうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、オペレータの居住性、作業性を確保しつつ、グリースガンの収納スペースを確保することができる
キャノピ仕様の油圧ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による
キャノピ仕様の油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成し前記作業装置が取付けられる旋回フレームと、該旋回フレームの前側に位置して設けられオペレータの足を乗せる床板と、該床板の後側に位置して前記旋回フレームに設けられ前記床板よりも上方に立上り上面が平坦な運転席支持面となったボックス状の運転席台座と、該運転席台座の運転席支持面に設けられオペレータが着座する運転席と
、該運転席を上方から覆うキャノピとを備え
、前記運転席台座は、前記運転席支持面の下側に配設されたエンジンの前側と上側を覆うカバーを兼ねている。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記運転席台座の運転席支持面には、前記運転席を前記運転席支持面から上,下方向に隙間をもって支持する運転席支持部材と、前記運転席の座席の下面と背もたれの背面とのコーナ部に位置して給脂作業に用いるグリースガンを保持するグリースガン保持具とを設け、
前記運転席支持部材は、前記運転席台座の前側に設けられ前記運転席をオペレータが着座する着座位置と該着座位置から前方に傾いた前傾位置との間で回動可能に支持する回動支持部と、該回動支持部よりも後側に配置され前記運転席が着座位置となったときに前記座席の下面後部が載る運転席載置部とにより構成され、前記グリースガン保持具は、
前記運転席載置部よりも後側に位置し、少なくともその一部を前記運転席支持面と前記運転席との間の前記コーナ部内に入込ませた状態で前記グリースガンを保持するように取付け
られ、前記グリースガン保持具の一部は、前記運転席と上,下方向で重畳する構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記
グリースガンは、前記運転席を前記前傾位置に維持した状態で、前記グリースガン保持具に収納、または前記グリースガン保持具から取外される構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記グリースガンは、内部にグリースが収容される筒体と、該筒体に設けられグリースを給脂対象に注入する注入ノズルと、前記筒体に設けられ当該筒体に収容されたグリースを注入ノズル側に押出すハンドル部とにより構成し、前記グリースガン保持具は、前記運転席支持面上を左,右方向に延び前記グリースガンの筒体を支持する筒体支持部と、該筒体支持部の左,右方向一側に設けられ前記注入ノズルを保持するノズル保持部と、前記筒体支持部よりも前側に位置し前記筒体支持部が前記グリースガンの筒体を保持した状態で前記グリースガンのハンドル部に係合することにより当該ハンドル部の動きを規制するストッパ部とにより構成したことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、オペレータが着座する運転席を運転席支持面から上,下方向に隙間をもって支持することにより、運転席の座席の下面と背もたれの背面とのコーナ部にグリースガンを保持する(収納する)ことができるスペースを確保することができる。これにより、通常はデッドスペースとなるコーナ部を有効に利用することができ、オペレータの居住スペースを確保しつつグリースガンを収納することができる。
しかも、運転席は、オペレータが着座する着座位置と、着座位置から前方に傾いた前傾位置との間で回動可能としている。これにより、運転席を前傾位置に維持した状態で、グリースガンをグリースガン保持具に簡単に収納、または取外しすることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、
グリースガンは、運転席を前傾位置に維持した状態で、グリースガン保持具に収納、または前記グリースガン保持具から取外される。これにより、運転席を前傾位置に維持した状態で、グリースガンをグリースガン保持具に簡単に収納、または取外しすることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、グリースガン保持具は、運転席支持面上を左,右方向に延びる構成とし、左,右方向一側にグリースガンの注入ノズルを保持するノズル保持部を設けている。これにより、グリースガンの方向、位置が自ずと決まるので、グリースガンと周囲部品との干渉を避けることができる。また、グリースガン保持具には、グリースガンのハンドル部の動きを規制するストッパ部を設けている。これにより、建設機械の運転時における振動によりハンドル部が勝手に開閉することがないので、グリースガンの注入ノズルからグリースが液だれするのを防止することができ、運転席の周囲を常に清浄な状態に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る
キャノピ仕様の油圧ショベルを添付図面に従って詳細に説明する。
【0019】
図1において、1は本実施の形態に適用され
るキャノピ仕様の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより構成されている。
【0020】
作業装置4は、後述する旋回フレーム5の前側に揺動可能かつ俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、該ブーム4Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム4Bと、該アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cと、前記ブーム4Aを俯仰動するブームシリンダ4Dと、前記アーム4Bを俯仰動するアームシリンダ4Eと、前記バケット4Cを回動するバケットシリンダ4Fとによって構成されている。
【0021】
5は上部旋回体3の旋回フレームを示し、該旋回フレーム5は、下部走行体2上に旋回可能に取付けられた支持構造体として形成されている。旋回フレーム5は、厚肉な平板からなる長方形状の底板5Aと、該底板5Aの上面側に左,右方向に離間して略V字状に立設された左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの前端部に設けられ、作業装置4を支持する支持ブラケット5Dと、前記各縦板5B,5Cの後端位置に左,右方向に延びて立設されエンジンと制御弁群(いずれも図示せず)との間を仕切る仕切板5Eとにより構成されている。
【0022】
左縦板5Bの左側で仕切板5Eの前側には平板状のアンダカバー5Fが設けられ、旋回フレーム5の前端部には、各縦板5B,5Cの上側を左,右方向に延びる床板支持体5Gが設けられている。該床板支持体5Gは、後述する床板6の前側を支持するものである。
【0023】
6は旋回フレーム5の前側に位置して設けられた床板を示している。該床板6は、後述する運転席10に着座したオペレータが足を乗せる(置く)ものである。床板6は、左,右方向に長尺な略長方形状の板体からなり、その前側が旋回フレーム5の床板支持体5Gに取付けられている。一方、床板6の後側は、後述する運転席台座8の前面8Aの下部に取付けられている。さらに、床板6の前側位置には、下部走行体2を走行させる左,右の走行用操作レバー装置7が設けられている。
【0024】
8は床板6の後側に位置して旋回フレーム5に設けられた運転席台座を示している。該運転席台座8は、仕切板5Eの上部から上側に延びる前面8Aと、該前面8Aの上端縁から屈曲して後側に延び、上面が平坦な運転席支持面8Bとによりボックス状に形成されている。そして、運転席支持面8Bの後部は、旋回フレーム5の後部に立設された支持脚9に取付けられている。また、
図9に示すように、運転席支持面8Bの後側で支持脚9の前側には、後述するグリースガン保持具28を取付けるための2個の雌ねじ孔8Cが左,右方向に離間して設けられている。運転席支持面8Bの下側(内部)には、エンジン(図示せず)が配設され、これにより運転席台座8は、後述する運転席10の台座の他にエンジンの前側と上側を覆うカバーを兼ねている。
【0025】
10は運転席台座8に設けられた運転席を示し、該運転席10は、油圧ショベル1を操縦するオペレータが着座するものである。運転席10は、オペレータの座席となるシート部10Aと、該シート部10Aの後端から上方に立上りオペレータの背もたれとなる背当て部10Bとにより構成されている。そして、シート部10Aの下面10A1には、後述する運転席支持部材13の回動支持部14が設けられ、これにより運転席10は、運転席台座8の運転席支持面8B上に後述する回動支持部14を介して前方に回動可能に取付けられる構成となっている。
【0026】
そして、運転席10のシート部10Aの下面10A1と背当て部10Bの背面10B1とのコーナ部Aには、後述するグリースガン保持具28の一部が配置されている。また、運転席10の左,右両側には、作業装置4の駆動や上部旋回体3を旋回させるために操作する左操作レバー装置11と右操作レバー装置12が設けられている。
【0027】
13は運転席台座8の運転席支持面8Bに設けられた運転席支持部材を示し、該運転席支持部材13は、後述する回動支持部14と運転席載置部20とにより構成されている。運転席支持部材13は、運転席支持面8Bと運転席10のシート部10Aの下面10A1との間に上,下方向の隙間Sをもって運転席10を支持するものである。隙間Sの上,下方向の高さ寸法Hは、運転席10のシート部10Aの下面10A1と背当て部10Bの背面10B1とのコーナ部Aに後述するグリースガン保持具28の少なくとも一部が入込むことができるように設定されている。
【0028】
14は運転席台座8の運転席支持面8Bの前側に設けられた回動支持部を示し、該回動支持部14は、運転席10をオペレータが着座する着座位置(
図5の位置)と該着座位置から前方に傾いた前傾位置(
図6の位置)との間で回動可能に支持するものである。回動支持部14は、運転席台座8の運転席支持面8Bに取付けられた台座側取付部材15と、運転席10のシート部10Aの下面10A1に取付けられた運転席側取付部材16と、台座側取付部材15と運転席側取付部材16とを相対回転可能に連結する連結ピン17とにより構成されている。
【0029】
台座側取付部材15は、
図4に示すように、運転席台座8の運転席支持面8Bにボルト18により取付けられる平板15Aと、該平板15Aの左,右方向両端側から上向きに立上る一対の縦板15Bとにより構成されている。縦板15Bの上端側には、該縦板15Bの外面と内面とを貫通する貫通孔15Cが穿設され、該貫通孔15Cには、連結ピン17が挿通する。
【0030】
運転席側取付部材16は、
図8に示すように、運転席10のシート部10Aの下面10A1にボルト19により取付けられる平板16Aと、該平板16Aの左,右方向両端の前側から台座側取付部材15の縦板15Bに向けてそれぞれ延び、縦板15Bの内面に当接する一対の当接板16Bとにより構成されている。当接板16Bには、縦板15Bの貫通孔15Cに対応する位置に当接板16Bの外面と内面とを貫通する挿通孔16Cが穿設されている。
【0031】
そして、縦板15Bの内面と当接板16Bの外面とを当接させた状態で、貫通孔15Cと挿通孔16Cとに連結ピン17を挿通することにより、運転席10は、連結ピン17を支点として
図5に示す着座位置と
図6に示す前傾位置との間で回動可能に支持される構成となっている。
【0032】
20は回動支持部14よりも後側に配置された運転席載置部を示し、該運転席載置部20は、運転席台座8の運転席支持面8B上に溶接等により固着され、運転席10が着座位置となったときにシート部10Aの下面10A1の後部側が載るものである。運転席載置部20は、本体部21と防振ゴム22とにより構成され、本体部21は、運転席台座8の運転席支持面8Bから立設する前縦板21Aと、該前縦板21Aから後側に向けて延びる横板21Bと、該横板21Bの後端から運転席支持面8Bに向けて延びる後縦板21Cとにより略コ字状に形成されている。そして、横板21B上には、防振ゴム22が設けられ、防振ゴム22上に運転席10が載置する構成となっている。
【0033】
23は2柱式のキャノピを示し、該キャノピ23は、運転席10を上方から覆うものである。ここで、キャノピ23は、
図2等に示すように、左支柱24,右支柱25と、キャノピルーフ26とにより大略構成されている。
【0034】
27は作業装置4等の給脂部位にグリースを給脂するためのグリースガンを示している。該グリースガン27は、
図9等に示すように、内部にグリースが収容される筒体27Aと、該筒体27Aの先端部に設けられグリースを給脂対象に注入する注入ノズル27Bと、筒体27Aに設けられ当該筒体27Aに収容されたグリースを注入ノズル27B側に押出すハンドル部27Cとにより構成されている。ここで、ハンドル部27Cは、筒体27Aの先端側に支点27C1を有し、この支点27C1を中心としてハンドル部27Cの自由端27C2側を筒体27Aから離れる方向および近づける方向に回動させることができる。
【0035】
そして、オペレータが、作業装置4等の給脂部位にグリースを給脂する場合には、注入ノズル27Bの先端部27B1を当該給脂部位に嵌込み、ハンドル部27Cを筒体27Aから離れる方向に回動させることにより、注入ノズル27Bにグリースが導入され、ハンドル部27Cを筒体27Aに近づける方向に回動させることにより、導入されたグリースが注入ノズル27Bの先端部27B1から給脂部位に吐出されるものである。
【0036】
28は運転席台座8の運転席支持面8B上で運転席載置部20よりも後側に設けられたグリースガン保持具を示している。該グリースガン保持具28は、後述する筒体支持部29と、ノズル保持部32と、ストッパ部33とにより構成されている。そして、運転席10を運転席支持面8Bから上,下方向に隙間Sをもって運転席支持部材13で支持することにより形成された前記コーナ部A内に、グリースガン保持具28の少なくとも一部を入込ませてグリースガン27を横置き状態で保持することができる。即ち、運転席10とグリースガン保持具28の一部は、平面視(キャノピルーフ26から見た方向)において、上,下方向で重畳している。
【0037】
29は運転席台座8の運転席支持面8B上を左,右方向に延びる筒体支持部を示し、該筒体支持部29は、左,右方向に延び運転席台座8の運転席支持面8Bに取付けられる薄板状の取付板29Aと、該取付板29Aの後端側から上方に向けて延びる縦板29Bと、該縦板29Bの上端側から後側に向けて屈曲し左,右方向に延びる平板29Cと、該平板29C上に取付けられる一対のホルダ29Dと、平板29Cの左,右方向の左側端部から上方に向けて延びグリースガン27の筒体27Aの底部を受承する受承板29Eとにより構成されている。即ち、筒体支持部29は、取付板29Aと縦板29Bと平板29Cとにより段付き形状に形成されている。
【0038】
取付板29Aには、左,右方向に離間して2個の貫通孔29A1が穿設されている。これら各貫通孔29A1にボルト30を挿通し、該ボルト30を運転席支持面8Bに設けられた雌ねじ孔8Cにそれぞれ螺着することにより、グリースガン保持具28は、運転席支持面8B上に取付けられる。
【0039】
また、ホルダ29Dは、ばね性をもった鋼板を略U字形状に曲げることにより、平板29Cに当接する当接面部29D1と、当接面部29D1の両端から対称形状をなすように上方に向けて凸湾曲状に延びる把持部29D2とにより構成されている。そして、ホルダ29Dは、ボルト31により平板29C上に左,右方向に並んで例えば2ヵ所に取付けられ、このとき各ホルダ29Dの前側は、コーナ部A内に入込んでいる(
図5参照)。ホルダ29Dは、そのばね性によってグリースガン27の筒体27Aを径方向から把持することができ、一方では、弾性変形させることにより、筒体27Aを保持したり、取外したりすることができる。
【0040】
32は筒体支持部29の左,右方向一側(右端側)に設けられたノズル保持部を示し、該ノズル保持部32は、薄板状の平板により形成され、筒体支持部29の受承板29Eに対面して平板29Cの左,右方向の右側端部から上方に向けて延びている。そして、ノズル保持部32の上端側のほぼ中央には、下側に窪む凹部32Aが設けられ、該凹部32Aに、グリースガン27の注入ノズル27Bが嵌込まれる構成となっている。
【0041】
33は筒体支持部29よりも前側に位置するストッパ部を示し、該ストッパ部33は、筒体支持部29の取付板29Aの前端左側から上方に向けて延びる薄板状の縦板から形成され、コーナ部A内に位置している。そして、ストッパ部33は、筒体支持部29がグリースガン27の筒体27Aを保持した状態でグリースガン27のハンドル部27Cに係合することにより、ハンドル部27Cの動きを規制するものである。
【0042】
具体的には、
図10に示すように、グリースガン27の筒体27Aを筒体支持部29に保持した状態で、ストッパ部33が、グリースガン27のハンドル部27Cの自由端27C2側に係合する。このとき、ハンドル部27Cは、最も閉じられた状態、即ちグリースガン27の筒体27Aに最も近付いた状態であるので、ハンドル部27Cは、支点27C1を中心としてハンドル部27Cの自由端27C2側を筒体27Aから離れる方向および近づける方向に回動させることができない構成となっている。
【0043】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0044】
まず、オペレータは、運転席10に着席し、エンジン(図示せず)を始動して油圧ポンプ(図示ぜず)を駆動する。そして、走行用操作レバー装置7を操作することにより、下部走行体2を前進または後退させ、左操作レバー装置11,右操作レバー装置12を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0045】
次に、油圧ショベル1に対するメンテナンス作業として、作業装置4の給脂部位にグリースを給脂する作業について説明する。
【0046】
この給脂作業を行う場合には、グリースガン保持具28からグリースガン27を取外す。そして、グリースガン27の注入ノズル27Bの先端部27B1を作業装置4の給脂部位に嵌込み、グリースガン27のハンドル部27Cを筒体27Aより離れる方向に回動させる。これにより、グリースガン27の筒体27Aに収容されたグリースが注入ノズル27Bに導入され、ハンドル部27Cを筒体27Aに近づける方向に回動させることにより、注入ノズル27Bに導入されたグリースが注入ノズル27Bの先端部27B1から吐出され、作業装置4の給脂部位にグリースを給脂することができる。
【0047】
そして、給脂作業が終了した後には、運転席10の後側で運転席支持面8Bに設けられたグリースガン保持具28にグリースガン27を収納する。
【0048】
ここで、グリースガン保持具28の筒体支持部29のホルダ29Dは、運転席10のシート部10Aの下面10A1と背当て部10Bの背面10B1とのコーナ部Aに入込んでおり、ホルダ29Dは、上方に向けて開口している。そして、ホルダ29Dの開口側には、運転席10の背当て部10Bが近接しているので、該背当て部10Bが邪魔になり、運転席10を着座位置とした状態では、グリースガン27をグリースガン保持具28に収納することができない(
図5参照)。
【0049】
そこで、
図6に示すように、運転席10を運転席支持部材13の回動支持部14を支点として、オペレータが着座する着座位置から前方に傾いた前傾位置へと回動させる。これにより、グリースガン保持具28のホルダ29Dの上方が開放されるので、オペレータは、キャノピ23の左支柱24と右支柱25との間から、グリースガン27の筒体27Aをグリースガン保持具28のホルダ29Dに嵌込むことができる。
【0050】
このとき、グリースガン保持具28の受承板29Eは、グリースガン27の筒体27Aの底部を受承し、ノズル保持部32の凹部32Aには、グリースガン27の注入ノズル27Bが嵌合する。一方、ストッパ部33は、グリースガン27のハンドル部27Cの自由端27C2側に係合し、当該ハンドル部27Cの動きを規制する。
【0051】
このように、グリースガン保持具28の筒体支持部29、ノズル保持部32、ストッパ部33により、グリースガン27の収納位置および方向が自ずと定まるので、グリースガン27の収納を適正かつ確実に行うことができ、グリースガン27と周辺部品との干渉を回避することができる。
【0052】
そして、運転席10を着座位置へと戻すことにより、運転席10のシート部10Aの下面10A1と背当て部10Bの背面10B1とのコーナ部A内にグリースガン27を横置き状態で収納させることができる。
【0053】
かくして、第1の実施の形態によれば、運転席支持部材13が、オペレータが着座する運転席10を運転席台座8の運転席支持面8Bから上,下方向に隙間Sをもって支持することにより、運転席10のシート部10Aの下面10A1と背当て部10Bの背面10B1とのコーナ部A内に、グリースガン27を保持する(収納する)ためのスペースを確保することができる。これにより、オペレータの居住スペースを確保しつつグリースガン27を収納することができる。
【0054】
また、運転席10をオペレータが着座する着座位置と、着座位置から前方に傾いた前傾位置との間で回動可能とした。これにより、運転席10を前傾位置に保持した状態で、グリースガン27をグリースガン保持具28に簡単に収納、または取外しすることができる。
【0055】
さらに、グリースガン保持具28は、運転席台座8の運転席支持面8B上を左,右方向に延びる構成とし、左,右方向一側にグリースガン27の注入ノズル27Bを保持するノズル保持部32を設けている。これにより、グリースガン27の方向、位置が自ずと決まるので、グリースガン27と周囲部品との干渉を避けることができる。また、グリースガン保持具28には、グリースガン27のハンドル部27Cの動きを規制するストッパ部33を設けている。これにより、油圧ショベル1の運転時における振動によりハンドル部27Cが勝手に開閉することがないので、グリースガン27の注入ノズル27Bからグリースが液だれするのを防止することができ、運転席10の周囲を常に清浄な状態に保つことができる。
【0056】
次に、
図11および
図12は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、運転席を支持する運転席支持部材を運転席支持面の前側にのみ設けたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
図11および
図12において、41は第1の実施の形態による運転席支持部材13に代えて第2の実施の形態に用いられる運転席支持部材を示している。この運転席支持部材41は、運転席支持面8Bと運転席10のシート部10Aの下面10A1との間に上,下方向の隙間Sをもって、オペレータが着座する着座位置と該着座位置から前方に傾いた前傾位置との間で回動可能に運転席10を支持するものである。隙間Sの上,下方向の高さ寸法Hは、運転席10の後側で運転席台座8の運転席支持面8B上にグリースガン保持具28が取付けられるように設定されている。
【0058】
運転席支持部材41は、運転席台座8の運転席支持面8Bに取付けられた台座側取付部材42と、運転席10のシート部10Aの下面10A1に取付けられた運転席側取付部材43と、台座側取付部材42と運転席側取付部材43とを相対回転可能に連結する連結ピン44と、台座側取付部材42と運転席側取付部材43とを連結し運転席10を着座位置もしくは前傾位置に保持するスライド部材45とにより構成されている。
【0059】
図11および
図12に示すように、台座側取付部材42と運転席側取付部材43とは、連結ピン44により連結され、該連結ピン44が運転席10を回動させるときの回動支点となっている。さらに、台座側取付部材42には、前,後方向に延びる長孔42Aが設けられている。一方、スライド部材45の一端側(運転席側取付部材43側)は、運転席側取付部材43に回転可能に嵌込まれ、スライド部材45の他端側(台座側取付部材42側)は、台座側取付部材42の長孔42Aにスライド可能に嵌込まれている。
【0060】
図11に示すように、運転席10が着座位置にあるときには、スライド部材45の他端側は、台座側取付部材42の長孔42Aの後端側に位置し、これにより運転席10が着座位置に保持されるようになっている。また、このとき運転席10とグリースガン保持具28の一部は、平面視(キャノピルーフ26から見た方向)において、上,下方向で重畳している。
【0061】
一方、
図12に示すように、グリースガン27をグリースガン保持具28に対して保持または取外しするときには、連結ピン44を支点として運転席10を前傾させる。このとき、スライド部材45の他端側が、長孔42A内を前端側に向けて移動し、長孔42Aの前端側で落込むことにより、スライド部材45の移動が規制されて、運転席10が前傾位置に保持されるようになっている。これにより、グリースガン保持具28のホルダ29Dの上方が開放されるので、オペレータは、キャノピ23の左支柱24と右支柱25との間から、グリースガン27の筒体27Aをグリースガン保持具28のホルダ29Dに対し、嵌込みまたは取外すことができる。
【0062】
かくして、このように構成された第2の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態と同様に、運転席支持部材41が、運転席10を運転席台座8の運転席支持面8Bから上,下方向に隙間Sをもって支持することにより、運転席10のシート部10Aの下面10A1と背当て部10Bの背面10B1とのコーナ部A内に、グリースガン27を保持する(収納する)ためのスペースを確保することができる。これにより、オペレータの居住スペースを確保しつつグリースガン27を収納することができる。
【0063】
また、運転席支持部材41によって、運転席10をオペレータが着座する着座位置と、着座位置から前方に傾いた前傾位置との間で回動可能とした。これにより、運転席10を前傾位置に保持した状態で、グリースガン27をグリースガン保持具28に簡単に収納、または取外しすることができる。
【0064】
なお、上述した第1の実施の形態では、グリースガン保持具28の筒体支持部29を取付板29Aと縦板29Bと平板29Cとにより段付き形状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば
図13および
図14に示す変形例のように、グリースガン保持具51を段付き形状とせずに、筒体支持部52を、一様な平坦面を有する取付板52Aと、ホルダ52Bと、受承板52Cとにより構成し、取付板52Aとホルダ52Bとを一体的にしてボルト53により運転席台座8の運転席支持面8Bに取付ける構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
【0065】
また、上述した第1の実施の形態では、運転席支持部材13の回動支持部14により、運転席10をオペレータが着座する着座位置から前方に傾いた前傾位置に移動させた状態で、グリースガン27をグリースガン保持具28に対して収納および取外しする場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば運転席を運転席支持面から隙間Sの高さ寸法Hよりも若干大きく設定して運転席支持部材に固定することにより、グリースガン保持具のホルダ部と運転席の背当て部との間にグリースガンを入込ませる隙間を形成し、運転席を着座位置としたままの状態で、グリースガンをグリースガン保持具に対して収納、取外し可能としてもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0066】
また、上述した第1の実施の形態では、グリースガン保持具28のホルダ29Dの開口を上方に向けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホルダの開口を斜め後方に向けることにより、運転席を着座位置としたままの状態で、グリースガンをグリースガン保持具に収納、取外し可能としてもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0067】
また、上述した第1の実施の形態では、運転席10の上方をキャノピ23で覆ったキャノピ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば運転席等を箱体状のキャブで覆ったキャブ仕様の油圧ショベルに適用してもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0068】
さらに、上述した第1の実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。