特許第5973414号(P5973414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973414
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】デッキ材用連結材、及び、デッキ構造体
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20160809BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20160809BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   E04F15/02 P
   E04B5/02 A
   E04B1/61 502N
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-245714(P2013-245714)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-101933(P2015-101933A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512194879
【氏名又は名称】株式会社KSサプライ
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】上田 舞子
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−49526(JP,A)
【文献】 特開2002−155615(JP,A)
【文献】 実開昭59−51939(JP,U)
【文献】 特開2002−30788(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/056074(WO,A1)
【文献】 実開平5−809(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
E04B 5/00−5/48
E04B 1/38−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて配置された複数本の根太材の上に、多数のデッキ材が、根太材の長手方向と交差する向きで所定幅の隙間をおいて並列配置されるとともに根太材上に固定され、隣り合う二つの根太材の間の位置において、隣接するデッキ材の側縁同士が連結材によって連結されてなるデッキ構造体において、
デッキ材は、各側縁にそれぞれ少なくとも2条ずつ、かつ、デッキ材の厚さ寸法の中間位置を基準として、その上方及び下方に少なくとも1条ずつ溝が形成され、
連結材は、装着時において、隣接するデッキ材の側縁間に挟持される挟持部と、デッキ材の下面に当接する下側サポート部とによって構成され
連結材の挟持部は、上下方向へ所定幅で延在するセンター部を有するとともに、センター部から側方へ向かって突出する突条を、左右両側にそれぞれ少なくとも2条ずつ有し、
連結材の挟持部の突条は、装着時において、デッキ材の側縁の溝内にそれぞれ嵌合するように構成され、
連結材の下側サポート部は、センター部の下方において左右の側方へ向かってそれぞれ突出し、装着時において各デッキ材の下面に当接して密着する当接面をそれぞれ有する左右のサポートによって構成され、
デッキ材の側縁の溝のうち、デッキ材の厚さ寸法の中間位置を基準として、その上方に位置する溝に嵌合する連結材の挟持部の突条が、装着時において、当該溝の奥まで突き当たるように構成され、左右のデッキ材の側縁の上部同士の間隔が狭まることを防止できるように構成されていることを特徴とするデッキ構造体。
【請求項2】
デッキ材の側縁の溝のうち、デッキ材の厚さ寸法の中間位置を基準として、その下方に位置する溝に嵌合する連結材の挟持部の突条が、装着時において、当該溝の奥まで突き当たるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデッキ構造体。
【請求項3】
デッキ材の各側縁に、1条の大溝、及び、少なくとも2条の小溝が形成され、
大溝は、デッキ材の厚さ方向の中間位置に形成され、小溝は、大溝の上方及び下方にそれぞれ少なくとも1条ずつ形成され、
連結材の挟持部に、デッキ材の側縁の大溝に嵌合する大突条、及び、小溝に嵌合する小突条が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のデッキ構造体。
【請求項4】
連結材の下側サポート部の左右のサポートの当接面に係止突条が形成され、
デッキ材の下面に、連結材の当接面に形成されている係止突条が装着時において嵌合する係止溝が形成されていることを特徴とする、請求項に記載のデッキ構造体。
【請求項5】
デッキ構造体を構成する多数のデッキ材の隣接する側縁同士を連結するための連結材であって、
挟持部と下側サポート部とによって構成され
挟持部は、上下方向へ所定幅で延在するセンター部を有するとともに、センター部から側方へ向かって突出する突条を、左右両側にそれぞれ少なくとも2条ずつ有し
下側サポート部は、センター部の下方において左右の側方へ向かってそれぞれ突出し、装着時において各デッキ材の下面に当接して密着する当接面をそれぞれ有する左右のサポートによって構成されていることを特徴とするデッキ材用連結材。
【請求項6】
下側サポート部の左右のサポートの当接面に係止突条が形成されていることを特徴とする、請求項に記載のデッキ材用連結材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隔をおいて平行に配置される根太上に、根太材の長手方向と直交(交差)する向きで並列配置される多数のデッキ材(床材、フロアー材を含む)の隣接する側縁同士を連結することにより、各デッキ材の耐荷重強度を向上させることができるデッキ材用連結材、及び、このデッキ材用連結材を用いて構成したデッキ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
デッキ構造体は、通常、所定の間隔をおいて配置した束石、或いは、その他の基礎の上に(又は、その上に配置した大引材の上に)、複数本の根太材を平行に配置し、更にその上に、根太材の長手方向と直交する向きで多数のデッキ材を並列配置し、各デッキ材を根太材に対して固定することによって構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−063747号公報
【特許文献2】特開2006−177036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デッキ構造体における耐荷重強度は、デッキ面全体で均一ではなく、当然のことながら、根太材によってデッキ材が直接支持される交差部分(根太材とデッキ材の交差部分)における強度が最も大きく、根太材とその隣りの根太材との中間位置の部分が最も小さいということになる。耐荷重強度は、根太材からの離間距離に反比例して小さくなるということであり、根太材の配置間隔を小さくすれば強度が上がり、配置間隔を大きくとると下がることになる。
【0005】
従って、例えば一般的な通常歩行用のデッキ構造体よりも大きな耐荷重強度を必要とするデッキ構造体を構築しようとする場合には、より高強度のデッキ材を採用するか、根太材の配置間隔を通常よりも小さく設定する必要がある。但し、高強度のデッキ材を使用する場合も、根太材の配置間隔を小さく設定する場合も、材料費及び施工費が大きく嵩んでしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決しようとするものであって、根太材の配置間隔を通常よりも小さく設定することなく、デッキ材の隣接する側縁同士を連結することにより、各デッキ材の耐荷重強度を飛躍的に向上させることができるデッキ材用連結材、及び、このデッキ材用連結材を用いて構築したデッキ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデッキ構造体は、所定間隔をおいて配置された複数本の根太材の上に、多数のデッキ材が、根太材の長手方向と交差する向きで所定幅の隙間をおいて並列配置されるとともに根太材上に固定され、隣り合う二つの根太材の間の位置において、隣接するデッキ材の側縁同士が連結材によって連結され、デッキ材は、各側縁にそれぞれ少なくとも2条ずつ、かつ、デッキ材の厚さ寸法の中間位置を基準として、その上方及び下方に少なくとも1条ずつ溝が形成され、連結材は、装着時において、隣接するデッキ材の側縁間に挟持される挟持部を有し、連結材の挟持部は、上下方向へ所定幅で延在するセンター部を有するとともに、センター部から側方へ向かって突出する突条を、左右両側にそれぞれ少なくとも2条ずつ有し、連結材の挟持部の突条は、装着時において、デッキ材の側縁の溝内にそれぞれ嵌合するように構成され、デッキ材の側縁の溝のうち、デッキ材の厚さ寸法の中間位置を基準として、その上方に位置する溝に嵌合する連結材の挟持部の突条が、装着時において、当該溝の奥まで突き当たるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
尚、デッキ材の側縁の溝のうち、デッキ材の厚さ寸法の中間位置を基準として、その下方に位置する溝に嵌合する連結材の挟持部の突条についても、装着時において、当該溝の奥まで突き当たるように構成されていることが好ましく、また、デッキ材の各側縁に、1条の大溝、及び、少なくとも2条の小溝が形成され、大溝は、デッキ材の厚さ方向の中間位置に形成され、小溝は、大溝の上方及び下方にそれぞれ少なくとも1条ずつ形成され、連結材の挟持部に、デッキ材の側縁の大溝に嵌合する大突条、及び、小溝に嵌合する小突条が形成されていることが好ましい。
【0009】
更に、連結材は、装着時において、隣接するデッキ材の側縁間に挟持される挟持部と、デッキ材の下面に当接する下側サポート部とによって構成され、連結材の下側サポート部は、センター部の下方において左右の側方へ向かってそれぞれ突出し、装着時において各デッキ材の下面に当接して密着する当接面をそれぞれ有する左右のサポートによって構成されていることが好ましく、この場合、連結材の下側サポート部の左右のサポートの当接面に係止突条が形成され、デッキ材の下面に、連結材の当接面に形成されている係止突条が装着時において嵌合する係止溝が形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係るデッキ材用連結材は、デッキ構造体を構成する多数のデッキ材の隣接する側縁同士を連結するためのものであって、挟持部を有し、挟持部は、上下方向へ所定幅で延在するセンター部を有するとともに、センター部から側方へ向かって突出する突条を、左右両側にそれぞれ少なくとも2条ずつ有していることを特徴としている。
【0011】
尚、このデッキ材用連結材は、挟持部のほかに下側サポート部を有していることが好ましく、この下側サポート部は、センター部の下方において左右の側方へ向かってそれぞれ突出し、装着時において各デッキ材の下面に当接して密着する当接面をそれぞれ有する左右のサポートによって構成されていることが好ましい。また、下側サポート部の左右のサポートの当接面には、係止突条が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデッキ構造体は、隣接するデッキ材の側縁同士が、隣り合う二つの根太材の間の位置において、特徴的な構成に係る連結材によって連結されているため、一つのデッキ材或いは隣接する二つのデッキ材の目地部(連結部)に荷重が集中的に掛かった場合でも、一つのデッキ材だけが沈み込んだり、或いは、隣接するデッキ材同士が相対的に傾斜しない状態が維持され、一つのデッキ材或いは目地部に掛かった荷重が、隣接するデッキ材へ効果的に伝達、分散されることになり、その結果、従来のものと比べ、集中荷重や衝撃荷重に対する強度(耐荷重強度)の飛躍的な向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るデッキ構造体1の部分的な平面図である。
図2図2は、図1に示す連結材21の斜視図である。
図3図3は、図1に示すデッキ材11の側縁12付近、及び、連結材21の装着前の断面図である。
図4図4は、図1に示すデッキ材11の側縁12間に連結材21を装着した状態を示す断面図である。
図5図5は、根太材の上に所定幅の隙間15を空けて並列配置した状態の従来のデッキ材51,52の断面図である。
図6図6は、本発明に係るデッキ構造体1において使用される連結材21によって側縁同士が連結されたデッキ材11の断面図である。
図7図7は、根太材の上に所定幅の隙間15を空けて並列配置した状態の従来のデッキ材51,52の断面図である。
図8図8は、本発明に係るデッキ構造体1において使用される連結材21によって側縁同士が連結されたデッキ材11の断面図である。
図9図9は、本発明に係るデッキ構造体1を構成するデッキ材11及び連結材21の他の構成例を示す断面図である。
図10図10は、本発明に係るデッキ構造体1を構成するデッキ材11及び連結材21の他の構成例を示す断面図である。
図11図11は、本発明に係るデッキ構造体1を構成する連結材21の他の構成例を示す断面図である。
図12図12は、本発明に係るデッキ構造体1を構成する連結材21の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に沿って本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明に係るデッキ構造体1の部分的な平面図である。このデッキ構造体1においては、所定間隔をおいて平行に配置された根太材20の上に、デッキ材11が、根太材20の長手方向と直交する向きで並列配置され、根太材20上に固定されている。
【0015】
隣接するデッキ材11の間には、所定幅(例えば5mm)の隙間15が形成されており、デッキ面上から、雨水、砂、その他の塵埃等が、隙間15を介してデッキ面下側へ落下し、デッキ面上に滞留しないようになっている。また、隣接するデッキ材11は、側縁12同士が、デッキ材用連結材21(以下、単に「連結材21」と言う)によって連結されている。尚、連結材21は、隣り合う二つの根太材20,20のほぼ中間位置に配置されている。
【0016】
図2は、図1に示す連結材21の斜視図である。図示されているように、この連結材21は、デッキ材11(図1参照)への装着時において、隣接するデッキ材11の側縁12間に挟持される挟持部22と、デッキ材11の下面に当接する下側サポート部23とによって構成されている。
【0017】
図3は、デッキ材11の側縁12付近、及び、連結材21の装着前の断面図であり、図4は、それらの装着状態を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態においては、デッキ構造体を構成するデッキ材11として、側縁12に、一つの大溝13、及び、二つの小溝14a,14bが形成されているものが用いられている。大溝13は、デッキ材11の厚さ方向の中間位置において、デッキ材11の厚さ寸法の1/10〜1/3(本実施形態においては約1/4)の大きさに形成されており、小溝14aは大溝13の上方に、小溝14bは大溝13の下方にそれぞれ形成されている。
【0018】
一方、連結材21は、上述の通り、挟持部22と下側サポート部23とによって構成され、挟持部22は、下側サポート部23の中央から上方へ向かって所定幅で突出するセンター部24と、センター部24のほぼ中間の高さ位置から左右の側方へ向かってそれぞれ突出する大突条25と、大突条25の上方において、左右の側方へ向かってそれぞれ突出する小突条26と、大突条25の下方において、左右の側方へ向かってそれぞれ突出する小突条27とによって構成されている。下側サポート部23は、センター部24の下方において、左右の側方へ向かってそれぞれ突出するサポート29a,29bによって構成されている。尚、サポート29a,29bは、連結材21のデッキ材11への装着時において、デッキ材11の下面に当接する面(当接面28)をそれぞれ有している。
【0019】
デッキ材11への装着時において、連結材21の大突条25、及び、小突条26,27は、側縁12に形成されている大溝13、及び、小溝14a,14b内にそれぞれ進入し、嵌合するような位置及び大きさに形成されている(図4参照)。また、上下の小突条26,27は、各先端がそれぞれ小溝14a,14bの奥まで突き当たるような大きさ及び形状となっている。また、連結材21のサポート29a,29bは、大突条25、及び、小突条26,27が、大溝13、及び、小溝14a,14b内にそれぞれ進入し、嵌合した状態において、左右の当接面28がそれぞれデッキ材11の下面に密着するような構成となっている。
【0020】
本実施形態のデッキ構造体1においては、隣接するデッキ材11の側縁12同士が、隣り合う二つの根太材20,20の中間位置において、上述のような構成に係る連結材21によって連結されているため、一つのデッキ材11或いは隣接する二つのデッキ材11の目地部(連結部)に荷重が集中的に掛かった場合でも、一つのデッキ材11だけが沈み込んだり、或いは、隣接するデッキ材11同士が相対的に傾斜しない状態が維持され、一つのデッキ材11或いは目地部に掛かった荷重が、隣接するデッキ材11へ効果的に伝達、分散されることになり、その結果、従来のものと比べ、集中荷重や衝撃荷重に対する強度(耐荷重強度)の飛躍的な向上が期待できる。
【0021】
この点について具体的に説明すると、例えば、図4に示す二つのデッキ材11a,11bのうち、左側のデッキ材11aに集中的に荷重が掛かった場合、各デッキ材11a,11bの大溝13、小溝14a,14b(図3参照)内に、連結材21の大突条25、及び、小突条26,27(図3参照)が進入し、嵌合しているため、また、連結材21の左右のサポート29a,29bの各当接面28(図3参照)がそれぞれデッキ材11a,11bの下面に密着するような構成となっているため、左側のデッキ材11aの下方への変位(上下方向へのずれ)が許容されず、左側のデッキ材11aに掛かった荷重が、右側のデッキ材11bへ効果的に伝達、分散されることになる。
【0022】
また、左側のデッキ材11aに集中的に荷重が掛かった場合において、右側のデッキ材11bが左下がりの傾斜状態となると、つまり、右側のデッキ材11bにおける左側の側縁12bが右側の側縁12b’を基点として下方へ回動することによって、水平な左側のデッキ材11aと左下がりの右側のデッキ材11bとの目地部が谷状に屈曲することが許容されると、左側のデッキ材11aが、右側のデッキ材11bの左側の側縁12bとともに下方へ変位してしまうことになるが、本実施形態においては、上述の通り、連結材21の小突条26(デッキ材11の厚さ方向の中間位置よりも上方の小突条)の先端が、デッキ材11の小溝14a(デッキ材11の厚さ方向の中間位置よりも上方の小溝)の奥まで突き当たるように構成されているため、左右のデッキ材11a,11bの側縁12a,12bの上部(デッキ材11の厚さ方向の中間位置よりも上方の部分)同士の間隔を、図4に示す状態よりも狭めることができず、このため、左側のデッキ材11aに集中的に荷重が掛かった場合でも、右側のデッキ材11bが左下がりの傾斜状態となることが回避され、その結果、左側のデッキ材11a(及び、右側のデッキ材11bの左側の側縁12b)の下方への変位が許容されず、左側のデッキ材11aに掛かった荷重が、右側のデッキ材11bへ効果的に伝達、分散されることになる。
【0023】
また、左側のデッキ材11aに集中的に荷重が掛かった場合において、左側のデッキ材11aが左下がりの傾斜状態となると、つまり、左側のデッキ材11aにおける左側の側縁12a’が右側の側縁12aを基点として下方へ回動することによって、水平な右側のデッキ材11bと左下がりの左側のデッキ材11aとの目地部が山状に屈曲することが許容されると、左側のデッキ材11aの左側の側縁12a’が、更にその左側に位置するデッキ材(図示せず)とともに下方へ変位してしまうことになるが、本実施形態においては、上述の通り、連結材21の小突条27(デッキ材11の厚さ方向の中間位置よりも下方の小突条)の先端が、デッキ材11の小溝14b(デッキ材11の厚さ方向の中間位置よりも下方の小溝)の奥まで突き当たるように構成されているため、左右のデッキ材11a,11bの側縁12a,12bの下部(デッキ材11の厚さ方向の中間位置よりも下方の部分)同士の間隔を、図4に示す状態よりも狭めることができず、このため、左側のデッキ材11aに集中的に荷重が掛かった場合でも、左側のデッキ材11aが左下がりの傾斜状態となることが回避され、その結果、左側のデッキ材11aの左側の側縁12a’(及び、更にその左側の図示しないデッキ材)の下方への変位が許容されず、左側のデッキ材11aに掛かった荷重が、右側のデッキ材11bへ効果的に伝達、分散されることになる。
【0024】
更に、左右のデッキ材11a,11bの目地部(連結材21が装着されている部位)に集中的に荷重が掛かった場合において、左右のデッキ材11a,11bがV字状(谷状)に屈曲することが許容されると、目地部が下方へ変位してしまうことになるが、上述の通り、連結材21の小突条26の先端が、デッキ材11の小溝14aの奥まで突き当たるように構成されているため(図3参照)、左右のデッキ材11a,11bの側縁12a,12bの上部同士の間隔を狭めることができず、このため、左右のデッキ材11がV字状に屈曲してしまうことが回避され、その結果、目地部の下方への変位が許容されず、荷重が周囲へ効果的に伝達、分散されることになる。
【0025】
このように本実施形態においては、一つのデッキ材11或いは目地部に荷重が集中的に掛かった場合でも、それらの荷重が好適に伝達され、周囲へ分散されることになり、その結果、集中荷重や衝撃荷重に対する強度を、従来技術と比べ極めて効果的に向上させることができる。
【0026】
図5は、根太材(図示せず)の上に所定幅の隙間15を空けて並列配置した従来のデッキ材51,52の、根太材の中間位置における断面図であり、荷重が掛かっていない場合と、中央のデッキ材51,52に一定の荷重が掛かった場合の変形態様の例を示す図である。より詳細には、図5(1)は、側縁に溝が形成されていない従来のデッキ材51において、荷重が掛かっていない状態を示す図、図5(2)は、従来のデッキ材51において、中央のデッキ材51に荷重が掛かった状態を示す図、図5(3)は、連結材61(比較例)によって側縁同士が連結された従来のデッキ材51のうち、中央のデッキ材51に荷重が掛かった状態を示す図、図5(4)は、連結材62(比較例)によって側縁同士が連結された従来のデッキ材52のうち、中央のデッキ材52に荷重が掛かった状態を示す図である。
【0027】
また、図6は、本実施形態のデッキ構造体1において使用される連結材21によって側縁同士が連結されたデッキ材11の、根太材の中間位置における断面図であり、中央のデッキ材11に、同様の荷重が掛かった場合の変形態様の例を示す図である。
【0028】
図5(1)に示すように、従来のデッキ材51を、隙間15を空けた状態で、側縁同士を連結せずに配置した場合、根太材の中間位置において所定の荷重が掛かると、例えば、図5(2)に示す程度に、荷重の掛かった中央のデッキ材51だけが下方へたわむことになる。
【0029】
また、図5(3)に示すように、従来のデッキ材51を、連結材61(比較例)(本実施形態における連結材21の挟持部22のセンター部24、及び、下側サポート部23に相当する部分を有しているが、挟持部22に相当する部分が、大突条25及び小突条26,27に相当する部分を有しておらず、挟持部22のセンター部24に相当する部分の高さ寸法が、デッキ材51の厚さ寸法と同等或いは約半分に設定されている)によって連結した場合において、中央のデッキ材51に、図5(2)の例と同じ大きさの荷重が掛かった場合、隣接するデッキ材51との連結が不完全なため、荷重がうまく伝達されず、たわみ量(標準位置Bからの沈み込み量)は図5(2)の場合と殆ど同じで、また、図5(2)の場合と同様に、デッキ材51側面のずれが生じて中央のデッキ材51だけが下方へたわむことになる。
【0030】
図5(4)に示すように、従来のデッキ材52を、連結材62(比較例)(本実施形態における連結材21の挟持部22、及び、下側サポート部23に相当する部分を有するとともに、大突条25に相当する部分を有しているが、小突条26,27に相当する部分を有しておらず、挟持部22のセンター部24に相当する部分の高さ寸法が、デッキ材52の厚さ寸法の約2/3に設定されている)によって連結した場合において、中央のデッキ材52に、図5(2)の例と同じ大きさの荷重が掛かった場合、隣接するデッキ材52に、荷重がある程度伝達されることになるが、隣接するデッキ材52の傾斜が許容される結果、たわみ量は図5(3)の場合と殆ど変わらず、依然としてたわみが発生することになり、たわみが大きくなると、デッキ材52の側面又は連結材62が破損することになる。
【0031】
これらの例に対し、本実施形態のデッキ構造体1においては、図6に示すように、中央のデッキ材11に、図5(2)の例と同じ大きさの荷重が掛かった場合、隣接するデッキ材11の傾斜及びずれが抑制され、荷重が周囲へ伝達、分散されることになる。従って、集中荷重や衝撃荷重に対する強度が向上し、荷重が集中的に掛かったデッキ材11の沈み込み(たわみの発生)を可及的に抑えることができる。
【0032】
図7は、根太材(図示せず)の上に所定幅の隙間15を空けて並列配置した従来のデッキ材51,52の、根太材の中間位置における断面図であり、荷重が掛かっていない場合と、デッキ材51,52の目地部に一定の荷重が掛かった場合の変形態様の例を示す図である。より詳細には、図7(1)は、側縁に溝が形成されていない従来のデッキ材51において、荷重が掛かっていない状態を示す図、図7(2)は、従来のデッキ材51において、デッキ材51の目地部に荷重が掛かった状態を示す図、図7(3)は、連結材61(比較例)によって側縁同士が連結された従来のデッキ材51の目地部に荷重が掛かった状態を示す図、図7(4)は、連結材62(比較例)によって側縁同士が連結された従来のデッキ材52の目地部に荷重が掛かった状態を示す図である。
【0033】
また、図8は、本実施形態のデッキ構造体1において使用される連結材21によって側縁同士が連結されたデッキ材11の、根太材の中間位置における断面図であり、デッキ材11の目地部に、同様の荷重が掛かった場合の変形態様の例を示す図である。
【0034】
図7(1)に示すように、従来のデッキ材51を、隙間15を空けた状態で、側縁同士を連結せずに配置した場合、デッキ材51の目地部に所定の荷重が掛かると、図7(2)に示すように、目地部の両側のデッキ材51が全体的にたわんで大きく沈み込み、かつ、荷重が掛かった目地部が最も深く沈み込んで、当該目地部両側のデッキ材51がいずれも谷状に傾斜した状態となる。
【0035】
また、図7(3)に示すように、従来のデッキ材51を、連結材61(比較例)(本実施形態における連結材21の挟持部22、及び、下側サポート部23に相当する部分を有しているが、挟持部22に相当する部分が、大突条25及び小突条26,27に相当する部分を有しておらず、挟持部22のセンター部24に相当する部分の高さ寸法が、デッキ材51の厚さ寸法の約半分に設定されている)によって連結した場合において、デッキ材51の目地部に、図7(2)の例と同じ大きさの荷重が掛かった場合、隣接するデッキ材51との連結が不完全なため、荷重が伝達されず、図7(2)の場合と比べると、たわみ量(標準位置Bからの沈み込み量)は小さくなるものの、図7(2)の場合と同様に、目地部の両側のデッキ材51が全体的にたわんで沈み込み、かつ、荷重が掛かった目地部が最も深く沈み込んで、当該目地部両側のデッキ材51がいずれも谷状に傾斜した状態となる。
【0036】
図7(4)に示すように、従来のデッキ材52を、連結材62(比較例)(本実施形態における連結材21の挟持部22、及び、下側サポート部23に相当する部分を有するとともに、大突条25に相当する部分を有しているが、小突条26,27に相当する部分を有しておらず、挟持部22のセンター部24に相当する部分の高さ寸法が、デッキ材52の厚さ寸法の約2/3に設定されている)によって連結した場合において、デッキ材52の目地部に、図7(2)の例と同じ大きさの荷重が掛かった場合、隣接するデッキ材52に荷重がある程度伝達されることになるが、当該目地部の両側のデッキ材52の傾斜が許容される結果、図7(3)の場合と比べて、たわみ量は小さくなるものの、依然としてたわみが発生することになる。
【0037】
これらの例に対し、本実施形態のデッキ構造体1においては、図8に示すように、デッキ材11の目地部に、図7(2)の例と同じ大きさの荷重が掛かった場合、目地部の両側のデッキ材11の傾斜及びずれが抑制され、荷重が周囲へ伝達、分散されることになる。従って、集中荷重や衝撃荷重に対する強度が向上し、荷重が集中的に掛かったデッキ材11の沈み込み(たわみの発生)を可及的に抑えることができる。
【0038】
尚、本実施形態のデッキ構造体1においては、図3に示すように、デッキ材11として、各側縁12に、一つの大溝13、及び、二つの小溝14a,14bが形成されているものが用いられ、連結材21として、センター部24に大突条25、及び、小突条26,27が形成されているものが用いられているが、必ずしも図3に示すような構成のものには限定されず、例えば、図9或いは図10に示すような構成のデッキ材11、及び、連結材21を用いることもできる。
【0039】
具体的に説明すると、連結材21の挟持部22における突条は、必ずしも片側に3条ずつ形成されていなくともよく、図9に示すように、突条30が片側に2条のみ形成されている連結材21を使用することもできる。また、デッキ材11についても、各側縁12に溝14c,14dが2条のみ形成されているものを使用することもできる。
【0040】
但しこの場合、デッキ材11の溝14c,14dは、デッキ材11の厚さ寸法の中間位置を基準として、その上方及び下方に一つずつ形成する必要があり、連結材21の突条30は、連結材21の装着時において、それらの溝14c,14d内にそれぞれ進入、嵌合するように構成することが好ましい。また、デッキ材11の厚さ寸法の中間位置よりも上方に形成されている溝14cに嵌合する突条30が、溝14cの奥まで突き当たるような大きさ及び形状とすることが好ましく、更に、デッキ材11の厚さ寸法の中間位置よりも下方に形成されている溝14dに嵌合する突条30についても、溝14dの奥まで突き当たるような大きさ及び形状とすることが好ましい。
【0041】
尚、ここに言う「奥まで突き当たるような大きさ及び形状とする」とは、連結材21の左右両側のデッキ材11の側縁12の上部の溝14c(側縁12の上部)同士の間隔、或いは、下方の溝14d(側縁12の下部)同士の間隔が、それらの内側に嵌合した突条30が突っ張ることにより、余計な荷重が掛かっていない状態においても、また、集中的な荷重が掛かった場合においても、それ以上殆ど縮小されない、という作用を奏するような大きさ及び形状とする、という意味である。
【0042】
また、図10に示すように、サポート29の当接面28に係止突条31を形成した連結材21、及び、装着時においてこの係止突条31が嵌合する係止溝16が下面に形成されているデッキ材11を使用することもできる。
【0043】
また、図1図4図6図8図10に示す連結材21はいずれも、挟持部22及び下側サポート部23(図2参照)によって構成されているが、下側サポート部23を省略し、図11及び図12に示すように、挟持部22のみによって構成してもよい。この場合でも、デッキ材11の大溝13、小溝14a,14b(図3図12参照)、或いは、溝14c,13d(図9図11参照)内に、連結材21の大突条25、及び、小突条26,27(図3図12参照)、或いは、突条30(図9図11参照)が進入し、嵌合しているため、隣接するデッキ材11の側縁12の間における上下方向へのずれを回避することができる。
【0044】
また、連結材21の小突条26(図3図12参照)、或いは、突条30(図9図11参照)の先端が、デッキ材11の小溝14a(図3図12参照)、或いは、溝14c(図9図11参照)の奥まで突き当たるように構成されているため、左右のデッキ材11の側縁12の上部同士の間隔が縮小することを回避することができ、隣接するデッキ材11同士が相対的に傾斜しない状態が維持され、一つのデッキ材或いは目地部に掛かった荷重が、隣接するデッキ材11へ効果的に伝達、分散されることになり、その結果、従来のものと比べ、集中荷重や衝撃荷重に対する強度の向上が期待できる。
【0045】
そして、連結材21を挟持部22と下側サポート部23とによって構成した場合には、より大きな荷重が作用した場合に生じ得るデッキ材11の側縁12におけるクラック或いは変形を好適に防止することができ、更なる耐荷重強度の向上が期待できる。
【0046】
また、図1に示すデッキ構造体1においては、長さ寸法が横幅寸法とほぼ同じに設定された連結材21が用いられているが、使用される連結材21の長さ寸法は限定されず、隣り合う二つの根太材20,20の間の位置(中間位置を含む)において隣接するデッキ材11の側縁12同士を連結できるものであれば、図1に示す連結材21よりも短いものでも、また、2〜10倍の長さのものでも、また、10倍以上の長さのものでも用いることができる。
【0047】
更に、隣り合う二つの根太材の間のいずれかの位置においてデッキ材同士を連結できる限り、一つの根太材、或いは、二つ以上の根太材を跨ぐような状態で(根太材と交差するように)配置される長尺の連結材(図示せず)を用いることもできる。尚、そのような長尺の連結材が用いられる場合、当該連結材は、根太材との交差部分において、根太材に対して連結材(及び、連結材によって連結されたデッキ材)を固定するための手段(例えば、ネジ穴、その他の締結手段等)を具備するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1:デッキ構造体、
11,11a,11b:デッキ材、
12,12a,12b:側縁、
13:大溝、
14a,14b:小溝、
14c,14d:溝、
15:隙間、
16:係止溝、
20:根太材、
21:連結材、
22:挟持部、
23:下側サポート部、
24:センター部、
25:大突条、
26,27:小突条、
28:当接面、
29a,29b:サポート、
30:突条、
31:係止突条、
51,52:デッキ材、
61,62:連結材、
B:標準位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12