【実施例】
【0024】
NSTF触媒の調製
NSTF PtCoMn合金触媒は、最近発行されて特許を取得したUS7,419,741、2005/0069755、及び60854US02に記載されているPR149担体ウィスカ上に調製された。2200−3標準PR149ウィスカ上に0.10mg
Pt/cm
2の無処理のPt担持量を有する試料を調製した。矩形の試料片を5”×8”(12.7×20.3cm)に切断し、レーザ露光のための開口中央部を備えた2つの金属フレーム間に取り付けた。
【0025】
レーザ設定及び走査条件
燃料電池触媒のレーザ処理のために以下の装置を使用した。Coherent,Inc.(5100 Patrick Henry Drive,Santa Clara,CA 95054)から入手したCO
2レーザは、モデルダイヤモンドC−55Aであった。Nutfield Technology,Inc.(49 Range Road,Windham,NH 03087)から入手したスキャナーは、モデルXLR8−15mm 2軸スキャンヘッドであった。これら2つの装置は、共にNutfield Technology,Inc.から入手した、Waverunnerレーザ及びスキャナー制御ソフトウェア・インターフェース並びにPipeline Control Rackを使用してコンピュータで制御された。
【0026】
スキャナーは、266平方mmの照射野を処理するように設定され、集束点は作動距離約390mmの位置であった。燃料電池触媒試料を処理するために、材料をこの集束面の上方約75mm、即ち作動距離315mmの位置に設置した。処理面において、レーザスポットサイズは直径およそ1mmであった。このビーム形状は、作動距離315mmの位置の平面でこのビームにかみそりを通過させることによって特徴付けられた。公称ビームサイズは、かみそりの刃によって覆い隠された全出力の15%〜85%の限定範囲で特定された。レーザ出力とかみそりの刃の位置とを対比した未加工データが
図1に示されている。
図1は、かみそりの刃が、ビームの全てを遮る開始位置からレーザビーム経路を完全に外れる位置まで移動した場合の、処理面におけるレーザビームの公称電力測定のチャートである。直交方向への測定は、この曲線形状を再現した。
【0027】
レーザ出力をオンにした後、試料を見下ろす視点から試料を水平方向に横断するように走査する。スキャナーが走査方向に直交した短い距離を増分する間、レーザ出力は一時的に停止された。次いで、レーザ出力を再度オンにし、逆方向に水平に走査した。この処理、つまりラスター走査を、試料全体が露光されるまで繰り返した。
【0028】
これら試料に関するレーザ処理条件は、レーザ出力、走査速度、及び直交オフセット距離つまり「ハッチ」間隔に関するパラメータを、ソフトウェア制御インターフェースに入力することによって設定された。レーザ出力に関しては、30マイクロ秒のパルス長及び20kHzの繰り返し率が、試料に供給される37ワットの平均出力を提供した。レーザ走査速度を変化させて、異なる入射フルエンス又はエネルギー密度が触媒表面に供給されるようにし、この場合この速度は、集束面におけるレーザビーム速度である。レーザビームは短い作動距離では走査半径がより短いので、処理面におけるレーザビームの実際の速度は、この値の約80%である。この本開示の記録に記録された走査速度は、焦点面におけるものである。「ハッチ」間隔に関し、パラメータは、実施例1及び2の試料に関して0.25mmになるように選択設定され、これは処理面内に0.20mmの変位をもたらした。
【0029】
図2は、残留酸素分析を用いて制御された周囲環境下で試料フィルムをレーザアニーリングするための装置の1つの実施形態を示す。
図2は、制御された周囲環境並びに空気下で、試料表面上でレーザビームを方形波パターンにラスタリングするために用いられるレーザ設定を示す。METEK TM−1B酸素分析装置を使用して、不活性ガスが密閉された試料室に流し込まれたときの試料室内の残留酸素をモニタした。
【0030】
MKS質量流量制御装置を使用して、密閉された試料室への気体流量速度を100slmの速度に制御した。残留O
2濃度が約40ppmを下回るまで、最適なガスを導入した後の残留O
2濃度をモニタし、下回ったときにレーザを作動させて、〜5”(12.7cm)の正方形の試料の上を方形波パターンで走査した。
【0031】
燃料電池の性能に与える影響を調べるために、5セットの触媒試料を処理した。最初の2セットに関しては、まず、触媒でコーティングされたウィスカをMCTS基材から完全にアブレーションすることによって、又はX線回折によって明らかになるPt微結晶の粒径の増加によって分かるような触媒層の変化を導入する入射フルエンス(単位面積当たりのエネルギー)及び走査条件を見つけるために、2.5〜7.5m/秒の速度、可変移動率(variable translation rates)(ハッチ)、及び周囲空気環境でレーザを走査した。レーザに露光された試料の第1及び第2のセットのSEM画像は、最高50,000倍率までNSTFのウィスカの明らかな変化を示さなかった。最初の2つの試料セットに用いた条件では、燃料電池性能曲線又は動的活性評価指標の統計的に有意な変化を特定することはできなかった。
【0032】
試料の第3セットに関し、いくつかの実施形態において、好ましい走査速度は4〜4.5m/秒であり、レーザビームの各復路の移動は0.25mmであることが判明した。これは、触媒表面に対して34.55〜38.5mJ/mm
2の推定フルエンスを供給した。第3セットのXRD(X線回折)による特性評価は、Pt(hkl)粒径がフルエンスに明らかに依存することを示した(下記の実施例1)。全試料において、レーザ走査方向は、触媒試料のダウンウェブ方向に対して平行に、又はMCTS基材の溝に対して平行に維持された。燃料電池試験により、入射フルエンスでORR活性がわずかだが統計的に有意に増加するが、他のパラメータには反応しないことが示された。処理された試料(表1の#3〜4)からのNSTF触媒でコーティングされたウィスカのTEM画像は、未処理の試料と対比した場合、最も高いレベルの倍率でも表面平滑化の量が非常に少ないことを示唆している。触媒表面上の他の(hkl)面と対比したfcc(111)の原子面のTEMによる特性評価は、第4のシリーズで観察される燃料電池活性の変化を誘起するように表面が変化しているレベルであり得るので、進行中である。
【0033】
試料の第4のセットでは、周囲気体環境を変化させた。この第4セットの燃料電池試験は完了した。XRDの結果は、フルエンスが大きいほど微結晶の粒径が大きくなるという点で、実施例1の結果と一致していた。第4セットの原始変数は、周囲気体の種類(即ち空気、N
2、Ar、及びAr+4% H
2)、並びに2種類の走査速度(4及び4.5m/秒)であった。ORR活性、表面積、及び比活性度の有意な増加が、不活性ガスの種類及び入射フルエンスの関数として観察された(下記実施例2)。レーザ露光中、はっきりとした目に見える煙のたなびきが表面から生じ、4m/秒とより高度なフルエンス条件でより明白であった。別の重要な観測結果は、レーザ走査中に、O
2濃度がその定常値から、4m/秒の走査速度で約50%、4.5m/秒の走査速度で30%低下したことである。このことは、Pt表面が清浄にされており、酸素吸着についてより反応性にされ、事実上ゲッタ材料として作用することを示す。このことは、用いた条件では一部のPtが表面から除去されている可能性があり、質量活性の測定に影響を与えることになることを示唆していた。次に、消失したPtの量のXRFによる特性評価のために、追加の試料を、空気及びN
2下で、共に4及び4.5m/秒の走査速度で露光した。このXRF測定では、NDC Infrared Engineering製の走査装置を使用して、平均残留Ptを測定した。この装置は、1.25”(3.1cm)の円で画定された領域全体を平均化して2インチ(5cm)移動した。これらの結果は下記の実施例2で報告され、試料の実際の質量活性及び質量比表面積を決定するために用いられた。
【0034】
試料の第5セットはHe及びHe+4% H
2ガスも使用し、PtNi合金も処理された。Heの目的は、気体熱伝導率が重要かどうかを確かめることである。PtNi合金は、異なる原子百分率の遷移金属を有した。予備データは、レーザアニーリングが、無処理の合金に対して、Ni高含有合金の高い電流密度性能を有意に改善したことを示唆した。
【0035】
燃料電池試験
燃料電池試験では、レーザ処理した試料を、3層の触媒でコーティングされた膜電極接合体(CCM)のカソードとして使用した。アノード触媒は、Pt担持量0.05mgPt/cm
2の通常のNSTF PtCoMnであり、全て同じロールグッドロットの材料(P409140B)から入手した。全ての試料で使用された膜は、メタノールからキャストされた、厚さ20マイクロメートルの850EWプロトン交換膜であった。アノード及びカソードガス拡散層(GDL)は同一であった。触媒及び膜を積層し、350°F(177℃)及び150psig(1.03MPa)でCCMを形成した。5層MEA(膜・電極一体構造)を、MEAの15%圧縮を得るように選択されたガスケット付き4連サーペンタイン流路(quad-serpentine flow fields)を備える標準的な50cm
2テストセルの中に装着した。試料セット3及び4の全試料を、1つの試験ステーション(6番)で測定した。NSTF標準熱サイクルプロトコルを用いてMEAをコンディショニングした後、カソード表面積及びORR活性を、H
2/O
2の飽和圧力150kPa下で900mVで測定した。逆走査の際の813mVにおけるポテンショダイナミック電流密度、20mA/cm
2、0.32A/cm
2、1A/cm
2、1.46A/cm
2、及び2A/cm
2における動的電流分極ポテンシャルといった、様々な性能評価指標もまた記録した。
【0036】
(実施例1)
この実施例では、試料セット#3からの一連の試料を、様々な入射フルエンスで空気下で露光して、Pt微結晶の粒径に与える影響を判定した。3.5、4、5、6、及び7.5m/秒の走査速度を、非露光試料と比較した。
図3は、セット#3からの触媒をX線回折によって測定した場合の、Pt fcc(hkl)粒径のグラフであり、触媒を処理するのに用いたレーザ走査速度の関数としてプロットされている。
図3は、レーザ走査速度がXRDで測定された微結晶の粒径に与える影響を示す。最大粒径は、走査速度4m/秒で生じ、38.5mJ/mm
2の推定フルエンスに対応している。より遅い走査速度(より高いフルエンス)では、触媒でコーティングされたウィスカの表面の露光された試料領域のかなりの面積がアブレートされたのが観察され、このことは、過剰加温及び急冷に起因して見掛け結晶寸法に影響を及ぼしている可能性がある。これらの結果は、約4.5〜4.0m/秒のレーザ走査速度は、表面触媒の有意な融解を引き起こすのに十分であることを示している。
【0037】
図4A及び
図4Bは、このセットの質量活性及び比活性度をフルエンスの関数として示す。燃料電池の結果は、
図3においてPt粒径に明らかな影響を及ぼしているにも関わらず、このセットからのレーザアニーリングの限界効果のみを示した。他の燃料電池の評価指標は、統計的に有意でない効果又は限界効果のみを示す点で同様であった。この影響の欠如の理由は、触媒表面構造が適切にアニーリングされるのを阻止することになる周囲空気中に存在する酸素が原因であることが疑われた。従って、試料の第4セットでは、原始変数(primary variant)は周囲気体の種類であり、酸素を最小限にしてモニタした。気体試料に関し、気体は、不活性ガス環境が含んでいない周囲の水蒸気を含んでいることも考慮する必要があった。
【0038】
(実施例2)
この実施例では、一連の試料は制御された周囲気体下で露光され、相対フルエンス及び残留O
2濃度は表IIに示されている。
【0039】
【表1】
【0040】
図5Aは、4又は4.5m/秒で空気又はN2下で露光されたレーザ処理試料上に残留するPt担持量のXRF測定を示すグラフである。
図5Bは、PtCoMn中に0.05、0.10、及び0.15mg/cm
2のPtを有して作製された試料のXRF較正曲線を示すグラフである。
【0041】
図5A及び
図5Bは、38.4mJ/mm
2(4m/秒)及び34.55mJ/mm
2(4.5m/秒)のフルエンスで空気及びN
2中でレーザ処理した試料上に残留する残留PtのXRF較正及び測定の結果を示す。Ptの初期質量担持量である0.10mg/cm
2は15〜20%減少した。これらの値を使用して、セット#4の試料の質量活性及び質量比表面積を計算するのに用いられる担持量を修正した。N
2下で露光された試料で測定されたのと同じ質量変化は、Ar及びAr+4% H
2にも等しく適用されると考えてよい。
【0042】
図6は、セット#4の試料から測定された質量活性を2種類のフルエンスレベルに関して気体の種類の関数として示す。担持量が修正された質量活性とは、絶対活量が、
図5のXRF測定質量担持量で除されたことを意味する。エラーバーは、XRF担持量測定の1シグマ標準偏差を反映している。4m/秒(38.4mJ/mm
2)は4.5m/秒(34.55mJ/mm
2)よりも効果的である。空気中での処理は不活性ガス中より効果が少なく、Arは、空気よりも効果的であるN
2よりも効果的であるように見えることが、
図6において明らかである。4%のH
2の存在は、純粋Arに勝る利益を提供しないようである。〜50%の質量活性の最大利得は、4m/秒におけるAr又はAr+4% H
2下でのレーザ処理によって得られる。
【0043】
図7は同様に、レーザセット#4に関する担持量が修正された質量比表面積を、気体の種類及びフルエンスの関数として示す。質量活性と同様に、4m/秒(38.4mJ/mm
2)は4.5m/秒(34.55mJ/mm
2)よりも効果的であり、空気中での処理は不活性ガス中より効果が少なく、Arは、空気よりも効果的であるN
2よりも効果的であるように見え、4%のH
2の存在は、純粋Arに勝る利益を提供しないようである。〜25〜30%のECSAの最大利得がレーザ処理によって得られた。
【0044】
図8は、レーザセット#4に関して気体の種類及びフルエンスと対比した比活性度(Pt表面積のA/cm
2)を示す。質量活性及び比表面積と同様に、4m/秒(38.4mJ/mm
2)は4.5m/秒(34.55mJ/mm
2)よりも効果的であり、空気中での処理は不活性ガス中より効果が少なく、Arは、空気よりも効果的であるN
2よりも効果的であるように見え、4%のH
2の存在は、純粋Arに勝る利益を提供しないようである。〜18%の比活性度の最大利得が、最も高いフルエンスレベルでのレーザ処理によって得られた。
【0045】
最後に、
図9は、レーザセット#4の試料に関する[hkl]方向のPt粒径及び格子定数を示す。より高いフルエンス(4m/秒の走査速度)は、4.5m/秒の速度よりもわずかに大きい粒径を生成するという一貫した傾向があるように見受けられた。気体の種類に対する一貫した依存性があるかどうかは明らかでない。
【0046】
(実施例3)
この実施例では、表IIIに示される触媒の種類、レーザ走査速度、気体の種類、及び残留O
2濃度で、セット#5からの一連の36の試料を、制御された周囲気体下で露光した。
【0047】
【表2】
【0048】
先の実施例との比較のため、4m/秒のレーザ走査速度は38.4mJ/mm
2のフルエンスに対応し、4.5m/秒は34.55mJ/mm
2に対応する。
図10〜
図12は、大気圧における種々の気体下でのレーザアニーリングが4種類の触媒組成の触媒活性評価指標に与える、結果として生じる影響を要約したものである。
【0049】
図10は、全ての気体下で34.5mJ/mm
2のフルエンスを使用したレーザ処理は、全種類の触媒の表面積を増加させたことを示す。いくらかのH
2を含有する不活性ガス下でのNi高含有Pt
30Ni
70触媒の処理は、不活性ガスの代わりに空気下で処理した場合よりも表面積を実質的に増加させるが、不活性ガス又は不活性+水素ガス下での影響は、Pt高含有触媒に関してはかなり低くなることも示されている。
【0050】
図11は、Ar+4% H
2下での大気圧でのレーザアニーリングにより、酸素還元に対する比活性度が未処理のPt
30Ni
70触媒よりも25%の大きさで増加したことを示す。その他の触媒組成は、手を加えていない未処理の状態よりも増加した量が少ないことを示した。
【0051】
図12は、Ni高含有触媒の質量活性が、いくらかの水素を含有する不活性ガス下でのレーザ処理により、未処理対照よりも50%の大きさで増加したことを示す。Ni低含有触媒であるPt
75Ni
25は同程度に増加しなかった。質量活性は質量比表面積(
図10)と比活性度(
図11)との積であるので、これらの量の両方の増加割合が組み合わさって、この質量活性のより大きな増加が得られる。
【0052】
(実施例4)
この実施例では、セット#6からの一連の試料は、Ar+4% H
2又はN
2+4% H
2の混合物の大気圧未満の圧力下で露光された。触媒の種類及びPtの担持量は表4.Iに示されている。これらの露光では、
図2に示されるチャンバは真空チャンバに置き換えられた。チャンバ内の気体環境は、入口気体流の速度、及び標準機械的真空ポンプによるポンプ速度によって決定された。気体圧は、ダイヤフラム真空計で測定されたので、気体の種類とは無関係であった。入射レーザは、チャンバの上部にあるZnSe製の窓を介して導入された。これらのセット#6の試料では、気体注入口及び出口ポンプ絞り弁は、50cm
2の試料面積上をレーザ走査する間、チャンバ内を一定圧力、例えば10Torr〜750Torr(1.3kPa〜100kPa)に維持するように調整された。大気圧未満の気体圧力を用いる主な理由は、通過するレーザビームによって加熱された触媒領域の冷却速度に影響を与えるためである。これらの試料に関し、レーザの走査速度及びレーザ出力も変化させた。
【0053】
【表3】
【0054】
図13Aは、示されている試料の速度論領域及び中電流密度領域における燃料電池の分極曲線のわずかな差異を示す。
図13B〜
図13Eは、3種類の試料と未処理対照とをより具体的なORR評価指標に関して比較する。
【0055】
用いたレーザアニーリング条件の結果として、LA6−25が最高質量活性及び表面積を有したことが、
図13B〜
図13Eから明らかである。
【0056】
図13Eは、600Torr(80kPa)の全圧においてN2+4% H2下で、4.5m/秒の走査速度で55%レーザ出力に露光された試料の質量活性が最も増加することを示す。
【0057】
(実施例5)
この実施例では、一連の燃料電池のNSTF触媒は、触媒をエネルギーで後処理する手段として、電子ビームに露光された。これらの試料では、先行する実施例と同様に、0.1mg/cm
2Pt担持量がNSTFのウィスカ上にコーティングされたPtCoMn触媒が使用された。CB300で示される3M CRPL電子ビーム処理ラインを使用して試料を露光した。
【0058】
試料:触媒ロールPE4145B−PtCoMn(90:10、20、2、1、0.15mg
Pt/cm
2)
【0059】
【表4】
【0060】
露光のいずれかによる試料への目に見える影響はなかったが、試料は支持ウェブから取り外されたときに若干暖かい感じがした。試料の粒径又は格子定数にいくらかの変化が存在するかどうかを確かめるために、試料はX線回折による特性評価に供され、その結果が
図14A及び
図14Bに示されている。
図14Aは、X線回折から推定される、電子ビーム照射露光の関数としてのPtCoMn合金触媒のPt面心立方(111)格子定数のチャートである。
図14Bは、X線回折から推定される、電子ビーム照射露光の関数としてのPtCoMn合金触媒のPtfcc[111]結晶寸法の変化を開示するチャートである。
【0061】
図14Aは、触媒の格子定数が電子ビーム照射によって変化しなかったことを示している。
図14Bは、照射露光が増加するにつれて、Pt[111]方向のPt微結晶の粒径が減少したことを示している。しかしながら、Pt(200)、Pt(220)、又はPt(311)方向への結晶寸法の系統的変化はなかった。このことは、微結晶は[111]方向に1を越えるアスペクト比を有しており、電子ビーム処理の効果は、アスペクト比をわずかに減少させるものであることを示している。
【0062】
燃料電池の特性評価のために、試料2、3、及び対照(未処理)から燃料電池膜電極接合体(MEA)を作製した。
図14Cは、表5.Iの試料7−2及び7−3の複製、並びに試料7−4で示される未処理対照からの動的電流分極曲線を比較している。その他の比較MEAも含まれている。燃料電池性能は、これらの3種類に関して本質的に同じであることが見て取れた。
【0063】
図14Dは、表5.Iの試料7−2及び7−3、並びに未処理対照に関して測定された燃料電池の酸素還元反応(ORR)の評価指標を表している。
図14Dは、絶対活量、表面積、及び比活性度などの、燃料電池の試料の酸素還元反応の評価指標を比較している。表面積及び絶対活量は、電子ビーム処理によって本質的に変化しなかったが、比活性度は対照の平均と比べて低減した。
【0064】
本開示の様々な修正及び変更は、本開示の範囲及び原理から逸脱することなく当業者には明白であり、また、本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態に不当に制限されるものではないと理解すべきである。