(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973432
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】無限軌道車台用の主リンクジョイントおよび既存の車台を改造する方法
(51)【国際特許分類】
B62D 55/205 20060101AFI20160809BHJP
B62D 55/20 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
B62D55/205 Z
B62D55/20 A
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-518623(P2013-518623)
(86)(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公表番号】特表2013-530092(P2013-530092A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】US2011042302
(87)【国際公開番号】WO2012003200
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】13/151,947
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/359,493
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドノバン エス.クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム.プローゼク
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジェイ.コブ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ダブリュ.トローヌ
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−173584(JP,U)
【文献】
実開昭57−179583(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0174175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動チェーン(33)用の主リンク(141、241)であって、
第1のレール(69、269)、ピン(38)を受け入れる穴(52)、および第1の突き合わせ面(60)を含む第1の半リンク(42、43、442)と、
第2のレール(76、376)、ブッシュ(135)またはピン(38)を受け入れる穴(52)、および第2の突き合わせ面(70)を含む第2の半リンク(44、45)と、を含み、
第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)が組み立てられた場合に、前記第1のレール(69、269)と前記第2のレール(76、376)とは平行になり、前記主リンク(141、241)の端部を形成し、第1の半リンク(42、43、442)の第1の突き合わせ面(60)が、第2の半リンク(44、45)の第2の突き合わせ面(70)に当接し、
第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)はそれぞれ、前記第1のレール(69、269)および前記第2のレール(76、376)に対して90°よりも大きな角度の傾斜面を有した第1の傾斜部(65、265)と、第2の傾斜部(66、266)と、第1の傾斜部(65、165)と第2の傾斜部(66、166)とを連結するように設けられた根元部(67、167、467)と、
第1の半リンク(42、43、442)の第2の傾斜部(66、266)と合流し、少なくとも、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、271)と、を含み、
第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)の第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)の第2の傾斜部(66、166)は、それぞれ第1のレール(69、269)および第2のレール(76、376)に対して、45°〜53°の範囲をとる角度θをなして延び、前記第1の傾斜部は、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と垂直をなす第1の穴を備えており、前記第3の傾斜部(71、271)は、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と垂直をなす第2の穴を備えており、前記第1の穴の軸と前記第2の穴の軸とは、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向における所定の軸間距離(z)と関連し、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と交差する方向の所定の軸間距離(Q)を備えている、主リンク(141、241)。
【請求項2】
第1の半リンク(42、43、442)は、前記第3の傾斜部(71、271)をさらに含み、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)が有する面と第3の傾斜部(71、271)が有する面とは第1の離隔距離だけ離間し、第1の半リンク(42、43、442)は、穴(52)の位置で第1の厚さを有し、第1の離隔距離の第1の厚さに対する比率は、0.75〜1.2の範囲をとる、請求項1に記載の主リンク(141、241)。
【請求項3】
第2の半リンク(44、45)は、第2の半リンク(44、45)の第2の傾斜部(66、166)と合流し、少なくとも、第2の半リンク(44、45)の第1の傾斜部(65、165)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、171)をさらに含み、第2の半リンク(44、45)の第1の傾斜部(65、165)が有する面と第3の傾斜部(71、171)が有する面とは第2の離隔距離だけ離間し、第2の半リンク(44、45)は、ピン(38)またはブッシュ(135)の位置で第2の厚さを有し、第2の離隔距離の第2の厚さに対する比率は、0.9〜1.35の範囲をとる、請求項1に記載の主リンク(141、241)。
【請求項4】
第1の半リンク(42、43、442)の第1の離隔距離は、40mm〜50mmの範囲をとる、請求項2に記載の主リンク(141、241)。
【請求項5】
第1の半リンク(42、43、442)の角度θは50°である、請求項2に記載の主リンク(141、241)。
【請求項6】
第2の半リンク(44、45)の第2の離隔距離は、40mm〜50mmの範囲をとる、請求項3に記載の主リンク(141、241)。
【請求項7】
第2の半リンク(44、45)の角度θは50°である、請求項3に記載の主リンク(141、241)。
【請求項8】
第2の半リンク(44、45)は、ブッシュ(135)またはピン(38)のまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域(77、377)を含み、眉領域(77、377)は、穴(52)の位置での第2の半リンク(44、45)の厚さを超える横方向厚さを有する、請求項1に記載の主リンク(141、241)。
【請求項9】
第2の半リンク(44、45)は、ブッシュ(135)またはピン(38)のまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域(77、377)を含み、眉領域(77、377)は、50mmを超える横方向厚さを有する、請求項1に記載の主リンク(141、241)。
【請求項10】
第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)はそれぞれ、穴(52)のまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域(77、377)を含み、第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)の眉領域(77、377)はそれぞれ横方向厚さを有し、第2の半リンク(44、45)の横方向厚さは、第1の半リンク(42、43、442)の眉領域(77、377)の横方向厚さを20%〜50%超える、請求項1に記載の主リンク(141、241)。
【請求項11】
第1の半リンク(42、43、442)は、
第1の半リンク(42、43、442)の第2の傾斜部(66、266)と合流し、少なくとも、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、271)をさらに含み、
第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)が有する面と第3の傾斜部(71、271)が有する面とは第1の離隔距離だけ離間し、
第2の半リンク(44、45)は、
第2の半リンク(44、45)の第2の傾斜部(66、166)と合流し、少なくとも、第2の半リンク(44、45)の第1の傾斜部(65、165)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、171)を含み、第2の半リンク(44、45)の第1の傾斜部(65、165)が有する面と第3の傾斜部(71、171)が有する面とは第2の離隔距離だけ離間し、
前記第1の半リンク(42、43、442)と前記第2の半リンク(44、45)とが組み合わされたとき、前記第1の半リンクの前記ピン(38)を受け入れる穴(52)の軸と、前記第2の半リンクの前記ピン(38)を受け入れる穴(52)の軸と、は、軸間距離である無限軌道ピッチ(P)離間しており、
前記第1の離隔距離および前記第2の離隔距離の無限軌道ピッチ(P)に対する比率は、0.1〜0.25の範囲をとる、請求項1に記載の主リンク(141、241)。
【請求項12】
駆動チェーン(33)と、
2対のリンクを含む駆動チェーン(33)用の主リンクジョイント(41)であって、各対は、第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)を含み、2対のリンクがチェーン(33)の両側に配置された主リンクジョイント(41)と、
を含む機械(30)であって、
各第1の半リンク(42、43、442)は、第1の半リンク(42、43、442)を連結するピン(38)を収容する穴(52)を含み、各第1の半リンク(42、43、442)は第1のレール(69、269)を含み、
各第2の半リンク(44、45)は、第2の半リンク(44、45)を連結するブッシュ(135)またはピン(38)を収容する穴(52)を含み、各第2の半リンク(44、45)は第2のレール(76、376)を含み、機械(30)は、
各対の第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)に連結されたシュー(46)をさらに含み、
前記第1の半リンク(42、43、442)と前記第2の半リンク(44、45)とを組み合わせることで、前記第1のレール(69、269)と前記第2のレール(76、376)とが平行になり、1対の前記リンクの端部を形成し、
各対の各第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)は、それぞれ第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)を含み、第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)はそれぞれ、そのそれぞれの穴(52)を通り過ぎて延び、前記第1のレール(69、269)および前記第2のレール(76、376)が延在する方向に対して90°よりも大きな角度で交差する線を含む傾斜面を有した第1の傾斜部(65、165)を含み、各第1の傾斜部(65、165)は、根元部(67、167、467)で第2の傾斜部(66、166)と合流し、
第1の半リンク(42、43、442)の第2の傾斜部(66、266)と合流し、少なくとも、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、271)を含み、
第2の傾斜部(66、166)の平面上にある線(68、168)と、そのそれぞれの第1のレール(69、269)または第2のレール(76、376)に平行な線とが、45°〜53°の範囲をとる角度θを規定し、
前記第1の傾斜部は、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と垂直をなす第1の穴を備えており、前記第3の傾斜部(71、271)は、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と垂直をなす第2の穴を備えており、前記第1の穴の軸と前記第2の穴の軸とは、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向における所定の軸間距離(z)と関連し、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と交差する方向の所定の軸間距離(Q)を備えている、機械(30)。
【請求項13】
前記角度θは50°である、請求項12に記載の機械(30)。
【請求項14】
第1の半リンク(42、43、442)は、第1の半リンク(42、43、442)の第2の傾斜部(66、266)と合流し、少なくとも、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、271)をさらに含み、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)が有する面と第3の傾斜部(71、271)が有する面とは第1の離隔距離だけ離間し、
第2の半リンク(44、45)は、第2の半リンク(44、45)の第2の傾斜部(66、166)と合流し、少なくとも、第2の半リンク(44、45)の第1の傾斜部(65、165)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、171)を含み、第2の半リンク(44、45)の第1の傾斜部(65、165)が有する面と第3の傾斜部(71、171)が有する面とは第2の離隔距離だけ離間し、
各半リンクは、第2の傾斜部(66、166)と合流し、少なくとも、第1の傾斜部(65、165)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、171)をさらに含み、第1の傾斜部(65、165)と第3の傾斜部(71、171)とは離間し、第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)はそれぞれ、それらのそれぞれの穴(52)の位置で厚さを有し、第1の半リンク(42、43、442)における前記第1の離隔距離および第2の半リンク(44、45)における前記第2の離隔距離はそれぞれ、それらのそれぞれの穴(52)の位置での厚さに対して0.75〜1.35の範囲をとる、請求項12に記載の機械(30)。
【請求項15】
前記第1の離隔距離および前記第2の離隔距離は、40mm〜50mmの範囲をとる、請求項14に記載の機械(30)。
【請求項16】
各リンクにおける、無限軌道ピッチ(P)長さに対する傾斜部離隔距離(x、X、x’、X’)の比率は、0.1〜0.25の範囲をとる、請求項12に記載の機械(30)。
【請求項17】
第2の半リンク(44、45)はそれぞれ、そのそれぞれの穴(52)のまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域(77、377)を含み、眉領域(77、377)は、穴(52)の位置での第2の半リンク(44、45)の厚さを超える横方向厚さを有する、請求項12に記載の機械(30)。
【請求項18】
第2の半リンク(44、45)はそれぞれ、ブッシュ(135)のまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域(77、377)を含み、眉領域(77、377)は、50mmを超える横方向厚さを有する、請求項12に記載の機械(30)。
【請求項19】
無限軌道駆動式の機械(30)の既存のチェーン(33)に、改良した主リンク(141、241)を後から取り付ける方法であって、
既存の主リンクジョイント(41)をチェーン(33)から取り外すことと、
2つの主リンク(141、241)を用意し、各主リンク(141、241)は、1対の半リンク(42、43、442、44、45)を含み、各半リンク対(42、43、442、44、45)は、第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)を含み、各第1の半リンク(42、43、442)は、ピン(38)を収容する穴(52)と第1のレール(69、269)とを含み、各第2の半リンク(44、45)は、ピン(38)またはブッシュ(135)を収容する穴(52)と第2のレール(76、376)とを含み、
前記第1の半リンク(42、43、442)と前記第2の半リンク(44、45)とが組み合わさることで、前記第1のレール(69、269)と前記第2のレール(76、376)とが平行になり、1対の前記リンクの端部が形成され、
各第1の半リンク(42、43、442)および第2の半リンク(44、45)は、それぞれ第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)を含み、第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)はそれぞれ、そのそれぞれの穴(52)を通り過ぎて延び、根元部(67、167、467)で第2の傾斜部(66、166)と合流する第1の傾斜部(65、165)を含む2つの傾斜部を含み、
第1の半リンク(42、43、442)の第2の傾斜部(66、266)と合流し、少なくとも、第1の半リンク(42、43、442)の第1の傾斜部(65、265)に実質的に平行な第3の傾斜部(71、271)を含み、
各第2の傾斜部(66、166)は、前記第1のレール(69、269)および前記第2のレール(76、376)が延在する方向に対して90°よりも大きな角度で交差する線を含む傾斜面を有する各それぞれの第1の傾斜部(65、165)と交差するように外側に延び、
各第2の傾斜部(66、166)と同一平面上にある線(68、168)とそれぞれの第1のレール(69、269)または第2のレール(76、376)に平行な線とは、45°〜53°の範囲をとる角度θを規定することと、
ピン(38)を用いてチェーン(33)内で第1の半リンク(42、43、442)同士を連結し、かつ第1の半リンクを別のリンク対に連結することと、
ピン(38)またはブッシュ(135)を用いて第2の半リンク(44、45)同士を連結することと、
前記第1の傾斜部が備えた、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と垂直をなす第1の穴と、前記第3の傾斜部(71、271)が備えた、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と垂直をなす第2の穴と、において、前記第1の穴の軸と前記第2の穴の軸とは、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向における所定の軸間距離(z)と関連し、前記第1のレールおよび前記第2のレールが延在する方向と交差する方向の所定の軸間距離(Q)を備えており、前記第1の穴と前記第2の穴とを用いて、各対の第1の突き合わせ面(60)および第2の突き合わせ面(70)を係合させることと、
シュー(46)を4つの半リンクのすべてに連結することと、
を含む方法。
【請求項20】
シュー(46)を連結するには、
各第2の半リンク(44、45)にシュー突き当て面(59)を設け、シュー突き当て面(59)は、ねじなし部(255、256)を有することと、
シュー(46)を前記シュー突き当て面(59)を覆って配置することと、
留め具(47)を前記シュー(46)の開孔(54)と、前記シュー突き当て面(59)の前記ねじなし部(255、256)とに通すことと、
留め具(47)を第1の半リンク(42、43、442)のねじ部(155、156)に通すことと、が含まれる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略的には、機械の無限軌道車台のチェーン用主リンクジョイントに関し、より詳細には、摩耗および破損しづらい主リンクジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
無限軌道機械は、スプロケット、ローラ、1つまたは複数のアイドラ、および転輪フレームのまわりを移動するチェーンを利用する。モータまたはエンジンはスプロケットを駆動し、スプロケットは、チェーンのブッシュと係合して、チェーンを転輪フレームのまわりに回転させ、それにより、機械を所望の方向に進ませる。
【0003】
通常、チェーンは、チェーンの端部を連結することでチェーンの組み立ておよび分解を可能にする主リンクジョイントを含む。「主リンクジョイント」は、様々な形態で利用可能であるが、普及している1つの構造として、2対の「主リンク」がチェーンの両側に配置されたものがある。各主リンクは、「第1の半リンク」および「第2の半リンク」を含む2つの「半リンク」を含む。ピン、ロッド、またはカートリッジは、一方の主リンクの第1の半リンクを他方の主リンクの第1の半リンクに連結する。ブッシュは、一方の主リンクの第2の半リンクを他方の主リンクの第2の半リンクに連結する。ブッシュはまたスプロケットと係合する。ねじ付き留め具は、シューを2つの主リンクの4つの半リンクすべてに連結する。このように、主リンクジョイントは、2つの主リンクと、ピン、ロッド、またはカートリッジで互いに連結された2つの第1の半リンクと、ブッシュで互いに連結された2つの第2の半リンクと、4つの半リンクのすべてに連結されたシューとを含む。主リンクは、他方で、シューを4つの半リンクのすべてに連結するのに使用されるねじ付き留め具で互いに連結された第1の半リンクおよび第2の半リンクを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の主インクジョイントは幅広く受け入れられているが、耐久性の問題という欠点がある。具体的には、留め具および半リンクは破断することがあり、かつ/またはシューに連結された個々の半リンク内のねじが潰れることがある。これらの状況において、チェーンの主リンクが切れることがあり、機械が動作不能および移動不能になる。さらに、ねじ付き留め具のねじが潰れると、主ジョイント全体を交換しなければならないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、駆動チェーン用の主リンクは、第1のレール、ピンを受け入れる穴、および第1の突き合わせ面を含む第1の半リンクを含む。主リンクはまた、第2のレールおよび第2の突き合わせ面を含む第2の半リンクを含む。第1の半リンクおよび第2の半リンクが組み立てられると、第1の半リンクの突き合わせ面は、第2の半リンクの突き合わせ面に当接する。第1および第2の突き合わせ面はそれぞれ、第1の傾斜部、第2の傾斜部、ならびに第1および第2の傾斜部間に配置された根元部を含む。第1および第2の半リンクの第1および第2の突き合わせ面の第2の傾斜部は、それぞれ第1および第2のレールに対して、約45°〜約53°の範囲をとる角度θをなして延びる。
【0006】
別の態様では、開示する機械は、主リンクジョイントを装備する駆動チェーンを含む。主リンクジョイントは、2対のリンクまたは2つの主リンクを含む。各リンク対は、第1の半リンクおよび第2の半リンクを含む。2対のリンクは、チェーンの両側に配置される。各第1の半リンクは、第1の半リンク同士を連結するピンを収容する穴を含む。各第1の半リンクはまた、第1のレールを含む。各第2の半リンクは、ピンまたはブッシュによって、他方の第2の半リンクに連結される。各第2の半リンクは、第2のレールを含む。シューは、各対の第1および第2の半リンクに連結される。各主リンクの各第1および第2の半リンクは、それぞれ第1および第2の突き合わせ面を含む。第1および第2の突き合わせ面はそれぞれ、そのそれぞれのピンまたはブッシュを通り過ぎて延びる第1の傾斜部を含む2つの傾斜部を有する。各第1の傾斜部は、根元部で第2の傾斜部と合流する。各第2の傾斜部は、そのそれぞれの第1の傾斜部から外側に延びる。さらに、第2の傾斜部の平面上にある線と、そのそれぞれの第1または第2のレールに平行な線とは、約45°〜53°の範囲をとる角度θを規定する。
【0007】
別の態様では、無限軌道駆動式の機械の既存のチェーンに、改良した主リンクジョイントを後から取り付ける方法が開示される。その方法は、既存の主リンクジョイントをチェーンから除去することと、2つの主リンクを用意することとを含み、各主リンクは、1対の半リンクを含み、各半リンク対は、第1の半リンクおよび第2の半リンクを含み、各第1の半リンクは、ピンを収容する穴と第1のレールとを含み、各第2の半リンクは、ピンまたはブッシュに連結され、各第2の半リンクは第2のレールを含み、各第1および第2の半リンクは、それぞれ第1および第2の突き合わせ面を含み、第1および第2の突き合わせ面はそれぞれ、そのそれぞれのピンまたはブッシュを通り過ぎて延びる第1の傾斜部を含む2つの傾斜部を含み、各第1の傾斜部は、根元部で第2の傾斜部と合流し、各第2の傾斜部は、そのそれぞれの第1の傾斜部から外側に延び、第2の傾斜部の平面上にある線とそのそれぞれの第1または第2のレールに平行な線とは、約45°〜約53°の範囲をとる角度θを規定し、方法はさらに、ピンを用いてチェーン内で第1の半リンク同士を連結し、かつ第1の半リンクを別のリンク対に連結することと、ピンまたはブッシュを用いて、第2の半リンク同士を連結することと、各対の第1および第2の突き合わせ面を係合させることと、シューを4つの半リンクのすべてに連結することとを含む。
【0008】
別の態様では、突き合わせ面を含む、主リンクジョイント用の別の半リンクが開示される。突き合わせ面は、ねじ付き留め具を受け入れる1対のねじ穴を含む。突き合わせ面は、突き合わせ面の長さに沿って少なくとも1つの根元部、少なくとも1つの先端部、および少なくとも1つの幅変化部をさらに含む。突き合わせ面はまた、穴を囲む隔離領域を含む。隔離領域は、突き合わせ面に沿った任意の幅変化部、根元部、および先端部から穴を隔離する。
【0009】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第1の半リンクは、第1の半リンクの第2の傾斜部と合流し、少なくとも、第1の半リンクの第1の傾斜部に実質的に平行な第3の傾斜部をさらに含むことができる。
【0010】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第1の半リンクの第1および第3の傾斜部と同一平面上にある各線は、第1の離隔距離だけ離間し、第1の半リンクは、穴またはピンの位置で第1の厚さを有する。第1の離隔距離の第1の厚さに対する比率は、約0.75〜約1.2の範囲をとる。
【0011】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第2の半リンクの第1および第3の傾斜部と同一平面上にある各線は、第2の離隔距離だけ離間し、第2の半リンクは、ブッシュまたはピンの位置で第2の厚さを有する。第2の離隔距離の第2の厚さに対する比率は、約0.9〜約1.35の範囲をとる。
【0012】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第1の半リンクの第1の離隔距離は、約40mm〜約50mmの範囲をとる。
【0013】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第1の半リンクのθは約50°である。
【0014】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第2の半リンクの第2の離隔距離は、約40mm〜約50mmの範囲をとる。
【0015】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第2の半リンクのθは約50°である。
【0016】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第2の半リンクは、ブッシュまたはピンのまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域を含む。眉領域は、ブッシュの位置での第2の半リンクの厚さを超える横方向厚さを有する。
【0017】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第2の半リンクは、ピンまたはブッシュのまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域を含む。眉領域は、約50mmを超える横方向厚さを有する。
【0018】
上記の態様の任意の1つまたは複数と併せて、第1および第2の半リンクはそれぞれ、それぞれのピンまたはブッシュのまわりに少なくとも部分的に延びる眉領域を含む。そのような実施形態では、第2の半リンクの眉領域は、第1の半リンクの眉領域の横方向厚さを約20%〜約50%だけ超える範囲に及ぶ横方向厚さを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】開示する主リンクジョイントを収容できる無限軌道車台を装備した機械の斜視図である。
【
図2】チェーンの前部および後部リンクに連結された主リンクジョイントの部分側面図である。
【
図3】開示する主リンクジョイントの4つのリンクと、第1の半リンクの後ろ(または右)に配置された標準リンクへの主リンクジョイントの第1の半リンクの連結と、開示する主リンクジョイントの2つの第2の半リンクおよび2つの第1の半リンクへのシューの連結とを示す部分分解図である。
【
図4】特に、シューを第1および第2の半リンクに連結するのに使用される留め具を収容するために用いる穴を示す、主リンクの第1および第2の半リンクの1つの対の側面図である。
【
図7】
図5〜6に示す第1の半リンクの上面図である。
【
図8】
図5〜7に示す第1の半リンクの底面図である。
【
図9】
図5〜8に示す第1の半リンクの左側面図である。
【
図10】
図5〜9に示す第1の半リンクの右側面図である。
【
図11】
図5〜10に示す第1の半リンクとはチェーンの反対の側に配置されることを意図されたもう1つの第1の半リンクの正面図であり、
図11の第1の半リンクは、
図5〜10の第1の半リンクの鏡像である。
【
図15】
図11〜14に示す第1の半リンクの左側面図である。
【
図16】
図11〜15に示す第1の半リンクの右側面図である。
【
図21】
図17〜20に示す第2の半リンクの左側面図である。
【
図22】
図17〜21に示す第2の半リンクの右側面図である。
【
図23】
図17〜22に示す第2の半リンクとはチェーンの反対の側に配置されることを意図されたもう1つの第2の半リンクの正面図であり、
図23の第2の半リンクは、
図17〜22の第2の半リンクの鏡像である。
【
図27】
図23〜26に示す第2の半リンクの左側面図である。
【
図28】
図23〜27に示す第2の半リンクの右側面図である。
【
図29】突き合わせ面のねじ穴が潜在的な応力集中部から離れている構成を示す、別の第1の半リンクの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、改良された主リンクジョイントを収容できる無限軌道車台34を装備した機械30を示している。ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン、ガスタービン、あるいは電気モータなどの動力源31は、機械30に動力を供給する。具体的には、動力源31は、チェーン33の複数のブッシュ135の1つまたは複数と係合するスプロケット32を駆動する。スプロケット32は回転し、それによって、チェーン33を離間したアイドラ36、37のまわりに循環させる。転輪フレーム39は、アイドラ36、37を共に連結している。
【0021】
図2を参照すると、主リンクジョイント41の半分、または、より具体的には、主リンク141は、第1の半リンク42および第2の半リンク44の形態で存在し得る。第1の半リンク42は、
図3に示すように、2つの第1の半リンク42、43同士を連結するのに使用されるピン38を収容する穴52を含む。ピン38はまた、第1の半リンク42、43を1対の後部リンク50、50’に連結することができる。ピン38はまた、ロッドまたはカートリッジの形態で存在し得る。
図2はまた、ねじ付き留め具47を用いて第1の半リンク42、および第2の半リンク44に連結されたシューを示している(同じく
図3を参照のこと)。
【0022】
図3を参照すると、シュー46を使用して、主リンクジョイント41の4つの半リンク42、43、44、45のすべてを共に結合することができる。シュー46は、トラクションに使用されるクリート53を含むことができる。ねじ付き留め具47は、シュー46の開孔54を貫通することができ、
図4、
図19、および
図23にさらに詳細に示すように、第1の半リンク42、43のレール69、269の近くに配置された穴55、56のねじ部155、156でねじ付き留め具47を受け入れることができる。ブッシュ135は、第2の半リンク44を第2の半リンク45に連結している。スプロケット32(
図1)は、チェーン33を駆動するときにブッシュ135と係合する。
図3に示すように、主リンクジョイント41は、主リンク141および主リンク241を含む。主リンク141は、第1の半リンク42および第2の半リンク44を含む。主リンク241は、チェーン33の、主リンク141とは反対の側に配置され、第1の半リンク43および第2の半リンク45を含む。シュー46は、主リンク141を主リンク241に連結している。
【0023】
図4を参照すると、穴55、56のねじなし部255、256は、第2の半リンク44のシュー突き当て面59を貫通し、穴55、56のねじ部155、156を含む第1の半リンク42まで延びることができる。穴55、56のねじ部155、156の底面57、58は比較的平坦とすることができ、半径が約5mmのコーナ61、62を含むことができるが、底面のコーナの半径は異なってもよい。
図4の仮想線で示すように、ピン38およびブッシュ135は大きさが異なってよいし、または同じでもよい。
【0024】
図5〜10を参照すると、第1の半リンク42の様々な幾何学的特徴が示されている。
図5に示すように、第1の半リンク42は、シュー逃げ面63を含むことができる。第1の半リンク43はまた、接続部または根元部67に向かって、
図5で見て下方に延びる、または穴52を通り過ぎて延びる第1の傾斜部65を含む第1の突き合わせ面60を含み、第1の傾斜部65は、接続部または根元部67で第2の傾斜部66と合流している。
図5を見ると、第1の傾斜部65は、根元部67に向かって下方に延び、第2の傾斜部66は、第1の傾斜部65と第3の傾斜部71との間にずれが生じるように、第1の傾斜部65から離れる方向に上方または外側に延びている。第2の傾斜部66と同一平面上にある線68と、レール69またはシュー逃げ面63と同一平面上にある線とは、約45°〜約53°の範囲をとることができる角度θを規定する。驚いたことに、この範囲以外の角度は、第1の半リンクを低品質にすることが分かった。θは、約45°〜約53°の範囲をとることができるが、一部の実施形態では約48°〜約52°の範囲をとり、一実施形態では、約50°の角度θが特に有効であると分かった。53°を超えるθを使用することで、過度の圧力が留め具47に作用することがある。さらに、45°未満のθを使用することで、第1の半リンク42、および第2の半リンク44用の合わせ面60、370の突き合わせが低品質になり(
図5および
図23を参照のこと)、第1の半リンク43、および第2の半リンク45用の合わせ面260、70の突き合わせが低品質になることがある(
図11および
図17を参照のこと)。
【0025】
興味深いことに、約45°〜約53°のθを使用すると、主リンク141、241の半リンク42、44および半リンク43、45(
図3)は、従来のリンクよりも多量の回転にわたって連結されたままである。結果として、出願人は、理論に束縛されるものではないが、少なくとも、θが約45°〜約53°の範囲をとる場合に、主リンク141、241にわたる負荷の分散が、選択されたθに少なくとも部分的に依存すると考える。さらに、θが浅い角度であると、リンクが引っ張り棒の方向の負荷に対処する能力が低くなることがあり、シュー46をリンク42〜45に固定するのに使用されるボルトに、より大きな圧力がかかることがある。θが急峻な角度であると、傾斜部の交点の根元半径をきわめて小さくする必要があり、ひいては圧力がより高くなるか、または根元半径間の小平面を過度に小さくする必要があり、ひいては、負荷担持能力があまり高くならないかのいずれかとなり、この場合も、より高い圧力がボルトにかかる。最適なθ角度により、圧力が高くならないように歯元の半径を十分大きくすることと、リンクの負荷担持能力を良好にすることとの両方が可能になるので、ボルトが潰れにくくなる、または破損しにくくなる。
【0026】
図5〜10に戻ると、第1の半リンク42はまた、第2の傾斜部66の、第1の傾斜部65とは反対の側に配置された第3の傾斜部71を含む。したがって、
図6に示すように、第2の傾斜部66により、第3の傾斜部71と第1の傾斜部65との間の横方向のずれ「x」ができる。第1の傾斜部65と第3の傾斜部71との間の効果的な横方向のずれxまたは距離のリンク厚さy(
図7)に対する比率は、約0.75〜約1.2の範囲をとることができ、1つの特定の実施形態の比率は約0.8である。例えば、1つの有効なリンクは、約45mmの横方向ずれxをもたらす第2の傾斜部66を有し、同時に、リンクは約57.5mmの厚さyを有する。このように、1つの非限定的実施形態では、角度θは約50°とすることができ、横方向ずれxのリンク厚さy(
図6〜7)に対する比率は約0.8とすることができる。
【0027】
図7および
図10を参照すると、穴55、56が示されており、穴55、56は、第2の半リンク44を貫通する、穴55、56のねじなし部255、256(
図4)を留め具47が貫通した後、ねじ付き留め具47を受け入れる。
図7に示すように、穴55、56間の横方向の間隔「z」は、先行技術の間隔と比較して、約88mm〜約92mmの範囲まで小さくすることができ、1つの特定の効果的実施形態では、横方向の間隔zは約91mmである。これは、先行技術と比較して、約2%〜約5%の低減に相当する。さらに、横方向の間隔「Q」は、先行技術と比較して、約35mm〜約45mm、より好ましくは約38mm〜約42mmの範囲まで大きくされ、1つの特定の横方向間隔Qは約40mmである。間隔Qは、対応する先行技術の横方向間隔と比べて、約15%〜約25%の増加に相当する。zが小さすぎる場合、突き合わせ面60、70、260、370は小さくなりすぎるので、傾斜部65、66、71(
図5)、傾斜部265、266、271(
図11)、傾斜部165、166、171(
図17)、および傾斜部365、366、371(
図17)に対応できないことがある。負荷容量を維持するために、zが小さい場合に、Qを大きくすることができる。
【0028】
図17〜22を参照すると、第2の半リンク45は、シュー突き当て面59と、
図17の幾何学的配置においてブッシュ135の下にある眉領域77(
図22の377も参照のこと)とを含む。第1の半リンク43と同様に、第2の半リンク45は、レール76から下方にブッシュ135を通り過ぎて根元部167まで延びる第1の傾斜部165を含む第2の突き合わせ面70を含み、第1の傾斜部165は、根元部167で第2の傾斜部166と合流し、次に、第2の傾斜部166は、第3の傾斜部171と合流している。
図18に示すように、角度θは、第2の傾斜部166と同一平面上にある線168と、レール76またはシュー突き当て面59の平面上にあるか、あるいはこれに平行な線とによって規定される。角度θは、約45°〜約53°の範囲をとるのが好ましく、最も好ましくは約50°である。
図18および
図19を参照すると、第1の傾斜部165と第3の傾斜部171との間の横方向ずれx’の厚さy’に対する比率は、約0.9〜約1.35の範囲をとることができ、約1の値が特に効果的である。シュー突き当て面59とねじ部155、156を有する穴55、56とが
図19〜20に示されている。
【0029】
図17〜28を参照すると、第2の半リンク44、45の他の特徴部は、
図17および
図23の正面図でブッシュ135の下に示し、
図21〜22および
図27〜28の端面図にそれぞれさらに良好に示す、厚くなった眉領域77、377である。
図20および
図26に示す厚さt、t’は、約50mmを超え約85mm以下、より好ましくは、約60mm〜約75mmの範囲をとることができ、1つの特に効果的な厚さは約72mmである。比較として、
図14および
図20に示す第1の半リンク42、43の相当する領域の典型的な厚さT、T’は、約40mm〜約60mmの範囲をとることができる。したがって、眉領域77、377の厚さの増加分(
図20および
図26)は、約10mm〜約20mm、より好ましくは約12mm〜約16mmの範囲をとることができ、1つの特定の眉領域77、377は、約48mmから約72mmに増やした厚さt、t’を有する。眉領域77、377を厚くする利点は、スプロケット32と係合するためにブッシュ135によってもたらされた空間を侵害することなく、剛性が高くなることである。
【0030】
一般に、第2の半リンク44、45の全体厚さt、t’は、先行技術の第2の半リンクおよび主リンク141、241の対応する第1の半リンク42、43と比較して、約20%〜約50%の範囲の量だけ増やすことができる。
図7および
図10に関連して上記に説明したように、穴55、56間の間隔z(
図7、
図13、
図19、および
図25)は、約2%〜約5%の範囲の量だけ小さくなり、一方、横方向間隔Qは、約15%〜約25%の範囲の量だけ大きくなった。負荷容量を維持するために、zが小さい場合に、Qを大きくすることができる。
【0031】
図5〜10および
図17〜21にそれぞれ示す半リンク42、45の鏡像が、それぞれ
図11〜16および
図23〜28に示され、同じ部分は、同じ数字に「2」の前数字(
図11〜16)、「3」の前数字(
図23〜28)を加えて特定され、傾斜部のずれ、または間隔(
図12)の場合はX、傾斜部のずれ、または間隔(
図24)の場合はX’で特定されている。
【0032】
他の開示する比率は、
図4と
図6、
図4と
図12、
図4と
図18、および
図4と
図24を参照することで理解できる。具体的には、
図4を参照して、ピン38(またはピン穴)およびブッシュ135(またはブッシュ穴)の軸心間の直線距離を無限軌道ピッチPとする。他の有用な比率は、傾斜部間隔x(
図4および
図6)、X(
図12)、x’(
図18)、X’(
図24)を無限軌道ピッチPで除した比率である。つまり、さらなる有用な比率には、x/P、X/P、x’/P、およびX’/Pが含まれる。x/P、X/P、x’/P、およびX’/Pの有用な範囲は、約0.1〜0.25であり、選択した有用な比率には、0.14、0.17、および0.19がある。
【0033】
傾斜部65、66、71(
図5)、傾斜部265、266、271(
図11)、傾斜部165、166、171(
図17)、傾斜部365、366、371(
図23)の幾何形状と、ボルト穴55、56(
図7、
図13、
図19、
図25)の位置とにより、傾斜部によって生じる応力集中部と、ボルト穴55、56によって生じる応力集中部とが互いに相乗効果を生むのが防止される。言い換えると、ボルト穴55、56に起因する応力集中部は、傾斜部外形の応力集中部から離間し、同時に、十分なボルト長さおよびボルトねじの係合を可能にし、それにより、ボルトの破損またはボルトねじの潰れを回避する。
【0034】
図29および
図30は、潜在的な応力集中部から離れた合わせ逃げ面460にねじ穴455、456を配置したことを特徴とする別の第1の半リンク442の平面図および斜視図である。具体的には、合わせ逃げ面460は、シュー逃げ面463から延びている。合わせ逃げ面460は起伏しており、合わせ逃げ面460の長さに沿って少なくとも1つの根元部467、少なくとも1つの先端部468、および少なくとも1つの幅変化部を含む。合わせ逃げ面460はまた、合わせ逃げ面460に沿って配置された幅変化部、根元部467、または先端部468に起因する任意の局所応力集中部から穴455、456を保護する、穴455、456の両側に配置された隔離領域469を含む。
【産業上の利用可能性】
【0035】
開示した主リンクジョイントは、チェーンの耐久性が必要とされる任意の機械に適用可能である。開示した主リンクジョイントは、適切な組み立てを保証し、主リンクジョイントの損傷を最小限にすることで、無限軌道車台の耐久性を改善することができる。改良された主リンクジョイントに、より良好な耐久性およびより長い動作寿命を付与することで、運転コストが削減される。
【0036】
各主リンクジョイントは、チェーンの両側に配置された2つの主リンクを含む。1つの開示した主リンクは、第1のレール、ピンを受け入れる穴、および第1の突き合わせ面を含む第1の半リンクを含む。そのような主リンクはまた、第2のレールおよび第2の突き合わせ面を含む第2の半リンクを含む。第2の半リンクは、ブッシュまたはピンに連結され、ブッシュまたはピンは、第2の半リンクをチェーンの反対側に配置された第2の半リンクに連結する。ブッシュまたはピンはまた、駆動スプロケットと係合するために使用することができる。
【0037】
第1の半リンクおよび第2の半リンクが組み立てられると、第1の半リンクの第1の突き合わせ面は、第2の半リンクの第2の突き合わせ面に当接する。第1および第2の突き合わせ面はそれぞれ、第1の傾斜部、第2の傾斜部、ならびに第1および第2の傾斜部間に配置された根元部を含む。第1および第2の半リンクの第1および第2の突き合わせ面の第2の傾斜部は、それぞれ第1および第2のレールに対して、約45°〜約53°の範囲をとる角度θをなして延びる。この範囲内の角度θを使用することで、より多量の回転にわたって第1および第2の半リンク間のより良好な接触が得られ、したがって、負荷分散特性が改善される。約50°のθを使用して良好な結果が得られた。
【0038】
第1の半リンクはまた、第1の半リンクの第2の傾斜部と合流し、少なくとも、第1の半リンクの第1の傾斜部に実質的に平行な第3の傾斜部を含むことができる。第1の半リンクの第1および第3の傾斜部と同一平面上にある各線は、第1の離隔距離または第2の傾斜部の長さだけ離間することができる。第1の半リンクは、穴の位置で第1の厚さを有することができ、第1の離隔距離の第1の厚さに対する比率は、約0.75〜約1.2の範囲をとることができる。同様に、第2の半リンクはまた、第2の半リンクの第2の傾斜部と合流し、少なくとも、第2の半リンクの第1の傾斜部に実質的に平行な第3の傾斜部を含むことができる。第2の半リンクの第1および第3の傾斜部と同一平面上にある各線は、第2の離隔距離または第2の傾斜部の長さだけ離間することができる。第2の半リンクは、ブッシュの位置で第2の厚さを有することができ、第2の離隔距離の第2の厚さに対する比率は、約0.9〜約1.35の範囲をとることができる。第1および第2の半リンクの第1の離隔距離は、約40mm〜約50mmの範囲をとることができる。
【0039】
第2の半リンクの他の特徴には、ブッシュのまわりに少なくとも部分的に延びる、厚くなった眉領域がある。眉領域は、スプロケットとブッシュとの間の接触を妨げることなく、第1および第2の傾斜部の厚さを超える横方向厚さを有する。眉領域を厚くする利点は、スプロケットと係合するためにブッシュによってもたらされた空間を侵害することなく、剛性が高くなる、ひいては、摩耗特性が改善されることである。眉領域は、約50mmを超える横方向厚さを有することができ、第1の半リンクの眉領域の対応する横方向厚さを20%〜約50%超えることができる。
【0040】
無限軌道駆動式の機械の既存のチェーンに、改良した主リンクを後から取り付ける方法も開示される。方法は、既存の主リンクジョイントをチェーンから取り外し、2つの開示した主リンクを用意することを含む。方法はまた、ピンを用いてチェーン内で第1の半リンク同士を連結し、かつ第1の半リンクを別のリンク対に連結することと、ブッシュを用いて第2の半リンク同士を連結することと、各対の第1および第2の突き合わせ面を係合させることと、シューを4つの半リンクのすべてに連結することとを含む。
【0041】
主リンクジョイント用の半リンクも開示されている。半リンクは、ねじ付き留め具を受け入れる少なくとも2つのねじ穴を含む突き合わせ面を含む。突き合わせ面はまた、突き合わせ面の長さに沿って少なくとも1つの根元部、少なくとも1つの先端部、および少なくとも1つの幅変化部を含む。突き合わせ面はまた、穴を囲む隔離領域を含む。隔離領域は、突き合わせ面に沿って配置された任意の幅変化部、根元部、および先端部から穴を隔離し、したがって、これらの特徴部に起因する任意の応力集中部から穴を隔離する。