特許第5973451号(P5973451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973451ねじを作成するナット、ナット作成のためのブランク、並びに、ナットおよびボルトから形成されるねじ接続
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973451
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ねじを作成するナット、ナット作成のためのブランク、並びに、ナットおよびボルトから形成されるねじ接続
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/00 20060101AFI20160809BHJP
   F16B 39/30 20060101ALI20160809BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20160809BHJP
   F16B 39/22 20060101ALI20160809BHJP
   F16B 33/02 20060101ALI20160809BHJP
   F16B 25/06 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F16B25/00 Z
   F16B39/30 D
   F16B39/02 Z
   F16B39/22 Z
   F16B33/02 Z
   F16B25/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-537164(P2013-537164)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2013-541684(P2013-541684A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2011069601
(87)【国際公開番号】WO2012062728
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】102010043589.9
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513109197
【氏名又は名称】ベイヤー・ウント・ミヘルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・カンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】アンブロス,オラフ
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−172818(JP,U)
【文献】 特開平05−280522(JP,A)
【文献】 米国特許第05326208(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状結合または摩擦結合またはその両方ための、並びにピンまたはボルト(21)と取り外し可能接続するためのねじを作成するためのナット(13)であって、前記ナット(13)がねじ部(14)において有効なねじ溝を有するコア穴(3)え、また前記ねじ溝が前記コア穴の周囲において周囲の方向に向かって配置されているナット(13)であ、前記ねじ部(14)が周囲の方向へ見て断面図において完全に形成されたねじ溝を有し、前記完全に形成されたねじ溝の断面(7,8,9)の間に高さにおいて不完全に形成されたねじ溝を有する自由空間(10,11,12)が存在し、前記完全に形成されたねじ溝の谷底(18)が前記コア穴(3)の中でねじ外径(Dn)上にあり、前記完全に形成されたねじ溝の山頂(15)がねじ内径(D1)上にあり、前記ねじ部(14)が少なくとも部分的に前記コア穴(3)が前記ねじ内径(D1)から前記ねじ外径(Dn)の方向に向かって拡張する自由空間(10,11,12)を有し、前記自由空間(10,11,12)は前記ねじ外径(Dn)に対して一定の間隔をおいて外円の直径(Da)で終わっており、前記自由空間(10,11,12)が半径(Rv)を有する円弧として形成され、前記半径(Rv)は前記ねじ内径(D1)の35%より小さくあるように形成され、前記自由空間(10,11,12)が前記コア穴(3)の中心(2)に対して前記ねじ内径(D1)の最大75%分間隔をおいた中心(4,5,6)を有することを特徴とするナット(13)
【請求項2】
前記ねじ溝が前記ねじ外径(Dn)と前記ねじ内径(D1)の間にあるねじ有効径(D2)を有し、前記外円の直径(Da)が前記ねじ外径(Dn)より小さく、少なくとも前記ねじ有効径(D2)と同じ大きさであることを特徴とする、請求項1に記載のナット(13)。
【請求項3】
前記自由空間(10,11,12)の前記ねじ内径(D1)への移行が120°から180°未満の角度でなされることを特徴とする、請求項1または2に記載のナット(13)。
【請求項4】
前記ねじ部(14)における前記自由空間(10,11,12)の割合が20%から75%までであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナット(13)。
【請求項5】
前記ピンまたはボルト(21)が円筒状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナット(13)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナット(13)と、ボルト(21)とを備えるねじ接続であって、前記ボルト(21)の直径(d2)は前記ねじ内径(D1)より大きく、前記ナット(13)の外円の直径(Da)より小さことを特徴とするねじ接続。
【請求項7】
前記ナット(13)の外円の直径(Da)が前記ボルト(21)の直径(d2)より大きいことを特徴とする請求項に記載のねじ接続。
【請求項8】
前記ボルト(21)の直径(d2)が前記ねじ有効径(D2)と同じ大きさであることを特徴とする、請求項6または7に記載のねじ接続。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナット(13)の作成のためのブランク(1)であって、前記ナット(13)はねじ内径(D1)とねじ外径(Dn)を有するねじ部(14)を備える、ブランク(1)であり、前記ブランク(1)が前記ねじ内径(D1)より小さい内接円の直径(Di)を有するコア穴(3)を有し、前記コア穴(3)は前記内接円の直径(Di)から前記コア穴(3)を拡張する自由空間(10,11,12)を有し、前記自由空間(10,11,12)は前記ねじ外径(Dn)に対して一定の間隔をおいて外円の直径(Da)で終わっていることを特徴とするブランク(1)。
【請求項10】
前記自由空間(10,11,12)が互いに間隔をおいていることを特徴とする、請求項に記載のブランク(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ接続のためのねじを作成するナットに関し、この際、特に円筒状のボルトまたはピンを用いた形状結合および摩擦結合する取り外し可能な接続のための、ねじ溝を備えたコア穴が備わっている。さらに、ナット作成のためのブランクまたは未加工物、および、そのようなナットとボルトから形成されるねじ接続も本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
通常のナットは複数のねじ山が配置されたコア穴を有するため、ナットを、これに相応するねじ山を有するボルトにねじ込むことができる。ナットは例えば部品をこのねじ接続に固定するために使用される。
【0003】
ナットの自然な緩み防止の向上については独国実用新案広報第296 14 832U1号から、セルフカッティングねじまたはセルフタッピングねじを有するボルトが、好ましくはねじ山のないナットにねじを切るか、もしくはねじ山を成形すること、およびその逆が公知である。例えばナットのような対の部分が既にねじ山を備えている場合は、ボルトのセルフカッティングねじによってさら切り込んで加工される。セルフタッピングねじは、対の部分のねじ山がある場合はこれをさらに加工成形するか、または単に弾性的に変形させる。いずれの場合も、切断、成形、または弾性的な変形により、ねじの自然な緩み防止がなされる。
【0004】
ボルトのねじ山にコーティング材が塗布されている場合、そのようなナットの機能はコーティング材によって制限されるか、完全に失われることさえある。これは特に漬け込みによるコーティングの際に起こり、その工程に起因して、多くの場合片側に、ねじにコーティング材の残余物が特に大量に付着することが特徴的である。このため従来技術においては、コーティングされたボルトのねじを削るか、再度ねじ切りを行う必要がある。時には、精度の著しく高いナットの使用により改善を図ることもあるが、しかしながら、これに応じてより大量の残余物が発生することで摩耗が発生するか、または、ねじ山を有するボルトにナットを締める際に、制御されない大きなねじりモーメントが作用することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決すべき課題は、ねじの特別な特徴に基づき、相応する断面の平坦なボルトに完全に機能するねじを形成し、また既に存在するコーティング材が塗布されたねじであっても代替可能な労力をもって切削するための適正を有するナットを作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく、形状結合および摩擦結合の、並びに取り外し可能な接続のための、特に円筒状のピンまたはボルトを有するねじを作成するナットは、この際ねじ部において有効なねじ溝を有するコア穴が備えられており、またねじ溝がコア穴の周囲において周囲の方向に向かって配置されており、周囲の方向へ見て断面図において完全に形成されたねじ溝を有し、完全に形成されたねじ溝の断面の間に、高さにおいて不完全に形成されたねじ溝を有する自由空間が存在する。
【0007】
完全に形成されたねじ溝は、先の尖った山頂、フランクおよび谷底から構成される。本発明の意味における不完全に形成されたねじ溝は谷底とフランクを有するが、これらは山頂を形成せず、平坦にされた領域へと推移する。この平坦にされた領域では、山頂と比較して、自由空間が生じる。
【0008】
このナットでは、コーティング材によって限定されたもはや存在しない、コーティングされた組み立て部品におけるねじ部分を切削することができ、これによって例えば再度のねじ切り等追加のコストを要する作業プロセスや、またはコーティング前にねじ部分をカバーする労力を要する作業を省略することができる。
【0009】
さらにこの種類のナットでは、非鉄金属やスチールのような異なる素材により作成されたボルトに、ゲージに従った、かつ完全な耐久性を有するねじを削りくずを発生させずに形成することができ、この際原則としてメートルねじが作成されるものとする。
【0010】
完全に形成されたねじ溝において、コア穴の中で、その谷底がねじ外径Dn上にあり、かつその山頂がねじ内径D1上にあり、またねじ部が少なくとも部分的にコア穴がねじ内径D1からねじ外径Dnの方向に向かって拡張する自由空間を有すると好ましく、この際自由空間はねじ外径Dnに対して一定の間隔をおいて外円の直径Daで終わっている。
【0011】
この間隔によって自由空間の領域においても、作成すべきねじの山頂が平坦にされ校正されることによってボルトでのねじの形成に作用することが可能となる。
【0012】
ねじ溝がねじ外径Dnとねじ内径D1の間にあるねじ有効径D2を有し、外円の直径Daがねじ外径Dnより小さく、少なくともねじ有効径D2と同じ大きさであると有利である。
【0013】
この構成により、自由空間の形成においてある程度妥協がなされる。
【0014】
さらに自由空間は半径Rvの円弧として形成されてもよく、半径Rvはねじ内径D1の35%より小さく、特にねじ内径D1の25%より小さく形成されてもよく、この際自由空間はコア穴の中心に対してねじ内径D1の最大75%分間隔をおいた中心を有する。
【0015】
ねじ外径Dnに対する間隔が保たれている限り、円弧の代わりに別の形状が選択されてもよい。
【0016】
自由空間のねじ内径D1への移行が120°から180°未満の角度で、特に150°から180°未満の角度でなされると有利である。
【0017】
ねじ部における自由空間の割合が20%から75%である場合、一方では十分なねじの有効性について、他方では変形された素材の十分な回避可能性について留意される。
【0018】
本発明の他の対象はナットとボルトを含むねじ接続であり、この際ボルトの直径d2はねじ内径D1より大きく、ナットの外円の直径Daより小さく、特に、ねじ有効径D2と同じ大きさである。
【0019】
ナットの外円の直径Daがボルトの直径d2より大きいと有利である。
【0020】
このように生じたねじ接続では高い保持力効果が備わっており、これはセルフタッピングねじの場合のように変形の際に素材の弾性の反発によって引き起こされ、こうして例えば振動等による接続の自然な解消に対抗する。
【0021】
本発明のさらに別の対象はねじを作成するナットの作成のためのブランクに関し、この際作成すべきナットはねじ内径D1とねじ外径Dnを有するねじを備え、ここでブランクは作成すべきねじ内径D1より小さい内接円の直径Diを有するコア穴を有し、コア穴は内接円の直径Diからコア穴を拡張する自由空間を有し、この際自由空間は作成すべきねじ外径Dnに対して一定の間隔をおいて外円の直径Daで終わっている。
【0022】
この種のブランクから本発明に基づくナットをねじ切りによって作成することができる。
【0023】
ブランクに存在する自由空間が互いに隣接することも可能ではあるが、自由空間が互いに間隔をおいていると有利である。
【0024】
本発明の方法を以下では図を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術に基づくねじ溝を有する作成すべきねじを備えたナットのための未加工物を示す。
図2】半径Riを有する内径Diを有するコア穴が開けられた図1の未加工物を示す。
図3】コア穴の形状に第一の変更を施した図2の未加工物を示す。
図4】コア穴の形状に別の変更を施した図3の未加工物を示す。
図4A図4の未加工物の詳細図Xを示す。
図4B図4の未加工物の詳細図Yを示す。
図5】作成された本発明に基づくナットのコア穴の形状に別の変更を施した図4の未加工物を示す。
図6】導入傾斜と完全に形成された先の尖った山頂を有する図5の切断面I−Iを示す。
図7】ボルトの山頂の校正のための図5の切断面II−II「ナットの残余部分」を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、DIN336に基づき形成されたメートルねじのような、従来技術に基づくねじ溝を有する作成すべきねじを備えたナットのための未加工物1を示し、この際想定されるねじ溝が、ISO規格に基づき基準直径寸法とも称される半径Rnを有するねじ外径Dnと、ISO規格に基づき雌ねじのコア径とも称される半径R1を有するねじ内径D1との間にあり、これらは共通の中心2の周りに実線の円として示されている。直径Dn,D1には図に示されていない半径RnおよびR1が割り当てられており、以降では半径と直径の名称は区別されず、場合に応じて本発明の説明においてより良いと考えられる名称が使用される。これは、以降の図における他の直径と半径にも当てはまる。
【0027】
さらに、作成すべきナットのねじに関して半径R2を有する有効径D2を示す。この有効径はナットに取り付けるべきボルトまたはピンの測定において重要であり、図8との関係で説明する。
【0028】
図2では図1のナットのための未加工物1を示し、この際半径Riを有する内径Diを有するコア穴3が、例えばドリル、パンチまたは変形により開けられている。コア穴3の半径Riを有する内径Diは作成すべき半径RIを有するねじ内径D1よりも小さい。作成すべき半径Rnを有するねじ外径Dnと作成すべき半径RIを有するねじ内径D1との間には、半径Raを有する外径Daが、本発明によるナットの形成において重要な意味を持つ中心2を有する鎖線の円として示されている。
【0029】
図1および図8の半径R2を有する有効径D2は図に示されていないが、半径RIを有するねじ内径D1と半径Raを有する外径Daとの間にある。
【0030】
したがって、全体としてはDn>Da>D2>D1>Di、またこれに相応してRn>Ra>R2>RI>Riである。
【0031】
図3には、コア穴3の中心2からある間隔をおいた半径Rvおよび中心4を有する円形の切開という第一の変更を施したコア穴の形状を有する、図2の未加工物を示す。この変更は例えば、コア穴2を、フライス盤外周Rvおよび図2の回転中心4を有するフライス盤により拡大することでなされている。
【0032】
この際切開Rvは半径RIを有する内径Diよりも小さく、およそRiの半分であり、回転中心4は、切開が半径Raを有する外径Daまで及ぶように、かつ作成すべき半径Rnを有するねじ外径Dnまでまだ間隔を有するように、中心2からの間隔を有している。ここで既に、切開Rvの領域において、作成すべき半径R1を有するねじ内径D1が下回っていることが分かる。
【0033】
切込みの作成についても別の方法を取ってもよく、特にコア穴を変形によって作成してもよい。この際、変形用工具の適切な形状によって所望のコア穴を作成できる。このような変形は、ナットの作成に関する従来技術より基本的に公知である。
【0034】
図4には、さらに切開を実行することによる、コア穴の形状に別の変更を施した図3の未加工物を示す。この際、回転中心5および6は同様に、ここでも切開が半径Raを有する外径Daまで及ぶように、かつ作成すべき半径Rnを有するねじ外径Dnまでまだ間隔を有するように、中心2からの間隔を有している。
【0035】
これは例えばフライス盤外周Rvを有するフライス盤によって、回転中心4に加えてさらに2つの回転中心5および6を中心として作成される。
【0036】
図2のコア穴の領域7,8,9、作成すべき半径R1を有するねじ内径D1から半径Riを有する内径Diまで及ぶ領域が依然として存在することが分かる。図4の領域9の詳細図Yでは、図4Bにおいてそれぞれ半径RI,R1,RaおよびRnを有する異なる直径Di,D1,DaおよびDnに関する位置が正確に見て取れ、ここでは、直径がコア穴3の内側から外側に向かって示されている。
【0037】
さらに図4では、作成すべき半径R1を有するねじ内径D1に対して半径Raを有する外径Daまで及ぶ、コア穴の領域10,11,12が存在することが見て取れ、ここで領域10は既に図3において発生している。図4の領域10の詳細図Xでは、図4Aにおいてそれぞれ半径Ri,R1,RaおよびRnを有する異なる直径Di,D1,DaおよびDnに関する位置が正確に見て取れ、ここでも、直径がコア穴3の内側から外側に向かって示されている。さらに、中心4および半径Rvを有する切開を示し、これによって領域10が作成されている。
【0038】
自由空間10−12が互いに隣接していても、元のままの内接円の直径Diを有する空間が存在するようにこれらを形成することもできる。ここでの構成のための余地は非常に大きい。
【0039】
図5にはコア穴の形状にさらなる変更を施した図4の未加工物が示されており、この変更はねじ切り機を用いたねじ切りの際に図4の全ての領域7,8,9を、半径Riを有する内径Diからこれから作成する半径R1を有するねじ内径D1まで縮小することによりなされ、こうして、これらの領域7,8,9に完全かつ先の尖ったねじ溝の山頂があるように形成される。これについては後の図7の切断面I−Iを参照されたい。さらに、ねじ切りの際に、半径Rnを有するねじ外径Dnが形成され、これに伴い本発明によるナット13が作成された。
【0040】
半径R1を有するねじ内径D1上に存在する領域7,8,9の間に、半径Raを有する外径Daに至る自由空間と見なされる領域10,11,12が存在する。領域10,11,12において自由空間がコア径D1に対して戻されたために、領域7,8,9は突出部と見なされるが、これらは実際にはコア径D1上に存在する従来技術によるねじの山頂に相応するものである。
【0041】
さらに、領域10の自由空間および図5のナット13の領域7の突出部の詳細図を示す。コア穴3の中心2、これに対して自由空間の作成のために、直径Rvを有する領域10における半径Raを有する外径Daまで移動された中心4、および半径R1を有するねじ内径D1上に存在する領域7の突出部が見て取れる。領域7と領域10の両方で、半径RDを有するねじ外径Dnまでねじが延びている。図2〜4の未加工物の半径Riを有する内径Diは、このように作成されたナットにおいては具象的な対応物を持たないが、ここでは単に図を完全なものにするために描かれている。
【0042】
領域9の切開10への移行箇所における角度は、ナットの素材内で測定して、およそ170°である。
【0043】
図6には図5の領域9の切断面I−Iを示す。ここでナット13はコア穴3に複数のねじ溝を備えるねじ14を有し、ねじ14はコア穴に向かう山頂15、フランク16,17、および谷底18から構成される。山頂15は完全に形成されて先が尖っており、ISO規格に基づき雌ねじのコア径とも称される半径R1を有するねじ内径D1上にある。谷底18は、ISO規格に基づき基準直径寸法とも称される半径Rnを有するねじ外径Dn上にある。
【0044】
さらにナット13の上面および下面には、ボルトまたはピンへの取り付けを容易にするための導入傾斜19,20が備えられている。
【0045】
図7には、図5の領域10の切断面II−IIを示す。ねじ14は複数のねじ溝を有し、コア穴に向かうこれらの山頂15’は不完全かつ明らかに平坦に形成され、この際、それでもなお谷底18に向かうフランク16,17が存在している。山頂15’は半径RAを有する外径Da上にある。谷底18は、ISO規格に基づき基準直径寸法とも称される半径Rnを有するねじ外径Dn上にある。
【0046】
半径R2を有する有効径D2は、ボルト21の外径d2に相応する。ボルト21は約60°の角度Alphaの差し込み傾斜22を有し、先端には、ねじ内径D1よりも小さい、半径rsを有する最少の直径dsを有する。純粋なねじ切りの際、このようにしてナットの直角な取り付けが容易になる。
【0047】
さらにナット13は両面に、または少なくとも締め付ける部品に対する面、すなわちナットの有効方向側の面に、相応する大きな角度の皿穴19,20、または、ナットの取り付けとこれに伴ってねじ切りも容易にするねじ導入部を有する。このため、適切な位置合わせによって形成されていないため必然的に両面にそのような皿穴19,20を有している、このタイプのナットでは、接続の十分な耐久性を確保するために相応してナットの高さを追加することを選択することができる。ねじ溝が全範囲に及ばず、ねじの有効でない部分を補うためにより多くのねじ溝が必要となるという理由からも、より高いナットであっても好ましい。
【0048】
前述のナットは硬化性のスチールから作成されると好ましく、この際、使用目的に応じてナットの強度クラスを差別化しなければならない。従来の方式で硬化された炭素鋼を用いたISO規格898−2に基づく強度クラスFK10は、Rm<700N/mmの強度を有する柔らかい素材のねじ形成に限定された適正を有する。例えば添加剤によってベイナイト鋼として硬化された炭素鋼による430−470HV10の硬度を有する強度クラスFK14は、強度Rm<1100N/mmの強度を有するより高い強度の素材であっても、ねじ形成に特別な適性を有する。
【0049】
ナットはブランクとしてねじの取り付け前に特別なコア穴の形状を有しており、これはナット本体へのねじの取り付け後、定義された空間を、作成されたねじの形状に残す。
【0050】
このようにコア穴の横断面はクローバーの形になるが、他の形であってもよく、この際、周囲を囲む外円の直径Daは名目上のねじ外径Dnに隣接し、また内接円の直径Diは半径R1を有する名目上のねじ内径D1に隣接しているが、いずれの場合もこれらを下回っている。
【0051】
ナット13のボルト21への 取り付けの際にねじ接続が生じる。
【0052】
半径Raを有する外円の直径Daには、ナットの名目上の直径に応じて半径R2を有するボルトの外径d2よりも多少大きい直径が選択され、これによって、一方では素材の注入のためにこれに応じた空間が形成され、他方では同時に形成すべきボルトねじの山頂に有効に作用する。これは特に、ナットの直径DaとDnとの間に残っている谷底のボルトねじに生じる山頂の平坦化と校正について当てはまる。
【0053】
しかしながらボルト21の外径R2は同時にナット13の半径Rnを有する名目上のねじ外径Dnより小さく、ねじの有効径D2の大きさの範囲内にある。
【0054】
所望の使用目的によってコア穴の拡張の度合いを変化させてもよく、これによって、大きく拡張する場合はこれに応じてより大きな自由空間が生じ、自由空間での削りくずの収容の可能性に関して追加のねじ溝の切削が可能となる。拡張が少ない場合は有効なねじの割合が高まり、これによってねじ形成への適性が高まる。一般的に、有効なねじの割合に関して要求された状況に応じてナットの設計高さを適応させることができる。
【0055】
ねじを使用目的に適応させるため、当然図に示した3つの切開よりも多いまたはこれより少ない切開であってもよい。
【0056】
本発明によるナットは、ねじのないボルトまたはピンにも、また既に存在するコーティングされたねじにも取り付けることができ、ねじ切りまたは切削によってこれに必要なボルトにおけるねじの環境もしくは自由空間が形成される。
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7