(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸化アルミニウム100質量部につき、遷移金属酸化物、希土類元素酸化物、及びこれらの混合物から選ばれるドーパントを0.1〜20質量部の量で含む、請求項6に記載の多孔性アルミナ。
触媒であって、(a)硫黄に耐性のある、高い表面積、高い細孔体積の、請求項1に記載の多孔性アルミナ、及び(b)硫黄に耐性のある、高い表面積、高い細孔体積の多孔性アルミナの上に分散した貴金属を含む触媒。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、貴金属触媒を形成するための改善されたアルミナ担体に関する。一実施形態において、アルミナ担体は、内燃機関及びこれと同種のものの放出物質流で通常見つかる硫黄の存在に対して高められた耐性を有する排気触媒を形成することに役立つ、硫黄に耐性のあるアルミナであり、それによって、従来通りに形成された担体を利用した触媒を用いるより、結果として生じる触媒の貴金属の低い被毒を達成する。
【0034】
本発明の担体は、通常シリカの被覆材を有するアルミナを含む微粒子の形態である。
【0035】
本明細書及び添付の請求項で使用する以下の用語は、以下の定義を有する:
【0036】
用語“微粒子”は、粉体、ビーズ、押出物(extradite)、及びこれと同種のものの形で作られた粒子を指す。本明細書において、それは核、担体、及び結果として生じる担持された貴金属生成物に関しても使用される。
【0037】
用語“アルミナ”は、単独、又は少量の他の金属及び/若しくは金属酸化物との混合物としての任意の形態の酸化アルミニウムを指す。
【0038】
用語“シリカ被覆”は、本発明の高い表面積のアルミナ微粒子のシリカ−リッチな表面を指す。
【0039】
用語“吸着した”又は“吸着”は、吸着(吸着剤、例えばアルミナの表面で気体、液体又は溶解した物質を保持するか、濃縮する能力)、及び吸収(吸収剤、例えばアルミナの物体全体で気体、液体又は溶解した物質を保持するか、濃縮する能力)の現象を総称的に指し、イオン結合、共有結合、若しくはそれらが混ざった性質であってよい化学反応によるもの、又は物理的力によるもののどちらでもよい。
【0040】
用語“硫黄を含む物質”は、硫黄、硫黄酸化物及び硫黄の原子を含む化合物を指す。
【0041】
一面において、本発明は高い表面積のアルミナ微粒子を製造する方法、及び高い表面積のアルミナ微粒子(それぞれ本発明の“アルミナ”の実施形態を指す)に関する。代替的な面では、本発明は、硫黄に耐性のある高い表面積のアルミナ微粒子であってその上にシリカ被覆材を有するアルミナ微粒子を製造する方法、及び硫黄に耐性のある高い表面積のアルミナ微粒子であってその上にシリカ被覆材を有するアルミナ微粒子(それぞれ本発明の“硫黄に耐性のあるアルミナ”又は“シリカ被覆アルミナ”の実施形態を指す)に関する。そのような実施形態はそれぞれ、本明細書で以下完全に開示される。
【0042】
アルミナ微粒子をシリカで被覆して、硫黄を含む物質の存在に対する高い耐性を示す担体を提供することができ、また、それによって、長期の実用的なエミッションコントロールの寿命を有する触媒を提供できることが分かった。本明細書で以下完全に開示されるように、シリカ被覆したアルミナ微粒子の形成はプロセスパラメータのある特定の組合せの適用によって達成された。
【0043】
本明細書中で言及するように、水性の媒体は水を含む媒体であり、1種又はそれ以上の水溶性有機溶剤(例えば、エタノール等の低級アルコール類、エチレングリコール等の低級グリコール、及びメチルエチルケトン等の低級ケトン類)を任意に更に含んでもよい。
【0044】
水和酸化アルミニウム、例えばベーマイト、ギブサイト、又はバイエライト、あるいはその混合物は、水性の媒体中で形成される。水和酸化アルミニウムは、例えば、水酸化アンモニウムをハロゲン化アルミニウム(例えば塩化アルミニウム)の水溶液に加えること、又は硫酸アルミニウムとアルカリ金属アルミン酸塩(例えばアルミン酸ナトリウム)とを水性の媒体の中で反応させること等、種々の既知の方法によって水溶性アルミニウム塩から水性の媒体中で形成することができる。適切な水溶性アルミニウム塩は、アルミニウム陽イオン、例えばAl
3+及び負に荷電した対イオン、又はアルミニウムを含有する陰イオン、例えばAl(OH)
4−及び正に荷電する対イオンを含む。一実施形態において、水溶性アルミニウム塩は、アルミニウム陽イオン及び負に荷電する対イオンをそれぞれ独立して含む1種又はそれ以上の水溶性アルミニウム塩(例えば、ハロゲン化アルミニウム塩又は硫酸アルミニウム塩)を含む。他の実施形態において、水溶性アルミニウム塩は、アルミニウム陰イオン及び正に荷電する対イオンをそれぞれ独立して含む1種又はそれ以上の水溶性アルミニウム塩(例えば、水溶性アルカリ金属アルミン酸塩)を含む。他の実施形態において、水溶性アルミニウム塩は、アルミニウム陽イオン及び負に荷電する対イオンをそれぞれ独立して含む1種又はそれ以上の水溶性アルミニウム塩、並びにアルミニウム陰イオン及び正に荷電する対イオンをそれぞれ独立して含む1種又はそれ以上の水溶性アルミニウム塩を含む。
【0045】
一実施形態において、水溶性アルミニウム前駆体は、水溶性アルミニウム前駆体の水溶液の形で反応器に導入される。そのようなアルミニウム前駆水溶液の酸性度は、酸又は塩基の添加によって、広範囲に渡り任意に調節することができる。例えば硝酸、塩(chloridric)酸、硫酸、若しくはこれらの混合物等の酸は、硫酸アルミニウム若しくは塩化アルミニウム水溶液の酸性度を増やすために添加してもよく、又は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、若しくはこれらの混合物等の塩基は、アルミン酸ナトリウム水溶液の酸性度を減少させるために添加してもよい。一実施形態において、アルミニウム前駆体溶液の酸性度は、反応器に前駆体溶液を導入する前に、酸をアルミニウム前駆体溶液に加えることによって調節される。一実施形態において、アルミニウム前駆体溶液の酸性度は、反応器に前駆体溶液を導入する前に、塩基をアルミニウム前駆体溶液に加えることによって調節される。
【0046】
一実施形態において、アルミニウム水和物の種は非常に薄い水性の系中で酸性のpHで最初に形成され、そして、更なるアルミニウム水和物は次いで約3〜約6のpHにおいて種結晶の上に堆積する。
【0047】
一実施形態において、アルミニウム水和物の種は、反応容器中、pH約2〜約5の水性の媒体中で硫酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとが反応することによって形成し、そして、更なるアルミニウム水和物は、水性の媒体中のpHを約3〜約6、より典型的には約5〜約6のpHまで徐々に増加させながら、硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムの水性の流れを反応容器に同時に入れることによって種の上に堆積する。水和酸化アルミニウムを形成する間の水性の媒体の温度は、典型的には約30℃〜約100℃、より典型的には約50℃〜約100℃の範囲である。
【0048】
一実施形態において、アルミニウム水和物の種は、反応容器中、約2〜約5のpHの水性の媒体中で硫酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとが反応することによって形成し、そして、更なるアルミニウム水和物は、水性の媒体のpHを約3〜約6、より典型的には約4〜約5のpHまで徐々に増加させながら、硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムの水性の流れを反応容器に同時に入れることによって種の上に堆積する。水和酸化アルミニウムを形成する間の水性の媒体の温度は、典型的に約30℃〜約100℃、より典型的には約50℃〜約100℃、さらに典型的には約55℃〜100℃、及びさらにより典型的には60℃〜95℃の範囲である。アルミニウム水和物の粒子、又は代替の実施形態におけるアルミニウム水和物のシリカ前駆体に接触した粒子は、焼成した後に、高い比細孔体積(小さな直径の細孔が寄与する細孔体積分率は低い)を示す傾向があることが分かった。
【0049】
一実施形態において、アルミニウム水和物の種形成は省略され、硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムの水性の流れを反応容器に同時に入れることにより水性の媒体のpHを約3〜約6、より典型的には約4〜約5のpHまで徐々に増加させることにより、アルミニウム水和物を直接形成する。水和酸化アルミニウムを形成する間の水性の媒体の温度は、典型的に約30℃〜約100℃、より典型的には約50℃〜約100℃、さらに典型的には約55℃〜100℃、及びより更に典型的には60℃〜95℃の範囲である。アルミニウム水和物の粒子、又は代替の実施形態におけるアルミニウム水和物のシリカ前駆体に接触した粒子は、焼成した後に、高い比細孔体積(小さな直径の細孔が寄与する細孔体積分率は低い)を示す傾向があることが分かった。
【0050】
一実施形態において、水性の媒体からのアルミニウム水和物の粒子の沈殿は、典型的に水性の媒体のpHを約8〜10、より典型的には約8.5〜約9.5まで増加させ、水性の媒体中に懸濁するアルミニウム水和物粒子のスラリーを形成することによって続く。反応容器に水性の硫酸アルミニウム及び水性のアルミン酸ナトリウムの流れを同時に供給することによってアルミニウム水和物を形成する一実施形態において、硫酸アルミニウム流のフィードをやめ、その一方で、アルミン酸ナトリウム流のフィードを続けて、反応容器にアルミン酸ナトリウムを継続的に添加することにより反応媒体のpHを増加させることにより、アルミニウム水和物の粒子を沈殿してもよい。また、水酸化ナトリウム又は任意のアルカリ水溶液は、水溶液のpHを増大させるためにも使用することができる。形成されるアルミニウム水和物粒子の量は、典型的にスラリーの100質量部(“pbw”)に対し、水和酸化アルミニウム粒子は約3〜約50pbwである。アルミニウム水和物粒子が沈殿する間の水性の媒体の温度は、典型的に約30℃〜約100℃、より典型的には約50℃〜約100℃、さらに典型的には約55℃〜100℃、及びより更に典型的には60℃〜95℃の範囲である。アルミニウム水和物が形成される水性の媒体は、アルミニウム水和物を作る水溶性アルミニウム塩の対イオンを含む。
【0051】
本発明の硫黄に耐性のあるアルミナの実施形態において、アルミニウム水和物の粒子は、水性の媒体中で水溶性シリカ前駆体と接触する。アルミニウム水和物はシリカ前駆体の導入の前に形成されてよく、又はシリカ前駆体の導入と同時に形成されてもよい。適切なシリカ前駆体化合物は、たとえば、アルキルケイ酸塩(例えばテトラメチルオルトケイ酸塩)、ケイ酸(例えばメタケイ酸又はオルトケイ酸)、及びアルカリ金属ケイ酸塩(例えばケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウム)を含む。より更に典型的に、シリカ前駆体は、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物から選ばれる。さらに典型的に、シリカ前駆体は、ケイ酸ナトリウムを含む。
【0052】
一実施形態において、水溶性シリカ前駆体は水溶性シリカ前駆体の水溶液の形で反応器に送られる。そのようなシリカ前駆体水溶液のpHは、酸又は塩基の添加を通して広範囲に渡って任意に調節することができる。たとえば、硝酸、塩(chloridic)酸又は硫酸を加え、望ましい値までアルカリ金属ケイ酸塩溶液のpHを減少させることができ、また、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを加え、ケイ酸溶液のpHを望ましい値に増やすことができる。一実施形態において、シリカ前駆体溶液は、反応器に前駆体溶液を導入する前に、初めに塩基性のシリカ前駆体水溶液に酸を加え、又は初めは酸性のシリカ前駆体溶液に塩基を加えることによって、約7のpHに中和される。
【0053】
一実施形態において、水性のケイ酸ナトリウムの流れは反応容器に入れられ、アルミニウム水和物粒子の水性のスラリーと混ぜられ、粒子とケイ酸ナトリウムが接触する。シリカイオン源を添加する間の水性の媒体の温度は、典型的に約30℃〜約100℃、より典型的には約50℃〜約100℃、さらに典型的には約55℃〜100℃、及びさらにより典型的には60℃〜95℃の範囲である。
【0054】
アルミニウム水和物とシリカ前駆体物質との接触は、水性の媒体中、1種又はそれ以上の水溶性アルミニウム塩の対イオンの存在下で行われる。一実施形態において、1種又はそれ以上の負に荷電する対イオン(例えばハロゲン化物アニオン又は硫酸アニオン)は、水性の媒体中に存在する。一実施形態において、1種又はそれ以上の正に荷電する対イオン(例えばアルカリ金属カチオン)は、水性の媒体中に存在する。一実施形態において、1種又はそれ以上の負に荷電する対イオン、及び1種又はそれ以上の正に荷電する対イオンはそれぞれ水性の媒体中に存在する。
【0055】
シリカ前駆体物質は、バッチモードで、又は連続モードで導入してもよい。バッチモード処理の一実施形態において、反応容器の内容物を混ぜる間、アルミニウム水和物及び水性の媒体を含む反応容器に、シリカ前駆体のチャージが導入される。(バッチモード処理の他の実施形態においては、シリカ前駆体のチャージを水溶性アルミニウム塩のチャージと同時に反応容器に導入し、そして、反応容器の内容物を混ぜる。)連続処理の一実施形態において、アルミニウム水和物の水性の懸濁液の流れ、及びシリカ前駆体の水溶液の流れは、インライン混合装置に同時に供給される。
【0056】
アルミニウム水和物に接触させるために使用するシリカ前駆体の量は、シリカ被覆したアルミナ100質量部につき約1〜約40質量部のシリカ(SiO
2)、より典型的には約5〜約30質量部のシリカ含有量を有するシリカ被覆したアルミナ生成物を提供する程度に、十分でなければならない。典型的に、シリカ前駆体は、シリカ前駆体の水性の流れ100質量部につき、SiO
2として、約1〜約40、より典型的には約3〜約30質量部、更に典型的には約4〜25質量部のシリカを含む水性の流れの形で水性の媒体中に導入される。一実施形態において、シリカ前駆体は水溶性であり、シリカ前駆体の水性の流れはシリカ前駆体の水溶液である。一実施形態において、シリカ前駆体の水性の流れは、1種又はそれ以上の界面活性剤を更に含み、水性のフィード流中のシリカ前駆体の分散を促進する。典型的に、シリカ前駆体の水性の流れは、反応容器の内部の水性の媒体の温度と実質的に同じ温度まで反応容器に導入する前に加熱されるが、予熱は必要としない。
【0057】
一実施形態において、懸垂したアルミニウム水和物粒子及びシリカ前駆体の混合物は、約20分〜約6時間、より典型的には約20分〜約1時間の時間、周囲温度を超える温度、より典型的には約50℃〜約200℃の温度まで加熱される。温度が100℃より高い場合、加熱は圧力容器中で大気圧より高い圧力で行われる。
【0058】
次いで、アルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は、典型的に濾過によって水性の媒体から単離される。一実施形態において、水性の媒体から粒子を単離する前に、懸濁液に酸(典型的には硝酸、硫酸又は酢酸を含む酸)を導入することによって、水性の媒体のシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物粒子の懸濁液のpHは、約4〜約10のpHに調節される。
【0059】
一実施形態において、アルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は洗浄され、形成、沈殿、及び接触工程の残留物(アルミナがアルカリ金属アルミン酸塩から作られる場合、及び/又はシリカ前駆体がアルカリ金属ケイ酸塩である場合には、アルカリ金属残留物を含む)が取り除かれる。一実施形態において、水性の媒体から粒子を単離する前に、1種又はそれ以上の水溶性の塩は、洗浄効率を改善するために、水性の媒体の粒子の懸濁液に加えられる。適切な水溶性の塩は、たとえば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アルミニウム、及びこれらの混合物を含む。
【0060】
洗浄は、熱水及び/若しくは水溶性アンモニウム塩(例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、並びにこれらと同種のもの、又はこれらの混合物)の水溶液を使用して行ってもよい。洗浄工程の一実施形態において、アルミニウム水和物粒子又はシリカ被覆したアルミニウム水和物粒子のスラリーは脱水され、次いで水溶性アンモニウム塩の水溶液を用いて洗浄され、次いで脱水され、次いで水を用いて洗浄され、次いで再び脱水され、洗浄された粒子の湿った塊を形成する。
【0061】
一実施形態において、アルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の洗浄された粒子の湿った塊は、水中に再分散され、第二の水性のスラリーを形成する。
【0062】
一実施形態において、続いて、第二の水性のスラリーは、アルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子に噴霧乾燥される。他の実施形態において、水性の媒体中のアルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子の懸濁液のpHの調整に関する上記の酸のような酸又は塩基(例えば水酸化ナトリウム)を第二の水性のスラリーに導入することによって、第二の水性のスラリーのpHは約4〜約10、より典型的には約6〜約8.5のpHに調節される。一実施形態において、pH調節された第二のスラリーは、約20分〜約6時間、より典型的には約20分〜約1時間の時間、続いて周囲温度を超える温度、より典型的には約50℃〜約200℃、更に典型的には約80℃〜約200℃の温度まで加熱される。温度が100℃より高い場合、加熱は圧力容器中で大気圧より高い圧力で行われる。pH調整した第二のスラリーのアルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は、次いで第二のスラリーの水性の媒体から単離される。一実施形態において、第二のスラリーから単離したアルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は水中に再分散され、第三の水性のスラリーを形成し、第三の水性のスラリーは噴霧乾燥される。
【0063】
単離された、若しくは単離され、再分散され、かつ噴霧乾燥されたアルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は、続いて焼成され、望ましいアルミナ又はシリカ被覆したアルミナ生成物を形成する。一実施形態において、アルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は、典型的に400℃〜1100℃の高い温度で約30分以上、より典型的には約1〜約5時間焼成され、アルミナ又はシリカ被覆したアルミナ生成物を形成する。焼成は空気中、又は窒素中で、任意に最高約20%の水蒸気の存在下で行うことができる。特に明記しない限り、本明細書中に開示される特定の焼成状況は、空気中での焼成を指す。
【0064】
一実施形態において、アルミニウム水和物又はシリカ前駆体に接触したアルミニウム水和物の粒子は、1時間以上、より典型的には約2〜約4時間、400℃以上、より典型的には約600〜約1100℃で焼成され、主に大きな直径の細孔(典型的に、細孔直径10nm未満を有する細孔体積分率は、粒子の総細孔体積の15%以下、より典型的には10%以下である)の、高い比細孔体積(典型的に、総細孔体積は1グラム当たり1.5センチメートル(“cm/g”)以上、より典型的には1.7cm/g以上である)を有するアルミナ又はシリカ被覆したアルミナを形成する。一実施形態において、1050℃で2時間焼成後、シリカ被覆したアルミナ粒子は、1.5cm/g以上の総細孔体積を示し、10nm未満の細孔によって寄与される体積分率は粒子の総細孔体積の15%以下、より典型的には10%以下である。他の実施形態において、1050℃で2時間焼成後、シリカ被覆したアルミナ粒子は1.7cm/g以上の総細孔体積を示し、10nm未満の細孔によって寄与される体積部分は粒子の総細孔体積の15%以下、より典型的には10%以下である。表面積、細孔サイズ分布、細孔直径、及び細孔体積はそれぞれ周知技術によって、典型的には窒素吸着によって測定される。
【0065】
一実施形態において、本発明の高い表面積、高い細孔体積の多孔性アルミナは、酸化アルミニウムを含み、1グラム当たり約100〜約500平方メートルの比表面積を有し、900℃で2時間焼成後の総細孔体積が1.2cm
3/g以上であり、ここで、総細孔体積の15%以下は10nm未満の直径を有する細孔によって寄与される。
【0066】
一実施形態において、本発明の硫黄に耐性のある多孔性アルミナは、多孔性アルミナの個々の元素のそれぞれの酸化物(即ち、アルミニウム、シリコン、及び任意のドーパント元素の酸化物)の合計量100質量部につき、個々の元素のそれぞれの酸化物の質量部として表したときに、
約60〜約98質量部の酸化アルミニウム、
約2〜約40質量部の酸化ケイ素、並びに、
任意に、遷移金属酸化物、希土類元素酸化物及びこれらの混合物から選ばれる1種又はそれ以上のドーパントを含む。
【0067】
本発明のアルミナは、任意に、従来のドーパント、例えば遷移金属及び金属酸化物、アルカリ土類金属及び金属酸化物、希土類及び酸化物、並びにこれらの混合物でドープされていてもよい。使用するとき、ドーパントは通常アルミナ100質量部につき、例えば0.1〜20質量部、典型的には1〜15質量部という少量で存在する。当業者にとって周知であるように、そのようなドーパントはアルミナ微粒子で使用され、特定の特性、例えば熱水安定性、摩耗強さ、触媒活性促進、及びこれと同種のものを与える。
【0068】
適切なドーパントは、遷移金属(例えばイットリウム、ジルコニウム、及びチタン)、及びこれらの酸化物、アルカリ土類金属(例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、及びストロンチウム)、及びこれらの酸化物、並びに希土類元素(例えばランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジム)、及びこれらの酸化物を含む。アルミナ又は硫黄に耐性のあるアルミナの水和酸化アルミニウム部分の上記形成の間、ドーパント前駆体(典型的には望ましいドーパントの水溶性の塩)を反応容器に加えることにより、所定のドーパントは、本発明の硫黄に耐性のあるアルミナに典型的に導入される。適切なドーパント前駆体は、例えば、希土類元素の塩化物、希土類元素の硝酸塩、希土類元素アセテート、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オルト硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、ジルコニウム炭酸アンモニウム、塩化チタン、オキシ塩化チタン、酢酸チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、チタンイソプロポキシド、硝酸第一セリウム、硝酸第二セリウム、硫酸第一セリウム、硫酸第二セリウム、硝酸第二セリウムアンモニウム、及びこれらの混合物を含む。
【0069】
一実施形態において、高い表面積、高い細孔体積の本発明の多孔性アルミナは、酸化アルミニウム及び一種又はそれ以上のドーパントを含み、前記アルミナは1グラム当たり約100〜約500平方メートルの比表面積を有し、また、900℃で2時間焼成後の総細孔体積が1.2cm
3/g以上である。ここで総細孔体積の15%以下は10nm未満の直径を有する細孔によって寄与される。
【0070】
一実施形態において、本発明の硫黄に耐性のある多孔性アルミナは、多孔性アルミナの個々の元素のそれぞれの酸化物の合計量100質量部につき個々の元素のそれぞれの酸化物の質量部として表したときに、
約60〜約98質量部の酸化アルミニウム、
約2〜約40質量部の酸化ケイ素、並びに、
遷移金属酸化物、希土類元素酸化物及びこれらの混合物から選ばれる1種又はそれ以上の0より大きい質量部のドーパントを含む。
【0071】
ドーパントは溶媒中のコロイド分散体として導入することができ、溶媒は分散安定化のために更なるイオンを含んでもよい。ドーパントのコロイド懸濁液の良好な安定性を確実にし、アルミナの物体の中でドーパントの高い分散度を得るため、コロイドのサイズは1〜100nmの間であることが望ましい。溶液は、コロイド粒子及びイオン種の形で同時にドーパントを含んでもよい。
【0072】
一実施形態において、ドーパントは、水和したアルミニウム水和物粒子を形成する間、別々のフィード流として、又はアルミニウム前駆体を含むフィードの1つとドーパント前駆体溶液とを混ぜることにより、ドーパント前駆体(典型的にドーパント前駆体の水溶液の形)を反応容器に加えることによって導入される。
【0073】
他の実施形態において、ドーパントは、水和酸化アルミニウム粒子の形成後の反応容器に、ドーパント前駆体(典型的にドーパント前駆体の水溶液の形)を加えることによって導入される。この場合、水和酸化アルミニウム粒子の水性のスラリーのpHは、典型的に、ドーパント前駆体溶液を添加する前に、例えば硝酸、硫酸、又は酢酸等の酸でpH約4〜約9に調節される。続いて、ドーパント前駆体溶液は、継続的な撹拌の下、反応容器に加えられる。この添加が終了した後、典型的に、水酸化アンモニウム又は水酸化ナトリウム等の塩基を添加することによって、pHは約6〜約10までのpHに調節される。
【0074】
一実施形態において、本発明のアルミナ又は硫黄に耐性のあるアルミナは、組成物100質量部を基準として、約1〜約30質量部、典型的には約5〜約20質量部の、希土類元素、Ti、Zr、及びこれらの混合物、より典型的にはLa、Ce、Nd、Zr、Ti、及びこれらの混合物から選択したドーパントを含む。
【0075】
一実施形態において、900℃で2時間焼成後、又はより好ましくは、1050℃で2時間焼成後、本発明の多孔性アルミナは以下を有する:
約100〜約500cm
2/g、より典型的には約150〜約400cm
2/gの比表面積、及び、
1.2cm
3/g以上、より典型的には1.25cm
3/g以上、及び更に典型的には1.3cm
3/g以上の総細孔体積。
ここで:
総細孔体積の50%以下、より典型的には、総細孔体積の40%以下は、20nm未満の直径を有する細孔によって寄与される。
【0076】
一実施形態において、900℃で2時間焼成後、又はより好ましくは、1050℃で2時間焼成後、本発明の多孔性アルミナは以下を有する:
約100〜約500cm
2/g、より典型的には約150〜約400cm
2/gの比表面積、及び、
1.2cm
3/g以上、より典型的には1.25cm
3/g以上、及び更に典型的には1.3cm
3/g以上の総細孔体積。
ここで:
総細孔体積の15%以下、より典型的には総細孔体積の10%以下、及び更に典型的には総細孔体積の6%以上は、10nm未満の直径を有する細孔によって寄与される。
【0077】
一実施形態において、900℃で2時間焼成後、又はより好ましくは1050℃で2時間焼成後、本発明の多孔性アルミナは以下を有する:
約100〜約500cm
2/g、より典型的には約150〜約400cm
2/gの比表面積、及び
1.2cm
3/g以上、より典型的には1.25cm
3/g以上、及び更に典型的には1.3cm
3/g以上の総細孔体積、
ここで:
総細孔体積の50%以下、より典型的には総細孔体積の40%以下は、20nm未満の直径を有する細孔によって寄与され、また、
総細孔体積の15%以下、より典型的には総細孔体積の10%以下、及び更に典型的には総細孔体積の6%以上は、10nm未満の直径を有する細孔によって寄与される。
【0078】
本発明の硫黄に耐性のある実施形態において、結果として生じる生成物は、実質的に全体の表面積の上でシリカ被覆材を有する高い表面積のアルミナ微粒子である。従来の含浸技術によって製造されるこれまでのシリカ処理されたアルミナ生成物とは異なり、結果として生じる本生成物は、その高い表面積及び細孔体積特性を保持し、従って、被覆した本生成物は、細孔閉塞の原因となる細孔のブリッジングを引き起こす沈殿物にはならないことを示している。さらに、シリカ被覆したアルミナ微粒子の赤外スペクトル分析は、未処理のアルミナと比較して、Al−OH結合に関連する吸着ピークの減衰、及びシラノール基の出現を示す。これは、アルミナ微粒子物質の表面上に存在するシリカ被覆材の指標である。
【0079】
硫黄に耐性のあるアルミナを製造する上記に開示した方法は、熱水安定性を保持する一方で、硫黄の吸着に対する抵抗を有する担体生成物を意外にも達成することを見いだした。驚くべきことに、最初にアルミニウム水和物粒子を単離するか、そうでなければアルミニウム水和物粒子を形成及び沈殿工程の残留物(例えばアルカリ金属残留物)から単離することなく、アルミニウム水和物粒子が形成及び沈殿する同じ水性の媒体中でシリカ前駆体とアルミニウム水和物粒子との接触が行われてもよいことが分かった。
【0080】
本発明のアルミナ及び硫黄に耐性のあるアルミナは、少なくとも約20m
2/g、例えば約20〜約500m
2/g、典型的には約75〜400m
2/g、及びより典型的には100〜350m
2/gの高い(BET)表面積を典型的に示す。シリカ被覆したアルミナ微粒子は、少なくとも約0.2cc/g、例えば0.2〜2.5cm
3/g、典型的には0.8〜1.7cm
3/gの細孔体積を典型的に示し、また、50〜1000オングストローム、典型的には100〜300オングストロームの平均細孔直径を典型的に示す。そのような高い表面積の微粒子は貴金属触媒の堆積に十分な表面積を提供し、そして、排気流と触媒を容易に接触させ、有害な生成物からより更に穏やかな放出物質への効率的な触媒転換を提供する。
【0081】
本発明の硫黄に耐性のあるアルミナの実施形態は、硫黄の捕捉に対して良好な耐性を有する。本発明の硫黄に耐性のあるアルミナの実施形態の上のシリカ被覆の均一性及び連続性は、例えばFTIR又はゼータ電位の測定により示すことができ、また、硫黄の捕捉に耐える担体生成物の効果及び効率から推論することができる。
【0082】
本発明のアルミナ又は硫黄に耐性のあるアルミナは、約1〜200マイクロメートル(“μm”)、典型的には10〜100μmの平均粒径を有する(好ましくは)粉体、又は1ミリメートル(“mm”)から10mmの平均粒径を有するビーズの形であってもよい。
代替として、アルミナ微粒子はペレット又は押出物(extradite)(例えば円筒形)の形状とすることができる。
サイズ及び特定の形は、想定される特定の用途により決定される。
【0083】
本発明のアルミナまたは硫黄に耐性のあるアルミナは、特に1〜200μm、より典型的には10〜100μmの粉体の形で、低い表面積の基質上の触媒コーティングとして更に使用することができる。基質構造は、特定の用途のために種々の形態から選択することができる。そのような構造的形態は、モノリス、ハチの巣、ワイヤメッシュ、及びこれと同種のものを含む。基質構造は、耐火性の物質、例えばアルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−酸化マグネシウム−アルミナ、酸化ジルコニウム、ムライト、菫青石、ワイヤメッシュ、及びこれらと同種のものからも通常形成される。金属的なハチの巣形の基質もまた使用可能である。粉体は水中でスラリーにされ、少量の酸(典型的には鉱酸)の添加によって解膠し、続いてミリングを受け、ウォッシュコートの用途に適切な粒子サイズに減少する。基質構造は、例えば基質をスラリーに浸すことによって、ミリングされたスラリーと接触する。例えばエアブローの適用によって過剰な物質が除去され、その後、被覆基質構造を焼成し、本発明の(ウォッシュコート)シリカ被覆した高い表面積のアルミナ微粒子の接着が起こり、基質構造に接着する。
【0084】
貴金属(例えばプラチナ、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物等の通常白金族の金属)は、シリカ被覆したアルミナ微粒子をウォッシュコートする前に、適切な従来の貴金属前駆体(酸性又は塩基性)を使用して、又は、ウォッシュコートした後に、ウォッシュコートされた基質を適切な貴金属前駆体水溶液(酸性又は塩基性のどちらでもよい)に浸すことにより、当業者によく知られた方法によって適用することができる。より典型的には、本発明のアルミナ又は硫黄に耐性のあるアルミナを形成し、次いでこれに対して貴金属を適用し、そして、最後に、アルミナが担持された触媒物質を基質の上へウォッシュコートする。
【0085】
本発明のアルミナ又は硫黄に耐性のあるアルミナと、他の酸化物の担体(アルミナ、酸化マグネシウム、セリア、セリア−酸化ジルコニウム、希土類酸化物−酸化ジルコニウム混合物等)とを混ぜ、基質の上へこれらの生成物をウォッシュコートすることによって、更なる機能性を提供することができる。結果として生じる触媒は、内燃機関の排気ガス系の一部として、単独又は他の物質と共に、容器及びこれと同種のものに直接装填することができる。したがって、排気生成物(通常、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素、酸化窒素、硫黄、硫黄化合物及び硫黄酸化物を含む)は排気システムに通され、貴金属が担持された触媒と接触する。その結果、有毒で有害な排気生成物がより多くの環境的に許容できる物質へ転換される。本発明の担体を用いて形成される触媒を使用する場合、長期の活性期間を有し、かつ、シリカを用いないか、又は従来の共沈若しくは含浸技術から形成したシリカ・アルミナを用いた担体を有する触媒を用いて達成されるよりも、全体の活性が高い触媒系が達成される。
【0086】
本発明のアルミナ硫黄に耐性のあるアルミナ生成物は、貴金属触媒のための担体であって、従来の含浸又は共沈の方法によって形成される同じシリカ含有量を有する担体と比較して強化された硫黄耐性を示す担体を提供することが分かった。軽い(ガソリン)及び中程度の(ディーゼル)重さの燃料を形成する際に使用される石油のフィードは、フィード物質の一部として硫黄及び硫黄を含む化合物(例えばチオフェン及びこれと同種のもの)を含んでいることはよく知られている。硫黄を含む物質を除去するための努力が行われたが、より高分子量(例えばディーゼル燃料)の燃料生成物の流れに関して達成することはますます難しい。したがって、特にディーゼル燃料において、硫黄を含む物質は、炭化水素燃料に存在することが知られている。炭化水素燃料−燃焼エンジンの排気流に存在する硫黄を含む物質は、アルミナ及び特定のドーパントによって吸着され、次に、担体表面にある貴金属を毒することが知られている。本発明のシリカ被覆したアルミナ担体によって達成される硫黄への予想外に高い耐性(吸着の欠如)は、内燃機関(特にディーゼル燃料エンジン)の排気生成物流を効果的に処理するために望ましい触媒の形成を可能にする。
【実施例】
【0087】
以下の例は、請求項に係る発明の特定の具体例として挙げられる。しかしながら、本発明はこの例で述べられる特定の詳細に限られないと解釈すべきである。この例及び明細書の残部における全ての部および割合は、特に明記しない限り重量によるものである。
【0088】
更に、明細書又は請求項で挙げられる任意の数値範囲であって、例えば特定の特性の組、測定単位、条件、物理状態、又は割合を表すものは、引用することによって本明細書中にはっきりと文字通り含まれることを意図し、そうでなければ、任意の範囲内に任意の数値のサブセットを含むそのような範囲内に含まれる任意の数値もそのように記載されている。
[例1並びに比較例C1及びC2]
【0089】
指定しない限り、細孔サイズ分布、細孔体積、細孔直径、及びBET表面積は、窒素吸着技術により与えられる。データは、Micromeretics Tristar 3000装置上で収集される。細孔サイズ分布及び細孔体積データは、P/P0=0.01及びP/P0=0.998の間の91の測定点を使用して収集する。水銀細孔サイズ分布は、0.5psia(0.0035MPa)〜30,000psia(207MPa)の間の103の測定点を用いてMicromeretics Autopore装置の上で収集した。
【0090】
複合酸化物100質量部を基準として、80質量部のAl
2O
3、及び20質量部のSiO
2を含む比較例C1の複合酸化物は、以下の通りに硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、及びケイ酸ナトリウムを使用して作成した。溶液Aは、酸化アルミニウムAl
2O
3として表したときに8.31重量パーセント(“質量%”)の濃度の硫酸アルミニウムの水溶液であった。溶液Bは、酸化アルミニウムAl
2O
3として表したときに24.86質量%の濃度のアルミン酸ナトリウムの水溶液であった。溶液Cは、ケイ素酸化物SiO2として表したときに29.21質量%の濃度のケイ酸ナトリウムの水溶液であった。1リットルの反応器を424gの脱イオン水で満たした。反応器内容物を65℃に加熱し、この温度を実験全体に渡って維持した。
6.02gの溶液Aを反応器に導入し5分以上撹拌した。次いで、溶液Aを更に添加することなく、反応器の内容物を5分間撹拌した。続いて反応器内容物を撹拌しながら、溶液A及びBを反応器に同時にフィードした。この同時のフィードの最初の5分間、溶液A及びBのそれぞれの流量を調節し、スラリーのpHが5分間に3から7.3まで増加した。続いてpHがpH7.3で安定するまで、溶液Bの流量を減らした。pH7.3でpHを安定させ、溶液A及びBを30分間連続的に加えた。pH7.3においてこの30分間の後に、溶液Aのフィードを止め、溶液Bを連続的にフィードし、反応器内容物のpHを増大させた。溶液Aのフィードをやめて10分後、溶液Bのフィードを止めた。その点において、反応器内容物はpH9であり、それまでに総量143gの溶液A及び総量113gの溶液Bを反応器に入れたこととなった。続いて、反応器内容物を連続的に撹拌しながら、34.2gの溶液Cを反応器にフィードした。続いて、ブフナー漏斗で60℃の脱イオン水を用いて濾過、洗浄し、反応器内容物は湿ったフィルタ塊を形成した。洗浄水の体積は、反応器中の水性の媒体の体積に等しかった。水1リットル当たり120gの重炭酸アンモニウムが溶解した溶液を用意し、60℃まで加熱した。湿ったフィルタ塊は、反応器中の水性の媒体の体積と等しい体積の重炭酸アンモニウム溶液を用いて洗浄し、続いて60℃の同じ体積の脱イオン水を用いて洗浄した。結果として生じる湿ったフィルタ塊を、続いて脱イオン水の中に分散し、約10質量%の固体を含むスラリーを得た。続いて、スラリーを乾燥噴霧して、乾燥粉体を得た。続いて、噴霧乾燥した粉体を異なる温度で焼成した。比表面積(“SA”)(1グラム当たりの平方メートル(“m
2/g”)で表される)、細孔体積(1グラム当たりの立方センチメートル(“cm
3/g”)で表される)、及び平均細孔直径(ナノメートル(“nm”)で表される)を、下記の表Iにおいて、最初の焼成温度(摂氏度(“℃”)で表される)及び時間(時間(“h”)で表される)の関数として報告する。
【表1】
【0091】
1050℃で2時間焼成後、続いて比較例C1の複合酸化物をより高い温度で焼成した。比表面積(“SA”、1グラム当たりの平方メートル(“m
2/g”))、細孔体積(1グラム当たりの立方メートル(“cm
3/g”))、及び平均細孔直径(ナノメートル(“nm”))を、2つの異なる二次焼成温度(摂氏度(“℃”))及び時間(時間(“h”))の各々について、下記表2で報告する。1050℃で2時間焼成後の細孔サイズ分布の微分対数プロットを
図1に示す。
【表2】
【0092】
比較例C1のpH6.5における1050℃で2時間焼成した酸化物のゼータ電位が−35mVであることが分かったが、純粋なアルミナについて同じ条件で測定されたゼータ電位は10mV、純粋なシリカのゼータ電位は−43mVであり、これは明らかにアルミナ表面のシリカの表面電荷に対する相当な影響を示す。
【0093】
比較例C2の酸化物組成物は、酸化物としてAl
2O
3/SiO
2を80/20質量%含み、ケイ酸ナトリウムの添加を65℃で行ったこと以外は比較例C1に開示したように調製した。比較例C2の酸化組成物は、噴霧乾燥した粉体の形態で、1050℃で2時間焼成した。焼成した粉体の一部は、1200℃で2時間、2回目の焼成処理を行い、そしてその後、粉体は108m
2/gの比表面積を示した。
【0094】
例1の酸化物組成物は酸化物としてAl
2O
3/SiO
2を80/20質量%含み、溶液A(硫酸アルミニウム)及び溶液B(アルミン酸ナトリウム)を同時に添加する間、反応混合物のpHを33分間4に維持したこと以外は、比較例C2で先に開示したように調製した。続いて、溶液Aの流れを止め、反応混合物のpHが8.5まで増加した。例1の酸化物組成物は、噴霧乾燥した粉体の形態で、1050℃で2時間焼成し、焼成した粉体の一部は1200℃で2時間、2回目の焼成処理を行い、その後、粉体は122m
2/gの比表面積を示した。
【0095】
比表面積(“SA”)(1グラム当たりの平方メートル(“m
2/g”)で表される)、細孔体積(1グラム当たりの立方センチメートル(“cm
3/g”)で表される)、平均細孔直径(ナノメートル(“nm”)で表される)、総細孔体積に対して10nm未満の細孔の体積分率、及び20nm未満の細孔の体積分率を、例1及び比較例C2の酸化物組成物について、下記表3で報告する。
【0096】
1050℃/2hで焼成後の窒素ポロシメトリーで測定した比較例C2の酸化物組成物の細孔サイズ分布を、
図2(積算曲線)及び
図3(対数微分曲線)に示す。1050℃で2時間焼成後の水銀ポロシメトリーで測定した比較例C2の酸化物組成物の細孔サイズ分布を、
図4(積算曲線)及び
図5(対数微分曲線)に示す。
【0097】
1050℃で2時間焼成後の窒素ポロシメトリーで測定した例1の酸化物組成物の細孔サイズ分布を、
図6(積算曲線)及び
図7(微分対数曲線)に示す。1050℃で2時間焼成後の水銀ポロシメトリーで測定した例1の酸化物組成物の細孔サイズ分布を、
図8(積算曲線)及び
図9(対数微分曲線)に示す。
[例2]
【0098】
複合酸化物の100質量部を基準として、100質量部のAl
2O
3を含む例2の複合酸化物は、以下の通りに硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムを用いて作成した。溶液Aは、酸化アルミニウムAl
2O
3として表したときに8.31質量%の濃度の硫酸アルミニウムの水溶液77g、69質量%の濃度の39gの硝酸、及び233gの脱イオン水を混ぜて作成した。溶液Bは、酸化アルミニウムAl
2O
3として表したときに24.86質量%の濃度のアルミン酸ナトリウムの水溶液であった。1リットルの反応器を516gの脱イオン水で満たした。反応器内容物を70℃に加熱し、この温度を全体の実験に渡って維持した。硝酸を反応器に加え、pHを3に調節した。続いて、溶液A及びBを、反応器内容物を撹拌しながら、続いて反応器に同時にフィードした。同時のフィードの最初の5分間、溶液A及びBのそれぞれの流量を調節し、スラリーのpHが5分間に3から5に増加した。続いて、pHがpH5で安定するまで、溶液Bの流量を減らした。pH5でpHを安定させながら、溶液A及びBを30分間連続的に加えた。pH5においてこの30分間の後に溶液Aのフィードを止め、反応器内容物のpHは溶液Bの連続的なフィードにより増加した。溶液Aのフィードを止めて15分後、溶液Bのフィードを止めた。その点において、反応器内容物は9.5のpHを示し、総量350gの溶液A及び総量131gの溶液Bが反応器に入れられたこととなった。反応器内容物は、続いてブフナー漏斗で60℃の脱イオン水を用いて濾過、洗浄し、湿ったフィルタ塊を形成した。洗浄水の体積は、反応器内の水性の媒体の体積の3倍に等しかった。続いて、結果として生じた湿ったフィルタ塊を脱イオン水の中に分散させ、約10質量%の固体を含むスラリーを得た。続いて、スラリーを乾燥噴霧して、乾燥粉体を得た。続いて、噴霧乾燥した粉体を900℃で2時間焼成した。比表面積(“SA”、1グラム当たりの平方メートル(“m
2/g”)で表す)、細孔体積(1グラム当たりの立方センチメートル(“cm
3/g”)で表す)、平均細孔直径(ナノメートル(“nm”)で表す)、及び総細孔体積に対する10nm未満の細孔による寄与を、下記表4に報告する。
【0099】
900℃で2時間焼成後、続いて例2の複合酸化物を1100℃で5時間焼成した。結果として生じる試料の表面積は、82m
2/gであった。
【0100】
900℃で2時間焼成後の窒素ポロシメトリーで測定した例2の酸化物組成物の細孔サイズ分布を、
図10(積算曲線)及び
図11(微分対数カーブ)に示す。900℃で2時間焼成後の例2の酸化物の細孔サイズ分布もまた、
図12(積算曲線)及び
図13(微分曲線)に示すように水銀ポロシメトリーで測定された。微分曲線は、
図12で示すように、細孔サイズ分布の連続スペクトルを7nmと1μmの間で示す。
[例3]
【0101】
複合酸化物100質量部を基準として、96質量部のAl
2O
3及び4質量部のLa
2O
3を含む例2の複合酸化物は、例2で開示するように、溶液Aの水性の硝酸ランタンを添加することにより作成した。噴霧乾燥した粉体を、続いて900℃で2時間焼成した。
比表面積(“SA”、1グラム当たりの平方メートル(“m
2/g”)で表される)、細孔体積(1グラム当たりの立方センチメートル(“cm
3/g”)で表される)、平均細孔直径(ナノメートル(“nm”)で表される)、及び総細孔体積に対する10nmより小さな細孔による寄与を、下記表4で報告する。
【0102】
900℃で2時間焼成後、続いて例3の複合酸化物を1100℃で5時間及び1200℃で5時間焼成した。結果として生じた試料の表面積は、それぞれ115m
2/g及び82m
2/gであった。
【0103】
900℃で2時間焼成後の窒素ポロシメトリーで測定した例3の酸化物組成物の細孔サイズ分布を、
図14(積算曲線)及び
図15(微分対数曲線)に示す。900℃で2時間焼成後の例2の酸化物の細孔サイズ分布もまた、
図16(積算曲線)及び
図17(微分曲線)で示すように水銀ポロシメトリーで測定した。微分曲線は、
図17で示すように、細孔サイズ分布の連続スペクトルを7nmと1μmの間で示す。
[比較例C3−C5]
【0104】
比較例C3(Siral10)の市販の酸化物は、Al
2O
3/SiO
2 90/10質量%の酸化物を含み、283m
2/gの公称比表面積、0.65cm
3/gの総細孔体積、及び8.5nmの平均細孔直径を示す。比較例C3の酸化組成物を、1050℃で2時間焼成した。焼成した粉体の一部は、1200℃で2時間、2回目の焼成処理を行い、その後、粉体は101m
2/gの比表面積を示した。
【0105】
比較例C4の市販の酸化物は、Al
2O
3/SiO
2 70/30質量%の酸化物(Siral30)を含み、466m
2/gの特定の公称比表面積、0.74cm
3/gの総細孔体積、及び5.7nmの平均細孔直径を示す。比較例C4の酸化物組成物を、1050℃で2時間焼成した。焼成した粉体の一部は、1200℃で2時間、2回目の焼成処理を行い、その後、粉体は59m
2/gの比表面積を示した。
【0106】
酸化物としてAl
2O
3/SiO
2を90/10質量%含む比較例C5の酸化物組成物は、下記の通り、米国特許出願公開第2007/019799号明細書で開示された処理に基づいて作成した。48.37gの非ドープのベーマイト・アルミナ(Grace Davidson Grade MI−107、名目上65.1%の酸化物)を、室温で289.6gの脱イオン水の中に分散させ、アルミナのスラリーを形成した。続いて、11.98gのケイ酸ナトリウム(SiO
2として濃度29.21%)の溶液を徐々にこのスラリーに加えた。結果として生じた混合物を95℃に加熱し、30分間この温度を維持した。pHが7.1に減少するまで、硝酸を加えた。続いて、スラリーを80℃まで冷却し、65℃で600mlの重炭酸アンモニウムの溶液で洗浄し、続いて、65℃の脱イオン水で洗浄した。結果として生じた湿った塊を、酸化物として10質量%の濃度で水中に分散させた。このスラリーを乾燥噴霧し、粉体を形成した。噴霧乾燥した粉体の形態である比較例C5の酸化物組成物を、1050℃で2時間焼成した。
【0107】
総細孔体積に対して10nm未満及び20nm未満の細孔によって寄与される体積分率に加えて、N
2ポロシメトリーで測定した焼成した粉体についての比表面積、細孔体積、及び平均細孔直径は、例2及び3並びに比較例C3、C4、及びC5の酸化物組成物について、下記表2で報告する。
【表3】
【表4】