(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973463
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】マスキングストリップ
(51)【国際特許分類】
B05B 15/04 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
B05B15/04 102
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-546355(P2013-546355)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公表番号】特表2014-501171(P2014-501171A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】US2011066364
(87)【国際公開番号】WO2012088214
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】1021983.0
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】キン−チャウ チャン
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ビー.ベイカー
【審査官】
原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0022158(US,A1)
【文献】
特表平09−508576(JP,A)
【文献】
特開2001−172584(JP,A)
【文献】
米国特許第06337127(US,B1)
【文献】
国際公開第02/068556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/00−15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装される第1の基材と第2の基材との間の間隙の内面を遮蔽するためのマスキングストリップであって、
第1の表面及び第2の表面を有する裏材と、
前記裏材から延在し、前記間隙に塗料が流れ込まないように構成された間隙充填材と、を含み、
前記裏材が、前記マスキングストリップが固定される前記間隙の内面から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料で形成されるか、又は該繊維含有材料に貼付される、マスキングストリップ。
【請求項2】
前記間隙充填材が、前記裏材の前記第1の表面又は前記第2の表面から延在する、請求項1に記載のマスキングストリップ。
【請求項3】
前記裏材の前記第2の表面が、前記マスキングストリップを前記間隙の内面に固定する接着剤を有する、請求項1又は2のいずれかに記載のマスキングストリップ。
【請求項4】
前記ストリップが、前記裏材の前記第2の表面に貼付されたスペーサを更に含む、請求項1又は2のいずれかに記載のマスキングストリップ。
【請求項5】
前記スペーサが、前記繊維含有材料で形成される、請求項4に記載のマスキングストリップ。
【請求項6】
前記スペーサが、基層と、カバー層と、を含む複合スペーサである、請求項4に記載のマスキングストリップ。
【請求項7】
前記カバー層が、繊維含有材料である、請求項6に記載のマスキングストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスキングストリップに関し、詳細には、塗装される2つの基材の間の間隙の内面を遮蔽するためのマスキングストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車修理市場では、着色塗料又はクリアラッカーなどの塗料で自動車部品に吹き付け塗装を施す場合、正確かつ滑らかな塗装縁部を実現するために一種のマスキング材料を用いることが一般的である。既存の製品としては、マスキングテープ(3M United Kingdom plcから入手可能なScotch High Performance Masking Tape 3434)及びマスキング発泡体テープ(これも同様に3M United Kingdom plcから入手可能な、Soft Edge Masking Foam Tape)が挙げられる。1つの具体的な用途は、「A」ピラー(フロントガラスと前部ドアとの間の自動車のピラー)、「B」ピラー(前部ドアと後部ドアとの間の自動車のピラー)、「C」ピラー(後部ドアとバックライトとの間の自動車のピラー)、フロントウィング、ボンネット、及び車両ドアなど、2つの自動車部品(1つは固定であり、1つは可動である)の間の間隙の内面を遮蔽することである。自動車の車体に作製される開口部はドア開口部と呼ばれることがあり、少なくとも1つの上述の固定自動車部品、屋根、及びドア枠によって囲まれる。この状況で滑らかな塗装ラインを実現するために、マスキングテープ又は発泡体を2つの部品の間の間隙に位置付け、接着剤を用いて2つの部品の間の間隙の内面の1つに固定する。テープ又は発泡体の縁部は、吹き付け表面に最も近い間隙の上部に位置付ける。滑らかな塗装ラインを実現するには、相当の熟練を要する。塗装ラインの再現性を向上させるには、複数の選択肢を利用できる。第1に、接着剤面にマスキングテープの1つの縁部を折り畳んで、上部において間隙の内面からテープの縁部を持ち上げるように作用するスペーサをもたらすことができる。間隙の上部において非接触領域を実現することにより、マスキングテープの硬縁部に対して塗料又はラッカーの貯留が存在しないため、滑らかな塗装ラインをもたらすことができる。これにより、マスキングテープが接着剤で貼付される固定自動車部品に滑らかな塗装ラインがもたらされる。第2に、間隙充填材を備えるマスキングテープ又は発泡体を用いることができる。この例は、エラストマーで形成された目地材又は間隙充填材を備える、横方向の接着剤シート又は裏材を含むシールストリップに関する、国際公開第2008/023081号に記載されている。目地材は、2つの自動車部品の間の間隙内に位置付けられて間隙を充填し、可動自動車部品によって形成される間隙の内面と接触する。更に、滑らかな塗装ラインをもたらすために、横方向の接着剤シートは、過剰な吹き付けを防止するために盛り上がった間隙の上部に位置付ける。
【0003】
複雑な形状又は小さい間隙(どちらも現代の自動車で見られる機会が増えている)を遮蔽する場合には、スペーサ又は間隙充填材を設けてもなお、巧みにマスキングストリップを貼付する必要があり得る。この点を考慮して、マスキング発泡体テープ及びマスキングストリップで用いられる発泡体材料が連続気泡材料であって、過剰に吹き付けられた塗料又はラッカーがマスキングテープ又はストリップの縁部から吸収できるようにしてよい。この例は、非粘着性発泡体領域に対して塗料が貯留すると、塗料を吸収し、滑らかな塗装ラインをもたらす、少なくとも1つの非粘着性発泡体領域を有するマスキングストリップに関する、国際公開第2006/109093号に記載されている。第2のアプローチは、国際公開第2003/092996号に記載されるように、吸収性縁部コーティングを備えるマスキングテープ材料を提供することである。吸収性縁部材料は、塗料を吸収して、マスキングテープの本体によって塗料が吸収され、テープとテープが固定される表面との間を流れないようにすることを意図しており、そうしなければ、起伏のある塗装ラインがもたらされるであろう。吸収性縁部材料の形成に特に好適なものとして、超吸収性材料が提案される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの解決策がそれぞれ慎重かつ適切に用いられる場合には、可動部品及び/又は固定自動車部品に滑らかな塗装ラインがもたらされるが、吸収性発泡体材料、縁部コーティング、又はスペーサを用いる必要なく、固定自動車部品にこのような滑らかな塗装ラインを繰り返しもたらすことができることは有利であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、塗装される2つの基材の間の間隙の内面を遮蔽するためのマスキングストリップを提供することによりこの代替策を提供することを目的とする。このマスキングストリップは、第1の表面及び第2の表面を有する裏材と、裏材から延在し、間隙に塗料が流れ込まないように構成された間隙充填材と、を含み、裏材は、マスキングストリップが固定される間隙の内面から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料で形成されるか、又はその繊維含有材料に貼付される。
【0006】
間隙の内面から塗料を吸い上げる材料を提供することの利点は、いずれの過剰塗料も、硬縁部をもたらすか、ないしは別の方法で滑らかな塗装ラインの仕上げを損なう可能性のある、マスキングストリップの縁部に対する貯留が発生する見込みがないことである。
【0007】
好ましくは、間隙充填材は裏材の第1の表面又は第2の表面から延在する。
【0008】
裏材の第2の表面は、マスキングストリップを間隙の内面に固定する接着剤を有してよい。
【0009】
マスキングストリップは、裏材の第2の表面に貼付されたスペーサを更に含んでよい。この場合、好ましくは、スペーサは繊維含有材料で形成される。スペーサは、基層と、カバー層と、を含む複合スペーサであってよい。好ましくは、カバー層は繊維含有材料である。
【0010】
好ましくは、繊維含有材料は、天然繊維、セルロース繊維、又は合成繊維のうちの少なくとも1つを含む。繊維含有材料は、紙材、ティッシュ材、織布材料、又は不織布材料のうちの1つを含んでよい。紙材は、好ましくは35〜100gsmの範囲の重量を有する。紙材は、織り目加工されていてよい。ティッシュ材は、10〜35gsmの範囲の重量を有してよい。
【0011】
繊維含有材料は、穿孔され得る。
【0012】
好ましくは、間隙充填材は発泡体材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
ここで本発明を単なる例として、また添付図面を参照して説明する。
【
図1】いずれも自動車部品で形成された、塗装される2つの基材の間の間隙の内面を図示する概略図。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図。
【
図3】本発明の第2の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図。
【
図4】本発明の第3の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図。
【
図5】本発明の第4の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図。
【
図6】間隙内の適所にある、本発明の第1の実施形態によるマスキングストリップを示す概略断面図。
【
図7】間隙内の適所にある、本発明の第2の実施形態によるマスキングストリップを示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、異なるアプローチが採用されている。吸収性発泡体材料又はスペーサを単独で用いて固定自動車部品に滑らかな塗装ラインをもたらすのではなく、繊維含有材料を用いて、マスキングストリップが固定される間隙の内面から塗料を吸い上げる。内面から塗料を吸い上げることにより、マスキングストリップの縁部に沿った塗料の貯留が回避され、これによって滑らかな塗装縁部がもたらされる。マスキングストリップが固定されない間隙の内面でも確実に滑らかな塗装縁部を実現するには、間隙充填材を用いる。以下の説明における「塗装」とは、ベースコート(自動車で見られる着色塗装層)及びクリアコート(ラッカーの別名でも知られる)を含むことを理解されたい。また、滑らかな塗装縁部とは、感触が滑らかであり、塗装コーティングの縁部に指の爪が引っかからない縁部である。
【0015】
図1は、いずれも自動車部品で形成された、塗装される2つの基材の間の間隙の内面を図示する概略図である。間隙1は、固定自動車部品2と可動自動車部品3との間に形成される。図示の例では、固定自動車部品2は「B」ピラーであり、可動自動車部品3はドアである。固定自動車部品2は、塗装される第1の基材4を示し、可動自動車部品3は、塗装される第2の基材5を示す。間隙1は、2つの内面を含む。第1の内面6は固定自動車部品2の内面で形成され、第2の内面7は可動自動車部品3の内面で形成される。可動自動車部品3の内面は、可動自動車部品3の外殻を形成する材料の厚さによって事実上決定される、転換点Tを有する曲面を含む。間隙1の上部8は、塗装される第1の基材4及び第2の基材5と一致するものとして画定される。塗装ラインP
1は、可動自動車部品3の第2の基材5の塗装領域と非塗装領域との間に形成される。非塗装領域は、可動自動車部品3の下面に概ね相当し、塗装ラインは、通常、転換点Tに隣接して位置するか、又は転換点Tに位置する。第2の塗装ラインP
2は固定自動車部品2で形成され、その位置は、下記で詳述される間隙1内のマスキングストリップの位置によって決定される。第2の塗装ラインP2の正確な位置は、自動車のモデル(間隙1及び固定自動車部品2の形状)及びマスキングストリップの位置に応じて様々である。しかし、この第2の塗装ラインP
2もまた、できる限り滑らかである必要がある。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図である。マスキングストリップ9は、第1の表面11及び第2の表面12を有する裏材10と、裏材10の第1の表面11から延在する間隙充填材13と、を含む。間隙充填材13は、接着剤14によって裏材に接着される。間隙充填材13は裏材10から延在して、ちょうど可動自動車部品3の転換点Tのところで、又はこの転換点Tの領域内で間隙1の第2の内面7の一部と全く接触しないか、又は最小限接触するようにできる。したがって、可動自動車部品3に滑らかな塗装ラインP
1をもたらす。これは、間隙1に塗料が流れ込まないように間隙充填材13を確実に構成することによって実現する。裏材10は、マスキングストリップ9が固定される間隙1の内面6から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料であり、14%の伸長率を有する、Neenah Gessner GmbH(Otto−von−Steinbeisstr.14b,83052 Bruckmuhl,Germany)から入手可能な2層のSG 54クレープ紙で形成される。裏材10の第2の表面12は、マスキングストリップを間隙1の第1の内面6に固定する接着剤15を有する。
【0017】
図3は、本発明の第2の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図である。マスキングストリップ16は、第1の表面18及び第2の表面19を有する裏材17と、裏材17の第1の表面18から延在する間隙充填材20と、を含む。間隙充填材20は、接着剤層21を用いて裏材17に接着される。間隙充填材20は裏材17から延在して、塗装ラインP
1が形成され、したがって可動自動車部品3に滑らかな塗装ラインをもたらすように、ちょうど可動自動車部品3の転換点Tのところで、又はこの転換点Tの領域内で間隙1の第2の内面7の一部と全く接触しないか、又は最小限接触するようにできる。これは、間隙1に塗料が流れ込まないように確実に間隙充填材20を構成することによって実現する。裏材18には、間隙1の第1の内面6にマスキングストリップ16を固定するのに用いられる接着剤層22が設けられる。スペーサ23は、3M 300 LSE Laminating Adhesiveで形成された接着剤層22aを用いて、裏材17の第2の表面19に貼付される。スペーサ23は、マスキングストリップ16が固定される間隙1の内面6から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料である、80gsmの無地の事務用紙で作製される。スペーサ23は接着剤22aによって裏材17に固定されており、したがって、裏材17は繊維含有材料を有する。
【0018】
図4は、本発明の第3の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図である。マスキングストリップ24は、第1の表面26及び第2の表面27を有する裏材25と、裏材25の第1の表面26から延在する間隙充填材28と、を含む。間隙充填材28は、接着剤層29を用いて裏材25に接着される。間隙充填材28は裏材25から延在して、ちょうど可動自動車部品3の転換点Tのところで、又はこの転換点Tの領域内で間隙1の第2の内面7の一部と全く接触しないか、又は最小限接触するようにできる。したがって、可動自動車部品3に滑らかな塗装ラインP
1をもたらす。これは、間隙1に塗料が流れ込まないように間隙充填材13を確実に構成することによって実現する。裏材25には、間隙1の第1の内面6にマスキングストリップ24を固定するのに用いられる接着剤層30aが設けられる。発泡体材料ベース31aと、繊維含有材料で形成されたカバー層31bと、を含み、接着剤層31cによって互いに接合された、複合スペーサ31は、更に接着剤層30bを用いて裏材25の第2の表面27に貼付される。カバー層31bは、不織布材料、つまり、滑らかな仕上げで、ポリプロピレン繊維で形成されたスパンボンドメルトブロー繊維性不織布材料で作製される。この材料の重量は、約20gsmであった。これは、マスキングストリップ24が固定される間隙1の内面6から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料である。複合スペーサ31は接着剤層30bによって裏材25に固定されており、したがって、裏材25は繊維含有材料を有する。
【0019】
図5は、本発明の第3の実施形態によるマスキングストリップの概略断面図である。マスキングストリップ32は、第1の表面34及び第2の表面35を有する裏材33と、裏材33の第1の表面34から延在する間隙充填材36と、を含む。間隙充填材36は、間隙1に塗料が流れ込まないように構成される。間隙充填材36は裏材33から延在して、塗装ラインP
1が形成され、したがって可動自動車部品3に滑らかな塗装ラインをもたらすように、ちょうど可動自動車部品3の転換点Tのところで、又はこの転換点Tの領域内で間隙1の第2の内面7の一部と全く接触しないか、又は最小限接触するようにできる。これは、間隙1に塗料が流れ込まないように間隙充填材13を確実に構成することによって実現する。裏材33には、間隙1の第1の内面6にマスキングストリップ32を固定するのに用いられる接着剤層38aが設けられる。発泡体材料ベース39aと、繊維含有材料で形成されたカバー層39bと、を含む複合スペーサ39は、第2の接着剤層38bを用いて裏材33の第2の表面35に貼付される。ベース39a及びカバー層39bは、接着剤層39cによって接合される。カバー層39bは、15gsmの重量を有し、マスキングストリップ32が固定される間隙1の内面6から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料である、ティッシュ材で作製される。この実施形態の2つのバージョン、つまり、市販のティッシュ製品を用いた第1のバージョンと市販の吸収性ティッシュナプキン製品を用いた第2のバージョンを作製した。複合スペーサ39は接着剤層38bによって裏材33に固定されており、したがって、裏材33は繊維含有材料を有する。
【0020】
図6は、間隙内の適所にある、本発明の第1の実施形態によるマスキングストリップを示す断面図である。接着剤層15は、裏材10の最上縁部が間隙1の上部8に位置付けられ、したがって、第1の基材4と同一平面にあるように、間隙1の第1の内面6と接触して配置される。間隙充填材13は、塗装ラインP
1が形成されるように、ちょうど可動自動車部品3の転換点Tのところで、又はこの転換点Tの領域内で間隙1の第2の内面7の一部と全く接触しないか、又は最小限接触するように転換点Tの下に位置付けられる。矢印Sで示す塗料の吹き付け方向は、塗料が裏材10の最上縁部で貯留するが、クレープ紙内の繊維に沿った液体の毛管現象により、クレープ紙によって吸い上げられることを示す。これにより、裏材10の上部領域に塗装ラインP
2を形成できるようになる。
【0021】
図7は、間隙内の適所にある、本発明の第2、第3、及び第4の実施形態によるマスキングストリップを示す断面図である。接着剤層22、30a、38aは、裏材17、25、33の最上縁部が間隙1の上部8に位置付けられるように、間隙1の第1の内面6と接触して配置される。また、スペーサ23、31、39は、間隙1の上部8に位置付けられる。間隙充填材20、28、36は、塗装ラインP
1が形成されるように、ちょうど可動自動車部品3の転換点Tにおいて、又はこの転換点Tの領域内で間隙1の第2の内面7の一部と全く接触しないか、又は最小限接触するように転換点Tの下に位置付けられる。矢印Sで示す塗料の吹き付け方向は、塗料が裏材17、25、33の最上縁部で貯留するが、用いられる材料内の繊維に沿った液体の毛管現象により、無地の事務用紙、不織布、又はティッシュによって吸い上げられることを示す。これにより、スペーサ23、31、39の上部領域に塗装ラインP
2を形成できるようになる。
【0022】
上述の本発明の全ての実施形態は、実験室規模で作製し、2007 Vauxhall Astraの3ドアハッチバックの前部ドア開口部で試験を実施した。使用中は、ドアを開放し、固定自動車部品(この例では、「B」ピラー、屋根、ドア枠を含んだ)の内面にマスキングストリップを貼付した。固定自動車パネルに隣接した間隙の上部にスペーサを位置付け、ドアを閉止し、間隙充填材に間隙を充填させた。クリアコート(P190−6990に硬化剤P210−872及び希釈剤P850−1694を添加したもの、全てPPG Industries(UK)Limited(Needham Road Stowmarket Suffolk IP14 2AD)から入手可能)を車両に吹き付けた。本発明の4実施形態の全てが、試験を実施した固定自動車部品に滑らかな塗装ラインをもたらした。
【0023】
上述の実施形態のうちの2つでは、繊維含有材料として紙材を用いた。クレープ紙の場合、紙材は織り目加工されている。好適な紙材としては、無地又は着色の事務用紙、クレープ紙、ティッシュペーパー、及び軽量カード用紙が挙げられる。あるいは、紙材は重量によって選択してよく、好ましくは、35〜100gsmの範囲の重量を有する。上述の第4の実施形態では、軽量ティッシュ材を用いた。かかる材料は、好ましくは、10〜35gsmの範囲の重量を有するように選択してよい。上述の第3の実施形態で用いた不織布材料の代わりに、織物などの織布材料を繊維含有材料として用いてよい。いずれの場合にも、好適な材料は、マスキングストリップの使用中又は製造中に、過剰なリンティング、又は他の分裂若しくは剥離挙動を示さないものである。
【0024】
好ましくは、繊維含有材料は、天然繊維、セルロース繊維、又は合成繊維のうちの少なくとも1つを含む。好適な天然繊維には、絹、綿、黄麻、亜麻、ラミー、サイザル、及び大麻などの植物由来繊維及び動物由来繊維が挙げられ、好適なセルロース繊維には、レーヨンなどの再生セルロース及び純セルロースが挙げられ、好適な合成繊維には、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、及びポリオレフィンなどの押出繊維が挙げられる。繊維含有材料の吸い上げ挙動を向上させるために、これが穿孔されてよい。スペーサ23、31、39は、好ましくは0.6mm〜1.1mmの範囲の厚さを有する。スペーサ23、31、39の高さは、好ましくは3mm〜8mmである。
【0025】
間隙充填材13、20、28、36は、好ましくは、連続又は独立気泡発泡体材料などの発泡体材料で形成されるが、好ましくはポリウレタン発泡体などの独立気泡発泡体材料、例えば、CALIGEN FOAM LTD(Broad Oak,Accrington,Lancashire,BB5 2BS,UK)から入手可能なCaligen X4200AM(登録商標)である。間隙充填材13、20、28、36は、裏材10、17、25、33から延在する位置において圧着されてよい。裏材17、25、33が繊維含有材料で形成されない場合、連続又は独立気泡材料などの発泡体材料で形成されることも好ましい。間隙充填材13、20、28、36は、
図2、3、4、及び5で平行になるように、裏材10、17、25、33から延在する。しかし、その代わりに、間隙充填材13、20、28、36は、好ましくは90°以下である角度αで裏材10、17、25、33から延在してよい。間隙充填材13、20、28、36の厚さは、好ましくは3mm〜8mmの範囲内である。間隙充填材13、20、28、36の長さ(裏材10、17、25、33に近位の位置と遠位の位置との間の距離)は、好ましくは5mm〜22mmの範囲である。また、裏材10、17、25、33は、使用する際、その上端部が転換点Tから傾斜するように、はす縁を有することが望ましい場合がある。その代わりに、裏材10、17、25、33は、同効果を得るために、屈曲するか、捻転していてよい。
【0026】
裏材が発泡体材料である本発明の実施形態では、ポリエチレン発泡体材料など(例えば、SEKISUI ALVEO AG(Queens Chambers,Eleanors Cross,Dunstable,Bedfordshire,LU6 1SU,UK)から入手可能なAveolite TA1001(登録商標))の可撓性、圧縮性、及び/又は形状適合性材料のストリップであることが好ましい。間隙充填材13、20、28、36及び裏材10、17、25、33の両方が発泡体材料である場合、一方は、他方よりも高密度であるように選択されてよく、例えば、裏材10、17、25、33を形成する発泡体材料は、間隙充填材13、20、28、36を形成する発泡体材料よりも高密度であってよい。
【0027】
本発明の上述の実施形態では、2部構成のマスキングストリップ(別個の間隙充填材13、20、28、36及び裏材10、17、25、33を用いる)を用いる。この場合、間隙充填材は、実施形態で前述したように、裏材の第1の表面又は第2の表面のいずれかから延在してよい。しかし、裏材10、17、25、33及び間隙充填材13、20、28、36は、発泡体材料又は繊維含有材料(本発明の第1の実施形態の場合)など単一の材料ストリップで一体型として形成されてよい。
【0028】
上述の本発明の実施形態は、ドア開口部分を形成する任意の固定自動車パネルと可動自動車パネルとの間に形成された間隙の遮蔽に用いるのに好適である。ドアはフレーム付きでも、フレーム無しでもよく、間隙充填材13、20、28、36は、大きい間隙又は小さい間隙を充填する寸法であってよいか、又は自身の上に折り畳まれたり、成形されたりして、大きい間隙内又は小さい間隙内のいずれかに容易に位置付けられ、維持される圧縮体をもたらしてよい。
【0029】
発泡体材料で形成された場合、裏材17、25、33及び間隙充填材13、20、28、36は、好ましくは方形断面を有する細長い物品であるが、各断面は、三角形、楕円形、又は多角形であってよい。上述の各実施形態では、間隙充填材13、20、28、36は、裏材10、17、25、33の第1の表面11、18、26、34から延在する。しかし、その代わりに、間隙充填材13、20、28、36は、裏材10、17、25、33の第2の表面12、19、27、35から延在してよい。この場合、間隙充填材13、20、28、36は、折り畳まれるか、ないしは別の方法で接着剤層15、22、30a、38bと反対方向に屈曲してもよい。裏材10、17、25、33、間隙充填材13、20、28、36、スペーサ23、31、39、及び複合スペーサ31、31a、31b、39、39a、39bの部分の結合には、任意の好適な接着剤を用いてよい。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[14]に記載する。
[1]
塗装される第1の基材と第2の基材との間の間隙の内面を遮蔽するためのマスキングストリップであって、
第1の表面及び第2の表面を有する裏材と、
前記裏材から延在し、前記間隙に塗料が流れ込まないように構成された間隙充填材と、を含み、
前記裏材が、前記マスキングストリップが固定される前記間隙の内面から塗料を吸い上げるように作用する繊維含有材料で形成されるか、又は該繊維含有材料に貼付される、マスキングストリップ。
[2]
前記間隙充填材が、前記裏材の前記第1の表面又は前記第2の表面から延在する、項目1に記載のマスキングストリップ。
[3]
前記裏材の前記第2の表面が、前記マスキングストリップを前記間隙の内面に固定する接着剤を有する、項目1又は2に記載のマスキングストリップ。
[4]
前記ストリップが、前記裏材の前記第2の表面に貼付されたスペーサを更に含む、項目1又は2に記載のマスキングストリップ。
[5]
前記スペーサが、前記繊維含有材料で形成される、項目4に記載のマスキングストリップ。
[6]
前記スペーサが、基層と、カバー層と、を含む複合スペーサである、項目4に記載のマスキングストリップ。
[7]
前記カバー層が、繊維含有材料である、項目6に記載のマスキングストリップ。
[8]
前記繊維含有材料が、天然繊維、セルロース繊維、又は合成繊維のうちの少なくとも1つを含む、項目1〜7のいずれか一項に記載のマスキングストリップ。
[9]
前記繊維含有材料が、紙材、ティッシュ材、織布材料、又は不織布材料のうちの1つを含む、項目1〜8のいずれか一項に記載のマスキングストリップ。
[10]
前記紙材が、35〜100gsmの重量を有する、項目9に記載のマスキングストリップ。
[11]
前記紙材が、織り目加工されている、項目9に記載のマスキングストリップ。
[12]
前記ティッシュ材が、10〜35gsmの範囲の重量を有する、項目9に記載のマスキングストリップ。
[13]
前記繊維含有材料が穿孔される、項目1〜12のいずれか一項に記載のマスキングストリップ。
[14]
前記間隙充填材が、発泡体材料を含む、項目1〜13のいずれか一項に記載のマスキングストリップ。