【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、活性成分としてシルデナフィル遊離塩基を(実質的に溶解させず)分散させた高分子溶液を乾燥して製造することを特徴とするシルデナフィル遊離塩基含有フィルムの製造方法を提供する。
【0010】
まず、本発明は、フィルム剤形に、市販されているクエン酸シルデナフィルを使用すれば、水に溶解するため、本発明のように分散(懸濁)させて製造するには適切ではなく、口の内で苦味を呈する一方、シルデナフィル遊離塩基は水に殆ど溶解せず本発明で目的とすることを達成でき、さらに、口の内でも無味であるため、フィルム剤形に適するという知見に基づく。
【0011】
また、本発明は、シルデナフィル遊離塩基を実質的に溶解させず懸濁(分散)させた高分子溶液でフィルムを製造すれば、シルデナフィル遊離塩基の含量が高くてもフィルムとしての所望の物性が得られるという驚くべき知見に基づく。
【0012】
本発明において、「実質的に溶解させず懸濁させた」とは、総シルデナフィル遊離塩基の15重量%以下が溶解したことを意味し、望ましくは10重量%以下、より望ましくは7重量%以下、さらに望ましくは4重量%以下、最も望ましくは2重量%以下が溶解したことを意味する。
【0013】
本発明によるフィルム剤形において、シルデナフィル遊離塩基は実質的に溶解しないため、フィルムを形成する高分子と相互作用しなくなり、それにより高含量のシルデナフィル遊離塩基が含まれても形成されたフィルムが好適な物性を有すると推測されるが、本発明がこのような理論に限定されることはない。
【0014】
本発明において、前記フィルムはストリップ(strip)、口腔内溶解フィルム(orally dissolving film)、口腔内崩壊フィルム(orally disintegrating film)などで称され、舌上、口腔の粘膜、舌下など口腔内に入れて溶かして服用する剤形を言う。本発明によるフィルム剤形は、水なく服用できるという長所がある。
【0015】
望ましくは、本発明の製造方法は、粒度分布において10%に該当する粒径(D10)が10μm以上であり、90%に該当する粒径(D90)が150μm以下のシルデナフィル遊離塩基を使用する。より望ましくは、粒度分布においてD10が8μm以上であり、D90が100μm以下のシルデナフィル遊離塩基を使用し、さらに望ましくは粒度分布においてD10が5μm以上であり、D90が80μm以下のシルデナフィル遊離塩基を使用する。
【0016】
本発明の製造方法では、一定粒径を有するシルデナフィル遊離塩基のみを使用することで、シルデナフィル遊離塩基をフィルム製造液内で安定的に分散及び懸濁させることができ、これにより低粘度高分子を用いたフィルム製造液でも物理的な安定性を確保することで工程性を向上させることができる。また、製造過程における効果の外にも、驚くべきことに、このような粒度分布を有するシルデナフィル遊離塩基を使用することで、フィルム状に製造した後、フィルムに良好な性状及び物性を与えることができる。
【0017】
例えば、上記の範囲より大きい粒度分布を有するシルデナフィル遊離塩基を使用する場合、製造されたフィルムに粒子が観察されて表面が粗くなり、製造過程で沈殿し易くてシルデナフィル遊離塩基が不均一に分布する恐れがある。
【0018】
より具体的に、低粘度フィルム製造液で粒度分布のD90が150μmを超過する場合、製造されたフィルムから粒子が目視で観察され、4,000ないし8,000cpの粘度を有するフィルム製造液内では、シルデナフィル遊離塩基が1日以内で沈殿するなど、物理的安定性が低い。
【0019】
これを解消するため、すなわち製造過程中のシルデナフィル遊離塩基の懸濁安定性を維持するため、フィルム製造液の粘度を高めなければならないが、次のような問題が生じる可能性が高い。第一、フィルム製造液の塗布工程時、高い粘度による塗布密度の不均一が生じ、結果的に各フィルムユニット毎に密度(重量)及び含量の不均一が生じる。第二、フィルムの製造において必須な工程であると言える脱気工程を行い難くなる。第三、高い粘度を解決するため溶媒の追加的な使用が不可避であるが、溶媒を添加するほどシルデナフィル遊離塩基の分散安全性が再び低下するだけでなく、溶媒量の増加に伴う塗布厚さの増加により、塗布後の乾燥でも物理的な安定性が低下するという問題が生じ得る。また、このような塗布厚さの増加により乾燥工程が円滑に行われず、塗布厚さの増加は製造されたフィルムの性状にクラック(crack)、皺などの問題を引き起こし得る。
【0020】
逆に、粒度分布のD10が5μm未満の場合、シルデナフィル遊離塩基の溶解度が急激に増加する傾向があるため、分散(懸濁)させて製造するという本発明の目的を達成できず、シルデナフィル遊離塩基が凝集する恐れがあり、吸収パターン(例えば、Cmax、Tmax)が予測不可能になり得る。
【0021】
本発明による上記のような製造方法において、シルデナフィル遊離塩基が溶解しないように溶媒の90重量%以上、より望ましくは95重量%以上、さらに望ましくは98重量%以上が水であることが望ましい。
【0022】
より望ましくは、本発明は、高分子及び可塑剤が溶解しており、溶媒の90重量%以上が水である溶液に、粒度分布においてD10が5μm以上であってD90が80μm以下のシルデナフィル遊離塩基を分散させ、該溶液を乾燥して製造し、乾燥したフィルム総重量対比高分子の含量は20ないし45重量%であり、可塑剤の含量は4ないし20重量%であり、シルデナフィル遊離塩基の含量は40ないし60重量%であることを特徴とするシルデナフィル遊離塩基含有フィルムの製造方法を提供する。
【0023】
本発明において、フィルムを形成するために使用される高分子としては、その粘度が2重量%の水溶液で測定して15cp以下(望ましくは1ないし15cp)の高分子を使用することが本発明の目的上より望ましい。すなわち、このような高分子を使用する場合、上述したように、製造工程上、また形成されたフィルムの物性面でより望ましいだけでなく、口腔内で迅速に崩壊するという長所がある。このような15cp以下の高分子の例としては、プルラン、低粘度ヒドロキシプロピルセルロース、低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどがより望ましい。
【0024】
ただし、本発明の他の目的上(例えば、フィルムの強度増加)、2重量%の水溶液で測定してその粘度が50cp以上(望ましくは50ないし10,000cp)の高粘度高分子を(前記15cp以下の高分子とともに)少量使用することがより望ましい。この場合、50cp以上の高粘度高分子の含量は乾燥後のフィルム総重量対比20重量%以下であることが望ましく、10重量%以下であることがより望ましく、5重量%以下であることがさらに望ましく、3重量%以下であることが最も望ましい。このような50cp以上の高分子の例としては、キサンタンガム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどがより望ましい。
【0025】
本発明においてフィルムを形成するために使用される高分子としては、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ポビドン、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸、カラギーナン、ポリエチレンオキサイド、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、またはこれらの混合物が挙げられる。本発明の目的上、特に活性成分であるシルデナフィル遊離塩基との両立可能性(compatibility)の面でプルラン(pμllμlan)が望ましく、プルラン、アルギン酸プロピレングリコール、及びキサンタンガムの混合物が最も望ましい。
【0026】
使用された高分子の粘度及び含量を考慮し、且つ、本発明の目的を考慮すれば、フィルム製造液の粘度は4,000ないし8,000cpであることが望ましく、5,000ないし8,000cpであることがより望ましく、5,000ないし6,000cpであることがさらに望ましい。
【0027】
本発明によるフィルム製造液に含まれる可塑剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0028】
望ましくは、本発明においてフィルム製造液は界面活性剤及び/または分散化剤をさらに含む。本発明の製造方法において界面活性剤及び/または分散化剤を効率的に添加することで、単純懸濁された分散溶液に比べて高分子鎖の間にシルデナフィル遊離塩基がより安定的に分散でき、フィルム製造液内の活性成分の物理的な安定性を確保することができる。すなわち、界面活性剤及び/または分散化剤を使用することで、層分離、及び疎水性である活性成分粒子間の凝集を低減させることができる。界面活性剤及び/または分散化剤は、それぞれフィルム製造液の総重量対比0.1ないし2重量%の範囲で添加されることが望ましい。
【0029】
前記界面活性剤及び/または分散化剤としては、ポリソルベート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンステアレート、ドクセートナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、またはこれらの混合物を使用することができ、本発明の目的上、特に使用された他の成分との相互作用の面でポリソルベート80が最も望ましい。
【0030】
フィルム製造液を塗布するとき、フィルムの厚さ、乾燥速度、フィルム製造液の粘度など多くの面を考慮し、フィルム製造液に使用される溶媒の量は乾燥後に残留するフィルム構成物質の1重量部対比0.7ないし4重量部であることが望ましく、1.3ないし3.3重量部であることがより望ましい。
【0031】
したがって、本発明は、プルランをフィルムを形成する主な高分子として使用して形成したフィルム内に、粒度分布において10%に該当する粒径(D10)が8μm以上であり、90%に該当する粒径(D90)が100μm以下のシルデナフィル遊離塩基が均一に分散して含まれていることを特徴とするシルデナフィル遊離塩基含有フィルムを提供する。
【0032】
望ましくは、前記シルデナフィル遊離塩基含有フィルムは、可塑剤としてグリセリンを含み、界面活性剤(望ましくは、ポリソルベート80)及び/または分散化剤(望ましくは、ドクセートナトリウム)をさらに含むことがより望ましい。
【0033】
本発明によるシルデナフィル遊離塩基含有フィルムの厚さは、40ないし200μmであることが望ましく、60ないし150μmであることがより望ましく、80ないし120μmであることがさらに望ましい。