特許第5973547号(P5973547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973547
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ポリウレタンを含む2コートバリア系
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20160809BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20160809BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20160809BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20160809BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160809BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20160809BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20160809BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B05D7/24 302T
   C09D175/04
   B32B27/40
   C08G18/83
   C09D7/12
   C09D5/02
   B65D65/40 D
   B05D1/36 Z
【請求項の数】19
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-501716(P2014-501716)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-516764(P2014-516764A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】GB2012050689
(87)【国際公開番号】WO2012131362
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】61/468,649
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/469,914
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506089020
【氏名又は名称】サン・ケミカル・ベスローテン・ベンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サーファラズ・アクター・カーン
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−115776(JP,A)
【文献】 特開2001−098047(JP,A)
【文献】 特開2011−148306(JP,A)
【文献】 特開2008−080534(JP,A)
【文献】 特開2000−000931(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/040965(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0154111(US,A1)
【文献】 特開2012−139942(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/129032(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00−43/00
C08G18/00−18/87; 71/00− 71/04
C09D 1/00−10/00;101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属カチオンを含む二次コーティングを一次コーティングの上に適用するステップを含み、前記一次コーティングがポリウレタン樹脂を含む、バリア層の調製方法であって、
前記二次コーティングの多価金属カチオンが前記一次コーティングのポリウレタン樹脂の酸基と架橋しているか、または前記二次コーティングの多価金属カチオンと前記一次コーティングのポリウレタン樹脂のウレタン基の主鎖との間で二次キレート化が生じている、方法
【請求項2】
前記一次コーティングが水分散性ポリウレタン樹脂または有機溶媒可溶性ポリウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一次コーティングが前記ポリウレタン樹脂および中和剤の組合せを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法に用いるための2コートバリア系であって、以下の:
a.ポリウレタン樹脂を含む一次コーティング;および
b.多価金属カチオン架橋剤を含む二次コーティング
を包含する2コートバリア系。
【請求項5】
前記一次コーティングが水性または水混和性溶媒中のポリウレタン樹脂の分散液であるか、あるいは前記一次コーティングが有機溶媒中のポリウレタン樹脂の溶液である、請求項4に記載の2コートバリア系。
【請求項6】
前記一次コーティングが水性または水混和性溶媒中の中和ポリウレタン樹脂の分散液である、請求項5に記載の2コートバリア系。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂の少なくとも10重量%がウレタン基、および存在する場合には尿素基で構成される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の2コートバリア系。
【請求項8】
ポリウレタン樹脂が、ジイソシアネートと、C2−10ポリオールおよび/または350以下の分子量(Mr)を有するポリオールから選択される1以上のポリオールとの反応生成物である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の2コートバリア系。
【請求項9】
前記1つ以上のポリオールがポリヒドロキシ酸を含む、請求項8に記載の2コートバリア系。
【請求項10】
前記ポリウレタン樹脂が酸基を含む、請求項4〜9のいずれか一項に記載の2コートバリア系。
【請求項11】
前記一次コーティングが12g/m以下のコーティング重量で12μm厚コロナ表面処理二軸配向PET皮膜に適用され、前記二次コーティングが前記一次コーティング上に適用される場合、90%RHおよび23℃で、8cm/m/日以下の酸素透過率(OTR)をもたらすか、および/または、前記一次コーティングが12g/m以下のコーティング重量で12μm厚コロナ表面処理二軸配向PET皮膜に適用され、前記二次コーティングが前記一次コーティング上に適用される場合、90%RHおよび38℃で、15g/m/日以下の水蒸気透過率(MVTR)をもたらす、請求項4〜10のいずれか一項に記載の2コートバリア系。
【請求項12】
前記一次および二次コーティングの全固形分の10重量%以下が無機層状充填剤材料である、請求項4〜11のいずれか一項に記載の2コートバリア系。
【請求項13】
前記ポリウレタン樹脂の少なくとも10重量%がウレタン基、および存在する場合には尿素基で構成され、および/または、
ポリウレタン樹脂が、ジイソシアネートと、C2−10ポリオールおよび/または350以下の分子量(Mr)を有するポリオールから選択される1以上のポリオールとの反応生成物であり、および/または、
前記1つ以上のポリオールがポリヒドロキシ酸を含み、および/または、
前記ポリウレタン樹脂が酸基を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1、2、3、および13のいずれか一項に記載の一次コーティングのポリウレタン樹脂および請求項1、2、3、および13のいずれか一項に記載の二次コーティングの多価金属カチオンの反応生成物またはキレート化生成物を含む、バリア層。
【請求項15】
支持体上に請求項14に記載の前記バリア層を含む、バリア材。
【請求項16】
前記ポリウレタン樹脂のコーティング重量が12g/m以下であり、90%RHおよび23℃で、8cm/m/日以下の酸素透過率(OTR)をもたらすか、および/または、前記ポリウレタン樹脂のコーティング重量が12g/m以下であり、90%RHおよび38℃で、15g/m/日以下の水蒸気透過率(MVTR)をもたらす、請求項14に記載のバリア層または請求項15に記載のバリア材。
【請求項17】
請求項14に記載のバリア層を含む層状皮膜、または該バリア層を組入れるパッケージ材、または請求項15のバリア材であって、
前記バリア層の5重量%未満が無機層状充填剤材料である、層状皮膜、パッケージ材、またはバリア材。
【請求項18】
請求項14に記載のバリア層を含む層状皮膜、または該バリア層を組入れるパッケージ材、または請求項15のバリア材であって、
前記バリア層の固形分の2重量%以下が無機層状充填剤材料である、層状皮膜、パッケージ材、またはバリア材。
【請求項19】
請求項14に記載のバリア層を含む層状皮膜、または該バリア層を組入れるパッケージ材、または請求項15のバリア材であって、
前記バリア層が無機層状充填剤材料を全く含まない、層状皮膜、パッケージ材、またはバリア材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の材料、特に食品および医薬品のための包装として用いられる皮膜を被覆し、バリア特性を付与し得るバリアコーティングに関する。バリアコーティングは、例えば、接着的に形成される積層体の形成に有用であり得る。本発明のバリアコーティングは、水蒸気を含めた気体の通過を遮断する能力を有するのが有益であり、このようなものとして、包装に用いるために特に有用であり得るが、この場合、包装への気体の進入または包装からの気体の流出の防止が望ましい。コーティングは、有益には、特に高相対湿度環境中で、有効な気体および/または水蒸気バリアを提供する。
【背景技術】
【0002】
合成プラスチック材は、取扱いからの、および湿度からの保護を必要とする食品およびその他の材料の包装のために、長い間用いられてきた。しかしながら、近年、さらに、多数の食品およびその他の傷つき易い材料が大気中の酸素およびその他の気体から保護されることにより利益を得る、と理解されるようになってきた。気体、蒸気、香り等の透過を低減するかまたは抑制するよう意図されるバリア皮膜および包装材は、広範に記載されている。一般的バリア組成物としては、ポリエステル、PVDC、アクリル系ポリマー、ポリアミド等が挙げられる。PVDC被覆皮膜は広く用いられ、高相対湿度でも酸素および水蒸気に対して優れたバリア特性を示し、それにより、そうでなければ貧気体バリア特性を有する一連の基礎皮膜の気体バリアを改良する。
【0003】
基礎皮膜は、ポリプロピレン、ナイロンの、またはポリエチレンテレフタレート(PET)およびセロファン等の二軸伸長性皮膜を包含し得る。しばしば、これらの支持体は、他の皮膜で積層され、気体の脱出または進入に対して保護するために、種々の食品を包んだり、詰め物をするために用いられ得る。金属化支持体も、それらの優れた気体バリアのために包装材として持ちいれられてきたが、しかしながら、欠点は、高価であること、そしてそれらが柔軟性に乏しく、これがバリア金属層の破損を生じて、そしてほとんど積層構造の中間層として利用される。
【0004】
PVDCの場合、これらの包装材は、家庭からの一般家庭廃棄物として処分される。残念ながら、焼却されると、それらは毒性廃棄物および有害ガスを出す。重大であるのは塩素含有副産物で、これは高発癌性である。したがって、他のバリアポリマーへの移行が所望される。ポリビニルアルコール、ならびにエチレンビニルアルコールコポリマーのようなコポリマーは、優れた酸素バリア性能を有するが、しかしながら、これは周囲相対湿度に大きく依存している。高相対湿度でのバリア性能は、添加物、架橋剤、例えばシラン、多価金属カチオンおよび板状充填剤の組入れにより改良され得るが、しかし約75%相対湿度より上での性能は通常は減少される。
【0005】
周囲温度および相対湿度の典型的条件下で食品を保護するために、バリアコーティングは、例えば90%RHおよび23℃で<10cc m/日の酸素透過率(OTR);ならびに90%RHおよび38℃で<10gm m/日の水蒸気透過率(MVTR)を提供すべきである(包装内部の空気を改質するためにしばしば用いられる他の気体、例えば二酸化炭素も、重要である)。これらのコーティングは、表面コーティングとして用いられ得るし、あるいは例えば食品包装用途のための多層積層構造の一部として含まれ得る。
【0006】
近年、気体バリア特性を増強するための板状のまたは平板様の充填剤を含む気体バリアコーティングが開発されてきた。このような板状充填剤は、典型的には、無機薄層状材料であって、層化無機材料とも呼ばれ、一般的に、高アスペクト比(すなわち、材料の単一「シート」の長さと厚みとの間の比)、例えばその剥離形態で、約20より大きい、例えば20〜10,000のアスペクト比を有する。一般に用いられる無機積層材料は、約50より大きい、例えば約100より大きいアスペクト比を有する。無機積層材料としては、ナノ粒子、特にナノ粒子粘土が挙げられる。ナノ粒子は、1つの寸法がナノメートル範囲の、すなわち100nm未満の粒子である。板状充填剤として用いられるナノ粒子は、典型的には、100nm未満の最大厚、例えば50nm未満の最大厚、例えば20nm未満の最大厚を有する。一般に用いられる層化無機材料の例としては、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、カオリン、マイカ、バーミキュライト、珪藻土、フーラー土、焼成ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸ナトリウムおよびケイ酸マグネシウムが挙げられる。このような無機積層材料の市販例は、クロイサイトNa+(Southern Clayから入手可能)、ベントンND(Elementisから入手可能)、ミクロライト963およびソマシフME100である。板状(高アスペクト比を意味する)微粒子、例えば粘土は、通常は気体分子のためのより曲がりくねった小道を作ってバリアコーティングを貫通することにより、バリア作用を増大する、ということは、気体バリアコーティングの処方における経験者に周知である。これらの粒子は、通常は、ナノ粒子として分類されており、これは、特にそれらの毒性学ならびに食物包装構成成分に関する適合性に関して、一般に多大な注意を引いている。さらに、気体バリア特性における改良がしばしば観察される一方で、積層体結合強度はしばしば低減される。
【0007】
ポリウレタンは、印刷、コーティング等に長年用いられてきた。包装の転換で、一般的に4つの型のポリマーが今日用いられている。
・第一は、ジイソシアネートおよび長鎖ジオール/トリオール(例えば、PPG1000、1500、2000;またはPTMO1000、2000等)を基礎にした低数平均分子量(5000〜25000)ポリウレタン「付加物」であって、これは有機溶媒に可溶性である。この型のポリマーは、それ自体、乾燥皮膜を形成せず、より脆い樹脂、例えばニトロセルロースまたはプロピオン酸酢酸セルロースをより堅く可塑化して、より良好な接着および柔軟性を形成される皮膜に与える。
・第二の部類は、有機溶媒に可溶性の弾性ポリウレタンであって、通常は、ジイソシアネートと、堅いおよび柔軟なセグメント領域を付与するために選択されるポリオールとの組合せを基礎にしており、これは、ポリマーを乾燥皮膜形成物にし、典型的には、積層体用インク用途のために最小限に改質された型で用いられる。溶媒可溶性ポリウレタンの主鎖中に酸基を組入れる必要はなく、または実際、組入れるよう実行されず、そしてその改質は、今日まで、水性系中での安定性を獲得するという目的のためにのみ用いられてきた。
・第三の部類は、水性ポリウレタンである。水中にポリウレタンを分散するためには、有用なポリウレタンポリマーは水に不溶性であるため、分散メカニズムを組入れる必要がある。これを達成するための最も一般的な方法は、中和可能な酸基またはその他のアニオン性親水性基を組入れることによる。市販の水溶性ポリウレタンは、しばしば、アミン、例えばトリエチルアミンで中和されるが、これは、カルボキシル基の中和を助長して、鎖伸長中の分散を手助けする。水性ポリウレタン分散液は、乾燥を遅らせることが判明し、そして上部空間分析のガスクロマトグラフィーによる印刷皮膜の分析時に、保持トリエチルアミンが10ppbを上回って検出された。許容可能な特定移行限度は50ppbに増大されると予期されるが、しかしこの限度は、より高い皮膜重量およびより速いプレス速度で十分に超過され得る。このアミンを他の揮発性アミンと置換することは可能であるが、このようなコーティングの乾燥速度は、典型的には、溶媒可溶性ポリウレタンより遅く、これは、コーティング速度および生産出力にとって重要である。
・第四の部類は、立体的安定化ポリウレタンであって、これは、水中で利用可能であり、それらは印刷およびコーティング操作に適合されない。
【0008】
バリア用途のためのポリウレタンの使用はここ15年で加速してきており、いくつかの会社、例えばPPG、MitsubishiおよびMitsuiならびにその他の会社はすべて、開発済みバリアポリウレタンを有すると報告した。しかしながら、これらの系、例えばWPB 341(Mitsui)の評価後、性能は有望であるが、しかしそれらは、表面プリントのようなまたは積層体構造における高湿度条件下で、高い気体および水蒸気バリアを示すことができない、ということが判明した。ポリウレタン樹脂コーティングを用いて良好な気体および/または水分バリア特性を達成するためには、コーティング組成物中に無機充填剤を含み、例えば金属酸化物層で基礎皮膜の表面を処理するか、または金属化皮膜を使用することが必要であった。
【0009】
米国特許公報第2005/0084686号(Mitsui)および欧州特許公報第1,674,529(Mitsui and Futamura)ならびに米国特許第6,569,533号(Mitsui)は、分散ポリウレタン樹脂および層化無機材料を含む水性気体バリアコーティングの例である。水溶性ポリウレタン分散液は、有機溶媒可溶性ポリウレタンプレポリマーから調製され、これは、酸分散基、例えばカルボン酸基を含む。プレポリマーは、有機溶媒、例えばメチルエチルケトンまたはアセトン中でイソシアネート、ポリオール、ポリヒドロキシ酸を反応させることにより調製される。プレポリマーは、次に、乳化され、ジアミンまたはその他の鎖伸長剤と反応させられて、水溶性コーティング組成物を形成する。米国特許第2005/0084686 A1号およびEP 1 674 529 A1の分散ポリウレタン樹脂は、25〜60重量%のウレタンおよび尿素基濃度、ならびに5〜100mgKOH/gの酸値を有する。1−コート系は、分散ポリウレタン、剥離無機充填剤、例えば合成マイカ ME100またはモンモリロナイトおよびポリアミン化合物またはシランカップリング剤を用いて調製される。1−コート系は、表面コートとして、または積層体構造内に、高気体バリアを提供すると報告されている。あらゆるME100またはモンモリロナイトを伴わないポリウレタンは、例えば食品包装のための気体または水蒸気バリアとして、またはPVDCの適切な代替物として不適切である。
【0010】
米国特許公報第2008/0070043号(Toray)は、(A)ポリマー、例えばポリウレタン、および(B)有機化合物、例えば尿素を含む気体バリア樹脂組成物を報告する((A)および(B)はともに、活性水素を有する官能基、および/または異種原子を有する極性官能基を含有する)。良好な気体水蒸気バリア特性を達成するためには、無機層、例えば金属酸化物層、例えばアルミナ蒸着表面が、気体バリア樹脂組成物の下層の基礎皮膜に適用される必要がある。
【0011】
多価金属カチオンは、多層コーティング系において、ポリウレタン含有コーティングの上方または下方で、in situで同一コーティング層内でポリウレタンとして、または別個のコーティングとして、ポリウレタンとともに広範に利用されてきた。これらのコーティングにおいて、金属カチオンの機能は、ポリオールまたはポリアミンまたはその組合せとポリイソシアネートの硬化反応を開始して、特異的特性、例えば硬化または光沢を生じさせて、硬化時間を加速することである。別個のコーティングとして用いられる多価金属カチオンも、ポリウレタンの硬度を改良することが報告されている。米国特許第7,655,718号(Ecolab Inc.)は、イソシアネートおよびポリオールからのポリウレタンの形成を開始するかまたは強化するために金属カチオンを用いる一例である。その文書は、例えば、ポリオールまたはポリアミンおよびポリイソシアネートを含む自己硬化性ポリウレタン前駆体組成物に炭酸アンモニウム亜鉛を付加することにより、床コーティングにおけるポリウレタンの効果を開始するかまたは強化するための亜鉛カチオン塩開始剤のしようを記載する。代替的には、炭酸亜鉛またはポリウレタン硬化のためのその他の開始剤は、イソシアネートを含有しない下塗り中に存在し得るが、これは、ポリウレタンを含有するものとは別個のコートである。米国特許第7,655,718号のポリウレタンは、酸官能基を含有しない。
【0012】
米国特許第5,912,298号(Yuho Chemicals Inc.)および米国特許第5,319,018号(Rohm and Hass)は、1−コートコーティング系として用いるための酸含有ポリマーおよび金属カチオン架橋剤を含む床コーティング組成物を報告するが、この場合、ポリマーおよび架橋剤は支持体への適用前に混合される。
【0013】
酸官能基を含む反応性ポリマーおよび金属カチオン架橋剤の両方を含む1−コート系は、相対的の遅く反応することを要し、そうでなければ、適用前にコーティングのゲル化が起こる。急速硬化が望ましいプリンティングおよびコーティング組成物により適用される包装におけるバリア層として緩徐反応性組成物を用いることは、しばしば実用的でない。さらに、一旦混合されると、コーティング組成物は、ゲル化が起きる前に限定可使時間を有する。したがって、2−パック系としてコーティング組成物が供給される必要があるが、この場合、酸官能基を含む反応性ポリマーおよび金属カチオン架橋剤は、コーティング組成物のバッチが調製される時点まで、別個に保持される。余分量のコーティング組成物を調製する必要がある場合、2−パック系に関連した有意量の消耗がしばしば認められるが、その残りを、後で用いるために保存しておくことはできない。WO2010/129028 A1(Inmat)は、それによりコーティングが、(a)第一水性分散液として分散アニオン性官能基化マトリックス樹脂;(b)分散板状無機充填剤を含み、任意に1つ以上の添加物を含有する第二水性分散液;(c)上記第一または第二水性分散液のうちの少なくとも1つに付加される多価金属カチオン架橋剤;ならびに(d)第一および第二水性分散液を混合して、1−コート複合系を形成することを包含する1−コート系を開示する。WO2005/093000 A1(PPG)は、メタ置換芳香族材料の少なくとも30重量%を含むポリウレタンの水溶性分散液を含むバリアコーティングを開示する。バリアコーティング組成物は、コーティングを熱硬化性にさせる架橋剤を含み得る。適切な架橋剤は、カルボジイミド、アミノプラスト、アジリジン、炭酸アンモニウム亜鉛/ジルコニウムおよびイソシアネートを包含すると報告されている。被覆皮膜上の良好なバリア特性は、無機充填剤、例えばバーミキュライト、マイカ、粘土、例えばミクロライト923および963の使用により付与される。
【0014】
欧州特許公報第2,172,500号(Mitsubishi)は、ヒドロキシル基を有する活性水素化合物を含む1−コートポリウレタン樹脂組成物を開示する。樹脂組成物は、メチレン基の酸化反応を促進して酸素吸収機能を獲得するために遷移金属カチオンを含み得る。
【0015】
多価金属イオンを含む組成物で、酸基を含むポリマーを包含する気体バリアコーティングを処理することは、バリアコーティングの特性を増強するために従来用いられてきた。しかしながら、板状無機充填剤は、良好なバリア性能を達成するために必要とされている。例えば、WO2010/129032 A1(Inmat)は、マトリックス樹脂および板状充填剤を含む気体バリア皮膜を開示する。生成皮膜は、次に、多価金属カチオン架橋剤で表面処理されて、湿度(これは、潜在的にバリア性能を低減し得る)の作用に対してバリア皮膜を安定化する。マトリックス樹脂は、酸基の塩を含む水乳化性ポリマーである。WO 2010/129032 A1の開示は主にスルホポリエステルの使用に関するが、しかしポリウレタンを含めて広範囲の考え得るポリマーが記述されている。米国特許公報第2010/0136350号A1号(Kureha)は、層(A)(ポリカルボン酸ポリマー、およびケイ素含有化合物(シランカップリング剤由来)を包含する);ならびに層(B)(多価金属化合物、例えば亜鉛化合物を包含する)を有する気体バリア多層構造を開示する。多価金属カチオンがポリカルボン酸ポリマー上に被覆される2コート系は、気体バリアを提供することが報告されている。しかしながら、気体バリアは、一次コートの一部としてポリカルボン酸ポリマーに付加されるシランカップリング剤、例えばテトラメトキシシランまたはアミノプロピルトリメトキシシランの存在下で十分に達成されるに過ぎない。シランカップリング剤が存在しない場合、第二コートとしての多価金属カチオンの存在下でさえ、気体バリアは低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許公報第2005/0084686号A1
【特許文献2】欧州特許公報第1,674,529号A1
【特許文献3】米国特許第6,569,533号B1
【特許文献4】米国特許公報第2008/0070043号A1
【特許文献5】米国特許第7,655,718号B2
【特許文献6】米国特許第5,912,298号
【特許文献7】米国特許第5,319,018号
【特許文献8】WO2010/129028 A1
【特許文献9】WO2005/093000 A1
【特許文献10】欧州特許公報第2,172,500号A1
【特許文献11】WO2010/129032 A1
【特許文献12】米国特許公報第2010/0136350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、上述した課題を有さずに、優れた気体および水蒸気バリア性を有する気体および水蒸気バリア系が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)ポリウレタンを含有する一次コート;および(2)多価金属カチオンまたは他のリンカーを含有する二次コートを含めた2−コート気体および水蒸気バリア系において、2つのコーティングは相乗作用を生じる、ということを、本発明人等は見出した。ポリウレタン含有コーティングのバリア特性は、多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含有する二次コーティングの存在により増強される。優れた気体および水蒸気バリアは、有益には、低皮膜重量で、典型的にはバリア特性を高めるために用いられる無機薄層材充填剤を必要とせずに達成され得る。有益には、ポリウレタンは、例えば、ポリウレタンの主鎖中に組入れられる酸基を含む。酸基は、適切な架橋剤、例えば多価金属カチオンとの反応のための官能基として利用され得る、ということが判明している。架橋は、無機薄層材を含むことを必要とせずに、良好な気体および水蒸気バリア特性を示すコーティングを生じる。バリアコーティングの新規の調製方法であって、ポリウレタン樹脂を含むコーティング組成物が支持体に適用されて一次コーティング層を提供する方法を、本発明人等はさらに考案した。その後、架橋剤、例えば多価金属カチオンを含む二次コーティング組成物が、一時コーティングの上に適用される。ポリウレタン樹脂は、有益には、架橋剤のキレート化のための鋳型を形成し、これが2−コート・コート系のバリア特性を増強する。ポリウレタンは、水性分散液として、または有機溶媒中の溶液として適用され得る。
【0019】
第一の態様において、本発明は、ポリウレタンを含む一次コーティングおよび多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含む二次コーティングを含む2−コートバリア系を提供する。有益には、一次コーティングは、水中のポリウレタンの分散液または水混和性溶媒を含有する水性混合物である。典型的には、水中分散液または水性混合物は、中和ポリウレタン樹脂の分散液である。任意に、一次コーティングは、中和剤を含む。代替的には、本発明の第一の態様の2−コートバリア系は、以下の:有機溶媒中のポリウレタン樹脂の溶液を含む一次コーティング;および多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含む二次コーティングを包含し得る。例えば、本発明の第一の態様の2−コートバリア系は、以下の:水性または水混和性溶媒中のポリウレタンの分散液、あるいは有機溶媒中のポリウレタンの溶液を含む一次コーティング、ならびに多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含む二次コーティングを包含し得る。有益には、ポリウレタンの少なくとも10重量%がウレタン(−NH−C(O)−O−)基、存在する場合には尿素(−NH−C(O)−NH−)基で構成される。有益には、ポリウレタン樹脂は、例えばポリウレタン主鎖に付着されるペンダント酸基として、酸性官能基を含む。本発明の第一の態様の2−コート系は、有益には、一次コーティングが12g/m以下のコーティング重量で12μm厚コロナ表面処理二軸配向PET皮膜のような支持体に適用される場合、90%RHおよび23℃で、8cm/m/日以下の酸素透過率(OTR)を、および/または90%RHおよび38℃で、15g/m/日以下の水蒸気透過率(MVTR)をもたらす。
【0020】
第二の態様では、本発明は、バリア層の調製方法であって、多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含むコーティング組成物をポリウレタンを含むコーティングの上に適用するステップを包含する方法を提供する。有益には、ポリウレタンの少なくとも10重量%がウレタン基、存在する場合には尿素基で構成される。有益には、ポリウレタンは、酸性官能基を含む。ポリウレタンは、有益には、水分散性ポリウレタン樹脂、および/または溶媒可溶性ポリウレタン樹脂である。本発明の第二の態様の方法は、例えば、第一の態様の2−コートバリア系を用い、多価金属カチオンを含む二次コーティングは、支持体上の一次コーティングの上に適用される。本発明の第二の態様の方法は、例えば、水分散性または溶媒可溶性ポリウレタンのようなポリウレタン樹脂を含むコーティングのバリア特性を増強するために用いられ得る。本発明の第二の態様の方法は、任意に、支持体の上に本発明の第一の態様の一次コーティングを適用し、任意に、コーティング組成物を硬化するというさらなるステップを包含し得る。例えば、本発明の第二の態様の方法は、水性または水混和性溶媒中のポリウレタンの分散液、または有機溶媒中のポリウレタン樹脂の溶液を、支持体上に適用して、ポリウレタン含有コーティングを形成する、というステップをさらに包含し得る。
【0021】
第三の態様では、本発明は、ポリウレタン樹脂と、多価金属カチオンまたは他の架橋剤の組合せの生成物を含むバリア層を提供する。例えば本発明は、水分散性ポリウレタン(ここで、水分散性ポリウレタンの少なくとも10重量%がウレタン基、そして存在する場合には尿素基で構成される)と多価金属カチオンの反応生成物を組み合わせる;あるいは酸性官能基を含有する溶媒可溶性分散性ポリウレタンと多価金属カチオンの反応生成物を組合せるバリア層を提供する。本発明の第三の態様のバリア層は、例えば、本発明の第一の態様の2−コートバリア系から調製され得るし、あるいは本発明の第二の態様の方法に従って調製され得る。本発明の第三の態様のバリア層中に存在するポリウレタン樹脂は、有益には、本発明の第一の態様に関して定義されたものと同じである。
【0022】
第四の態様では、本発明は、支持体、例えば高分子皮膜上のポリウレタン樹脂を含むバリア材料を提供する。本発明の第四の態様のバリア材中に存在するバリア層は、例えば本発明の第三の態様のバリア層であり得る。有益には、バリア層は、無機薄層充填剤材料を実質的に含まず、例えば無機薄層充填剤材料は約5重量%未満である。バリア材は、例えば積層体中に包含され得る。本発明の第四の態様のバリア材は、例えば包装材中に、例えば積層体中に組み入れられ得る。
【0023】
第五の態様では、本発明は、本発明の第一の態様の2−コートバリア系の一次コーティングとして用いるのに適したコーティング組成物を提供する。本発明の第五の態様のコーティング組成物は、有益には、有機溶媒中の、酸性官能基を含むポリウレタン樹脂の溶液を含む。コーティング組成物は、任意に、可塑剤、付加的樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定化剤、ブロッキング防止剤、皮膜形成剤、粘着剤および接着促進剤のうちの1つ以上、好ましくは少なくとも1つをさらに含む。
【0024】
第六の態様では、本発明は、本発明の第一の態様で定義されたようなポリウレタンを含むバリア層のバリア特性を増強するための多価金属カチオンの使用であって、多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含むコーティング組成物を、ポリウレタン樹脂を含むコーティング層上に適用するステップを包含する使用を提供する。
【0025】
第七の態様では、本発明は、式 A/(B.C)>2:
(式中、A=コーティング層に関してg/m/日で、23℃で90%RHでの酸素透過率;
B=コーティング層上に適用される多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含むバリア層に関してg/m/日で、23℃で90%RHでの酸素透過率;ならびに
C=コーティング層のg/mでのコーティング重量(乾燥))
に従って、支持体上に適用されるポリウレタン樹脂を含むコーティング層のバリア特性を増強するための系を提供する。
【0026】
良好なバリア特性を有するバリア層を得るために、本発明の系に、無機層状充填剤材料、例えば粘土を付加する必要はない、ということが判明している。如何なる理論にも縛られずに仮定すると、ポリマー網状構造内の自由体積は、ポリウレタンの架橋と、ポリウレタンの主鎖への多価金属カチオンのキレート化との組合せ作用により、有意に低減される。本発明のバリア層では、貫通分子は、曲がりくねった経路に沿ってポリウレタン/多価金属カチオン網状構造を介して拡散を強行されるが、これが、本発明の目的のために、コーティング気体および水分透過性を有意に低減する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[ポリウレタン]
「ポリウレタン」という用語は、主鎖内の多数のウレタン(−NH−C(O)−O−)結合、任意に主鎖中の尿素結合(NH−C(O)−NH−)を含むポリマーを指す。ウレタン結合のほかに尿素結合を含むポリウレタンは、時として、「ポリウレタン尿素」と当該技術分野で呼ばれる。「ポリウレタン」という用語は、本明細書中で用いる場合、一般的に、ポリウレタンおよびポリウレタン尿素の両方を包含する。典型的には、尿素結合の数は、存在する場合、本発明のポリウレタン中のウレタン結合のすうより少ない。本発明のポリウレタンは、いくつかの実施形態では尿素結合を含まないことがある。
【0028】
有益には、本発明の第一の態様および第二の態様のコーティング中に存在するポリウレタンの少なくとも10重量%は、ウレタン基、そして存在する場合は尿素基で構成される。典型的には、総ウレタンおよび尿素基は、ポリウレタンの20〜65重量%を構成する。有益には、本発明のポリウレタン樹脂の20〜45重量%、特に本発明のポリウレタン樹脂の25〜40重量%は、ウレタンおよび尿素基で構成される。本明細書中に記載されるウレタンおよび尿素基の比率を有するポリウレタン樹脂は、金属カチオン架橋剤と迅速に反応する、ということが判明している。したがって、それらは、本発明の2−コート系に用いるのに適しており、上記のポリウレタン樹脂を含むコーティング層の適用直後に架橋が起こる。これに対比して、ポリウレタンおよび架橋剤が適用前に併合される従来技術の2−パックコーティング系で用いられるポリウレタン樹脂の反応は、非常に遅い。
【0029】
好ましくは、ポリウレタンは、水分散性または溶媒可溶性である。水分散性ポリウレタンは、中和されると、水または水混和性溶媒中の安定な分散液を、特に水中の安定分散液を生じるポリウレタン樹脂である。水混和性溶媒は、溶媒の配合物、例えば極性有機溶媒、例えばアルコール、特にメタノール、エタノールおよびプロパノールの配合物であり得る。水混和性溶媒の配合物は、有益には、水を含む。好ましくは水混和性溶媒は、水および少なくとも1つの水混和性溶媒を含む水性混合物である。例えば、水混和性溶媒は、水およびアルコール、例えばエタノールの混合物であり得る。有益には、本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、25℃で、水混和性溶媒中で少なくとも5g/Lのレベルで安定分散液を生成する。好ましくは、少なくとも5g/Lの水分散性ポリウレタン樹脂が、25℃で水中の安定分散液を生成し、例えば少なくとも20g/Lの水分散性ポリウレタン樹脂は、25℃で水中の安定分散液を生成する。ポリウレタンが、少なくとも7日間、連続相中に分散したままである場合、分散液は安定であるとみなされる。分散液は、好ましくは、連続相として水性または水混和性溶媒を、分散相としてポリウレタンを有するコロイドである。分散液は、ポリウレタン分散相が液体である場合は乳濁液であり、またはポリウレタン分散相が固体である場合はゾルであり得る。
【0030】
溶媒可溶性ポリウレタン樹脂は、有機溶媒または有機溶媒、例えばケトン、エステル、アルコールおよびその混合物の配合物中に溶解する樹脂である。典型的には、溶媒可溶性ポリウレタン樹脂は、水中に混和性でない有機溶媒中に溶解する。好ましくは溶媒可溶性ポリウレタン樹脂は、メチルエチルケトン、またはメチルエチルケトンおよび酢酸エチルの混合物、例えばメチルエチルケトンと酢酸エチルの1:1混合物中で可溶性である。有益には、本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、25℃で、有機溶媒または有機溶媒の配合物中で、少なくとも5g/Lの溶解度を有する。好ましくは、本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、25℃で、1:1のメチルエチルケトン/酢酸エチル中で、少なくとも5g/Lの溶解度を、例えば1:1のメチルエチルケトン/酢酸エチル中で、少なくとも20g/Lの溶解度を有する。本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、典型的には、25℃で、1:1のメチルエチルケトン/酢酸エチル中で、100g/L以上の溶解度を、例えば、25℃で、1:1のメチルエチルケトン/酢酸エチル中で、約400〜約500g/Lまたはそれ以上の溶解度を有する。
【0031】
本発明で用いられるポリウレタンポリマーは、典型的には、例えば、ポリウレタン鎖上のペンダント基として、ポリマーの主鎖上に酸基を組入れる。不活性気体および水蒸気バリア特性を有する、酸官能基、例えばペンダントカルボキシレート、スルホネートおよびホスホネート基を保有する主鎖を有する任意のポリウレタンが利用され得る。酸基は、有益には、架橋剤、特に多価金属カチオンとの反応のための官能基として利用され得る。本発明のポリウレタン樹脂中に存在するペンダント酸性基は、遊離酸として、または塩の形態で、カルボン酸基、スルホン酸基およびホスホン酸基、特にカルボキシル基から選択され得る。水分散性ポリウレタンでは、任意の酸性基は、好ましくは中和され、塩の形態で存在する。ペンダント酸性官能基として、好ましくはカルボキシレート基として、カルボン酸基を含むポリウレタン樹脂は、本発明のコーティングに用いるのに特に適していることが判明している。
【0032】
好ましくは、溶媒可溶性ポリウレタンは、例えばポリウレタン主鎖に付着されるペンダント基として、酸性官能基を含む。酸基が溶媒可溶性ポリウレタンの主鎖中に組入れられる場合、それらは適切な架橋剤、例えば多価金属カチオンとの反応のための官能基として利用され得る、ということを本発明人等は見出した。
【0033】
水中のポリウレタン樹脂の分散度を増大するために、ポリマー主鎖上に存在する酸性基は中和され得る。本発明の水分散性ポリウレタン樹脂、例えば水溶液中に存在するものは、典型的には、中和樹脂である。典型的には、酸性基の少なくとも80%が中和され、塩形態として存在する。有益には、実質的にすべての酸基が塩形態であり、例えば少なくとも90%、特に少なくとも95%は塩形態である。ポリウレタンは、任意に、金属塩形態の酸基、例えば1族金属塩、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム塩、あるいはアミン塩、例えばトリエチルアミンまたはアンモニウム塩を包含し得る。
【0034】
本発明で用いられるポリウレタンの数平均分子量(M)は、典型的には、約800〜約1000000、例えば約800〜約200000、特に約800〜約100000の範囲である。
【0035】
典型的には、本発明のポリウレタンは、2〜140mgKOH/gの酸価を有する。有益には、ポリウレタンの酸価は、少なくとも約5、例えば少なくとも約10、例えば少なくとも約15、特に少なくとも約16mgKOH/gである。有益には、ポリウレタンの酸価は、約100以下、例えば約70以下、例えば60以下、特に50以下、さらに特に約30mgKOH/g以下である。例えばポリウレタンの酸価は、10〜70mgKOH/g、特に約15〜約30mgKOH/gの範囲である。酸価は、典型的には、ASTM D974を用いて測定される。本発明で用いられるポリウレタンの酸価は、水分散性がポリウレタンに付与され得る範囲から選択される。
【0036】
[ポリウレタンの調製]
ポリウレタン樹脂の主要構成成分は、当該技術分野で既知の任意の方法に従って、例えばイソシアネートをポリオールと、任意にアミン化合物と反応させることにより、例えば加熱により(これらに限定されない)、生成され得る。反応混合物は、典型的には、極性基および/または酸性基をポリウレタン主鎖中に組入れさせるヒドロキシル基のほかに、官能基を含む機能性ポリオールを包含する。ポリウレタンが水中に分散可能であるために、反応混合物は、典型的には、ポリウレタンの水分散性を増大する分散構成成分を含む。分散構成成分は、典型的には、機能性ポリオール、例えばポリヒドロキシ酸であって、これは、極性官能基、例えば酸性官能基をポリウレタン中に導入させ、それによりポリマーの極性を増強する。ポリウレタンが架橋反応に参加するために、反応混合物は、有益には、反応性架橋構成成分を含む。典型的には、酸性官能基がポリウレタン中に組入れられて、例えば多価金属カチオンとの架橋反応に参加する基を提供する。架橋構成成分は、典型的にはポリヒドロキシ酸であるが、しかし反応性基を含む他のポリオールまたはポリアミンが架橋構成成分として用いられ得る。好ましくは、分散構成成分および/または架橋構成成分は、酸性官能基をポリマー中に組入れさせる。代替的には、酸性官能基を有さないポリウレタンは、例えば遮蔽酸性官能基からの保護基の除去により、例えばエステルの加水分解により、挿入される酸性官能基を有するよう修飾され得る。反応混合物中のポリヒドロキシ酸、すなわち、酸性官能基を含むポリオールの使用は、ポリウレタン中に酸基を導入し、それによりその極性を増大し、および/または架橋反応に参加し得る反応性基を提供する特に有効な方法であることが判明した。
【0037】
ポリウレタン樹脂は、所望のNCO当量が達成されるまで、例えば約0.076モル当量のイソシアネート値が達成されるまで、例えば(A)イソシアネートを(B)ポリヒドロキシ酸と組合せることにより生成され得る。反応混合物は、任意に、(C)ポリオール構成成分および/または(D)鎖伸長剤をさらに含み得る。鎖伸長剤の例としては、アミン、例えばジアミンが挙げられる。非反応NCO基は、鎖伸長剤とのさらなる反応を可能にするために、保持され得る。本発明のポリウレタン樹脂は、例えば、以下の:(A)ポリイソシアネート化合物;(B)ポリヒドロキシ酸;および(C)ポリオール化合物の反応により、調製され得る。ポリオール化合物(C)は、ヒドロキシル基のほかに官能基を含むポリオールを包含しない。任意に、反応混合物中に存在する少なくとも1つのポリオールは、酸性官能基を欠く。したがって、本発明のポリウレタン樹脂は、例えば、以下の:(A)ポリイソシアネート化合物;(B)ポリヒドロキシ酸;および(C)酸性官能基を欠く1つ以上のポリオール化合物を含むポリオール構成成分の反応により、調製され得る。ポリウレタン中の酸性官能基の濃度は、例えば(B)ポリヒドロキシ酸および(C)酸性官能基を欠くポリオールの適切な平衡を選択することにより制御され得る。本発明の第一の態様の一次コーティング中のポリウレタンは、典型的には、1つ以上のジイソシアネート、2つ以上のポリオール、および任意に、1つ以上のアミン鎖伸長剤の反応生成物であって、この場合、ポリオールのうちの少なくとも1つはポリヒドロキシ酸(分散構成成分として機能する)であり、そしてポリオールのうちの少なくとも1つは酸性官能基を欠く。有益には、(C)酸性官能基を欠くポリオール対(B)ポリヒドロキシ酸の比は、1:5〜5:1の範囲、特に1:4〜4:1の範囲、例えば1:4〜1:1の範囲である。
【0038】
本発明の第一の態様の一実施形態において、本発明は、脂肪族、芳香族またはその組合せ、およびジイソシアネートとポリオールおよび分散構成成分(例えば酸基)との反応により調製される、10重量%以上のウレタンおよび尿素基含量(基の好ましい総濃度は20〜65%)を有する、水ベースのポリウレタン分散液の一次コーティングの2−コート系を含む気体および水蒸気バリアを提供する。
【0039】
本発明の第一の態様の2−コート系、本発明の第二の態様の方法、および本発明の第四の態様のバリア層において用いるのに適したポリウレタン樹脂は、有益には、(i)ポリイソシアネート化合物;(ii)ポリヒドロキシカルボン酸;(iii)C〜C12ポリオール;そして任意に(iv)アミン鎖伸長剤を反応させることにより得られる。有益には、ポリイソシアネート化合物(i)は、芳香族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートであり、好ましくは、総ポリイソシアネート含量の少なくとも30重量%がこのような環状ポリイソシアネートである。有益には、存在するポリオールの少なくとも90重量%は、C〜C12ポリオールである。有益には、鎖伸長剤は、アンモニア、アンモニア誘導体、ジアミン、ヒドラジンまたはヒドラジン誘導体のうちの少なくとも1つである。本発明で用いるのに特に適したポリウレタンは、EP 1 674 529 A1(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。例えば、本発明の樹脂は、EP 1 674 529 A1の段落[0016]〜[0046]に記載されたもの、ならびにその文書の段落[0072]〜[0075]に記載された水分散性樹脂PUD1、PUD2、PUD3およびPUD4を包含する。本発明で用いるための特に適切な溶媒可溶性ポリウレタン樹脂は、米国特許第2005/0084686号(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。例えば、本発明の樹脂は、米国特許第2005/0084686 A1の段落[0024]〜[0038]に記載されたもの、ならびにその文書の段落[0066]〜[0073]に記載された樹脂PUD1、PUD2、PUD3およびPUD4を例とする溶媒可溶性プレポリマーを包含する。
【0040】
ポリウレタンの合成または製造は、具体的プロセスに限定されず、当業者によく知られているはずである。ポリウレタン樹脂を製造するための一般技法、例えばアセトン、アセトニトリルおよびメチルエチルケトンアプローチまたはプレポリマーアプローチが用いられ得る。(A)イソシアネート化合物;(B)ポリヒドロキシ酸;および(C)必要な場合は、ポリオール化合物の反応は、典型的には、不活性大気下で、不活性溶媒(好ましくは水溶性有機溶媒であるべきである)中で起きて、末端イソシアネート基を有するプレポリマーを産生する。プレポリマーは、好ましくは、中和剤で中和され、水性媒質中に分散されるかまたは溶解されて、鎖伸長される。当該プロセスのこの段階で、中和剤、例えばアンモニアは、同時にブロッキング剤として役立ち、それにより、あらゆる揮発性物質の除去後、500〜10000の数平均分子量で、最終水性ポリウレタンを送達する。代替的には、分散されるかまたは溶解されるプレポリマーの中和後、鎖伸長剤が付加され、あらゆる揮発性物質の除去後、500〜1000000の範囲の、例えば700〜600000の範囲の、特に700〜500000の範囲の数平均分子量を有する水性ポリウレタンが送達される。典型的には、プレポリマーの製造に用いられる水溶性有機溶媒として、アセトン、アセトニトリルおよびメチルエチルケトンが挙げられる。触媒、例えばスズ化合物、アミン、亜鉛化合物等も、ポリウレタン合成のために用いられ得る。可溶性ポリウレタンは、例えば、例示的ポリウレタンPU 1〜4を製造するために以下で記載される手法(または当該技術分野で既知のポリウレタン合成の任意の他の方法)に従って調製され得る。
【0041】
(A)イソシアネート化合物
適切なイソシアネートとしては、ポリイソシアネート、特にジイソシアネートが挙げられる。任意の脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族イソシアネートは、単独で、または組合せて、本発明のために用いられ得る。典型的には、脂肪族または芳香族ジイソシアネートまたはその組合せが用いられる。例としては、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI);1,4シクロペンタンジイソシアネート;1,3シクロペンタンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI);ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(H12MDI);ノルボランジイソシアネート(NBDI);m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI);p−テトラメチルキシレンジイソシアネート(p−TMXDI);1,2−ジイソシアナトプロパン;1,3−ジイソシアナトプロパン;1,6−ジイソシアナトプロパン(ヘキサメチレンジイソシアネートまたはHDI);1,4−ブチレンジイソシアネート;リシンジイソシアネート;1,4−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート);1,3−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)トルエンジイソシアネート(TDI)およびその混合物;m−キシレンジイソシアネート(mXDI);p−キシレンジイソシアネート(pXDI);m−またはp−フェニレンジイソシアネートおよびその混合物;4,4’−ジフェニルジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI);4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその混合物(MDI);4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI);4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);ペンタメチレンジイソシアネート;1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート;4,4’−、2,4’−または2,2’−ジシクロヘキしメタンジイソシアネートおよびその混合物(水素化MDI);メチル−2,6−シクロヘキサン;メチル−2,4−シクロヘキサン2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;および2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー鎖間の自由体積を低減し、そして分子間相互作用の結果としての立体障害を低減するという見地から、イソシアネート、例えばジイソシアネートがその環中に置換基を有する場合、それらは、好ましくは短く、例えばC1−3アルキル基であるべきである、ということが好ましい。有益には、ポリウレタンは、芳香族ジイソシアネート(例えば、TDI、MDIおよびNDI);芳香脂肪族ジイソシアネート(例えば、XDIおよびTMXDI);ならびに脂環式ジイソシアネート、例えばIPDI;水素化XDI;および水素化MDIを、単独でまたは組合せて用いて、調製される。気体および水蒸気バリア特性を示すポリウレタンは、典型的には、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートを、単独でまたは組合せて含む、ということが判明している。
【0042】
(B)分散/架橋構成成分
分散構成成分は、ペンダント酸基としてポリウレタン中に組入れられるようになる極性官能基、特に酸官能基、例えばカルボン酸基と一緒にポリウレタン主鎖中に化合物を組入れさせる反応性基、例えばアルコールまたはアミン基を含む化合物である。典型的には、分散構成成分は、ポリヒドロキシ酸である。架橋構成成分は、例えば金属カチオン架橋剤とともに架橋反応に参加し得るさらなる反応性官能基と一緒にポリウレタン主鎖中に化合物を組入れさせるアルコールまたはアミン基のような反応性基を含む化合物である。特に適した架橋剤は、酸官能基、例えばカルボン酸基であって、これは、ペンダント基としてポリウレタン中に組入れられるようになる。典型的には、架橋構成成分は、ポリヒドロキシ酸である。分散構成成分および架橋構成成分は、ポリウレタンに極性を提供し、そして架橋反応に参加する官能基を提供するという二元的目的を有する同一化合物であり得る。ポリヒドロキシ酸は、イソシアネートと反応し、それにより、樹脂の極性を増強し得る酸基としてポリウレタン中に組み入れられ得るヒドロキシル基を含有し、特に中和される場合、架橋反応に参加し得るポリウレタン樹脂に酸官能基を提供する。上記のように、有益には、本発明のポリウレタンを調製するために用いられるポリオールのうちの少なくとも1つは、酸官能基を含むポリヒドロキシ酸である。ポリウレタンの酸官能基は、好ましくは、反応混合物中に単独でまたは組合せて、ポリヒドロキシ酸(例えば、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸)を含むことにより、ポリマー中に組入れられる。ポリヒドロキシカルボン酸(好ましくはジヒドロキシカルボン酸)の例としては、ジヒドロキシC2−10アルカン−カルボン酸、例えばジメチロールプロピオン酸およびジメチロールブタン酸;ジヒドロキシC4−10アルカン−ポリカルボン酸またはジヒドロキシC4−10アルケン−ポリカルボン酸;ジヒドロキシC6−10アレン−カルボン酸、例えば2,6−ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらのポリヒドロキシ酸は、塩の形態で、典型的にはアンモニウム塩、アミン塩(例えば、トリアルキルアミン塩)および金属塩(例えば、ナトリウム塩)の形態で用いられ得る。
【0043】
(C)ポリオール構成成分
ポリオール構成成分は、好ましくは、バリアとの関連で低分子量を有するジオールを含むべきである。ポリオール構成成分の分子量、すなわち統一原子質量単位での相対分子量(M)は、有益には、700未満、例えば350未満、特に250未満である。ポリオールは、メタンジオールの相対分子量である少なくとも48の分子量を有する。典型的には、ポリオール構成成分は、約50〜700、例えば約50〜350、特に約50〜250の分子量(M)を有するポリオールを包含するかまたはそれからなる。ポリオールは、典型的には、C〜C12ポリオール、例えばC〜C12ジオール、特にC〜C10ポリオール、例えばC〜C10ジオールを包含するかまたはそれらからなる。ポリウレタン内のハードドメインおよび全体的自由体積の低減が望ましい。ポリオール(例えば、ジオール)構成成分は、好ましくは、アルキレングリコール、例えばC〜C12直鎖または分枝鎖を含有する。ポリオールは、単独で、または組合せて、用いられ得る。ポリオールの例としては、脂肪族グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブアンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−または1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール;1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオールおよび1,12−ドデカンジオール;ポリエーテルジオール、例えば、ポリオキシC〜Cアルキレングリコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、ヘプタプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコールおよびテトラブチレングリコール;芳香脂肪族ジオールならびに芳香族ジオール、例えば、ビスフェノールA、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノンおよび1,3−または1,4−キシレンジオールおよびその混合物;脂環式ジオール、例えば、水素化ビスフェノールA、水素化キシレンジオール、シクロヘキサンジオールおよびシクロヘキサン−ジメタノール;ポリエステルジオール、例えば低分子量ジオールおよびラクトンの付加生成物、および低分子量ジオールジオールおよび二カルボン酸の反応生成物;ポリカルボネートジオール、例えば、低分子量ジオールおよび短鎖ジアルキルカルボネートの反応生成物;脂環式ジオール、例えばC〜C10脂環式環を含有するC〜C12脂環式ジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
有益には、低分子量ジオール、例えばC〜C10ジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが、単独でまたは組合せて用いられて、本発明のポリウレタン樹脂を調製する。C〜Cジオール、例えばエチレングリコール、1,2−または1,3プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールは、単独でまたは組合せて、特に適していることが判明している。低分子量ジオール、すなわち、700未満、例えば350未満、特に250未満の分子量(M)を有するジオールは、有益な気体および水蒸気バリア特性を有するコーティングを提供する。
【0045】
上記のポリオールの特徴は、(C)酸官能基を欠くあらゆる任意のポリオールに、そして(B)架橋および/または分散構成成分として用いられるポリヒドロキシ酸にも適用可能である。したがって、(B)ポリヒドロキシ酸は、有益には、例えば、12個以下の炭素原子を有するか、および/または分子量が700未満の短鎖/低分子量ポリオールである。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂における短鎖/低分子量ポリオールの使用は、良好なバリアを作る樹脂の能力に寄与することが判明している。例えば、12個以下の炭素原子を有するか、および/または分子量が700未満のポリオール構成成分を有するポリウレタンを用いると、改良されたバリア特性が観察される。
【0047】
(D)鎖伸長剤
任意の末端イソシアネート基が残存するならば、ポリウレタンは鎖伸長され得る。鎖伸長剤は、単独で、または組合せて用いられ、本発明に従って用いられ得る。適切な鎖伸長剤としては、アミン、例えばジアミン、特に二機能性化合物、例えば第二級ジアミンおよび一または多機能性第一級アミンが挙げられる。例としては、活性水素原子を有する窒素含有化合物;アンモニア;アンモニア含有誘導体;エチルアミン;イソプロピルアミン;N−メチルエタノールアミン;ジアミン、ならびに脂肪族ジアミンとして、ヒドラジン、ヒドラジンに加えて含まれるヒドラジン誘導体;エチレンジアミン;トリメチレンジアミン;テトラメチレンジアミン;ペンタメチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;プロピレンジアミン;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。芳香族アミンとして、mまたはp−フェニレンジアミン;1,3−または1,4−キシレンジアミンまたはその混合物。脂環式ジアミンとして、水和キシレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン。任意のヒドロキシ基含有ジアミン、2−ヒドラジンエタノール、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、またはヒドロキシルを有するその他のジアミン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメチルオキシシラン;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン;またはその分子中にケイ素を有するその他のシランカップリング剤が用いられ得る。有益には、9個以下の炭素原子、例えば2〜9個の炭素原子、特に2〜7個の炭素原子を有する鎖伸長剤が用いられる。ポリウレタン合成における低分子量鎖伸長剤の使用は、良好な気体および水蒸気特性を有するコーティングを生じる、ということが判明している。
【0048】
[ポリウレタンの中和]
いくつかの用途に関しては、ポリウレタン中に存在する酸基またはその他のアニオン性親水性基を中和することが望ましい。ポリウレタン酸基または他のアニオン性親水性基の中和は、中和剤を、単独でまたは組合せて用いて達成される。有益には、ポリウレタンは、例えば、本発明の第一の態様の2−コート系の一次コーティング中の中和剤と組み合わされる。慣用的延期、例えばアンモニア;アンモニア含有誘導体;エチルアミン;イソプロピルアミン;第三級アミン(例えば、トリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン);アルカノールアミン、例えばジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン;ならびに複素環式アミン、例えばモルホリン、メチルモルホリン等が、中和剤として利用され得る。ポリウレタン酸基の中和のための他の手段は、当業者に既知である。中和剤が、揮発性延期、例えばトリC1−3アルキルアミン、例えばトリエチルアミン、揮発性アミノアルコール、例えばジメチルエタノールアミン、または特にアンモニアであるのが好ましい。
【0049】
中和は、しばしば、樹脂の水分散性を増大する。ポリウレタンが水性分散液として用いられる場合、本発明のポリウレタン中に存在する酸基またはその他のアニオン性親水性基、例えばポリウレタン主鎖中へのポリヒドロキシ酸分散構成成分の組入れにより導入される酸官能基は中和されるのが有益であり、それにより、樹脂の水分散性を増大する。典型的には、本発明の水性分散液中に用いられるポリウレタン中に存在する酸官能基の少なくとも80%は、中和塩形態である。したがって、水性または水混和性溶媒中のポリウレタン樹脂の分散液を含む本発明のコーティング組成物および2−コート系は、典型的には、ポリウレタン樹脂を中和する中和剤を含む。多と、ポリウレタンは塩として存在し、中性またはアルカリ性pHを有し、および/またはコーティング組成物は塩基を含む。典型的には、水分散性ポリウレタン樹脂は、それらの塩形態で酸官能基を含む。
【0050】
遊離酸として典型的に用いられる溶媒可溶性ウレタン樹脂に関しては、中和はしばしば必要でない。したがって、有機溶媒中のポリウレタンの溶液を包含する本発明のコーティング組成物および2−コート系は、遊離酸としてポリウレタンを含み、酸性pHを有し、および/または塩基を含まない。
【0051】
[末端ブロッキング剤]
ポリウレタン合成に用いられる末端ブロッキング剤は、イソシアネート残基の一部を構成し、および/またはウレタンプレポリマーの任意の反応性イソシアネート基を終結するために用いられ得る。末端ブロッキング剤は、ポリウレタンポリマーの分子量を制御するために用いられ得る。例えば、末端ブロッキング剤は、ポリウレタンの分子量を、500〜10000の範囲内のダルトンでの数平均分子量(M)に限定するために用いられ得る。さらに、末端ブロッキング剤は、同時に中和剤としても用いられ得る。中和にも利用され得る末端ブロッキング剤の例は当業者に周知であり、例としては、第一級アミン化合物、例えばアンモニア;メチルアミン;ジメチルアミン;エチルアミン;ジエチルアミン;イソプロピルアミン;ヒドロキシルアミン;ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール;3−アミノ−1−プロパノール;ジエチルアミン;ジイソプロピルアミン;N−メチルエタノール等が挙げられる。アンモニアは、その揮発性、ならびにウレタンプレポリマーのイソシアネート残基および/またはイソシアネート基部分との反応性のため、そしてポリウレタン酸基またはその他のアニオン性親水性基を中和するその容易性のため、末端ブロッキング剤として、そして同時に中和剤として好ましい。
【0052】
[一次ポリウレタン含有コーティング]
有益には、本発明の2−コート系の一次コーティングは、支持体に直ぐに適用できるコーティング組成物である。代替的には、2−コート系の一次コーティングは、支持体への適用前に、例えば溶媒のような希釈剤で溶かされ得る。ポリウレタンの分散液または有機溶媒中のポリウレタンの溶液を含む本発明の第一の態様の2−コート系の一次コーティングは、実際上あらゆる既知の分散方法(例えば、ローラーコーティング、噴霧、浸漬、ブラッシング、グラビア印刷、フレキソ印刷、石版印刷、スクリーン等)を用いて支持体に適用されて、コーティングを提供し得る。ポリウレタン樹脂を含むコーティング組成物は、典型的には、25℃で10〜200mPa.s、または25℃で17〜60秒Zahnカップ#2の粘度を有する。例えば、水ベースのポリウレタン分散液は、約18秒(Zahnカップ2)の適用粘度を有すると都合がよい。この粘土は、フレキソおよびグラビア印刷用途に適している。必要な場合、合成中または合成後にポリウレタンの濃度を変えることにより、そしてコーティング適用方法によって、粘度は調整されて、所望の適用粘度が達成され得る。例えば、粘度は、脱イオン水の量を調整することにより、分散段階で調整され得る。同様に、有機溶媒中の樹脂の溶液の粘度は、有機溶媒を付加するかまたは蒸発させることにより調整され得る。代替的には、2−コート系は、供給されたとおりに用いられるか、または関連蒸着方法のための適切な粘度を有するよう改質される現行の水ベースのポリウレタン分散液(例えば、市販物質)を利用し得る。主液体ビヒクルとして水を含む本発明の水ベースのコーティング組成物は、水混和性有機溶媒も含み得る。コーティング組成物は、有益には、添加物、例えば可塑剤、他の樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定化剤、ブロッキング防止剤、皮膜形成剤、粘着剤および接着促進剤も含む。
【0053】
一次コーティングは、例えば水ベースのポリウレタン分散液である。水分散性ポリウレタンおよび水のほかに、水ベースのポリウレタンは、任意に、さらなる構成成分を含み得る。代替的には、一次コーティングは、有機溶媒中の溶媒可溶性ポリウレタンの溶液である。溶媒可溶性ポリウレタンおよび有機溶媒のほかに、ポリウレタン溶液は、任意に、さらなる構成成分を含み得る。一次コーティングは、例えば、有機溶媒中の酸性官能基を含むポリウレタン樹脂の溶液を含む本発明の第五の態様のコーティング組成物であり得る。適切な有機溶媒としては、ケトン、アルコールおよびエステル、例えばアセトン、エチルアセテート、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、プロピルアセテートおよびN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0054】
コーティング組成物、特に有機溶媒中に溶解された溶媒可溶性ポリウレタン樹脂を含むコーティング組成物も、有益には、可塑剤、付加的樹脂、蝋、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定化剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、皮膜形成剤、粘着剤および接着促進剤のうちの1つ以上を、特に可塑剤、ブロッキング防止剤、接着促進剤、帯電防止剤または蝋のうちの1つ以上を含む。例えば、コーティング組成物は、有機溶媒、ならびに可塑剤、分散剤または界面活性剤および接着促進剤のうちの1つ以上を含み得る。当業者に既知の他の添加物も、水ベースのまたは溶媒ベースのコーティング組成物中に含まれ得る。気体および水蒸気バリアが有意に減損されないならば、本発明の用途のバリアコーティングは、任意に添加物を含み得る。このような添加物としては、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、増粘剤、UV吸収剤、酸素掃去剤、酸素センサー、着色剤等が挙げられ得る。これらは、例えば、バリアコーティングの総重量に関して、30%までの量で含まれ得る。着色剤の場合、用いられる量は、より高いことがある。適切な着色剤としては、有機または無機顔料および染料が挙げられるが、これらに限定されない。染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、その組合せ等が挙げられるが、これらに限定されない。有機顔料は、1つの顔料または顔料の組合せ、例えば、顔料黄色番号 12、13、14、17、74、83、114、126、127、174、188;顔料赤色番号 2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、202、266、269;顔料橙色番号 5、16、34、36;顔料青色番号 15、15:3、15:4;顔料菫色番号 3、23、27;および/または顔料緑色番号 7であり得る。無機顔料は、以下の非限定顔料のうちの1つであり得る:酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、黒色酸化第二鉄、顔料黒色番号 7および/または顔料白色番号 6および7。他の有機および無機の顔料および染料も、所望の色を達成する組合せと同様に用いられ得る。
【0055】
ポリウレタン樹脂を含むコーティング組成物の全体の固形分(w/w)は、典型的には、0.5〜50%、好ましくは5〜40%、例えば15〜35%または5〜31%、特に15〜31%である。
【0056】
水性ポリウレタン樹脂分散液のpHは、7〜14、好ましくは8〜13であり得る。典型的には、水分散性ポリウレタン樹脂のpHは、8〜11の範囲である。有益には、水分散性樹脂は中性樹脂であり、そして例えば本発明の2−コート系の一次コーティングまたは本発明のコーティング組成物として用いるための水中の分散液は、約6〜約12、典型的には約6.5〜約11、例えば約7〜約11の範囲のpHを有する。本明細書中で引用されるpH値はすべて、25℃で測定される。
【0057】
本発明の一実施形態では、好ましくは脂肪族または芳香族ジイソシアネート(またはその組合せ)と反応性官能基、例えばポリオール、ポリアミンおよびポリヒドロキシ酸(例えば、カルボン酸、スルホン酸、ホスホネート/ホスホン酸ポリヒドロキシ酸基構成成分)との反応により調製される、好ましくは10重量%以上のウレタンおよび尿素基(基の好ましい総濃度 20〜65%)を有する溶媒可溶性ポリウレタン樹脂が提供される。
【0058】
[二次架橋剤含有コーティング]
本発明のポリウレタンを含む一次コーティングのほかに、本発明の第一の態様の2−コート系は、架橋剤、典型的には多価金属カチオンを含む二次コーティングを含む。
【0059】
多価金属カチオンは、+2またはそれ以上、例えば+2、+3または+4の形式電荷を有する金属イオンである。適切な多価金属カチオンとしては、アルカリ土類金属、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム;ならびに遷移金属、例えばチタン、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、ジルコニウム、クロム、亜鉛およびアルミニウムおよびケイ素ならびにそれらの酸化物、炭酸塩等が挙げられる。亜鉛(Zn2+)カチオンは特に好ましく、二次コーティングは、有益には、酸化亜鉛、炭酸亜鉛または別の亜鉛塩を包含する。多価金属カチオンは、添加物、例えば界面活性剤、例えば市販のプルロニック、テトロニック、トリトン、BYK、テルギトール等と一緒に用いられ得る。有益には、金属カチオンを保持する添加物は、溶液または懸濁液である。特定の理論に本発明を限定しないが、優れたバリア性能は、以下の2つの事象の相乗的組合せである:(1)多価金属カチオンと溶媒可溶性ポリウレタンの酸基との間の架橋メカニズム;ならびに(2)多価金属イオンとポリウレタンのウレタン基の主鎖との間の二次キレート化。
【0060】
二次多価金属イオン含有コーティングは、好ましくは、一次ポリウレタン含有コーティングの上に適用される。単一ポリウレタン含有コーティングおよび単一多価金属イオン含有コーティングが手寄与され得るが、しかし代替的には、コーティングの一方または両方の多層が任意の順序で適用され得る。例えば、本発明のバリア層は、ポリウレタン含有コーティングと多価金属イオン含有コーティングの交互層を包含する本発明の2つ以上の2−コート系を含み得る。二次コーティングは、典型的には、多価金属イオンが分散されるかまたは溶解される液体ビヒクル、および任意に界面活性剤または他の添加物を含む。多価金属カチオンは、典型的には、二次コーティング組成物中に溶解される。2−コート系の二次コートは、好ましくは、多価金属カチオンの溶液、例えば亜鉛カチオンの溶液である。二次コーティング組成物は、典型的には水ベースの組成物であり、そして液体ビヒクルは主に水であるが、しかし有機溶媒も、主液体ビヒクルとして用いられ、あるいは優勢な水ベースのビヒクルの少数構成成分として含まれ得る。
【0061】
金属カチオンまたは他の架橋剤を含有する二次コーティングの全体の固形分は、典型的には、0.5〜50%、好ましくは15〜30%、例えば2〜25%、特に20〜25%である。有益には、多価金属カチオンまたは他の架橋剤は、0.5〜50%>、好ましくは15〜30%>、例えば2〜25%、特に20〜25%のレベルで、二次コーティング中に存在する。二次コーティング中の架橋剤は、20g/m以下、例えば15g/m以下、特に10g/m以下のコーティング重量で有益に適用される。架橋剤に関する約6g/m以下のコーティング重量は、ポリウレタンコーティングのバリア性能を実質的に増強するために十分である、ということが判明した。
【0062】
[バリア系、層および材料]
本発明の第一の態様の2−コート系は、ポリウレタン樹脂からなる一次コーティングおよび架橋剤からなる二次コーティングを包含する。本発明の第一の態様の系は、(i)水分散性ポリウレタンの水性分散液を含む一次コーティングまたは有機溶媒中の溶媒可溶性ポリウレタンの溶液を含む一次コーティング;ならびに(ii)多価金属カチオンを含む二次コーティングを有益に包含する。
【0063】
一次コーティングおよび二次コーティングは、支持体に個別に適用するためのものである。典型的には、一次コーティングが最初に支持体に適用され、次いで、二次コーティングが一次コーティングの層の上に適用されるが、しかし逆の順序も可能である。一次コーティングは、第一パックで、例えば水中のポリウレタンの分散液または有機溶媒中のポリウレタンの溶液を含むコーティングとして供給されるのが有益であり、そして二次コーティングは、第二パックで、例えば金属イオンおよび液体ビヒクルを含むコーティング組成物として供給されるのが有益である。2つのコーティングのほかに、本発明の第一の態様の系は、当該系が用いられるべき方法を略述する使用説明書を包含し得る。例えばその使用説明書は、本発明の第二の態様の方法における本発明の第一の態様の2−コート系の使用を記載し、あるいは本発明の第三の態様のバリア層の調製方法を記載する。
【0064】
2−コート系を調製する場合、ポリウレタンが金属カチオンと迅速に反応することが有益である、ということが判明している。迅速反応は、バリアコーティングを含めた物質の取扱いを助長する。さらに、液体ビヒクルが蒸発するか、および/または溶液または懸濁液中に架橋剤を保持する任意の添加物が蒸発する前に、金属カチオンが迅速に反応しなければならない場合に、迅速反応は有益である。溶液および/または懸濁液中に金属カチオンを保持するための揮発性添加物、例えばアンモニアの使用は、一旦形成されたバリア層中にそれらが残存されないので、有益である。しかしながら、揮発性添加物が用いられる場合、蒸発のために十分量で添加物が機能しなくなる前に、架橋剤はポリウレタンと迅速に反応しなければならない。ポリウレタン、例えば本明細書中に記載されているもの、特に本明細書中に記載されるウレタン/尿素基の、および/または本明細書中に記載される低分子量/短鎖ポリオール構成成分の割合を有するものは、金属カチオンと迅速に反応することが見出されている。したがって、一次コーティング中のポリウレタンと二次コーティング中の金属カチオンとの間で迅速架橋反応が起きる有効な2−コート系が、本発明により提供される。これに対比して、既知の1−コート2−パック系で用いられるポリウレタンは、金属カチオンおよび他の架橋剤とゆっくり反応する。それは、即時ゲル化を伴わずに支持体への適用前に、ポリウレタンおよび架橋剤を混合させるが、それは、架橋剤を別個のコーティング組成物として適用させ得ない。
【0065】
本発明の一実施形態は、(1)架橋反応のための反応性官能基を保有する、不活性気体および水蒸気バリア特性を有する水分散性ポリウレタンを含む一次コーティング(反応性官能基は、例えば、ポリヒドロキシ酸、例えばカルボン酸、スルホン酸、ホスホネート/ホスホン酸などのいずれかを含み得る);ならびに(2)1つ以上の多価金属カチオンからなる二次コートを基礎とした2−コート気体およびバリア系である。
【0066】
本発明の系は、典型的には、良好な積層体結合強度でプラスチック積層体に表面被覆されるかまたは積層体中に組入れられる場合、優れたバリアもたらす。
【0067】
バリアの気体および水蒸気バリア特性を増強するためには、微粒子、例えば層化無機物質は必要とされない、ということが判明した。有益には、本発明の2−コートバリア系またはバリア層の固形分の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に2重量%以下が無機積層状材料である。本発明の第一の態様の2−コートバリア系および本発明の第三の態様のバリア層は、無機積層状化合物を実質的に含まないのが有益であり、例えば、1重量%以下の無機積層状化合物を含む。積層または層化無機化合物は、気体の拡散のための曲がりくねった道を提供するためにバリアコーティング中に用いられる板状または板様充填剤である。このような無機材料は、典型的には、高アスペクト比、例えばその剥離形態で、約20より大きい、例えば20〜10,000のアスペクト比を有する。有益であるのは、本発明の2−コートバリア系の固形分の10重量%以下が、約20より大きいアスペクト比を有する無機積層材料であり、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下の無機積層状化合物が約20より大きいアスペクト比を有する。本発明の2−コートバリア系、コーティング組成物またはバリア層の固形分の10重量%いかがナノ粒子材料であるのが有益であり、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下がナノ粒子材料である。ナノ粒子は、少なくとも1つの寸法がナノメートル範囲の、すなわち100nm未満の粒子である。2−コート系は、任意の表面印刷、物品または積層構造上に、それぞれ酸素透過のために、および水蒸気透過のために、0〜100%RH、特に0〜90%RHで、充填剤(例えば、クロイサイトNa+、ミクロライト963およびソマシフME100等)を必要とせずに、非常に優れた気体および水蒸気バリア特性をもたらすことが判明している。
【0068】
本発明の第一の態様の2−コートバリア系、および本発明の第三の態様のバリア層は、90%RHおよび23℃で8cm/m/日以下の、好ましくは6cm/m/日以下の、特に5cm/m/日以下の酸素透過率(OTR)、および/または90%RHおよび38℃で15g/m/日以下の、好ましくは12g/m/日以下の、特に10g/m/日以下の水蒸気透過率(MVTR)を有益にもたらすが、この場合、ポリウレタン樹脂のコーティング重量は、例えば支持体上の蒸着後、例えば12μm厚コロナ表面処理二軸配向PET皮膜への適用時に、12g/m以下である。有益には、本発明の第一の態様の2−コートバリア系、および本発明の第三の態様のバリア層は、支持体上の蒸着後、90%RHおよび23℃で<6cm/m/日のOTR、ならびに90%RHおよび38℃で<10g/m/日のMVTRを有する。同様に、本発明の第四の態様のバリア材料は、90%RHおよび23℃で<6cm/m/日のOTR、ならびに90%RHおよび38℃で<10g/m/日のMVTRを有するのが有益である。上記のバリア特性は、ポリウレタンコーティングの皮膜重量が10g/m以下、好ましくは8g/m以下、特に約7g/m以下、例えば約4〜約6g/mである場合に得られると有益である。上記のバリア特性は、金属カチオンまたは他の架橋剤の皮膜重量が10g/m以下、好ましくは8g/m以下、特に約7g/m以下、例えば約4〜約6g/mである場合に得られると有益である。本発明の2−コート系を用いて、低皮膜重量で、そしてバリア特性を高めるために典型的に用いられる板状充填剤を必要とせずに、優れた気体および水蒸気バリアが達成され得る、ということが判明した。本発明のバリア層は、板状微粒子を必要とせずに良好なバリア特性を示すことが見出された。有益には、本発明の第一の態様の2−コートバリア系は、したがって本発明の第三の態様のバリア層および本発明の第四の態様のバリア材料も、無機積層状化合物を実質的に含有しない。好ましくは2−コート系またはバリア層の固形分の10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、特に2重量%以下が無機積層材料である。
【0069】
本発明の2−コート系、コーティング組成物またはバリア層は、コーティングを受けるあらゆる表面または物品、例えばいくつかの高分子物質を用いる場合のように、前処理を必要とするものに適用され得る。2−コート系の2つの別個の構成成分を調整することにより(例えば、粘度および流動学的調整等)、コーティングは、当該技術分野で既知の任意の方法により、例えばローラーコーティング、噴霧、浸漬、ブラッシング、グラビア印刷、フレキソ印刷等)(これらに限定されない)により、任意の表面または物品に適用され得る。2−コート系で被覆される支持体は、多数の最終用途、例えば傷み易い食品の包装、気体または湿度に反応し易い材料、電子工学構成部分等に適している。本発明のコーティングの好ましい使用は、非金属化支持体上、例えばMylar 800、Mylar 813、OPA(ナイロン)およびMB400(OPP)の上であるが、しかしながら、2−コート系およびバリア層は、如何なる粒子表面、支持体または物品にも限定されない。本発明の2−コート系、コーティング組成物またはバリア層で被覆される支持体は、多数の最終用途、例えば傷み易い食品の包装、気体または水分に反応しやすい材料、電子工学構成部分等に適している。
【0070】
本発明のバリア層は、典型的には、水分散性ポリウレタンまたは溶媒可溶性ポリウレタンおよび多価金属カチオンを組合せた生成物を包含する。例えば、バリア層は、ポリウレタンおよび多価金属カチオンを組み合わせた生成物を包含し得るが、この場合、ポリウレタンの少なくとも10重量%はウレタン基、および存在する場合は尿素基で構成される。ポリウレタンは、例えば架橋反応において、組み合わされると、多価金属カチオンと反応し、ポリウレタンと多価金属カチオンを組合せた生成物は、反応生成物であり得る。代替的には、または付加的には、多価金属カチオンは、ポリウレタンとキレートを作り、ポリウレタンと多価金属カチオンの組合せの生成物は、多価金属カチオンがポリウレタンの主鎖とキレート化される組成物であり得る。
【0071】
第六の態様では、本発明は、一次コーティングのコーティング層のバリア特性を増強するための二次コーティングの使用を提供するが、この使用は、支持体上の一次コーティング上に二次コーティングを適用するステップを包含する。多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含むコーティング組成物を適用するステップは、90%RHおよび23℃で、cc/m/日単位におけるコーティング層での酸素透過率(OTR)を少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、特に少なくとも60%低減し、および/または90%RHおよび38℃で、g/m/日単位におけるコーティング層での水蒸気透過率(MVTR)を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に少なくとも30%低減するのが有益である。多価金属カチオンまたは他の架橋剤を含むコーティング組成物を適用するステップは、90%RHおよび23℃で、cm/m/日単位における酸素透過率(OTR)の少なくとも4倍の低減を、例えば90%RHおよび23℃で、cm/m/日での酸素透過率(OTR)の少なくとも6倍の低減を、特に90%RHおよび23℃で、cm/m/日での酸素透過率(OTR)の少なくとも8倍の低減を生じ;および/または90%RHおよび38℃で、g/m/日単位における水蒸気透過率(MVTR)の少なくとも2倍の低減を、例えば90%RHおよび38℃で、g/m/日での水蒸気透過率(MVTR)の少なくとも3倍の低減を、特に90%RHおよび38℃で、g/m/日単位におけるコーティング層での水蒸気透過率(MVTR)の少なくとも4倍の低減を生じるのが有益である。例えば、12μm厚コロナ処理皮膜二軸性配向PET皮膜、例えばMylar 800PET皮膜を用いる場合に、OTRおよび/またはMVTRにおける上記の低減が得られる。例えば、架橋剤の6g/mコーティングが適用される、例えば#1K−barを用いる水性コーティングとして適用される場合、OTRおよび/またはMVTRは上記パーセンテージだけ低減され得る。
【0072】
本発明の第六の態様の使用、ならびに本発明の第七の系は、下記のように、ポリウレタン樹脂を含むコーティング層のバリア特性を増強するのが有益である:
A/(B.C)>2:
(式中、A=ポリウレタン樹脂を含むコーティング層で被覆される支持体を含むバリア材に関してg/m/日で、23℃で90%RHでの酸素透過率;
B=コーティング層上に適用される多価金属カチオンまたは他の架橋剤をさらに含むバリア材に関してg/m/日で、23℃で90%RHでの酸素透過率;
C=ポリウレタン樹脂を含むコーティング層のg/mでのコーティング重量(乾燥))。
【0073】
好ましくは、A/(B.C)>2.5、さらに好ましくはA/(B.C)>5、例えばA/(B.C)>10である。
【0074】
例えば、12μm厚コロナ処理皮膜二軸性配向PET皮膜、例えばMylar 800PET皮膜を用いる場合に、上記のOTRが得られる。例えば、10g/m以下、例えば8g/m以下のコーティング重量での架橋剤の適用後に、OTR値Bが得られる。
【0075】
本発明の第六の態様の使用、ならびに本発明の第七の系は、下記のように、ポリウレタン樹脂を含むコーティング層のバリア特性を増強するのが有益である:
A/(B.C.D)>0.3:
(式中、A=ポリウレタン樹脂を含むコーティング層で被覆される支持体を含むバリア材に関して、23℃で90%RHでの酸素透過率;
B=バリアコーティング上に適用される多価金属カチオンまたは他の架橋剤をさらに含むバリア材に関して、23℃で90%RHでの酸素透過率;
C=ポリウレタン樹脂を含むコーティング層のg/mでのコーティング重量(乾燥);ならびに
D=架橋剤を含むコーティング層のg/mでのコーティング重量(乾燥))。
【0076】
好ましくは、A/(B.C.D)>0.4、さらに好ましくはA/(B.C.D)>0.8、例えば>1.3である。
【0077】
例えば、12μm厚コロナ処理皮膜二軸性配向PET皮膜、例えばMylar 800PET皮膜を用いる場合に、上記のOTRが得られる。
【0078】
被覆試料のOTRは、例えば、23℃で90%の相対湿度(RH)でのMocon Oxtran2/21気体透過性試験装置で決定され得る。被覆試料のMVTRは、例えば、38℃で90%RHでのMocon Permatran−W 3/33試験装置で決定され得る。例えば、電量分析センサーを用いてプラスチック皮膜およびシーチングを通る酸素ガス透過率に関するASTM D3985標準試験方法を用いて、OTRは測定され得る。その他の適切な試験方法としては、電量分析検出器を用いてバリア材を通る制御相対湿度での酸素ガス透過率、浸透性および透入を確定するためのASTM F1927標準試験方法、ならびに種々のセンサーを用いてプラスチック皮膜およびシーチングを通る酸素ガス透過率に関するASTM F2622標準試験方法が挙げられる。MVTRは、例えば、変調式赤外線センサーを用いてプラスチック皮膜およびシーチングを通る水蒸気透過率に関するASTM F1249−06標準試験方法を用いて測定され得る。その他の適切な試験方法としては、動的相対湿度測定を用いるシート材の水蒸気透過率に関するASTM E398−03標準試験方法、ならびにプラスチック皮膜およびシーチングの気体透過性特質を確定するためのASTM D1434標準試験方法が挙げられる。
【0079】
本発明の適用において、気体バリア特性は、酸素バリア特性として表される。しかしながら、酸素透過率(OTR)として表される酸素バリア特性は、単に、最終使用材(例えば食品包装)からの漏出を防止しようと試みている、最終的にあらゆるガス化物質に対するバリア耐性を示す試験である、と理解される。これは、窒素、二酸化炭素およびその他の気体、水、芳香族物質および/または芳香族化合物が特に包含されるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明のバリアコーティングの利点のうちのいくつかは、以下のようであることが判明している:
・気体および水蒸気バリアを高め、衛生上の懸念を低減するためのナノ粒子を必要としない。
・PVDC型コーティングまたは押出成形皮膜が存在しないため、包装材料、例えば本発明のコーティングは、環境的により好ましい。
・保持されるべき可能性を有して、意図される包装または物品内の移動問題を引き起こすトリエチルアミンを、ポリウレタンは含まない。
・本発明のコーティングは、低皮膜重量、例えば約4〜6gsm湿潤の適用を可能にする。
・多価金属カチオンは、低皮膜重量で、例えば約4gsm湿潤で適用され得る。
・優れた気体および水蒸気バリア特性を付与する。
・迅速乾燥時間を可能にする。
・熱硬化を必要としない。
【0081】
本発明を、その好ましい実施形態を含めて、詳細に記載してきた。しかしながら、本発明の開示を考察するに際しては、本発明の範囲および精神を逸脱しない限り、この発明に関して、当業者は修正および/または改良をなし得る、と理解される。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明を例証するための助けとなる。以下の実施例は、本発明の特定の態様を例証するものであって、如何なる点でも本発明の範囲を限定するよう意図されず、そしてそのように解釈されるべきでない。
【0083】
23℃で、相対湿度(RH)90%で、Mocon Oxtran 2/21気体浸透性試験装置で、被覆試料の酸素透過率を確定した。38℃で90%RHで、Mocon Permatran−W 3/33試験装置で、被覆試料の水蒸気透過率を確定した。すべての場合に用いられる支持体は、コロナ放電処理Mylar 800(12μm ゲージ)、配向ポリアミド(30μmゲージ)またはポリプロピレン(例えば、MB400 23μmゲージ)であった。コーティングをNo.0およびNo.1 K−bar(それぞれ4gsmおよび6gsm湿潤)、粘着性がなくなるまで、暖流空気中で乾燥した(ラボプリントをヘアドライヤーで乾燥した)。各場合に、溶媒可溶性ポリウレタンを適用し、その後、金属カチオン溶液を適用した(これが、好ましい構成である)。しかしながら、その順序は変更し得る(すなわち、先ずカチオン溶液をプリントし、そしてポリウレタンをその上にプリントする)。好ましい実施形態は、相乗的2−コート系を形成するためのウレタンおよびカチオンの各々の単一コーティングであるが、しかし本発明の適用は、この構成に限定されない。他の実施形態では、多層のポリウレタンおよびカチオンを、任意の回数または順序で適用し得る。したがって、本発明の適用は、ポリウレタンの単一コーティングおよびカチオンの単一コーティングに限定されないが、示されるように、良好な気体および水蒸気特性を得るためには、各々の少なくとも1つのコーティングが必要である。
【0084】
表面処理は結合強度を改良するための既知の方法であり、当該技術分野で既知の任意の方法(コロナ、フレーム、プラズマ等)が用いられ得る。しかしながら、表面処理は、任意であり、一要件ではない。非表面処理支持体から生成される積層体が許容可能な結合強度性能を示す限り、表面処理されない支持体を用いることも可能である。本発明の実施例では、コロナ表面処理支持体に2−コート系を適用することにより、積層体を調製した。接着剤を乾燥2−コート系の上面に適用し、次いで、30μmゲージポリ(エテン)の処理側に積層した。用いた接着剤は、Coim(NC250AをCatalyst CA350と一緒に)により供給されたもので、メーカーの使用説明書に従って調製し、約2.5gsmの最終乾燥皮膜重量を達成するよう適用した。次いで、積層体を35℃で7日間保存して、イソシアネートベースの接着剤の十分な硬化を保証した。次に、結合強度(N/15mm)および酸素バリア特性に関して、積層体を試験した。
【0085】
<溶媒可溶性ポリウレタン>
固有の気体および水蒸気バリア特性を有する溶媒可溶性ポリウレタン(PU)の合成。PUの平均分子量は、溶媒、反応体の蝋、触媒およびポリオールの種類等によって変わるが、しかしながら、本発明の溶媒可溶性ポリウレタンに関しては、分子量は、好ましくは、500〜900000、さらに好ましくは約500〜600000、最も好ましくは500〜150000である。
【0086】
PU 1:溶媒としての78.7部のメチルエチルケトン中の2.78部の1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、6.97部の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、9.77部のポリオール、例えばビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび1.76部の2,2−ジメチロールプロピオン酸を、容器に入れた。容器を窒素でパージして、非反応イソシアネートが残存しなくなるまで、80℃で3〜10時間、撹拌した。
【0087】
PU 2:溶媒としての76.34部のメチルエチルケトン中の2.96部の1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、8.4部のイソホロンジイソシアネート、10.4部のポリオール、例えばビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび1.82部の2,2−ジメチロールプロピオン酸を、容器に入れた。容器を窒素でパージして、非反応イソシアネートが残存しなくなるまで、80℃で3〜10時間、撹拌した。
【0088】
PU 3:溶媒としての75.2部のメチルエチルケトン中の2.91部の1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、9.87部のメチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、10.23部のポリオール、例えばビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび1.79部の2,2−ジメチロールプロピオン酸を、容器に入れた。容器を窒素でパージして、非反応イソシアネートが残存しなくなるまで、80℃で3〜10時間、撹拌した。
【0089】
PU 4:溶媒としての72.65部のメチルエチルケトン中の14.66部のメチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、10.65部のポリオール、例えばビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび2.04部の2,2−ジメチロールプロピオン酸を、容器に入れた。容器を窒素でパージして、非反応イソシアネートが残存しなくなるまで、80℃で3〜10時間、撹拌した。
【0090】
<水分散性ポリウレタン>
固有の気体および水蒸気バリア特性を有する水混和性溶媒中のポリウレタン(PU)分散液の合成。
【0091】
PU 5:溶媒としての64.6部のメチルエチルケトン中の5.8部のイソホランジイソシアネート、11.9部のメチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、12.9部のポリオール、例えばビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび1.7部の2,2−ジメチロールプロピオン酸を、容器に入れた。容器を窒素でパージして、0.0398モル当量の所望のイソシアネート値を達成するまで(滴定により確定)、80℃で3〜10時間、撹拌した。反応温度を50℃に下げて、3.2部の2[2−アミノエチル)アミノ]エタノールを鎖伸長剤として付加した。30分後、90gのエタノールを付加し、反応をさらに30分間撹拌したままにした。13gの脱イオン水を付加し、反応を室温に冷却させた。次に、メチルエチルケトンを減圧除去して、41%固体の固形分および17.8mg KOH・g−1の酸値を有するポリウレタン分散液(PU5)を生成した。
【0092】
PU 6:溶媒としての8.76部のメチルエチルケトン中の4.98部の1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、10.28部の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2.71部のエチレングリコールおよび1.47部の2,2−ジメチロールプロピオン酸を、容器に入れた。容器を窒素でパージして、0.076モル当量の所望のイソシアネート値を得るまで、80℃で3〜5時間、撹拌した。生成したプレポリマーを40〜50℃Cに冷却し、次いで、1.05部のトリエチルアミンで中和した。プレポリマーを40〜50℃で40分間撹拌後、プレポリマーを25〜30℃に冷却して、次に、dispermat−CV撹拌器を用いて、2000rpmで、68.42部の脱イオン水中に分散させた。2.33部の2[2−アミノエチル)アミノ]エタノールを、鎖伸長剤として付加した。完了後、メチルエチルケトンを減圧除去して、31%固体の固形分および24.3mg KOH・g−1の酸値を有する水ベースのポリウレタン分散液(PU1)を生成した。
【0093】
Takelac WPB−341は、Mitsui Chemicals, Inc.から入手した市販のポリウレタン樹脂である。EP 1 674 529に記載された例示的樹脂PUD1は、Takelac WPB−341と非常によく似ている。
【0094】
<バリアコーティング>
下記の比較例では、上記のポリウレタンを支持体皮膜上に被覆し、バリア特性を確定した。本発明の例示的バリアコーティングでは、多価金属カチオンのさらなるコーティングをポリウレタンコーティングの上に適用して、バリア特性を再び確定した。
【0095】
多価金属カチオンを水溶液として供給し、および/または有機溶媒で調整した。代替的には、金属カチオンを溶媒ベースの系中で供給し得る。表1および2に示した実施例では、ZnOの溶液(BASFより供給)23重量%を、架橋剤および/または主鎖キレート化剤として利用した。ZnOのコーティング重量は6gsmで、#1 K−barを用いて適用した。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示した結果は、本発明の2−コート系を用いた場合の、優れた気体および水蒸気バリア特性を実証している。各場合に、6gsm正味コーティング重量でIK−barを用いて、PUおよび金属カチオンコーティングを適用した。
【0098】
非被覆Mylar 800 PET皮膜の酸素バリア特性は、以下の通りである:12μm厚皮膜は、23℃で90%RHで、約100〜112cm/m/日のOTRを有する。Mylar 800 PET皮膜の水蒸気バリア特性は、以下の通りである:12μm厚PETは、38℃で90%RHで、約35〜40g/m/日のMVTRを有する。
【0099】
任意の微粒子を欠くポリウレタン樹脂、例えば上記と同様に調製し、単一コーティングとして適用されるPU1(実施例1A)は、90%RHで十分なバリア特性を提供しない。しかしながら、ポリウレタン分散液コーティングの上面にこの実施例で適用される6gsm湿潤でのZnO溶液の適用(実施例1B)は、酸素透過率の29倍の低減、ならびに水蒸気透過率の4.7倍低減を生じる。
【0100】
同様の結果は、OPA支持体に関して生じ、そしてOPP(MB400)に関してはさらに印象的に生じる。MB400非被覆皮膜(23μm厚、23℃および90%RH)の酸素バリア特性は、>1500cm/m/日である。したがって、基礎皮膜MB400のOTR気体バリア特性は、2−コート系、3μm厚バリアコーティングにより、ほぼ400倍低減される。MB400非被覆皮膜の水蒸気バリア特性は、以下の通りである:23μm厚MB400は、38℃および90%RHで、約4〜8g/m/日のMVTRを有する。したがって、MB400基礎皮膜と比較して、MVTRは、2−コート系により>50%低減される。
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示した結果は、本発明の2−コート系を用いた場合の、優れた気体および水蒸気バリア特性を実証している。
【0103】
非被覆Mylar 800 PET皮膜の酸素バリア特性は、以下の通りである:12μm厚皮膜は、23℃で90%RHで、約100〜112cm/m/日のOTRを有する。Mylar 800 PET皮膜の水蒸気バリア特性は、以下の通りである:12μm厚PETは、38℃で90%RHで、約35〜40g/m/日のMVTRを有する。
【0104】
任意の微粒子を欠くポリウレタン樹脂、例えば上記と同様に調製し、単一コーティングとして適用される例示的PU1(実施例6A)は、90%RHで十分なバリア特性を提供しない。しかしながら、ポリウレタン分散液コーティングの上面にこの実施例で適用される6g/m湿潤でのZnO溶液の適用(実施例6B)は、酸素透過率の16倍の低減、ならびに水蒸気透過率の4.5倍低減を生じる。
【0105】
市販の気体バリアポリウレタン分散液であるMitsui Takelac WPB−341を、実施例6Aおよび6Bと同じコーティング重量および固体で適用して、同一条件下で試験した。単一コーティングとして、実施例7Aは、実施例6Aと同様の(不十分な)酸素および水蒸気バリア結果を生じる。WPB−341の上面に適用される6gsm湿潤でのZnO溶液のコーティングは、酸素透過率の24倍低減、ならびに水蒸気透過率の5.5倍低減を生じる(実施例7B)。
【0106】
同様に、アンモニアで中和され、その後、6gsm湿潤でZnO溶液で上塗りされる市販のバリアポリウレタンのコーティング(実施例8B)は、単一コーティング(実施例8A)と比較して、酸素透過率の印象的な200倍低減、ならびに水蒸気透過率の約6倍低減を生じる。非被覆Mylar 800基礎皮膜と比較して、実施例8Bの気体バリア特性は、OTRの約300倍の低減、ならびにMVTRの約7倍低減を生じる。
【0107】
同様の結果は、OPA支持体に関して生じ、そしてOPP(MB400)に関してはさらに印象的に生じる。MB400非被覆皮膜(23μm厚、23℃および90%RH)の酸素バリア特性は、>1500cm/m/日である。基礎皮膜MB400のOTR気体バリア特性は、2−コート系、3μm厚バリアコーティングにより、ほぼ900倍低減される。基礎皮膜である非被覆MB400(OPP)と比較して、MVTRは、>50%低減される。
【0108】
如何なる特定の理論にも限定することなく、ポリウレタンコーティング中への貫通度で、コーティング内および/またはコーティングの表面下のカルボン酸基に近づいて、ZnOは表面でのポリウレタンのカルボン酸基を架橋する、ということが可能である。第二の機序も、コーティング内で働いて、ZnOおよびウレタン主鎖間のキレート化メカニズムに関与し得る。これは、ポリマーコーティング内の自由体積の劇的低減、ならびに優れた気体バリア特性を生じる。カルボキシル基のメカニズムまたは役割、ならびにウレタン主鎖に対するキレート化をさらに理解するために、Joncryl 90(任意のウレタン基を欠くアクリル系乳濁液)をZnO溶液で被覆した(実施例13)が、バリア特性の増強は観察されなかった。
【0109】
伝統的に、ポリウレタンは、種々の表面および支持体への優れた接着ならびに積層結合強度を示している。本発明の2−コート系の結合強度を測定するために、試験を実施した。
【0110】
【表3】
【0111】
ポリウレタンと相乗的に作用して、良好な気体および水分バリア特性を与えるZnOを利用する2−コート系は、良好な結合強度特性を有する積層構造も生じる、ということを表3は確証する。
【0112】
【表4】
【0113】
全積層体において、NC250AおよびCA350(Novacote 250 A:B(CA350)、20:1の比で)2−構成成分ポリウレタン接着剤(COIM, Settimo Milanese, Italyから入手可能)を、12gsm湿潤で、40%非揮発性固体で適用される接着剤として用いた。
【0114】
本発明の2−コート系を用いて製造される、接着剤を含む完全に形成された積層体は良好な気体および水蒸気バリア特性を示すが、一方、ポリウレタン分散液単独で製造されるもの(カチオンコーティングなし)は、良好な気体および蒸気バリア特性を示さない、ということを表4は確証する。