(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
それらの例が添付図面に示される、本開示の実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、同様のコンポーネントまたはパーツを指して同様の参照数字が用いられる。いくつかの図には基準として直交座標が示される。
【0017】
以下の議論及び特許請求の範囲において、「第1の導波モード」及び「第2の導波モード」への言及はそれぞれが最低次及び第1次の導波モートを指すとは限らず、むしろ、より一般的に、利用できる導波モードの相異なる1つを指すことが目的とされている。
【0018】
同じく以下の議論においては、技術上普通に用いられている、以下の定義及び術語が用いられる。
【0019】
屈折率プロファイル:屈折率プロファイルは、光ファイバの選ばれたセグメントにわたる、相対屈折率パーセント(Δ%)と(光ファイバの中心から測定した)光ファイバ半径rの間の関係である。
【0020】
相対屈折率パーセント(Δ%)またはΔ:語Δは式:Δ(%)=100×(n
i2−n
c2)/n
i2で定義される屈折率の相対尺度を表し、ここで、n
iはiとして指定される屈折率プロファイルセグメントの最大屈折率であり、n
cは基準屈折率である。
【0021】
図1Aは本開示にしたがう分布ブリルアンセンシングシステム(「システム」)10の一実施形態例の略図である。システム10は、波長λ
1(周波数ν
1)のポンプ光22を発生するポンプ光源20及び可変波長λ
2(可変周波数ν
2)のプローブ光32を発生するプローブ光源30を備える。システム10は、少なくとも第1及び第2の導波モードをサポートする、「少数導波モード」センシング光ファイバ50も備える。一例において、センシング光ファイバ50は非偏波保存ファイバである。センシング光ファイバ50は入力/出力端52を有する。ポンプ光源20及びプローブ光源30は入力/出力端52においてセンシング光ファイバ50に光結合される。システム10は、入力/出力端に光結合された受信器100も備える。一例において、受信器100は、50:50光結合器及び平衡光検出器で形成された平衡コヒーレント検出器に動作可能な態様で接続されたデジタル信号プロセッサを備える。一例の受信器100が以下で詳細に論じられる。
【0022】
一例において、ポンプ光源20とプローブ光源30及び受信器100のセンシング光ファイバ入力/出力端52への光結合は、相異なるセクションの、多モード光ファイバF及び多モード1×2 50:50ファイバ−光結合器40を用いて達成される。一実施形態において、多モード光ファイバF及び多モード結合器40は、挿入損失を最小限に抑えるため、センシングファイバと同じ少数モードファイバ(FMF)でつくられる。したがって、一実施形態において、ポンプ光源20は第1の光ファイバセクションF1を介して第1の光結合器40−1に光結合されるが、プローブ光源30及び受信器100はそれぞれ、それぞれの光ファイバセクションF2及びF3を介して、第2の光結合器40−2に光結合される。第2の光結合器40−2は第4の光ファイバセクションF4を介して第1の光結合器40−1に光結合される。第1の光結合器40−1はセンシング光ファイバ入力/出力端52にも光結合される。
【0023】
一例において、ポンプ光源20は狭線幅レーザを有する。
図2Aは、適する構成の単一モードファイバ60及び第1の光ファイバ増幅器26を用いるファイバレーザ24を有する、ポンプ光源20の一実施形態例を示す略図である。ポンプ光22の波長λ
1は500から1600nmの範囲内にすることができる。様々な実施形態において、ポンプ光波長は800nmより長く、1000nmより長く、1300nmより長く、光ファイバ損失が一般に最小である、1500nmから1600nmの波長範囲にある。一例において、ポンプ光源20はポンプ波長帯域外の自然放出光をフィルタリング除去するための波長可変フィルタ27を備える。
【0024】
図2Aは単一モードファイバ60が結合部材70を用いて多モード光ファイバセクションF1に光結合されている例を示す。一例において、結合部材70は、光ファイバF1に基本モードを励起するための、単純なスプライスである。別の実施形態において、結合部材70は光ファイバセクションF1に特定のモードを入射させるように構成されたモード選択または「モードコンバータ」71を含む。モードコンバータ71には、位相板のような、自由空間ベース素子または、長周期ファイバグレーティング、例えば傾斜ファイバブラッググレーティングのような、ファイバベース素子を含めることができる。
【0025】
図2Aに示されるように、半導体レーザ及びファイバレーザを含む、異なるタイプのレーザをポンプ光源20のためのポンプレーザとして用いることができる。一例において、ポンプ光源20はCW源を含む、すなわちCWポンプ光22を発生する。別の実施形態において、ポンプ光源20はパルスポンプ光22を発生する。パルスポンプ光源20が用いられる場合、様々な実施形態において、パルス幅は10nsより広く、100nsより広く、1000nsより広い。
【0026】
一例において、プローブ光源30は狭線幅波長可変レーザを有する。
図2Bは
図2Aと同様であり、適する構成の単一モードファイバ60及び第1の光ファイバ増幅器36に基づく波長可変ファイバレーザ34を有するプローブ光源30の一実施形態例を示す。一例において、プローブ光源30は自由空間光接続を用いて、例えば光結合光学系80を介して、多モード光ファイバセクションF2に光結合される。この構成はプローブ光32をサポートするためのセンシング光ファイバ50の選ばれた導波モードの使用を可能にする。別の例において、長周期グレーティング(例えば傾斜ファイバブラッググレーティング)ベース光モードコンバータが基本モードを選ばれた高次モードに変換するために用いられる。プローブ光32は、反射プローブ光32Rと弁別するため、「入力プローブ光」と称することができる。
【0027】
図1Bは
図1Aと同様であり、システム10の別の実施形態例を示す。
図1Bのシステム10において、ポンプ光源20及びプローブ光源30はそれぞれ、ファイバセクションF1及びF2を介して光結合器40に光結合される。光結合器40は続いて、3つのポートP1,P2及びP3を有する光サーキュレータ42のポートP1に光ファイバセクションF3を介して光結合される。光ファイバセクションF4がポートP2をセンシング光ファイバ50の入力/出力端52に光接続する。光ファイバセクションF5がポートP3を受信器100に光接続する。システム10のこの構成はポンプ光22及びプローブ光32を、光結合器40において結合し、光ファイバセクションF3を介し、サーキュレータ42及び光ファイバセクションF4を介してセンシング光ファイバ50に向けることを可能にする。次いで反射プローブ光32Rが、光ファイバセクションF4を介し、サーキュレータ42及び光ファイバセクションF5を介してセンシング光ファイバ50の入力/出力端52から受信器100に向けられる。
【0028】
図1A及び1Bを参照し、
図3Aも参照すれば、一実施形態例において、受信器100は、プロセッサユニット(「プロセッサ」)104に動作可能な態様で結合された、多周波数(多波長)光検出器ユニット102を有する。受信器100はメモリユニット(「メモリ」)106も有する。一実施形態例において、受信器100は光スペクトルアナライザを含む。
【0029】
図3Bはシステム10の一例の受信器部及び一例のプローブ光源部の詳細図である。受信器100はデジタル信号プロセッサとして構成されたプロセッサ104を有し、50:50光結合器40及び平衡光検出器110で形成された平衡コヒーレント検出器112も有するとして示される。光結合器40は、波長可変フィルタ27を含む単一モード光ファイバセクション60に光接続され、またプローブ光源30内の波長可変レーザ34に光結合された光ファイバセクションF6に光接続される。この構成は平衡コヒーレント検出器112に対する基準光(すなわちプローブ光32の一部)を発生するための局部発振器を定める。
【0030】
プローブ光源30は、例として、光ファイバセクションF2に選ばれたモードを導入するためにはたらくモードコンバータ71を介してプローブ光を光ファイバセクションF2に結合する前に、パルスプローブ光を発生するためにCW波長可変レーザ34からのCWプローブ光32を光変調するためにはたらく(波長可変レーザ34と、
図2Bには示されていない、光増幅器の間に挿入された)光変調器を有して示される。
【0031】
(多モード)光ファイバセクションF5と単一モード光ファイバセクション60の間にあるモードコンバータ71は、反射プローブ光32Rがセンシング光ファイバ50内でLP
11導波モードにあれば、反射プローブ光をLP
11導波モードからLP
01導波モードに変換するためにはたらく。このモードコンバータは、プローブ光がセンシング光ファイバ50内で既にLP
01導波モードにあれば必要ではない。反射プローブ光32Rだけを通し、他の反射光は全てフィルタリング除去するため、狭帯域フィルタ27が用いられる。
【0032】
図1Aに示されるようなシステム10の一般動作において、ポンプ光源20で発生されたポンプ光22は第1の光ファイバセクションF1を通って第1の光結合器40−1に進み、入力/出力端52においてセンシング光ファイバ50に入る。次いでポンプ光32がただ1つの導波路モードでセンシング光ファイバ60内を進む。
【0033】
次に
図4Aも参照すれば、ポンプ光22のパワーが誘導ブリルアン散乱(SBS)閾に達すると、ブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)54及びストークス(SBS)波(図示せず)がセンシング光ファイバ50内に生成される。SBS波の周波数はポンプ光周波数ν
1から低周波数側にシフトされる。ポンプ光とSBS波の間の周波数差はブリルアン周波数シフトν
Bとよばれ、これはセンシング光ファイバ50の特性並びに光学導波モード及び音響導波モードに依存する。
【0034】
ポンプ光22が導波モードiでセンシング光ファイバ50内を送られ、励起音響波が音響導波モードmにあれば、ブリルアン周波数シフトは式(1):
【数1】
【0035】
で与えられ、対応する波長シフトは式(1a):
【数2】
【0036】
である。ここで、λ
iはポンプ光波長、n
iは次数iの光学導波モードの実効屈折率、V
mは次数mの音響導波モードの実効音速である。周波数ν
2の短パルスプローブ光32が導波モードj(すなわち、ポンプ光22の導波モードとは異なる導波モード)で送られた場合、位相整合条件が満たされれば、すなわち、プローブ光とポンプ光の間の周波数変化が式(2):
【数3】
【0037】
であり、対応する波長シフトが式(2a):
【数4】
【0038】
であれば、周波数がν
2−ν
Bの信号がBDG54によって反射される。ここで、Δn
ij=n
i−n
jは光学(導波)モードiとjの間の実効屈折率の差である。
【0039】
図4Bは
図4Aと同様であり、
図1Aに隠れ線で示される第2のポンプ光源20'を用いるシステム10の別の実施形態を簡略に示す。この実施形態において、ポンプ光源20からの周波数ν
1(波長λ
1)の狭線幅ポンプ光22とポンプ光源20'からの周波数ν'
1(波長λ'
1)の狭線幅ポンプ光22'はセンシング光ファイバ50内を対向方向に伝搬してBDG54を生成する。ポンプ光波長は500nmから1600nmの範囲内とすることができる。様々な実施形態において、波長は800nmより長く、1000nmより長く、1300nmより長く、ファイバ損失が一般に最小である、1500nmから1600nmの波長範囲にある。
【0040】
周波数差(ν
1−ν'
1)がブリルアン周波数シフトν
Bに一致すれば、BDG54がセンシング光ファイバ50内に生成される。単一ポンプ光実施形態におけるように、ブリルアン周波数シフトν
Bはセンシング光ファイバ50の特性並びに光学導波モード及び音響導波モードに依存する。ポンプ光22及びポンプ光22'が光学導波モードiで送られ、励起音響波が音響導波モードmにあれば、ブリルアン周波数シフトν
B及び対応する波長シフトは、上記の式(1)及び(1a)で与えられる。
【0041】
周波数ν
2のプローブ光32がポンプ光22と同じ方向に伝搬する光学導波モードjで送られた場合、位相整合条件が満たされれば、すなわち、プローブ光32とポンプ光22の間の周波数変化が式(2)を満たすか、またはプローブ光32とポンプ光22の間の波長変化が式(2a)を満たせば、ν
2−ν
Bの信号がBDG54によって反射される。
【0042】
いずれの実施形態においても、ナノ秒パルス幅を有し、ポンプ光22とは別の導波モードでサポートされる、センシング光ファイバ50に沿って局在化され、広帯域短パルスプローブ光32により時間ドメインにおいてスキャンされ得る、安定なBDG54が狭帯域ブリルアン利得によって形成され得る(狭帯域BDGとも称される)。
【0043】
図1A及び1Bに示されるようなシステム10の実施形態は、システムの動作の概念的原理を示す例示実施形態であり、図示される実施形態と同じ機能を達成する他の実施形態が構成され得ることに注意されたい。
【0044】
異なる導波モードでサポートされるポンプ光及びプローブ光
本開示の一実施形態は、ポンプ光22がプローブ光32とは異なる導波モードで進む実施形態である。一例において、ポンプ光22はプローブ光32の導波モードより低次の導波モードでサポートされ、この導波モードはポンプ光導波モードと称され得る。
図5Aは、プローブ光32に対する導波モードより低次の導波モードでポンプ光22がサポートされるときの、センシングプロセスにともなう相対周波数を示す周波数スペクトルである。
【0045】
別の例において、ポンプ光22はプローブ光32の導波モードより高次の導波モードでサポートされる。
図5Bは
図5Aと同様であり、プローブ光に対する導波モードより高次の導波モードによってポンプ光22がサポートされるときの、センシングプロセスにともなう相対周波数を示す。
【0046】
一例において、ポンプ光12は単一導波モードでサポートされ、プローブ光32はポンプ光導波モード以外の複数の他の導波モードでサポートされる。
【0047】
歪及び温度の同時測定
BDG54は、センシング光ファイバ50が受ける熱膨張及び変形の結果として、温度及び歪に依存する。すなわち、反射プローブ光32Rのピーク周波数変化(またはブリルアン周波数シフトの変化)は温度変化量(δT)及び歪変化量(δε)により変化する。すなわち式(3):
【数5】
【0048】
である。ここで、K
νTは温度係数、Tは℃単位の温度、K
νεは歪係数、εは歪である。
【0049】
少数モードファイバ(FNF)の2つのファイバモードの間の実効屈折率差は歪及び温度によって変わり得るから、ポンプ光とプローブ光の間の波長差も歪及び温度に関わる。歪変化量(δε)及び温度変化量(δT)による(本明細書においてポンプ光とプローブ光の間の波長間隔とも称される)ポンプ光とプローブ光の間の波長差(Δλ=λ
1−λ
2)の変化は
式(4):
【数6】
【0050】
と表すことができる。ここで、K
λε及びK
λTはポンプ光とプローブ光の間の波長差に対する歪係数及び温度係数である。式(3)及び(4)を解けば、歪変動量及び温度変動量は式(4a):
【数7】
【0051】
で与えられる。K
λεK
νT≠K
λTK
νεであれば、行列式(4a)に対する解が存在する。すなわち、同時分布歪/温度測定が達成され得る。
【0052】
したがって、センシング光ファイバ50に沿う異なる場所における温度及び歪は、プローブ光32と反射プローブ光32Rの間の周波数差を決定するか、またはプローブ光とポンプ光の間の波長間隔を測定することにより、BDG54を用いて評価することができる。センシング光ファイバ50に沿う異なる場所における同時温度/歪測定は、プローブ光32と反射プローブ光32Rの間の周波数差を決定し、プローブ光とポンプ光の間の波長間隔を測定することによって、BDG54を用いて同時に評価することができる。BDG54の狭スペクトル帯域のため、光分解能センシングを達成することができる。一方では、プローブ光32は比較的短いパルス幅を有することができるから、高空間分解能が得られる。
【0053】
空間分解能
センシング光ファイバ50の入力/出力端52からプローブ光32が反射される位置までの距離Zは式(5):
【数8】
【0054】
で与えられる。ここで、tはプローブ光32の入射と反射プローブ光32Rの受信までの時間、n
gはプローブ光32が入射されるセンシング光ファイバ50の導波モードの群屈折率、cは真空中の光速度である。
【0055】
空間分解能ΔZはプローブ光パルス幅τで決定され、式(6):
【数9】
【0056】
で与えられる。τ=100nsのプローブ光パルス幅はΔZ=10mの空間分解能に対応する。1mより短い空間分解能を得るには、プローブ光パルス幅τを10nsより小さくすべきである。様々な実施形態において、プローブ光パルス幅τは5nsより小さく、1nsより小さい。様々な実施形態において、プローブ光パルス幅は0.1nsと5nsの間であり、0.1nsと1nsの間にある。
【0057】
対向方向に伝搬するポンプ光22及び22'を用いる第2の実施形態において、2つのポンプ光ビームは、2つの対向方向に伝搬するポンプ光パルスが時間ドメインでオーバーラップする場所において広帯域ブリルアン利得(すなわち、広帯域BDG54)を有する安定なBDG54を生成するために選ばれた、短いポンプ光パルスを有する。
【0058】
センシング光ファイバ50の入力/出力端52からのこの場所の距離は式(7):
【数10】
【0059】
で与えられる。ここで、Δtはポンプ光パルス22及び22'の入射間の時間遅延である。空間分解能ΔZは長い方のポンプパルスのパルス幅τ
Sで決定され、式(8):
【数11】
【0061】
異なる場所における温度及び歪を決定するため、スペクトル帯域が狭いプローブ光32が用いられる。反射プローブ光32Rの測定されるスペクトルはプローブ光スペクトルとBDG反射スペクトルの畳み込みである。これは、スペクトル幅が狭い、反射プローブ光32Rの測定スペクトルを得るための狭線幅プローブ光32の使用を可能にし、よって温度または歪の比較的高い測定感度レベルが可能になる。したがって、本明細書に開示されるシステム及び方法を用いて高空間分解能ΔZ及び高測定感度レベルを同時に得ることができる。
【0062】
実際上、空間分解能ΔZはセンシング距離Z(すなわち、センシング光ファイバ50の入力/出力端52からの距離)の関数である。下の表1にセンシング距離の例を、本明細書に開示されるシステム及び方法を用いて得ることができる、対応する空間分解能ΔZとともに挙げてある。
【表1】
【0063】
プローブパワー及び反射プローブパワーの推移
非線形マクスウエル方程式を解くことにより、ポンプ光22及び反射プローブ光32Rの光パワーの推移を得ることができる。結果は、パワー変化が、式(9):
【数12】
【0064】
で定義される、因子Fを介してセンシング光ファイバ50の設計パラメータに関係付けられることを示す。ここで、I
upp及びI
ussは式(10):
【数13】
【0066】
で定義される、重なり積分である。A
有効pp及びA
有効ssは、式(11):
【数15】
【0068】
で与えられる、ポンプ光及びプローブ光に対する光学的有効面積である。
【0069】
上式において、E
0及びE
Sはそれぞれポンプ光22及びプローブ光32の電場であり、ρ
uはポンプ光によって発生される音場であり、記号*は場の複素共役を表す。因子Fは、ファイバ設計がプローブ光32及び反射プローブ光32Rのパワー伝搬にどのように影響するかを示し、特定のセンシング用途にセンシング光ファイバ50の設計を最適化するために用いることができる。一般的に言えば、Fの値が小さくなることはBDG54,ポンプ光22とプローブ光32の間の相互作用の効率が益々高くなることを意味する。
【0070】
センシング光ファイバに対する設計例
一例において、センシング光ファイバ50は高次導波モードの遮断波長を長くすることによって2つ以上の導波モードをサポートするように構成される。
図6は、センシング光ファイバ50についての屈折率プロファイル例の略図である。センシング光ファイバ50はコア56及びクラッド層58を有する。コア56は、ステップインデックスプロファイルによるか、グレーデッドインデックスプロファイルによるか、他の一層複雑なプロファイルによって定めることができる。コアのΔ及び半径rに対して適切に選ばれた値により、所望の数の導波モードをコア56によってサポートすることができる。
図6はステップコアインデックスプロファイル(実線)及びグレーデッドインデックスコアプロファイル(破線)のいずれも示す。
【0071】
下の表2から表4はセンシング光ファイバ50に対する総数で8の設計実施例を示す。全ての実施例はステップインデックスプロファイルを有する。センシング光ファイバ50のコアΔは0.25%〜1%であることが好ましく(0.4%≦Δ≦0.7%であることがさらに好ましい)、コア半径rは4μm≦r≦10μmであることが好ましい(5μm≦r≦7μmであることが好ましい)。センシング光ファイバ50のF因子は76μm
2≦F因子≦312μm
2であることが好ましく、例えば100μm
2≦F因子≦200μm
2である。センシング光ファイバ50の有効面積A
有効は50μm
2≦A
有効≦150μm
2であることが好ましく、例えば50μm
2≦A
有効≦100μm
2である。
【0072】
実施例1から5は2つの導波モード、LP
01及びLP
11を有する。基本光学導波モードと基本音響モードの間のオーバーラップは約0.99であり、LP
11導波モードと基本音響モードの間のオーバーラップはこれら5つの実施例の全てについて約0.4である。しかし、コアΔを高くするほど、コア半径rを小さくすることが可能になる。この結果、LP
01導波モード及びLP
11導波モードに対する有効面積は一層小さくなり、一層小さいF因子及び一層高いシステム効率が得られる。
【0073】
実施例6〜8は4つないし5つの導波モードを有する。ポンプ光22を導波するためにLP
01導波モードが用いられれば、プローブ光32はLP
11,LP
02またはLP
21の導波モード、あるいはこれらの組合せによって導波されることになろう。プローブ光32を送るために高次導波モードの組合せが用いられれば、反射プローブ光32Rは異なる波長の複数のピークを有するであろう。また実施例6及び8に示されるように、ポンプ光22を送るために高次導波モード、例えばLP
11を用いることもできる。この場合、基本導波モードLP
01または別の高次導波モードをプローブ光32を送るために用いることができる。実施例6〜8は、やはり、一層小さなF因子、したがって一層高いシステム効率を可能にする、より高いΔに対する値を示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0074】
実験結果
初めに
図1のシステム10について4つの実験を行った。線幅が1kHzより狭い単一周波数ファイバレーザ24及び単一モードファイバ光増幅器26を有する主発振器パワー増幅器(MOPA)として
図2Aに示されるようにポンプ光源20を構成した。ファイバレーザ24の波長は1550.134nmであった。線幅が約700kHzの波長可変半導体レーザ34及び単一モードファイバ光増幅器36を有するMOPAとして、
図2Bに示されるようにプローブ光源30を構成した。波長可変半導体レーザ34は1500nmから1580nmの間で同調可能であり、最微細同調ステップは0.001nmであった。ポンプ波長帯域外の自然放出光をフィルタリング除去するため、スペクトル帯域幅が1nmの波長可変光フィルタを用いた(
図2Aを見よ)。
【0075】
ポンプ光源20及びプローブ光源30を構成する2つのMOPAに用いた全ての光ファイバ60は単導波モードであった。プローブ光源30には1×2多モードファイバ結合器40−2の入力ポートの1つへの自由空間光結合(例えば
図2Bの光結合光学系80を見よ)を用いた。
【0076】
多モードセンシング光ファイバ50によってサポートされる(1つまたは複数の)励起導波モードは、プローブMOPAの出力単一モードファイバピグテイルと多モード結合器40−2の入力多モードファイバピグテイル(ファイバセクションF2)の間のオフセットの適切な設定によって選ばれ得ることに注意されたい。次いで、1×2多モードファイバ結合器40−1が上述したようにプローブ光32をポンプ光22に結合する。結合されたポンプ光22とプローブ光32を、多モードファイバ光サーキュレータ42を介して、センシング光ファイバ50に入射させた。
【0077】
結合器40−1及び40−2の結合比はいずれもほぼ50:50であった。ポンプMOPAの出力単一モードファイバピグテイル及び第2の結合器の入力多モードファイバピグテイルは、センシング光ファイバ50に基本導波モードだけを励起するため、中心と中心を合わせてスプライスした。少数導波モードファイバからの反射光を光スペクトルアナライザの形態の受信器100で計測した。
【0078】
第1の実験
第1の実験において、センシング光ファイバ50は長さ16.16kmであり、基本導波モードLP
01及び1つの高次導波モードLP
11をサポートした。基本導波モードの導波モードフィールド径は14.2μmであり、1550nmにおける損失は0.188dB/kmであった。ポンプ光22はLP
01導波モードだけで送った。また、MOPAプローブ光源30の出力単一モードファイバピグテイル(光ファイバ60)と多モード結合器の入力多モードファイバピグテイル(ファイバセクションF2)の間のオフセットを適切に設定することによって、プローブ光32をLP
11導波モードだけに励起した。
【0079】
図7Aは、プローブ光32の波長λ
2をLP
11導波モードに対するBDG54の波長に同調させた(ポンプ光とプローブ光が式(2a)を満たす波長関係にある)ときに受信器100によって測定されるような、センシング光ファイバ50からの反射光の測定された光スペクトルを示す。センシング光ファイバ50に入射させたポンプ光及びプローブ光のパワーはそれぞれ約375mW及び約5.6mWであった。
【0080】
図7Bは、ポンプ光22(LP
01)、プローブ光32(LP
11)及びプローブ反射光32Rの波長関係を示す。
図7Aに示されるように、右方の1550.224nmにある最高ピークはポンプ光22のSBSであり、左隣の(1550.134nmにある)第2のピークは少数導波モードファイバ内のポンプ光22のレイリー散乱反射である。SBSの波長シフトはΔλ=0.09nmであり、11.25GHzのブリルアン周波数シフトに対応する。1548.69nmにあるピークは少数導波モードファイバ内のプローブ光32のレイリー散乱反射であり、1548.78nmにあるピークはBDG54からの反射プローブ光32Rである。反射プローブ光32RはΔλ=0.09nm(11.25GHz)の波長(周波数)シフトを有し、これはポンプ光22のブリルアン周波数シフトと同じである。
【0081】
ポンプ光22とプローブ光32の間の波長差Δλは、LP
01導波モードとLP
11導波モードの間の屈折率差〜1.329×10
−3に対応する、約1.444nmである。プローブSBSと反射プローブ光32Rは同じ波長を有するから、1548.78nmにある波長ピークがプローブSBSからではなく、ポンプ光22によって形成されたBDG54の反射から生じていることを確認すべきである。
【0082】
そのような確認を実施するため、センシング光ファイバ50からの反射光の光スペクトルを、システム10の2つの異なる動作状態:
(1)ポンプ増幅器26オン及びプローブ光源30オン、及び
(2)ポンプ増幅器26オフ及びプローブ光源30オン、
について測定した。
【0083】
これらの2つの動作状態について測定されたスペクトルが
図8に示される。ポンプ増幅器26が切られている(「ポンプオフ」状態にある)ときは、ポンプパワーの低下によるBDG54の消滅(または感度の低下)のため「ポンプオン」曲線から、左から2番目のピークが消失する。このことも、左から2番目のピークがプローブ光32のSBSから生じているのではないことを確認する。
【0084】
図9はプローブ光32(LP
11導波モード)について測定されたBDGスペクトルをグラフで示す。3dB反射帯域幅Δνは約0.75GHzであり、これはSBS利得スペクトルの一般的なスペクトル幅よりかなり広い。センシング光ファイバ50に沿う非一様性がBDG54の反射スペクトルの拡大を生じさせると考えられる。
【0085】
図10はポンプ光パワーによる反射プローブ光32Rの規格化パワーの変化をグラフで示す。適合曲線は、反射プローブ光32Rのパワーがポンプ光22のパワーの増大にともなって指数関数的に大きくなっていることを示す。
【0086】
第2の実験
第2の実験においては、5.5km長のセンシング光ファイバ50を用いた。センシング光ファイバ50はコア56とクラッド層58の間の屈折率差Δが約0.34%のステップインデックスプロファイルを有し、コア半径は約r=6.9μmである。基本導波モードの導波モードフィールド径は〜12.8μmである。センシング光ファイバ50は基本導波モード(LP
01)及び1つの高次導波モード(LP
11)だけをサポートするように構成した。
【0087】
ポンプ光22を、ポンプ光22がLP
01導波モードでしか進まないように、センシング光ファイバ50に導入した。MOPAプローブ光源30の出力単一モードファイバピグテイル(すなわち、単一モード光ファイバ60)と多モード結合器の入力多モードファイバピグテイル(すなわち、ファイバセクションF2)の間のオフセットを適切に設定することによって、プローブ光32がLP
11導波モードだけを励起するようにした。
【0088】
図11は、ポンプ光22及びプローブ光32がそれぞれLP
01導波モード及びLP
11導波モードで進むときに受信器100によって測定されるような、センシング光ファイバ50からの反射光の光スペクトルをグラフで示す。センシング光ファイバ50に入射させたポンプ光及びプローブ光のパワーはそれぞれ約375mW及び約5.6mWであった。ポンプ光22及びプローブ光32の波長はそれぞれλ
1=1550.134nm及びλ
2=1548.017nmであった。
【0089】
この実験の場合も、プローブ波長から0.09nmの増分シフト(ブリルアン波長シフトΔλ
B)を有する、プローブ光32の反射ピークが明瞭に見られる。
図12はプローブ光(LP
11導波モード)について測定されたBDGスペクトルをグラフで示す。3dB反射帯域幅Δνは約4.375GHzであり、これは第1の実験のセンシング光ファイバ50のΔνの約6倍の大きさである。第2の実験におけるセンシング光ファイバ50の長さは第1の実験のセンシング光ファイバの長さの約1/3でしかないことを考慮すると、第2の実験のセンシング光ファイバのファイバ一様性は第1の実験のセンシング光ファイバよりかなり悪いはずである。このことは、短パルスの形態のプローブ光32を用いればBDG54の一様性を検出できることを示唆している。
【0090】
第3の実験
上の2つの実験において、プローブ光導波モード(LP
11)の次数はポンプ光導波モード(LP
01)より高い。第3の実験においては、プローブ光32に用いる導波モードをポンプ光22に用いる導波モードより低次にした。
【0091】
第3の実験において、実験構成は、プローブ光源30に光結合される光ファイバセクションF2を、センシング光ファイバ50にLP
01導波モードを励起するため、多モード光結合器40の入力の1つに中心と中心を合わせてスプライスしたことを除いて、
図1Bに示される構成と基本的に同じである。ポンプ光源30に光結合される光ファイバセクションF1は、センシング光ファイバ50にLP
11導波モードを励起するため、多モード光結合器40の別の入力に自由空間結合した。
【0092】
センシング光ファイバ50は、長さ10kmであり、約12μmの導波路モードフィールド径を有し、基本導波モード(LP
01)及び1つの高次導波路モード(LP
11)だけをサポートした。コア56とクラッド層58の間の屈折率差は約0.4%であった。ポンプ光22を、LP
11導波モードで送られるように、センシング光ファイバ50に与えた。プローブ光32を、LP
01導波モードでサポートされるように、センシング光ファイバ50に与えた。
図13は、ポンプ光22及びプローブ光32がそれぞれLP
11導波路モード及びLP
01導波モードで進むときに測定されるような、受信器100で測定されたセンシング光ファイバ50からの反射光の光スペクトルをグラフで示す。センシング光ファイバ50に入射させたポンプ光パワー及びプローブ光パワーはそれぞれ約500mW及び約5.6mWであった。ポンプ光及びプローブ光の波長はそれぞれλ
1=1550.134nm及びλ
2=1551.654nmであった。この実験の場合も、プローブ波長λ
2から0.09nmの増分シフト(ブリルアン波長シフトΔλ
B)を有する、反射プローブ光32Rの反射ピークが明瞭に見られる。
【0093】
第4の実験
上の3つの実験において、プローブ光32及びポンプ光22はいずれもCWであった。第4の実験においては、プローブ光をパルス幅が1nsのパルスとした。システム10を
図1Bに示される構成と基本的に同じ構成とし、プローブ光源30は波長可変レーザ34と光増幅器36の間に挿入された光変調器(図示せず)を用いる1nsパルスレーザ源を備えている(
図3Bを見よ)。プローブ光32は繰返し数が100kHzの1nsパルスを有していた。センシング光ファイバ50は上述した第1の実験に用いたものと同じ16km光ファイバであった。ポンプ光22をLP
01導波モードで送った。また、MOPAプローブ光源30の出力単一モードファイバピグテイルと多モード結合器の入力多モードファイバピグテイル(ファイバセクションF2)の間のオフセットを適切に設定することにより、プローブ光32がセンシング光ファイバ20にLP
11導波モードだけを励起するようにすることができた。
【0094】
図14は、ポンプ光22とプローブ光32の波長関係が式(2a)を満たすようにプローブ光32の波長をLP
11導波モードに対してBDG54の波長に同調させた場合に、光スペクトルアナライザの形態の受信器100で測定されるような、センシング光ファイバ50からの反射光の測定された光スペクトルを示す。
図14の曲線はポンプ光をオン/オフさせた場合に測定された光スペクトルである。センシング光ファイバ50に入射させたポンプ光パワー及び平均プローブ光パワーはそれぞれ約390mW及び約10mWであった。
【0095】
この実験の場合も、プローブ波長から0.09nmの増分シフト(ブリルアン波長シフトΔλ
B)を有する、プローブ光32の反射ピークが明瞭に見られる。
【0096】
第5の実験:歪/温度同時測定の実行可能性の実証−センシング光ファイバ50(少数モードファイバ(FMF))の歪係数Kλε及び温度係数KλTの測定
図15に示されるシステムを用いて実験を行った。
図15を参照すれば、センシング光ファイバ50のFMF歪係数K
λε及び温度係数K
λTを測定するため、FMF干渉計200を用いられている。干渉計200は、2本の標準単一モード(すなわち、1550nmにおいて単一モード)ファイバ(SMF)55A及び55B及び1本の、第1の実験に用いたものと同様の、23.3cm長FMF(センシングファイバ50)を備える。
図15に示されるように、FMF(センシングファイバ50)を2本のSMF55Aと55Bの間にスプライスする。入力側において、FMF内に基本モード(LP
01)及び第1高次モード(LP
11)のいずれも励起するため、センシングファイバ50とSMF55Aを2本のファイバのコア軸の間を適切にオフセットさせてスプライスする。出力側において、センシングファイバ50とSMF55Bもオフセットさせる。ファイバピグテイル付広帯域(1535〜1561nm)光源210をSMF55Aの入力端に接続する。光スペクトルアナライザ220により、(SMF55Bの出力端における)干渉計からの出力光を計測する。LP
01モードとLP
11モードの間の実効光路長差のため、出力光スペクトルに干渉縞が見られるであろう。出力端において、LP
01モード光とLP
11モード光は、式(12):
【数17】
【0097】
が成り立つときに、同相である。ここで、Δn
実効はLP
01モードとLP
11モードの間の実効屈折率差であり、LはFMFの長さであり、λは真空中の光の波長であり、mは整数である。歪が少数モードファイバ(センシングファイバ50)に加えられると、第m同相ピークの波長が歪(dε)によって生じるFMFの長さ変化(dl)にともなって変化する。波長の変化は式(13):
【数18】
【0098】
と表すことができ、B
εは式(13a):
【数19】
【0099】
で与えられる。次いで、第m同相ピークの波長と歪によるファイバ長変化の間の関係は式(14):
【数20】
【0100】
である。ここで、λ
0はFMFに歪が加えられていないときの第m同相ピークの波長であり、ΔLは歪によるFMFの長さ変化である。B
εΔL/L≪1であれば、式(14)は式(15):
【数21】
【0101】
に簡約される。次いでポンプ光とプローブ光の間の波長差の歪係数K
λεを式(16):
【数22】
【0102】
から得ることができる。ここで、n
実効,pはポンプ光モードの実効屈折率であり、Δλ
0及びΔn
実効,0はそれぞれ、ファイバに歪が加えられていないときの、ポンプ光モードとプローブ光モードの間(すなわちLP
01モートとLP
11モードの間)の波長差及び実効屈折率差である。
【0103】
温度変動による第m同相ピークの波長変化は式(17):
【数23】
【0104】
と書くことができ、B
Tは式(17a):
【数24】
【0105】
で与えられる。次いで、第m同相ピークの波長と温度変化の間の関係は式(18):
【数25】
【0106】
である。ここでλ
0は所期温度T
0における第m同相ピークの波長である。B
T(T−T
0)=B
TΔT≪1であれば、式(18)は式(19):
【数26】
【0107】
に簡約される。したがって、ポンプ光とプローブ光の間の波長差に対する温度係数K
λTは、式(20):
【数27】
【0108】
から得ることができる。ここでΔλ
0及びΔn
実効,0はそれぞれ温度がT
0にあるときの、ポンプ光モードとプローブ光モードの間(すなわちLP
01モートとLP
11モードの間)の波長差及び実効屈折率差である。
【0109】
歪係数を測定するため、FMFの一端がポストに固定され、他端がマイクロメータ並進ステージに取り付けられる。並進ステージを動かすことによって、FMFに歪が加えられて、EMFに長さ変化が生じる。発明者等はFMFにおける長さ変化に対する透過スペクトルの変化を評価した。さらに詳しくは、
図16は干渉計200の透過スペクトル(波長の関数としての強度)を示し、FMFの長さ変化ΔLによる干渉計200の透過スペクトルの変化も示す。透過スペクトルは[第2のSMFの末端で測定された出力スペクトル]−[第1のSMFへの入力端に与えられた入力スペクトル]である。
図16は、ΔL=0μmからΔL=500μmまで100μm増分で変えた異なるΔL値にそれぞれが対応する、6本の曲線を示す。歪が大きくなるとともに透過スペクトルが短波長側にシフトすることがグラフからはっきり分かる。さらに詳しくは、
図16は左から4番目の透過光強度ピーク(矢印を見よ)に対応するピーク波長が、約1590nm(ΔL=0,点B)からΔL=500μmのときの約1584nm(点A)まで変化したことを示す。
【0110】
図17は測定された(
図16の第4ピークに対応する)波長対FMFの長さ変化を、また第4透過ピークに対するピーク波長対ΔLの適合曲線も、グラフにして示す。グラフの左端は点B(ΔL=0)に対応し、グラフの右端は点A(ΔL=500μm)に対応する。適合曲線は式:
λ=aΔL+b,a=-0.01060nm/μm,b=1589.5073nm,
に対応する。この式を用いて計算すれば、B
ε=-1.5544e
−6/μεを得ることができる。測定されたパラメータ:
λ
p=1550nm,Δn
実効=1.386×10
−3,及びn
実効=1.47,
を考慮することで、ポンプ光とプローブ光の間の波長差に対するFMFの歪係数K
λεはK
λε=-0.002269pm/μεであることが分かる。
【0111】
温度係数を測定するため、FMFを束縛せずに温度チャンバに入れた。次に、FMFに様々な温度をかけることにより、温度変化に対する透過スペクトルの変化を評価した。温度は9℃から88℃まで変えた。さらに詳しくは、
図18は干渉計200からの透過スペクトル(波長の関数としての強度)を示し、温度変化による干渉計200の透過スペクトルの変化も示す。
図18は、T=9℃に始まって88℃の最終温度に至る様々な温度にそれぞれが対応する、6本の曲線を示す。温度が高くなるとともに透過スペクトルが短波長側にシフトすることがはっきり分かる。さらに詳しくは、
図18は左から2番目の透過光強度ピークに対応するピーク波長が(T=9℃における)約1571.7nmから(T=88℃における)約1570.5nmまで変化したことを示す。
図19は透過スペクトルの変化、さらに詳しくは
図18の右側に示される同相ピークの温度による波長変化を示す。
図19はピーク波長対温度の最良適合曲線も示す。適合曲線は式:
λ=aΔT+b,a=-0.01742nm/℃,b=1571.9004nm,
で表される。したがって、B
T=-1.1083×10
−5/℃が得られる。測定されたパラメータ:
λ
p=1550nm,Δn
実効=1.386×10
−3,及びn
実効=1.47,
を考慮することで、ポンプ光とプローブ光の間の波長差に対するFMFの温度係数K
λTはK
λT=-0.016197pm/℃であることが分かる。
【0112】
FMFの歪係数Kνε及び温度係数KνTの測定
図20に示されるシステムを用いて実験を行った。
図20は、歪差または温度差がFMF(センシングファイバ50)に与えられたときの、ブリルアン周波数シフト,BFSの変化を測定するための実験システム300の例を示す。システム300はサーキュレータ42を介してセンシングファイバ50に光を与えるDFBレーザ源305を備える。入力光は光サーキュレータのポートP1に入り、サーキュレータのポートP2を介してセンシングファイバ50の入力/出力端52に入る。次いで、センシングファイバ50からの光は入力/出力端52を通ってサーキュレータ42のポートP2に戻り、ポートP2から光サーキュレータのポートP3を介し、50:50光結合器330を通って光検出器102に向かうルートをとる。光検出器102の出力は次いでプロセッサ104(例えばスペクトルアナライザ320)によって解析される。さらに詳しくは、DFBレーザ305からの光は、例えば90:10光結合器330Aによって、2つの部分に分けられる。一方の部分(例えば90%)は1つ以上の増幅器(例えば、SOA(半導体光増幅器)315A及びErドープファイバ増幅器315B)によって増幅されて、上述したように、センシングファイバ50に向けて送られ、他方の部分(例えば10%)は光結合器330に直接与えられる。したがって、光検出器102は、DBRレーザによって与えられる(センシングファイバ50による改変を受けていない)入力光及びブリルアン周波数シフト,BFSの情報を含むセンシングファイバ50によって与えられる光出力(ブリルアン散乱光)のいずれも、光結合器330から受け取る。2つの光部分の周波数差(すなわちブリルアン周波数シフト)は歪及び/または温度によって変化するであろう。
図21は、BFS値(με)対歪のグラフであり、FMF(センシングファイバ50)におけるBFS対歪の最良適合直線のグラフも示す。適合関数(ν
B=aε+b,a=0.0143MHz/με,b=10.9267GHz)からFMFの歪係数K
νεがK
νε=0.0143MHz/μεであることが分かる。
図22はBFS値対温度の曲線及び対応する最良適合関数を示す。適合関数(ν
B=aT+b,a=0.9005MHz/℃,b=10.9105GHz)から、FMFの温度係数K
νTがK
νT=0.9005MHz/℃であることが分かる。測定されたFMFの歪係数及び温度係数は、K
λε=-0.00227pm/με,K
λT=-0.01610pm/℃,K
νε=0.0143MHz/με,K
νT=0.9005MHz/℃であり、この結果、
【数28】
【0114】
したがって、BFSの変化(Δν
B)及び(本明細書ではプローブ光とポンプ光の間の波長間隔とも称される)プローブ光とポンプ光の間の波長差の変化(δ(Δλ))を測定することにより、式(21):
【数29】
【0115】
を解くことで歪及び温度の変化量の同時測定を達成することができる。
【0116】
本開示を実施形態及びそれらの特定の実施例を参照して本明細書に示し、説明したが、他の実施形態及び実施例による同様の機能の実施及び/または同様の結果の達成が可能であることが当業者には容易に明らかであろう。そのような等価の実施形態及び実施例は全て本開示の精神及び範囲内にあり、添付される特許請求の範囲に包含されるとされる。本開示の精神及び範囲を逸脱することなく本開示に様々な改変及び変形がなされ得る得ることも当業者には明らかであろう。したがって、本開示の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価形態の範囲内に入れば、本開示はそのような改変及び変形を包含するとされる。