(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反射防止層(C)が、前記低屈折率層(C1)と透明樹脂基板側に位置する中屈折率層(C2)との二層から構成され、該中屈折率層(C2)は、その屈折率が1.50以上1.75未満であり、厚みが50〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂積層版。
反射防止層(C)が、前記低屈折率層(C1)、前記中屈折率層(C2)、および該低屈折率層と該中屈折率層との間に設けられた高屈折率層(C3)の三層から構成され、該高屈折率層(C3)は、その屈折率が1.60以上2.00未満であり、厚みが50〜200nmであり、高屈折率層(C3)の屈折率が中屈折率層(C2)の屈折率より大きいことを特徴とする請求項2に記載の透明樹脂積層版。
表面処理シリカゾルが、(メタ)アクリロイル基修飾シリカゾルまたはビニル基修飾シリカゾルであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の透明樹脂積層板。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の透明樹脂積層板は、透明樹脂基板(A)、ハードコート層(B)、および反射防止層(C)が、この順で積層された基本構造を有している。更に、これらの層(BおよびC)が、前記特定された構造、物性、成分から構成されることに特徴がある。
【0010】
〔透明樹脂基板〕
透明樹脂基板としては、耐衝撃強度に優れ視野性の障害にならない透明樹脂であれば何ら制限はない。透明性及び耐衝撃強度の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂或いはポリメチルメタクリレート樹脂からなる基板が好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂との積層基板でもよい。当該基板の厚みは、要求される透明度や耐衝撃強度から適宜選択して設計されるが、通常、0.2〜2.0mmの範囲から選択される。
【0011】
〔ハードコート層(B)〕
透明樹脂基板上にハードコート層(B)が積層され、該層(B)は、ハードコート層I(B1)とハードコート層II(B2)とからなる。ハードコート層I(B1)とハードコート層II(B2)とは、ハードコート層I(B1)が基板側に位置し、ハードコート層II(B2)の上に、後述する反射防止層(C)が積層される。
【0012】
〔ハードコート層I(B1)〕
ハードコート層I(B1)は主として硬度に寄与する層であり、その膜厚は5〜20μm、好ましくは10〜20μmである。5μm未満では硬度が不十分であり、20μmを超えると外観不具合や後加工性が困難となる。
該層は、(a)1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ウレタンアクリレート(以下、多官能性ウレタンアクリレートともいう)と、該多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して、(b)表面処理シリカゾル40〜200質量部を含んでなる硬化性組成物(以下、B1組成物ともいう)を硬化して得られる層である。
【0013】
<(a)多官能性ウレタンアクリレート>
多官能性ウレタンアクリレートは、ジイソシアネート化合物と水酸基を複数有している(メタ)アクリレート化合物との重付加反応によって得られる重合性化合物であり、特に、(メタ)アクリロイル基を6個以上有していることが必須である。当該多官能性ウレタンアクリレートを使用することにより、表面硬度が高い緻密な層を形成することが可能となる。(メタ)アクリロイル基を6個未満の化合物では、表面硬度が不十分で耐擦傷性に乏しいものとなる。
重付加反応の原料となるジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートや1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ジイソシアネートが例示される。一方の原料となる(メタ)アクリレート化合物としては、トリメチロールプロバン(メタ)アクリレートやペンタエリスリトール(メタ)アクリレートが例示される。
これら両原料を、(メタ)アクリロイル基が6倍モル以上となる量比で用いて、それ
自体公知の方法で反応させて、前記多官能性ウレタンアクリレートとすることができる。
【0014】
<(b)表面処理シリカゾル>
表面処理シリカゾルは、多官能性ウレタンアクリレートと組み合わせることによって本発明の透明樹脂基板に極めて高い硬度を付与する成分で
あり、前記該多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して、40〜200質量部の割合で配合することが重要である。
表面処理シリカゾルは、それ自体公知のシリカ粒子の表面を、3- メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの末端にアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤で処理した(メタ)アクリロイル基修飾シリカゾル、或いはビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するシランカップリング剤で処理したビニル基修飾シリカゾルである。
表面処理の方法は特に限定されず、従来公知の方法が採用される。例えば、上記シランカップリング剤を、水を含有させた、メチルアルコール、トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルブチルケトンなどの有機溶媒に溶解させて溶液とし、該溶液中にシリカゾルを投入し、50〜150℃程度に加温して5〜30時間程度攪拌し、反応させる。
【0015】
<B1組成物>
B1組成物は硬化させることによりハードコート層Iになる組成物であり、前記多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して、表面処理シリカゾル40〜200質量部の割合で含有される。B1組成物中には、粘度調整や易塗布性の目的で任意の添加剤を、その目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、該組成物を透明樹脂基板上で硬化させてハードコート層I(B1)とするために、通常、熱重合開始剤または
光重合開始剤が触媒量、通常組成物中の固形分全量を基準にして、0.01〜20質量%添加される。この重合開始剤は、B1組成物を硬化して得られるハードコート層Iの諸
特性には本質的影響を与えない。
該重合開始剤としては、透明樹脂基板の熱による変形を防止する観点から、紫外線や電子線などで作用する、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン―1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、カンファーキノン、ベンジルなどの光重合開始剤が好適である。
【0016】
<ハードコート層Iの形成>
上記(a)および(b)の各必須成分、更に任意成分を、下記溶媒に溶解してB1組成物の溶液とし、この溶液を前記透明樹脂基板に塗布した後、50℃以上で溶媒を乾燥させ、次いで紫外線照射により硬化させてハードコート層Iが形成される。該層の厚みは5〜20μm、好ましくは10〜20μmの範囲に設定される。
使用される溶媒は、エチルアルコール、(イソ)プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸(イソ)ブチルなどの酢酸エステル系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶媒等が適している。これらの溶媒は、ハードコート層I形成の際に、蒸発除去される。
【0017】
B1組成物を構成する上記各成分は、通常、室温付近で、溶媒と任意の順序で混合、攪拌されて溶液とされる。
この溶液の透明樹脂基板上への塗工方法は特に制限されず、ディップコート法、ロールコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレー法等の方法が採用されるが、外観品位や膜厚制御の観点からディップコート法が好適である。
【0018】
〔ハードコート層II(B2)〕
ハードコート層II(B2)は主としてその上に積層される反射防止層との密着性に寄与する層であり、その膜厚は1〜10μmである。1μm未満では密着性が不十分であり、10μmを超えると外観を保つことが困難となる。
該層は、(a)多官能性ウレタンアクリレートと、該多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して、(c)平均粒径が5〜30nmであって屈折率が1.44〜1.50のシリカゾル1〜50質量部、(d)シランカップリング化合物又はその加水分解物1〜30質量部、および(e)金属キレート化合物0.1〜3.0質量部を含んでなる硬化性組成物(以下、B2組成物ともいう)の硬化体からなる層である。
(a)多官能性ウレタンアクリレートとしては、ハードコート層Iの項で挙げられたものが同様に使用される。
【0019】
<(c)シリカゾル>
ハードコート層II(B2)に含有させるシリカゾルは、耐擦傷性の向上に寄与する粒子であり、平均粒径が5〜30nmであって屈折率が1.44〜1.50である。平均粒径が上記範囲を外れると、耐クラック性が悪くなる。
上記シリカゾルは単粒子からなる、内部が密な、内部に空間を有しない非中空の粒子であり、密度は通常1.9g/cm
3以上である。当該シリカゾルはそれ自体公知で市販されているので、上記平均粒径と屈折率を満足する市販品を選択して使用すればよい。該シリカゾルは、通常、溶媒に分散された状態で供されるので、この溶媒は、ハードコート層II形成用の硬化性組成物溶液中に必然的に混入し、他の溶媒と同様に挙動する。
【0020】
<(d)シランカップリング化合物またはその加水分解物>
シランカップリング化合物またはその加水分解物は、それ自体が加水分解して緻密な珪酸質の被膜を形成する。
該シランカップリング化合物としては、公知のものを制限なく使用できる。例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
該シランカップリング化合物は、その種類によっては、水や溶剤に対する溶解性を向上させる目的で、希薄な酸等で予め加水分解された分解物とすることが好適である。予め加水分解する方法は特に制限なく、酢酸などの酸触媒を用いてその一部を加水分解する方法が一般的である。
【0021】
<(e)金属キレート化合物>
金属キレート化合物は、層の緻密性や強度、更には硬度を高める目的で含有させる。該金属キレート化合物は、二座配位子を代表例とするキレート剤が、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの金属に配位した化合物である。
具体的には、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテイト)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテイト)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテイト)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテイト)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテイト)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテイト)チタン等のチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテイト)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;
ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテイト)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテイト)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物が挙げられる。
【0022】
<B2組成物>
B2組成物は、(a)、(c)、(d)および(e)成分を必須成分とする硬化性の組成物であり、下記特定比率で配合される。
(c)シリカゾルは、多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して1〜50質量部配合する。1質量部未満では耐擦傷性が発現しなく、50質量部を超えると膜密着性が悪くなる。
(d)シランカップリング化合物又はその加水分解物は、多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して1〜30質量部配合する。1質量部未満では膜密着性が悪く、50質量部を超えると耐擦傷性が悪くなる。
(e)金属キレート化合物は、多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して0.1〜3.0質量部配合する。この範囲を外れると、このハードコート膜II上に形成される反射防止層Cとの間の密着性が悪くなる。
B2組成物は、B1組成物と同様に、任意の添加成分を添加することができる。通常、硬化を促進する目的で重合開始剤を添加し、塗布の目的で溶媒が使用される。B2組成物の調製方法も、B1組成物のそれに準じて行われる。
【0023】
<ハードコート層IIの形成>
ハードコート層IIは、透明樹脂基板上に積層されたハードコート層Iの上に直接積層され、二層からなるハードコート層が形成される。該ハードコート層IIの形成は、ハードコート層Iの形成に準じ、コーティング法、硬化方法などは同様に行われる。形成される層の厚みは1〜10μmの範囲に設定される。
【0024】
〔反射防止層(C)〕
本発明の透明樹脂積層板は、前記透明樹脂基板上に積層されたハードコート層の上に、直接反射防止層(C)が積層されている。該反射防止層(C)は、屈折率が1.50未満であり、厚みが50〜200nmである低屈折率層(C1)から構成される。なお、後述するように、反射防止層(C)が、複数の反射防止層から成る場合には、当該低屈折率層は、最外層(視野側)となる反射防止層である。
低屈折率層(C1)は、その屈折率が1.50以上であると十分な反射防止機能を発現しない。また、厚みが50〜200nmの範囲を外れると、反射防止機能を発現しない。
該低屈折率層(C1)は、(f)平均粒径が5〜150nmであって屈折率が1.44以下のシリカゾル、(d)シランカップリング化合物又はその加水分解物、および(e)金属キレート化合物を含んでなり、且つ、(f)シリカゾルが10〜50質量%配合され、(d)シランカップリング化合物又はその加水分解物と(e)金属キレート化合物との配合比が、60〜99質量%:40〜1質量%である硬化性組成物(C1組成物)の硬化体からなる層である。
【0025】
<(f)シリカゾル>
低屈折率層(C1)に含有させるシリカゾルは、該層の屈折率を制御する粒子であり、平均粒径が5〜150nmであって屈折率が1.44以下である。平均粒径が上記範囲を外れると、反射性能が低下したり、ヘイズ率が上昇する。屈折率が1.44を超えると、反射性能が低下する。
上記シリカゾルは、市販品の中から、上記平均粒径と屈折率を満たすものを選択して使用すればよい。特に、反射防止効果の観点からは、内部が中空のシリカゾル粒子が好適である。該シリカゾルも、通常、溶媒に分散された状態で供されるので、この溶媒は、前記(c)シリカゾルの場合と同様に挙動する。
(d)シランカップリング化合物又はその加水分解物および(e)金属キレート化合物は、前出のものが同様に使用できる。
【0026】
<C1組成物>
C1組成物は、(f)、(d)および(e)成分を必須成分とする硬化性の組成物であり、下記特定比率で配合される。
(f)シリカゾルは、層中に10〜50質量%含まれている必要がある。10質量%未満では十分な反射防止効果が期待できない。50質量%を超えると耐擦傷性、密着性が低下する。
(d)シランカップリング化合物又はその加水分解物と(e)金属キレート化合物との配合比は、60〜99質量%:40〜1質量%である。(e)金属キレート化合物の配合比が40質量%を超える場合は、膜が脆くなったり、キレート化合物が析出するので、好ましくない。1質量%未満ではその効果が発現しない。
C2組成物は、B1やB2組成物と同様に、任意の添加成分を添加することができる。通常、塗布の目的で溶媒が使用される。C2組成物の調製方法も、B1やB2組成物のそれに準じて行われる。
【0027】
<低屈折率層(C1)の形成>
低屈折率層は、透明樹脂基板上に積層されたハードコート層、詳しくはハードコートII層の上に積層される。該低屈折率層の形成は、ハードコート層の形成に準じ、C1組成物の溶液を、硬化体であるハードコートII層上に塗布した後乾燥し、次いで70〜120℃で加熱、硬化させて行う。該層の厚みは、反射防止性能の観点から、50〜200nmの範囲に設定される。
尚、反射防止層が後出の中屈折率層と低屈折率層との二層からなる場合は、ハードコートII層上に、先ず中屈折率
層を形成し、次いで該層の上に低屈折率層が形成される。更に、反射防止層が後出の中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層との三層から成る場合は、ハードコートII層上に、先ず中屈折率
層を形成し、次いで該層の上に高屈折率層、更にその上に低屈折率層が形成される。
【0028】
〔中屈折率層(C2)〕
本発明の透明樹脂積層板は、その反射防止効果をより高めるために、低屈折率層の基板面側に中屈折率層が積層された二層構造とすることが好ましい。
該中屈折率層は、その屈折率が1.50以上1.75未満であり、厚みが50〜200nmである層が好適である。
この中屈折率層は、代表的には、前出の(d)シランカップリング化合物またはその加水分解物20〜80質量部および(e)金属キレート化合物0.1〜2質量部に加えて、(g)屈折率が1.70以上2.80以下の金属酸化物粒子20〜80質量部{(d)、(e)および(g)の合計量を100質量部とする}を含有する硬化性組成物を硬化させて形成する。
また、中屈折率層には、バインダーとして熱硬化性樹脂を含有させることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、シラン変性フェノール樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、(シラン変性)エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、アクリル樹脂、(シラン変性)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は単独でも2種以上の組合せでも使用される。バインダーとして用いる上記熱硬化性樹脂は、光活性による酸化に対して耐性を有するという利点を有する。
【0029】
<(g)金属酸化物粒子>
(g)金属酸化物粒子は、中屈折率層の屈折率が1.50以上1.75未満になることを満たす目的で含有させる、代表的には、平均粒径が10〜100nmであり、屈折率が1.70以上2.80以下の金属酸化物粒子である。
金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム粒子(屈折率=2.40);酸化ジルコニウムと酸化ケイ素等の他の酸化物とを分子レベルで複合化させて屈折率を調整した複合ジルコニウム金属酸化粒子;酸化チタニウム粒子(屈折率=2.71);酸化チタニウムと酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の他の酸化物とを分子レベルで複合化させて屈折率を調整した複合チタニウム金属酸化粒子;シリカ粒子(屈折率=1.55)などが使用される。これらの金属酸化物粒子から選択して、或いは適宜組み合わせて、上記所望の屈折率の層となるように調整する。このような粒子はそれ自体公知であり、市販されている。
【0030】
<中屈折率層(C2)の形成>
中屈折率層は、透明樹脂基板上に積層されたハードコート層、具体的にはハードコートII層の上に積層される。該中屈折率層の形成は、前記低屈折率層の形成と同様にして実施され、該層の厚みは、反射防止性能の観点から、50〜200nmの範囲に設定される。
【0031】
〔高屈折率層(C3)〕
本発明の透明樹脂積層板は、極めて高い反射防止効果を発現させるために、低屈折率層(C1)と中屈折率層(C2)の間に高屈折率層(C3)が積層された三層構造とすることが、特に好ましい。
該高屈折率層は、その屈折率が1.60以上2.00未満であり、厚みが50〜200nmである層が好適である。なお、該高屈折率層の屈折率は、中屈折率層の屈折率より高いことを必須とする。
この高屈折率層は、代表的には、前出の(d)シランカップリング化合物またはその加水分解物10〜50質量部、および(g)金属酸化物粒子50〜90質量部{(d)および(g)の合計量を100質量部とする}を含有する硬化性組成物を硬化させて形成する。(g)金属酸化物粒子は、高屈折率層の屈折率が1.60以上2.00未満になるように、前出の金属酸化物粒子から選択して、或いはこれらを組みわせて使用される。
また、中屈折率層と同様に、バインダーとして熱硬化性樹脂を含有させることもできる。
【0032】
<高屈折率層(C3)の形成>
高屈折率層は、ハードコート層上に積層された前記中屈折率層の上に積層され、次いで当該高屈折率層の上に低屈折率層が積層され三層構造となる。該高屈折率層の形成は、前記低屈折率層の形成と同様にして実施され、該層の厚みは、反射防止性能の観点から、50〜200nmの範囲に設定される。
【0033】
本発明の透明樹脂積層板は、前記層構成のものに限定されない。例えば、反射防止層の保護の目的で、オーバーコート層を設けることができる。このようなオーバーコート層としては、耐磨耗性、耐擦傷性を付与する有機ポリシロキサン系材料やフッ素樹脂系のコート層を挙げることができる。
更に、透明樹脂積層板の裏側には、アクリル系、ゴム系、シリコーン系の粘着剤からなる、粘着剤層を設けることができる。更にまた、本発明の透明樹脂積層板は、透明樹脂基板の表及び裏の両面に、ハードコート層(B)および反射防止層(C)を積層してもよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
以下の実施例及び比較例で用いた各種成分と略号、並びに試験方法は、次の通りである。
【0035】
(a)多官能ウレタンアクリレート
a−1;脂肪族有機イソシアネート系6官能アクリレート
a−2;芳香族有機イソシアネート系6官能アクリレート
(b)表面処理シリカゾル
b−1;アクリレート基修飾シリカゾル(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理) 平均粒径:20nm、MIBK分散、固形部:30wt%
b−2;ビニル基修飾シリカゾル(ビニルトリメトキシシランで処理) 平均粒径:20nm、MEK分散、固形部:30wt%
(c)シリカゾル
c−1;平均粒径:10nm、屈折率:1.46、IPA分散、固形部:20wt%
c−2;平均粒径:80nm、屈折率:1.46、IPA分散、固形部:30wt%
(d)シランカップリング剤化合物又はその加水分解物
d−1;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
d−2;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
d−3;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
(e)金属キレート化合物
e−1;ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)
e−2;アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート
e−3;アルミニウムトリスアセチルアセトナート
e−4;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート
(f)シリカゾル
f−1;平均粒径:50nm、中空シリカゾル、屈折率:1.30、IPA分散、固形部:20wt%
f−2;平均粒径:80nm、シリカゾル、屈折率:1.46、IPA分散、固形部:20wt%
f−3;平均粒径:10nm、シリカゾル、屈折率:1.46、IPA分散、固形部:20wt%
(g)金属酸化物粒子
g−1;平均粒径:50nm、ジルコニアゾル、屈折率:2.40、PGM分散、固形部:55wt%
g−2;平均粒径:20nm、チタニアゾル、屈折率:2.71、MIBK分散、固形部:20wt%
(h)その他
h−1;IPA(イソプロピルアルコール)
h−2;MIBK(メチルイソブチルケトン)
h−3;トルエン
h−4;光重合開始剤(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)
h−5;0.05N酢酸
h−6;アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂
【0036】
〔反射性試験〕
日本分光社製「V−550」試験機を用いて、走査速度1000nm/minの速度、波長380〜780nmの範囲で、最下点(透明樹脂積層板表面)における反射率を測定した。数値が小さいほど反射防止能に優れることを示す。
〔耐擦傷性試験〕
擦り試験器に試験片をセットし、スチールウール#0000(日本スチールウール社「BONSTER」)上で2kg/cm
2荷重で40mm間を100往復させ、キズの入り方とその本数を測定し、評価した。評価基準は以下のとおりであり、透過光は透明樹脂積層板を透過した光を意味し、反射光は当該積層板表面で反射した光を意味する。
「◎」:透過光、反射光の何れで観察しても、キズは確認されなかった。
「〇」:透過光で観察するとキズが数本確認されたが、反射光では確認されなかった。
「△」:透過光、反射光の何れで観察しても、キズが数本確認された。
「×」:透過光、反射光の何れで観察しても、十本以上のキズが確認された。
[硬度試験]
吉光精密社製硬度計「C−2210」を用い、鉛筆(三菱鉛筆社製「Uni」)で硬度を測定した。硬度は、鉛筆硬度で表され、この硬度が高いほど耐擦傷性に優れることを示す。尚、鉛筆硬度7Hとは、7Hの鉛筆でキズが付かないが、8Hの鉛筆ではキズが確認される場合の硬度を言う。
【0037】
実施例1
厚さ1mmの芳香族ポリカーボネート樹脂(PC)とポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)との積層樹脂基板(PC層の厚み0.93mm、PMMA層の厚み0.07mm)のPMMA側に、以下の方法でハードコート層、更にその上に反射防止層を形成した。
[ハードコート層I形成用溶液組成]
・a−1;300g
・b−1;450g
・h−1;235g
・h−4;15g
[ハードコート層II形成用溶液組成]
・a−1;175g
・c−1;300g
・d−1;20g
・e−3;1.5g
・h−1;198.1g
・h−2;274.6g
・h−3;17.5g
・h−4;8.8g
・h−5;4.5g
[反射防止層形成用溶液組成]
・f−1;45g
・d−1;13g
・e−3;3g
・h−1;935g
・h−5;4g
【0038】
先ず、上記組成のハードコート層I形成用溶液を用いて積層樹脂基板をディップコートし、60℃、5分間乾燥し、UV硬化して厚さ12μmのハードコート層Iを形成した。次いで、前記組成のハードコート層II形成用溶液で、上記ハードコート層Iを有する基板をディップコートし、60℃、5分間乾燥し、UV硬化して厚さ3μmのハードコート層IIを形成した。更に、該ハードコート層を有する基板を、反射防止層形成用溶液でディップコートし、80℃、20分間加熱処理し、厚さ100nmの反射防止層(低屈折率層)を形成した。その後フッ素系防汚剤をディップコートでオーバーコートした後、100℃
、120分間加熱処理を行って膜を硬化させた。
得られた透明
樹脂積層板の反射率、硬度、並びに耐擦傷性を、前記試験方法に従って測定し評価した。結果を表1に示す。
実施例2〜6
表1に示す、ハードコート層I形成用溶液、ハードコート層II形成用溶液、および反射防止層形成用溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、透明樹脂積層板を作製し、同様に測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
比較例1〜5
表2に示す、ハードコート層I形成用溶液、ハードコート層II形成用溶液、および反射防止層形成用溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、透明樹脂積層板を作製し、同様に測定を行った。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
実施例1と比較例1との比較により、ハードコート層I中に(A)表面処理シリカゾルが、多官能性ウレタンアクリレート100質量部に対して50質量部未満で含まれると硬度性能が悪くなることが理解できる。また、比較例2より、ハードコート層Iの膜厚が5μm以上でない場合は、硬度性能が悪い上に耐擦傷性が極めて悪い。更に、比較例3より、ハードコート層II中にシランカップリング剤が含まれない場合は、硬度性能、耐擦傷性共に不十分である。比較例4より、ハードコート層II中にシリカゾルが含まれない場合は、耐擦傷性が不十分である。比較例5より、ハードコート層IIが存在しない場合は、硬度性能が不十分である上に耐擦傷性が極めて悪い。
【0044】
実施例7〜9
表3に示す組成の低屈折率層形成用溶液、中屈折率層形成用溶液、更には必要に応じて高屈折率層形成用溶液を用いて以下の方法で、二層或いは三層から成る反射防止膜を有する透明樹脂積層板を作製し評価した。結果を表4に示す。
実施例1と同様にして、積層樹脂基板にハードコート層を形成した後、中屈折率層形成用溶液に上記ハードコート層を有する基板をディップコートし、90℃、30分間、加熱処理して、厚さ85nmの中屈折率層を形成した。次いで、低屈折率層形成用溶液に該基板をディップコートし、80℃、20分間、加熱処理して、厚さ100nmの低屈折率層を形成した。但し、実施例7,8においては、低屈折率層を形成する前に、即ち、中屈折率層を形成した後に、高屈折率層形成用溶液に基板をディップコートし、80℃、20分間、加熱処理して、厚さ80nmの高屈折率層を形成した。
【0045】
【表4】