特許第5973568号(P5973568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973568コーティング適用における光学増白および陰影付けのための改良された水性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973568
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】コーティング適用における光学増白および陰影付けのための改良された水性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20160809BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160809BHJP
   D21H 19/46 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
   D21H19/46
【請求項の数】23
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-524298(P2014-524298)
(86)(22)【出願日】2012年8月4日
(65)【公表番号】特表2014-521812(P2014-521812A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012003348
(87)【国際公開番号】WO2013020693
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】11006601.6
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596033657
【氏名又は名称】クラリアント インターナショナル リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】セドリック クレン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ルボー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アトキンソン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー クライブ ジャクソン
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/033066(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/009632(WO,A1)
【文献】 特表2007−501306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00−10/00、
C09D101/00−201/10、
D21B1/00−1/38、
D21C1/00−11/14、
D21D1/00−99/00、
D21F1/00−13/12、
D21G1/00−9/00、
D21H11/00−27/42、
D21J1/00−7/00、
C09B1/00−69/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の光学増白と陰影付けのための水性コーティング組成物であって、
(a)式(I):
【化1】
で表わされる少なくとも1つの光学増白剤
[式中、
前記光学増白剤上の陰電荷は、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;アンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは、前記化合物の混合物からなる群から選択される、同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
およびR’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CHCHCONHあるいはCHCHCNのいずれかであり、
とR’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CH(CO)CHCO、CH(CO)CHCHCO、CHCHSO、CHCHCO、CHCH(CH)CO、ベンジルであり、あるいは、
とR、および/またはR’とR’は、隣接した窒素原子と一緒になってモルホリン環を表わし、
pは1または2である]と、
(b)式(II):
【化2】
で表わされる少なくとも1つの陰影付け染料
[式中、
は、H、メチルまたはエチルを表わし、
は、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを表わし、
Mは、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;アンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす]と、
(c)少なくとも1つの白色顔料と、
(d)少なくとも1つの一次結合剤と、
(e)場合により1又は2以上の二次結合剤と、
(f)水
を含む水性コーティング組成物。
【請求項2】
pが1である式(I)の化合物において、CO基がフェニル環の2位または4位にある、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物において、前記増白剤上の陰電荷が、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは、これら化合物の混合物からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CHCHCONH、CHCHCNのいずれかであり、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CH(CO)CHCO、CHCHSOのいずれかであり、そして
pが1または2である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物において、前記増白剤上の陰電荷が、Li;Na;K;Ca2+;Mg2+;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、メチル、エチル、プロピル、α−メチルプロピル、β−メチルプロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CHCHCONH、またはCHCHCNであり、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、α−メチルプロピル、β−メチルプロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CH(CO)CHCO、またはCHCHSOであり、
pが1または2である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
式(I)の化合物において、前記増白剤上の陰電荷が、Na;K;トリエタノールアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、メチル、エチル、プロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、エチル、プロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CH(CO)CHCOまたはCHCHSOであり、そして
pが1である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
式(I)の化合物が、0.01〜5重量%の量で使用され、ここで重量%は、乾燥白色顔料の全重量を基準とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
式(II)の化合物において、
が、H、メチルまたはエチルを表わし、
が、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを表わし、
Mが、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;ならびにこれら化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
式(II)の化合物において、
が、メチルまたはエチルを表わし、
が、メチルまたはエチルを表わし、
Mが、Li;Na;K;1/2Ca2+;1/2Mg2+;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;これら化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
式(II)の化合物において、
が、メチルまたはエチルを表わし、
が、メチルまたはエチルを表わし、
Mが、Na;K;トリエタノールアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム;これら化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
式(II)の化合物が、0.00001〜0.05重量%の量で使用され、ここで重量%は、乾燥白色顔料の全重量を基準とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
水性コーティング組成物が、このコーティング組成物の全重量を基準にして10〜70重量%の白色顔料を含み、ここで重量%は、前記コーティング組成物の全重量を基準とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項12】
前記白色顔料が無機顔料である、請求項11に記載の水性コーティング組成物。
【請求項13】
前記結合剤が、単一の結合剤からなるか、または一次結合剤と二次結合剤の混合物からなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項14】
前記単一の結合剤、または一次結合剤が、2〜25重量%の範囲の量で使用され、ここで重量%は、前記白色顔料の全重量を基準とする、請求項13に記載の水性コーティング組成物。
【請求項15】
加水分解度が60%以上であり、そしてブルックフィールド粘度が2〜80mPa.s(20℃の4%水溶液)であるポリビニルアルコールが二次結合剤として使用される、請求項13または14に記載の水性コーティング組成物。
【請求項16】
前記結合剤が、単一の結合剤からなるか、または一次結合剤と二次結合剤の混合物からなり、前記単一の結合剤、または一次結合剤が、2〜25重量%の範囲の量で使用され、ここで重量%は、前記白色顔料の全重量を基準とし、そして二次結合剤として、加水分解度が60%以上であり、ブルックフィールド粘度が2〜80mPa.s(20℃の4%水溶液)であるポリビニルアルコールが使用される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項17】
前記二次結合剤が、0.1〜20重量%の範囲の量で使用され、ここで重量%は、白色顔料の全重量を基準とする、請求項13〜16いずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項18】
pH値が5〜13の範囲である、請求項1〜17いずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項19】
請求項1〜18いずれか1項に記載の水性コーティング組成物の使用であって、紙基材の光学増白および着色のための前記使用。
【請求項20】
前記水性コーティング組成物は、あらかじめ形成した水溶液として使用され、そして式(I)の化合物の水中での濃度が、好ましくは1〜80重量%であり、ここで重量%は、式(I)の化合物を含むあらかじめ形成した前記水溶液の全重量を基準とする、請求項19に記載の水性コーティング組成物の使用。
【請求項21】
前記水性コーティング組成物は、あらかじめ形成した水溶液として使用され、そして式(II)の化合物の水中での濃度が、好ましくは0.001〜30重量%であり、ここで重量%は、式(II)の化合物を含むあらかじめ形成した前記水溶液の全重量を基準とする、請求項19または20に記載の水性コーティング組成物の使用。
【請求項22】
紙基材の光学増白および着色のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物の使用であって、前記水性コーティング組成物はあらかじめ形成した水溶液として使用され、そして式(I)の化合物の水中での濃度が、好ましくは1〜80重量%であり、ここで重量%は、式(I)の化合物を含むあらかじめ形成した前記水溶液の全重量を基準とし、そして、式(II)の化合物の水中での濃度が、好ましくは0.001〜30重量%であり、ここで重量%は、式(II)の化合物を含むあらかじめ形成した前記水溶液の全重量を基準とする、前記使用。
【請求項23】
あらかじめ形成した前記水溶液において、水中での二次結合剤の濃度が1〜50重量%であり、ここで重量%は、二次結合剤を含むあらかじめ形成した前記水溶液の全重量を基準とする、請求項19〜22のいずれか項に記載の水性コーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアミノスチルベンの誘導体である光学増白剤(optical brightener)と、陰影付け染料(shading dye)と、白色顔料(white pigment)と、一次結合剤とを含み、場合により二次結合剤を含む、高い白色度(whiteness)及び明度(brightness)を有するコーティングされた基材(substrate)を提供するために使用され得る水性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白色度と、その白色度によるコーティング紙の魅力は、コーティング組成物に光学増白剤と陰影付け染料を添加することによって改善できることがよく知られている。
【0003】
しかし国際公開第0218705A1号には、陰影付け染料を用いると白色度にはプラスの効果がある一方で、明度にはマイナスの影響があることが教示されている。この問題の解決法は追加の光学増白剤を添加することであり、国際公開第0218705A1号で主張されている利点は、少なくとも1つの直接染料(例えばC.I.ダイレクト・バイオレット35)と少なくとも1つの光学増白剤の混合物を使用することによって特徴付けられる。
【0004】
高い白色度と明度を有するコーティング紙に関する要求を満たすため、より有効な陰影付け組成物が必要とされている。
【0005】
驚くべきことに、我々は今回、白色度に対して大きなプラスの効果がある一方で、明度に対してはほとんど、または全く影響しない陰影付け染料を見いだすに至った。製紙業者が高レベルの白色度及び明度に達し得るために、当該陰影付け染料は、光学増白剤と、白色顔料と、一次結合剤と、場合により二次結合剤を含むコーティング組成物において使用され得る。
【0006】
したがって本発明の目標は、ジアミノスチルベン誘導体の光学増白剤と、特定の陰影付け染料と、白色顔料と、一次結合剤とを含み、場合により二次結合剤を含む、水性コーティング組成物を提供することである。当該水性コーティング組成物により、本技術分野の技術常識として認識されている、陰影付け染料または顔料の使用によって特徴付けられる欠点(陰影付け染料では明度の低下、顔料では白色度の低下)を回避しつつ、白色度のレベルが向上する。
【発明の概要】
【0007】
発明の説明
したがって本発明は、基材、好ましくは紙の光学増白及び陰影付けのための水性コーティング組成物であって、
(a)式(I):
【化1】
で表わされる少なくとも1つの光学増白剤
[式中、
当該光学増白剤上の陰電荷は、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;アンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;これら化合物の混合物、からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
とR’は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CH(CO)CHCO、CH(CO)CHCHCO、CHCHSO、CHCHCO、CHCH(CH)CO、ベンジルであり、あるいは、
とR、および/またはR’とR’は、隣接した窒素原子と一緒になってモルホリン環を表わし、
pは1または2である]と、
(b)式(II):
【化2】
で表わされる少なくとも1つの陰影付け染料
[式中、
は、H、メチルまたはエチルを表わし、
は、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを表わし、
Mは、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;アンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす]と、
(c)少なくとも1つの白色顔料と、
(d)少なくとも1つの一次結合剤と、
(e)場合により1又は2以上の二次結合剤と、
(f)水
を含む、前記水性コーティング組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
pが1である式(I)の化合物において、CO基は、好ましくは、フェニル環の2位または4位にある。
【0009】
式(I)の好ましい化合物は、
光学増白剤上の陰電荷が、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル、CHCO、CH(CO)CHCOまたはCHCHSOであり、
pが1または2である、式(I)の化合物である。
【0010】
式(I)のより好ましい化合物は、
光学増白剤上の陰電荷が、Li;Na;K;Ca2+;Mg2+;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、メチル、エチル、プロピル、α−メチルプロピル、β−メチルプロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、α−メチルプロピル、β−メチルプロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CH(CO)CHCOまたはCHCHSOであり、
pが1または2である、式(I)の化合物である。
【0011】
式(I)の特に好ましい化合物は、
光学増白剤上の陰電荷が、Na;K;トリエタノールアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム;または前記化合物の混合物からなる群から選択される同一または異なる1または2以上の陽イオンからなる陽電荷によって相殺され、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素、メチル、エチル、プロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
とR’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、エチル、プロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CH(CO)CHCOまたはCHCHSOであり、
pが1である、式(I)の化合物である。
【0012】
式(I)の化合物は、典型的には0.01〜5重量%の量で、好ましくは0.05〜3重量%の範囲で使用される。なお重量%は、乾燥白色顔料の全重量を基準にしている。
【0013】
式(II)の好ましい化合物は、
が、H、メチルまたはエチルを表わし、
が、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを表わし、
Mが、水素;アルカリ金属陽イオン;アルカリ土類金属陽イオン;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす、式(II)の化合物である。
【0014】
式(II)のより好ましい化合物は、
が、メチルまたはエチルを表わし、
が、メチルまたはエチルを表わし、
Mが、Li;Na;K;1/2Ca2+;1/2Mg2+;直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基によって一置換、または二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基と直鎖または分岐鎖のC〜Cヒドロキシアルキル基の混合物によって二置換、または三置換、または四置換されたアンモニウム;あるいは前記化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす、式(II)の化合物である。
【0015】
式(II)の特に好ましい化合物は、
が、メチルまたはエチルを表わし、
が、メチルまたはエチルを表わし、
Mが、Na;K;トリエタノールアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム;N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム;または前記化合物の混合物からなる群から選択される陽イオンを表わす、式(II)の化合物である。
【0016】
式(II)の化合物は、典型的には0.00001〜0.05重量%の量で、好ましくは0.00005〜0.02重量%の範囲で使用される。なお重量%は、乾燥白色顔料の全重量を基準にしている。
【0017】
白色顔料を含まないコーティング組成物を製造することは可能だが、印刷用の最良の白色基材は、10〜70重量%の白色顔料、好ましくは40〜60重量%の白色顔料を含む不透明なコーティング組成物を用いて製造される。なお重量%は、コーティング組成物の全重量を基準にしている。このような白色顔料は一般に無機顔料であり、例えばケイ酸アルミニウム(中国粘土としても知られるカオリン)、炭酸カルシウム(チョーク)、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム(石膏)などが挙げられる。好ましくは、10〜20重量%の粘土と30〜40重量%のチョークの混合物が白色顔料として使用される。なお重量%は、コーティング組成物の全重量を基準にしている。
【0018】
結合剤は、コーティング組成物を製造するために紙産業で一般に用いられている任意のものを使用でき、単一の結合剤で構成からなってもよいし、または、一次結合剤と二次結合剤の混合物からなってもよい。
【0019】
単一の、または一次結合剤は、好ましくは合成ラテックスであり、典型的には、スチレン−ブタジエン、酢酸ビニル、スチレンアクリル、ビニルアクリルまたはエチレン酢酸ビニルポリマーである。好ましい一次結合剤はラテックス結合剤である。
【0020】
単一の、または一次結合剤は、典型的には2〜25重量%の範囲の量で、好ましくは4〜20重量%で使用される。なお重量%は、白色顔料の全重量を基準にしている。
【0021】
場合により使用され得る二次結合剤は、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ダイズポリマー、ポリビニルアルコール、またはこれらの任意の混合物であり得る。場合により使用され得る好ましい二次結合剤は、ポリビニルアルコール結合剤である。
【0022】
コーティング組成物において二次結合剤として場合により使用され得るポリビニルアルコールは、好ましくは加水分解度が60%以上であり、そしてブルックフィールド(Brookfield)粘度が2〜80mPa.sである(20℃の4%水溶液)。より好ましくは、ポリビニルアルコールは、加水分解度が80%以上であり、ブルックフィールド粘度が2〜40mPa.sである(20℃の4%水溶液)。
【0023】
場合により使用されるとき、二次結合剤は、典型的には0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜8重量%、より好ましくは0.3〜6重量%の範囲の量で使用される。なお重量%は、白色顔料の全重量を基準にしている。
【0024】
コーティング組成物のpH値は、典型的には5〜13の範囲であり、好ましくは6〜11の範囲であり、より好ましくは7〜10の範囲である。コーティング組成物のpHを調節する必要があるとき、酸または塩基を使用できる。使用可能な酸の例として、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などがあるが、これらに限定されない。使用可能な塩基の例として、アルカリ金属の水酸化物または炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、アンモニア、アミンなどがあるが、これらに限定されない。
【0025】
1又は2以上の式(I)の化合物と、1又は2以上の式(II)の化合物と、1又は2以上の白色顔料と、1又は2以上の結合剤と、場合により1又は2以上の二次結合剤と、水に加え、コーティング組成物は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の調製中に形成される副生成物や、紙に対する一般的な他の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤の例は、例えば、凍結防止剤、分散剤、合成または天然の増粘剤、担体(例えばポリエチレングリコール)、消泡剤、蝋エマルジョン、染料、無機塩、可溶化助剤、保存剤、錯化剤、殺菌剤、架橋剤、顔料、特殊な樹脂などである。
【0026】
コーティング組成物は、1又は2以上の結合剤と、場合により1又は2以上の二次結合剤と、1又は2以上の白色顔料を含むあらかじめ形成した水性分散液に、1又は2以上の式(I)の化合物と1又は2以上の式(II)の化合物を添加することによって調製できる。
【0027】
1又は2以上の結合剤と、場合により1又は2以上の二次結合剤と、1又は2以上の白色顔料を含むあらかじめ形成した水性分散液に対し、1又は2以上の式(I)の化合物と1又は2以上の式(II)の化合物は、どのような順番で添加してもよいし、同時に添加してもよい。
【0028】
1又は2以上の式(I)の化合物と、1又は2以上の式(II)の化合物と、場合により1又は2以上の二次結合剤は、1又は2以上の白色顔料を含むあらかじめ形成した水性分散液に対し、固体として添加してもよいし、あらかじめ形成した水溶液として添加してもよい。
【0029】
本発明は、紙基材の光学増白と着色(tinting)のための方法であって、少なくとも1つの光学増白剤と、少なくとも1つの特定の陰影付け染料と、少なくとも1つの白色顔料と、少なくとも1つの結合剤と、場合により少なくとも1つの二次結合剤を含む水性コーティング組成物が使用されることを特徴とする前記方法をさらに提供する。
【0030】
あらかじめ形成した水溶液として用いるときには、水中での式(I)の化合物の濃度は、好ましくは1〜80重量%であり、より好ましくは2〜50重量%であり、さらにより好ましくは10〜30重量%である。なお重量%は、式(I)の化合物を含むあらかじめ形成した水溶液の全重量を基準にしている。
【0031】
あらかじめ形成した水溶液として用いるときには、水中での式(II)の化合物の濃度は、好ましくは0.001〜30重量%であり、より好ましくは0.01〜25重量%であり、さらにより好ましくは0.02〜20重量%である。なお重量%は、式(II)の化合物を含むあらかじめ形成した水溶液の全重量を基準にしている。
【0032】
あらかじめ形成した水溶液として用いるときには、水中での二次結合剤の濃度は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜40重量%であり、さらにより好ましくは5〜30重量%である。なお重量%は、二次結合剤を含むあらかじめ形成した水溶液の全重量を基準にしている。
【0033】
以下の実施例において本発明をより詳細に示す。本明細書では、特に断わらない限り、“部”は“重量部”を意味し、“%”は“重量%”を意味する。
【実施例】
【0034】
調製例1
0.210モル/kgの式(1)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、最終溶液を限外濾過して塩を除去し、式(1)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に157部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S1)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.177モル/kgの式(1)の化合物を含む水溶液(S1)が1000部得られる。得られた水溶液(S1)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0035】
【化3】
【0036】
調製例1a
0.210モル/kgの式(1)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、最終溶液を限外濾過して塩を除去し、式(1)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(a)の化合物と155部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S1a)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(a)の化合物(重量%は、最終水溶液(S1a)の全重量が基準)と0.177モル/kgの式(1)の化合物を含む水溶液(S1a)が1000部得られる。得られた水溶液(S1a)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0037】
【化4】
【0038】
調製例1b
0.210モル/kgの式(1)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、最終溶液を限外濾過して塩を除去し、式(1)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(b)の化合物と155部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S1b)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(b)の化合物(重量%は、最終水溶液(S1b)の全重量が基準)と0.177モル/kgの式(1)の化合物を含む水溶液(S1b)が1000部得られる。得られた水溶液(S1b)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0039】
【化5】
【0040】
比較例1c
0.210モル/kgの式(1)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、最終溶液を限外濾過して塩を除去し、式(1)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に、11重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、あらかじめ形成したC.I,ダイレクト・バイオレット35水溶液の全重量が基準)と138.8部の水を含む18.2部のあらかじめ形成した水溶液をゆっくりと添加することによって水溶液(S1c)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、最終水溶液(S1c)の全重量が基準)と0.177モル/kgの式(1)の化合物を含む水溶液(S1c)が1000部得られる。得られた水溶液(S1c)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0041】
塗布例1
70部のチョーク(OMYA社から商品名Hydrocarb 90で市販されているもの)と、30部の粘土(IMERYS社からカオリンSPSの商品名で市販されているもの)と、42.8部の水と、0.6部の分散剤(BASF社からPolysatz Sの商品名で市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩)と、20部の50%ラテックス(Dow社からDL921の商品名で市販されているスチレン−ブタジエン・コポリマー)と、加水分解度が98〜99%でブルックフィールド粘度が4.0〜5.0mPa秒(20℃の4%水溶液)の0.8部のポリビニルアルコールを含むコーティング組成物を調製する。水を添加してこのコーティング組成物の固体含有量を約65%に調節し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8〜9に調節する。
【0042】
調製例1、1a、1bと比較例1cで調製した水溶液(S1)、(S1a)、(S1b)、(S1c)のそれぞれを、撹拌しているコーティング組成物に添加して濃度の範囲を0〜2重量%にする(乾燥した固体を基準にして式(1)の化合物が0〜0.4重量%)。なお重量%は、乾燥顔料の全重量が基準である。
【0043】
次に、ワイヤー巻き付けバー式自動塗布装置を標準的な速度設定、バーへの標準的な負荷にして用い、このコーティング組成物を、中性サイズ剤で処理した市販の75gsmの白色紙ベース・シートに塗布する。次にコーティングされた紙を熱い空気流の中で5分間乾燥させる。その後、紙のコンディショニングを実施し、較正されたElrepho分光測光器でCIE白色度と明度を測定する。結果をそれぞれ表1aと表1bに示す。当該結果は、陰影付け染料の使用によって特徴付けられる欠点(明度の低下)を回避しつつ、白色度が有意に改善されることを明確に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
調製例2
0.210モル/kgの式(2)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにイミノ二酢酸を使用し、式(2)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に157部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S2)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.177モル/kgの式(2)の化合物を含む水溶液(S2)が1000部得られる。得られた水溶液(S2)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0047】
【化6】
【0048】
調製例2a
0.210モル/kgの式(2)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにイミノ二酢酸を使用し、式(2)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(a)の化合物と155部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S2a)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(a)の化合物(重量%は、最終水溶液(S2a)の全重量が基準)と0.177モル/kgの式(2)の化合物を含む水溶液(S2a)が1000部得られる。得られた水溶液(S2a)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0049】
調製例2b
0.210モル/kgの式(2)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにイミノ二酢酸を使用し、式(2)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(b)の化合物と155部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S2b)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(b)の化合物(重量%は、最終水溶液(S2b)の全重量が基準)と0.177モル/kgの式(2)の化合物を含む水溶液(S2b)が1000部得られる。得られた水溶液(S2b)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0050】
比較例2c
0.210モル/kgの式(2)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにイミノ二酢酸を使用し、式(2)の化合物を0.210モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物843部を室温で効果的に撹拌している中に、11重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、あらかじめ形成したC.I,ダイレクト・バイオレット35水溶液の全重量が基準)と138.8部の水を含む18.2部のあらかじめ形成した水溶液をゆっくりと添加することによって水溶液(S2c)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、最終水溶液(S2c)の全重量が基準)と0.177モル/kgの式(2)の化合物を含む水溶液(S2c)が1000部得られる。得られた水溶液(S2c)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0051】
塗布例2
70部のチョーク(OMYA社から商品名Hydrocarb 90で市販されているもの)と、30部の粘土(IMERYS社からカオリンSPSの商品名で市販されているもの)と、42.8部の水と、0.6部の分散剤(BASF社からPolysatz Sの商品名で市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩)と、20部の50%ラテックス(Dow社からDL921の商品名で市販されているスチレン−ブタジエン・コポリマー)と、加水分解度が98〜99%でブルックフィールド粘度が4.0〜5.0mPa秒(20℃の4%水溶液)の0.8部のポリビニルアルコールを含むコーティング組成物を調製する。水を添加してこのコーティング組成物の固体含有量を約65%に調節し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8〜9に調節する。
【0052】
調製例2、2a、2bと比較例2cで調製した水溶液(S2)、(S2a)、(S2b)、(S2c)のそれぞれを、撹拌しているコーティング組成物に添加して濃度の範囲を0〜2重量%にする(乾燥した固体を基準にして式(2)の化合物が0〜0.4重量%)。なお重量%は、乾燥顔料の全重量が基準である。
【0053】
次に、ワイヤー巻き付けバー式自動塗布装置を標準的な速度設定、バーへの標準的な負荷にして用い、このコーティング組成物を、中性サイズ剤で処理した市販の75gsmの白色紙ベース・シートに塗布する。次にコーティングされた紙を熱い空気流の中で5分間乾燥させる。その後、紙のコンディショニングを実施し、較正されたElrepho分光測光器でCIE白色度と明度を測定する。結果をそれぞれ表2aと表2bに示す。当該結果は、陰影付け染料の使用によって特徴付けられる欠点(明度の低下)を回避しつつ、白色度が有意に改善されることを明確に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
調製例3
0.157モル/kgの式(3)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにアスパラギン酸を使用し、式(3)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に222.2部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S3)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.122モル/kgの式(3)の化合物を含む水溶液(S3)が1000部得られる。得られた水溶液(S3)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0057】
【化7】
【0058】
調製例3a
0.157モル/kgの式(3)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにアスパラギン酸を使用し、式(3)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(a)の化合物と222.2部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S3a)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(a)の化合物(重量%は、最終水溶液(S3a)の全重量が基準)と0.122モル/kgの式(3)の化合物を含む水溶液(S3a)が1000部得られる。得られた水溶液(S3a)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0059】
調製例3b
0.157モル/kgの式(3)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにアスパラギン酸を使用し、式(3)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(b)の化合物と220.2部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S3b)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(b)の化合物(重量%は、最終水溶液(S3b)の全重量が基準)と0.122モル/kgの式(3)の化合物を含む水溶液(S3b)が1000部得られる。得られた水溶液(S3b)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0060】
比較例3c
0.157モル/kgの式(3)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにアスパラギン酸を使用し、式(3)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に、11重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、あらかじめ形成したC.I,ダイレクト・バイオレット35水溶液の全重量が基準)と204.0部の水を含む18.2部のあらかじめ形成した水溶液をゆっくりと添加することによって水溶液(S3c)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、最終水溶液(S3c)の全重量が基準)と0.122モル/kgの式(3)の化合物を含む水溶液(S3c)が1000部得られる。得られた水溶液(S3c)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0061】
塗布例3
70部のチョーク(OMYA社から商品名Hydrocarb 90で市販されているもの)と、30部の粘土(IMERYS社からカオリンSPSの商品名で市販されているもの)と、42.8部の水と、0.6部の分散剤(BASF社からPolysatz Sの商品名で市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩)と、20部の50%ラテックス(Dow社からDL921の商品名で市販されているスチレン−ブタジエン・コポリマー)と、加水分解度が98〜99%でブルックフィールド粘度が4.0〜5.0mPa秒(20℃の4%水溶液)の0.8部のポリビニルアルコールを含むコーティング組成物を調製する。水を添加してこのコーティング組成物の固体含有量を約65%に調節し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8〜9に調節する。
【0062】
調製例3、3a、3bと比較例3cで調製した水溶液(S3)、(S3a)、(S3b)、(S3c)のそれぞれを、撹拌しているコーティング組成物に添加して濃度の範囲を0〜2重量%にする(乾燥した固体を基準にして式(3)の化合物が0〜0.4重量%)。なお重量%は、乾燥顔料の全重量が基準である。
【0063】
次に、ワイヤー巻き付けバー式自動塗布装置を標準的な速度設定、バーへの標準的な負荷にして用い、このコーティング組成物を、中性サイズ剤で処理した市販の75gsmの白色紙ベース・シートに塗布する。次にコーティングされた紙を熱い空気流の中で5分間乾燥させる。その後、紙のコンディショニングを実施し、較正されたElrepho分光測光器でCIE白色度と明度を測定する。結果をそれぞれ表3aと表3bに示す。当該結果は、陰影付け染料の使用によって特徴付けられる欠点(明度の低下)を回避しつつ、白色度が有意に改善されることを明確に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
調製例4
0.157モル/kgの式(4)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにジイソプロパノールアミンを使用し、式(4)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に222.2部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S4)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.122モル/kgの式(4)の化合物を含む水溶液(S4)が1000部得られる。得られた水溶液(S4)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0067】
【化8】
【0068】
調製例4a
0.157モル/kgの式(4)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにジイソプロパノールアミンを使用し、式(4)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(a)の化合物と220.2部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S4a)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(a)の化合物(重量%は、最終水溶液(S4a)の全重量が基準)と0.122モル/kgの式(4)の化合物を含む水溶液(S4a)が1000部得られる。得られた水溶液(S4a)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0069】
調製例4b
0.157モル/kgの式(4)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにジイソプロパノールアミンを使用し、式(4)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に、2部の式(b)の化合物と220.2部の水をゆっくりと添加することによって水溶液(S4b)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%の式(b)の化合物(重量%は、最終水溶液(S4b)の全重量が基準)と0.122モル/kgの式(4)の化合物を含む水溶液(S4b)が1000部得られる。得られた水溶液(S4b)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0070】
比較例4c
【0071】
0.157モル/kgの式(4)の化合物(国際公開第2011/033064−A2号の実施例1に従って合成したが、ジエタノールアミンの代わりにジイソプロパノールアミンを使用し、式(4)の化合物を0.157モル/kgの濃度にした点だけが異なっている)を含むあらかじめ形成した水性混合物777.8部を室温で効果的に撹拌している中に、11重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、あらかじめ形成したC.I,ダイレクト・バイオレット35水溶液の全重量が基準)と204.0部の水を含む18.2部のあらかじめ形成した水溶液をゆっくりと添加することによって水溶液(S4c)を調製する。得られた混合物を室温で1時間にわたって撹拌すると、0.2重量%のC.I,ダイレクト・バイオレット35(重量%は、最終水溶液(S4c)の全重量が基準)と0.122モル/kgの式(4)の化合物を含む水溶液(S4c)が1000部得られる。得られた水溶液(S4c)は、pHが8.0〜9.0の範囲である。
【0072】
塗布例4
70部のチョーク(OMYA社から商品名Hydrocarb 90で市販されているもの)と、30部の粘土(IMERYS社からカオリンSPSの商品名で市販されているもの)と、42.8部の水と、0.6部の分散剤(BASF社からPolysatz Sの商品名で市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩)と、20部の50%ラテックス(Dow社からDL921の商品名で市販されているスチレン−ブタジエン・コポリマー)と、加水分解度が98〜99%でブルックフィールド粘度が4.0〜5.0mPa秒(20℃の4%水溶液)の0.8部のポリビニルアルコールを含むコーティング組成物を調製する。水を添加してこのコーティング組成物の固体含有量を約65%に調節し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8〜9に調節する。
【0073】
調製例4、4a、4bと比較例4cで調製した水溶液(S4)、(S4a)、(S4b)、(S4c)のそれぞれを、撹拌しているコーティング組成物に添加して濃度の範囲を0〜2重量%にする(乾燥した固体を基準にして式(4)の化合物が0〜0.4重量%)。なお重量%は、乾燥顔料の全重量が基準である。
【0074】
次に、ワイヤー巻き付けバー式自動塗布装置を標準的な速度設定、バーへの標準的な負荷にして用い、このコーティング組成物を中性サイズ剤で処理した市販の75gsmの白色紙ベース・シートに塗布する。次にコーティングされた紙を熱い空気流の中で5分間乾燥させる。その後、紙のコンディショニングを実施し、較正されたElrepho分光測光器でCIE白色度と明度を測定する。結果をそれぞれ表1aと表1bに示す。当該結果は、陰影付け染料の使用によって特徴付けられる欠点(明度の低下)を回避しつつ、白色度が有意に改善されることを明確に示す。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】