特許第5973569号(P5973569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973569担持され且つ分散されているTiO2粒子を含む添加剤を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973569
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】担持され且つ分散されているTiO2粒子を含む添加剤を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20160809BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20160809BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20160809BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20160809BHJP
   B01J 21/16 20060101ALI20160809BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20160809BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160809BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20160809BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B01J35/02 JZAB
   B01J37/02 301Z
   B01J37/08
   B01J32/00
   B01J21/16 M
   B01J35/02 H
   B01J37/04 102
   B01D53/86
   B01D53/86 222
   B01D53/86 110
   C04B28/02
   C04B14/02 A
【請求項の数】49
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-524362(P2014-524362)
(86)(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公表番号】特表2014-521508(P2014-521508A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012065410
(87)【国際公開番号】WO2013020972
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】P201131372
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】514033873
【氏名又は名称】アクシオナ インフラエストゥルクトゥーラス,ソシエダッド アノニマ
(73)【特許権者】
【識別番号】514034803
【氏名又は名称】トルサ,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス ベレンゲル,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】カサード バラサ,アウロラ マリア
(72)【発明者】
【氏名】エステバン クビーリョ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】グラバロス モレノ,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ロホ,アントニオ ホセ
(72)【発明者】
【氏名】サンタレン ロメ,フリオ
(72)【発明者】
【氏名】ベラ アグーリョ,ホセ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−031099(JP,A)
【文献】 特表2011−518656(JP,A)
【文献】 特開平04−092811(JP,A)
【文献】 特表2007−517750(JP,A)
【文献】 特開2006−056730(JP,A)
【文献】 Pilar ARANDA et al.,Titania-Sepiolite Nanocomposites Prepared by a Surfactant Templating Colloidal Route,CHEMISTRY OF MATERIALS,2008年 1月 1日,V20 N1,P84-91
【文献】 Marina Nieto-SUAREZ et al.,Self-assembled titania-silica-sepiolite based nanocomposites for water decontamination,journal of Materials Chemistry,英国,The Royal Society of Chemistry,2009年 2月11日,vol. 19,pp. 2070-2075
【文献】 Carlos KNAPP et al.,Phase distribution in titania-sepiolite catalyst supports prepared by different methods,Journal of Materials Chemistry,1997年,Vol. 7, Number 8,pp. 1641-1645
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
DWPI(Thomson Innovation)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似層状フィロケイ酸塩である担体上に担持され且つ分散されているTiO粒子を含む添加剤を調製する方法であって、
350℃を超える温度で熱処理を行う工程を含まず、
(i)担体を水中に高剪断で分散させる工程、
(ii)上記工程(i)の担体の酸活性化を行う工程、および
(iii)高剪断混合を行いながら上記工程(ii)の担体上にTiO粒子を付加する工程を含み、
高剪断は、回転子において10m/sを超える周速度を発生することができるとともに2,000s−1を超える剪断速度を発生する高剪断分散システムを用いて行われる、方法。
【請求項2】
上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記TiO粒子を付加した担体を濾過によって固液分離する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記担体は実質的に海泡石である、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記海泡石はレオロジー等級の海泡石である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記担体は実質的にアタパルジャイトである、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記アタパルジャイトはレオロジー等級のアタパルジャイトである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記添加剤に含まれる上記TiO粒子は、アナターゼ相、ルチル相、ブルッカイト相、およびこれらの混合物から選択される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記添加剤に含まれる上記TiO粒子は、アナターゼ相から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水中における上記担体の分散濃度は、2重量%〜30重量%となるよう調節されている、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
水中における上記担体の分散濃度は、2重量%〜15重量%となるよう調節されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水中における上記担体の高剪断での分散は、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われる、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記担体は、上記海泡石の構造から5%〜25%のマグネシウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項14】
上記担体は、上記アタパルジャイトの構造から5%〜33%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項15】
上記酸は、有機酸または無機酸である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
上記酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記酸を添加した後に得られるpHは5未満である、請求項13〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記酸を添加した後に得られるpHは3以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記酸による処理は10℃〜100℃の温度で行われる、請求項13〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
上記酸による処理は5分間〜5時間行われる、請求項13〜19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
上記酸による処理は10分間〜30分間行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記TiO粒子は、酸で活性化させた上記担体の分散液に対して、乾燥粉末の形態において添加されるか、または水における分散液として添加される、請求項13〜21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度は2重量%〜30重量%である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度は4重量%〜10重量%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量は、上記添加剤のTiOの重量濃度が5重量%〜75重量%となるよう調節される、請求項1〜24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量は、上記添加剤のTiOの重量濃度が15重量%〜50重量%となるよう調節される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子は、高剪断条件で2分間〜60分間撹拌されて分散される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子は、高剪断条件で5分間〜20分間撹拌されて分散される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
上記担体は、海泡石および/またはアタパルジャイトの濃度が50重量%を超える、請求項1〜28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
上記担体は、海泡石および/またはアタパルジャイトの濃度が85重量%を超える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
上記担体は、平均粒径が150μm未満である、請求項1〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
上記担体は、平均粒径が44μm未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記工程(iii)で分散させたTiO粒子は、平均粒径が1μm未満である、請求項1〜32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
上記工程(iii)で分散させたTiO粒子は、平均粒径が100nm未満である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
疑似層状フィロケイ酸塩である担体上に担持され且つ分散されているTiO粒子を含む添加剤を調製する方法であって、
350℃を超える温度で熱処理を行う工程を含まず、
(i)担体を水中に高剪断で分散させる工程、
(ii)上記工程(i)の担体の酸活性化を行う工程、および
(iii)高剪断混合を行いながら上記工程(ii)の担体上にTiO粒子を付加する工程を含み、
高剪断は、回転子において10m/sを超える周速度を発生することができるとともに2,000s−1を超える剪断速度を発生する高剪断分散システムを用いて行われ、
酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子は、高剪断条件で2分間〜60分間撹拌されて分散される方法によって取得可能な、担体上に担持され且つ分散されているTiO粒子を含む添加剤。
【請求項36】
請求項35に記載の添加剤を含む組成物。
【請求項37】
セメントである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
上記添加剤を0.1重量%〜15重量%含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
モルタルまたはコンクリートである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
上記モルタルまたはコンクリートの重量に対して上記添加剤を0.1重量%〜15重量%含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
石灰モルタルまたは混合モルタルである、請求項36に記載の組成物。
【請求項42】
上記石灰モルタルまたは混合モルタルの重量に対して上記添加剤を0.1重量%〜15重量%含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
石膏である、請求項36に記載の組成物。
【請求項44】
上記石膏の重量に対して上記添加剤を0.1重量%〜15重量%含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
塗料、コーティング層、乳剤層、または保護層である、請求項36に記載の組成物。
【請求項46】
上記添加剤を0.1重量%〜10重量%含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
ゾル−ゲルコーティングである、請求項36に記載の組成物。
【請求項48】
上記添加剤を0.1重量%〜15重量%含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
空気および紫外線の存在下において、材料に対して自己洗浄特性、殺生物特性、脱臭特性、および/または汚染削減特性を付与するための請求項35に記載の添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、疑似層状フィロケイ酸塩上に担持され且つ分散されているTiO粒子を含む添加剤を調製する方法、およびこの添加剤の光触媒添加剤としての使用に関する。したがって、本発明は触媒作用の分野に属し得る。
【0002】
〔背景技術〕
1972年にFujishimaおよびHondaが光化学電池のTiO陰極における水分解の現象を紹介して以来(Nature, 1972, 238(37), 37-38)、酸化的光触媒作用は大きなブームとなり、多数の研究者および企業が上記現象の応用を模索し始めた。1980年代および1990年代前半において、光触媒作用効果の応用として主に模索されたのは、廃水浄化、および化学工業において光触媒作用効果を不均一触媒作用(Chem. Rev., 1995, 95, 69-96)に使用することであった。特に過去10年間においては、環境汚染(Pure Appl. Chem., 2000, 72(7), 1265-1270)および臭気(Water Sci Technol., 2000, 44(9),127-133)を低減する材料の開発、自己洗浄特性を有する材料の開発(Lacer, 2000, 5, 157-168)および殺生物特性を有する材料の開発(Water Research, 2008, 42, 4591-4602)等、他の種類の応用に光触媒を使用することからなる、多大な研究努力が行われた。
【0003】
これらの応用は全て、紫外線の存在下で光触媒の表面において起こる光化学反応という、同一の物理化学的原理に基づく。この現象は、吸収された物質を分解する触媒上で起こる、一連の光誘起酸化還元反応からなる。さらに、酸化還元反応に起因するOHラジカルの発生は、これらの材料の表面が、紫外線を当てられると超親水性になることを意味する。
【0004】
以下に、紫外線、酸素および環境湿度の存在下におけるTiOによる汚染物質の分解について広く認められている反応機序の詳細を示す(Surf. Sci. Rep., 2003, 48, 53-229):
【0005】
【化1】
光触媒プロセスが起こるためには、紫外線に加え、酸素および水の存在も(OHおよびHの供給源として)どれほど必要であるかが分かる。したがって、光触媒材料の正常な活性のためには、光触媒材料はこれら3つの要件と共に媒体に入っていることが必要である。
【0006】
環境汚染を低減する観点および表面を自己洗浄することにより美的外観を保つ観点の両方から、光触媒材料が、汚染された大都市に存在する最も深刻な問題のいくつかに対する解決策となり得ることが示されている。
【0007】
浸食性の気象環境に曝された材料の表面は、経年による劣化に悩まされる。大気における塵ならびに物理的および化学的汚染物質の存在が、この劣化に寄与する。種々の要因のうち、湿度、降雨および風の条件は、これらの環境汚染物質が材料の表面に到達し、経年によって美的外観および耐久性を悪化させることを意味する。
【0008】
明らかに、材料への影響だけでなく、大気汚染は人間の健康に悪影響を与える有害性を有する。この汚染は通常、人間の活動の副産物として発生し、世界人口の大部分がまさに集中する大都市に主に集中している。したがって、世界人口の大部分がこの現象の影響を受ける。
【0009】
光触媒材料が水および酸素の存在下で紫外線を照射されると、光触媒材料は、接触する有機物質および無機物質の分解を触媒し、これにより環境汚染の低減および表面の自己洗浄に寄与する。さらに、光触媒材料は、ヒドロキシルラジカルの発生に部分的に起因する殺生物効果を有するため、特定の表面におけるバクテリア、藻類および菌類の増殖を回避する。
【0010】
二酸化チタンは、良好な活性を有し、コスト面で競争力があり、大量生産されるため、現在最も広く使用される光触媒である。さらに、表面的効果ではあるが、光触媒の粒子がナノメートルサイズである場合には光触媒の活性が増加する。これは、ナノメートルサイズの粒子の単位体積当たりの表面の露出度が同量のマイクロメートルサイズの粒子よりも高いからである。しかしながら、まさにこの高い表面エネルギーが原因で、ナノ粒子同士の間に存在するファンデルワールス力によってナノ粒子の凝集が起こる。ナノ粒子の凝集は、ナノ粒子の活性を低下させ、且つ、ナノ粒子が異なる系またはマトリクスに添加剤として取り込まれるときの取り込みおよび均一な分散を妨げる。その結果、ナノ粒子は取り込まれたマトリクス内において不均一に分布し、ナノ粒子の大きな纏まりを形成しながら寄り集まっているように見える。触媒作用において繰り返し使用される解決法は、基材上に触媒粒子を担持させることである。触媒作用の分野には様々な担体が存在するが、上記の意味において、最も広く使用される基材はアルミナ等の金属酸化物である。この種のナノ粒子の担持に使用されるマトリクスの1つに、粘土が挙げられる。
【0011】
粘土上に担持されるTiOナノ粒子を得るためのいくつかのプロセスが記されている。これらのプロセスのほとんどは、粘土上に担持される前駆体を熱処理して対応する酸化物を得ることで、TiOがプロセス中に「その場で」取得されるため、特徴付けられる。上記熱処理は粘土の構造特性に影響を与え(Chem. Mater., 2008, 20, 84-89, Chem. Eng. J., 2011, 166 (3), 859-867)、これにより、例えば粘土のレオロジー特性の改変等、他の特性に影響を与え得る。金属ナノ粒子の取得のための担体として使用される粘土としては、例えば、その構造特性によりナノ粒子の均一な分散系の取得を可能にする海泡石およびアタパルジャイトまたはパリゴルスカイト(例えば特許文献WO2005035124号に開示)が挙げられる。海泡石およびアタパルジャイトは何れも、こぼれた物またはネコの排泄用トレイのための吸収剤として従来的に使用される、または、大きな比表面積および特定の構造特性をもつことから、建設におけるレオロジー添加剤として、塗料として、および動物性食品の部門において従来的に使用される、特殊な粘土の群に属する。ナノ粒子の場合、海泡石およびアタパルジャイトは種々の性質を持つナノ粒子の合成のための担体として使用されてきた。この意味において、Ni、AgもしくはCu型の金属ナノ粒子の取得プロセス(J. Am. Ceram. Soc. 2006, 89, 3043-3049)およびTiO型(J. Mater. Chem., 2009, 19, 2070-2075; Chem. Mater., 2008, 20, 84-89)またはFe型(J. Phys. Chem. C 112, 2864-2871)の酸化物の取得プロセスの両方が記されている。しかしながら、これまでに記された取得プロセスは、前駆体からナノ粒子を取るための熱処理を含み、その結果、担体として使用される海泡石もしくはアタパルジャイトの構造改変およびレオロジー特性の損失を伴う。これら海泡石およびアタパルジャイトは何れも、350℃〜500℃の温度の熱処理の結果、その構造が変化する。上記熱処理は、ケイ酸塩結晶化水分子を損失させ、これらの粘土のケイ酸塩構造の崩壊を増加させ、対応する無水種である無水海泡石および無水アタパルジャイトを形成する。熱処理を原因とする崩壊は、ケイ酸塩ネットワークのc軸の全体に配向しているこれらの粘土のケイ酸塩構造におけるチャネルの閉鎖をもたらすとともに、これらの粘土の比表面積および空隙率の減少をもたらす。熱処理工程を用いてこれらの粘土上でナノ粒子を合成するプロセスの例としては、J. Am. Ceram. Soc. 2006, 89, 3043-3049に記された論文に記載されたプロセスがある。このプロセスにおいて、種々の金属ナノ粒子が、海泡石上に担持され、酸化から保護され、完璧に分散した状態で得られた(15重量%以下)。対応する水酸化物から光触媒活性相を形成するためには熱処理が必要である酸化物(例えば、TiO酸化物等)の場合にも、同様のことが起こる。
【0012】
同様に、350℃〜800℃の温度で予め熱処理された粘土、および、市販の予め合成されたTiOが粘土上に5%未満の濃度で分散している未処理粘土の両方を使用してTiOナノ粒子を担持するための、種々のプロセスが記されている。この場合、粘土は、凍結乾燥プロセス後に無機泡を得ることを可能にする骨格としての役割を果たす(J. Mater. Chem., 2009, 19, 2070-2075)。
【0013】
したがって、最新技術の観点から見ると、海泡石および/またはアタパルジャイトは均一に分布したTiOナノ粒子の取得のための適切な担体であるかもしれないが、これまで記されたプロセスには種々の応用における実用を制限する欠点が存在する。他方、TiOの取得のために熱処理工程を要する合成プロセスが存在するが、該熱処理工程は担体として使用されるアタパルジャイおよび海泡石の構造および特性を変化させる。他方、熱処理を必要としない、予め合成されたTiOナノ粒子をこれらの粘土上に担持させるプロセスが存在する。しかしこのプロセスには、粘土の表面に均一に分布させ得るTiOナノ粒子の最高濃度の点で制限がある。この濃度は、5%以下のTiOである。これより高いTiO濃度では、粘土の表面においてTiOナノ粒子が均一に堆積および単分散せず、塊を形成するため、有効性が低下する。
【0014】
一方、例えば塗料等の、例えば建設セクターまたは塗装セクター等における種々の応用におけるTiOナノ粒子の光触媒活性を向上させるためには、より高濃度でTiOナノ粒子を粘土上に担持させることが好ましい。他方、例えば粘土のレオロジー的挙動を維持する目的、およびこれにより最終的な用途(例えば、モルタルまたは塗料等の、粘土が塗布される系)においてナノ粒子を担持する粘土をより均一に分散させる目的で、粘土の構造特性および特性を改変しないこともまた望ましい。
【0015】
さらに、有機汚染物質およびNOx等の分解されることが望ましい他の化合物の吸収を向上させるため、ならびに、これらの化合物と粘土上に堆積したTiOナノ粒子との接触を増加させ、これにより光触媒分解におけるTiOナノ粒子の有効性を向上させるために、化学処理を使用することなく天然海泡石もしくはアタパルジャイトの高い吸収能を維持または向上させることが都合良い。
【0016】
団体および当局による、より清浄な環境への要件がますます厳しくなっていること、およびより良い生活の質への要求が存在することは、上述の望ましい特性を有するこの種の光触媒材料への要求が高まっていることを意味する。同様に、種々の応用において競争力を有するように、これらの材料の活性を益々高めるとともに価格を抑えることが要求されている。
【0017】
〔発明の説明〕
本発明に記載の方法は、上述の問題を解決し、海泡石およびアタパルジャイト上にTiOナノ粒子を高濃度且つ均一に堆積させることを、350℃を超える温度で熱処理を行う工程を用いる必要なく、それゆえ粘土担体の改質およびその特性(特にレオロジー特性)の改変を回避しつつ、可能にする。
【0018】
さらに、上記方法によって得られる生成物において、これらの粘土(海泡石およびアタパルジャイト)上に堆積されたTiOは、環境湿度の存在なしに有機汚染物質を分解し得る。これは、上記光触媒作用プロセスにおける有機化合物の分解に必要なOHラジカルの形成には、これらの粘土の表面に吸着された水があれば十分であるからである。海泡石およびアタパルジャイトの表面は、シラノール基(−SiOH)がケイ酸塩構造の端の全体に高密度で位置する結果、非常に高い親水性を有する。これらのシラノール基は水分子を吸収し得るため、水素結合が形成され、これらの粘土が水および他の極性液体に対して高い吸着能および吸収能を有する理由の1つとなっている。
【0019】
本発明に開示される方法は、高濃度のTiOナノ粒子が海泡石上に均一に分散した状態で堆積している生成物を得ることを可能にする。TiOナノ粒子の割合は75%までであれば凝集が起こらない。但し、光触媒添加剤としてのコストと有効性との比率の観点からは、TiOの割合は10重量%〜50重量%の範囲にあることが好ましい。この生成物は、自己洗浄および汚染低減物質において使用され得る。その理由は、海泡石およびアタパルジャイト上においてTiOナノ粒子が均一に分散しており、且つ、これらの粘土の表面に汚染物質が吸着されるため、粘土および汚染物質の間の接触が増加し、これにより触媒(TiO)および基質(分解対象の化合物)の間の接触が促進されて分解の光触媒効果が向上するからである。さらに、上記反応は相対湿度による影響を受けず、また、海泡石およびアタパルジャイトは、その表面に吸着された水分子を、光分解反応に必要なヒドロキシルラジカルの形成のために提供することから、上記反応は環境湿度の存在なしに行われ得る。
【0020】
本発明において得られる生成物は、例えば、バクテリア、藻類および菌類の増殖の回避、ならびにVOC(揮発性有機化合物)、NO、SO、NHおよびCO等の大気汚染の原因となる有害物質の多くを減少させることへの貢献により、長期にわたって美的外観の変化を防ぐために、種々の材料内に光触媒添加剤として取り込まれ得る。
【0021】
したがって、本発明の一態様は、担体上に担持され且つ分散されているTiO粒子を含む添加剤を調製する方法であって、(i)担体を水中に分散させる工程、(ii)上記工程(i)の担体の酸活性化を行う工程、および(iii)高剪断混合を行いながら上記工程(ii)の担体上にTiO粒子を付加する工程を含む方法に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、上記方法によって取得可能な、担体上に担持され且つ分散されているTiO粒子を含む添加剤に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、上記添加剤を含む組成物に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、空気および紫外線の存在下において、材料(好ましくは建設材料)に対して自己洗浄特性、殺生物特性、脱臭特性、および/または汚染削減特性を付与するための上記添加剤の使用に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、空気および紫外線の存在下において、材料(好ましくは建設材料)に対して自己洗浄特性、殺生物特性、脱臭特性、および/または汚染削減特性を付与するための上記添加剤の使用に関し、上記添加剤の活性には環境湿度を必要としない。
【0026】
本発明の別の態様は、水の浄化および殺菌のための上記添加剤の使用に関する。
【0027】
本発明の別の態様は、ガス流の浄化のための上記添加剤の使用に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、産業プロセスにおける光触媒反応器のための上記添加剤の使用に関する。
【0029】
「担体」という用語は、固形物であって、該固形物の有効性の向上および/またはコストの最小化のために、触媒の粒子が該固形物の表面において分散している固形物を意味する。担体として用いられる固体は、例えば疑似層状フィロケイ酸塩、特には海泡石またはアタパルジャイト(パリゴルスカイト)等の、高い比表面積を有する材料であることが好ましい。
【0030】
「高剪断」という用語は、高い剪断力または高い接線力を付与し得るような、サイズの減少、塊および凝集体の分散、または固体同士の混合および固体と液体との混合の条件に関する。これらの高剪断力は、主に、高速機械撹拌システムならびに回転子および固定子の間で高剪断速度の生成を実現し得る回転子/固定子型の撹拌・混合システムによって実現される。本発明の目的のため、高剪断分散システムは10m/sを超える周速度を発生し得る高速機械撹拌機とみなされる。典型例は歯付きディスクを備えたCowles型ミキサである。回転子において10m/sを超える周速度を発生し得るとともに回転子および固定子の間の空間において2,000s−1を超える剪断速度を発生し得る回転子/固定子システムも、高剪断システムであるとみなされる。撹拌機およびミキサの典型例は、コロイドミル、スタンプミル、歯付き回転子/固定子システムおよびSilverson型ミキサである。また、高剪断システムは、マイクロボールミルならびに異なる速度で回転する複数のシリンダを備えるとともに該シリンダ間の空間において200s−1を超える速度を発生し得る2シリンダミルおよび3シリンダミルであるともみなされる。
【0031】
「疑似層状フィロケイ酸塩」(別名「疑似層状ケイ酸塩」)という用語は、通常はMgまたはMgおよびAlであるカチオンの八面体層に頂点を介して結合しているシリカ四面体の2つの二次元層から構成される、2:1型フィロケイ酸塩に関する。シリカ四面体層は連続的であるが、複数の細長い片の形状に組織化されており、連続する細長い片における四面体の頂点がそれぞれ異なる方向を向いている。シリカ四面体の先端部の方向におけるこの交互の配列は、八面体層に途切れを生じさせ、これによりケイ酸塩構造におけるチャネルが増加する。海泡石の場合、八面体カチオンは主にMgであり、シリカ四面体の先端部の方向において6単位ごとに交互になっている配列を有する。パリゴルスカイト(アタパルジャイトとしても知られる)の場合、八面体カチオンは基本的にはアルミニウムおよびマグネシウムであり、シリカ四面体の反転は4単位ごとに見られる。疑似層状フィロケイ酸塩または疑似層状ケイ酸塩の例としては海泡石およびアタパルジャイトが挙げられ、「国際粘土研究連合命名委員会(the AIPEA Nomenclature Committee)」の1970年の提言(AIPEA Newsletter No. 4, 3-4, 1970)によれば、これらは上記種類のフィロケイ酸塩の下位区分を構成する粘土鉱物である。以前は、これらの粘土鉱物は「ホルマイト」の名前でも知られていた。
【0032】
本発明のフィロケイ酸塩生成物(「レオロジー特性を有する生成物」または「レオロジー等級生成物」)に適用される「レオロジー特性」という用語は、この材料が導入された液体系、分散系またはペーストのレオロジー特性すなわち流動性を改変するという、当該材料の有する能力に関わる。これらの疑似層状フィロケイ酸塩は、その物理化学的特性および形態に起因して、液相を構造化し、これにより系の粘度が増加する(増粘)および/または非ニュートンレオロジー的挙動が増加する。この非ニュートン挙動は、系の粘度が、材料に付与される剪断(偽塑性挙動)および/または剪断が絶え間なく付与される時間(チキソトロピー挙動)に依存することを特徴とする。上記系内において、ゲルの力も発生し得る。当該ゲルの力は、懸濁液を弾性固体として作用させる力であり、分散した粒子を安定した懸濁液中に維持することを可能にする。
【0033】
本発明における「浸出」という用語は、担体として使用される固体の構造のカチオンの一部が、酸処理の結果として溶解することに関する。特に、「浸出」という用語は、疑似層状フィロケイ酸塩、海泡石またはアタパルジャイトの構造の八面体カチオン(特にアルミニウムおよび/またはマグネシウム)の溶解に関する。
【0034】
「光触媒」または「光触媒の」という用語は、光子に当たると電子および正孔の対を発生させることが可能な触媒に関する。これらの対は、新たな電子を導電層に入らせ、空気および水の存在下で光触媒の表面においてOHフリーラジカルを発生させる。これらのラジカルは、揮発性有機化合物(VOC)および無機化合物(NOx)を酸化させてCO、HO、SOおよびNに分解することが可能な、二次酸化還元反応を開始させる。最も広く知られ且つ使用される光触媒はTiOであるが、これに限定されず、ZnO、CdS、Fe、FeOおよびZnS等の他の化合物も光触媒として機能し得る。これらの光触媒は、直接作用するか、またはプロセスを促進する/助ける特殊な担体に作用することにより、最終的な挙動を向上させる。最も広く使用される担体は、アルミナ、ケイ酸塩および粘土等である。
【0035】
「セメント」という用語は、水硬性の集塊(すなわち、細かく粉砕された無機物質)に関し、当該集塊は水と混合されるとペーストを形成し、当該ペーストは反応および水和プロセスにより固化および硬化し、一旦硬化すると、水を被ったとしても耐性および安定性を維持する。上記集塊は、基本的に石灰、粘土および石膏の混合物から形成されるが、天然ポゾラン、高炉スラグ、石灰、シリカフューム、フライアッシュ等の他の追加物を含んでいてもよい。UNE−EN197規格は実質的に全種類のセメントを含む。
【0036】
「(セメントの)モルタルまたはコンクリート」という用語は、ある種類のセメントと様々な粒径分布の砂または砂利との混合物に関する。砂および砂利は体積安定化成分として機能し、充填物として機能し、且つ収縮を顕著に減少させる。モルタルおよびコンクリートを減水剤および通気剤等として適切に設計するために、他の添加剤が必要になり得る。
【0037】
「石灰モルタル」という用語は、石灰(酸化カルシウム)、砂および水の混合物に関し、(非常に従来的な材料であるため)手作業で混合するか、または混合機において混合することができる。固化および硬化プロセスは、気泡石灰および水硬性石灰のどちらを使用するかによって異なる。気泡石灰は、主に酸化カルシウムまたは水酸化物から構成され、大気中のCOの作用によって、空気と接触しながらゆっくりと硬化する。気泡石灰は、欧州法UNE−EN459に適合する品質基準を満たさなければならない。水硬性石灰は、方解石および粘土鉱物の混合物の焼成によって得られる。水硬性モルタル石灰において、静置後の初めの数日間は、過剰な遊離石灰のみが炭酸カルシウムに変化する。残余は反応して、水硬性石灰において得られる非常に強い耐性の原因となるケイ酸水素カルシウムまたはCSHゲルを形成する。砂は体積安定化成分であり、充填物として機能し、収縮を顕著に減少させる。
【0038】
「石膏」という用語は、ギプス(gypsum)と呼ばれる天然石(硫酸カルシウム二水塩:CaSO・2HO)を脱水することによって生成され、固化性、耐性、密着性、保水性および密度特性を改変するために工場において他のいくつかの化学物質を追加することができ、一旦水と混合されると直接使用され得る、建設材料に関する。石膏はプレハブ材料の製造にも使用される。工業製品としての石膏は、硫酸カルシウム半水塩(CaSO・1/2HO)(一般に「焼き石膏」とも呼ばれる)である。建設において、石膏は黒色石膏、白石膏および赤色石膏の3種類に区別される。黒色石膏は、建設において広く使用される材料であり、白石膏よりも不純物を多く含み、灰色であり、建物の内壁において石膏の最初の層が黒色石膏を用いて設けられる。白石膏は建築において広く使用される材料であり、不純物をほとんど含まず、したがって黒色石膏より不純物の含有量が少なく、白色であり、建物の壁において石膏の最後の層つまり「仕上げ層」が白石膏を用いて設けられる。赤色石膏は修復作業において高く評価される材料であり、不純物をほとんど含まず、したがって黒色石膏より不純物の含有量が少なく、赤みを帯びた色であり、建物の壁において石膏の最後の層つまり「仕上げ層」が赤色石膏を用いて設けられる。
【0039】
「塗料」という用語は、比較的薄い層で表面に塗布された場合、時間が経つと当該表面に密着する固体膜へと変化することにより、塗布された要素をコーティング、保護および装飾する流体生成物に関する。多数の異なる種類の塗料が存在し、水性塗料もあれば、溶剤型塗料もあれば、油性塗料もある。上記塗料は通常、一連の追加物を含み、このうち主なものにCaCOおよびTiOがある。
【0040】
「ゾル−ゲルコーティング」という用語は、ゾル−ゲル技術(溶液から、重合プロセス後にゲルを得る)によって合成された薄膜の形成に関する。ゾル−ゲルコーティングの例の中には、ケイ素アルコキシド(テトラエチルオルトシランおよびメチルトリエトキシシラン等)を反応の前駆体として使用するものを挙げることができる。これらの前駆体は、一旦アルコールに溶解されると水中で加水分解してそれぞれのシランを形成し、その後下記の反応に示す縮合反応を起こす:
1)加水分解反応
【0041】
【化2】
2)縮合反応
【0042】
【化3】
別の実施形態では、本発明は、上記工程(iii)後、(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含む上記方法に関する。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、上記TiO粒子を付加した担体を濾過によって固液分離する、好ましくは、加圧濾過器、加圧ベルト濾過器、真空ベルト濾過器、回転真空濾過器、およびNucha濾過器から選択される濾過装置を用いた濾過によって固液分離する上記方法に関する。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が疑似層状フィロケイ酸塩である上記方法に関する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が実質的に海泡石である上記方法に関する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が実質的に海泡石であり、当該海泡石がレオロジー等級の海泡石である上記方法に関する。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が実質的にアタパルジャイトである上記方法に関する。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、当該アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトである上記方法に関する。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、上記添加剤を構成する上記TiO粒子が、アナターゼ相、ルチル相、ブルッカイト相、またはこれらの混合物である上記方法に関する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相である上記方法に関する。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜30重量%となるよう調節されている上記方法に関する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されている上記方法に関する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、水中における上記担体の分散が高剪断で行われる上記方法に関する。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われる上記方法に関する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が上記海泡石の構造から5%〜25%のマグネシウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化される上記方法に関する。
【0056】
別の実施形態では、本発明は、上記担体が上記アタパルジャイトの構造から5%〜33%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化される上記方法に関する。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、上記酸が有機酸または無機酸、好ましくはpKが4未満の無機酸である上記方法に関する。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、上記酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択される上記方法に関する。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、上記酸を添加した後に得られるpHが5未満である、好ましくは上記酸を添加した後に得られるpHが3以下である上記方法に関する。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、上記酸による処理が350℃未満の温度で行われる上記方法に関する。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われる上記方法に関する。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、上記酸による処理が5分間〜5時間行われ、好ましくは上記酸による処理が10分間〜30分間行われる上記方法に関する。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、上記TiO粒子が、酸で活性化させた上記担体の分散液に対して、乾燥粉末の形態において添加されるか、または水における分散液として添加される上記方法に関する。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度が2重量%〜30重量%である上記方法に関する。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度が4重量%〜10重量%である上記方法に関する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量が、上記添加剤のTiOの重量濃度が5重量%〜75重量%となるよう調節される上記方法に関する。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量が、上記添加剤のTiOの重量濃度が15重量%〜50重量%となるよう調節される上記方法に関する。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子が、高剪断条件で2分間〜60分間撹拌されて分散される上記方法に関する。
【0069】
別の実施形態では、本発明は、酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子が、高剪断条件で5分間〜20分間撹拌されて分散される上記方法に関する。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、高剪断での分散が10m/s以上の周速度に到達可能な機械撹拌機を用いて行われる上記方法に関する。
【0071】
別の実施形態では、本発明は、上記担体の海泡石および/またはアタパルジャイトの濃度が50重量%を超える上記方法に関する。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、上記担体の海泡石および/またはアタパルジャイトの濃度が85重量%を超える上記方法に関する。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、上記担体の平均粒径が150μm未満であり、好ましくは上記担体の平均粒径が44μm未満であることを特徴とする上記方法に関する。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、上記工程(iii)で分散させたTiO粒子の平均粒径が1μm未満であり、好ましくは上記工程(iii)で分散させたTiO粒子の平均粒径が100nm未満である上記方法に関する。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記担体の海泡石濃度が85重量%を超え;且つ
−上記担体の平均粒径が44μm未満である上記方法に関する。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記担体の海泡石濃度が85重量%を超え;
−上記担体の平均粒径が44μm未満であり;且つ
−上記工程(iii)で分散させたTiO粒子の平均粒径が100nm未満である上記方法に関する。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、
−上記担体がアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記担体のアタパルジャイト濃度が85重量%を超え;且つ
−上記担体の平均粒径が44μm未満である上記方法に関する。
【0078】
別の実施形態では、本発明は、
−上記担体がアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記担体のアタパルジャイト濃度が85重量%を超え;
−上記担体の平均粒径が44μm未満であり:且つ
−上記工程(iii)で分散させたTiO粒子の平均粒径が100nm未満である上記方法に関する。
【0079】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;且つ
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石である上記方法に関する。
【0080】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;且つ
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトである上記方法に関する。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり:
−上記担体の海泡石濃度が85重量%を超え;且つ
−上記担体の平均粒径が44μm未満である上記方法に関する。
【0082】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記担体のアタパルジャイト濃度が85重量%を超え;且つ
−上記担体の平均粒径が44μm未満である上記方法に関する。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;且つ
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相である上記方法に関する。
【0084】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;且つ
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相である上記方法に関する。
【0085】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;且つ
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されている上記方法に関する。
【0086】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;且つ
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されている上記方法に関する。
【0087】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;且つ
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われる上記方法に関する。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;且つ
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われる上記方法に関する。
【0089】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体が、上記海泡石の構造から5%〜25%のマグネシウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化され;
−上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択され;
−上記酸を添加した後に得られるpHが3以下であり;
−上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われ;且つ
−上記酸による処理が10分間〜30分間行われる上記方法に関する。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われる;
−上記担体が、上記アタパルジャイトの構造から5%〜33%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化され;
−上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択され;
−上記酸を添加した後に得られるpHが3以下であり;
−上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われ;且つ
−上記酸による処理が10分間〜30分間行われる上記方法に関する。
【0091】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体が、上記アタパルジャイトの構造から5%〜25%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化され;
−上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択され;
−上記酸を添加した後に得られるpHが3以下であり;
−上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われ;
−上記酸による処理が10分間〜30分間行われ;
−上記TiO粒子が、酸で活性化させた上記担体の分散液に対して、乾燥粉末の形態において添加されるか、または水における分散液として添加され;
−上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度が4重量%〜10重量%であり;
−酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量が、上記添加剤のTiOの重量濃度が15重量%〜50重量%となるよう調節され;
−酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子が、高剪断条件で5分間〜20分間撹拌されて分散され;且つ
−高剪断での分散が、10m/s以上の周速度に到達可能な機械撹拌機を用いて行われる上記方法に関する。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体が、上記アタパルジャイトの構造から5%〜33%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化され;
−上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択され;
−上記酸を添加した後に得られるpHが3以下であり;
−上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われ;
−上記酸による処理が10分間〜30分間行われ;
−上記TiO粒子が、酸で活性化させた上記担体の分散液に対して、乾燥粉末の形態において添加されるか、または水における分散液として添加され;
−上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度は4重量%〜10重量%であり;
−酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量が、上記添加剤のTiOの重量濃度が15重量%〜50重量%となるよう調節され;
−酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子が、高剪断条件で5分間〜20分間撹拌されて分散され;且つ
−高剪断での分散が、10m/s以上の周速度に到達可能な機械撹拌機を用いて行われる上記方法に関する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的に海泡石であり、好ましくは上記海泡石がレオロジー等級の海泡石であり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体が、上記アタパルジャイトの構造から5%〜25%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化され;
−上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択され;
−上記酸を添加した後に得られるpHが3以下であり;
−上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われ;
−上記酸による処理が10分間〜30分間行われ;
−上記TiO粒子が、酸で活性化させた上記担体の分散液に対して、乾燥粉末の形態において添加されるか、または水における分散液として添加され;
−上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度が4重量%〜10重量%であり;
−酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量が、上記添加剤のTiOの重量濃度が15重量%〜50重量%となるよう調節され;
−酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子が、高剪断条件で5分間〜20分間撹拌されて分散され;
−高剪断での分散が、10m/s以上の周速度に到達可能な機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体の平均粒径が44μm未満であり;且つ
−上記工程(iii)で分散させた上記TiO粒子の平均粒径が100nm未満である上記方法に関する。
【0094】
別の実施形態では、本発明は、
−上記工程(iii)後、
(iv)上記TiO粒子を付加した担体を分散液から固液分離し、当該TiO粒子を付加した担体中の残留水を大気圧、低圧、または真空下で乾燥させて除去する工程をさらに含み;
−上記担体が実質的にアタパルジャイトであり、好ましくは上記アタパルジャイトがレオロジー等級のアタパルジャイトであり;
−上記添加剤を構成する上記TiO粒子がアナターゼ相であり;
−水中における上記担体の分散濃度が2重量%〜15重量%となるよう調節されており;
−水中における上記担体の高剪断での分散が、周速度が10m/sより高速の機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体が、上記アタパルジャイトの構造から5%〜33%のマグネシウム/アルミニウムカチオンを浸出させる酸の添加によって活性化され;
−上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびこれらの混合物から選択され;
−上記酸を添加した後に得られるpHが3以下であり;
−上記酸による処理が10℃〜100℃の温度で行われ;
−上記酸による処理が10分間〜30分間行われ;
−上記TiO粒子が、酸で活性化させた上記担体の分散液に対して、乾燥粉末の形態において添加されるか、または水における分散液として添加され;
−上記TiO粒子が水における分散液として添加される場合、当該水における分散液のTiO粒子濃度が4重量%〜10重量%であり;
−酸で活性化させた上記担体の分散液に対する上記工程(iii)で添加したTiO粒子の量が、上記添加剤のTiOの重量濃度が15重量%〜50重量%となるよう調節され;
−酸で活性化させた上記担体の分散液および上記TiO粒子が、高剪断条件で5分間〜20分間撹拌されて分散され;
−高剪断での分散が、10m/s以上の周速度に到達可能な機械撹拌機を用いて行われ;
−上記担体の平均粒径が44μm未満であり;且つ
−上記工程(iii)で分散させた上記TiO粒子の平均粒径が100nm未満である上記方法に関する。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、セメント、好ましくは上記添加剤を0.1重量%〜15重量%(好ましくは1.0重量%〜6重量%)含むセメントである上記組成物に関する。
【0096】
別の実施形態では、本発明は、モルタルまたはコンクリート、好ましくは、結合剤の重量に加えて上記添加剤を0.1重量%〜15重量%(好ましくは1.0重量%〜6重量%)含むモルタルまたはコンクリートである上記組成物に関する。
【0097】
別の実施形態では、本発明は、石灰モルタルまたは混合モルタル、好ましくは、結合剤の重量に加えて上記添加剤を0.1重量%〜15重量%(好ましくは1.0重量%〜6重量%)含む石灰モルタルまたは混合モルタルである上記組成物に関する。
【0098】
別の実施形態では、本発明は、石膏、好ましくは結合剤の重量に加えて上記添加剤を0.1重量%〜15重量%(好ましくは1.0重量%〜6重量%)含む石膏である上記組成物に関する。
【0099】
別の実施形態では、本発明は、塗料、またはコーティング層、乳剤層もしくは保護層の何れか、好ましくは屋外での用途に使用される、塗料、またはコーティング層、乳剤層もしくは保護層の何れかである上記組成物に関する。
【0100】
別の実施形態では、本発明は、上記添加剤を0.1重量%〜10重量%(好ましくは0.5重量%〜4重量%)含む塗料である上記組成物に関する。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、上記添加剤を0.1重量%〜10重量%(好ましくは0.5重量%〜4重量%)含む、屋外での用途に使用される塗料である上記組成物に関する。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、ゾル−ゲルコーティングである、好ましくは上記添加剤を0.1重量%〜15重量%(好ましくは1.0重量%〜6重量%)含むゾル−ゲルコーティングである上記組成物に関する。
【0103】
〔発明の詳細な概要〕
本発明の目的は、TiO粒子の有する高い表面活性の結果生ずる、当該TiO粒子の主にナノメートル規模の凝集に関連する最新技術における問題を、光触媒活性を向上できる、簡便且つ産業レベルで容易に拡張可能なプロセスによって解決することを中心としている。
【0104】
本発明は、疑似層状フィロケイ酸塩タイプの粘土(海泡石および/またはアタパルジャイト)において均一に分散したTiO粒子によって主に構成される光触媒添加剤を得る方法に関する。同様に、本発明は、環境湿度の非存在下でも活発な自己洗浄特性、汚染低減特性および殺生物特性を材料に付与するために、上記方法によって得られるTiO粒子を含む光触媒添加剤を、当該材料において光触媒添加剤として使用することに関する。
【0105】
本発明の目的である、均一に分散されたTiO粒子の取得は、疑似層状フィロケイ酸塩の群から選択される粘土の、担体としての使用に基づく。本発明によれば、担体として使用される粘土は海泡石またはアタパルジャイト(別名:パリゴルスカイト)である。本発明の目的のためには、TiO粒子の担持のために接近可能な表面を増やすために、極力細かい粒子サイズを有する粉砕粘土を使用することが好ましい。通常、粘土は粒子サイズが150マイクロメートル未満になるまで、好ましくは44マイクロメートル未満になるまで粉砕される。本発明の特に有利な実施形態は、粘土の粒子サイズが5マイクロメートル未満である場合である。海泡石生成物およびアタパルジャイト生成物は、例えばインパクトミルまたはボールミル等を使用して、典型的には粉砕および粘土粒子サイズの減少のために用いられる乾式もしくは湿式粉砕プロセスによって得られる。粘土の構造を破壊せずにその素粒子を分離し、且つ、粘土の外表面を最大限露出させることを可能にする特別な湿式微粒子化プロセスによって得られるこれらの粘土の生成物も使用することができる。これらの生成物の例は、特許:EP0170299号、EP0454222号およびEP0170299号に開示されるプロセスに従って得られるレオロジー等級の海泡石生成物およびレオロジー等級のアタパルジャイト生成物である。
【0106】
海泡石は、化学的には針状形態および理想式:[Si1230Mg(OH)(OH](HO)を有する含水ケイ酸マグネシウムである。海泡石の構造は、アタパルジャイトまたはパリゴルスカイトの構造と似ている。アタパルジャイトが海泡石と異なる点は、アタパルジャイトの方がやや小さい単位格子を有する点、および、マグネシウムカチオンの一部が基本的にアルミニウムカチオンで置換されており、鉄等の他のカチオンをより少ない含有量で含んでいる点である。アタパルジャイトの理想式は、[Si20(AlMg)(OH)(OH](HO)である。上記含水ケイ酸マグネシウムの構造のAl3+およびMg2+カチオン、またはSi4+カチオンでさえをも他のカチオンで同形置換すると、ケイ酸海泡石およびケイ酸アタパルジャイトの構造内に小さな負電荷が生じ、これはカチオンの吸着によって相殺される。これらの同形置換の結果として、これらの粘土はカオリンおよびスメクタイトの間で中間カチオン交換容量(CEC)を有し、さらに、これらの粘土の化学組成は理想式の組成から離れる。海泡石およびアタパルジャイトのCECは、海泡石およびアタパルジャイトの3ミリ当量/100g〜45ミリ当量/100gにおける組成に応じて異なる。ケイ酸塩構造における八面体カチオンの置換によって、様々な異なる種類の海泡石およびアタパルジャイトが生じる。アタパルジャイトの場合、アルミニウムおよびマグネシウムと置換されて出現し得るカチオンは、マンガン、マンガンおよび鉄、マンガンおよび亜鉛、またはナトリウムおよび鉄である。一方、海泡石の場合は、様々な種類の、第二鉄またはキシリトールの、ナトリウムまたはローフリナイトの、ニッケル第二鉄またはファルコンドアイトの、アルミニウムおよびマグネシウムの海泡石がしばしば自然界で発見されている。
【0107】
針状または微細繊維状形態を有するこれらの疑似層状フィロケイ酸塩の構造は、シリカの2つの平行な鎖が、酸素原子によってアルミニウム八面体および/またはマグネシウム八面体の中心層に結合されることによって形成されている。シリカ四面体からなるこれらの鎖は、海泡石の場合は6単位毎、アタパルジャイトの場合は4単位毎に反転しており、これにより八面体層において途切れが生じ、この途切れによって、針状粒子のc軸方向に配向しているとともに海泡石の場合は3.7Å×10.6Å、アタパルジャイトの場合は3.7Å×6.4Åの寸法を有する、ゼオライトと呼ばれるチャネルが生じる。この構造の結果、海泡石およびアタパルジャイトは、水(沸石水)および他の化合物(分子のサイズおよび極性に依る)を、海泡石およびアタパルジャイトの外表面においてのみならずゼオライトチャネル内においても吸着する。
【0108】
これらの粘土は、細長い形状、高い空隙率および大きな粒子サイズを有しているため、高い比表面積を有する。理論モデルによって計算されるこれらの粘土の総比表面積(外面および内面)は、約900m/g(海泡石においては外面積400m/gおよび内面積500m/g、アタパルジャイトにおいては外面積300m/gおよび内面積600m/g)である。しかしながら、種々の化合物または吸着質が接近可能なこれらの粘土の表面積は、粘土の細孔およびチャネルへの分子の浸透能力を決定する、当該粘土のサイズおよび極性に依存している。例えば、Nが接近可能なBET表面は、海泡石の場合には300m/gを超え、アタパルジャイトの場合には約150m/gである。
【0109】
これらの粘土は、シリカ四面体の各層の端部から始まる外表面において、高密度のシラノール基(−SiOH)を有する。これらのシラノール基は、これらの粘土の外表面に沿って並ぶように配置されており、且つ、水分子を吸着する能力によって高度の親水性を当該粘土に付与する。これらのシラノール基は、吸着の中心として作用することができ、且つ、様々な分子と水素結合を形成し得る。
【0110】
担持され且つ分散されたTiO粒子の取得は、海泡石鉱物、アタパルジャイト鉱物、またはこれらの鉱物の組み合わせを担体として用いて行われ得る。自然界において、海泡石鉱物およびアタパルジャイト鉱物は、これらよりも高いまたは低い含有量の、他の粘土または鉱物に伴って出現し得る。適切な活性を有する生成物の取得のためには、海泡石および/またはアタパルジャイトの濃度が50%を超える、より好ましくは85%を超える出発鉱物を使用することが好ましい。なぜなら、方解石、白雲石、長石、雲母、石英またはスメクタイト等の他の粘土または鉱物の存在は、TiOの分散、ひいては最終生成物の性質に対して影響を与え得るからである。さらに、これらの疑似層状フィロケイ酸塩の繊維内においてTiOを均一に分散させるためには、自然界にこれらの粘土中に存在する針状粒子のクラスターを浄化および脱凝集するとともに個々になった微細繊維状粒子を取得しその出現率を維持する目的で、特許:EP0170299号に開示された従来の粉砕および湿式微粒子化プロセスにより得られる海泡石およびアタパルジャイト生成物を、担体として使用することが推奨される。上記従来のプロセスによって得られた生成物は、TiO粒子が粘土の外表面により多く接近することを可能にする。
【0111】
本発明のプロセスは、水媒体に粘土を分散させる第1の工程を含む。海泡石および/またはアタパルジャイト粒子を適切に分散させるためには、海泡石および/またはアタパルジャイトのクラスターの除細動をできる限り上手く行うために、高剪断混合システムを用いることが好ましい。高剪断混合システムの例としては、周速度が少なくとも10m/sに到達することが可能な機械撹拌機が挙げられる。
【0112】
粘土分散工程の後、酸性媒体中で粘土の活性化工程を行うことによって、粘土の構造における端部に局在するマグネシウムカチオンおよびアルミニウムカチオンの浸出により生成される、粘土のルイスおよびブロンステッドの表面酸性中心(特にはシラノール基(SiOH))の数を増加させる。TiO粒子がそれらの活性中心に固定されることで、フィロケイ酸塩の表面において均一な担体が得られる。上記活性化は、粘土の分散系の最終pHが5未満、好ましくは1〜3になるまで、酸を制御追加することにより行われる。粘土の懸濁液の酸性化によって、八面体カチオン(アルミニウムおよび/またはマグネシウム)の粘土ケイ酸塩構造からの浸出が起こる。粘土活性化の最適比率は、5%〜25%のマグネシウムカチオンが海泡石構造から浸出するとき、ならびに5%〜33%のマグネシウム/アルミニウムカチオンがアタパルジャイト構造から浸出するときに生じる。これらの最大活性化比率は、粘土の八面体層の外端部に位置するカチオンの完全な浸出に対応する。より高い比率の八面体カチオンが浸出すると、高度の浸出のために構造を完全に非晶質化し得る構造変化が起こる。これらの構造変化はまた、過剰な酸浸出の結果として、レオロジー特性の損失等、粘土の他の性質の変化も引き起こす。カチオンの酸活性化工程の時間および温度は、所望の浸出比率に依存する。典型的な活性化処理は、0.5時間〜2時間の間、粘土分散系の最終pHが1〜3になるまで10℃〜35℃の温度で酸を加えることによって行われる。酸は、要求される分散系のpHに到達することのできる、例えば塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸等の任意の有機酸または無機酸であり得る。
【0113】
粘土の酸活性化工程の後、酸化チタン粒子の制御追加を行う。酸化チタン粒子は固体として加えてもよいし、あるいは好ましくは予め調製した水における懸濁液の形態で加えてもよい。粘土および酸化チタンの混合物中において完全な均一性を得るために、粘土およびTiO分散系を適切に撹拌する。この均一性および分散を達成するために、例えば周速度が少なくとも10m/sに到達することが可能な機械撹拌機等の高剪断混合システムを使用することが相応しい。粘土およびTiO粒子の凝集体を適切に分散させるために特に適切なのは、コロイドミルまたはマイクロボールミル等の回転子/固定子型の分散システムである。上記プロセスのこの工程において、分散に加え、TiOナノ粒子は酸処理によって粘土の表面に発生した酸性中心に固定される。
【0114】
意図する光触媒添加剤の用途に応じて、粘土および酸化チタンの水性分散液を後の工程において濾過および乾燥プロセスに供することにより、上記粉末状生産物が得られる。
【0115】
酸化チタンは、高剪断分散のために直接上記プロセスに加えてもよく、または上記プロセスの前工程において、塩または水酸化物の形態の金属前駆体を熱処理することによって合成してもよい。酸化チタンは、その3つの相であるブルッカイト相、アナターゼ相またはルチル相のうちの1つにおいて、少なくともマイクロメーターサイズ、好ましくはマイクロメーター未満またはナノメーターのサイズでなければならない。好ましくは、TiO相は、アナターゼ、または、アナターゼと他の相(好ましくはルチル)との組み合わせである。
【0116】
これまで背景技術において記されたプロセスにおいて、TiOを海泡石上に担持させるためには、通常、光触媒活性を有するTiO相の生成、凍結乾燥による無機泡の形成または粘土構造の折り畳みの付与に必要な熱処理が要求され、これは担体として使用される粘土の性質および特性の改変を引き起こす。
【0117】
本発明において使用される上記プロセスは、予め合成されたTiOを疑似層状フィロケイ酸塩上に担持させることに基づく。したがって、担持された生成物を熱処理して光触媒活性を有するTiO相を生成させる不要はないことから、粘土はそのレオロジー特性および吸着能を維持する。海泡石およびアタパルジャイトの何れもが表面に水を吸着し、これが光触媒分解反応に介在し得ることから考えると、粘土の熱処理がないことは、環境湿度の非存在下においても添加剤に光触媒活性を有するようになるため、特に重要である。
【0118】
海泡石繊維またはアタパルジャイト繊維上にTiOナノ粒子を完全に且つ均一に分散させるためには、粘土および酸化チタンの混合は、水における粘土の濃度が2%〜30%である、粘土を水に分散させた活性粘土分散と、水におけるTiOの濃度が2%〜30%である、TiOを水に分散させたものとから行うことが好ましい。同様に、(海泡石またはアタパルジャイト)担体におけるTiO濃度は、粘土繊維の表面における所望のTiO粒子密度に応じて5重量%〜75重量%の間で変動し得、好ましくは10重量%〜50重量%である。本発明のプロセスにより、75重量%までの濃度のTiOを、凝集を生じることなく粘土上に担持させることができる。しかしながら、光触媒活性を意識した最終生成物のコスト/有効性比率の観点からは、TiO濃度は10重量%〜50重量%の範囲にあることが好ましいことに注意されたい。
【0119】
乾燥粉末状の最終生成物を得たい場合は、粘土上に担持される酸化チタン分散を乾燥前に濾過するかまたは典型的な固液分離技術によって分離することにより、粘土の表面に均一に分布した酸化チタン粒子を含む最終生成物が得られる。固液分離は、最新技術における公知の他のプロセスの中でも、遠心分離またはデカンテーション、および大気圧下または低圧下または真空下で分散水を乾燥させることによる直接蒸発によっても行うことができる。低圧条件において水を凍結および昇華させることによって、凍結乾燥プロセスも使用することができる。
【0120】
上述のプロセスによって、担体として使用される粘土の表面に均一に単分散および固定された酸化チタン粒子によって形成される複合材料を得ることができ、この複合材料におけるTiO粒子のサイズは、プロセスにおいて使用される酸化チタンのサイズに応じて5nmまで達し得る。得られる物質は、非常に高い比表面積でこれらの粘土上に担持されるTiOの効力を高め、したがって、例えば光触媒用途または乳白剤として等、TiOが用いられる用途に有利な材料であることが分かっている。
【0121】
要するに、本発明の方法は、酸処理によって疑似層状フィロケイ酸塩(特に海泡石およびアタパルジャイト)の表面に形成された活性中心上に、酸化チタン粒子を担持および固定させることに基づいている。これらの粘土の有する独特の構造ならびにルイスおよびブロンステッドの表面酸性中心を生成するプロセスを起因として、酸化チタン粒子の均一な分散系は、5nm以下のサイズに制御されて、単分散し且つ均一な形態で、TiOの重量含有率が5%〜75%、または好ましくは10%〜50%になるように、粘土の表面に固定および担持された状態で得られる。このプロセスにより、TiO粒子に生じるとともにTiO粒子がナノメーターサイズである場合に非常に悪化する凝集の問題を解決することが可能になる。
【0122】
光触媒特性に関して、担体におけるTiO粒子の均一な分散によって、TiO粒子と同じく粘土の表面に吸着されている汚染物質との間の接触が増加し、したがって接触面積が増加するため、光触媒効果の向上が可能になる。さらに、これらの粘土の構造に起因して、添加剤は、粘土の構造内に存在するかまたは物理吸着される水をOHラジカルの供給源として使用して、環境湿度の非存在下で有機物質を分解し得る。海泡石またはアタパルジャイト上に固定および担持された酸化チタン粒子の均一な分散は、さらに、これらの粘土とTiOとの複合生成物を使用して、光触媒活性を有するこれらの粒子をモルタルまたは塗料等の他の系に均一に導入し、非担持酸化チタンよりも高い活性を得ることを可能にする。
【0123】
上述のように、TiOナノ粒子の担体として用いられる上記疑似層状フィロケイ酸塩(海泡石およびアタパルジャイト)によって、上記従来の光触媒製品と比較して複数の利点が得られる。本発明の添加物の光触媒活性は、TiOナノ粒子とこれら粘度との間の相乗効果によって、現在市販されているTiO製品の光触媒活性よりも著しく大きい。このように光触媒活性がより大きいため、本発明によって得られる生成物の、様々な生成物に対して添加する必要のある割合を、同等の活性を有する従来のTiO製品の割合よりも少なくすることができる。
【0124】
要するに、TiO粒子だけを用いる場合と比較して海泡石およびアタパルジャイトに固定され且つ担持されているTiO添加物の光触媒活性の増加は、実質的に以下の5つの現象によるものである。
【0125】
i)TiO粒子を固定させるルイスおよびブレンステッド酸中心を増加させるために酸を用いて前処理した海泡石およびアタパルジャイトの表面におけるTiOナノ粒子の均質な分散。光触媒作用は表面のプロセスであり、比表面積が大きいほど、触媒の活性が大きい。TiOナノ粒子が、処理された海泡石およびアタパルジャイトの表面に固定され分散されることで、これらのナノ粒子が凝集して数百または数千のナノ粒子からなる大きな塊が形成され得ることを回避できる。これらのナノ粒子の集団は、個々になったナノ粒子よりも露出する面積が小さくなり、有効な触媒活性が損なわれることになる。
【0126】
ii)海泡石およびアタパルジャイトは、それらの物理化学的特徴ならびに高い多孔度および比表面積に起因して、高い吸着能力および高い吸収能力を有する粘土である。この特性は、光触媒分解プロセスにおいて基礎となるものである。この特性により、触媒担体(海泡石およびアタパルジャイト)は、例えば汚染物質等の化合物を誘引して保持することができるからである。当該汚染物質は後に光触媒を分解する。このようにして、分解される化合物に密接させて触媒を位置させることで、触媒作用における重要な段階である、汚染物質の触媒に対する拡散プロセスを著しく改善させる。
【0127】
iii)重要で有利な他の要因は、これらの粘土(海泡石およびアタパルジャイト)が非常に親水性であり、通常表面に吸着する含水量が標準状態で約10%となることである。この吸着する水分によって、光触媒プロセスが起こるために必要なOHおよびH化学種が得られる。したがって、環境湿度からの水分は、光触媒反応が起こるためには必要ない。
【0128】
iv)海泡石およびアタパルジャイトに固定され且つ担持されているTiOを用いることに関する重要で有利な他の要因は、これらの粘土の親水度を調節できることである。環境湿度は、光触媒分解プロセスにおいて非常に決定的な要因である。一方で、湿度によって、光触媒プロセスが起こるために必要なOHおよびHの供給源となるHOが得られるため、湿度は通常必要なものである。しかし他方で、HO分子は、分解したい化合物の分子と、触媒の活性部位に関して競合する。したがって、光触媒プロセスが正しく機能するためには、最適な湿度というものがある。これらの粘土をTiO担体として用いることで、触媒に到達するHOの量を調節し、これにより海泡石およびアタパルジャイト中に存在する水分の量を調節することができる。環境湿度の非存在下において、海泡石およびアタパルジャイトの親水性表面に吸着する水分によって、光触媒プロセスに必要な水分子が得られる。これに対して、高度に湿性の環境では、粘土の表面を改質して親水性を軽減させることで、水分子が過度に吸着して活性中心を飽和させてしまうことを回避することができる。
【0129】
v)本発明の方法によって得られる生成物の光触媒活性に関する上記要因に加えて、この生成物は、例えばレオロジー特性などの、担体として用いられる粘土の特性を元のままに維持する点を強調する必要がある。結果として、これらの粘土は、粘性を制御するためにレオロジー添加物として用いられる場合は、これらの粘土(特に海泡石)を用いて達成できるレオロジー特性の改善を行ない得る。あるいは、これらの粘土を用いることで、現場でのモルタルの場合(グナイトを施す場合等)のように、様々な用途においてチキソトロピーまたは偽塑性を得ることができる。
【0130】
したがって、自己洗浄、脱臭、殺生物剤および大気汚染の軽減という光触媒特性の改善に加えて、TiOナノ粒子の担体として用いられる海泡石およびアタパルジャイトによって、塗料、モルタル、コンクリート等に良好なレオロジー挙動をもたせることもできる。海泡石およびアタパルジャイトは、取り込まれるマトリクスにチキソトロピー挙動をもたせることで、混合物におけるブリードおよび凝離を減少させることができる。このようにして、基質に対する付着性、加工性、および表面仕上げを向上させる、より均質な凝集性混合物を生み出すことができる。
【0131】
本発明の方法によって得られる生成物は、光触媒特性を有する添加物として用いて、例えばコーティング、塗料、建築材料等の様々な組成物および材料に対して、自己洗浄、脱臭、殺生物剤、廃水汚染軽減、および大気汚染軽減という特徴をもたせることができる。これらの材料および組成物は、様々な性質のマトリクスであってもよく、例えば熱可塑性もしくは熱安定性の樹脂もしくは重合体、瀝青を含有する結合剤、セメントもしくは水硬性石灰などの水硬性結合剤、またはガラスセラミック母材もしくはセラミック母材であってもよい。上記生成物は、例えば工程用水または廃水などの液体およびガス状の溶出物の処理および精製に直接的に用いることもできる。上記生成物の直接的な使用は、流体に分散するための粉末状の生成物の形態であってもよいし、造粒または圧縮して、処理される流体を通過させる濾過カラムに用いることができるフィラーを得てもよい。上記生成物を粉末の形態で用いて溶出物を処理する場合、TiOを担持する粘土の粒子がマイクロメーターサイズであるため、遊離して担持されていないTiOナノ粒子を用いる場合と比較して、添加物を容易に回収することが可能となる。
【0132】
その上、海泡石およびアタパルジャイトに担持されたTiO化合物である本発明の方法によって得られた光触媒添加物に対して、他の成分および添加物を添加することが可能である。例えば、建築材料に用いられる、自己洗浄特性を有する漂白促進剤である。また、モルタル漂白促進生成物が、降雨量の多い地域で特に用いられる。そのような地域では、外部環境に曝されるモルタルは、湿度の影響で白色の色合いが落ちてしまう可能性がある。粉末状の炭酸カルシウムおよびマイクロメーターサイズのアナターゼ相のTiOの両方が、うまく利用されてきた。これらの添加物は、混合物の費用をほとんど増加させずに白色度を増強する。その上、マイクロメーターサイズのアナターゼ相のTiOは(ナノ粒子にははるかに及ばないが)光触媒特性を有しているので、自己洗浄効果がわずかに増強される。用途によっては、混合物の加工性を調節するために、高流動化剤の添加も必要であり得る。
【0133】
建設業では、本発明の目的とする添加物に求められる主な機能性は、自己洗浄、環境汚染の軽減、脱臭、および殺生物活性である。
【0134】
自己洗浄は、最終的な審美的効果が決定的に重要な薄色の建築材では特に望まれる。これは、町議会、講堂、教会、スポーツセンター、文化センターなどの街の中核的な建造物の場合である。これらの場合、添加物の組み込みは、特にコンクリート、塗料、またはゾル−ゲルコーティングからなる組み立て式のファサードパネルで行なうべきである。
【0135】
汚染度を減少させることが優先事項である、汚染された大規模な人口集中地域では、汚染を軽減する建築材料が決定的に重要である。この目的のために本特許の目的とする添加物を組み込むことができる建築材は多数存在する。添加物は、例えばファサードパネル、敷石、または街路備品などのコンクリート製の組み立て物、開放気孔性を有する、瀝青を含有する路面に塗布されたセメント層、コンクリート床などに組み込むことができる。
【0136】
その上、本発明の光触媒添加物は殺生物剤としての効果も有しており、病院・保健所、大型スーパーマーケット、ショッピングセンター、水泳プール・スポーツセンター、食品・農業・牧畜産業などの、上記効果を有する上記種類の材料が注目され、付加価値を伴う施設に用いてもよい。この添加物は、紫外線に曝されて光触媒効果を確実にしてあれば、例えばコンクリート床、単層モルタル、ファサードパネルなどの上記施設の全ての建築材に添加することができる。
【0137】
セメント基盤、石灰基盤、または石膏基盤での上述の用途の全てにおいて、光触媒添加物は、結合剤(セメント、石灰、または石膏)に対して、0.05重量%〜5重量%のTiOナノ粒子が存在するように添加する。好ましくは、光触媒添加物は、結合剤に対して0.5重量%〜2重量%の割合でTiOナノ粒子を添加する。なお、担体(海泡石またはアタパルジャイト)中の酸化チタン濃度は、5重量%〜75重量%、好ましくは10重量%〜50重量%の濃度に調節する。したがって、例えば海泡石に担持されたTiOを50%用いて調製した添加物の場合は、上記混合物に(結合剤に対して重量基準で)添加物を1%から4%添加することが好ましい。
【0138】
ゾル−ゲルコーティングでの用途では、総組成物に対して0.1重量%〜15重量%の割合で、好ましくは1%〜6%の割合で、添加物を添加する。塗料の場合は、総質量に対して0.1%〜10%の割合で、好ましくは0.5%〜4%の割合で添加する。
【0139】
本発明の目的とする添加物は、粉末として添加するか、工程に合った任意の比率で、本発明の目的とする添加物を用いることが望ましい用途の溶媒(水、アルコールなど)に予め分散させる。
【0140】
明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」という語およびその各種変化形は、他の技術的な特徴、添加物、成分、または工程を除外することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の他の目的、利点、および特徴は、部分的に本明細書から、部分的に本発明の実施から推測されるであろう。以下の図面および実施例は、例として記載されており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0141】
〔図面の簡単な説明〕
図1. ナノメーターサイズの酸化チタン粒子が、当該粒子の高い表面エネルギーによって凝集した様子の透過型電子顕微鏡像である。
【0142】
図2. TiO/海泡石の重量比を35/65とした、本発明に記載された方法を経た後の、海泡石に均質に固定され且つ担持された酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡像である。
【0143】
図3. TiO/海泡石の重量比を50/50とした、約21nmの酸化チタンナノ粒子が担持され均質に分布した海泡石繊維の透過型電子顕微鏡像である。
【0144】
図4. EDXプローブを用いてチタンを分布させた(マッピング)、担持されていないTiOナノ粒子が添加されたモルタルを示す電子走査顕微鏡像である。TiOナノ粒子の分散は、大きく且つ密な凝集体の存在とともにモルタル中で観察することができる。左:倍率1500、右:倍率6000。
【0145】
図5. 50重量%のTiOナノ粒子が海泡石に固定し担持された状態で、本発明に記載された方法を経た後、生成物が添加されたモルタルを示す電子走査顕微鏡像である。EDXプローブを用いてチタンを分布させた(マッピング)様子を示す。凝集体がほとんどなく、それほど密でない状態で、モルタル中でTiOナノ粒子/海泡石が50/50の比率で正しく分散している様子を観察することが可能である。
【0146】
図6. 開発した材料の自己洗浄性を評価する実験装置を示す。評価方法は、白色セメントを用いたモルタルからなる実際のファサードのシミュレーションから構成される。
【0147】
図7. 水/セメントの割合の高いコンクリートの混合物を示し、そのエイブラムスコーンは22cmの値を有し、凝離した外観を示している。
【0148】
図8. 1.5%のTiO/海泡石を50/50の比率で混合物に含ませた後の、図7のコンクリートの混合物を示す;8cmのエイブラムスコーンが凝離していない状態で観察される。
【0149】
〔実施例〕
(実施例1:海泡石でのTiOナノ粒子の分散)
本実施例では、平均サイズが21nmの、アナターゼ相の市販の酸化チタンナノ粒子を用いた。図1に、大きな凝集体の存在を示す、本実施例で用いられた市販のTiOナノ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。
【0150】
まず、99.9%が44μm未満で95%が5μm未満である粒径を有し粒径、固体濃度が6%(プレゲル1000gに対して乾燥基材としての海泡石60g)の、微粒子化した海泡石の水性分散液を、コールズ型高剪断力撹拌機を用いて周速度18m/sで10分間混合して調製する。粘土の水性分散液の最初のpHは8.9であり、硫酸50%を添加することで酸性化させてpHを3とする。酸を添加した後、分散液をさらに10分間撹拌する。他方で、重量濃度を6%として市販の酸化チタンナノ粒子の水性分散液を、コールズ混合物とともに周速度18m/sで10分間撹拌して調製する。TiO分散液を酸性化した海泡石プレゲルに添加して、海泡石中でのTiOの最終的な濃度を35重量%とする。分散液を、高剪断力撹拌機を用いて周速度18m/sで10分間混合して、酸化チタンを海泡石の繊維に確実に固定させ、均質に分散させる。分散液を濾過して、TiOを付加した海泡石を100℃で乾燥させて、最終的な湿度を10%とする。
【0151】
この結果、添付の透過型電子顕微鏡像(図2)で観察されるように、単分散したナノ粒子が、海泡石繊維全体にわたって担持された状態で得られる。
【0152】
(実施例2:海泡石に担持されたTiO製品の光触媒効果)
特許EP0170299号に開示された方法によって得られる、商品名PANGELのレオロジー等級の海泡石を6%含有する水性分散液を、1,000rpmで回転する機械式ブレード撹拌機を10分間使用して調製する。その後、硫酸50%を添加することで酸性化させてpHを3とする。このように分散液を調整した後、さらに10分間撹拌して海泡石の表面を活性化させる。実施例1に示したように予め調製した市販のTiOナノ粒子を6%含有する水性分散液を分散液に添加して、TiO/海泡石の最終的な割合を50/50とする。得られた懸濁液を、直径1.6〜2.4mmのジルコンボールを備えたGrindomix型ボールミルで勢いよく10分間混合することで、海泡石のクラスターを完全に除細動して、海泡石の露出した表面の酸中心に固定したTiOナノ粒子を全体的に分散させるのに十分な剪断力を得る。次に、生成物を濾過し、105℃で乾燥させて、最終的な湿度を10%とした。
【0153】
透過型電子顕微鏡像(図3)で観察されるように、高剪断力で混合するとともに海泡石の酸活性化の過程を経ることで、酸化チタン濃度が海泡石に対して50重量%であっても、海泡石繊維全体にわたって均質に分布するナノ粒子を得ることが可能になる。
【0154】
海泡石に担持されたTiO粒子を均質に分散させることで得られる光触媒活性に対する効果を測定するために、2つの平板を同じ条件で圧縮して、表面粗さ、厚さ、およびTiO濃度を同じにした。上記平板の一方は、アナターゼ相の市販の酸化チタンであり、他方は本実施例に示されるようにして得られた、海泡石に担持された同じ酸化物であった。上記平板のどちらも、KBrを用いて粉末を圧縮した。得られた上記平板を、着色剤として用いられるローダミンB溶液に均質に含浸させ、UVA−340光ランプを用いて紫外線に異なる時間(0分間、30分間、1時間、3時間、および6時間)露出する。海泡石に単分散したTiOナノ粒子の接触面が増加した結果、着色剤がより速く分解されるのが観察された。
【0155】
(実施例3:TiOを付加した海泡石生成物のモルタル母材中での分散)
本実施例では、実施例2に従って得られた、50%TiOナノ粒子を付加した海泡石生成物(海泡石/TiO:50/50)のモルタル中での分散を、担持されていないTiOナノ粒子の分散と比較する。
【0156】
上記光触媒添加物、すなわち市販の担持されていないTiOナノ粒子と海泡石/TiO:50/50添加物との両方をモルタルに添加する方法は、まず光触媒添加物を機械撹拌機によって水に分散させる工程を含んでいた。この工程では、回転子−固定子モジュールを備え、4,000rpmで回転する軸を備えるフットシェーカーを15分間用いた。光触媒添加物が水に分散されると、セメントを含んだ混合物と砂とを従来のモルタル撹拌機で混合する。
【0157】
上記異なる光触媒添加物のモルタル中での分散を、電子走査顕微鏡のEDXによってチタンの分布を調べること(マッピング)で分析した。図4および図5に、分析の結果を示す。市販の担持されていないTiOナノ粒子の場合は、大きく密なナノ粒子の凝集体が形成されるのが見られる。これに対して、海泡石/TiO:50/50生成物の場合は、分散はより均質であり、凝集体はいくつか存在するが、上記凝集体と比較して密度ははるかに低い。
【0158】
より良く分散されると、光触媒効力がより大きくなる結果となる。これは、以下の実施例で立証できる。
【0159】
(実施例4:白色セメントを用いた実際のモルタルファサードのシミュレーション。モルタルの自己洗浄特性における光触媒添加物の影響。定性的調査)
実際のファサードで模擬実験をして、通常の大気条件で自己洗浄効果を視覚的に評価する定性的な方法が開発された。この方法は、規格ASTM G7−97に基づくものである。
【0160】
上記方法は以下から構成される。すなわち、適切と考えられる用量のモルタル標本(光触媒添加物を含む標本および光触媒添加物を含まない標本)を調製する。標本を調製後、表面の一部を模擬実験用の汚物である有機汚染物質(ローダミン)に含浸し、他の部分を含浸せずに残す。上記方法の目的は、上記有機汚染物質がどのように分解されるかを調べて、含浸しなかった部分が環境的な汚物によって時間とともにどのように汚れるかを視覚的に分析することである。このように調製した標本を水平に対して45°の角度で屋根の上に置く。一定時間経過後、自己洗浄性を視覚的に分析する(図6)。
【0161】
分析した標本の寸法は10×40×2cmである。BL A−L 42.5白色セメントと、実施例2に記載されているように調製した、TiOナノ粒子を付加した異なる海泡石生成物とを、異なる割合で添加して標本を調製した。さらに、他の種類の添加物を添加した:1)上記真新しいモルタルの加工性を向上させる高流動化剤と、2)上記標本の白色度を増強する増白剤、である。マイクロメーターサイズのチタンを増白剤として選択した;しかしながら、TiOではあったが、そのサイズに起因して光触媒効果は最小である。比較のために、特許WO2005035124号に記載された方法に従ってナノ粒子を粘土繊維中で合成した海泡石を用いた。調製した量を以下の表に列挙する。
【0162】
【表1】
上記方法は定性的であり、その場であるいはカラー写真によってのみ正しく判断し得るため、定性的な尺度を確定することが必要である。当該尺度は、以下のとおりである。
1−強いピンクの着色。
2−中程度のピンク色調。
3−軽いピンク色調。
4−ほんのわずかなピンク着色が観察される。
5−着色は全く観察されない。
【0163】
以下の表に、上記確定した尺度に従って得られた漂白/自己洗浄性の結果を示す。
【0164】
【表2】
上記結果を分析すると、以下の結論が得られる。
・全ての場合において、海泡石系の光触媒添加物は、光触媒添加物を含んでいない試料と比較して、自己洗浄が速い。
・光触媒添加物の割合が大きいほど、自己洗浄が速い。
・TiOを33%含んでいる海泡石から構成される添加物では、TiOを50%含んでいる海泡石よりも、自己洗浄が速い。
・特許WO2005035124号に従って海泡石上で直接的合成されるTiOナノ粒子を33%含んでいる海泡石から構成される生成物は、同じTiOナノ粒子含有量で且つ本発明に記載された方法に従って得られる光触媒添加物Gを用いて得られる生成物と比較して、自己洗浄活性が顕著に大きい。これらの結果によって、上記特許で提案される添加物の作用機序が確認される。海泡石中で合成されたTiOナノ粒子を含有する試料は、レオロジー特性を有しておらず、有機汚染物質の分解反応を増強する作用をする粘土構造に吸収された水分も含んでいないからである。これは、TiOナノ粒子が、特許出願WO2005035124号に開示されているように高温(700℃)で粘土を熱的処理して得られるからである。その上、表面でTiOが合成された海泡石は、増白剤を添加しても、モルタルを顕著に黄色化する。
・同じTiO含有量で、市販の担持されていないTiOナノ粒子を有する生成物Jでは、本発明で開示されている方法を経て海泡石に固定され担持されたTiOを有する生成物GおよびHを用いて得られる生成物と比較して、自己洗浄活性が顕著に低い。これは、担持されていないTiOナノ粒子の場合の方が、モルタル中での分散がはるかに不均質であるという事実に起因する。
・マイクロメーターサイズのTiOを添加することによって、試料中で観察される漂白効果が得られる。しかしながら、海泡石に担持されたナノメーターサイズのTiOの場合は、増白剤として用いられるマイクロメーターサイズのTiOを添加しても、自己洗浄効果が著しく改善されることはない。実際、試料が海泡石を含んでいない場合は、マイクロメーターサイズのTiOの効果は自己洗浄活性についてのみ観察される。
・セメントに海泡石系の光触媒添加物を添加することに起因して、光触媒特性に干渉しない配合で高流動化剤を用いることが必要である。
【0165】
(実施例5:紫外光を用いた促進調査。モルタルの自己洗浄特性における光触媒添加物の影響。分析ソフトウェアを用いた半定量調査)
光触媒材料の自己洗浄活性を、以下に詳細を示す試験によって定量化した。この試験は、有機着色剤溶液(具体的にはメチレンブルー)の最初の調製に基づいている。調べる表面にメチレンブルーを塗布する。次に、調製した試料に紫外光を照射(500W紫外光電球)し、上記表面が最初に得た青色の表面を喪失し最初の外観を回復する様子を調べる。写真を種々の時点で撮影し、これらの写真から、発生する光触媒現象に関連する表面の自己洗浄能を算出する。試験する材料を種々の時点で撮影した画像を分析するソフトウェアによって定量化を行い、これにより紫外光に露出した後の漂白の割合を算出する。上記ソフトウェアは、メチレンブルーによって染色されることなく基準モルタルが同じ色合いに到達した場合、100%漂白と定量化し、メチレンブルーによって直近で染色された基準標本を0%と定量化する。
【0166】
この方法によって試験された試料は以下のとおりである。
【0167】
【表3】
海泡石系の光触媒添加物を含んでいる材料および添加物を含んでいない従来のモルタルから得られた結果を、下記に詳しく示す。
・材料1「添加物を含んでいない従来のモルタル」では、240分間の照射の後、8%漂白される。
・材料2「海泡石系の自己洗浄性添加物を含んでいるモルタル」では、240分間後、21%漂白される。
【0168】
添加物を含んでいない試料において検出された8%の漂白は、UV照射からのメチレンブルーによって経た分解に起因し、この効果は光触媒活性とは無関係である。したがって、並行して実施した両試験の間の差異は、海泡石系の添加物を用いて発生させた材料の自己洗浄性の光触媒能に起因するものであり、この光触媒能の値は試験条件では13%である。
【0169】
(実施例6:NOx汚染軽減試験。定量的)
本実施例で用いた方法は基本的に、既知の量のNOxを含んでいる空気流を、光触媒添加物を含んでいるモルタル標本を収容している気密性チャンバ内を通過させることから構成される。上記方法では、紫外線を照射する場合としない場合とにおけるNOxの濃度の発展を分析して、チャンバ中に導入された標本の光触媒効力を測定する。
【0170】
加熱した酸化窒素分析器を用いて、基準方法CLD−700−AL−NO/NOx、商標ECO PHYSICSによって酸化窒素の濃度を測定した。上記方法は、化学発光測定の原理を利用するものであった。試験を異なる4つの空気の相対湿度で実施して、標本の挙動を調べる。これは、空気の相対湿度が、標本の性質によって様々に上記方法に影響する要因だからである。さらに、標本を蒸留水で洗浄し、浸出液における硝酸塩および亜硝酸塩の濃度を分析した。分析に用いた方法は、ケミカルサプレッションとともにイオンクロマトグラフィを利用する規格UNE−EN−ISO 10304−1に記載されている。
【0171】
以下の式を用いて、NOx除去性能およびNOのNOへの酸化を算出した。
【0172】
【数1】
上記式中の添え字「in」と「out」とはそれぞれ、投入される(in)流れと排出される(out)流れとにおける濃度を表す。
【0173】
試験したモルタルを以下の表に記載する。
【0174】
【表4】
本発明に開示されている方法によって得られる、TiOを50%含んでいる光触媒添加物である海泡石/TiOの活性を、市販の光触媒モルタルであるTX Ariaと比較した。
【0175】
上記試験で得られた、異なる相対湿度におけるNOx汚染軽減結果を以下の表に示す。
【0176】
【表5】
得られた結果から、以下のように立証できる。
・本発明に従って得られた、海泡石系の光触媒添加物を用いて調製したモルタルと市販のモルタル(TX Aria)との両方が、白色モルタルよりも、NOx汚染軽減能がはるかに大きい。
・モルタルに1.5%の割合で海泡石/TiO:50/50が添加された試料は、より大きい割合のTiOを含有するTX Ariaセメントを用いて調製した試料と同様の活性を有する。
・白色モルタルでは、酸化したNOxの割合が除去されたNOxよりもはるかに大きい。海泡石系の添加物およびTX Ariaに含まれる他の2つの試料では、除去されたNOxの量が酸化したNOxよりもはるかに大きい。
・NOx除去の光触媒活性は、試験を実施する湿度が増加するに従って減少する。
【0177】
(実施例7:酸活性化せずに海泡石上に担持されたTiO生成物)
TiOが担持された海泡石生成物の光触媒活性に対する疑似層状フィロケイ酸塩の酸活性化の効果を測定するために、実施例2に記載された生成物と同様に生成物を調製したが、海泡石の酸活性化段階は省略した。
【0178】
特許EP0170299号に開示された方法によって得られる、商品名PANGELのレオロジー等級の海泡石を6%含有する水性分散液を、1,200rpmで回転する機械式ブレード撹拌機を10分間使用して調製した。酸性化段階を省略し、実施例1に示すようにして予め調製した市販のTiOナノ粒子を6%含有する水性分散液を上記分散液に添加して、TiO/海泡石の最終的な割合を50/50とした。得られた懸濁液を、直径1.6〜2.4mmのジルコンボールを備えたGrindomix型ボールミルで勢いよく10分間混合することで、海泡石のクラスターを完全に除細動して、海泡石の露出した表面の酸中心に固定したTiOナノ粒子を全体的に分散させるのに十分な剪断力を得た。次に、上記生成物を濾過し、105℃で乾燥させて、最終的な湿度を10%とした。
【0179】
上記の同じ方法を経て他の生成物をさらに調製したが、海泡石/TiOの割合を67/33(TiOが33重量%)とした。
【0180】
これらの生成物を実施例8で光触媒添加物として用いた。
【0181】
(実施例8:トルエン汚染軽減の定量的試験)
この分析に用いた方法は、調製したモルタルに対して紫外線を照射して(5mW/cm)、濃度既知のトルエンを含んでいる空気流にモルタルを晒す工程から基本的に構成される。異なる時間(0時間、2.5時間、5時間、および21時間)で空気流の試料を採取し、トルエン濃度をクロマトグラフィで分析して、トルエンの連続的な除去を測定した。トルエン濃度を測定するために用いた機器は、質量検出器を備えたガスクロマトグラフ(GC−MS)である。
【0182】
上記試験を実施するために用いた実験装置は基本的に、紫外線を導入するためのパイレックス(登録商標)ガラス窓を備えた容量が6リットルのチャンバから構成される。このチャンバに、加圧した空気およびトルエンを装填する。上記実験装置は、全体的な再循環ために管およびポンプを有する。再循環の能力は30L/分である。
【0183】
トルエン除去性能を算出するために、以下の式を用いた。
【0184】
【数2】
上記式中の添え字「0」と「t」とはそれぞれ、時間0と時間tとにおける空気流のトルエン濃度を表す。
【0185】
試験したモルタルを、以下の表に記載する。
【0186】
【表6】
試験から21時間後に得られるトルエン汚染軽減の結果を以下の表に示す。
【0187】
【表7】
得られた結果から、以下のように結論付けることができる。
・光触媒添加物を含有する試料は全て、添加物を含んでいないモルタルと比較してトルエン汚染軽減能がはるかに大きい。
・海泡石に担持されたTiO系の添加物を含有するモルタルの試料は、同じTiO含有量でモルタル母材中に直接的に分散するナノメーターサイズのTiOを含んでいる市販のモルタルと比較して、活性が高い。
・海泡石系の添加物を含んでいるモルタルの試料は、トルエン汚染軽減能がTX Ariaセメントを用いて作られたモルタルと同様であるが、活性/TiOの割合は、海泡石系の添加物の場合の方がより高く、海泡石に担持されたTiOの方がより大きい効力を示す。
・担持されたTiOを33%有する海泡石生成物は、(同じTiO含有量で)担持されたTiOを50%有する海泡石生成物と比較して、活性がわずかに低い。
・酸活性化処理によって得られた、表面に酸中心およびシラノール基をより多く生じさせるために処理した海泡石系の生成物は、酸によって活性化していない海泡石系の生成物と比較して、活性が著しく大きい。
【0188】
(実施例9:ゾル−ゲルコーティング)
光化学触媒作用は表面の現象であるので、コーティングを介してモルタルまたは他の材料の表面に海泡石に担持されたTiOナノ粒子を取り込む可能性もある。
【0189】
本実施例で用いたコーティングは反応前駆物質としてシリコンアルコキシドを用いるゾル−ゲル技術に基づくものである。これらの前駆物質は、アルコールに溶解すると、水中で加水分解してそれぞれのシランを形成し、後に縮合反応を起こす。
【0190】
よって、異なる割合の海泡石系の光触媒添加物のコーティングを、白色セメント(海泡石/TiO)を含んでいる従来のモルタルに塗布し、有機汚染物質(ローダミン)を用いて汚してからそれぞれの自己洗浄性を評価した。この染色は、制御された方法で標本の表面に堆積する汚物をシミュレートするものである。自己洗浄の光触媒活性を本特許の実施例4に記載された方法に従って、規格ASTM G7−97に基づいて測定した。日射に対して露出することで時間経過とともに染色が消失して、上記材料は最初の外観を回復した。
【0191】
上記試験から得られた結果は、以下の表に含まれている。
【0192】
ゾル−ゲルコーティングを有する白色モルタルの様々な試料の自己洗浄性の結果。
【0193】
【表8】
上記結果から、以下のように結論付けることができる。
・TiOが担持された海泡石系の光触媒添加物を含有するゾル−ゲル溶液によって被覆されたモルタルの全てにおいて、光触媒添加物を含んでいないゾル−ゲルによって被覆されたモルタルと比較して、自己洗浄性が高い。
・ゾル−ゲル溶液における、TiOを有する海泡石の量が多いほど、ゾル−ゲルコーティングで被覆されたモルタル中の有機着色剤の分解が早く発生する。
【0194】
(実施例10:コンクリートのレオロジー改変)
上述したように、本発明の光触媒添加物は、汚染軽減特性および自己洗浄特性を有するだけでなく、コンクリートの粘性を調製する特質を有する。
【0195】
本実施例では、担持されたTiOを有する海泡石系の光触媒添加物のレオロジー効果を示す。
【0196】
2つのコンクリートを調製し、一方には光触媒添加物を加え、他方には添加物を加えなかった。コンクリートの凝離を回避するために、レオロジー添加物としての光触媒添加物の効力を評価できるように、凝集体が凝離するように用量を設計した。上記2つの調製された配合物を以下の表に示す。
【0197】
【表9】
図7および図8に、コンクリートのレオロジー中に上記添加物を添加した結果を示す。上記図においてはっきりと観察できるように、海泡石系の添加物が添加されない場合、凝離が発生し、得られるエイブラムスコーンは22cmである。上記添加物(海泡石/TiO)を用いる場合は、コンクリートの外観が非常に良く、また凝離もなく8cmのコーンが得られることが立証できる。このようなコーンであれば、処理しやすく使用可能である。
【0198】
本発明の目的とする上記添加物は、光触媒特性を与えるだけではなく、コンクリート用のレオロジー改変剤としても作用すると結論付けられる。
【0199】
さらに、以下の表に見られるように、コンクリートの機械的特性は、担持されたTiOを有する海泡石系の光触媒添加物の添加によって害されることはない。
【0200】
【表10】
本実施例は、担持されたTiOを有する海泡石系の添加物の、光触媒添加物としての、およびコンクリート中のレオロジー改変剤としての、2つの有用性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0201】
図1】ナノメーターサイズの酸化チタン粒子が、当該粒子の高い表面エネルギーによって凝集した様子の透過型電子顕微鏡像である。
図2】TiO/海泡石の重量比を35/65とした、本発明に記載された方法を経た後の、海泡石に均質に固定され且つ担持された酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡像である。
図3】TiO/海泡石の重量比を50/50とした、約21nmの酸化チタンナノ粒子が担持され均質に分布した海泡石繊維の透過型電子顕微鏡像である。
図4】EDXプローブを用いてチタンを分布させた(マッピング)、担持されていないTiOナノ粒子が添加されたモルタルを示す電子走査顕微鏡像である。TiOナノ粒子の分散は、大きく且つ密な凝集体の存在とともにモルタル中で観察することができる。左:倍率1500、右:倍率6000。
図5】50重量%のTiOナノ粒子が海泡石に固定し担持された状態で、本発明に記載された方法を経た後、生成物が添加されたモルタルを示す電子走査顕微鏡像である。EDXプローブを用いてチタンを分布させた(マッピング)様子を示す。凝集体がほとんどなく、それほど密でない状態で、モルタル中でTiOナノ粒子/海泡石が50/50の比率で正しく分散している様子を観察することが可能である。
図6】開発した材料の自己洗浄性を評価する実験装置を示す。評価方法は、白色セメントを用いたモルタルからなる実際のファサードのシミュレーションから構成される。
図7】水/セメントの割合の高いコンクリートの混合物を示し、そのエイブラムスコーンは22cmの値を有し、凝離した外観を示している。
図8】1.5%のTiO/海泡石を50/50の比率で混合物に含ませた後の、図7のコンクリートの混合物を示す;8cmのエイブラムスコーンが凝離していない状態で観察される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8