(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画分(B)及び(C)は、エチレンと3〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルファ−オレフィンコモノマー単位とのコポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
前記ベースレジンは、多段階プロセスのいろいろな段階で製造され、前記ベースレジンは、少なくとも1つのスラリー相反応器及び少なくとも1つの気相反応器で重合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ポリエチレン組成物の以下の特性は、本発明の両方の態様に当てはまる。
【0020】
普通、少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリエチレン組成物は、「多峰性」と呼ばれ、これらのポリエチレン画分は、異なる重合条件で製造され、その結果、画分における(重量平均)分子量が異なり、及び/又はコモノマー含有量が異なる。接頭部の「多」は、組成物を構成する異なるポリマー画分の数と関係する。したがって、例えば、2つの画分だけからなる組成物は、「二峰性」と呼ばれる。
【0021】
そのため、「異なる」という用語は、ポリエチレン画分が、少なくとも1つの特性、好ましくは、重量平均分子量またはコモノマー含有量あるいはその両方が互いに異なることを意味する。
【0022】
そのような多峰性ポリエチレンの分子量分布曲線の形状、すなわち、分子量の関数としてのポリマー質量分率のグラフの外観は、2つ以上の極大点を示すか、または少なくとも個別の画分の曲線と比較してあきらかに広がることになる。
【0023】
好ましくは、本発明の方法で製造された最終ポリエチレン組成物は、多峰性ポリエチレン組成物である。
【0024】
ポリエチレン組成物のベースレジンは、エチレンホモポリマーまたはコポリマーの2つより多い画分を含むことが好ましく、エチレンホモポリマーまたはコポリマーの3つ以上の画分(A)、(B)、(C)を含むことがさらに好ましい。
【0025】
「ベースレジン」という用語は、本発明によるポリエチレン組成物中のポリマー成分全体を意味し、普通は、全組成物の少なくとも90質量%を占める。好ましくは、ベースレジンは、画分(A)、(B)、(C)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を、全ベースレジンの20質量%まで、より好ましくは10質量%まで、もっとも好ましくは5質量%までの量だけさらに含む。
【0026】
ベースレジンに加えて、ポリオレフィンと一緒に使用する、顔料(例えば、カーボンブラック)、安定剤(例えば、酸化防止剤)、制酸剤及び/又は紫外線防止剤、帯電防止剤及び(加工助剤のような)使用剤(utilization agents)のような普通の添加剤が、ポリエチレン組成物中に存在してもよい。好ましくは、こうした添加剤の量は、組成物の10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、もっとも好ましくは5質量%以下である。
【0027】
好ましくは、ポリエチレン組成物は、カーボンブラックを、全組成物の8質量%以下の量、より好ましくは1〜4質量%の量だけ含む。
【0028】
さらに好ましくは、カーボンブラックとは別の添加剤の量は、1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0029】
画分(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも2つがエチレンコポリマーであることが好ましい。
【0030】
これに関連して、エチレンコポリマーは、少なくとも50質量%のエチレンモノマー単位を含むポリマーを表す。
【0031】
好ましくは、画分(A)、(B)、(C)は、そのコモノマー含有量が異なる。
【0032】
画分(A)は、エチレンホモポリマーであるか、または3つの画分(A)、(B)、(C)のうちでコモノマー含有量が最も少ないエチレンコポリマーであってもよい。画分(A)は、エチレンホモポリマーであることが好ましい。
【0033】
そのため、エチレンホモポリマーは、基本的にエチレンモノマー単位からなるポリマーを表す。大規模重合の要件のゆえに、エチレンホモポリマーは、少量のコモノマー単位を含むことがあり得る。その量は普通、エチレンホモポリマーの0.1mol%未満、好ましくは0.05mol%未満、もっとも好ましくは0.01mol%未満である。
【0034】
画分(A)は、さらに好ましくは、少なくとも100g/10分、より好ましくは少なくとも250g/10分、さらにより好ましくは少なくとも500g/10分、もっとも好ましくは少なくとも550g/10分のメルトフローレートMFR
2を有する。
【0035】
画分(A)のメルトフローレートMFR
2の上限は、好ましくは、1100g/10分、より好ましくは1000g/10分、さらにより好ましくは900g/10分、もっとも好ましくは800g/10分である。
【0036】
画分(A)は、好ましくは970kg/m
3以上の密度を有する。
【0037】
画分(A)は、好ましくは、多段階プロセスにおいて最初の画分として重合されるので、MFR
2及び密度を直接測定することが可能である。
【0038】
画分(A)は、好ましくは、ポリエチレン組成物中に少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、もっとも好ましくは少なくとも48質量%の量だけ存在する。
【0039】
画分(A)は、好ましくは、ポリエチレン組成物中に65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、もっとも好ましくは55質量%以下の量だけ存在する。
【0040】
画分(B)及び(C)は、エチレンと少なくとも1つのアルファ−オレフィンコモノマーとのコポリマーであることが好ましい。アルファ−オレフィンコモノマーは好ましくは、3〜12個、さらに好ましくは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンコモノマーから選択される。適したアルファ−オレフィンコモノマー種は、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。その場合、1−ヘキセンがもっとも好ましい。
【0041】
好ましくは、画分(C)は、画分(B)のようにコモノマー含有量が多い。
【0042】
画分(B)は、好ましくは0.1mol%を超え、より好ましくは、0.5mol%を超えるような0.3mol%を超えるコモノマー含有量を有する。
【0043】
画分(B)は、好ましくは3.0mol%未満、より好ましくは2.5mol%未満、もっとも好ましくは2.0mol%未満のコモノマー含有量を有する。
【0044】
画分(C)は、好ましくは1.5mol%を超え、より好ましくは、1.9mol%を超えるような1.7mol%を超えるコモノマー含有量を有する。
【0045】
画分(C)は、好ましくは10.0mol%未満、より好ましくは7.5mol%未満、もっとも好ましくは5.0mol%未満のコモノマー含有量を有する。
【0046】
1つの実施形態では、画分(A)は、エチレンと少なくとも1種のアルファ−オレフィンコモノマーとのコポリマーを表す。アルファ−オレフィンコモノマーは、好ましくは、3〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンコモノマーから選択される。好適なアルファ−オレフィンコモノマー種は、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。その場合、1−ヘキセンが最も好ましい。
【0047】
この実施形態では、画分(A)は、好ましくはコモノマー含有量が最も少ない。画分(A)のコモノマー含有量は、この場合、好ましくは1.0mol%未満、より好ましくは、0.2mol%未満のような0.5mol%未満である。
【0048】
画分(B)は、好ましくは、ベースレジン中に少なくとも20質量%、より好ましくは、少なくとも30質量%のような少なくとも25質量%の量だけ存在する。
【0049】
画分(B)は、好ましくは、ベースレジン中に45質量%以下、より好ましくは42質量%以下、もっとも好ましくは40質量%以下の量だけ存在する。
【0050】
画分(B)は、好ましくは、ベースレジン中に少なくとも20質量%、より好ましくは、少なくとも30質量%のような少なくとも25質量%の量だけ存在する。
【0051】
画分(C)は、好ましくは、ベースレジン中に少なくとも4質量%、より好ましくは、少なくとも8質量%のような少なくとも6質量%の量だけ存在する。
【0052】
画分(C)は、好ましくは、ベースレジン中に20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、もっとも好ましくは12質量%以下の量だけ存在する。
【0053】
好ましくは、画分(A):画分(B)及び(C)の質量比が40:60〜65:35であり、さらに好ましくは、45:55〜60:40である。
【0054】
好ましくは、画分(B):画分(C)の質量比が55:45〜95:5であり、さらに好ましくは、65:35〜85:15である。
【0055】
ベースレジンは、好ましくは950kg/m
3以上、より好ましくは952kg/m
3以上、もっとも好ましくは954kg/m
3以上の密度を有する。
【0056】
ベースレジンの密度の上限は、好ましくは965kg/m
3、より好ましくは960kg/m
3である。
【0057】
ポリエチレン組成物は、1.0g/10分未満、より好ましくは0.6g/10分未満、もっとも好ましくは0.4g/10分未満のメルトフローレートMFR
5を有することがさらに好ましい。
【0058】
好ましくは、ポリエチレン組成物は、0.05g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、もっとも好ましくは0.2g/10分以上のメルトフローレートMFR
5を有する。
【0059】
好ましくは、ポリエチレン組成物は、5.0g/10分以上、より好ましくは7.0g/10分以上、もっとも好ましくは8.5g/10分以上のメルトフローレートMFR
21を有する。
【0060】
ポリエチレン組成物は、25.0g/10分未満、より好ましくは20.0g/10分未満、もっとも好ましくは15.0g/10分未満のメルトフローレートMFR
21を有することがさらに好ましい。
【0061】
さらに、ポリエチレン組成物は、好ましくはが20以上、より好ましくは25以上、もっとも好ましくは30以上のフローレート比FRR
21/5を有する。
【0062】
フローレート比FRR
21/5は、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、もっとも好ましくは38以下である。
【0063】
本発明によるポリエチレン組成物は分子量分布が広く、それはずり流動化指数SHI
(2.7/210)が大きいことから知ることができる。
【0064】
ポリエチレン組成物は、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、もっとも好ましくは75以上のずり流動化指数SHI
(2.7/210)を有する。
【0065】
ポリエチレン組成物は、好ましくは100以下、より好ましくは95以下、もっとも好ましくは90以下のずり流動化指数SHI
(2.7/210)を有する。
【0066】
好ましくは、ポリエチレン組成物は、2.7kPaの複素弾性率における粘性率eta
2.7kPaが、200kPas以上、より好ましくは250kPas以上、もっとも好ましくは300kPas以上である。
【0067】
ポリエチレン組成物の粘性率eta
2.7kPaは、好ましくは500kPas以下、より好ましくは450kPas以下、もっとも好ましくは400kPas以下である。
【0068】
ポリエチレン組成物は、粘性率eta
747Paが470kPas以上、より好ましくは500以上であるのがさらに好ましい。
【0069】
ポリエチレン組成物の粘性率eta
747Paは、好ましくは900kPas以下、より好ましくは800kPas以下、もっとも好ましくは700kPas以下である。
【0070】
本発明によるポリエチレン組成物は、白点評価試験において均質性が改善された。
【0071】
好ましくは、ISO 18553:2002の白点評価試験における評価が、2.3未満、より好ましくは2.0未満である。この評価の下限は、好ましくは0.1である。
【0072】
さらに、ポリエチレン組成物は、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.3%未満、もっとも好ましくは0.1%未満の白点域を有する。白点域の下限は、好ましくは0.001%である。
【0073】
ポリエチレン組成物は、ISO 13477:1997(E)に準拠した高速亀裂伝播試験での臨界温度、すなわち、延性−脆性遷移温度が−10℃以下、より好ましくは−11℃以下、もっとも好ましくは−12℃以下であるのが、さらに好ましい。臨界温度は普通、下限である−30℃を超えない。
【0074】
本発明はさらに、上述の実施形態のいずれかにしたがったポリエチレン組成物を製造するための方法に関し、この方法では、ベースレジンが多段階プロセスで製造される。
【0075】
好ましくは、ベースレジンは、2つを超える異なるエチレンホモポリマーまたはコポリマーの画分、より好ましくは、3つ以上のエチレンホモポリマーまたはコポリマーの上述した画分(A)、(B)、(C)を含む。
【0076】
任意選択的に、ベースレジンは、上記のようにプレポリマー画分をさらに含む。
【0077】
多段重合プロセスとは、少なくとも2つのポリマー画分のそれぞれを別個の反応段階で、普通は、重合触媒を含む各段階において異なる反応条件で重合させることにより、2つ以上の画分を含むポリマーを重合させる方法を表す。重合は好ましくは、その後に配合ステップが実施される。
【0078】
画分(A)、(B)、(C)は、任意の順序で、多段階プロセスの異なる段階で重合させるのが好ましい。その場合に、画分(A)、(B)、(C)を、続いた段階で重合させるのが好ましい。
【0079】
本発明によるポリエチレン組成物のベースレジンは、少なくとも1つのスラリー相反応器及び少なくとも1つの気相反応器で重合させるのが好ましい。
【0080】
好ましい実施形態では、画分(A)はスラリー相反応器、好ましくはループ反応器で重合させ、画分(B)及び(C)は任意の順序で気相反応器で重合させる。
【0081】
任意の順序とは、多段階プロセスの続いた重合段階に関して好ましい配列順序がないことを表す。
【0082】
本発明による方法の1つの好ましい実施形態では、画分(A)は第1反応段階で重合される。
【0083】
この場合、画分(B)は、画分(A)の存在下において第2反応段階で重合させるのが好ましい。
【0084】
画分(C)は好ましくは、画分(A)及び(B)の存在下において第3反応段階で重合させる。
【0085】
好ましくは、多段階プロセスは、スラリー相反応器中で実施される反応段階と、その後に気相反応器で実施される2つの反応段階とからなる。その場合、任意選択的に、スラリー相反応器中で実施される反応段階は、その前に予備重合段階が行われる。
【0086】
画分(A)は、スラリー相反応器で重合させることが好ましい。
【0087】
スラリー相重合では、重合で形成されるポリマー粒子は、粒子内で断片化され分散された触媒と一緒に、液体炭化水素中に懸濁される。反応物が液体から粒子中に移動できるように、スラリー相を撹拌する。
【0088】
スラリー相反応器中の重合は普通、不活性希釈剤中で行われ、典型的には、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサンのようなヘキサン、ヘプタン類、オクタン類などまたはそれらの混合物のようなC
3〜C
8炭化水素を含む群から選択される炭化水素希釈剤中で行われる。好ましくは、希釈剤は、1〜4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素またはそうした炭化水素の混合物である。特に好ましい希釈剤は、プロパンであり、おそらく、少量のメタン、エタン及び/またはブタンを含む。不活性希釈剤は、異なる重合ステップにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0089】
スラリー相反応器におけるスラリーの液体相のエチレン含有量は、0.5〜50mol%、好ましくは1〜20mol%、特に2〜10mol%であってよい。エチレン濃度が高い場合、触媒の生産性が増大するという利点があるが、その場合、濃度が低い場合よりももっと多くのエチレンを再利用する必要があるという欠点がある。
【0090】
スラリー相重合における温度は、典型的には50〜115℃、好ましくは60〜110℃、特に70〜100℃である。圧力は典型的には、0.1〜15.0MPa(1〜150バール)、好ましくは0.1〜10.0MPa(1〜100バール)である。
【0091】
スラリー相重合は、スラリー相重合に用いられる任意の公知の反応器で実施してよい。そのような反応器としては、連続攪拌タンク反応器及びループ反応器がある。重合は、ループ反応器で実施するのが特に好ましい。そのような反応器では、循環ポンプを用いて閉管に沿ってスラリーを高速度で循環させる。ループ反応器は一般的に当該技術分野において知られており、その例は、例えば、米国特許第4,582,816号明細書、米国特許第3,405、109号明細書、米国特許第3,324,093号明細書、欧州特許第479186号明細書、米国特許第5,391,654号明細書に示されている。
【0092】
液体混合物の臨界温度及び臨界圧力より上でスラリー相重合を実施するのが、時には有利である。そのような操作は、米国特許第5,391,654号明細書に記載されている。そのような操作では、温度は典型的には、少なくとも85℃、好ましくは少なくとも90℃である。さらに、温度は典型的には、110℃以下、好ましくは105℃以下である。そうした条件下での圧力は典型的には、少なくとも4.0MPa(40バール)、好ましくは少なくとも5.0MPa(50バール)である。さらに、圧力は典型的には、15.0MPa(150バール)以下、好ましくは10.0MPa(100バール)以下である。好ましい実施形態では、スラリー相重合ステップは、超臨界条件下で、すなわち、反応温度及び反応圧力が、炭化水素媒体とモノマーと水素と任意選択のコモノマーとによって形成される混合物の同等な臨界点より上であり、かつ重合温度が形成ポリマーの溶融温度より低い条件下で実施される。
【0093】
スラリーは、連続的または断続的にスラリー相反応器から抜き出してよい。断続的な抜き出しの好ましいやり方では、沈降レグを使用し、沈降レグでスラリーを濃縮させてから、濃縮スラリーのバッチを反応器から抜き出す。沈降レグの使用が、とりわけ、米国特許第3,374,211号明細書、米国特許第3,242,150号明細書、欧州特許第1310295号明細書に記載されている。連続的な抜き出しについてはとりわけ、欧州特許第891990号明細書、欧州特許第1415999号明細書、欧州特許第1591460号明細書、国際公開第2007/025640号明細書に開示されている。連続的な抜き出しは有利には、欧州特許第1415999号明細書及び欧州特許第1591460号明細書に開示されているように、適切な濃縮方法と組み合わせる。
【0094】
沈降レグは、反応器から抜き出されるスラリーを濃縮するのに用いられる。したがって抜き出し流は、平均して、反応器内のスラリーよりも容積当たりのポリマーを多く含む。この場合、反応器に戻して再利用する必要のある液体が少なくなり、その結果、装置のコストが低下するという利点がある。商業規模の工場では、ポリマーと一緒に抜き出される液体はフラッシュタンクで蒸発させ、圧縮機で圧縮されてそこからスラリー相反応器内へ再循環させる。
【0095】
しかし、沈降レグではポリマーを断続的に抜き出す。このため、反応器内の圧力及び他の変数が、抜き出しの間に変動する。また抜き出し能力は、限られており、沈降レグの大きさ及び数に依存する。こうした不利な点を克服するためには、多くの場合、連続的な抜き出しが好ましい。
【0096】
その一方で、連続的な抜き出しの場合、典型的には、反応器内におけるのと同じ濃度のポリマーが抜き出されるという問題がある。圧縮する炭化水素の量を減らすために、欧州特許第1415999号明細書及び欧州特許第1591460号明細書に開示されているように、連続出口を有利に、ハイドロサイクロンまたはふるいのような適切な濃縮装置と組み合わせる。その後、ポリマーを多く含む流れはフラッシュに向けられ、ポリマーの少ない流れは直接反応器へ戻される。
【0097】
スラリー相反応器中で重合されるポリエチレン画分のMFR
2を調整するために、好ましくは水素を反応器に導入する。スラリー相反応器内の水素とエチレンとの比率が250〜1000mol/kmol、より好ましくは500〜800mol/kmolとなるように、好ましくは、エチレンの供給に合わせて水素の供給を調整する。
【0098】
スラリー相反応器で製造されたポリエチレン画分は、エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーの画分でありうる。コポリマーを重合させる場合、コモノマーは好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンまたはそれらの混合物を含む群から選択され、特に好ましいのは1−ヘキセンである。好ましい実施形態では、スラリー相反応器において、エチレンホモポリマーを重合させて、コモノマーがこの反応段階に供給されないようにする。
【0099】
典型的には、エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーの画分が、少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、もっとも好ましくは少なくとも48質量%の量で、かつ65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、もっとも好ましくは55質量%以下の量だけ重合されるように、スラリー相反応器内の滞留時間及び重合温度を調整する。
【0100】
スラリー相反応器で製造されたポリマー画分は好ましくは、少なくとも1つの気相反応器に移送する。
【0101】
流動床気相反応器では、オレフィンは、重合触媒の存在下で、上方へ流れるガス流の中で重合される。反応器は典型的には、流動化グリッドの上方に、活性触媒を含むと共に大きくなってゆくポリマー粒子を備える流動床を含んでいる。
【0102】
ポリマー床は、オレフィンモノマーを含む流動化ガスの助けを得て流動化されるが、その流動化ガスは、最終的にはコモノマーと、最終的に連鎖成長制御剤すなわち、水素のような連鎖移動剤と、最終的に不活性ガスとを含む。その場合、不活性ガスは、スラリー相反応器で使用される不活性ガスと同じであっても異なっていてもよい。流動化ガスを、反応器の底にある吸込室に導入する。吸込室の横断表面積の全体に均一にガス流が確実に分散するように、吸込み管は、当該技術分野、例えば、米国特許第4,933,149号明細書及び欧州特許第684871号明細書において知られている分流部材を備えていてもよい。
【0103】
吸込室からガス流が、流動化グリッドを介して流動床内へ上方に通過する。流動化グリッドの目的は、流動床の断面積全体に均一にガス流を分散させることである。国際公開第2005/087261号明細書に開示されているように、流動化グリッドは時には、反応器の壁に沿ってガス流が広がるように配置してもよい。他のタイプの流動化グリッドはとりわけ、米国特許第4,578,879号明細書、欧州特許第600414号明細書、欧州特許第721798号明細書に開示されている。概要については、Geldart 及び Bayens「The Design of Distributors for Gas‐fluidised Beds」,Powder Technology,42巻,1985年,に示されている。
【0104】
流動化ガスは流動床を通過する。流動化ガスの空塔速度は、流動床に含まれている粒子の最低流動化速度よりも速くなければならない。そうでなければ、流動化が起こらないであろう。その一方、ガスの速度は気流輸送の開始速度より遅くあるべきである。そうでないと、流動床全体が、流動化ガスによって噴流されることになるであろう。最低の流動化速度及び気流輸送の開始速度は、粒子特性が普通の技術的手法によって分かると計算できる。概要はとりわけ、Geldart「Gas Fluidisation Technology」J.Wiley & Sons,1996年,に示されている。
【0105】
活性触媒を含んでいる流動床に流動化ガスを接触させると、モノマー及び連鎖移動剤のようなガスの反応成分が触媒の存在下で反応して、ポリマー生成物を製造する。同時に、ガスは反応熱によって加熱される。
【0106】
その後、未反応の流動化ガスを反応器の上部から取り出して、圧縮してから反応器の吸込室へ再循環させる。反応器へ入れる前に、新たな反応物を流動化ガス流へ送り込んで、反応と生成物の抜き出しとによって生じた減少を補う。流動化ガスの組成を分析し、ガス成分を導入して組成を一定に保つことは一般に知られている。実際の組成は、生成物の所望の特性と重合に使用される触媒とによって決まる。
【0107】
その後、ガスは熱交換器で冷却されて、反応熱が除去される。ガスは、流動床の温度より低い温度まで冷却され、反応のせいで流動床が加熱されないようにする。ガスは、その一部が凝縮する温度まで冷却することが可能である。液滴は、反応領域に入ると蒸発する。その場合、気化熱が反応熱を除去するのに寄与する。この種の操作は濃縮方式と呼ばれ、その変形形態がとりわけ、国際公開第2007/025640号明細書、米国特許第4,543,399号明細書、欧州特許第699213号明細書、国際公開第94/25495号明細書に開示されている。欧州特許第696293号明細書に開示されているように、再利用ガス流に縮合剤を添加することも可能である。縮合剤は、プロパン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ブタンまたはイソブタンのような非重合性成分であり、それらは冷却器で少なくとも部分的に凝縮される。
【0108】
ポリマー生成物は、連続的または断続的に気相反応器から抜き出せる。これらの方法を組み合わせて使用してもよい。連続的な抜き出しはとりわけ、国際公開第00/29452号明細書に開示されている。断続的な抜き出しはとりわけ、米国特許第4,621,952号明細書、欧州特許第188125号明細書、欧州特許第250169号明細書、欧州特許第579426号明細書に開示されている。
【0109】
少なくとも1つの気相反応器の上部は、いわゆる分離帯域(disengagement zone)を含むことができる。そのような領域では、反応器の直径を大きくして、ガス速度を減少させ、流動化ガスによって流動床から運ばれる粒子が流動床に再び沈降できるようにする。
【0110】
流動床のレベルは、当該技術分野において知られている種々の技術によって観測できる。例えば、反応器の底部と流動床の特定の高さとの間の圧力差を、反応器の全長にわたって記録することができ、流動床のレベルを圧力差の値に基づいて計算できる。そうした計算によって時間平均のレベルが得られる。超音波センサーまたは放射能センサーを使用することも可能である。こうした方法によって、瞬間のレベルを知ることができ、その後、当然ながら、時間で平均して時間平均のレベルを得ることができる。
【0111】
帯電防止剤を、必要に応じて少なくとも1つの気相反応器に投入してもよい。好適な帯電防止剤及びそれらを使用する方法はとりわけ、米国特許第5、026,795号明細書、米国特許第4,803,251号明細書、米国特許第4,532,311号明細書、米国特許第4,855,370号明細書、欧州特許第560035号明細書に開示されている。それらは普通、極性化合物であり、それにはとりわけ、水、ケトン、アルデヒド、アルコールがある。
【0112】
反応器は、流動床内での混合をさらに促進するために、機械式攪拌機を含んでもよい。好適な攪拌機の設計の例は、欧州特許第707513号明細書に示されている。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明による多段階プロセスは、直列に接続された2つの気相反応器を含む。2つの気相反応器は、好ましくは1つのスラリー相反応器の後に続く。
【0114】
第1気相反応器において、本発明によるポリエチレン組成物の画分(B)を重合させることが好ましい。
【0115】
第1気相反応器における気相重合の温度は、典型的には少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃である。温度は、典型的には105℃以下、好ましくは95℃以下である。圧力は、典型的には少なくとも1.0MPa(10バール)、好ましくは少なくとも1.5MPa(15バール)であるが、典型的には3.0MPa(30バール)以下、好ましくは2.5MPa(25バール)以下である。
【0116】
第1気相反応器では、第1気相反応器から出てくるポリエチレン樹脂、好ましくは画分(A)及び(B)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を有するものが、好ましくは0.1〜2g/10分、より好ましくは0.4〜1.5g/10分、もっとも好ましくは0.5〜1g/10分のMFR
5を有するように、重合条件を選択する。
【0117】
さらに、第1気相反応器から出てくるポリエチレン樹脂、好ましくは画分(A)及び(B)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を有するものは、好ましくは945〜965kg/m
3、より好ましくは950〜962kg/m
3、もっとも好ましくは955〜960kg/m
3の密度を有する。
【0118】
第1気相反応器中で重合されるポリエチレン画分のメルトフローレートを調整するために、水素を反応器に導入してもよい。第1気相反応器内のエチレンに対する水素の比率が20〜120mol/kmol、より好ましくは40〜100mol/kmolとなるように、水素の供給を、好ましくはエチレンの供給に合わせて調整する。
【0119】
第1気相反応器では、好ましくはエチレンコポリマー画分を製造する。したがって、流動化ガス流は、好ましくは、3〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンコモノマーからなる群から選択されるコモノマーを含む。好適なアルファ−オレフィンコモノマー種は、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。その場合、1−ヘキセンが最も好ましい。第1気相反応器中で使用されるコモノマーは、スラリー相反応器中で使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。エチレンに対するコモノマーの比率が少なくとも1〜30mol/kmol、より好ましくは3〜25mol/kmol、もっとも好ましくは5〜20mol/kmolとなるようにするために、コモノマーの供給を、好ましくはエチレンの供給に合わせて調整する。
【0120】
第1気相反応器における滞留時間及び重合温度は、典型的には、全ポリエチレン樹脂の20〜45質量%、好ましくは25〜42質量%、もっとも好ましくは30〜40質量%の量のエチレンコポリマー画分が重合されるように調整する。
【0121】
第1気相反応器で製造されたポリマー画分は、好ましくは第2気相反応器に移送する。
【0122】
第2気相反応器において、本発明によるポリエチレン組成物の画分(C)を重合させることが好ましい。
【0123】
第2気相反応器中の気相重合の温度は、典型的には少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃である。この温度は、典型的には105℃以下、好ましくは95℃以下である。圧力は、典型的には少なくとも1.0MPa(10バール)、好ましくは少なくとも1.5MPa(15バール)であるが、典型的には3.0MPa(30バール)以下、好ましくは2.5MPa(25バール以下)である。
【0124】
第2気相反応器では、第2気相反応器から出てくる最終ポリエチレンベースレジン、好ましくは、画分(A)、(B)、(C)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を有するものが、好ましくは0.05〜1.0g/10分、より好ましくは0.1〜0.6g/10分、もっとも好ましくは0.2〜0.4g/10分のMFR
5を有するように、重合条件を選択する。
【0125】
さらに、第2気相反応器から出てくる最終ポリエチレンベースレジン、好ましくは画分(A)、(B)、(C)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を有するものは、好ましくは、948kg/m
3以上、より好ましくは950〜965kg/m
3、さらにより好ましくは952〜960kg/m
3、もっとも好ましくは954〜960kg/m
3の密度を有する。
【0126】
好ましくは、画分(A)及び(B)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を有するポリマー樹脂の密度は、画分(A)、(B)、(C)からなり、任意選択的にプレポリマー画分を有するベースレジンの密度よりも高い。
【0127】
第2気相反応器中で重合されたポリエチレン画分のメルトフローレートを調整するために、水素を反応器に導入してもよい。第1気体相反応器内のエチレンに対する水素の比率が0〜20mol/kmol、より好ましくは0.2〜10mol/kmolとなるように、水素の供給を、好ましくはエチレンの供給に合わせて調整する。
【0128】
第2気相反応器中では、好ましくはエチレンコポリマー画分を製造する。したがって、流動化ガス流は、好ましくは3〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンコモノマーからなる群から選択されるコモノマーを含む。好適なアルファ−オレフィンコモノマー種は、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。その場合、1−ヘキセンがもっとも好ましい。第2気相反応器中で使用されるコモノマーは、第1気相反応器中で使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。エチレンに対するコモノマーの比率が少なくとも15〜100mol/kmol、より好ましくは17〜75mol/kmol、もっとも好ましくは19〜50mol/kmolとなるようにするために、コモノマーの供給を、好ましくはエチレンの供給に合わせて調整する。
【0129】
第1気相反応器における滞留時間及び重合温度は、典型的には、全ポリエチレン樹脂の4〜20質量%、好ましくは6〜15質量%、もっとも好ましくは8〜12質量%の量のエチレンコポリマー画分を重合するように調整する。
【0130】
触媒系としては、ポリエチレン樹脂の重合に適した任意の触媒、任意選択的に、助触媒を含む触媒を使用できる。特に好適なものは、チーグラー・ナッタ触媒系及びメタロセン触媒系である。好ましい実施形態では、重合はチーグラー・ナッタ触媒の存在下で実施される。好適なチーグラー・ナッタ触媒は、好ましくは、微粒子担体に担持されたマグネシウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物を含む。
【0131】
微粒子担体は、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニアのような無機酸化物担体であってよい。好ましくは、微粒子担体はシリカである。
【0132】
シリカ担体の平均粒径は、典型的には10〜100μmであってよい。しかし、担体の平均粒径が15〜30μm、好ましくは18〜25μmである場合に、特別の利点が得られることが分かった。あるいはまた、担体は、平均粒径が30〜80μm、好ましくは30〜50μmであってもよい。好適な担体物質の例には、例えば、イネオスシリカ社(以前のクロスフィールド社)によって製造・販売されているES747JRと、グレース社によって製造・販売されているSP9−491とがある。
【0133】
マグネシウム化合物は、ジアルキルマグネシウムとアルコールとの反応生成物である。アルコールは、直鎖または分枝の脂肪族モノアルコールである。好ましくは、アルコールは6〜16個の炭素原子を有する。分岐アルコールが特に好ましく、2−エチル−1−ヘキサノールは、好ましい分岐アルコールの一例である。ジアルキルマグネシウムは、同じであっても異なっていてもよい2つのアルキル基に結合しているマグネシウムの任意の化合物であってよい。ブチル−オクチルマグネシウムは、好ましいジアルキルマグネシウムの一例である。
【0134】
アルミニウム化合物は、塩素含有アルキルアルミニウムである。特に好ましい化合物は、二塩化アルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムセスキクロライドである。
【0135】
チタン化合物は、ハロゲン含有チタン化合物、好ましくは塩素含有チタン化合物である。特に好ましいチタン化合物は、四塩化チタンである。
【0136】
触媒は、欧州特許第688794号明細書または国際公開第99/51646号明細書に記載されているように、担体を上述の化合物と連続的に接触させることにより調製できる。あるいはまた、国際公開第01/55230号明細書に記載されているように、まず成分から溶液を製造し、その後、溶液を担体と接触させて製造することもできる。
【0137】
好適なチーグラー・ナッタ触媒の特に好ましい別の群は、ハロゲン化マグネシウム化合物と共にチタン化合物を含むが不活性担体は含まない。したがって、触媒は、二塩化マグネシウムのようなマグネシウムジハライド上にあるチタン化合物を含む。そのような触媒は、例えば、国際公開第2005/118655号明細書及び欧州特許第810235号明細書中に開示されている。
【0138】
チーグラー・ナッタ触媒は活性化剤と一緒に使用される。好適な活性化剤は、アルキル金属化合物であり、特にアルキルアルミニウム化合物である。こうした化合物としては、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジメチルアルミニウムクロライドのようなハロゲン化アルキルアルミニウムがある。またそれらには、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物も含まれる。さらにそれらには、メチルアルミニウムオキサン、ヘキサイソブチルアルミニウムオキサン、テトライソブチルアルミニウムオキサンのようなアルキルアルミニウムオキシ化合物が含まれる。また、イソプレニルアルミニウムのような他のアルキルアルミニウム化合物を使用してもよい。特に好ましい活性化剤は、トリアルキルアルミニウムであり、その中でトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に使用される。
【0139】
活性化剤の使用量は、特定の触媒及び活性化剤に依存する。典型的には、トリエチルアルミニウムは、Al/Tiのような、遷移金属に対するアルミニウムのモル比が、1〜1000、好ましくは3〜100、特に約5〜約30mol/molとなるような量を使用する。
【0140】
触媒系は、どんな重合段階にでも供給できるが、好ましくは第1重合段階に供給する。もっとも好ましくは、触媒系は、第1重合段階にのみ供給する。触媒は、当該技術分野において知られている任意の手段で重合領域に移送することができる。したがって、希釈剤中に触媒を懸濁させ、それを均質スラリーとして維持することが可能である。国際公開第2006/063771号明細書に開示されているように、希釈剤として、20〜1500mPa・sの粘性率を有するオイルを使用するのが特に好ましい。触媒を、グリースと油との粘稠混合物に混ぜて、得られたペーストを重合領域に供給することも可能である。またさらに、触媒を沈降させ、そうして得られた泥状の触媒を、例えば欧州特許第428054号明細書に開示されている方法で重合領域に送り込むことが可能である。
【0141】
好ましい実施形態では、この方法は、重合ステップの前に行われる予備重合ステップをさらに含むことができる。予備重合の目的は、低温度及び/または低モノマー濃度で、少量のポリマーを触媒に重合させることである。予備重合によって、スラリー中の触媒の性能を向上させ、及び/または最終ポリマーの特性を変更することが可能である。予備重合ステップは、スラリーまたは気相中で実施できる。好ましくは、予備重合はスラリー中で実施する。
【0142】
したがって、予備重合ステップはループ反応器内で実施してよい。その場合、予備重合は、好ましくは、不活性希釈剤中で、典型的には、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブテン、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類など、またはそれらの混合物のような炭化水素希釈剤中で実施する。好ましくは、希釈剤は、1〜4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素またはそうした炭化水素の混合物である。もっとも好ましい希釈剤はプロパンである。
【0143】
予備重合ステップにおける温度は、典型的には0℃〜90℃、好ましくは20℃〜80℃、より好ましくは40℃〜70℃である。
【0144】
圧力は、極めて重要というわけではなく、典型的には0.1MPa(1バール)〜15.0MPa(150バール)、好ましくは1.0MPa(10バール)〜10.0MPa(100バール)である。
【0145】
モノマーの量は、典型的には、1グラムの固体触媒成分当たり0.1グラム〜1000グラムのモノマーが予備重合ステップで重合されるような量である。当業者が知っているように、連続予備重合反応器から抜き出される触媒粒子は、すべてが同量のプレポリマーを含んでいるわけではない。そうではなく、各粒子は、予備重合反応器中でのその粒子の滞留時間に依存するそれ自体の特徴的な量を有する。一部の粒子は反応器内に比較的長く留まり、一部のものは比較的短い時間留まるので、いろいろな粒子上のプレポリマーの量も異なり、一部の個々の粒子は、上記の限界の範囲外にあるプレポリマーの量を含みうる。しかし、触媒上のプレポリマーの平均量は、典型的には上に明記した限界内である。
【0146】
エチレンモノマーに加えて、所望であれば、1つまたは複数のアルファ−オレフィンコモノマーを予備重合ステップで用いることも可能である。好適なコモノマーは、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン及びそれらの混合物である。
【0147】
しかし、予備重合ステップでは、エチレンホモポリマーのプレポリマー画分を重合することが好ましい。
【0148】
プレポリマーの分子量は、当該技術分野において知られているように水素によって制御できる。さらに、国際公開第96/19503号明細書及び国際公開第96/32420号明細書に開示されているように、粒子が互いにくっつくのを防ぐため、または反応器の壁にくっつくのを防ぐために、帯電防止添加剤を使用してよい。
【0149】
触媒成分は、好ましくは、すべてを予備重合ステップに導入する。しかし、固体触媒成分及び助触媒を別個に供給できる場合、助触媒の一部だけを予備重合段階に導入し、残りの部分を後に続く重合段階に導入することが可能である。またそのような場合、十分な重合反応を得るのに必要な助触媒を予備重合段階に導入する必要がある。
【0150】
本発明の重合方法によって製造されるポリエチレン樹脂は、均質性が改善される。例えばカーボンブラックのような顔料との単一の配合ステップの後、最終ポリエチレン組成物に分散した白点は、好ましくは、ISO 18553:2002にしたがって測定した場合、白点分散度で表された均質性が、2.5未満、より好ましくは2.3未満、もっとも好ましくは2.0未満である。
【0151】
それゆえに、本発明のポリエチレン組成物は、好ましくは、配合ステップをさらに含む多段階プロセスであって、典型的には、反応器からベースレジン粉末として得られるベースレジンが押出機から押し出され、その後、当該技術分野において知られている方法でポリマーペレットにペレット化されて本発明のポリオレフィン組成物が形成される多段階プロセスによって製造される。
【0152】
任意選択的に、添加剤または他のポリマー成分を、配合ステップの間に上述の量だけ組成物に加えることができる。好ましくは、反応器から得られた本発明の組成物は、当該技術分野において知られている方法で、押出機内で添加剤と一緒に混ぜ合わせる。
【0153】
押出機は、例えば、従来から使用される任意の押出機であってよい。本発明における配合ステップ用の押出機の例として、日本製鋼所、神戸製鋼またはファーレル・ポミニ社によって提供されるもの、例えば、JSW 460PまたはJSW CIM 90Pであってもよい。
【0154】
1つの好ましい実施形態では、押出しステップは、150〜300kg/h、より好ましくは200〜250kg/hの供給速度で実施される。
【0155】
押出機のスクリュー回転数は、好ましくは350〜450rpm、より好ましくは380〜420rpmである。
【0156】
好ましくは、前記押し出しステップにおいて、押出機のSEI(比入力エネルギー(specific energy input))は、200〜300kWh/トン、好ましくは240〜270kWh/トンであってよい。
【0157】
前記押し出しステップの溶融温度は、好ましくは200〜300℃、より好ましくは240〜270℃である。
【0158】
本発明の利点は、配合ステップ、例えば、好ましくは上で定義した供給速度での押し出しを一度実施していれば、徹底的に混合しなくても優れた均質性を得ることができること、またそれに加えて、高水準の均質性と共に、良好な機械的性質のような望ましいポリマー特性を得ることができるか、または維持できることである。
【0159】
さらに、本発明は、上述のポリエチレン組成物または上述の方法で得ることができるポリエチレン組成物を含む物品、好ましくはパイプ、並びに、物品、好ましくはパイプの製造におけるそのようなポリエチレン組成物の使用に関する。
【0160】
以下の実施例によって本発明の特徴をさらに示す。
【実施例】
【0161】
1.定義
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133にしたがって測定し、g/10分で示す。MFRは、ポリマーの流動性、したがって加工性を示す。メルトフローレートが大きいほど、ポリマーの粘性率は低い。ポリエチレンのMFR
5は、190℃の温度及び5kgの荷重で測定し、ポリエチレンのMFR
2は、190℃の温度及び2.16kgの荷重で測定し、ポリエチレンのMFR
21は、190℃の温度及び21.6kgの温度で測定する。FRR(フローレート比)という量は、異なる荷重での流量の比を表す。したがって、FRR
21/5は、MFR
21/MFR
5の比を表す。
【0162】
b)密度
ポリマーの密度は、EN ISO 1872−2(2007年2月)にしたがって調製された圧縮成形試験片を、ISO 1183−1:2004 Method Aにしたがって測定した。それをkg/m
3で示す。
【0163】
c)コモノマー含有量
13C−NMR分析を使用して、試料のコモノマー含有量を求めた。試料は、およそ0.100gのポリマーと2.5mlの溶媒を10mmのNMR管内で溶解させて調製した。溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼンとベンゼン−d6との混合物(90/10)であった。試料は、NMR管とその内容物とを加熱ブロック内において150℃で加熱することにより、溶解させて均質化した。
【0164】
プロトンデカップリングを行った、NOEを伴う炭素−13単一パルスNMRスペクトルを、Joel ECX 400MHz核磁気共鳴分光計で記録した。実験に用いた取得パラメータには、45度のフリップ角と、4つのダミー走査と、3000のトランジェント及び1.6秒の取得時間と、20kHzのスペクトル幅と、125℃の温度と、WALTZデカップリング及び6.0秒の待ち時間とが含まれていた。使用した処理パラメータには、32kデータポイントへのゼロ充填と、1.0Hz人為的線幅拡大での指数窓関数を使用するアポダイゼーションと、その後の自動ゼロ次位相補正と、自動1次位相補正と、自動ベースライン補正とが含まれていた。
【0165】
コモノマー含有量は、JC. Randallの著作(JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys.,C29(2&3),201-317頁(1989年))に記載されている指定を用いて、処理されたスペクトルから取られる整数比を使用して計算した。以下のものを使用した。
E=(\アルファB+\アルファH+\ベータB+\ベータH+\ガンマB+\ガンマH+\デルタ++)/2
B=(メチンB+2B+1B)/3
H=(メチンH+4H+3H+2H)/4
ここで、メチンは、CH分枝部位、アルファ、ベータ、ガンマ(CHに隣接した炭素位置)である。すなわち、CH、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタである。\デルタ++は、バルクのCH2部位であり、1,2,3及び4の部位は分枝に沿った様々な炭素部位を表し、メチル基は1と指定される。
CE=100%
*E/(E+B+H)
CB=100%
*B/(E+B+H)
CH=100%
*H/(E+B+H)
【0166】
d)均質性の測定
1回配合した組成物の白点域は、ISO 18 553にしたがって以下のように測定する。
【0167】
以下の表1に示した1回の配合ステップの後に得られる組成物の試料(不均質部分を見えるようにするための顔料、例えば、以下の表2に示す量のカーボンブラックを含む)を、まず試料の6つの異なる部分(厚さが12±2μm、直径が3〜5mm)である6つのミクロトーム切片を得て、分析する。
【0168】
切片は、100倍に拡大して評価し、0.7mm
2の各切片の全表面にある着色されていない含有物(「白点」、凝集塊、粒子)の大きさ、すなわち、表面部分を測定する。5マイクロメートルより大きな直径を有するすべての白点をカウントする。その後、「白点域」を、試料切片の全表面上の白点の平均割合として表す。
【0169】
白点域試験に加えて、補足的均質性(homogeneity complementary)を、変更が施されたISO 18553:2002白点評価試験にしたがって測定する。この試験では、上述の1回の配合ステップの後に存在する組成物の、白点として現れる不均質部分を、ISO 18553:2002に示されている評価方式にしたがって測定し評価する。この試験で組成物が低く評価されるほど、組成物の均質性は優れることになる。
【0170】
e)レオロジーパラメータ
動的せん断測定によるポリマーメルトの特徴づけは、ISO規格の6721−1及び6721−10に適合する。25mmの平行板体を備えたAnton Paar MCR501応力制御回転式レオメーターで測定を実施した。窒素雰囲気において、ひずみが線形粘弾性状態となるように設定して、圧縮成形板で測定を行った。190℃の温度において、0.01〜600rad/sの範囲の周波数を加え、1.3mmの隙間を設けて、振動せん断試験を行った。
【0171】
動的せん断実験では、正弦曲線状に変化するせん断ひずみまたはせん断応力(それぞれ、ひずみ制御方式及び応力制御方式)で、プローブを均一変形させる。制御ひずみ実験では、プローブに対して、以下の式で表すことのできる正弦波ひずみを加える。
【数1】
加えたひずみが線形粘弾性状態の範囲内であれば、得られる正弦波応力応答は、以下の式で示すことができる。
【数2】
上式において、
σ
0およびγ
0はそれぞれ、応力振幅及びひずみ振幅であり、
ωは、角周波数であり、
δは、位相ずれ(加えたひずみと応力応答との間の損失角)であり、
tは時間である。
【0172】
動的試験の結果は、典型的には、いろいろな異なるレオロジー関数、つまり、せん断貯蔵弾性率G’と、損失せん断弾性率G”と、複素せん断弾性率G
*と、複素せん断粘性率η
*と、動的せん断粘性率η’と、複素せん断粘性率の異相分η”と、損失正接tan δとによって表され、それらは以下のように表すことができる。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0173】
上述のレオロジー関数の他に、いわゆる弾力性指数EI(x)のような他のレオロジーパラメータを求めることもできる。弾力性指数EI(x)は、x kPaという損失せん断弾性率G”の値に関して求まるせん断貯蔵弾性率G’の値であり、式10によって記述することができる。
【数9】
例えば、EI(5kPa)は、5kPaに等しいG”の値に関して求められるせん断貯蔵弾性率G’の値で定義される。
【0174】
いわゆる、ずり流動化指数は、式10に記述されたたようにして求められる。
【数10】
例えば、SHI
(2.7/210)は、2.7kPaに等しいG
*の値に関して求められる複素粘性率の値(Pa.s)を、210kPaに等しいG
*の値に関して求められる複素粘性率の値(Pa.s)で割ったもので定義される。
【0175】
各値は、Rheoplusソフトウェアによって定義される1点内挿法(single point interpolation procedure)によって求める。所与のG
*値に実験的に達しない状況では、以前と同じ手順を用いて外挿によって値を求める。どちらの場合も(内挿でも外挿でも)、Rheoplusのオプション「パラメータでy値からx値を内挿する」及び「対数内挿タイプ」を適用した。
【0176】
粘性率eta
747Paは、非常に低い747Paという一定のせん断応力で測定され、ポリエチレン組成物の重力流に逆比例する。すなわち、eta
747Paが大きいほど、ポリエチレン組成物のだれ(sagging)は小さくなる。
【0177】
文献:
[1] 「Rheological characterization of polyethylene fractions」 Heino, E. L., Lehtinen, A., Tanner J., Seppaelae, J., Neste Oy, Porvoo, Finland, Theor. Appl. Rheol., Proc. Int. Congr. Rheol, 11th(1992年),1,360−362頁
[2] 「The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene」,Heino, E. L., Borealis Polymers Oy,Porvoo,Finland,Annual Transactions of the Nordic Rheology Society,1995年)
[3] Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers,Pure & Appl. Chem., Vol. 70, No. 3, 701−754頁,1998年
【0178】
f)パイプ小規模定常状態試験(S4試験)−高速亀裂伝播(RCP)
ISO 13477:1997 EにしたがってS4試験を以下のように実施した。
パイプの高速亀裂伝播(RCP)抵抗は、ISO 13477:1997(E)に記載されているS4試験(小規模定常状態)と呼ばれる方法にしたがって求める。
【0179】
RCP−S4試験にしたがって、管径の7倍以上の軸長を有するパイプを試験する。パイプの外径は約110mm以上であり、その壁厚は約10mm以上である。本発明との関連においてパイプのRCP特性を求める場合、外径及び壁厚はそれぞれ110mm及び10mmとなるように選択した。パイプの外部は雰囲気圧(大気圧)であるが、パイプには内側から圧力を加え、パイプの内圧を0.4MPa(4バール)の正圧に保って一定にする。パイプとその周囲の装置は、所定の温度に制御する。幾つものディスクがパイプ内のシャフトに装着されていて、試験の間中、減圧を防ぐようになっている。高速に走る軸方向の亀裂を開始させるために、いわゆる開始領域の、パイプの一端に近い部分に向けて、明確な形をしたナイフ発射体を発射する。パイプが不必要に変形するのを避けるため、橋台によって開始領域を設ける。関係する物質において亀裂が開始するように、試験装置を調節し、様々な温度で幾つもの試験を実施する。直径の4.7倍の全長を有する測定領域における軸方向の亀裂の長さを、各試験で測定し、設定試験温度に対してプロットする。亀裂の長さが直径の4.7倍を超えた場合、亀裂が伝播すると評価される。パイプが所与の温度で試験に合格した場合、パイプが試験にもはや合格しないが亀裂伝播が管径の4.7倍を超える温度に達するまで、温度を連続的に下げる。臨界温度(T
crit)、すなわち、ISO 13477:2008(E)にしたがって測定される延性−脆性遷移温度は、パイプが試験に合格する最低温度である。パイプの応用範囲が広がることになるから、臨界温度が低いほど、優れていると言える。
【0180】
2.物質
a)実施例Ex1
容積が50dm
3であり、60℃の温度及び5.7MPa(57バール)のプロパン(C3)圧力で操作される第1ループ反応器へ、予備重合ステップを実施するために、エチレン(C2)および水素(H2)を導入した。さらに、固相重合触媒成分である、(BASF触媒合同会社が販売するLynx200を、チタンに対するアルミニウムの比率が20mol/molとなるように、4.1g/hでトリエチルアルミニウム助触媒と一緒に反応器に導入した。予備重合反応器で製造された実施例Ex1のポリエチレンホモポリマー画分の密度は、970kg/m
3を超えていた。スラリーを断続的に予備重合反応器から抜き出し、容積が500dm
3でかつ95℃の温度及び5.6MPa(56バール)の圧力で操作される第2ループ反応器に向けた。さらに、プロパン、エチレン、水素を、第2ループ反応器へ供給した。実施例Ex1についてのエチレン濃度及びエチレンに対する水素の比率を表1にまとめる。第2ループ反応器で製造されたポリマー画分の製造比率及びメルトインデックスを表1にまとめる。沈降レグを用いてスラリーを断続的に第2ループ反応器から抜き出し、第1気相反応器へ向かわせた。第1気相反応器は、85℃の温度及び2.0MPa(20バール)の圧力で操作した。更なるエチレン、1−ヘキセンコモノマー、水素を供給した。その場合における、エチレン濃度と、エチレンに対する1−ヘキセンの比率及びエチレンに対する水素の比率と、第1気相反応器から抜き出された実施例Ex1のポリマーの製造比率、メルトフローレート、密度とを表1にまとめる。第1気相反応器を出てきたポリマーは、第2気相反応器に向かわせた。第2気相反応器は、85℃の温度及び2.0MPa(20バール)の圧力で操作した。更なるエチレン、1−ヘキセンコモノマー、水素を供給した。その場合における、エチレン濃度、エチレンに対する1−ヘキセンの比率及びエチレンに対する水素の比率と、第2気相反応器から抜き出された実施例Ex1のポリマーの製造比率、メルトフローレート、密度とを表1にまとめる。
【0181】
得られたポリマー粉末を炭化水素がなくなるように乾燥させ、最終組成物に対して2100ppmのIrganox B225(現在はBASFの一部であるCibaからのもの)と、1500ppmのステアリン酸カルシウムと、2.3%のカーボンブラックとを混合した。カーボンブラックの添加については、39.5質量%のカーボンブラック((Cabotから販売されるElftex TP)と、0.1質量%のIrganox 1010(現在はBASFの一部であるCibaからのもの)と、60.4質量%のBCL−5931(コモノマー含有量が1.7質量%であり、MFR
2(2.16kg、190℃、ISO 1133)が30g/10分であり、密度が959kg/m
3であるエチレン−ブチレンコポリマー)とを含むマスターバッチを、5.7質量%の量だけ使用した。その後、CIM90P二軸スクリュー押出機(日本製鋼所製)を用いて、混合物を押し出してペレットにした。配合組成物の特性を表2に示す。
【0182】
b)実施例Ex2及びEx3及び比較例Comp.Ex.4
表1に示した条件以外は、実施例Ex1の手順を繰り返した。配合ポリエチレン組成物の特性を表2に示す。
【0183】
c)比較例Comp.Ex.5
容積が50dm
3であり、40℃の温度及び6.1MPa(61バール)のプロパン(C3)圧力で操作される第1ループ反応器へ、予備重合ステップを実施するためエチレン(C2)及び水素(H2)を導入した。BASF触媒合同会社の触媒Lynx 200を、チタンに対するアルミニウムの比率が20mol/molとなるように、2.5g/hの供給速度でトリエチルアルミニウム助触媒と一緒に加えた。予備重合反応器で製造された比較例Comp.Ex.5のポリエチレンホモポリマー画分の密度は、970kg/m
3を超えていた。スラリーを断続的に予備重合反応器から抜き出し、容積が500dm
3でかつ95℃の温度及び5.6MPa(56バール)の圧力で操作される第2ループ反応器に向かわせた。さらに、プロパン、エチレン、水素を第2ループ反応器へ供給した。その場合の比較例Comp.Ex.5についてのエチレン濃度及びエチレンに対する水素の比率を表1にまとめる。第2ループ反応器で製造されたポリマー画分の製造比率及びメルトインデックスを表1にまとめる。沈降レグを用いてスラリーを断続的に第2ループ反応器から抜き出し、第1気相反応器へ向かわせた。第1気相反応器は、85℃の温度及び2.0MPa(20バール)の圧力で操作した。更なるエチレン、1−ヘキセンコモノマー、水素を供給した。その場合のエチレン濃度と、エチレンに対する1−ヘキセンの比率及びエチレンに対する水素の比率と、第1気相反応器から抜き出された比較例Comp.Ex.5のポリマーの製造比率、メルトフローレート、密度とを表1にまとめる。
【0184】
得られたポリマー粉末は炭化水素がなくなるよう乾燥させ、最終組成物に対して1050ppmのIrganox 1010と、1050ppmのIrgafos 168と、2.3%のカーボンブラックと、上述のマスターバッチの形で混合した。その後、CIM90P二軸スクリュー押出機(日本製鋼所製)を用いて、混合物を押し出してペレットにした。配合組成物の特性を表2に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】