(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)で表されるモノマーが、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンもしくは、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンである請求項1〜5のいずれかに記載のフルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<脂肪族系エポキシ化合物>
本発明の脂肪族系エポキシ化合物は、下記一般式(2)
【化6】
【0025】
式中、RはCH
3またはHであり、oは1〜20あり、pは1〜10であり、Iは1〜20である。)で表わされる部位を有する脂肪族系エポキシ系化合物である。
【0026】
式中におけるoが1〜20である場合は、アルキレン基の効果により、透明性を保持したまま、成形流動性を向上させる事ができる。oが1より少ない場合は、成形流動性が不足し、20より大きい場合は、樹脂との相溶性が悪化し透明性が保持できない。
【0027】
式中におけるpが1〜10である場合は、水分をエポキシ基がトラップし、熱可塑性樹脂の加水分解を抑制することで、耐湿熱安定性が良好となる。pが1より少ない場合、耐湿熱安定性が低下する。10より多い場合は、脂肪族系エポキシ化合物同士が反応し多量体を形成することで、耐湿熱安定性が低下する。さらに好ましくは、2〜8であり、より好ましくは、3〜8である。
【0028】
式中におけるIが1〜20である場合、高度な透明性、耐湿熱安定性を保持した成形流動性が向上する。Iが1より少ない場合は、成形流動性が不足・耐湿熱性が劣化する。さらに、樹脂からのブリードアウトの生じる可能性がある。又、Iが20より大きい場合、樹脂との相溶性が悪化し透明性が保持できない。
【0029】
本発明に使用される上記の脂肪族系エポキシ化合物は、分子骨格中に1個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ基が1個以上有すると、エポキシ基が水と反応し、樹脂の加水分解を抑制する事で耐湿熱安定性が向上する。
【0030】
本発明に使用される上記の脂肪族系エポキシ化合物は、グリセリン骨格とエポキシ基を有する脂肪鎖とがエステルを介して結合している化合物であって、特に、上記式(2)のカルボニル基を除いた脂肪鎖のメチレン基の数が2〜20であることが、高透明性、成形流動性、耐湿熱安定性、および成形時ガス発生抑制等の成形安定性の観点から好ましい。
【0031】
かかるグリセリン骨格を有する脂肪族系エポキシ化合物の中でも、エポキシ化植物油が好ましくエポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油がさらに好ましい。特に、エポキシ基の数が2〜6個であるエポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油が耐湿熱安定性の観点から好ましい。
【0032】
かかる脂肪族系エポキシ化合物は、後述するフルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部含有する事が必要である。含有量が、0.1重量部より少ない場合は、成形流動性に劣る。一方、10重量部より多い場合、樹脂と相溶せず透明性を保持できなくなり、さらに高温高湿度下で使用した際に、フルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂の分子量が低下し、樹脂色相、強度が低下するなど、耐湿熱安定性が低下する。
【0033】
本発明に使用される上記の脂肪族系エポキシ化合物の含有量は、フルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.1〜8重量部であり、さらに好ましくは、0.1〜5重量部である。
<フルオレン化合物>
本発明に使用される下記式(1)
【化7】
【0034】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nおよびmは0〜10の整数である。)で表されるモノマーは、フルオレン化合物である。
【0035】
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルコキシル基である事が好ましい。
【0036】
具体的に表わされるフルオレン化合物は、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス−(4−ヒドロキシブトキシフェニル)フルオレン等が好ましい。中でもフルオレン化合物は9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンもしくは、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンであることがより好ましい。
【0037】
<熱可塑性樹脂>
本発明に使用される熱可塑性樹脂は、上記式(1)のフルオレン化合物から誘導されるカーボネート単位またはエステル単位からなる繰り返し単位を含むものであって、例えばポリカーボネート、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。
[ポリカーボネート]
本発明に使用されるポリカーボネートは、上記式(1)で表されるフルオレン化合物と共重合可能な、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導されるカーボネート単位からなる繰り返し単位を有していてもよい。
【0039】
(式中、R5〜R8は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子であり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、O、S、SO、SO
2、CO又はCOO基である。)
本発明に使用されるポリカーボネートにおいて一般式(3)のWは、下記式(6)で表わされる基であることが好ましい。
【0041】
(式中、R9、R10は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、R11およびR12は夫々独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表わし、nは4〜7の整数である。)
好ましく用いられるジヒドロキシ化合物としては、例えば4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン等の芳香族ジオールが挙げられ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールMが好ましい。特にビスフェノールAが好ましい。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
なお、光学特性を阻害しない範囲で、ハイドロキノン、レゾルシノール等の一般式(3)に該当しない芳香族ジヒドロキシ化合物、エチレングリコール等の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2, 6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール等の脂環式ジオールに由来するカーボネート単位を含んでもよい。これらは、1種を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
式(1)と式(3)の割合がモル比で(1):(3)=100:0〜50:50の範囲のポリカーボネートであり、98:2〜50:50の範囲が好ましく、95:5〜50:50の範囲がより好ましい。
【0044】
[ポリカーボネートの製造方法]
かかるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。
【0045】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えばピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0046】
本発明のポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
【0047】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用い、塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、反応させる公知の溶融重縮合法(エステル交換反応)により製造することもできる。
【0048】
炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルは、ジオール成分1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.10モルの比率である。
【0049】
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等があげられる。
【0050】
このような化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド等、および4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等の含窒素化合物が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0051】
かかるアルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、フェノールのナトリウム塩等が用いられる。
【0052】
アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が用いられる。
【0053】
含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、等が用いられる。
【0054】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0055】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0056】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10
−9〜10
−3モルの比率で、好ましくは10
−7〜10
−4モルの比率で用いられる。
【0057】
溶融重縮合法は、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
【0058】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜350℃の温度で0.05〜2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよい。特に、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適である。
【0059】
得られたポリカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させる。一般的には、公知の失活剤の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となる。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなる。
【0060】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を13.3〜1133.3Paの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0061】
本発明におけるポリカーボネート樹脂はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.55の範囲のものが好ましく、0.15〜0.45の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.12未満では成形品が脆くなり、0.55より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなる。
【0062】
<ポリエステルカーボネート>
本発明に使用されるポリエステルカーボネートは、エステル単位を形成する酸成分が前記一般式(4)および/または一般式(5)で表されるジカルボン酸成分であり、一般式(1)で表されるモノマー成分と、一般式(4)および/または一般式(5)で表されるジカルボン酸成分の合計との割合が、モル比で(1):((4)+(5))=50:50〜95:5、好ましくは70:30〜95:5、さらに好ましくは75:25〜90:10である。後者の割合が50:50を超えると光学用材料としての性能が低下する場合がある。
かかるポリエステルカーボネートには、上記式(1)で表されるフルオレン化合物と共重合可能な、前記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を共重合していてもよい。
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の割合は、一般式(1)で表されるフルオレン化合物とのモル比で、式(1):式(3)=80〜100:20〜0が好ましく、さらに好ましくは90〜100:10〜0である。
【0063】
好ましく用いられる一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、前記のポリカーボネートで説明したものと同様である。また、同様に、光学特性を阻害しない範囲で他のジヒドロキシ化合物を併用してもよい。
[ジカルボン酸]
エステル単位を形成する酸成分は、下記一般式(4)
【0065】
(式中、R13およびR14は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)で表されるジカルボン酸、および/または下記一般式(5)
【0067】
(式中、R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)で表されるジカルボン酸である。
【0068】
好ましい一般式(4)で表されるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられ、特にテレフタル酸が好ましい。また、好ましく用いられる一般式(5)で表されるジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。なかでも、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、特にテレフタル酸が好ましい。
なお、光学特性を阻害しない範囲で、一般式(4)または一般式(5)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
【0069】
[ポリエステルカーボネートの製造方法]
かかるポリエステルカーボネート樹脂の製造に用いるカーボネート前駆物質は、例えばホスゲン、ジフェニルカーボネート、上記二価フェノール類のビスクロロホーメート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0070】
ポリエステルカーボネート樹脂を製造する方法は、通常のポリエステルカーボネート樹脂の製造に用いる方法が、任意に採用される。例えばジオールとジカルボン酸又はジカルボン酸クロライドとホスゲンとの反応、又はジオールとジカルボン酸またはジカルボン酸ジアルキルエステルとビスアリールカーボネートとのエステル交換反応が好ましく採用される。
【0071】
ジオール、ジカルボン酸又はその酸クロライドとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤及び溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間が好ましい。
【0072】
エステル交換反応では、不活性ガス存在下にジオールとジカルボン酸又はそのジエステルとビスアリールカーボネートを混合し、減圧下通常120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。しかしながら、重合温度が、350℃以上ではフェニルビニルエーテルやアセトアルデヒドが副生し易くなり、好ましくない。
【0073】
また、エステル交換反応では反応促進のために重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としてはアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又は重金属化合物を主成分として用い、必要に応じて含窒素塩基性化合物を従成分として用いても良い。
【0074】
アルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ビスフェノールAのナトリウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0075】
含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0076】
その他のエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウム、アルミニウムの塩が挙げられ、例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)チタンテトラブトキシド(IV)等が用いられる。
【0077】
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよく、これらの重合触媒の使用量はジオールとジカルボン酸の合計1モルに対して、10
−9〜10
−3モルの比率で用いられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。また、エステル交換反応ではヒドロキシ末端基を減少するために重縮合反応の後期又は終了後に電子吸引性の置換基を持ったジアリールカーボネートを加えても良い。更に、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
【0078】
また、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物については、一般的に、公知の失活剤の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、等のホスフィン類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となる。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなる。
【0079】
触媒失活後、樹脂中の低沸点化合物を133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
【0080】
本発明におけるポリエステルカーボネート樹脂は、そのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が、0.12〜0.55の範囲のものが好ましく、0.15〜0.45の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.12未満では成形品が脆くなり、0.55より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になる。
【0081】
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有してもよい。添加剤とし、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤を含む)、光拡散剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
【0082】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0083】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、好ましくはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
【0084】
熱可塑性樹脂組成物中のリン系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0085】
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物中100重量部に対して好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂組成物中に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0086】
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。
ブルーイング剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物中に対して好ましくは0.05〜1.5ppmであり、より好ましくは0.1〜1.2ppmである。
【0087】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明のフルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂組成物は、フルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂、脂肪族系エポキシ化合物および各種添加剤を任意の配合方法により配合することにより得ることができる。各成分は、その全部もしくは一部を、同時にあるいは別々に、例えばブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、押出機等の混合機で混合して、均質に分散させることが好ましい。
【0088】
更に、予めドライブレンドされた組成物を、加熱した押出機で溶融混練して均質化した後針金状に押出し、次いで所望の長さに切断して粒状化する方法を用いることもできる。
【0089】
<熱可塑性樹脂組成物の物性値>
本発明に使用する熱可塑性樹脂は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が130℃以上、200℃未満であることが好ましい。Tgが130℃未満では、熱可塑性樹脂組成物を用いて形成した光学部材の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが200℃以上の場合では溶融粘度が高くなり、成形体を形成する上での取扱いが困難となる。
【0090】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、該熱可塑性樹脂組成物より得られる厚さ0.1mmの成形板のヘイズが2%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、300℃、加重1.2kgf、10分間で押し出される樹脂の量が30g以上である事が好ましく、40g以上であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後の分子量保持率が95%以上であり、色相変化も全くないことが好ましい。より好ましくは、分子量保持率が97%以上である。
【0091】
<光学部材の製造方法>
本発明の光学部材は、本発明のフルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂組成物を例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、キャスティングして成形することができる。
(光学レンズ)
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる光学レンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度260〜350℃、金型温度90〜170℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度270〜320℃、金型温度100〜160℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が350℃より高い場合では、樹脂が分解着色し、230℃より小さい場合では、溶融粘度が高く成形できない。また金型温度が170℃より高い場合では、樹脂が硬化せず金型から成形片を取り出せない。一方、90℃未満では、成形時に金型内で樹脂が早く固まり成形片を得ることができない、もしくは、金型賦型を転写できない。
【0092】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。
【0093】
具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みの上限は、0.5mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましい。また、レンズの中心部の厚みの下限は、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。
また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。
また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
[実施例1〜7、比較例1〜9]
評価は下記の方法によった。
(評価方法)
(1)樹脂の比粘度:重合終了後に得られた樹脂を120℃で4時間乾燥し、該樹脂0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(η
sp)を求めた。
η
sp=(t
1−t
0)/t
0
ここでt
1:樹脂溶液の標線間通過時間、t
0:塩化メチレンの標線間通過時間である。
(2)共重合比:重合後の樹脂を日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。
(3)ガラス転移点(Tg):デュポン社製910型DSC により測定した。
(4)成形流動性 (溶融粘度(MVR)):東洋精機製作所製CAPIROGRAH1Dにより直径1mm、長さ10mmのノズルを用い、300℃、加重1.2kgf、10分間で押し出される樹脂の量にて溶融粘度を測定した。
(5)ヘイズ:厚さ1mmの成形板を日本電色工業(株)製 Haze Meter NDH2000を用いてヘイズを測定した。
(6)耐湿熱安定性 分子量保持率:厚さ1mmの成形片を85℃、85%RHの条件下で2000時間放置した後、下記記載の比粘度の変化から、比粘度保持率を分子量保持率として評価した。
【0095】
該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(η
sp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。該比粘度保持率(分子量保持率)を耐湿熱性の指標とした。
Δη
sp=(η
sp1/η
sp0)×100
※Δη
sp :比粘度保持率、η
sp0 :試験前の比粘度、η
sp1 :試験後の比粘度
(7)光学レンズの成形安定性:成形後の非球面レンズの充填不良、各成形不良、レンズの強度不足等を目視にて確認した。評価は、100ショット成形を行い、欠陥品となる確率が1%未満(◎)、1〜5%(○)、5〜20%(△)、20%以下(×)で分類した。
【0096】
充填不良は、樹脂が足りずレンズ形状を形成できていないものを充填不良と定義し、成形不良は銀条・気泡が1個のレンズに1箇所以上存在するもの、もしくは、添加剤のブリードアウトしたものとする。また、レンズの強度不足は、成形した際に金型よりレンズ部及び、スプルー・ランナー部が折れるなどの破損が生じ、取り出し出来ないものとする。
【0097】
(合成)
PC(1):ポリカーボネート
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21540重量部、48%水酸化ナトリウム水溶液4930重量部を入れ、エタノール溶液でのb値が3.0の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)3231重量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある)1949重量部およびハイドロサルファイト15重量部を溶解した後、塩化メチレン14530重量部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン2200重量部を60分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、クミルフェノール163.1重量部および48%水酸化ナトリウム水溶液705重量部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.9重量部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、BCFとBPAの比がモル比で50:50の比粘度が0.297、Tgが197℃である白色のポリマーを得た。
【0098】
PC(2)
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21540重量部、48%水酸化ナトリウム水溶液4930重量部を入れ、エタノール溶液でのb値が3.0の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)3231重量部、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン(以下“BPM”と略称することがある)2958重量部およびハイドロサルファイト15重量部を溶解した後、塩化メチレン14530重量部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン2200重量部を60分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、クミルフェノール163.1重量部および48%水酸化ナトリウム水溶液705重量部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.9重量部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、BCFとBPMの比がモル比で50:50の比粘度が0.297、Tgが156℃である白色のポリマーを得た。
【0099】
PC(3)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)1403.2重量部、BPA182.7重量部、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)878.0重量部、炭酸水素ナトリウム5.0×10
−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、窒素雰囲気101.3×10
3Paの下、215℃に加熱し、20分間撹拌した。完全溶解後、15分かけて20×10
3Paに調整し、215℃、×10
3Paの条件下で20分保持し、エステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで、昇温し、240℃、20.0×10
3Paで10分保持した。その後、10分かけて16.0×10
3Paに調整し、240℃、×10
3Paで70分保持した。その後、10分かけて13.3×10
3Paに調整し、240℃、13.3×10
3Paで10分保持した。さらに40分かけて133.3Pa以下とし、240℃、133.3Pa以下の条件下で10分攪拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出した。BPEFとBPAの比がモル比で80:20の比粘度が0.192、Tgが145℃である無色透明のペレットを得た。
【0100】
PEC(1):ポリエステルカーボネート
BPEF1403.2重量部、テレフタル酸ジメチル(以下“DMT”と省略することがある)155.4重量部、DPC548.4重量部、チタンテトラブトキシド13.6×10
−4重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気101.3×10
3Paの下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20×10
3Paに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて133.3Pa以下まで減圧し、250℃、133.3Pa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。その後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出した。BPEFとテレフタル酸の比がモル比で80:20の比粘度が0.201、Tgが150℃である無色透明のペレットを得た。
【0101】
(成形片)
ペレット化した樹脂組成物を、120℃にて8時間加熱乾燥した。その後、成形温度Tg+110℃、金型温度Tg−10℃にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて、幅2.5cm、長さ5cm、厚みがそれぞれ1mmの成形片を射出成形した。ヘイズと耐湿熱安定性の評価結果を表1に示す。
【0102】
(光学レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて、成形温度を使用した樹脂のTg+170℃、金型温度Tg−5℃で厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、径5mmの非球面レンズを射出成形した。光学レンズの成形安定性評価を表1に示す。
【0103】
(添加剤)
添加剤1:エポキシ化大豆油(エポキシ基の数4) 花王(株)製 カポックスS−6
添加剤2:エポキシ化亜麻仁油(エポキシ基の数6) ADEKA製 アデカサイザーO−180A
添加剤3:アルキルモノエステル、アルキルトリグリセリド 混合物 理研製リケマールSL−900
添加剤4:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
添加剤5:ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリジジルエーテル
添加剤6:トリメリット酸トリオクチル
添加剤7:ポリエーテルエステル樹脂 Eastman Chemical Company製 ECDEL9966
添加剤8:スチレン系オリゴマー 三井化学(株)製 F T R 2140
安定剤:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト
離型剤:グリセリンモノステアリレート
配合量に関して表1の単位は重量部である。
【0104】
[実施例1〜7及び比較例1〜9]
各種成分を表1に記載の量割合で予め均一ドライブレンドした後、テクノベル(株)製 KZ−W15−30MG 2軸押出機、テクノベル(株)製を用い、下記表1に記載の条件にて溶融し、ペレット化し、適宜成形品を作成し評価した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表1に示す実施例1〜7は、ヘイズ、耐湿熱安定性を保持したまま、成形流動性を向上する事ができ、光学レンズの成形性も良好であり、光学部材に有用に利用できる。一方、比較例1は、脂肪族系エポキシ化合物未添加であり、流動性に劣る為、薄肉なレンズを成形できない。比較例2は、添加量が少なく流動性に乏しく薄肉なレンズの成形ができない。又、比較例4は、添加剤がエポキシ基を有しないため耐湿熱安定性に劣る。比較例5は、脂環式エポキシ化合物であり、成形流動性に劣り、成形時の成形不良が多い。比較例6は、芳香族エポキシ化合物であり、成形流動性に劣る。比較例7は、成形流動性は向上しているが、成形時に添加剤が揮発し成形不良が多く、さらに、耐湿熱安定性に劣り、光学部材として使用する環境が限られ、汎用性に乏しい。比較例8,9は、添加剤の分解により成形性・耐湿熱性に劣る。比較例3は添加量が多く透明性を維持する事が出来ない為、光学部材に使用できない。
【0108】
[発明の効果]
本発明のフルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂組成物は、高度な透明性、成形流動性、成形安定性、及び耐湿熱安定性を有するので、従来射出成形困難であった薄肉光学部材の成形が可能となり、より薄物の光学部材を提供する事ができる。このフルオレン骨格を有する熱可塑性樹脂組成物は、携帯カメラ用等のカメラレンズ、ピックアップレンズマイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズなどのレンズ等に特に好適である。