特許第5973589号(P5973589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973589組み込まれたプラットフォームを備えた複合材料製のターボ機械のベーンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973589
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】組み込まれたプラットフォームを備えた複合材料製のターボ機械のベーンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20160809BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20160809BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20160809BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F02C7/00 D
   F01D5/28
   F01D9/02 101
   F01D9/04
   F02C7/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-543956(P2014-543956)
(86)(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公表番号】特表2015-500416(P2015-500416A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】FR2012052723
(87)【国際公開番号】WO2013079860
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】1103663
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512162432
【氏名又は名称】エラクレス
【氏名又は名称原語表記】HERAKLES
(73)【特許権者】
【識別番号】511130852
【氏名又は名称】スネクマ
【氏名又は名称原語表記】SNECMA
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】フルモン,エルリク
(72)【発明者】
【氏名】ニュネ,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】マソ,マックス
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−111038(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/146288(WO,A1)
【文献】 特開2003−148105(JP,A)
【文献】 特表2011−527400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 15/14
C04B 35/00
F01D 5/28, 9/02
F02C 7/00
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームに固定されたエーロフォイルを備え、複合材料製のターボ機械のベーンを製造する方法であって、以下のステップを備える方法。
‐多層織を用いて、製造されるべき前記ベーンの方向に対応する長さ方向を有し、かつ、織によって連結されている複数の糸の層を備えた織られた第一部分、織られた第二部分、及び織られた第三部分を厚み方向に含む、繊維の半加工品を形成するステップであって、前記第一部分は、前記第二部分と前記第三部分との間に配置され、その長さ方向の範囲の部分のみにおいて織によってそれらに連結されているステップ;
‐前記繊維の半加工品を用いて、前記第一部分の両側で、前記第一部分に連結されていない第二部分及び第三部分のセグメントを広げ、前記第一部分を成形して製造されるべき前記ベーンの前記エーロフォイルのための予備形状体の部分を形成し、前記第二部分及び前記第三部分の広げられたセグメントを成形して製造されるべき前記ベーンの前記内側のプラットフォーム及び前記外側のプラットフォームための予備形状体の部分を形成することによって、製造されるべき前記ベーンのための予備形状体を形成するステップ;及び
‐前記ベーンの予備形状体をマトリクスで密度を高めて、組み込まれた内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームを有する複合材料製のベーンを得るステップ。
【請求項2】
前記半加工品の前記第一部分は、前記半加工品の前記第一部分の長さ方向の範囲全体にわたって延びており、かつ、成形されて中空の前記エーロフォイルのための予備形状体の部分を形成するように前記半加工品の前記第一部分の長さ方向の端部において単に開放されている、隣接する2つの糸の層の間に内部の非連結領域を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一部分に連結されていない前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の前記セグメントは、前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の長さ方向の端部に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分は、長さ方向の端部において前記半加工品の前記第一部分に織によって連結され、前記半加工品の前記第一部分に連結されていない前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の前記セグメントが当該長さ方向の端部の間で延びている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エーロフォイルのための前記予備形状体の部分は、前記内側のプラットフォーム及び前記外側のプラットフォームのための前記予備形状体の部分の幅よりも小さい幅を有し、前記半加工品の第一部分の区域を介して、前記セグメントの、前記半加工品の残部との接続部分に沿って前記半加工品の幅全体にわたって、前記半加工品の第二部分及び前記第三部分の間で連結領域を残しつつ、前記半加工品の前記第一部分の余分な幅が切断されることによって取り除かれて前記エーロフォイルのための前記予備形状体の部分が形作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タービンノズル又はコンプレッサのディフューザのためのベーンを作るために、前記ベーンの予備形状体が、前記外側のプラットフォームのための前記予備形状体の部分を、その外側において、超えて延びている外側の延伸部分を備えて形成され、かつ、前記外側の延伸部分が、前記ベーンの予備形状体を形成しつつ、タービン又はコンプレッサのケーシングに取り付けるための取り付け部分のための予備形状体の部分を形成するように形作られている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
タービンノズル又はコンプレッサのディフューザのためのベーンを作るために、前記ベーンの予備形状体が、前記内側のプラットフォームのための前記予備形状体の部分を、その内側において、超えて延びている内側の延伸部分を備えて形成され、かつ、前記内側の延伸部分が、前記ベーンの予備形状体を形成しつつ、アタッチメント部分のための予備形状体の部分を形成するように形作られている、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械、特に航空機用のターボエンジン又は産業用タービンのための、タービン又はコンプレッサに関し、より詳細には、タービンノズル又はコンプレッサのディフューザに用いられ、内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームが組み込まれているターボ機械のベーンの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械の性能を向上させ、かつ、汚染物質の排出を減少させることにより、これまでよりも運転温度を高めることが期待されている。
【0003】
そこで、ターボ機械の熱くなる部分におけるエレメントに、セラミックマトリクスコンポジット(CMC)材料を用いることが提案されている。このような材料は、優れた熱構造特性、すなわち、構造エレメントを構成するのに適した機械的特性を、この特性が高温において維持されるという性能とともに有している。さらに、CMC材料は、ターボ機械の熱くなる部分のエレメントに従来用いられている金属材料の密度よりもずっと低い密度を有する。
【0004】
例えば、文献WO 2010/061140、WO 2010/116066、及びWO 2011/080443には、内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームが組み込まれているCMC材料製の、ターボ機械の回転輪のブレードを作る方法が記載されている。特に、文献WO 2010/146288において、タービンノズルを作るためにCMC材料を使用することも提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームに固定されたエーロフォイル(une pale)を備えた、複合材料製のターボ機械のベーンを作る単純化された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、以下のステップを備えた方法によって達成される。
‐多層織を用いて、製造されるべきベーンの方向に対応する長さ方向を有し、かつ、織によって連結されている複数の糸の層を備えた織られた第一部分、織られた第二部分、及び織られた第三部分を厚み方向に含む、繊維の半加工品を形成するステップであって、前記第一部分は、前記第二部分と前記第三部分との間に配置され、その長さ方向の範囲(dimension)の部分のみにおいて織によってそれらに連結されているステップ;
‐前記繊維の半加工品を用いて、前記第一部分の両側で、前記第一部分に連結されていない第二部分及び第三部分のセグメントを広げ、前記第一部分を成形して製造されるべき前記ベーンの前記エーロフォイルのための予備形状体の部分を形成し、前記第二部分及び前記第三部分の広げられたセグメントを成形して製造されるべき前記ベーンの前記内側のプラットフォーム及び前記外側のプラットフォームのための予備形状体の部分を形成することによって、製造されるべき前記ベーンのための予備形状体を形成するステップ;及び
‐前記ベーンの予備形状体をマトリクスで密度を高めて、組み込まれた内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームを有する複合材料製のベーンを得るステップ。
【0007】
一の実施形態において、前記半加工品の前記第一部分は、前記半加工品の前記第一部分の長さ方向の範囲全体にわたって延びており、かつ、成形されて中空の前記エーロフォイルのための予備形状体の部分を形成するように前記半加工品の前記第一部分の長さ方向の端部において単に開放されている、隣接する2つの糸の層の間に内部の非連結領域を有する。
【0008】
一の特定の実施形態において、前記第一部分に連結されていない前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の前記セグメントは、前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の長さ方向の端部に配置されている。
【0009】
別の特定の実施形態において、前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分は、長さ方向の端部において前記半加工品の前記第一部分に織によって連結され、前記半加工品の前記第一部分に連結されていない前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の前記セグメントが当該長さ方向の端部の間で延びている。
【0010】
本方法の一の特徴によれば、前記エーロフォイルのための前記予備形状体の部分は、前記内側のプラットフォーム及び前記外側のプラットフォームのための前記予備形状体の部分の幅よりも小さい幅を有し、前記半加工品の前記第一部分の区域を介して、前記セグメントの、前記半加工品の残部との接続部分に沿って前記半加工品の幅全体にわたって、前記半加工品の前記第二部分及び前記第三部分の間で連結領域を残しつつ、前記半加工品の前記第一部分の余分な幅が切断されることによって取り除かれて前記エーロフォイルのための前記予備形状体の部分が形作られる。
【0011】
本方法の別の特徴によれば、タービンノズル又はコンプレッサのディフューザのためのベーンを作るために、前記ベーンの予備形状体が、前記外側のプラットフォームのための前記予備形状体の部分を、その外側において、超えて延びている外側の延伸部分を備えて形成され、かつ、前記外側の延伸部分が、前記ベーンの予備形状体を形成しつつ、タービン又はコンプレッサのケーシングに取り付けるための取り付け部分(une partie de montage)のための予備形状体の部分を形成するように形作られている。
【0012】
本方法の別の特徴によれば、タービンノズル又はコンプレッサのディフューザのためのベーンを作るために、前記ベーンの予備形状体が、前記内側のプラットフォームのための前記予備形状体の部分を、その内側において、超えて延びている内側の延伸部分を備えて形成され、かつ、前記内側の延伸部分が、前記ベーンの予備形状体を形成しつつ、アタッチメント部分(une partie d'accrochage)のための予備形状体の部分を形成するように形作られている。
【0013】
本発明は、添付の図面を参照しつつ非限定的な記載によってなされる以下の説明を読めば、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ターボ機械のベーンの模式的な斜視図である。
図2図2は、図1に示すタイプのベーン用の繊維の予備形状体を作るための織られた繊維の半加工品(une ebauche fibreuse)の模式的な平面図である。
図3図3は、図2の半加工品の側面図である。
図4図4は、図2のIV-IV面に沿った模式的な断面図である。
図5図5は、図2のV-V面に沿って断面視した図2の半加工品の織の面を拡大した模式的な図である。
図6図6は、図2のVI-VI面に沿って断面視した図2の半加工品の織の面を拡大した模式的な図である。
図7図7は、図2図6の繊維の半加工品からベーンの予備形状体を作るステップを示す模式的な図である。
図8図8は、図2図6の繊維の半加工品からベーンの予備形状体を作るステップを示す模式的な図である。
図9図9は、図2図6の繊維の半加工品からベーンの予備形状体を作るステップを示す模式的な図である。
図10図10は、図1に示すタイプのベーン用の繊維の予備形状体を作るための織られた繊維の半加工品の別の形態の模式的な平面図である。
図11図11は、図10に示す半加工品の側面図である。
図12図10のXII-XII面に沿った模式的な断面図である。
図13図13は、図10図12の繊維の半加工品からベーンの予備形状体を作るためのステップを示す模式的な図である。
図14図14は、図10図12の繊維の半加工品からベーンの予備形状体を作るためのステップを示す模式的な図である。
図15図15は、図10図12の繊維の半加工品からベーンの予備形状体を作るためのステップを示す模式的な図である。
図16図16は、図1のベーンの変形例を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、例えば、航空機用のターボエンジンにおけるタービンノズルの固定ベーンである、ベーン10のとても模式的な図である。ベーン10は、エーロフォイル12と、内側のプラットフォーム14及び外側のプラットフォーム16とを備えている。
【0016】
明細書の全体にわたって、“内側”及び“外側”という用語は、ターボ機械の軸線に対する半径方向における位置に基づいて使用される。
【0017】
プラットフォーム14の外側の面14b及びプラットフォーム16の内側の面16aは、タービンのケーシングにベーン10が取り付けられたときに、タービンを通過するガス流のための通路を形成するためのものである。
【0018】
エーロフォイル12は、プラットフォーム14とプラットフォーム16との間で延びそれらに固定されている。エーロフォイル12は、エーロフォイル12の端部において、プラットフォーム14の内側から突出し、かつ、プラットフォーム16の外側から突出している。図示の例において、エーロフォイル12は、中空であり、エーロフォイルに沿って延び両端で開放されている、長さ方向に延びる内部通路12aを有する。良く知られた態様において、通路12aは、特に冷却された空気の流れを通過させる働きをする。
【0019】
図示の例において、プラットフォーム14及びプラットフォーム16は、エーロフォイル12の長さ方向に垂直な平面に対して0度ではない角度をなす全体的な方向において上流側の端と下流側の端との間で延びている。
【0020】
明細書の全体にわたって、“上流側”及び“下流側”という用語は、ターボ機械における流体が流れる方向に基づいて使用される。
【0021】
ベーン10は複合材料でできている。ベーンを製造する方法は、ベーンの形状に対応する形状の繊維の予備形状体を形成するステップと、その後に予備形状体の密度をマトリクスで高めるステップと、を備える。
【0022】
図2は繊維の半加工品101の平面図であり、繊維の半加工品101から、ベーン10の繊維の予備形状体が形作られる。
【0023】
半加工品101は、三次元(3D)織又は多層織によって織られたストリップ(une bande)100から得られ、ストリップ100は製造されるべきベーンの長さ方向に対応するX方向において全体的に延びている。例えば、X方向に沿って延びているたて糸でこの織がなされているが、この方向沿って延びているよこ糸で織をなすこともできることが理解される。X方向において、複数の半加工品101が次々と織られていてもよい。平行な複数の列をなした複数の半加工品を同時に織ることもできる。
【0024】
図2図6の実施形態において、半加工品101は、その厚さ方向にわたって、第一部分102、第二部分104、及び第三部分106を備えている。部分102は、部分104と部分106との間に配置され、かつ、部分102と部分104との間の非連結領域103a及び非連結領域105a、並びに、部分102と部分106との間の非連結領域103b及び非連結領域105bを除いて、部分104及び部分106に3D織によって連結されている。非連結領域103a及び非連結領域103bは、半加工品101の一方の端部101aから非連結領域の端部103c及び非連結領域の端部103dまで、半加工品101の幅(よこ糸の方向における範囲(dimension en sens trame))全体にわたって延びている。非連結領域の端部103c及び非連結領域の端部103dは、内側のプラットフォーム14の配置に適合するように、よこ糸の方向に対して0度でない角度をなす方向において、半加工品101の長さ方向の端101cと長さ方向の端101dとの間で延びている。非連結領域105a及び非連結領域105bは、半加工品101の他方の端部101bから非連結領域の端部105c及び非連結領域の端部105dまで、半加工品101の幅全体にわたって延びている。非連結領域の端部105c及び非連結領域の端部105dは、外側のプラットフォーム16の配置に適合するように、よこ糸の方向に対して0度でない角度をなす方向において、半加工品101の長さ方向の端101cと長さ方向の端101dとの間で延びている。
【0025】
加えて、非連結領域102aが、半加工品101の長さ全体にわたって、部分102の実質的に中央で、かつ、長さ方向の端101c及び長さ方向の端101dから所定の距離だけ離れて、境界102bと境界102cとの間で、形成されている。非連結領域102aは、製造されるべきベーンの中空のエーロフォイルの内部に内部通路を形成させるためのものである。
【0026】
良く知られた態様では、非連結領域は、当該非連結領域の両側に位置するたて糸の層のみを連結させるように当該非連結領域にわたってよこ糸を通さないことによって、2つのたて糸の層の間に配置されている。
【0027】
図5及び図6の面は、インターロック織と、非連結領域102a、非連結領域105a、及び非連結領域105bを有する3D織の例を示し、非連結領域103a及び非連結領域103bは、非連結領域105a及び非連結領域105bと同様にして得られている。図5及び図6において、各非連結領域は、破線によって示されている。部分102は、非連結領域102aを除いて3D織によって連結されている、たて糸の複数の層(図示の例では6つ)を備えている。部分104及び部分106のそれぞれは、3D織によって連結されているたて糸の複数の層(図示の例では3つ)を有する。非連結領域102aの外側では、非連結領域の端部103cと非連結領域の端部105cとの間、かつ、非連結領域の端部103dと非連結領域の端部105dとの間で、部分102、部分104、及び部分106におけるたて糸の複数の層が図示の例ではすべて連結されている。
【0028】
織がなされた後で、部分102に連結されていない、部分104及び部分106の、セグメント104a、セグメント104b、セグメント106a、及びセグメント106bが図7に示すように広げられて、プラットフォーム14及びプラットフォーム16のための予備形状体の部分が形成されている。セグメント104a及びセグメント104bは、非連結領域103a及び非連結領域105aに隣接し、セグメント106a及びセグメント106bは、非連結領域103b及び非連結領域105bに隣接している。非連結領域の端部において広げられている。
【0029】
その後、図8の点線に沿って切断を行い、第一に、広げられたセグメント104a及びセグメント106aの内側及び広げられたセグメント104b及びセグメント106bの外側に位置する部分102のセグメントにおいて、余分な区域を取り除き、かつ、第二に、広げられたセグメントの間で延びている半加工品101のセグメントにおいて、製造されるべきベーンのエーロフォイルの予備形状体の部分を形成するために有用な領域のみを残すように余分な区域を取り除く。好ましくは、織られた連結領域が、セグメント104a、セグメント104b、セグメント106a、及びセグメント106bと半加工品の残部との間の接続部分に沿って延びている領域における半加工品101の幅全体にわたって、部分102、部分104、及び部分106の間に残される。このようにして、ビード(cordon)104b、ビード106c、ビード104d、及びビード106dが形成される。このことは、セグメント104aとセグメント106aとの間の連結及びセグメント104bとセグメント106bとの間の連結の連続性を確保するのに役立つ。セグメント104a及びセグメント106aの内側と、セグメント104b及びセグメント106bの外側とにおける部分102の余分な区域は切断されることによって取り除かれてもよい。
【0030】
半加工品101を織りつつ、切断されることによって事後的に除かれる区域の少なくとも一部において3D織が省略されてもよいことに留意する。
【0031】
製造されるべきベーンのための繊維の予備形状体は、所望の中空のエーロフォイルの輪郭及びプラットフォーム用の所望の形状を得るための変形を施す成形設備を用いた成形によって、作られる。このようにして、中空のエーロフォイルのための予備形状体の部分112、内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームのための予備形状体の部分114及び部分116を有する、予備形状体110(図9)が得られる。中空のエーロフォイルのための予備形状体の部分112における内部通路112aは、非連結領域102aに設備のエレメントを挿入することによって形成される。
【0032】
図1に示すような、CMC製の中空のベーンは、下記のように製造されてもよい。
【0033】
繊維のストリップ100が3次元織によって織られる。ストリップは、例えば、たて糸の方向に延びており、図2に示すような非連結領域を含んでいる、複数の繊維の半加工品101を備えている。この織は、特に炭化ケイ素(SiC)に基づく糸、例えば、日系のサプライヤーである日本カーボンによって"Nicalon"という名称で供給されている糸である、セラミックの糸を用いてなされてもよい。他のセラミックの糸を使用でき、特に酸化物/酸化物のタイプの(繊維強化の繊維とマトリクスの両方が耐熱性酸化物でできている)CMC材料のための、アルミナAl23に基づく糸のような、耐熱性酸化物の糸を使用できる。炭素繊維強化を有するCMC材料のための炭素繊維を使用することもできる。
【0034】
既知の態様において、繊維のストリップは、繊維に存在するサイズ(l'ensimage)を取り除き、かつ、繊維の表面に存在する酸化物を除去するように処理されてもよい。
【0035】
また既知の態様において、その後、脆化を緩和する中間相の薄層の被膜が、化学気相浸潤法CVI("Chemical Vapor Infiltration")によって繊維のストリップの繊維に形成されていてもよい。例えば、中間相の材料は、熱分解炭素PyC、窒化ホウ素BN、又はホウ素がドープされた炭素BCである。例えば、この層は、繊維の半加工品における変形に関する性能を維持するために、この層の厚みが10ナノメートル(nm)〜100nmの範囲に収まるように形成されていてもよい。
【0036】
その後、繊維のストリップに、典型的には炭素の前駆物質である樹脂又はセラミックの前駆物質である樹脂であり、場合によっては溶媒中で希釈されている、補強用組成物を含浸させる。個々の繊維の半加工品は、乾燥の後に、切り取られる。各半加工品は、(図7図9に示すように)形作られ、エーロフォイルの予備形状体の部分と、内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームの予備形状体の部分とを形作る目的で設備に置かれる。
【0037】
その後、樹脂が硬化され、その後、成形設備から予備形状体を取り出した後に樹脂が熱分解されて、熱分解による残留物によって補強されたベーンの予備形状体が得られる。工具の補助なしで予備形状体の形状を維持しつつ予備形状体を扱うことができるように、熱分解による残留物が予備形状体の繊維に十分に結合されるように、使用される熱分解性の樹脂の量が十分でありかつ過剰でないように定められている。
【0038】
例えば、PyC、BN、又はBCでできた、脆化を緩和する第二の中間相の被膜の層がCVIによって形成されてもよい。補強の前に一方が形成され、補強の後に他方が形成される2つの層で中間相の被膜を形成する方法は、文献EP 2 154 119に記載されている。
【0039】
補強された予備形状体は、その後、例えばCVIによってセラミックのマトリクスで密度が高められる。マトリクスは、SiCでできていてもよく、熱分解炭素PyC若しくは炭化ホウ素B4C、又は、特には文献US 5 246 756及びUS 5 965 266に記載されているようなSi−B−C三成分系でできているマトリクス相を備えた、自己修復性のマトリクスであってもよい。他のタイプのセラミックのマトリクス、特には、例えばアルミナである、酸化物/酸化物タイプのCMC材料のための、耐熱性酸化物のマトリクスの使用も考えることができる。
【0040】
密度を高める工程は、好ましくは、プラットフォーム14及びプラットフォーム16のための所望の最終形状を得るために、場合によってはエーロフォイル12のための所望の輪郭を得るために、特に、ビード104c、ビード106c、ビード104d、及びビード106dによって生じた隆起部分(les nervures)を除くようにベーンを所望の寸法に機械加工するステップで分離された2つのステップでなされる。
【0041】
図1に示すタイプのベーンのための繊維の予備形状体の別の実施形態を図10〜15を参照して以下に説明する。
【0042】
ベーンの繊維の予備形状体を形成するのに適した半加工品201は、図2のストリップ100と同じように3D織を用いて織られたストリップから得られる。
【0043】
半加工品201は、その厚みにわたって、第一部分202、第二部分204、及び第三部分206を備えている。部分202は、部分204と部分206との間に配置されており、かつ、部分202と部分204との間の非連結領域203及び部分202と部分206との間の非連結領域205を除いて、3D織によって部分204及び部分206に連結されている。非連結領域203及び非連結領域205は、半加工品201の幅全体にわたって延び、半加工品201の反対側の、端部201a及び端部201bのそれぞれから所定の距離だけ離れて設けられた、非連結領域の端部203aと非連結領域の端部203bとの間、及び、非連結領域の端部205aと非連結領域の端部205bとの間で延びている。非連結領域の端部は、半加工品201の長さ方向の端201cと長さ方向の端201dとの間で、製造されるべきベーンの内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームの配置に適合するように、よこ糸方向に対し0度でない角度を形成する方向に延びている。
【0044】
加えて、非連結領域202aは、半加工品201の長さ全体にわたって部分202の実質的に中央に形成され、かつ、境界202bと境界202cとの間で長さ方向の端201cと長さ方向の端201dから所定の距離だけ離れて形成されている。非連結領域202aは、製造されるべきベーンの中空のエーロフォイルに内部通路を形成するための領域である。
【0045】
織がなされた後で、非連結領域203に隣接し、かつ、非連結領域の端部203a及び非連結領域の端部203bから延びている部分204のセグメント204a及びセグメント204bが図13に示すように広げられる。同様に、非連結領域205に隣接し、かつ、非連結領域の端部205a及び非連結領域の端部205bから延びている部分206のセグメント206a及びセグメント206bが図13に示すように広げられる。非接続領域の端部で広げられている。
【0046】
セグメント204a及びセグメント206a、セグメント204b及びセグメント206bは、それぞれ、製造されるべきベーンの内側のプラットフォーム及び外側のプラットフォームのための予備形状体の部分の形成に使用するためのものである。セグメントの長さは、この目的のために必要とされる寸法に定められていてもよく、部分204及び部分206の余分な区域は、図10及び図11に点線で示された切断線に沿って切除されることによってその中央領域から取り除かれる。
【0047】
その後、図14に示す点線に沿って切断がなされ、第一に、広げられたセグメント204a及びセグメント206aの内側に位置する半加工品201のセグメント、並びに、広げられたセグメント204b及びセグメント206bの外側に位置するセグメントから、余分な区域を取り除き、かつ、第二に、広げられたセグメントの間で延びている部分202のセグメントから、製造されるべきベーンのエーロフォイルのための予備形状体の部分を形成するために有用な残存部分のみを残すように余分な区域を取り除く。また、広げられたセグメントと半加工品の残部との間の接続部分に沿って延びている領域において、半加工品201の幅全体にわたって、部分202、部分204、及び部分206の間に、織られた連結領域が残されていることが好ましい。これにより、ビード204c、ビード206c、ビード204d、及びビード206dが形成される。
【0048】
半加工品201を織りつつ、切断によって取り除かれた区域の少なくとも一部において、3D織を省略することができるということに留意する。
【0049】
その後、製造されるべきベーンのための繊維の予備形状体が、中空のエーロフォイルのための所望の輪郭及びプラットフォームのための所望の形状を得るための変形を付与する成形設備を用いた成形によって形成される。このようにして、内部通路212aを有する中空のエーロフォイルの予備形状体の部分212と、内側のプラットフォームの予備形状体の部分214及び外側のプラットフォームの予備形状体の部分216とを備えた、予備形状体210が得られる(図15)。
【0050】
図15の予備形状体210のような予備形状体によって構成された、繊維強化を有するCMCの中空のベーンが、上述した方法と同じような方法で製造されてもよい。
【0051】
図16は、図1のベーン10の変形例において、タービンノズルのベーン30の外側部分を高度に模式化した図である。
【0052】
ベーン30は、内側のプラットフォーム(図示省略)及び外側のプラットフォーム36に固定された中空のエーロフォイル32を有する。ベーン30は、外側のプラットフォーム36の外側でエーロフォイル32に連続して形成されている、上流側のフック18及び下流側のフック18を含む点で、図1のベーン10と異なっている。
【0053】
この目的で、ベーンの繊維の予備形状体を作るとき、エーロフォイルの予備形状体を形成する繊維の半加工品の部分が外側のプラットフォームの位置を超えた外側に延伸される。この延伸部分は、フック18に対応する予備形状体の部分が形成されるように、切断され、かつ、変形されることによって形作られる。
【0054】
フック18は、タービンのケーシングにベーンを取り付けるための部分を構成する。
【0055】
内側のプラットフォームの位置を超えて内側へエーロフォイルの予備形状体を形成する繊維の半加工品の部分を延伸させることによって、ベーンの内部で同様の配置が行われてもよい。この延伸部分は、アッタッチメント部分に対応する予備形状体の部分を形成するように切断され、かつ、変形されることによって形作られる。このようなアタッチメント部分は、内側のケーシングとの接続又はアブレイダブル被膜を持つリングの支持のために用いられてもよい。
【0056】
上述の記載は、CMC材料製のタービンノズルのベーンの製造に関する。また、本発明は、コンプレッサのディフューザのためのベーンにも適用できる。このようなベーンには、使用時に受ける温度がより低い場合、CMC材料を用いる代わりに、ポリマーのマトリクスとともに、例えば炭素繊維又はガラス繊維などの繊維を用いてできた有機マトリクスコンポジット(OMC)材料を用いることができる。
【0057】
このような事情のもと、複数の繊維のストリップの一つのセットが織られた後、個々の半加工品が、上述のように切り取られて成形設備を用いて成形されると、その結果もたらされるベーンの予備形状体のぞれぞれは、成形設備に保持され、インジェクション又はインフュージョンによって樹脂が含浸される。その樹脂を硬化させるための熱処理がなされてベーンの予備形状体が得られる。樹脂を含浸させ、樹脂を硬化させる、複数の連続的なサイクルを行うことが可能である。最終的な機械加工が選択的に行われてもよい。補強する目的及び密度を高める目的で用いられる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、又はポリイミド樹脂などの、ポリマーのマトリクスの前駆物質である樹脂である。
【0058】
加えて、この説明は、中空のエーロフォイルを有するベーンの製造に関するものであるが、説明した方法は、中実のエーロフォイルを有するベーンの製造にも適している。この場合、繊維の半加工品の中央部分は、非連結領域を含まないベーンの予備形状体を形成するためのものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16