(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号:19に記載されたヌクレオチド配列、または配列番号:19に記載されたヌクレオチド配列と90%を超える配列相同性を有するその種ホモログによって表されるfhaC遺伝子中に突然変異を含み、該突然変異の結果、弱毒化したPasteurella multocida。
該突然変異の結果、突然変異した遺伝子によってコードされた遺伝子産物の発現が減少するあるいは不活性遺伝子産物が発現される請求項1に記載の弱毒化Pasteurella multocida。
【実施例】
【0068】
実施例1
タグド−トランスポゾン・P. multocida突然変異体のライブラリーの構築
タグド−トランスポゾン突然変異体のライブラリーは、親ベクターpLOF/Km[Herreroら, J. Bacteriol., 172: 6557-67 (1990)]中に構築し、これはP. multocidaで機能性かつランダムであることが以前に示されている[Leeら, Vet. Microbiol., 50: 143-8(1996)]。プラスミドpLOF/Kmはスーサイド・ベクターpGP704の改変として構築し、それはTacプロモーター制御下のトランスポザーゼ遺伝子ならびにカナマイシン耐性をコードするミニ−Tn10トランスポーザブル・エレメントを含んでいた。プラスミドpTEF−1は半−ランダム[NK]
35配列を含む配列タグを受容するようにpLOF/Kmを改変することによって以下に記載するごとく構築した。
【0069】
プラスミドpLOF/Kmをまず改変してマルチプルクローニング領域中のユニークKpnI制限部位を除去し、ついでミニ−Tn10領域中に新たなKpnI部位を導入した。そのプラスミドをKpnIで消化し、生じた突出末端を製造業者が指示するプロトコールに従ってクレノウ・ポリメラーゼで埋めた。本明細書中に記載した制限消化および連結は、製造業者が指示するプロトコールに従って行った(Gibco BRL, Gaithersburg, MD and Boehringer Mannheim, Indianapolis,IN)。平滑末端生成物は自己連結して、pLOF/Km--KpnIと命名したプラスミドを生成し、これを増幅用のイー・コリ(E.coli)DH5α:λpirに形質転換した。イー・コリDH5α:(λpirφ80dlacZ△M15,recA1,endA1,gyrA96,thi−1,hsdR17(r
k-, m
k supE44, relA1, deoR, △(lacZYA-argF)U169を、LB(Luria-Bertani)培地中、37℃にて増殖させた。プラスミドはQIAGEN Inc. (Santa Clarita, CA) からのQIAGEN SpinPrepsを用いて調製し、ミニ−Tn10トランスポーザブル・エレメント内のユニーク部位を切断するSfiIで消化した。SfiI−KpnI−SfiIアダプターは、オリゴヌクレオチドTEF1(配列番号:86)およびTEF3(配列番号:87)をアニーリングさせ、得られた二本鎖アダプターをSfiI部位に連結させてプラスミドpTEF−1を作製することによって調製した。オリゴヌクレオチドTEF1およびTEF3(ならびに本明細書中に記載する全ての他のオリゴヌクレオチド)は、Genosys Biotechnologies(The Woodlands, TX)によって合成した。
【0070】
【化1】
【0071】
pTEF−1のKpnI部位へ挿入するためのユニーク配列タグは以下の通り調製した。250μMの各dNTP、1.5mMのMg(OAc)
2、テンプレートDNAとしての100ピコモルの各プライマーTEF14(配列番号:88)およびTEF15(配列番号:89)、1ngのTEF26(配列番号:90)ならびに2.5単位の組換えTth DNAポリメラーゼXLを含む条件下で、GeneAmp XL PCRキット(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてPCRを行って二本鎖DNAタグを作製した。
【0072】
【化2】
【0073】
反応条件は、95℃にて1分間の初期インキュベートにつづく、95℃にて30秒間、45℃にて45秒間、ついで72℃にて15秒間の30サイクルにつづく、72℃にて2分間の最終インキュベートを含む。PCR産物をKpnIで消化し、製造業者の指示するプロトコールに従ってQIAGEN Nucleotide Removal Kit(QIAGEN, Inc., Chatsworth, GA)を用いて精製した。ユニークタグ配列を、標準的な手法を用いて予めKpnIで消化し、子ウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim)で脱リン酸化した線状pTEF−1のミニ−Tn10エレメントに連結した。得られたプラスミド・ライブラリーをイー・コリDH5α:λpirに形質転換した。ハイブリダイゼーションおよび検出を以下の通り行いつつ、DIGの使用者案内書(Boehringer−Mannheim)に従ってコロニーブロット分析を行った。
【0074】
ハイブリダイゼーションは、Genius Non-Radioactive User's Guide(Boehringer Mannheim Biochemicals)、DIG−PCR labelingkit (Boehringer Mannheim Biochemicals)用製品シート、およびCSPD(Boehringer Mannheim Biochemicals)用製品シートに従って本質的に行った。プローブの調製ついては、Amplitaq PCR緩衝液(PE Applied Biosystems)、200μMのdNTP、140ピコモルの各プライマーTEF5(配列番号:9)およびTEF6(配列番号:92)、2mMのMgCl
2、2.5単位のAmplitaq(PEApplied Biosystems)および1ngのプラスミドDNAを用いて、100μlの一次PCR反応を設定した。
【0075】
【化3】
【0076】
サイクル条件は、95℃にて2分間の初期インキュベートにつづく、95℃にて30秒間、50℃にて45秒間、72℃にて15秒間の35サイクルにつづく72℃にて3分間の最終インキュベートを含んでいた。増幅産物を2%−3:1 NuSieve GTG(FMC BioProducts, Rockland, ME, USA):アガロースゲル上の電気泳動を用いて分離し、109bpを切除して精製した。ゲル抽出はQIAGEN Gel Extractionキット(QIAGEN)を用いて行った。約15ngの一次産物をDIG PCRキット、50ピコモルの各プライマーTEF24およびTEF25およびDIG Probe Synthesis Mixと2mMのdNTP保存溶液の1:1混合物を用いる50μlのPCR反応中で標識した。
【0077】
【化4】
【0078】
PCR反応は、95℃にて4分間の初期インキュベートにつづく、95℃にて30秒間、50℃にて45秒間、72℃にて15秒間の25サイクル、ならびに72℃にて3分間の最終インキュベートを含んでいた。標識したPCR産物を90μlの合計反応体積中でHindIIIで消化し、2%−3:1 NuSieve GTG(FMC BioProducts):アガロースゲルを用いるコンスタント・プライマーアームから精製した。標識した可変タグを含有する領域を切除し、全ゲルスライスを10mlのDIG EasyHyb中、95℃にて10分間溶解および変性させた。
【0079】
ドットブロットは、Hybond
R−N
+膜(Amersham−Pharmacia Biotech)を用いて調製した。各タグ用の標的DNAは、ほぼ30ngのPCR産物を用いて96ウェルプレート中で調製した。等容量の0.1N NaOHを添加して試料を変性させ、各試料をSchleicher and Schuell(Keene, NH, USA)からのManifold I
TM Dot−Blot Apparatusを用いて最小限の真空で膜に適用した。各ウェルを150μlの中和溶液(0.5M トリス/3M NaCl、pH7.5)および150μlの2×SSCで洗浄した。膜をStratalinker(Stratagene, La Jolla, CA, USA)中でUV−架橋し、20mlのDIG EasyHyb Buffer中、42℃にて1時間プレハイブリダイズさせた。変性したプローブを添加し、ハイブリダイゼーションを42℃にて一晩行った。膜を0.1%SDSを含有する2×SSCで各洗浄につき5分間2回洗浄した。標準Genius Detectionプロトコール(Genius Manual)を用いて進行する前に、2の高ストリンジェンシー洗浄を0.1%のSDSを含有する予め加温した50mlの0.1×SSC緩衝液中、68℃にて15分間行った。
【0080】
安全性、低コスト、使用し易さ、および危険な材料を減少させるために、非−放射性検出系を用いることが望ましい。以前に記載された同様な手法[Meiら, Mol. Microbiol. 26: 399-407 (1997)]を用いる初期実験においては、ネガティブ対照において許容できないバックグラウンド・レベルのハイブリダイゼーションが得られた。バックグラウンドを低下させるために、タグの長さを30bp増加させて合計70とし、増幅プライマーを長くして可変領域を挟む全ての配列を含め、低濃度のdig−dUTPを用い、配列タグ領域を挟む保存配列をゲル精製によって取り出した。最も重要なことは、PCRを用いて、トランスポゾンそれ自体からのバックグラウンド・ハイブリダイゼーションを検出した後にタグド・トランスポゾンを含有する全プラスミドよりもむしろ、ドット・ブロットにおける標的DNAとして[NK]
35配列タグを作製した。これらの改変を用いて、バックグラウンドを排除し、化学ルミネセンス/非放射性スクリーニングをより効果的とした。
【0081】
PCR生成配列タグとpTEF−1の連結から生じたほぼ400の異なる形質転換体をコロニーブロットによってスクリーニングし、さらなる使用のために96の最も強いハイブリダイズ・コロニーをマイクロタイター・プレートに結合させた。二重のタグの可能性は非常に低いが、マスタータグのプレートの半分を他のものに対してプローブして、タグが二重になっていないことを確認した。これらのタグを含有するプラスミドを精製して、イー・コリS17-1:λpir(pir, recA,thi,pro,hsd,(r−m+),RP4−2,(Tc::Mu),[Tm::Tn7],[TmpR],[SmR])に形質転換し、その形質転換細菌をLB培地中、37℃にて増殖させた。各96のタグド・プラスミドpTEF−1を含有するイー・コリS17−1:λpir形質転換体を接合交配に用いて、P. multocidaのトランスポゾン突然変異体を作製した。P. multocida株TF5は、ウシ臨床単離株である、UC6731由来の自然発生ナリジキシン酸耐性突然変異体である。P. multocidaは、プレート上で増殖させる場合には、5%CO
2下、ブレインハート浸出液(BHI)培地(Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)上、37℃にて増殖させた。交配は各イー・コリS17−1:λpir/pTEF1:[NK]
35クローンおよびTF5株を後期対数増加期まで増殖させることによって設定した。各タグド−pTEF−1クローンにつき50μlの培養液を200μlのTF5培地と混合し、100mMのIPTGおよび10mMのMgSO
4を含有するBHIプレート上に予め置いておいた0.22 TM フィルターに50μlの各交配混合物をスポットした。5%CO
2下、37℃にて一晩インキュベートした後に、各フィルターを3mlのPBSに入れて交配混合物を洗い取り、各25μlをBHIN
50K
100プレートに平板した。選択的一晩増殖後に、コロニーを200μlのBHIN
50K
50へのトゥースピック移植(toothpick transfer)によってマイクロタイター・プレートに合して、マイクロタイター・プレート中の各ウェルが同じ配列タグを有するトランスポゾン突然変異体を常に含むことを確かめた。一晩増殖後に、50μlの75%グリセリンを各ウェルに添加し、プレートを−80℃にて凍結保存した。
【0082】
トランスポゾン突然変異体をマイクロタイター・プレートに移すことによって19のプールを合して、そのウェルに対して適当なタグを有するトランスポゾン突然変異体を各ウェルが含んでいたことを確かめた。他言すれば、これらの突然変異体内のトランスポゾンの位置は異なり得るが、各マイクロタイター・プレート中の特定のウェルは同一配列タグを有するトランスポゾン突然変異体を常に含んでいた。
【0083】
実施例2
弱毒化P. multocida突然変異体のげっ歯類スクリーニング
敗血症のげっ歯類モデルを用いて、Pasteurella multocidaのトランスポゾン突然変異体の19のプールをスクリーニングした。プールしたP. multocida・トランスポゾン突然変異体の凍結プレートを−80℃保存から取り出し、各ウェルからの10μlを50μg/mlのナリジキシン酸(Sigma)および50μl/mlのカナマイシン(Sigma)と共に200μlのブレインハート浸出液(DIFCO)(BHIN
50K
50)を含有する新たな96ウェル丸底プレート(CorningCostar, Cambridge, MA, USA)に移すことによって二次培養した。プレートを振盪せずに5%CO
2下、37℃にて一晩インキュベートした。各ウェルからの10μlをウェル当り100μlのBHIを含有する新たな平底96−ウェルプレート(Corning Costar)に移し、ほぼ150rpmで振盪しつつ37℃にてインキュベートすることによって一晩プレートを二次培養した。マイクロタイター・プレートリーダーを用いてOD
540をモニターした。ほぼ0.2ないし0.25のOD
540で、各プレートをプールして、マイクロタイター・プレートの各ウェルからの100μlを合することによって「投入プール」を形成した。その培養物をBHI中で適当に希釈してほぼ10
4、10
5、10
6CFU/mlの用量とし、0.2mlの各希釈物を用いて、腹膜内投与によって雌性14-16gのBALB/cマウスに感染させた。感染後2日に、1または2の生存しているマウスを安楽死させて脾臓を採取した。全脾臓を1.0mlの無菌0.9%塩類溶液中でホモジナイズした。10
−2から10
−5のホモジネートの希釈物を調製し、BHIN
50K
50プレートに平板した。一晩増殖後に、少なくとも20,000コロニーを10mlのBHIブロスにプールして「回収プール」を形成し、以前に記載されたプロトコール[F. M. Ausubelら(編), Current Protocols in Molecular Biology, vol. 1. John Wiley andSons, New York, p.2.4.1-2.4.5.(1997)中のWilson]に従って、0.5mlの回収プールを3,500×gにて遠心し、そのペレットを用いてゲノミックDNAを調製した。
【0084】
病原性野生型P. multocidaを用いた初期実験は、生物を脾臓、肺、腎臓および肝臓から回収し得ることを示し、これは感染の真正な敗血症モデルを示している。「投入」および「回収」の両方のプールについてのドット・ブロットを実施例1に記載したのと同様に行い、視覚的検査および半−定量分析の両方によって評価した。ハイブリダイゼーションは、投入および回収プールからの5μgのゲノミックDNAをテンプレートとして用いる以外は、実施例1に記載したのと同様に行った。半−定量分析は、単一クローンにおける顕著な減少が起こったか否かを示している。突然変異体が宿主内で生存することができない場合には、回収シグナルは投入シグナルに比して非常に低く、高い投入/回収比を与えるにちがいない。大部分の突然変異体はイン・ビトロ(in vitro)と同様にイン・ビボ(in vivo)で増殖するであろう。したがって、それらのシグナルの比はほぼ1に等しいにちがいない。回収プールで非常に減少しているとして定量分析によって選抜したクローンを、さらなる実験用に選抜した。疑わしい投入/回収比を有するさらなるクローンは、ドット・ブロットから作成したフィルムを視覚的に評価した後にも選抜した。
【0085】
実施例3
P. multocida候補突然変異体についての毒性の決定
脾臓細胞からの低減した回復を示した各可能性のある突然変異体を原プールプレートから単離し、免疫性テスト実験(a challenge experiment)に用いて、該トランスポゾン突然変異体により生じた弱毒化を確認し、おおざっぱに評価した。in vivoスクリーン由来の個々の候補突然変異体をヒツジ血液寒天プレート上、5%CO
2中で37℃にて一晩成長させた。各突然変異体のおよそ6つのコロニーをBHIブロス中に接種し、6時間成長させた。希釈物を調製し、5匹のマウス各々に、10
2、10
3、10
4および10
5CFUで上記したごとく感染させた。弱毒化を6日後の死亡率をその野生型と比較することによって決定した。生存しているマウスは保護されていたものと推定され、次いで、当該野生型株のLD
50のおよそ200倍の濃度にての野生型P. multocidaの用量で免疫性テスト(challenge)した。次いで、免疫性テストされた各マウス群につき生存率を決定した。
【0086】
結果は、120個の可能性のあるトランスポゾン突然変異体のうち62個が弱毒化し、その野生型株よりも少なくとも10倍高いおよそのLD
50を有することを示した。該クローンおよびそれらのおよそのLD
50値を表1に列記する。該野生型株での対象実験を免疫性テストの各組と並行して行い、全ての場合において、野生型免疫性テスト群の死亡率は100%であった。
LD
50値に加えて、表1はワクチン化および免疫性テストからのデータも与える。簡単には、マウス群(n=5ないし10)は、毒性のある野生型株のLD
50よりも約200倍高い濃度にて表1に示す個別のP.mutocida株で腹膜組織内注射によりワクチン化した。死亡率の数字を算出した後28日間、動物を観察した。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例4
P. multocida毒性について要求される遺伝子のクローニングおよび同定
弱毒化していることが確認された各トランスポゾン突然変異体を分析して、破壊されたオープン・リーディング・フレームの同一性をさらに決定した。各突然変異体のDNAを増幅し、精製し、次いで、該トランスポゾン内を切断せず、該トランスポゾンとハイブリダイズする4〜8kbフラグメントを通常産生することが知られている制限酵素で消化した。該トランスポゾンによりコード化されるカナマイシン抵抗性についての選択を用いて、各トランスポゾン突然変異体につき少なくとも1のフラグメントをクローン化した。
【0089】
複数の制限酵素でのサザーンハイブリダイゼーションは、各弱毒化突然変異体につき、クローニングに対して適当なサイズのフラグメントを同定するためのプローブとしてpLOF/Km由来の標識化1.8kbMluIフラグメントを用いて行った。各突然変異体からのミニ−Tn10因子およびフランキングDNAをpUC19中にクローン化し、該フランキング配列を中間プライマーTEF32およびTEF40、プライマーウォーキングおよび、いくつかの場合、汎用pUC−19プライマーを用いて決定した。
【0090】
TEF32 GGCAGAGCATTACGCTGAC (配列番号:95)
TEF40 GTACCGGCCAGGCGGCCACGCGTATTC (配列番号:96)
【0091】
配列決定反応は、PE Applied Biosystems (Foster City, CA)からのBigDye
TMTerminator Chemistry kitを用いて行い、ABI Prism 377 DNA配列決定機上で行った。推定中断(interupted)オープン・リーディング・フレームの二本鎖配列を各クローンから得た。Sequencer3.0ソフトウェア(Genecodes, Corp., Ann ARbor, MI)を用いて、配列データを集めて解析した。GCGプログラム[Devereuxら, 1997. Wisconsin Package Version 9.0, 9.0 ed. Genetics ComputerGroup, Inc., Madison]を用いて、現在入手可能なデータベースにおける相同な配列を調査した。
【0092】
弱毒化していると認定されたクローンの37%において、該ミニ−TN10転置因子の多重挿入が存在した。そのフランキング配列を含む各挿入は個別にpGP704中にクローン化し、該野生型株中に交配して、P. multocidaの新たな突然変異体を産生し、それらの各々は、単に一つの多重原挿入を包含する。個々の突然変異体は個別に再試験して、弱毒化表現型を招く挿入を決定した。該破壊された、予想オープン・リーディング・フレームのヌクレオチド配列を、両方のらせん鎖を配列決定することによって決定し、該予測したアミノ酸配列を用いて、同一の配列について現在入手可能なデータベースを調査した。配列は、知られている遺伝子、知られていない遺伝子および以前に配列決定された仮想オープン・リーディング・フレームに適合するか、または以前同定された配列のいずれにも適合しないかのであった。以前同定された配列に相同性を有するそれらの遺伝子につき、表1に示すごとく、可能性のある機能を帰属した。
【0093】
実施例5
他の種における関連する遺伝子の同定
別の実験において、Actinobacilluspleuropneumoniae(APP)を用いて、STMも行った。該App株の一つは、配列決定された遺伝子(配列番号:97)中に挿入を含有し、P. multocida atpG遺伝子に相同な種として同定された。この結果は、突然変異してワクチン組成物に使用するための該他の菌種の弱毒化株を産生し得、以前に知られていないP. multocida遺伝子のホモログの他の菌種中の存在を示唆した。他のP.mulgocida遺伝子のホモログが他の菌種中に存在するかを決定するために、A. pleuropneumoniae atpG遺伝子をプローブとして用いて、他の種由来のゲノムDNAにつきサザーンハイブリダイゼー
ションを行った。
【0094】
Actinobacillus pleuropneumoniae、Pasteurella haemolytica(Ph)、P.multocida、およびHaemophilussomnus(Hs)ゲノムDNAをCTAB法を用いて単離し、EcoRIおよびHindIIIで37℃にて2時間消化した。消化したDNAは、0.7%寒天ゲル上、40VにてTAEバッファー中で一晩分離した。該ゲルを連続的に、0.1M HCl中に30分間、0.5M NaOH/1.5M NaCl中に15分間2回、および2.5M NaCl/1MTris、pH7.5中に2回浸漬した。該DNAは、20×SCCバッファー(3M NaCl/0.3M クエン酸ナトリウム)を用いて、一晩、ニトロセルロース膜(Amasham Hybond N
+)に転写した。該DNAは、自己架橋設定(120ミリジュール)したUV Stratalinkerを用いて該膜に架橋した。該膜を5×SSC/1% ブロッキング溶液/0.1% ラウロイルサルコシンナトリウム/0.02% SDS中、50℃にて、約7時間予備ハイブリダイズさせ、PCR生成atgプローブを含有する同一の溶液中、50℃にて一晩ハイブリダイズさせた。
該プローブは、GeneAmpPCRシステム2400中のGeneAmpXLPCRキットのプライマーDEL−1389(配列番号:98)およびTEF−46(配列番号:99)を用いて調製した。
【0095】
DEL1389 TCTCCATTCCCTTGCTGCGGCAGGG(配列番号:98)
TEF46 GGAATTACAGCCGGATCCGGG (配列番号:99)
【0096】
該PCRは、初期加熱工程を94℃にて5分間、94℃にて30秒間の変性を30サイクル、50℃にて30秒間のアニーリング、および72℃にて3分間の延長、および最終伸長工程を72℃にて5分間行った。当該増幅産物は、QIA高速ゲル精製キット(QIAGEN)を用いて寒天ゲル上で分離し、精製し、およびDIG−HighPrimerキット(BoehringerMannheim)を用いて標識した。当該ブロットを該ハイブリダイゼーション溶液から取り出し、2×SSCでリンスし、該同一のバッファー中で各洗浄5分間で2回洗浄した。次いで、該ブロット各々を0.5×SSC中で60℃にて15分間2回洗浄した。相同なバンドをDIG核酸検出キット(Boehringer Mannheim)を用いて可視化した。
単一バンドをPasteurella haemolytica、Haemophilus somnusおよびA.pleuropneumoniaeにおいて、EcoRI消化DNAを用いて検出した。2つのバンドをPasteurella multocidaからのEcoRI消化DNAを用いて検出した。
【0097】
実施例6
タグ化トランスポゾンP. multocida突然変異体のライブラリーの構築
pLof/Kmを用いるトランスポゾン突然変異誘発は、以前より、機能的で、A. pleuropneumoniae中でランダムであると報告されていた[Tasconら, J Bacteriol. 175:5717-22 (1993)]。A. pleuropneumoniaeのタグ化トランスポゾン突然変異体を構築するため、96個のE.coli S17−1:予め選択されたタッグ化プラスミド(pTEF−1:[NK]
35)を含有するλpirトランスフォーマントの各々を接合性交配において用いて、A. pleuropneumoniae株AP225、in vivo通過ATCC27088株から誘導された抗原型1自発的ナリジキシン酸抵抗性突然変異体を生成する。A. pleuropneumoniae株は、10μg/mlB−ニコチンアミドアデニン=ジヌクレオチド(V
10)(Sigma,St. Lous, Missouri)入りの脳心浸出物(BHI)(Difco Labratories, Detroit, MI)培地上で37℃にて成長させ、プレート上で成長させる場合は5%CO
2中で成長させた。E.coli s17−1:λpir(λpir、recA、thi、pro、hsdR(r
k−、m
k+)、RP4−2、(TC
R::Mu、(Km
R::Tn7)、[Tmp
R]、[Sm
R])をルリア−ベルターニ(Luria−Bertani;LB)培地中、37℃にて繁殖させた。必要なとき、抗菌剤を100μm/mlアンピシリン(Sigma)、50μm/ml ナリジキシン酸(N
50)(Sigma)、および50(K
50)もしくは100(K
100)μm/mlのカナマイシン(Sigma)を用いた。
【0098】
交配は、各E.coliS17−1:λpir/pTEF1:[NK]
35クローンおよび該AP225株を後期log期に成長させることによって生じさせた。各タグ化pTEF−1クローンにつき50μlアリコートの培養を150μlのAPP255培養と混合し、次いで、100μM IPTGおよび10mM MgSO
4を含有するGHIV
10プレート上に予め置かれていた0.22μM フィルター上に、各交配混合物の50μlをスポットした。37℃にて5% CO
2での一晩インキュベーションの後、各フィルターの交配混合物を2mlのPBS中に洗い出し、各々の200μlをBHIV
10N
50K
100上に塗布した。選択的な一晩成長の後、200μl BHIV
10N
50K
50中への楊枝での移動によってコロニーをマイクロタイタープレート中に集めて、マイクロタイタープレートの各ウェルが必ず同一配列タグを持つトランスポゾン突然変異体を含有することを確認した。一晩成長後、50μlの75%グリセロールを各ウェルに添加し、プレートを−80℃にて凍結保存した。
【0099】
APPは、P. multocidaほどの多くのバイアスを該ミニ−Tn10因子の多重挿入に対して有していないようである。該突然変異のうちたった約3%が多重挿入を含有することが決定され、それは以前報告された約4%[Tasconら, J Bacteriol. 175:5717-22 (1993)]と一致する。APPにおける問題は、23S RNA領域への挿入を含有する多数の突然変異体(以下で論ずる):13個の独特な部位への挿入を含有する28個の全突然変異体を同定することからなる。これは、23S RNAが優先挿入部位を含有しすること、およびAPPの成長がこれらの挿入によって当該宿主の生存に差異をもたらすのに充分なほど影響されることを示すのであろう。APP 23S RNAプローブを用いるサザーンブロット解析は、H.influenzae中に5つ[Fleischmannら, Science 269:496-512 (1995)]、E.coli中に7つの完全オペロンが含有されること[Blattnerら, Science 277:1453-1474 (1997)]と比較して、APPはたった3つのリボソームオペロンしか含有しないことを示すであろう。このサイト優先性および成長速度に対するその影響は「飽和突然変異誘発」に対する明らかな障害であろう。何故ならば、相当数のクローンがこれらrRNA中に挿入を含有し、さらなる独特の弱毒化突然変異体を得るために大量のスクリーニングが必要であろう。
【0100】
実施例7
弱毒化A. pleuropneumoniae突然変異体についてのブタスクリーニング
A. pleuropneumoniaeトランスポゾン突然変異体の20のプールは、全部で約800個の突然変異体を含有し、ブタ気管内感染モデルを用いてスクリーンした。各プールは2匹の別々の動物からスクリーンした。
【0101】
プールしたA. pleuropneumoniaeトランスポゾン突然変異体の凍結プレートを−80℃の貯蔵庫から取り出し、各ウェルから180μlのBHIV
10N
50K
50を含有する新たな96ウェル丸底プレート(Corning Costar, Cambridge, MA, USA)に、20μl移すことによって継代培養した。プレートを振盪することなく37℃にて一晩、5% CO
2中でインキュベートした。次いで、一晩おいたプレートを各ウェルからウェルあたり100μlのBHIV
10を含有する新たな平底96ウェルプレート(Corning Costar)に、10μl移すことによって継代培養し、150rpmにて振盪しつつ、37℃にてインキュベートした。マイクロタイタープレートリーダーを用いてOD
562をモニターした。約0.2ないし0.25のOD
562にて、各プレートをプールして、該マイクロタイタープレートのウェルの各々からの100μlを合わせることによって、「投入プール(input pool)」を作製した。該培養をBHI中に適切に希釈して、約2×10
6CFU/mlにした。各希釈プールにつき、4.0mlを用いて、気管チューブを用いる気管内投与により10〜20kgSPFブタ(Whiteshire-Hamroc, Albion, IN)を感染させた。感染後約20時間にて、生存している全ての動物を麻酔し、肺を取り出した。洗浄を行って該肺に150mlの殺菌PBSを潅流することによって生存する細菌を回収し、次いで、それを揉んで該流体を分散させた。該洗浄流体を回収し、このプロセスの第2回目を繰り返す。該洗浄流体を450×gにて10分間遠心して、大量のデブリを分離した。次いで、上清を2,800×gにて遠心して、該細菌をペレット化した。ペレットを5mlBHIに再懸濁し、10
−2ないし10
−5の範囲の希釈物中、BHIV
10N
50K
50プレート上に塗布した。一晩の成長後、少なくとも100,000個のコロニーを10μlのBHIブロス中にプールして、「回収プール」を作製した。各回収プールの0.7ml部分を用いて、CTAB法[Wilson, In Ausubelら, (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, vol. 1. John Wileyand Sons, New York, p.2.4.1-2.4.5 (1997)]によりゲノムDNAを調製した。
規定的な動物からの回収は、肺洗浄物から10
8CFU範囲である。
【0102】
ドットブロットを行い、前に記載したごとく、目視検査および半定量的分析の両方によって評価した。全てのハイブリダイゼーションおよび検出は記載したごとく行った。簡単には、プローブは、第1のPCR増幅、引続いて、所望する産物の寒天ゲル精製およびdig−dUTPを含む(incorporating)第2のPCR増幅によって調製した。TEF5、TEF6、TEF24、TEF25、TEF48およびTEF62を含むオリゴヌクレオチドは、Genosys Biotechnologies(The Woodlands, TX)により合成した。プライマーTEF69、TEF65およびTEF66も逆方向PCRおよび配列決定に用いた。
【0103】
TEF69 GACGTTTCCCGTTGAATATGGCTC (配列番号:166)
TEF65 GCCGGATCCGGGATCATATGACAAGA(配列番号:167)
TEF66 GACAAGATGTGTATCCACCTTAAC (配列番号:168)
【0104】
次いで、標識PCR産物をHindIIIで消化して、当該独特なタグ領域から当該一定プライマーアームを分離した。該不定標識タグを含有する領域を切出し、次いで、全ゲルスライスを溶解し、DIG EasyHyb中で変性した。ドットブロットを標準CSPD検出プロトコルを用いて、調製し、検出した。フィルム露光(film exposure)を目視評価のために行い、秒あたりルミネッセンスカウント(LCPS)を各ドットブロット試料につき決定した。各突然変異体に対するLCPS
投入/LCPS
回収比を用いて、弱毒化しそうな突然変異体を決定した。
該投入プール中には存在するが、該回収プール中では高度に低下しているとして選択されたコロニーをさらなる研究のため選択した。疑問のある投入/回収比を持つさらなるコロニーも該ドットブロットから作製されたフィルムを目視評価した後に選択した。全部で110個のコロニーを選択した。
【0105】
実施例8
A. pleuropneumoniae毒性遺伝子の同定
部分的フランキング配列を逆方向PCRおよび直接産物配列決定により該110個のコロニー各々について決定した。逆方向PCRを用いて、上記した直接配列決定のためのフランキングDNA産物を生成した。配列決定反応は、PE Applied Biosystems (Foster City, CA)からのBigDye
TM Terminator Chemistry kitを用いて行い、ABI Prism 377 DNA配列決定機上で行った。Sequencer3.0ソフトウェア(Genecodes, Corp., Ann ARbor, MI)を用いて、配列データを集めて解析した。GCGプログラム[Devereuxら, 1997. Wisconsin Package Version 9.0, 9.0 ed. Genetics ComputerGroup, Inc., Madison]を用いて、現在入手可能なデータベースにおける相同な配列を調査した。
表2は、同定されたA. pleuropneumoniae遺伝子およびオープン・リーディング・フレームが決定可能であった範囲を示す。配列番号は、ヌクレオチド配列および位置する推定されるアミノ酸配列に付される。
【0106】
【表4】
【0107】
表3(下記、実施例9)に列記された推定同定物を細菌データベースと比較することにより帰属した。該110個の突然変異体は35群の独特トランスポゾン挿入を表した。遺伝子座あたりの異なる突然変異体の個数は変化し、いくつかのコロニーは、常に、同一ORFの異なる部位内に挿入を含有するクローンに対するORF内の単一部位に挿入を含有した。3つの多重挿入が、多重PCRバンドの産出および多重配列電気泳動図の生成による決定でスクリーンされた該110個のコロニー中に検出された。
【0108】
実施例9
A.pleuropneumoniae突然変異体と野生型APP225との競争免疫性テスト
該回収された母集団中には存在しないか、あるいは高度に減少している上記同定された独特の弱毒化突然変異体群の各々からの代表的なクローンは、原プールプレートから単離され、該野生型株(AP225)との競争免疫性テスト実験に用いられて、該トランスポゾン突然変異体により生じた相対的弱毒化を確認した。突然変異体および野生型株はBHV
10中で0.6ないし0.9のOD
590にまで成長させた。約5.0×10
6CFUの野生型および突然変異体株の各々を4mlのBHIに添加した。全4ml用量を用いて気管チューブでの気管内投与により10〜20kgブタに感染させた。感染後約20時間にて、全ての生存している動物を麻酔し、肺を取り出した。肺洗浄を上記したごとく行った。プレートカウントをBHIV
10N
50およびBHIV
10N
50K
100上で行って、投入培養中および肺洗浄試料中両方において、突然変異に対する野生型の相対数を決定した。競争指数(Competitive Index; CI)は、[突然変異CFU/野生型CFU]
投入/[突然変異CFU/野生型CFU]
回収として算出した。
【0109】
35個の可能性のあるトランスポゾン突然変異体のうち、22個が著しく弱毒化し、0.2未満の競争指数(CI)を有している。STMスクリーニング結果に基づくと弱毒化していないようにみえたトランスポゾン突然変異体が陽性対象として該プールの一つから選ばれた。この突然変異体は約0.6のin vivoCIを有していた。この突然変異体につき、in vitro競争も行い、0.8のCIを得た。その後、該突然変異体は、2つのフェニルアラニンtRNAの間に挿入を含有することが決定された。
独特の弱毒化単一挿入突然変異体の競争指数を表3に列記する。atpG、pnp、およびexbB App突然変異体は、該突然変異体は野生型株と効果的に競争できず、そのため弱毒化したことを示している。
【0110】
【表5】
【0111】
該CIの精度は非常に良好である。それは、該exbB突然変異体を3つの異なる動物内で競争させて、0.003、0.003および0.006のCIを得たからである。大きな動物実験における1の競争に基づき弱毒化を帰属する競争指数は、さらに、以下の実施例11において記載される7つの突然変異体(n=8)でのブタにおける予備的ワクチン化結果に基づいて確認された。
【0112】
実施例10
弱毒化A.pleunopneumoniae毒性遺伝子
同定されたA.pleunopneumoniae遺伝子は4つの広い機能的分類を表す:生合成酵素、細胞内輸送成分、細胞内調節成分および未知物質。
F
0F
1 H+−ATPase複合体のF1−γサブユニットをコード化するatpG遺伝子は、ATPの産生において、または、ATPを加水分解することによるプロトン輸送において機能し得る。関連するatpG弱毒化突然変異体も、P. multocidaにおいて同定された。F
1δサブユニットをコード化するもう一つのatp遺伝子、atpHも同定された。atp突然変異体の表現型は、非適合性酸−感受性表現型[Foster, J Bacteriol. 173:6896-6902 (1991)]、Salmonella typhimurium[Garacia del Portilloら, Infect Immun.61:4489-4492 (1993)]およびP. multocida[前掲]における毒性の損失、およびHaemophilus influenzae Rd中の形質転換頻度と反応能調節遺伝子の誘発との両方における減少[Gwinnら, J Bacteriol. 179:7351-20 (1997)]を含む。
【0113】
LpdAは、2つの酵素複合体:ピルビン酸エステルデヒドロゲナーゼおよび2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼの成分であるジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼである。毒性への関連性は知られていないが、LpdAの産生はSaomonellatyphimurium中、ヒト由来の殺菌性蛋白質にさらされたときに誘発され、これは、この誘発は外膜修復の目的に関わるであろうことを示唆するかもしれない[Qiら, Mol Microbiol. 17:523-31 (1993)]。 成長および生存に必要な欠乏性化合物の輸送はin vivoで重要である。ExbBは、TonB輸送複合体の部分であり[Hantke, and Zimmerman, Microbiology Letters. 49:31-35 (1981)]、少なくとも2つの別々の方法でTonBと相互作用する[Karlssonら, Mol Microbiol. 8:389-96 (1993); Karlssonら, Mol Microbiol.8:79-8 (1993)]。鉄補足は病気素因に必須である。この研究において、APPおよびP. multocidaの両方において、弱毒化exbB突然変異体が同定された。いくつかのTonB依存性鉄受容体が他の細菌中で同定された[Biswasら, Mol. Microbiol. 24:169-179 (1997); Braun, FEMS Microbiol Rev.16:295-307 (1995); Elkinsら, Infect Immun. 66:151-160 (1998); Occhinoら, Mol Microbiol.29:1493-507 (1998); Stojiljkovic and Srinivasan, J Bacteriol. 179:805-12 1997)]。A.pleuropneumoniaeは2つのトランスフェリン結合蛋白質を産生し、それらは鉄補足について、ExbB/ExbD/TonB系に依存するようである。PotDは、細胞周辺結合蛋白質であって、それはスペルミジン(ポリアミン)輸送に要求される[Kashiwagiら, J Biol Chem. 268:19358-63 (1993)]。Pasteurellaceaeファミリーのもう一つのメンバー、Pasteurella haemolyticaは、回復期における主要な免疫原または外膜蛋白質−ワクチン化子ウシであるpotD(Lpp38)のホモログを含有する[Pandher and Murphy, Vet Microbiol. 51:331-41 (1996)]。P.haemolyticaにおいて、PotDは内外膜の両方に関連するようである。以前の研究が、StreptococuspneumoniaeのpotD突然変異体は弱毒化すること[Polissiら, Infect. Immun. 66:5620-9 (1998)]が示されているにもかかわらず、保護抗体の毒性およびそれとの関連性におけるPotdの役割は知られていない。
【0114】
アドヒジンまたはトキシンのごとき比較的わずかな「典型的毒性因子」が、Haemophilus influenzaeのOMP P5に対する相同性を除いて、同定された。H.influenzae OMP P5は主たる外膜であり、それは蛋白質のOmpAポリンファミリーに関連する[Munsonら, M Infect Immun. 61:4017-20 (1993)]。非分類Haemophilus influenzae中のOMP P5は、繊維状構造として発現されたフィンブリンのサブユニット蛋白質をコード化することが示されており[Sirakovaら, Infect Immun. 62:2002-20 (1994)]、それは毒性および、粘膜と上皮細胞との両方への結合に貢献する[Miyamotoand Bakaletz, Microb Pathog. 21:343-56 (1996); Reddyら, Infect Immun, 64:1477-9(1996); Sirakavaら, Infect Immun. 62:2002-20 (1994)]。重要な発見はOMP P5ホモログをコード化するようである2つの別々のORFの同定である。これは、Haemophilus ducreyi由来の2つの非常に似通った蛋白質、MOMPおよびOmpA2の場合も事実である。両方ともフィンブリエの産生に機能的に関わっているのかどうか、および、2つのそのようなORFの存在は重複するまたは相補的な機能を持つ分岐複製を表すのかどうかを決定することが残っている。興味深いことに、該2つのOMP P5突然変異体は全く異なるCI値を有するようであり、単に一つのコピーについての必須性または機能性の差異を示唆している。OMP P5は染色体感染の間分子変異を受けていることが示されているが[Duimら, Infect Immun. 65:1351-1356 (1997)]、これは点突然変異を受けている単一遺伝子に限定されているようであり、多重遺伝子の分別発現(differential expression)のための「型スイッチング」よりもアミノ酸変化をもたらす。
【0115】
蛋白質折畳み酵素は、細胞周辺および細胞外蛋白質の充分な折畳みのための重要な補助物(accessories)であり、2つの遺伝子が同定され、それらの産物はペプチジル−プロピルイソメラーゼ活性を有する:fkpAおよびtig(トリガー因子)。FkpAはFK506−結合蛋白質ファミリーのメンバーである細胞周辺蛋白質である[Horne and Young, Arch Microbiol. 163:357-65 (1995); Missiakasら, Mol Microbiol.21:871-84 (1996)]。FkpAは、Salmonella typhimurium[Hornら, Infect Immun.65:806-10 (1997)]およびLegionella pneumophilaホモログ、mip[Englebergら, Infect Immun. 57:1263-1270 (1989)]の細胞外生存に貢献することが示されており、マクロファージの毒性および感染を招く[Cianciottoら, J. Infect. Dis. 162:1216 (1990); Cianciottoら, Infect Immun.57:1255-1262 (1989)]。Tig、すなわちトリガー因子[Croke and Wickner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84:5261-2 (1987);Guthrie, and wickner, J BActerol 172:5555-62 (1990); reviewed in Hesterkamp; and Bukau., FEBS Lett. 389:32-4 (1996)]は典型的なFKBP領域を含有するペプチジルプロピルイソメラーゼであるが[CAllebaut and Mornon, FEBS Lett. 374:211-215 (1995)]、FK506によって影響されない[Stollerら, EMBO J.14:4939-48 (1995)]。Tigは、リボソームおよび発生期ポリペプチド鎖に関連することが示されている[Hesterkampら, Proc Natl. Acad Sci USA 93:4437-41 (1996); Stollerら, EMBO J.14:4939-48 (1995)]。可能性のある役割は、E.coli中の細胞分裂[Guthrie, and Wickner, J Bacteriol. 172:5555-62 (1990)]、Streptococcus pyogenesシステインプロテイナーゼの分泌および活性化における役割[Lyonら, EMBO J. 1:6263-75 (1998)]、およびBacillus subtilis中の飢餓条件下での生存[Gothelら, Biochemistry 37:13392-9 (1998)]への知られていない影響を含む。
【0116】
細菌性病気素因は、当該宿主内の広く様々な環境条件下で生存するために、多くのメカニズムを用いて、遺伝子発現を配位的に調節する。mRNA安定性における差異は、原核生物中の遺伝子発現を調整し得る[Belasco and Higgins, Gene, 72:15-23 (1988)]。例えば、rnr(vacB)がShigellaflexneri中のプラスミド運搬毒性遺伝子の発現に要求され[Tobeら, J Bacteriol. 174:6359-67 (1992)]、RnaseR リボヌクレアーゼをコード化する[Chengら, J. Biol. Chem.273:14077-14080 (1998)]。PNPはmRNAの分解に関わるポリヌクレオチドホスホリラーゼである。致死のpnp/rnr突然変異はなく、機能のありそうな重複を示唆する。したがって、rnrおよびpnpの両方が毒性遺伝子発現に関わる可能性がある。P.mulcosidaのpnp突然変異体は、マウス敗血症モデルにおいて無毒である(実施例2)。他のpnp関連表現型はBacillus subtilisにおける反応能欠乏および低温感受性を含む[Wang and Bechhofer, J Bacterol. 178:2357-82 (1996)]。
【0117】
HupAは細菌性ヒストン様蛋白質であり、それはHupBと組み合わさって、E.coli中にHU蛋白質を構築する。報告は、hupAおよびhupBは、いかなる観察可能な表現型をも示さないことを示しているが[Huismanら, J Bacteriol. 171:3704-12 (1989); Wadaら, J Mol. Biol.204:581-91 (1988)]。hupA−hupB二重突然変異体は、低温感受性でありヒートショックに感受性であって、部位特異的DNA組換えの多くの形態においてブロックされことが示されている[Wadaら, J Mol. Biol. 204:581-91 (1988); Wadaら, Gene. 76:345-52 (1989)]。一つの限定的データは、以前、hupAは毒性に直接関わることを示した[Turnerら, Infect Immun. 66:2099-106 (1998)]。hupA弱毒化のメカニズムが知られないまま残っている。
【0118】
DnaKは、よく知られ、高度に保存されたヒートショック蛋白質であり、様々なストレスの多い環境変化に対する調節的反応に関わる([Lindquist and Craig, Annu Rev Genet. 22:631-77 (1988)]に論評されている)。DnaKは、マクロファージに食された後に著しく誘発されたストレス蛋白質であり[Yamamotoら, Microbiol Immunol. 38:295-300 (1994)]、Brucella suis dnaK突然変異体は、ヒトマクロファージ様細胞内で繁殖はできなかった[Kohlerら, Mol Microbiol. 20:701-12 (1996)]。対象的に、もう一つの細胞内病気素因、Listeria monnocytogenesは食作用後dnaKの誘発を示さなかった[Hanawaら, Infect Immun.63:4595-9 (1995)]。VibriocholeraのdnaK突然変異体はToxRの産生およびin vitroでその調節された毒性因子に影響したが、同様の結果は、in vivo成長細胞からは得られなかった[Chakarabartiら, Infect Immun. 67:1025-1033 (1999)]。A.pleuropneumonia dnaK突然変異体のCIはほとんどの病因性減弱した突然変異体より高かったが、依然として、陽性対象株のおよそ半分であった。
【0119】
DksAは、E.coliのdnaK突然変異体におけるフィラメンタス(filamentous)および温度感受性成長の用量依存性サプレッサーである[Kang and Craig, J Bacteriol. 172:205-64 (1990)]。現在、DksAについて明らかな分子機能はないが、該遺伝子はニワトリおよび孵化したばかりのヒヨコにおけるSalmonellatyphimuriumの毒性に重要であることが確認された[Turnerら, Infect Immun. 66:2099-106 (1998)]。その研究において、該DksA突然変異体はグルコースまたはヒスチジンと一緒ではよく成長しなかったが、単に炭素源としてグルタミンまたはグルタミン酸エステルと一緒だとよく成長したことが記されている。この観察は、該dksA突然変異体は、グルタミン酸エステルの生合成において、幾分、力が減じられることを示すのであろう[Turnerら, Infect Immun. 66:2099-106 (1998)]。
【0120】
3つの遺伝子が蛋白質合成において役割を有することが確認された:tRNA−leu、tRNA−glu、およびrpmF。蛋白質合成を除いて、tRNAは、ペプチドグリカン合成[Stewartら, Nature 230:36-38 (1971)]、ポルフィリン環合成[Jahnら, Trends Biochem Sci. 17:215-8 (1992)]、分解のための蛋白質の標的[Tobiasら, Science 254:1374-7 (1991)]、蛋白質への翻訳後アミノ酸付加[Leibowitz and Soffer, B.B.R.C. 36:47-53 (1969)]、および細菌−真核細胞相互作用[Grayら, J Bacteriol.174:1086-98 (1992); Hromokyjら, Mol Microbiol. 6:2113-24 (1992)]においても、広汎な機能的な役割を有する。より詳しくは、tRNA−leuは、転写減衰[Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8127-8131 (1986)]、Pseudomonas syringaeによる病変形成[Rich and Willis, J Bacteriol. 179:2247-58 (1997)]およびウロパソゲンE.coliの毒性[Dorbrindtら, FEMS Microbiol Lett. 162:135-141 (1998); Ritterら, Mol Microbiol. 17:109-21 1995)]に関連する。本発明者らが同定したtRNAがA.pleuropneumoniaeにおけるtRNA−leuのマイナー種を代表するかどうかは分らない。それにもかかわらず、tRNA−leuは広汎な機能のいずれか1を有する可能性がある。RpmFはリボ染色体蛋白質であり、その遺伝子もE.coli中の脂肪酸生合成酵素を含有するオペロンの部分である。fab遺伝子およびrpmFの同一のクラスター形成がHaemophilus influenzaeにおいても発生するが[Fleischmannら, Science 269:496-512 (1995)]、これはA. pleuropneumoniaeにおいて事実であるかどうかを示すためのさらなる研究が必要である。該fab遺伝子の発現は、必ずしも、rpmFno上流を開始する転写物に依存するとは限らない。それは、rpmF中に同定された第2のプロモータが存在しているからである[Zhang and Cronan, Jr., J Bacteriol. 180:3295-303 (1998)]。
【0121】
病因性減弱した突然変異体の最終クラスは、未知の機能を持つ遺伝子、すなわち、以前に同定されていない遺伝子内の突然変異を含む。yaeAおよびHI0379のホモログは、それぞれ、Escherichia coli[Blattnerら, Science 277:1453-1474 (1997)]およびHaemophilus influenzae[Fleischmannら, Science 269:496-512 (1995)]において、以前同定された。残る未知物はActinobacillus pleuropneumoniae virulence遺伝子(apv)と名付けられている。apvC遺伝子は、HI0893に著しい類似性を示すが、脂肪酸反応調節Bm3R1に類似する転写レプレッサーとしてのHI0839の提案された類似性[Palmer, J Biol Chem. 273:18109-16 (1998)]は疑わしい。apvD遺伝子もE.coli由来の未知の機能を持つ推定膜蛋白質(b0878)に最も類似している[Blattnerら, Science 277:1453-1474 (1997)]。2つの他の未知物、apvAおよびapvBは公開データベースには明らかに適合するのもはなかった。
【0122】
実施例11
A.pleuropneumoniae突然変異体の安全性および効能
9つの群(n=8)のSPFブタ(4〜5週齢、3〜10kg)を用いて、生きた弱毒化したワクチン株として7つのA. pleuropneumoniaeの安全性および効能を決定した。7つの群は、1日目に10
10CFUの各突然変異体で鼻腔内感染させた。1つの群は、1日目および15日目に市販のワクチンPleuromune(Bayer)でワクチン化し、1つのナイーブ群(naive group)はワクチン化しなかった。29日目に、全群は、ブタあたり1〜5×10
5CFUの野生型APP225で、鼻腔内免疫性テストした。この研究の42日目に、全ての生存している動物を麻酔し、剖検した。結果を表4に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
該exbB、atpG、pnp、およびyaeA突然変異体は、10
10CFUの用量を鼻腔内投与したときに死亡を引き起こさなかった。該FkpAおよびtig突然変異体群は、各々1匹の死亡があり、該HI0379群(最高2000年4月6日、試験した7つの突然変異体のCIは実施例9に示す)は4匹の死亡があった。このモデルに用いた野生型LD
50は、通常、1×10
7CFUであり、これらの突然変異体の各々は少なくとも100倍弱毒化され、CIと弱毒化との間にもっともな相関性があることを示している。
【0125】
上記の例示的実施例に記載された本発明の数多くの修飾および変形が当業者にとって生じるものと予測される。したがって、添付した特許請求の範囲に表されるごとき単にそのような限定を本発明におくべきである。