特許第5973635号(P5973635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5973635
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】取付け治具
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/04 20060101AFI20160809BHJP
   A42B 3/18 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   A42B3/04
   A42B3/18
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-154379(P2015-154379)
(22)【出願日】2015年8月4日
【審査請求日】2015年9月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】吉井 克哉
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−030225(JP,U)
【文献】 実開平07−043174(JP,U)
【文献】 特許第5610274(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具基部と、
前記治具基部の一端部に湾曲して設けられた湾曲部と、
前記治具基部の他端部に湾曲して設けられた外側当接部とを備え、
前記治具基部と前記湾曲部と前記外側当接部とにより囲まれた収容空間に、前記湾曲部の先端部と前記外側当接部の先端部との間の挿入口から、保護帽の端部を挿入することにより、前記湾曲部の前記先端部が前記保護帽の内側に当接し且つ前記外側当接部が前記保護帽の外側に当接して前記保護帽に保護具を固定する取付け治具であって、
前記治具基部の前記他端部側に設けられ、前記収容空間内に突設されて片持ち梁構造を構成する板バネ部を具備し、
前記板バネ部は、その前記先端部が前記湾曲部の前記収容空間側の湾曲内面の前記挿入口側に向かって突設し、前記収容空間を、前記湾曲部と前記外側当接部と前記板バネ部とで囲まれた前記挿入口側の空間と、前記板バネ部と前記治具基部とで囲まれた変形空間とに区切るように設けられ、
前記保護帽の前記端部の前記挿入口からの挿入により前記板バネ部が弾性変形し、前記挿入口に挿入された前記保護帽の前記端部を前記板バネ部の前記先端部と前記湾曲部の前記先端部とで狭持することを特徴とする取付け治具。
【請求項2】
前記湾曲部の前記収容空間側の前記湾曲内面の少なくとも一部は、前記板バネ部の基端部を中心とする円弧状となっており、前記湾曲部の前記先端部及び前記治具基部の前記一端部との接続部にそれぞれ近づくにつれて前記湾曲部の曲率半径が小さくなるように設けられ、前記板バネ部の前記先端部が、前記湾曲部の前記先端部側から前記治具基部側に向かって前記湾曲内面に沿って移動するように弾性変形することを特徴とする請求項に記載の取付け治具。
【請求項3】
前記板バネ部の前記先端部は、縦断面円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の取付け治具。
【請求項4】
前記板バネ部の前記先端部は、前記板バネ部の厚さ方向の両側の表面の延長線から、前記挿入口側に突出しているが、前記挿入口とは反対側には突出していないことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の取付け治具。
【請求項5】
前記湾曲部の少なくとも前記先端部、前記外側当接部の少なくとも前記先端部及び前記板バネ部の少なくとも前記先端部の表面には、軟質樹脂からなる被覆が設けられていることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の取付け治具。
【請求項6】
前記治具基部の厚さ方向に貫通して設けられた穴部と、
前記穴部を介して前記保護具を前記保護帽に固定する固定機構とを有することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の取付け治具。
【請求項7】
前記治具基部、前記湾曲部、前記外側当接部及び前記板バネ部は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びABS樹脂から選択される硬質樹脂製又は金属製であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の取付け治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や建築現場等で使用される防塵用のゴーグル、防災用や耐熱用のフェイスシールド、防塵用のマスク、モータースポーツやスキー等に使用されるスポーツ用のゴーグル等の保護具を、保護帽(ヘルメット)に固定することが可能な取付け治具に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や建築現場等で使用される防塵用のゴーグル、防災・耐熱用のフェイスシールド、防塵用のマスク等の保護具は、特に熱、有毒ガス、粉塵等が発生して危険を伴う作業を行う際に、作業者が着用している保護帽(ヘルメット)に固定して用いられる。
【0003】
保護帽に保護具を固定する際には取付け治具を用いており、そのような取付け治具として、例えば、特許文献1に記載の「ヘルメットの保護具用クリップ」や、特許文献2に記載の「防災ヘルメット用の保護具取り付け治具」等が知られている。
【0004】
特許文献1には、板状本体とヘルメットの外壁との間に保護具の装着バンドを挿入するようにした挿入空間を設け、板状本体の下部に、ヘルメットの下周端を挟持するようにした挟持部を設け、板状本体の上部に、ヘルメットの外壁に当接するようにした当接部を設け、さらに挟持部にヘルメットの下周端を挟持する空間を設けたものとし、この空間の上方に挿入口を設けたものとし、空間の内部にヘルメットの下周端と当接して弾性変形する隆起部を設け、挟持部の縦断面を略U字状にし、当接部の縦断面を略逆U字状にし、板状本体を硬質樹脂板からなるものとし、挟持部及び当接部に軟質樹脂を被着し、隆起部を、内部に空間を有する軟質樹脂で形成したヘルメットの保護具用クリップについて記載されている。
【0005】
特許文献2には、板状の治具基部と治具基部に折曲角を有して連続する縦断面U字状の係着部とからなり、治具基部には保護具に対する係止機構が設けられ、且つ係着部には湾曲空間内に押圧部材により撓曲自在とされる板バネが治具基部と係着部との連続部分近傍から延出して設けられた防災ヘルメット用の保護具取り付け治具について記載されている。
【0006】
特許文献1,2に記載の取付け治具は、保護帽の端部の形状に応じて、隆起部の弾性変形(特許文献1)や板バネの撓曲(特許文献2)により、保護具を保護帽に固定することができるように構成されている。
【0007】
従って、上記各文献に記載の取付け治具を用いることで、複雑な操作を行うことなく保護具を保護帽に固定することができ、使用時における保護具のずれや脱落を防止することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5610274号公報
【特許文献2】実開平7−043174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、保護帽(ヘルメット)を構成する材料の厚さが極端に薄いものや、保護帽の端部にレインガード(雨垂れ防止溝)が形成されたものに、上記各文献に記載の取付け治具を適用する場合には、使用時において保護具がずれ易くなり、作業者の動作の程度によっては脱落するといった問題がある。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、従来の取付け治具における優れた操作性を維持し、保護帽の素材や構造によらず保護具を確実に固定し、利用時におけるずれや脱落を防止して継続的に使用することが可能な取付け治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る取付け治具の一態様は、治具基部と、前記治具基部の一端部に湾曲して設けられた湾曲部と、前記治具基部の他端部に湾曲して設けられた外側当接部とを備え、前記治具基部と前記湾曲部と前記外側当接部とにより囲まれた収容空間に、前記湾曲部の先端部と前記外側当接部の先端部との間の挿入口から、保護帽の端部を挿入することにより、前記湾曲部の前記先端部が前記保護帽の内側に当接し且つ前記外側当接部が前記保護帽の外側に当接して前記保護帽に保護具を固定する取付け治具であって、前記治具基部の前記他端部側に設けられ、前記収容空間内に突設されて片持ち梁構造を構成する板バネ部を具備し、前記板バネ部は、その前記先端部が前記湾曲部の前記収容空間側の湾曲内面の前記挿入口側に向かって突設し、前記収容空間を、前記湾曲部と前記外側当接部と前記板バネ部とで囲まれた前記挿入口側の空間と、前記板バネ部と前記治具基部とで囲まれた変形空間とに区切るように設けられ、前記保護帽の前記端部の前記挿入口からの挿入により前記板バネ部が弾性変形し、前記挿入口に挿入された前記保護帽の前記端部を前記板バネ部の前記先端部と前記湾曲部の前記先端部とで狭持することを特徴とする。
【0012】
上記取付け治具の一態様によれば、前記治具基部の前記他端部側に設けられ、前記収容空間内に突設されて片持ち梁構造を構成する板バネ部を具備したことにより、前記保護帽の前記端部の前記挿入口からの挿入により前記板バネ部が弾性変形し、前記挿入口に挿入された前記保護帽の前記端部を前記板バネ部の先端部と前記湾曲部の前記先端部とで狭持することができる。
【0013】
また、前記板バネ部は、その先端部が前記湾曲部の前記収容空間側の湾曲内面の前記挿入口側に向かって突設し、前記収容空間を、前記湾曲部と前記外側当接部と前記板バネ部とで囲まれた前記挿入口側の空間と、前記板バネ部と前記治具基部とで囲まれた変形空間とに区切るように設けられていることにより、前記板バネ部が弾性変形してその先端部が前記治具基部側に揺動する際の移動量を十分に稼ぐことができ、前記保護帽の前記端部の形状や厚さ等に応じて十分に変形することができる。
【0015】
また、上記取付け治具の一態様では、前記湾曲部の前記収容空間側の前記湾曲内面の少なくとも一部は、前記板バネ部の基端部を中心とする円弧状となっており、前記湾曲部の前記先端部及び前記治具基部の前記一端部との接続部にそれぞれ近づくにつれて前記湾曲部の曲率半径が小さくなるように設けられ、前記板バネ部の前記先端部が、前記湾曲部の前記先端部側から前記治具基部側に向かって前記湾曲内面に沿って移動するように弾性変形することが好ましい。
【0016】
上記取付け治具の一態様によれば、前記湾曲部の前記収容空間側の前記湾曲内面の少なくとも一部が、前記板バネ部の基端部を中心とする円弧状となっており、前記湾曲部の前記先端部及び前記治具基部の前記一端部との接続部にそれぞれ近づくにつれて前記湾曲部の曲率半径が小さくなるように設けられていることにより、前記板バネ部の前記先端部の弾性変形を阻害することがなく、前記板バネ部の変形量を大きく確保することができる。
【0017】
また、上記取付け治具の一態様では、前記板バネ部の前記先端部は、縦断面円弧状に形成されていることが好ましい。
【0018】
上記取付け治具の一態様によれば、前記板バネ部の前記先端部が、縦断面円弧状に形成されていることにより、前記保護帽の前記端部の形状や厚さ等によらず、前記板バネ部の押圧力を一定に保持することができる。
【0019】
また、上記取付け治具の一態様では、前記板バネ部の前記先端部は、前記板バネ部の厚さ方向の両側の表面の延長線から、前記挿入口側に突出しているが、前記挿入口とは反対側には突出していないことが好ましい。
【0020】
上記取付け治具の一態様によれば、前記板バネ部の前記先端部が、前記板バネ部の厚さ方向の両側の表面の延長線から、前記挿入口側に突出しているが、前記挿入口とは反対側には突出していないことにより、前記板バネ部の押圧力を更に一定に保持することができると共に、前記収容空間内における前記板バネ部の変形量を最大限にすることができ、前記取付け治具の適度な狭持力を維持することができる。
【0021】
また、上記取付け治具の一態様では前記湾曲部の少なくとも前記先端部、前記外側当接部の少なくとも前記先端部及び前記板バネ部の少なくとも前記先端部の表面には、軟質樹脂からなる被覆が設けられていることが好ましい。
【0022】
上記取付け治具の一態様によれば、前記治具基部、前記湾曲部、前記外側当接部及び前記板バネ部は、硬質樹脂製であり、前記湾曲部の少なくとも前記先端部、前記外側当接部の少なくとも前記先端部及び前記板バネ部の少なくとも前記先端部の表面には、軟質樹脂からなる被覆が設けられていることにより、前記保護帽の前記端部に当接した際に密着性を高め且つ滑り止め効果を発揮することができる。
【0023】
また、上記取付け治具の一態様では、前記治具基部の厚さ方向に貫通して設けられた穴部と、前記穴部を介して前記保護具を前記保護帽に固定する固定機構とを有するように構成されてもよい。
【0024】
上記取付け治具の一態様によれば、前記治具基部の厚さ方向に貫通して設けられた穴部と、前記穴部を介して前記保護具を前記保護帽に固定する固定機構とを有することにより、前記穴部を介して固定機構により前記保護具を前記保護帽に固定することができると共に、前記固定機構が前記板バネ部を更に押圧して前記取付け治具の狭持力を強化して、継続的な使用を可能にすることができる。
また、上記取付け治具の一態様では、前記治具基部、前記湾曲部、前記外側当接部及び前記板バネ部は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びABS樹脂から選択される硬質樹脂製又は金属製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来の取付け治具における優れた操作性を維持し、保護帽の素材や構造によらず保護具を確実に固定し、利用時におけるずれや脱落を防止して継続的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態に係る取付け治具によりゴーグルがヘルメットに固定された様子を示した図である。
図2】第1の実施形態に係る取付け治具の構成を説明するための図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)を斜め下方側からみた図である。
図3】第1の実施形態に係る取付け治具の使用方法を説明するための図であり、(a)はヘルメットの端部へ取付け治具を固定する様子を示した図であり、(b)は取付け治具にゴーグルのバンドを通す様子を示した図である。
図4】第1の実施形態に係る取付け治具の使用方法を説明するための概略断面図であり、(a)はヘルメットの端部へ取付け治具を固定する前、(b)は固定中、(c)は固定後の状態をそれぞれ示した図である。
図5】第1の実施形態に係る取付け治具の使用方法を説明するための概略断面図であり、(a)はヘルメットの端部へ取付け治具を固定した後にゴーグルのバンドを取付け治具に通している最中、(b)は通した後の状態をそれぞれ示した図である。
図6】第2の実施形態に係る取付け治具によりゴーグルがヘルメットに固定された様子を示した図である。
図7】第2の実施形態に係る取付け治具の構成を説明するための斜視図である。
図8】第2の実施形態に係る取付け治具にゴーグルのスプリングバンドを固定する方法を説明した図である。
図9】第1の実施形態に係る取付け治具の使用態様を示す概略断面図であり、(a)〜(f)は構造の異なるヘルメットへの固定後の状態をそれぞれ示した図である。
図10】第2の実施形態に係る取付け治具の使用態様を示す概略断面図であり、(a)〜(g)は構造の異なるヘルメットへの固定後の状態をそれぞれ示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更可能である。なお、各図において同じ符号を付したものは同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0028】
[第1の実施形態]
(取付け治具の概要)
図1に示すように、保護帽であるヘルメット100に保護具であるゴーグル200を固定する際には、本発明の第1の実施形態に係る取付け治具1が用いられる。一般的に、ゴーグル200には、ヘルメット100にゴーグル200を固定するための固定具であるバンド300が、ブラケット(留め具)400を介して接続されている。そのため、取付け治具1を用いたヘルメット100へのゴーグル200の固定は、バンド300を介して行われる。具体的には、取付け治具1をヘルメット100の下方から端部101に差し込み、ヘルメット100の端部101の外周に沿ってゴーグル200のバンド300を這わせた状態で、ヘルメット100にバンド300を固定する。なお、取付け治具1は、着脱自在に構成されているため、ゴーグル200をヘルメット100から容易に取り外すことができる。
【0029】
(取付け治具)
次に、取付け治具1の構成について、図2(a)、(b)を参照して説明する。図2(a)、(b)に示すように、取付け治具1は治具基部10を有しており、治具基部10の一端部11には、略U字形状に湾曲した湾曲部20が設けられており、他端部12には、片持ち梁構造を構成するように突設され先端が湾曲部20の内側に延びる板バネ部30を具備する。また、治具基部10の他端部12には、板バネ部30を囲むように略逆U字状に湾曲して形成された外側当接部40が設けられ、外側当接部40の先端は湾曲部20の先端に向かって延設されている。かかる取付け治具1は、治具基部10、湾曲部20及び外側当接部40により収容空間50が構成され、湾曲部20の先端と外側当接部40の先端との間が挿入口60となる。また、収容空間50内に板バネ部30が収容され、板バネ部30の先端は湾曲部20の先端の近傍に向かって設けられている。収容空間50は、板バネ部30により2つの空間に区切られ、板バネ部30の挿入口60側の空間であって、湾曲部20、板バネ部30及び外側当接部40により囲まれた空間を収容部70、板バネ部30と治具基部10とで囲まれた空間を変形空間80とする。ここで、変形空間80は、板バネ部30の弾性変形を許容する空間である。すなわち、板バネ部30は、その先端が湾曲部20の内側に沿って、湾曲部20の先端側から治具基部10側に移動して弾性変形するように設けられており、板バネ部30の弾性変形により、変形空間80は小さくなる。
【0030】
かかる取付け治具1は、詳細は後述するようにヘルメット100に装着して使用される。すなわち、ヘルメット100の端部101を、挿入口60に、外側当接部40側から湾曲部20に向かうように挿入し、且つ板バネ部30を上述したように弾性変形させるように挿入することにより、ヘルメット100の端部101を湾曲部20の先端と板バネ部30の先端とで挟持し、且つ外側当接部40がヘルメット100の外側に当接した状態で固定される。また、この状態で、外側当接部40とヘルメット100との間にゴーグル200のバンド300を挿入することができ、バンド300を収容部70に収容保持することができる。
【0031】
湾曲部20は、治具基部10の一端部11に略U字形状に湾曲して設けられたものであり、湾曲部20の曲率半径は、製品の性能やデザイン等に応じて適宜変更され得るが、収容空間50側の湾曲内面23の少なくとも一部を曲率半径の中心が板バネ部30の基端部22(治具基部10の他端部12と板バネ部30との接続部)に一致するような円弧状とし、湾曲部20の先端及び治具基部10の一端部11との接続部にそれぞれ近づくにつれて曲率半径が小さくなるように設けることが好ましい。これにより、板バネ部30は、先端が湾曲部20の内側に沿って移動するように弾性変形することができ、且つその弾性変形を阻害しないので、板バネ部30の変形量を大きく確保することができる。
【0032】
湾曲部20の先端には、ヘルメット100の端部101の内側に当接する縦断面が円弧状の先端部21が設けられている。このような先端部21を設けることで、ヘルメット100の端部101の形状や厚さ等によらず、板バネ部30の押圧力を一定に保持することができる。その結果、挿入口60に挿入されたヘルメット100の端部101を板バネ部30との間に狭持する際の適度な狭持力を維持することができ、ヘルメット100の端部101から取付け治具1が外れ難くなり、ヘルメット100からのゴーグル200の脱落を防止することができる。
【0033】
板バネ部30は、治具基部10の他端部12から収容空間50側に突設され、片持ち梁構造を構成するものである。板バネ部30の長手方向の寸法は、製品の性能やデザイン等に応じて適宜変更され得るが、板バネ部30の先端が、湾曲部20の湾曲内面23と接触しない程度に湾曲部20の湾曲内面23に近接して設けられていればよい。また、板バネ部30の先端は、湾曲部20の収容空間50側の湾曲内面23の挿入口60側に近接して設けられていることが好ましい。このように構成することで、板バネ部30が弾性変形してその先端が治具基部10側に揺動する際の板バネ部30の移動量を十分に稼ぐことができ、ヘルメット100の端部101の形状や厚さ等に応じて十分に変形することができる。
【0034】
板バネ部30の先端には、ヘルメット100の端部101の外側に当接する縦断面が円弧状の先端部31が設けられている。これにより、ヘルメット100の端部101の形状や厚さ等によらず、板バネ部30の押圧力を一定に保持することができる。
【0035】
また、板バネ部30の縦断面円弧状の先端部31は、板バネ部30の延設方向を中心として、板バネ部30の厚さ方向の両側の表面の延長線から、湾曲部20の先端部21側(挿入口60側)に突出するが、反対側には突出しないように設けられている。これにより、板バネ部30が弾性変形した際に湾曲部20の湾曲内面23に接触し難くなり、収容空間50内における板バネ部30の変形量を最大限にすることができる。その結果、取付け治具1の適度な狭持力を維持することができるので、ヘルメット100の端部101から取付け治具1が外れ難くなり、ヘルメット100からのゴーグル200の脱落を防止することができる。
【0036】
更に、板バネ部30の先端部31が湾曲部20の先端部21側に突出していることから、挿入口60に挿入されたヘルメット100の端部101を湾曲部20の先端部21との間で狭持する際の端部101に対する先端部31の押圧力は、湾曲部20の先端部21と端部101との接点方向(挿入口60方向)に作用する。そのため、ヘルメット100の端部101に対する湾曲部20の先端部21との間の狭持力を一定に保持して、ヘルメット100からのゴーグル200の脱落を防止することができる。
【0037】
取付け治具1では、ヘルメット100の端部101を挿入口60に挿入する際に、板バネ部30の挿入口60側の側面33が板バネ部30の弾性変形により湾曲し、ガイドの役割を果たすようになっている。そして、詳細は後述するが、硬質樹脂からなる板バネ部の側面33によりヘルメット100の端部101を挿入口60に挿入する際に摩擦力が低くなり、更にガイドの役割を果たし易くなっている。そのため、ヘルメット100の端部101を収容空間50に収容し易くなり、収容空間50に収容されたヘルメット100の端部101を、湾曲部20の先端部21と板バネ部30の先端部31との間で狭持し易くなる。
【0038】
外側当接部40は、製品の性能やデザイン等に応じて適宜変更され得るが、治具基部10の他端部12を略逆U字形状に湾曲して設けられていることが好ましい。かかる形状にして設けることで、ヘルメット100の端部101を挿入口60に挿入する際に外側当接部40が弾性変形し、更に収容空間50内に収容されると端部101の外側を押圧することで、ヘルメット100の端部101に対する湾曲部20の先端部21と板バネ部30の先端部31との間の狭持力を一定に保持することができる。そして、詳細は後述するが、硬質樹脂からなる外側当接部40の当接面42を含む先端部41の表面が軟質樹脂で被覆されていることから、端部101の外側を押圧することにより外側当接部40と端部101の外側との間に摩擦力が発生して、使用時にゴーグル200がずれ難くなり、ヘルメット100からのゴーグル200の脱落を更に防止することができる。
【0039】
外側当接部40におけるヘルメット100の端部101の外側に当接する当接面42は、製品の性能やデザイン等に応じて適宜変更され得るが、ヘルメット100の端部101の外側を押圧しやすいように平坦に形成されることが望ましい。このように形成することで、挿入口60に挿入されたヘルメット100の端部101を湾曲部20の先端部21との間で狭持する際の狭持力が増加し、ヘルメット100の端部101から取付け治具1が外れ難くなり、ヘルメット100からのゴーグル200の脱落を防止することができる。
【0040】
また、外側当接部40の先端部41には、製品の性能やデザイン等に応じて適宜変更され得るが、収容空間50の反対側に少なくとも一つの頂点が突出した断面略三角形状の突起部43が設けられていることが好ましい。また、突起部43は外側当接部40の当接面42に対して鈍角となるように設けられていることが好ましい。これにより、ヘルメット100の端部101の形状や厚さ等に応じて突起部43が弾性変形により収容空間50側に折曲し、十分な摩擦力を発揮する。すなわち、外側当接部40の当接面42を含む先端部41の表面の被覆物と異なり、突起部43は軟質樹脂のみで構成されている。それにより、突起部43とヘルメット100の端部101の外側との間に摩擦力が働き、使用時におけるバンド300の動きによる取付け治具1のずれ等が軽減される。
【0041】
湾曲部20の先端部21と外側当接部40の先端部41との間である挿入口60の開口サイズは、特に限定されるものではなく、製品の性能やデザイン等に応じて適宜変更され得るが、ヘルメット100の端部101及びゴーグル200のバンド300を挿入することができる程度であればよい。
【0042】
治具基部10、湾曲部20、板バネ部30及び外側当接部40は、耐クリープ性、耐疲労性、剛性及び耐薬品性に優れた硬質樹脂板又は金属板からなるものである。治具基部10、湾曲部20及び外側当接部40を屈曲した金属板で構成し、内側に板バネ部30を構成する金属板を突設するようにしてもよいが、治具基部10、湾曲部20、板バネ部30及び外側当接部40を硬質樹脂で一体成形するのが好ましく、本実施形態では硬質樹脂で成形したものとした。このように硬質樹脂製とする方が、電気絶縁体となるので電気を扱う工事等にも安全なものとなり、また、肉質感があるものとなり接触感もよくなるので、金属板とするより好ましい。なお、このような硬質樹脂としては、熱可塑性樹脂を適用することができ、熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂等を挙げることができる。
【0043】
また、湾曲部20の先端部21を含む内側当接部24、板バネ部30の先端部31を含む当接部32及び外側当接部40の当接面42を含む先端部41は、硬質樹脂の表面を軟質樹脂で被覆されている。このように、軟質樹脂の被覆を設けることにより、ヘルメット100の端部101に当接した際に密着性を高め且つ滑り止め効果を発揮することができるが、必ずしも設ける必要はない。なお、ここで軟質樹脂とは、硬質樹脂より柔らかく、弾性変形し易いものであり、ヘルメット100の端部101に当接した際に密着性を高め且つ滑り止め効果を備えるものであれば特に限定されないが、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)等の熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のゴムを挙げることができる。なお、このようなエラストマーやゴム等の被膜は、硬質樹脂と二色成形により一体的に成形することができる。また、ゴム被膜は、接着や溶射等により設けることができる。なお、外側当接部40の突起部43は、軟質樹脂のみで形成される。
【0044】
取付け治具1は、上述した通りの構成を備えてなることで、従来の取付け治具における優れた操作性を維持し、ヘルメットの素材や構造によらずゴーグル等の保護具を確実に固定し、利用時におけるずれや脱落を防止して継続的に使用することができる。
【0045】
(治具の固定方法)
次に、取付け治具1をヘルメット100に固定する方法について、図3(a)、(b)〜図5(a)、(b)を参照して説明する。図3(a)及び図4(a)〜(c)に示すように、取付け治具1を把持してヘルメット100の端部101を挿入口60に差し込むと、端部101に当接した板バネ部30が治具基部10側に撓み、端部101が収容空間50に収容される。ヘルメット100の端部101は、板バネ部30の当接部32と湾曲部20の内側当接部24とで狭持され、更にヘルメット100の端部101が外側当接部40の当接面42に押圧され、三方から力が加わることで、取付け治具1をヘルメット100に確実に固定することができる。
【0046】
次いで、図3(b)及び図5(a)、(b)に示すように、ゴーグル200のバンド300を把持して挿入口60から差し込むと、収容部70内にバンド300が収容される。バンド300が収容部70内に収容されることで、バンド300を介して取付け治具1でゴーグル200をヘルメット100に更に確実に固定して、ゴーグル200の使用時におけるずれや脱落を防止することができる。なお、取付け治具1は、ヘルメット100の反対側の側面にも上述した方法と同様にして取り付けられる。
【0047】
[第2の実施形態]
(取付け治具)
図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る取付け治具2は、取付け治具1と同様に、ヘルメット150にゴーグル250を固定するためのものである。第2の実施形態では、ゴーグル250にスプリングバンド350がブラケット(留め具)450を介して接続されており、スプリングバンド350を介してゴーグル250を取付け治具2でヘルメット150に固定する点が、第1の実施形態とは異なっている。なお、取付け治具2は、取付け治具1の部材と異なる部材についてのみ説明し、取付け治具1と同一の部材(取付け治具1と同一の符号を付したもの)についての説明は省略する。
【0048】
次に、取付け治具2の詳細について、図7を参照して説明する。図7に示すように、取付け治具2は、治具基部10に穴部13が設けられたこと以外は取付け治具1と同様の構成である。穴部13は、治具基部10の厚さ方向に貫通して設けられており、穴部13の内部構造は、後述する固定機構90の構造に応じて適宜変更され得る。
【0049】
図8に示すように、固定機構90は、例えば円筒の面に沿って螺旋状の溝を設けた雄ネジであり、穴部13の内部には、雄ネジと螺合可能に螺旋状の溝が設けられている。なお、固定機構90は、ゴーグル250のスプリングバンド350をヘルメット150に固定することができれば特に限定されず、例えばボタン方式等を適用することもできる。
【0050】
取付け治具2では、上述した通りの治具基部10に穴部13を設け、穴部13と固定機構90とを組み合わせて用いることで、例えば図10(a)〜(g)に示すように、固定機構90で板バネ部30を治具基部10側から押圧する(図)ことで、ヘルメット150を構成する材料の厚さが極端に薄いものや、ヘルメット150の端部151にレインガード等が形成されて端部151が極端に厚いもの等の様々な形状のものに取付け治具2を取り付ける場合であっても、取付け治具2の強固な固定を実現することができる。また、板バネ部30の素材である硬質樹脂が経年劣化した場合であっても、固定機構90で板バネ部30を治具基部10側から押圧することで、長期に亘って取付け治具2の確実な固定を維持することができる。
【0051】
(治具の固定方法)
次に、取付け治具2をヘルメット150に固定する方法の詳細について、図8を参照して説明する。なお、取付け治具2をヘルメット150の端部151に固定する方法については、取付け治具1と同様の方法で固定することができるので、説明を省略する。図8に示すように、取付け治具2をヘルメット150の端部151に固定した後にゴーグル250(図6参照)を把持し、穴部13とスプリングバンド350の穴部351との中心を合わせて固定機構90(雄ネジ)を穴部351及び穴部13に順次挿入する。その後、固定機構90と穴部13とを穴部351を介して螺合し、取付け治具2を介してゴーグル250をヘルメット150に固定する。これにより、取付け治具1と同様にして、ゴーグル250の使用時におけるずれや脱落を防止することができる。なお、取付け治具2は、ヘルメット150の反対側の側面にも上述した方法と同様にして取り付けられる。
【0052】
[他の実施形態]
取付け治具1は、上述したヘルメット100以外のヘルメットにも適用することができる。例えば、図9(a)〜(f)に示すように、ヘルメットの端部の形状が異なる場合であっても、取付け治具1を用いてゴーグルをヘルメットに固定することができる。
【0053】
また、取付け治具2は、上述したヘルメット150以外のヘルメットに適用することができる。例えば、図10(a)〜(g)に示すように、ヘルメットの端部の形状が異なる場合であっても、取付け治具2を用いてゴーグルをヘルメットに固定することができる。なお、取付け治具2は、ゴーグル200(図1参照)をヘルメット150に固定する際に用いてもよい。その場合には、取付け治具1と同様の方法で固定することができ、取付け治具2をヘルメット150の端部151に固定した後に、ゴーグル200のバンド300を把持して挿入口60から差し込むと、収容部70内にバンド300が収容される。バンド300が収容部70内に収容された後に、固定機構90(雄ネジ)を穴部13に挿入して螺合することで、固定機構90で板バネ部30を治具基部10側から押圧し、バンド300を介してゴーグル200をヘルメット150に更に確実に固定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,2 取付け治具、 10 治具基部、 11 一端部、 12 他端部、 13 穴部、 20 湾曲部、 21 湾曲部の先端部、 22 板バネ部の基端部、 23 湾曲部の湾曲内面、 24 湾曲部の内側当接部、 30 板バネ部、 31 板バネ部の先端部、 32 板バネ部の当接部、 33 板バネ部の側面、 40 外側当接部、 41 外側当接部の先端部、 42 外側当接部の当接面、 43 突起部、 50 収容空間、 60 挿入口、 70 収容部、 80 変形空間、 90 固定機構、 100,150 ヘルメット、 101,151 ヘルメットの端部、 200,250 ゴーグル、 300 バンド、 350 スプリングバンド、 351 スプリングバンドの穴部、 400,450 ブラケット(留め具)
【要約】
【課題】従来の取付け治具における優れた操作性を維持し、保護帽の素材や構造によらず保護具を確実に固定し、利用時におけるずれや脱落を防止して継続的に使用することが可能な取付け治具を提供する。
【解決手段】治具基部10と、治具基部10の一端部11に湾曲して設けられた湾曲部20と、治具基部10の他端部12に湾曲して設けられた外側当接部40とを備え、治具基部10と湾曲部20と外側当接部40とにより囲まれた収容空間50に、湾曲部20の先端部21と外側当接部40の先端部41との間の挿入口60から、保護帽の端部を挿入することにより、湾曲部20の先端部21が保護帽の内側に当接し且つ外側当接部40が保護帽の外側に当接して保護帽に保護具を固定する取付け治具1であって、治具基部10の他端部12側に設けられ、収容空間50内に突設されて片持ち梁構造を構成する板バネ部30を具備する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10