(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物の総重量を基準にして30重量%〜70重量%の式(I)の化合物、及び30重量%〜70重量%の式(V)の化合物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系耐腐食性コーティングは、金属及びコンクリート基材の保護に広く使用される。環境保護の意識の高まり及び厳しい環境面での要求から、低VOCコーティング系は、塗料製造業者及び最終顧客の両方からますます注目を集めている。技術的観点から、低VOCコーティング実現への1つのアプローチは、低粘度エポキシを使用して溶剤添加が低減されたハイソリッドコーティングを調製することである。
【0003】
これまで、D.E.R.(商標)671(the Dow Chemical Companyの市販製品)のような固体エポキシ樹脂が耐腐食性コーティングに広く使用されている。しかし、D.E.R.(商標)671は固体状態であることから、低VOCハイソリッドエポキシコーティングには適さない。固体エポキシ樹脂を溶解及び希釈するには大量の溶剤が必要であり、これはエポキシ樹脂の低VOCハイソリッドへの応用を妨げる。通常、D.E.R.(商標)671は25%のキシレンと共に供給され、この樹脂溶液の商用グレード名はD.E.R.(商標)671−X75である。
【0004】
D.E.R.(商標)331(the Dow Chemical Companyの市販製品)のような液体エポキシをベースとするコーティングは、必要な溶剤は少ないが、きわめて脆い。これは、高い可撓性及び基材への良好な接着性を必要とする耐腐食性コーティングにとってきわめて重要な問題である。
【0005】
反応性希釈剤は、系の粘度を大幅に低下させるが、同時に樹脂部分の反応性又は官能性を損なう。その結果、乾燥時間が長くなり、コーティングの耐薬品性が低下する。一方で、反応性希釈剤は常にエポキシ樹脂よりも高額である。
【0006】
脂肪酸修飾エポキシ樹脂は、低VOCハイソリッドコーティングに一般的に使用される変性エポキシ樹脂の一種である。ただし、エステル基は加水分解する傾向があることから、エポキシと酸の間の反応によって生成するエステル基は、加水分解を起こす危険がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適な原料液体エポキシ樹脂は、混合物の総重量を基準にして60重量%〜95重量%、好ましくは70重量%〜90重量%のビスフェノールA及びビスフェノールFのようなビスフェノールのグリシジルエーテルを含み、ここで原料液体エポキシ樹脂のエポキシ当量(EEW)は150〜250、好ましくは160〜220、より好ましくは170〜200である。エポキシ樹脂は液体状態である。
【0017】
好適な原料液体エポキシ樹脂は、下記の化学式(I)であり、
【0018】
【化5】
式中nは0又は1である。最も好ましくは、nは0である。液体エポキシ樹脂(I)の平均n値は0〜1である。好ましくは、平均n値は0〜0.5である。最も好ましくは、平均n値は0〜0.3である、Rは独立してH又は−CH
3である。
【0019】
本明細書で使用するとき、「液体エポキシ樹脂」という用語は、いかなる溶剤も添加しないで液体状態の樹脂を指す。液体状態を達成するための液体エポキシ樹脂のエポキシ当量(EEW)は150〜250の範囲である。好ましくは液体エポキシ樹脂のEEWは170〜220である。より好ましくは、EEWは175〜200である。
【0020】
原料液体エポキシ樹脂の好適な例としては、限定するものではないが、the Dow Chemical Companyの市販製品であるD.E.R.(商標)331;the Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)354;the Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)332;the Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)330;the Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)383が挙げられる。
【0021】
原料液体エポキシ樹脂は「カルダノール」と反応する。「カルダノール」は、カシューナッツの殻から単離した油であるカシューナッツ殻液(CNSL)の一成分である。カルダノールの構造は、化学式(II)に示すように、1個のヒドロキシ基と、メタ位に脂肪族側鎖R
1とを含有するフェノールである。R
1は−C
15H
25、−C
15H
27、又は−C
15H
29である。カルダノールの含量範囲は反応混合物の総重量を基準にして5重量%〜40重量%、好ましくは10重量%〜30重量%である。
【0023】
任意追加的に、原料液体エポキシ樹脂は、混合物の総重量を基準にして0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜15重量%の二価フェノールと更に反応することができる。「二価フェノール」という用語は、2個のヒドロキシ基を含有するフェノール化合物を指す。本明細書で使用するとき、二価フェノールは、次の2つの構造のいずれかを指す:化学式(III)において、1つのベンゼン環上に2個のヒドロキシ基を有し、R
2がH又はC
1〜C
15脂肪族鎖であるフェノール;又は化学式(IV)において各環に1個のヒドロキシ基を有する2個のベンゼン環を含有し、RがH又は−CH
3であり;R
3〜R
10がH又はC
1〜C
6脂肪族鎖である組成物。
【0025】
2個のヒドロキシ基を含有するフェノールの1つの例は、カルドールである。「カルドール」もカシューナッツ殻液(CNSL)の一成分である。カルドールの構造は、5位に側鎖を有し、その側鎖が−C
15H
25、−C
15H
27、又は−C
15H
29である1,3−ジヒドロキシベンゼンである。
【0026】
2個のヒドロキシ基を含有するフェノールの別の例は、レゾルシノールである。
【0027】
化学式(IV)において、各環に1個のヒドロキシ基を有する2個のベンゼン環を含有する組成物の例は、ビスフェノールA及びビスフェノールFである。
【0028】
本発明の変性エポキシ樹脂組成物は、既知の方法、例えばエポキシ樹脂のフェノール変性反応によって調製され、その際反応性水素原子はエポキシ樹脂のエポキシ基と反応する。
【0029】
変性反応は、溶剤の存在又は不在下で、熱及び混合を適用して実施されてもよい。変性反応は、大気圧、超大気圧又は低大気圧で、20℃〜260℃、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは100℃〜180℃の温度で実施されてもよい。
【0030】
変性反応を完了するのに要する時間は、使用温度、使用分子1個につき1個を超える反応性水素原子を有する化合物の化学構造、使用するエポキシ樹脂の化学構造などの要因に依存する。温度が高い方が反応時間が短く、温度が低い方が長い反応時間を必要とする。
【0031】
一般的に、変性反応を完了するまでの時間は5分〜24時間、好ましくは30分〜8時間、より好ましくは30分〜4時間の範囲であってもよい。
【0032】
触媒も変性反応に添加してもよい。触媒の例としては、塩基性無機試薬、ホスフィン、第四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物及び第三級アミンが挙げられる。具体的には、本発明に好適な触媒としては、限定するものではないが、NaOH、KOH、酢酸エチルトリフェニルホスホニウム、イミダゾール、及びトリエチルアミンが挙げられる。触媒は、エポキシ樹脂の総重量を基準にして0.01重量%〜3重量%、好ましくは0.03重量%〜1.5重量%、より好ましくは0.05重量%〜1.5重量%の量で使用してもよい。
【0033】
本発明の変性エポキシ製品の調製に有用な反応に関するその他の詳細は、米国特許第5,736,620号及びHandbook of Epoxy Resins(Henry Lee及びKris Neville著)に記載されており、これらを参照により本明細書に援用する。
【0034】
本発明の一実施形態において、原料エポキシ樹脂、カルダノール、及び任意追加的な二価フェノールを上記の適切な量で混合し、上記の適切な変性条件下で溶解及び加熱して、本発明の変性エポキシ樹脂組成物を調製する。
【0035】
本発明の変性エポキシ樹脂組成物は、変性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準にして:i)10重量%〜90重量%、好ましくは30重量%〜70重量%の、下記化学式(I)の少なくとも1つの液体エポキシ樹脂
【0036】
【化8】
ii)10重量%〜90重量%、好ましくは30重量%〜70重量%の下記化学式(V)の少なくとも1つのカルダノール変性エポキシ化合物
【0037】
【化9】
を含み;式中、液体エポキシ樹脂(I)及びカルダノール変性エポキシ化合物(V)のnは0又は1である。最も好ましくは、nは0である。平均n値は独立して0〜1である。好ましくは、平均n値は0〜0.5である。最も好ましくは、平均n値は0〜0.3である。Rは独立してH又は−CH
3である。R
1は−C
15H
25、−C
15H
27、又は−C
15H
29である。
【0038】
液体エポキシ樹脂(I)のEEWは150〜250の範囲であり、液体エポキシ樹脂の好ましいEEWは170〜220であり、液体エポキシ樹脂のより好ましいEEWは175〜200である。
【0039】
カルダノール変性エポキシ(V)のEEWは550〜850の範囲であり、カルダノール変性エポキシの好ましいEEWは580〜800であり、カルダノール変性エポキシのより好ましいEEWは600〜750である。
【0040】
別の実施形態において、本発明のエポキシ脂組成物は、組成物の総重量を基準にして20重量%〜75重量%、好ましくは35重量%〜60重量%の式(I)の化合物、20重量%〜75重量%、好ましくは35重量%〜60重量%の式(V)の化合物、及び0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の式(X)の化合物を含み:
【0041】
【化10】
式中nは0又は1であり;Rは独立してH又は−CH
3であり;R
1は独立して−C
15H
25、−C
15H
27、又は−C
15H
29である。
【0042】
任意追加的に、本発明のエポキシ樹脂組成物は更に、組成物の総重量を基準にして、10重量%〜70重量%、好ましくは15重量%〜55重量%の式(VI)の二価フェノール変性エポキシ化合物を含み:
【0043】
【化11】
式中xは1又は2であり、好ましくはxは1であり;各nは独立して0又は1であり、より好ましくはnは0であり;Rは独立してH又はCH
3であり;R
11は二価フェノールのフラグメントである。
【0044】
更に別の実施形態において、本発明のエポキシ樹脂組成物は、組成物の総重量を基準にして0.1重量%〜15重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の式(IX)の化合物を含み:
【0045】
【化12】
式中xは1又は2であり、好ましくはxは1であり;nは独立して0又は1であり、より好ましくはnは0であり;各Rは独立してH又はCH
3であり;R
1は独立して−C
15H
25、−C
15H
27、又は−C
15H
29であり、R
11は二価フェノールのフラグメントである。
【0046】
二価フェノール変性エポキシのEEWは400〜700の範囲であり、二価フェノール変性エポキシの好ましいEEWは430〜650であり、二価フェノール変性エポキシのより好ましいEEWは450〜600である。
【0047】
二価フェノールのフラグメント、R
11は、式(VII)で表される化合物であって、
【0048】
【化13】
式中、R
2は独立してH又はC
1〜C
15アルキル又はアルケニル基である。
【0049】
より好ましい実施形態において、二価フェノールのフラグメントR
11はカルドールである。
【0050】
別の実施形態において、二価フェノールのフラグメントR
11は、式(VIII)によって表される化合物であり、
【0051】
【化14】
式中、各Rは独立してH又は−CH
3であり;R
3〜R
10はそれぞれ独立してH又はC
1〜C
6アルキル基である。
【0052】
本発明による「コーティング」は、一般的に、硬化したときに実質的に連続のフィルム又は層を形成できる組成物として理解される。本変性エポキシ樹脂は、本発明によるコーティングに使用されたときに、硬化剤と反応し、コーティングのフィルム形成樹脂の全部又は一部を形成できることは理解されるであろう。つまり、本明細書に記載の変性エポキシ樹脂は、反応し、それによってコーティングの硬化に寄与すると予想される。特定の実施形態において、1つ以上の追加のフィルム形成樹脂もコーティングに使用される。硬化剤は、例えば、アミノプラスト、ブロックイソシアネートを包含するポリイソシアネート、ポリエポキシド、β−ヒドロキシアルキルアミド、ポリ酸、無水物、有機金属酸官能性物質、ポリアミン、ポリアミド、及び前記のいずれかの混合物である。アミン系硬化剤が好ましい。
【0053】
一実施形態において、コーティング組成物は本発明の変性エポキシ樹脂組成物を含み、コーティング組成物の総重量を基準にして20重量%〜90重量%、好ましくは30重量%〜60重量%のフェナルカミン硬化剤を含む。
【0054】
フェナルカミンは、カルダノール、ホルムアルデヒド、及びポリアミンのマンニッヒ反応による縮合生成物である。フェナルカミン硬化剤の好適な例としては、限定するものではないが、市販製品のCardolite(商標)NC541、Cardolite(商標)NC541LV、Cardolite(商標)NX2015が挙げられる。エポキシ樹脂をフェナルカミン硬化剤で硬化した場合、コーティング配合物を低温硬化系に使用することができる。
【0055】
コーティング組成物は、有機溶剤も包含してもよい。好適な溶剤としては、グリコール、グリコールエーテルアルコール、アルコール、ケトン、並びにキシレン及びトルエンのような芳香族、酢酸エステル、ミネラルスピリット、ナフサ及び/又はこれらの混合物が挙げられる。「酢酸エステル」は、グリコールエーテル酢酸エステルを包含する。
【0056】
コーティング組成物は、コーティング分野で周知の手法を用いて調製される。コーティング組成物は顔料及び充填剤を包含してもよい。代表的な充填剤は、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、炭酸マグネシウム、タルク等の物質である。代表的な顔料は、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等である。充填剤及び顔料は、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0057】
必要であれば、コーティング組成物はコーティング配合分野で周知のその他の任意追加的な材料、例えば可塑剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤及び安定剤、流動性制御剤、揺変剤、有機共溶剤、反応性希釈剤、触媒、研削ビヒクル、及びその他の慣習的な助剤を含むことができる。
【0058】
コーティング組成物は、例えば、刷毛塗、ローラー塗装、スプレー法(例えばエアー霧化スプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレー、大量低圧スプレー、エアアシストエアレススプレー)のような従来塗布方法によって塗布されてもよい。
【0059】
コーティング組成物は、例えば、金属、プラスチック、木、石、ガラス、繊維、コンクリート、下塗りされた表面、過去に塗装された表面、及びセメント質基材のような基材に適用されてもよい。
【0060】
本発明のコーティングは、単独でも他のコーティングと組み合わせても使用できる。一実施形態において、コーティングは、本明細書のコーティング組成物をプライマー、タイコート、及び任意追加的にトップコートとして含む多層コーティングである。
【0061】
本発明のコーティング組成物は、限定するものではないが、船舶用塗料及び一般耐腐食性コーティング等の用途に使用できる。
【0062】
基材上に被覆されたコーティング組成物は、−15℃〜150℃の温度、典型的には室温で、乾燥又は放置乾燥される。
【実施例】
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
実施例1:
92重量部のD.E.R.(商標)331及び8重量部のカルダノールを窒素条件下、フラスコ内で混合した。混合物が90℃に達した後、200ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を180℃に加熱し、この温度で2時間保持した。エポキシ樹脂Aを得た。この生成物は約81重量%の化合物(I)及び約19重量%の化合物(V)を含有した。
【0066】
実施例2:
85重量部のD.E.R.(商標)331、7.5重量部のカルダノール及び7.5重量部のカルドールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、300ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を170℃に加熱し、この温度で3時間保持した。エポキシ樹脂Bを得た。この生成物は約57重量%の化合物(I)、17重量%の化合物(V)及び26重量%の化合物(VI)を含有した。
【0067】
実施例3:
80重量部のD.E.R.(商標)331及び20重量部のカルダノールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、400ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を160℃に加熱し、この温度で4時間保持した。エポキシ樹脂Cを得た。この生成物は約55重量%の化合物(I)及び約45重量%の化合物(V)を含有した。
【0068】
実施例4:
65重量部のD.E.R.(商標)331及び35重量部のカルダノールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、350ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を180℃に加熱し、この温度で3時間保持した。エポキシ樹脂Dを得た。この生成物は約20重量%の化合物(I)及び約80重量%の化合物(V)を含有した。
【0069】
実施例5:
70重量部のD.E.R.(商標)331、15重量部のカルダノール及び15重量部のカルドールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、250ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を180℃に加熱し、この温度で2時間保持した。エポキシ樹脂Eを得た。この生成物は約14重量%の化合物(I)、34重量%の化合物(V)及び52重量%の化合物(VI)を含有した。
【0070】
実施例6:
64重量部のD.E.R.(商標)331、30重量部のカルダノール及び6重量部のカルドールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、300ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を190℃に加熱し、この温度で1時間保持した。エポキシ樹脂Fを得た。この生成物は約11重量%の化合物(I)、68重量%の化合物(V)及び21重量%の化合物(VI)を含有した。
【0071】
実施例7:
85重量部のD.E.R.(商標)354、10重量部のカルダノール及び5重量部のレゾルシノールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、200ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を180℃に加熱し、この温度で4時間保持した。エポキシ樹脂Gを得た。この生成物は約43重量%の化合物(I)、21重量%の化合物(V)及び36重量%の化合物(VI)を含有した。
【0072】
実施例8:
85重量部のD.E.R.(商標)331、10重量部のカルダノール及び5%重量部のビスフェノールAを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、350ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を160℃に加熱し、この温度で5時間保持した。エポキシ樹脂Hを得た。この生成物は約56重量%の化合物(I)、23重量%の化合物(V)及び21重量%の化合物(VI)を含有した。
【0073】
比較例1及び2は、実質的にKR559055B1の記載通りに実施した。
【0074】
比較例1:
凝縮器及び攪拌機を備えたフラスコに、49.6重量部のD.E.R.(商標)331及び50.4重量部のカルダノールを導入し、続いて温度を140℃まで上昇した。反応を5時間維持した後、冷却を実施した。触媒はこの例では使用しなかったため、反応は完全には終了しなかった。D.E.R.(商標)331はYD−128の市販代替品である。エポキシ樹脂Iを得た。ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)は、未反応のカルダノールモノマーがエポキシ樹脂Iに残っていること、及びカルダノール変性エポキシ樹脂は全反応生成物(エポキシ樹脂I)を基準にして5重量%未満の範囲であることを示した。
【0075】
比較例2:
凝縮器及び攪拌機を備えたフラスコに89.3重量部のD.E.R.(商標)664UE及び10.7重量部のカルダノールを導入し、続いて温度を140℃まで上昇した。続いて、反応を5時間維持し、冷却を実施した。D.E.R.(商標)664UEは、nが約6の固体であり、YD−014の市販代替品である。エポキシ樹脂Jを得た。
【0076】
比較例3:
97重量部のD.E.R.(商標)331及び3重量部のカルダノールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、150ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を160℃に加熱し、この温度で1時間保持した。エポキシ樹脂Kを得た。この生成物は約93重量%の化合物(I)及び約7重量%の化合物(V)を含有した。
【0077】
比較例4:
57重量部のD.E.R.(商標)331及び43重量部のカルダノールを窒素条件下で混合した。混合物が90℃に達した後、600ppmの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70重量%メタノール溶液)を触媒として添加した。混合物を160℃に加熱し、この温度で6時間保持した。エポキシ樹脂Lを得た。この生成物は約3重量%の化合物(I)及び約97重量%の化合物(V)を含有した。
【0078】
III.結果:
粘度
【0079】
【表3】
【0080】
D.E.R.(商標)671−X75は耐腐食性コーティングに使用される一般的なエポキシ樹脂で、固体である。25部のキシレンを用いて75部のD.E.R.(商標)671−X75を溶解しても、その溶液粘度はなお非常に高い(14306cps)。D.E.R.(商標)671−X75は低VOCハイソリッドコーティングには適合しない。エポキシ樹脂J(比較例2)も固体エポキシであり、D.E.R.(商標)671−X75よりも更に溶液粘度が高い。それ故、エポキシ樹脂Jも低VOCハイソリッドコーティングに使用できない。本発明者の技術によりカルダノール、又はカルダノール及び二価フェノールで変性されたエポキシ樹脂は、すべて液体である。樹脂溶液(90重量部の樹脂及び10重量部のキシレン)の粘度はD.E.R.(商標)671−X75(75重量部のD.E.R.(商標)671及び25重量部のキシレン)よりも低い。結果として、樹脂は固体のエポキシ樹脂D.E.R.(商標)671−X75と比較して優れた作業性を示し、より固形分の高いコーティング配合物に使用できる。
【0081】
フィルム性能
90重量部のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂J及びD.E.R.(商標)671−X75に加えて)を10重量部のキシレンに溶解した後、Cardolite(商標)NC541LVで硬化した。エポキシ樹脂Jを50重量部のキシレンに溶解した。D.E.R.(商標)671−X75は直接使用した(directed used)。エポキシ樹脂J(50%キシレン)及びD.E.R.(商標)671−X75もCardolite(商標)NC541LVで硬化した。エポキシ対アミンの化学量論比は、すべての樹脂について1:1である。耐腐食性試験に使用したQパネルを除き、ほとんどの実験でQ−phosパネルを基材として使用した。塗料は23℃で7日間乾燥した。
【0082】
1)フィルム不粘着時間
【0083】
【表4】
フィルム不粘着時間は、乾燥時間のプローブである。この値が小さいことは、乾燥時間が短く、乾燥時間が速いことを意味し、好ましい。比較例のエポキシ樹脂I及びLは、他の変性エポキシ樹脂よりもかなり遅い乾燥時間を示した。
【0084】
2)ポットライフ
【0085】
【表5】
ポットライフは塗料の使用範囲を示唆する。ポットライフが長い方が好ましい。変性エポキシは、液体エポキシ樹脂D.E.R.(商標)331と比較して改良されたポットライフを示した。
【0086】
3)硬度
【0087】
【表6】
比較例エポキシ樹脂I及びLは他のエポキシ樹脂よりもはるかに軟らかかった。
【0088】
4)くさび曲げ
【0089】
【表7】
くさび曲げは、フィルムの可撓性を示す。エポキシ樹脂K、D.E.R.(商標)331及びD.E.R.(商標)671−X75はすべて、くさび曲げを実施した後に亀裂を生じ、脆いフィルムが生成したことを暗示した。カルダノール、又はカルダノール及び二価フェノールで変性したエポキシ樹脂は、より高い可撓性を示す。
【0090】
5)耐衝撃性
【0091】
【表8】
カルダノール、又はカルダノール及び二価フェノールで変性したエポキシ樹脂で、より優れた耐衝撃性が確認された。D.E.R.(商標)331及びD.E.R.(商標)671−X75は、より低い耐衝撃性を示した。
【0092】
耐腐食性
【0093】
【表9】
耐塩水噴霧性は、エポキシ樹脂Iの耐腐食性が低いことを示す。
【0094】
塗料
【0095】
【表10】
この塗料を用いてフィルムを塗布した。フィルムの乾燥膜厚は約80μmであった。Qパネルを基材として使用する。塗料は23℃で7日間乾燥した。
【0096】
【表11】