特許第5973653号(P5973653)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973653
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   F16H3/66 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-508657(P2015-508657)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2014058744
(87)【国際公開番号】WO2014157454
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-70470(P2013-70470)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴義
(72)【発明者】
【氏名】青木 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 伸忠
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆
(72)【発明者】
【氏名】池 宣和
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 光史
(72)【発明者】
【氏名】森瀬 勝
(72)【発明者】
【氏名】大板 慎司
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−210087(JP,A)
【文献】 特開2002−206601(JP,A)
【文献】 特表2004−529297(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010063490(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0144486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材に入力された動力を変速して出力部材に出力する自動変速機であって、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第1回転要素と第2回転要素と第3回転要素とを有する第1遊星歯車機構と、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第4回転要素と第5回転要素と第6回転要素とを有する第2遊星歯車機構と、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第7回転要素と第8回転要素と第9回転要素とを有する第3遊星歯車機構と、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第10回転要素と第11回転要素と第12回転要素とを有する第4遊星歯車機構と、
前記第1回転要素と前記第4回転要素とを連結する第1連結要素と、
前記第3回転要素と前記第11回転要素とを連結する第2連結要素と、
前記第5回転要素と前記第9回転要素とを連結する第3連結要素と、
前記第7回転要素と前記第10回転要素とを連結する第4連結要素と、
前記第10回転要素と前記第11回転要素と前記第12回転要素とのいずれか2つを係合すると共に、該係合を解放可能な第1クラッチと、
前記第2回転要素と前記第8回転要素とを係合すると共に、該係合を解放可能な第2クラッチと、
前記第6回転要素と前記第8回転要素とを係合すると共に、該係合を解放可能な第3クラッチと、
前記第6回転要素と前記第4連結要素とを係合すると共に、該係合を解放可能な第4クラッチと、
前記第1連結要素を自動変速機ケースに固定可能に係合すると共に、該係合を解放する第1ブレーキと、
前記第12回転要素を前記自動変速機ケースに固定可能に係合すると共に、該係合を解放する第2ブレーキと、を備え、
前記入力部材を前記第5回転要素に連結し、
前記出力部材を前記第2回転要素に連結した、
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
前記第1クラッチは、前記第10回転要素と前記第11回転要素とを係合すると共に、該係合を解放可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記第1クラッチは、前記第11回転要素と前記第12回転要素とを係合すると共に、該係合を解放可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記第1クラッチは、前記第10回転要素と前記第12回転要素とを係合すると共に、該係合を解放可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項5】
前記第1回転要素は、第1サンギヤであり、
前記第2回転要素は、第1キャリヤであり、
前記第3回転要素は、第1リングギヤであり、
前記第4回転要素は、第2サンギヤであり、
前記第5回転要素は、第2キャリヤであり、
前記第6回転要素は、第2リングギヤであり、
前記第7回転要素は、第3サンギヤであり、
前記第8回転要素は、第3キャリヤであり、
前記第9回転要素は、第3リングギヤであり、
前記第10回転要素は、第4サンギヤであり、
前記第11回転要素は、第4キャリヤであり、
前記第12回転要素は、第4リングギヤである、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動変速機。
【請求項6】
前進1速段は、前記第4クラッチと、前記第1ブレーキと、前記第2ブレーキを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第2クラッチと、前記第3クラッチとを解放することにより形成し、
前進2速段は、前記第3クラッチと、前記第1ブレーキと、前記第2ブレーキとを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第2クラッチと、前記第4クラッチとを解放することにより形成し、
前進3速段は、前記第3クラッチと、前記第4クラッチと、前記第2ブレーキとを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第2クラッチと、前記第1ブレーキとを解放することにより形成し、
前進4速段は、前記第1クラッチと、前記第3クラッチと、前記第2ブレーキとを係合すると共に、前記第2クラッチと、前記第4クラッチと、前記第1ブレーキとを解放することにより形成し、
前進5速段は、前記第1クラッチと、前記第2クラッチと、前記第2ブレーキとを係合すると共に、前記第3クラッチと、前記第4クラッチと、前記第1ブレーキとを解放することにより形成し、
前進6速段は、前記第2クラッチと、前記第4クラッチと、前記第2ブレーキとを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第3クラッチと、前記第1ブレーキとを解放することにより形成し、
前進7速段は、前記第1クラッチと、前記第2クラッチと、前記第4クラッチとを係合すると共に、前記第3クラッチと、前記第1ブレーキと、前記第2ブレーキとを解放することにより形成し、
前進8速段は、前記第1クラッチと、前記第4クラッチと、前記第1ブレーキとを係合すると共に、前記第2クラッチと、前記第3クラッチと、前記第2ブレーキとを解放することにより形成し、
前進9速段は、前記第2クラッチと、前記第4クラッチと、前記第1ブレーキとを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第3クラッチと、前記第2ブレーキとを解放することにより形成し、
前進10速段は、前記第1クラッチと、前記第2クラッチと、前記第1ブレーキとを係合すると共に、前記第3クラッチと、前記第4クラッチと、前記第2ブレーキとを解放することにより形成し、
前進11速段は、前記第2クラッチと、前記第3クラッチと、前記第1ブレーキとを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第4クラッチと、前記第2ブレーキとを解放することにより形成し、
前進12速段は、前記第1クラッチと、前記第3クラッチと、前記第1ブレーキとを係合すると共に、前記第2クラッチと、前記第4クラッチと、前記第2ブレーキとを解放することにより形成し、
後進1速段は、前記第2クラッチと、前記第1ブレーキと、前記第2ブレーキとを係合すると共に、前記第1クラッチと、前記第3クラッチと、前記第4クラッチとを解放することにより形成した、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、入力部材に入力された動力を変速して出力部材に出力する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車輌の燃費や加速性能向上を図るために、車輌に搭載される有段式自動変速機の多段化が進められている。従来、このような有段式の自動変速機にあって、4つの遊星歯車機構と、3つのクラッチ及びブレーキからなる6つの係合要素とによって前進12速段と後進段とを形成したものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0144486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、このような自動変速機は、変速段数が多くなるほど、レシオ・スプレッド(変速比幅、以下、単にスプレッドという)を広くすることができ、最適なギヤ段への変速が可能になる。
【0005】
また、遊星歯車機構としては、シングルピニオン式の遊星歯車機構と、ダブルピニオン式の遊星歯車機構とがあるが、シングルピニオン式の遊星歯車機構は、ピニオンギヤが径方向に2列配設されるダブルピニオン式の遊星歯車機構に比べて、ピニオンギヤ同士の噛合箇所がないため、構造がシンプルでありかつ、噛み合い損失が小さい。従って、自動変速機を構成する際には、出来るだけ多くのシングルピニオン式の遊星歯車機構を使用していることが望まれる。
【0006】
更に、上記係合要素は解放されていたとしても引き摺り損失が発生する。そのため、各変速段において出来るだけ解放される係合要素の数が少ないと共に、使用頻度の高い変速段において引き摺り損失の大きな係合要素が係合されていることが望ましい。
【0007】
上述した特許文献1は、4つの遊星歯車機構と6つの係合要素とによって、前進12速段の自動変速機を構成しているが、これら4つの遊星歯車機構と6つの係合要素とによって構成可能な自動変速機のパターンは無数に存在し、その中から上述したような自動変速機として望ましい機能を出来るだけ多く持った自動変速機を案出することは、非常に困難である。
【0008】
そこで、4つの遊星歯車機構と6つの係合要素とを用いて、前進12速段及び後進1速段を達成可能な新たな自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本自動変速機(1,1,1)は(例えば図1乃至図5参照)、入力部材(12)に入力された動力を変速して出力部材(13)に出力する自動変速機(1,1,1)であって、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第1回転要素(S1)と第2回転要素(CR1)と第3回転要素(R1)とを有する第1遊星歯車機構(PM1)と、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第4回転要素(S2)と第5回転要素(CR2)と第6回転要素(R2)とを有する第2遊星歯車機構(PM2)と、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第7回転要素(S3)と第8回転要素(CR3)と第9回転要素(R3)とを有する第3遊星歯車機構(PM3)と、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第10回転要素(S4)と第11回転要素(CR4)と第12回転要素(R4)とを有する第4遊星歯車機構(PM4)と、
前記第1回転要素(S1)と前記第4回転要素(S2)とを連結する第1連結要素(31)と、
前記第3回転要素(R1)と前記第11回転要素(CR4)とを連結する第2連結要素(32)と、
前記第5回転要素(CR2)と前記第9回転要素(R3)とを連結する第3連結要素(33)と、
前記第7回転要素(S3)と前記第10回転要素(S4)とを連結する第4連結要素(34)と、
前記第10回転要素(S4)と前記第11回転要素(CR4)と前記第12回転要素(R4)とのいずれか2つを係合すると共に、該係合を解放可能な第1クラッチ(C1)と、
前記第2回転要素(CR1)と前記第8回転要素(CR3)とを係合すると共に、該係合を解放可能な第2クラッチ(C2)と、
前記第6回転要素(R2)と前記第8回転要素(CR3)とを係合すると共に、該係合を解放可能な第3クラッチ(C3)と、
前記第6回転要素(R2)と前記第4連結要素(34)とを係合すると共に、該係合を解放可能な第4クラッチ(C4)と、
前記第1連結要素(31)を自動変速機ケース(17)に固定可能に係合すると共に、該係合を解放する第1ブレーキ(B1)と、
前記第12回転要素(R4)を前記自動変速機ケース(17)に固定可能に係合すると共に、該係合を解放する第2ブレーキ(B2)と、を備え、
前記入力部材(12)を前記第5回転要素(CR2)に連結し、
前記出力部材(13)を前記第2回転要素(CR1)に連結した、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように自動変速機を構成することによって、4つの遊星歯車機構と、4つのクラッチと、2つのブレーキとを用いて、前進12速段及び後進1速段を達成することが可能になる。これにより、最低変速段から最高変速段までのギヤのスプレッドが広くなり、車輌の加速性能及び燃費性能を向上させることができる。
【0011】
また、上記6つの係合要素の内、3要素を係合、残りの3要素を解放して、各変速段を形成することになるため、変速段を構成した際に解放される係合要素が比較的少なく、これら解放された係合要素による引き摺り損失を低減して自動変速機の伝達効率を向上することができる。
【0012】
更に、上記自動変速機は、例えば、4つの遊星歯車機構をシングルピニオン式の遊星歯車機構とすることが可能な構成となり、このシングルピニオン式の遊星歯車機構を採用することによって、ギヤの噛み合い損失を低減して自動変速機の伝達効率を向上させることができ、かつ、部品点数を少なくして自動変速機の組み立て工数及びコストを低減することができる。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図。
図2】第1の実施の形態に係る自動変速機の係合表。
図3】第1の実施の形態に係る自動変速機の速度線図。
図4】第2の実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図。
図5】第3の実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態に係る自動変速機1図1乃至図3に沿って説明する。まず、本自動変速機1の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFFタイプ(フロントエンジン・フロントドライブ)の車輌100に用いて好適な自動変速機1は、内燃エンジン(駆動源)2に接続し得る自動変速機1の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心としてトルクコンバータなどの発進装置4と、変速機構5とを備えている。
【0016】
変速機構5は、4つのシングルピニオン式の遊星歯車機構PM1〜PM4と、4つのクラッチC1,C2,C3,C4と、2つのブレーキB1,B2と、を備えており、内燃エンジン2からの動力が上記発進装置4に駆動連結される入力軸(入力部材)12を介して入力されると共に、この入力された動力を変速して第1遊星歯車機構PM1と第3遊星歯車機構PM3との間の出力部材としての出力軸13及びカウンタギヤ41から出力する有段式変速機構となっている。出力軸13から出力された動力は、カウンタギヤ41を介してカウンタ軸42へと伝達され、このカウンタ軸42に出力された動力は、ディファレンシャル装置43を介して駆動車輪へと伝達される。
【0017】
図1に示すように、上述した遊星歯車機構PM1〜PM4は、車輌の前方側となる図中左側から車輌の後方側となる図中右側に向かって、上記入力軸12上において、第2遊星歯車機構PM2、第3遊星歯車機構PM3、第1遊星歯車機構PM1、第4遊星歯車機構PM4の順に並んで配置されている。第1遊星歯車機構PM1は、第1サンギヤS1(第1回転要素)、第1キャリヤCR1(第2回転要素)及び第1リングギヤR1(第3回転要素)を備えており、該第1キャリヤCR1が、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛合する1つのピニオンギヤP1を周方向に複数配設して、回転自在に支持するように有しているシングルピニオン式の遊星歯車機構である。
【0018】
上記第1遊星歯車機構PM1は、シングルピニオン式であるため、3つの回転要素である第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第1キャリヤCR1は、速度線図(図3参照)におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に示すと、第1サンギヤS1、第1キャリヤCR1、第1リングギヤR1となる。第1遊星歯車機構PM1のギヤ比λ(第1サンギヤS1の歯数/第1リングギヤR1の歯数)は、例えば、0.45に設定されている。
【0019】
第2遊星歯車機構PM2も、第1遊星歯車機構PM1と同様に、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されており、3つの回転要素として、第2サンギヤS2(第4回転要素)と、第2リングギヤR2(第6回転要素)と、複数のピニオンギヤP2を連結して自転かつ公転自在に保持する第2キャリヤCR2(第5回転要素)とを備えている。この第2遊星歯車機構PM2の3つの回転要素である第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第2キャリヤCR2は、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に示すと、第2サンギヤS2、第2キャリヤCR2、第2リングギヤR2となる。第2遊星歯車機構PM2のギヤ比λ(第2サンギヤS2の歯数/第2リングギヤR2の歯数)は、例えば、0.55に設定されている。
【0020】
第3遊星歯車機構PM3も、第1及び第2遊星歯車機構PM1,PM2と同様に、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されており、3つの回転要素として、第3サンギヤS3(第7回転要素)と、第3リングギヤR3(第9回転要素)と、複数のピニオンギヤP3を連結して自転かつ公転自在に保持する第3キャリヤCR3(第8回転要素)とを備えている。この第3遊星歯車機構PM3の3つの回転要素である第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、第3キャリヤCR3は、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に示すと、第3サンギヤS3、第3キャリヤCR3、第3リングギヤR3となる。第3遊星歯車機構PM3のギヤ比λ(第3サンギヤS3の歯数/第3リングギヤR3の歯数)は、例えば、0.65に設定されている。
【0021】
第4遊星歯車機構PM4も、第1乃至第3遊星歯車機構PM1〜PM3と同様に、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されており、3つの回転要素として、第4サンギヤS4(第10回転要素)と、第4リングギヤR4(第12回転要素)と、複数のピニオンギヤP4を連結して自転かつ公転自在に保持する第4キャリヤCR4(第11回転要素)とを備えている。この第4遊星歯車機構PM4の3つの回転要素である第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、第4キャリヤCR4は、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に示すと、第4サンギヤS4、第4キャリヤCR4、第4リングギヤR4となる。第4遊星歯車機構PM4のギヤ比λ(第4サンギヤS4の歯数/第4リングギヤR4の歯数)は、例えば、0.25に設定されている。
【0022】
また、第2キャリヤCR2は入力軸12に連結されて内燃エンジン2からの回転が入力されるようになっていると共に、上記第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とは第1連結要素31によって連結されている。第1リングギヤR1と第4キャリヤCR4は第2連結要素32によって連結されており、第2キャリヤCR2と第3リングギヤR3とは第3連結要素33によって連結されている。更に、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4とは第4連結要素34によって連結されていると共に、第1キャリヤCR1は出力軸13と連結されている。
【0023】
加えて、第1クラッチC1は、上述した第4サンギヤS4と第4キャリヤCR4とを係合すると共に、該係合を解放可能に構成されている。即ち、第1クラッチC1を係合することによって、第4キャリヤCR4と第4連結要素(即ち、第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4)34が連結され、第4遊星歯車機構PM4の第4サンギヤS4と第4キャリヤCR4とが同回転となることから該第4遊星歯車機構PM4を第4サンギヤS4と第4キャリヤCR4と第4リングギヤR4とが一体回転となる状態とし、また、第1クラッチC1を解放することにより、この連結(一体回転の状態)が解除される。
【0024】
第2クラッチC2は、第1キャリヤCR1と第3キャリヤCR3とを係合すると共に、該係合を解放可能に構成されている。即ち、第2クラッチC2を係合することによって、第1キャリヤCR1と第3キャリヤCR3が連結され、第2クラッチC2を解放することにより、この連結が解除される。
【0025】
第3クラッチC3は、第2リングギヤR2と第3キャリヤCR3とを係合すると共に、該係合を解放可能に構成されている。即ち、第3クラッチC3を係合することによって、第2リングギヤR2と第3キャリヤCR3が連結され、第3クラッチC3を解放することにより、この連結が解除される。
【0026】
第4クラッチC4は、第4連結要素34(即ち、第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4)と第2リングギヤR2とを係合すると共に、該係合を解放可能に構成されている。即ち、第4クラッチC4を係合することによって、第4連結要素34と第2リングギヤR2が連結され、第4クラッチC4を解放することにより、この連結が解除される。
【0027】
第1ブレーキB1は、第1連結要素(即ち、第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)31を自動変速機ケース17に固定可能に係合すると共に該係合を解放可能に構成されている。即ち、第1ブレーキB1が係合されることによって、第1連結要素31は自動変速機ケース17に固定され、第1ブレーキB1を解放することによって第1連結要素31は回転可能となる。
【0028】
第2ブレーキB2は、第4リングギヤR4を自動変速機ケース17に固定可能に係合すると共に該係合を解放可能に構成されている。即ち、第2ブレーキB2が係合されることによって、第4リングギヤR4は自動変速機ケース17に固定され、第2ブレーキB2を解放することによって第4リングギヤR4は回転可能となる。
【0029】
このように構成された変速機構5は、4つのクラッチC1〜C4及び2つのブレーキB1,B2の係合と解放の組み合わせにより前進1速段〜12速段と後進段とに切換えることができる。以下、この変速機構5の作用について、図1乃至図3に沿って説明をする。
【0030】
なお、図3に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示し、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。この図3においては、左から順に第1遊星歯車機構PM1の速度線図、第2遊星歯車機構PM2の速度線図、第3遊星歯車機構PM3の速度線図、第4遊星歯車機構PM4の速度線図が示されており、いずれの遊星歯車機構の速度線図も左からサンギヤ、キャリヤ、リングギヤの順で並んでいる。
【0031】
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1st)では、図2に示すように、第4クラッチC4、第1及び第2ブレーキB1,B2が係合され、第1乃至第3クラッチC1〜C3が解放される。すると、図1及び図3に示すように、第1ブレーキB1により第2サンギヤS2が固定されるため、第2キャリヤCR2に入力された入力軸12からの入力回転は、増速されて第2リングギヤR2に出力される。この時、第4クラッチC4が係合しているため、この第2リングギヤR2の増速回転は、第4サンギヤS4に出力される。第2ブレーキB2により第4リングギヤR4が固定されているため、第4サンギヤS4に入力された回転は、減速されて第4キャリヤCR4から第1リングギヤR1に出力される。また、第1ブレーキB1により第1サンギヤS1は固定されているため、この第1リングギヤR1の回転は更に減速されて第1キャリヤCR1から出力され、これにより、前進1速段としてギヤ比が4.677となるように出力軸13が回転する。
【0032】
前進2速段(2nd)では、第3クラッチC3、第1及び第2ブレーキB1,B2が係合され、第1,第2及び第4クラッチC1,C2,C4が解放される。すると、第1ブレーキB1により第2サンギヤS2が固定されるため、第2キャリヤCR2に入力された入力軸12からの入力回転は、増速されて第2リングギヤR2に出力される。この時、第3クラッチC3が係合しているため、この第2リングギヤR2の増速回転は、第3キャリヤCR3に出力されると共に、第3リングギヤR3には第3連結要素33を介して第2キャリヤCR2と同様に入力軸12からの入力回転が入力されている。このため、第3サンギヤS3は増速されて、その回転を第4連結要素34を介して第4サンギヤS4に出力する。第2ブレーキB2により第4リングギヤR4は固定されているため、第4サンギヤS4の増速回転は、減速されて第4キャリヤCR4から第1リングギヤR1に出力される。第1サンギヤS1は第1ブレーキB1により固定されているため、第1リングギヤR1の減速回転は、更に減速されて第1キャリヤCR1から出力される。すると第1キャリヤCR1は、前進1速段の際よりは高い回転数で回転し、これにより、前進2速段としてギヤ比が3.026となるように出力軸13が回転する。
【0033】
前進3速段(3rd)では、第3及び第4クラッチC3,C4、第2ブレーキB2が係合され、第1及び第2クラッチC1,C2、第1ブレーキB1が解放される。すると、第3クラッチC3及び第4クラッチC4が係合することによって、第2及び第3遊星歯車機構PM2,PM3が直結状態となり、第2キャリヤCR2に入力された回転は、そのまま第4サンギヤS4に出力される。第4リングギヤR4は、第2ブレーキB2により固定されているため、この第4リングギヤR4の回転は、第4キャリヤCR4から減速されて第1リングギヤR1に入力される。この時、第1サンギヤS1には、第1連結要素31を介して第2サンギヤS2から入力軸12からの入力回転がそのまま入力されており、第1キャリヤCR1は、この入力回転を減速して前進2速段よりも僅かに高い回転数で回転する。これにより、前進3速段としてギヤ比が2.231となるように出力軸13が回転する。
【0034】
前進4速段(4th)では、第1及び第3クラッチC1,C3、第2ブレーキB2が係合され、第2及び第4クラッチC2,C4、第1ブレーキB1が解放される。すると、第2ブレーキB2により第4リングギヤR4が固定されると共に、第1クラッチC1が係合されて第4キャリヤCR4と第4サンギヤS4が連結されるため、第4遊星歯車機構PM4全体が固定される。また、第4キャリヤCR4は第2連結要素32を介して第1リングギヤR1と連結していると共に、第4サンギヤS4が第4連結要素34を介して第3サンギヤS3と連結しているため、これら第1リングギヤR1及び第3サンギヤS3も固定される。また、上述したように第3サンギヤS3が固定されていると共に、第3リングギヤR3には、入力軸12からの入力回転が入力されているため、第3キャリヤCR3の回転も決定されかつ、この第3キャリヤCR3は第3クラッチC3を介して第2リングギヤR2と連結しているため、第2リングギヤR2の回転も決定される。この時、第2リングギヤR2は、入力回転が入力される第2キャリヤCR2よりも低い回転数で回転するため、第2サンギヤS2は、第2キャリヤCR2からの回転が増速されて出力される。この第2キャリヤCR2の増速回転は第1連結要素31を介して第1サンギヤS1に入力されると共に、第1リングギヤR1が固定されているため、減速されて第1キャリヤCR1へと出力される。すると、第1キャリヤCR1が前進3変速段よりも僅かに高い回転数で回転し、前進4速段としてギヤ比が1.877となるように出力軸13が回転する。
【0035】
前進5速段(5th)では、第1及び第2クラッチC1,C2、第2ブレーキB2が係合され、第3及び第4クラッチC3,C4、第1ブレーキB1が解放される。すると、第2ブレーキB2及び第1クラッチC1が係合されているため、前進4速段の場合と同じく第1リングギヤR1と第3サンギヤS3が固定される。第3リングギヤR3には、第2キャリヤCR2及び第3連結要素33を介して入力軸12からの入力回転が入力されているため、第3キャリヤCR3からはこの入力回転が減速されて出力される。第2クラッチC2が係合しているため、この第3キャリヤCR3は第1キャリヤCR1と連結しており、この第3キャリヤCR3からの減速回転が第1キャリヤCR1からそのまま出力される。これにより、第1キャリヤCR1は前進4変速段の際よりも僅かに高い回転数で回転し、前進5速段としてギヤ比が1.650となるように出力軸13が回転する。
【0036】
前進6速段(6th)では、第2及び第4クラッチC2,C4、第2ブレーキB2が係合され、第1及び第3クラッチC1,C3、第1ブレーキB1が解放される。すると、第2ブレーキB2により第4リングギヤR4が固定されているため、第4サンギヤS4の回転数は第4キャリヤCR4に対して高くなるように決まり、また、第4連結要素34によりこの第4サンギヤS4は第3サンギヤS3と連結されかつ、第4クラッチC4を介して第2リングギヤR2とも連結されている。このため、これら第3サンギヤS3及び第2リングギヤR2も第4サンギヤS4と同回転となる。また、第1連結要素31を介して第2サンギヤS2と第1サンギヤS1とが、第2連結要素32を介して第4キャリヤCR4と第1リングギヤR1とが連結して同回転となる。更に、第2クラッチC2により第3キャリヤCR3と第1キャリヤCR1とが同回転となり、第2キャリヤCR2及び第3リングギヤR3に入力された入力回転は、上記第1乃至第4遊星歯車機構PM1〜PM4によって減速されて前進5速段の際よりも僅かに高い回転数で回転する第1キャリヤCR1から出力される。これにより、前進6速段としてギヤ比が1.360となるように出力軸13が回転する。
【0037】
前進7速段(7th)では、第1,第2及び第4クラッチC1,C2,C4が係合され、第3クラッチC3、第1及び第2ブレーキB1,B2が解放される。すると、第1乃至第4遊星歯車機構PM1〜PM4の各回転要素が全て同回転となって直結状態となり、第2キャリヤCR2及び第3リングギヤR3に入力された入力軸12からの入力回転は、第1キャリヤCR1からそのまま出力される。これにより、前進7速段としてギヤ比が1.000となるように出力軸13が回転する。
【0038】
前進8速段(8th)では、第1及び第4クラッチC1,C4、第1ブレーキB1が係合され、第2及び第3クラッチC2,C3、第2ブレーキB2が解放される。すると、第1ブレーキB1により第2サンギヤS2が固定されているため、第2キャリヤCR2から入力された入力軸12からの入力回転は、第2リングギヤR2から増速されて出力される。第4クラッチC4が係合されているため、この第2リングギヤR2の回転は、第4連結要素34に伝達され、第1クラッチC1が係合して直結状態の第4遊星歯車機構PM4を介して第1リングギヤR1に出力される。第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1により固定されているため、上記第1リングギヤR1の増速回転は減速されて第1キャリヤCR1から出力される。これにより、第1キャリヤCR1の回転は、入力軸12からの入力回転よりも高い回転となり、前進8速段としてギヤ比が0.935となるように出力軸13が回転する。
【0039】
前進9速段(9th)では、第2及び第4クラッチC2,C4、第1ブレーキB1が係合され、第1及び第3クラッチC1,C3、第2ブレーキB2が解放される。すると、第1ブレーキB1により第2サンギヤS2が固定されているため、第2キャリヤCR2に入力された入力軸12からの入力回転は、増速されて第2リングギヤR2から出力される。この第2リングギヤR2からの増速回転は、第4クラッチC4が係合されているため第3サンギヤS3に入力される。第3リングギヤR3には第2キャリヤCR2と同じく入力回転が入力されているため、第3キャリヤCR3は、この第3リングギヤR3からの入力回転は、増速されて第3キャリヤCR3から出力される。第3キャリヤCR3は、クラッチC2により第1キャリヤCR1と連結しており、第1キャリヤCR1は、前進8速段よりも高い回転で第3キャリヤCR3と共に回転する。これにより、前進9速段としてギヤ比が0.822となるように出力軸13が回転する。
【0040】
前進10速段(10th)では、第1及び第2クラッチC1,C2、第1ブレーキB1が係合され、第3及び第4クラッチC3,C4、第2ブレーキB2が解放される。すると、第1クラッチC1が係合されることにより第4遊星歯車機構PM4は直結状態となり、また、第1ブレーキB1により第1サンギヤS1が固定されているため、第1キャリヤCR1は、第1リングギヤR1に対して減速して回転する。また、第1キャリヤCR1は、第2クラッチC2が係合しているため、第3キャリヤCR3と連結している。このため、第2キャリヤCR2及び第3連結要素33を介して第3リングギヤR3に入力軸12からの入力回転が入力されると、第3サンギヤS3及び第1リングギヤR1は、同回転でそれぞれ第3及び第1キャリヤCR3,CR1よりも高い回転数で回転し、第3及び第1キャリヤCR3,CR1は、前進9速段よりも高い回転数で回転する。これにより、前進10速段としてギヤ比が0.707となるように出力軸13が回転する。
【0041】
前進11速段(11th)では、第2及び第3クラッチC2,C3、第1ブレーキB1が係合され、第1及び第4クラッチC1,C4、第2ブレーキB2が解放される。すると、第1ブレーキB1により第2サンギヤS2が固定されているため、第2キャリヤCR2に入力された入力軸12からの入力回転は、増速されて第2リングギヤR2に出力される。この時、第3クラッチC3及び第2クラッチC2が係合しているため、第2リングギヤR2は、第3キャリヤCR3を介して第1キャリヤCR1と連結されており、この第2リングギヤR2の増速回転がそのまま第1キャリヤCR1に出力される。すると、この第1キャリヤCR1は、前進10速段よりも高い回転数で回転し、前進11速段としてギヤ比が0.645となるように出力軸13が回転する。
【0042】
前進12速段(12th)では、第1及び第3クラッチC1,C3、第1ブレーキB1が係合され、第2及び第4クラッチC2,C4、第2ブレーキB2が解放される。すると、第1ブレーキB1により第2サンギヤS2が固定されているため、第2キャリヤCR2に入力された入力軸12からの入力回転は、増速されて第2リングギヤR2に出力される。第3リングギヤR3には、入力軸12からの入力回転が入力されていると共に、第3キャリヤCR3には、第3クラッチC3が係合していることにより上記第2リングギヤR2の増速回転が入力されているため、第3サンギヤS3は、この第3キャリヤCR3よりも更に増速されて回転する。第1クラッチC1が係合されているため、第4遊星歯車機構PM4は直結状態となり、上記第3サンギヤS3の増速回転は第1リングギヤR1にそのまま入力され、第1ブレーキB1により第1サンギヤS1が固定されているため、この第1リングギヤR1に入力された増速回転は、減速されて第1キャリヤCR1に出力される。すると、第1キャリヤCR1は、前進11速段よりも高い回転数で回転をし、前進12速段としてギヤ比が0.605となるように出力軸13が回転する。
【0043】
後進段(Rev)では、第2クラッチC2、第1及び第2ブレーキB1,B2が係合され、第1,第3及び第4クラッチC1,C3,C4が解放される。すると、第2キャリヤCR2及び第3連結要素33を介して第3リングギヤR3に入力軸12からの入力回転が入力される。この時、第2クラッチC2が係合していることにより第3キャリヤCR3は第1キャリヤCR1に連結されていると共に、第3サンギヤS3は、大幅に逆転増速される。第3サンギヤS3の逆転増速回転は、第4連結要素34を介して第4サンギヤS4に入力され、この第4サンギヤS4の逆転回転は、第2ブレーキB2により第4リングギヤR4が固定されているため、減速されて第4キャリヤCR4から第1リングギヤR1に入力される。この第1リングギヤR1に入力された逆転回転は、第1ブレーキB1により第1サンギヤS1が固定されていることにより、更に減速されて第1キャリヤCR1から出力され、これにより、後進段としてギヤ比が―3.063となるように出力軸13が回転する。
【0044】
このように自動変速機1を構成することによって、4つの遊星歯車機構PM1〜PM4と、4つのクラッチC1〜C4と、2つのブレーキB1,B2とを用いて、前進12速段及び後進1速段を達成することができる。これにより、最低変速段から最高変速段までのギヤのスプレッドが本実施の形態においては、7.731と広くなり、車輌の加速性能及び燃費性能を向上させることができる。また、前進時の各変速段の間のステップ比も、ばらつきが少なく比較的に良好であり、最適な変速段に円滑に変速することができる。
【0045】
更に、上記6つの係合要素の内、3要素を係合、残りの3要素を解放して、各変速段を形成することになるため、変速段を構成した際に解放される係合要素が比較的少なく、これら解放された係合要素による引き摺り損失を低減して自動変速機の伝達効率を向上することができる。特に第2及び第3クラッチC2,C3は、トルク容量(トルク分担率)が他の係合要素C1,C4,B1,B2に比して大きくて摩擦板の数も多いため、引き摺り損失も大きいが、例えば、高速道路走行時などの長距離走行時に使用頻度の高い直結変速段(本実施の形態では前進7速段)以上の変速段(本実施の形態では第2クラッチC2は前進9〜11速段、第3クラッチC3は前進11〜12速段)にて係合するようになっているため、より、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。更にこれに加えて、第1もしくは第4クラッチC1,C4と、第1もしくは第2ブレーキB1,B2のトルク容量を小さく構成することができるため、これらの摩擦係合要素の摩擦板の枚数を減らして、自動変速機の全長及びコストを低減することができる。
【0046】
また、上記自動変速機は、4つの遊星歯車機構PM1〜PM4全てをシングルピニオン式の遊星歯車機構により構成しており、ギヤの噛み合い損失を低減して自動変速機の伝達効率を向上させることができかつ、部品点数を少なくして自動変速機の組み立て工数及びコスト低減することができる。特に、本実施の形態においては、全ての前進段におけるギヤ効率を95%以上にすることが可能であり、また、ピニオンギヤの回転数も比較的に低く構成することができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について、図4に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態に対して変更された部分だけを説明し、その他の部分については同符号を用いて、その説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、本第2の実施の形態に係る自動変速機1は、第1の実施の形態に係る自動変速機1に比して、第1クラッチC1の配置(連結関係)を変更したものである。即ち、本第2の実施の形態における第1クラッチC1は、第4キャリヤCR4と第4リングギヤR4とを係合すると共に、該係合を解放可能に構成されている。従って、第1クラッチC1を係合することによって、第4キャリヤCR4と第4リングギヤR4とが連結され、第4遊星歯車機構PM4の第4キャリヤCR4と第4リングギヤR4とが同回転となることから該第4遊星歯車機構PM4を第4サンギヤS4と第4キャリヤCR4と第4リングギヤR4とが一体回転となる状態とし、また、第1クラッチC1を解放することにより、この連結(一体回転の状態)が解除される。
【0049】
なお、本第2の実施の形態では、第1クラッチC1の配置(連結関係)を変更したが、係合時に第4遊星歯車機構PM4を一体回転の状態にし、解放時にその一体回転の状態を解除するという役目として、第1クラッチC1の役目は同様である。従って、第2の実施の形態における、これ以外の構成、作用、効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
<第3の実施の形態>
ついで、上記第1及び第2の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態について、図5に沿って説明する。なお、本第3の実施の形態の説明においては、第1及び第2の実施の形態に対して変更された部分だけを説明し、その他の部分については同符号を用いて、その説明を省略する。
【0051】
図5に示すように、本第3の実施の形態に係る自動変速機1は、第1及び第2の実施の形態に係る自動変速機1,1に比して、第1クラッチC1の配置(連結関係)を変更したものである。即ち、本第3の実施の形態における第1クラッチC1は、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とを係合すると共に、該係合を解放可能に構成されている。従って、第1クラッチC1を係合することによって、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とが連結され、第4遊星歯車機構PM4の第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とが同回転となることから該第4遊星歯車機構PM4を第4サンギヤS4と第4キャリヤCR4と第4リングギヤR4とが一体回転となる状態とし、また、第1クラッチC1を解放することにより、この連結(一体回転の状態)が解除される。
【0052】
なお、本第3の実施の形態では、第1クラッチC1の配置(連結関係)を変更したが、係合時に第4遊星歯車機構PM4を一体回転の状態にし、解放時にその一体回転の状態を解除するという役目として、第1クラッチC1の役目は同様である。従って、第3の実施の形態における、これ以外の構成、作用、効果は、第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
なお、上記実施の形態において、駆動源として内燃エンジンを用いたが、電気モータなどを用いてもよく、また、これら内燃エンジンと電気モータとを組み合わせて駆動源としても良い。また、上記実施の形態に係る自動変速機は、少なくとも前進12速段及び後進1速段を形成可能であるが、全ての変速段を必ずしも使用する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本自動変速機は、乗用車、トラック等の車輌に用いることが可能であり、特にギヤのスプレッドが広く、かつ伝達効率の向上を図ることが求められるものに用いて好適である。
【符号の説明】
【0055】
,1,1:自動変速機
12:入力部材(入力軸)
13:出力部材(出力軸)
17:自動変速機ケース
31:第1連結要素
32:第2連結要素
33:第3連結要素
34:第4連結要素
PM1:第1遊星歯車機構
S1:第1回転要素、第1サンギヤ
CR1:第2回転要素、第1キャリヤ
R1:第3回転要素、第1リングギヤ
PM2:第2遊星歯車機構
S2:第4回転要素、第2サンギヤ
CR2:第5回転要素、第2キャリヤ
R2:第6回転要素、第2リングギヤ
PM3:第3遊星歯車機構
S3:第7回転要素、第3サンギヤ
CR3:第8回転要素、第3キャリヤ
R3:第9回転要素、第3リングギヤ
PM4:第4遊星歯車機構
S4:第10回転要素、第4サンギヤ
CR4:第11回転要素、第4キャリヤ
R4:第12回転要素、第4リングギヤ
C1:第1クラッチ
C2:第2クラッチ
C3:第3クラッチ
C4:第4クラッチ
B1:第1ブレーキ
B2:第2ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5