(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2電極に隣接した発光ユニットと前記第2電極との間に追加の電子輸送層が備えられ、前記追加の電子輸送層は、n型ドーパントによってドーピングされた第1電子輸送層と、金属塩、金属酸化物、または有機金属塩によってドーピングされた第2電子輸送層とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
前記電荷発生層のn型有機物層のLUMOエネルギー準位は、前記電荷発生層のp型有機物層のHOMOエネルギー準位と等しいかより大きい値を有することを特徴とする、請求項6に記載の有機発光素子。
前記電荷発生層のp型有機物層は、HOMOエネルギー準位が、前記電荷発生層のn型有機物層のLUMOエネルギー準位との差が2eV以下であることを特徴とする、請求項6に記載の有機発光素子。
前記第1電子輸送層のn型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および金属化合物からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
前記第1電子輸送層のn型ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Th、Dy、Ho、Er、Em、Gd、Yb、Lu、Y、Mn、および前記金属のうちの1以上の金属を含む金属化合物の中から選択された1以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
前記第1電子輸送層のn型ドーパントは、第1電子輸送層の総重量を基準として、1〜50重量%の含有量で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
前記第2電子輸送層は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物または酸化物、または有機金属錯体によってドーピングされたことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
前記第2電子輸送層中の金属塩、金属酸化物、または有機金属塩の含有量は、第2電子輸送層の総重量を基準として、10〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
前記発光ユニットは、正孔輸送層、正孔注入層、正孔の輸送および注入を行う層、バッファー層、電子遮断層、電子輸送層、電子注入層、電子の輸送および注入を行う層、および正孔遮断層のうちの1層以上をさらに含むことを特徴とする、請求項21に記載の有機発光素子。
前記第1電子輸送層および前記第2電子輸送層は、それぞれ独立に、アントラセンコアにn型置換基を有する電子輸送物質、ビアントラセンコアにn型置換基を有する電子輸送物質、または有機金属錯体を含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の有機発光素子。
前記第1電子輸送層および前記第2電子輸送層は、それぞれ独立に、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、キノリン基、およびフェナントロリン基から選択される官能基を有する化合物;およびアルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンのうちの少なくとも1種を含む有機金属錯体化合物のうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の有機発光素子。
前記有機金属錯体の配位子は、キノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、およびアゾメチン類の中から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の有機発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施態様を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明では、便宜のために特定の符号を参照して説明するが、本発明は、当該符号に限定されず、関連する説明は対応する構成にすべて適用される。
【0012】
本明細書において、n型とは、n型半導体特性を意味する。つまり、n型とは、LUMO(lowest unoccupied molecular orbital)エネルギー準位を通して電子の注入を受けたり輸送を行う特性であり、これは、電子の移動度が正孔の移動度より大きい物質の特性として定義できる。逆に、p型とは、p型半導体特性を意味する。つまり、p型は、HOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギー準位を通して正孔の注入を受けたり輸送を行う特性であり、これは、正孔の移動度が電子の移動度より大きい物質の特性として定義できる。本明細書において、n型特性を有する化合物または有機物層は、n型化合物またはn型有機物層として言及され得る。また、p型特性を有する化合物または有機物層は、p型化合物またはp型有機物層として言及され得る。さらに、n型ドーピングは、n型特性を有するようにドーピングされたことを意味する。
【0013】
図1は、本明細書に記載された一実施態様にかかる有機発光素子の積層構造を示し、
図3は、
図1に示された有機発光素子における電荷の流れを示す。
【0014】
図1に示しているように、一実施態様にかかる有機発光素子は、第1電極(110)と第2電極(120)との間に2つの発光ユニット(210、220)が位置し、2つの発光ユニット(210、220)の間には、電荷発生層(510)および2つの層からなる電子輸送層が位置する。この時、電荷発生層(510)は、第2電極(120)に隣接した発光ユニット(220)に隣接して位置し、電子輸送層は、第1電極(110)に隣接した発光ユニット(210)に隣接して位置する。電子輸送層は、n型ドーパントによってドーピングされた第1電子輸送層(310)と、金属塩、金属酸化物、または有機金属塩によってドーピングされた第2電子輸送層(410)とを含み、第1電子輸送層(310)は、電荷発生層(510)に隣接して位置し、第2電子輸送層(410)は、第1電極(110)に隣接した発光ユニット(210)に隣接して位置する。
【0015】
図1によれば、第1電極(110)と第2電極(120)との間に2つの発光ユニット(210、220)が備えられる。前記2つの発光ユニット(210、220)の間には、電荷発生層(510)が備えられる。前記発光ユニットのうちの第1電極により近く位置した発光ユニット(210)と電荷発生層(510)との間に、第1電子輸送層(310)と、第2電子輸送層(410)とが備えられる。
図1には、第1電極(110)上に、発光ユニット(210)、第2電子輸送層(410)、第1電子輸送層(310)、電荷発生層(510)、発光ユニット(220)、および第2電極(120)が積層された構造が示されるが、逆に、第2電極(120)上に、発光ユニット(220)、電荷発生層(510)、第1電子輸送層(310)、第2電子輸送層(410)、発光ユニット(210)、および第1電極(110)が積層された構造も含まれる。
【0016】
本明細書において、隣接とは、隣接するものとして言及された層のうち最も近い層の配置関係を意味する。例えば、隣接する2つの発光ユニットとは、複数の発光ユニットのうち最も近く配置された2つの発光ユニットの配置関係を意味する。前記隣接とは、場合によって、2層が物理的に接する場合を意味することもでき、2層の間に言及されていない他の層が配置されてもよい。例えば、第2電極に隣接する発光ユニットは、発光ユニットのうちの第2電極に最も近く配置された発光ユニットを意味する。
【0017】
また、前記第2電極と発光ユニットは物理的に接することもできるが、前記第2電極と前記発光ユニットとの間に、発光ユニット以外の他の層が配置されてよい。しかし、隣接する2つの発光ユニットの間には、電荷発生層が備えられる。
【0018】
本明細書において、第1電極および第2電極は、外部電圧を印加するためのものであって、導電性を有するものであれば特に限定されない。例えば、前記第1電極は陽極であってよく、前記第2電極は陰極であってよい。
【0019】
本明細書において、発光ユニット(210、220)とは、発光できる機能を有するユニットであれば特に制限されない。例えば、発光ユニット(210、220)は、1層以上の発光層を含むことができる。必要によって、発光ユニット(210、220)は、発光層以外の有機物層を1層以上含むことができる。
【0020】
一実施例において、発光層は、正孔と電子がそれぞれ輸送されて結合させることにより、可視光線領域の光を発し得る物質を含むことができる。発光層材料としては、当該技術分野で知られている材料を使用することができる。例えば、発光層材料としては、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質を使用することができる。発光層材料の具体例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq
3);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾール、およびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン;およびルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0021】
一実施例において、発光ユニット(210、220)は、発光層のほか、1つ以上の有機物層を追加的に備えることができる。追加の有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、正孔の輸送および注入を行う層、バッファー層、電子遮断層、電子輸送層、電子注入層、電子の輸送および注入を行う層、正孔遮断層などであってよい。ここで、正孔輸送層、正孔注入層、正孔の輸送および注入を行う層、または電子遮断層は、発光層より第1電極(110)により近く配置されてよい。電子輸送層、電子注入層、電子の輸送および注入を行う層、または正孔遮断層は、発光層より第2電極(120)により近く配置されてよい。正孔遮断層を使用するか否かは、発光層の性質によって決定できる。例えば、発光層の性質がn型に近い場合には、正孔遮断層を使用しなくてもよいが、発光層の性質がp型の場合には、正孔遮断層の使用を考慮することができる。また、発光層のHOMOエネルギー準位および電子輸送層のHOMOエネルギー準位の関係を考慮して、正孔遮断層を使用するか否かを決定することもできる。発光層のHOMOエネルギー準位が電子輸送層のHOMOエネルギー準位より大きい値を有する場合には、正孔遮断層の導入を考慮することができる。ただし、この場合、電子輸送層のHOMO準位が発光層のHOMO準位より大きい場合、電子輸送層自体が正孔遮断層の役割を果たすこともできる。一つの例として、電子輸送層の物質を2種以上使用することにより、電子輸送層の役割と正孔遮断層の役割を同時に果たすこともできる。
【0022】
本明細書において、電荷発生層(510)とは、外部電圧の印加なく電荷を発生する層で、発光ユニット(210、220)の間で電荷を発生することにより、有機発光素子に含まれている2つ以上の発光ユニットが発光できるようにする。本明細書に開示した一実施例による電荷発生層(510)は、n型有機物層と、p型有機物層とを含むことができる。この時、電荷発生層(510)のn型有機物層(以下、「n型電荷発生層」という)は、電荷発生層(510)のp型有機物層(以下、「p型電荷発生層」という)に比べて第1電極(110)により近く配置される。
図2に電荷発生層の一例を示した。
図2には、第1電極(110)により近く配置されたn型電荷発生層(512)と、第2電極(120)により近く配置されたp型電荷発生層(511)とを含む電荷発生層が示されている。
【0023】
一実施例において、n型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位は、p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位と等しいかより大きい値を有し、この場合、電荷発生により効果的である。例えば、n型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位は5〜7eVであり、p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位は5eV以上であってよい。
【0024】
本明細書において、エネルギー準位は、エネルギーの大きさを意味するものである。したがって、真空準位からマイナス(−)方向にエネルギー準位が表示される場合にも、エネルギー準位は、当該エネルギー値の絶対値を意味すると解釈される。例えば、HOMOエネルギー準位とは、真空準位から最高占有分子オービタル(highest occupied molecular orbital)までの距離を意味する。また、LUMOエネルギー準位とは、真空準位から最低非占有分子オービタル(lowest unoccupied molecular orbital)までの距離を意味する。
【0025】
n型電荷発生層(512)とp型電荷発生層(511)との間には、NP接合が形成されることによって電荷が発生できる。この時、n型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位とp型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位は、隣り合う有機物層間のエネルギー準位の関係を考慮して調節されてよい。例えば、n型電荷発生層(512)とp型電荷発生層(511)は、p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位が、n型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位との差が2eV以下、あるいは1eV以下となるように調節されてよい。市販の材料のエネルギー準位に基づいて判断すると、前記エネルギー準位の差は、−1eV以上1eV以下であってよく、0.01eV以上1eV以下であってもよい。
【0026】
n型電荷発生層(512)とp型電荷発生層(511)との間で発生した正孔は、p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位に容易に注入される。p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位よりn型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位が大きい場合、NP接合が容易に発生し、駆動電圧の上昇を防止することができる。本明細書において、NP接合とは、n型有機物層(512)とp型有機物層(511)とが物理的に接するだけでなく、前述のエネルギーの関係を満足する場合に発生可能である。
【0027】
NP接合が形成されると、外部電圧や光源によって正孔または電子が容易に形成される。すなわち、NP接合によって、n型電荷発生層(512)とp型電荷発生層(511)との間で正孔と電子が同時に発生する。電子は、n型電荷発生層(512)を通して第1電子輸送層(310)および第2電子輸送層(410)方向に輸送される。正孔は、p型電荷発生層(511)方向に輸送される。すなわち、p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位よりn型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位が大きい場合、正孔または電子が容易に発生し、正孔注入のための駆動電圧の上昇を防止することができる。
【0028】
本明細書の一実施例において、p型電荷発生層(511)のHOMOエネルギー準位は5eV以上であってよい。5eV以上の場合、隣接する発光ユニットへの正孔注入を効果的に行うことができる。
【0029】
p型電荷発生層(511)の材料としては、アリールアミン系化合物(aryl amine compound)を使用することができる。アリールアミン系化合物の一例としては、下記の化学式1の化合物がある。
【0031】
前記化学式1において、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立に、水素または炭化水素基である。この時、Ar
1、Ar
2、およびAr
3のうちの少なくとも1つは、芳香族ヒドロカーボン(aromatic hydrocarbon)置換体を含むことができ、各置換体は、同一のものであってもよく、それぞれ異なる置換体で構成されてもよい。Ar
1、Ar
2、およびAr
3のうち、芳香族ヒドロカーボンでないものは、水素;直鎖、分枝鎖または環状の脂肪族炭化水素;N、O、S、またはSeを含むヘテロ環基であってよい。
【0032】
前記化学式1の具体例として下記の化学式があるが、本発明の範囲が必ずしもこれらにのみ限定されるものではない。
【0034】
一実施例において、n型電荷発生層(512)は、有機物のみからなってもよい。他の実施例において、n型電荷発生層(512)は、MoO
3、V
2O
7、ReO
3のような遷移金属酸化物をさらに含むこともできる。さらに他の実施例において、n型電荷発生層(512)は、n型ドーパントを含むことができる。この時、n型ドーパントとしては、有機物または無機物であってよい。n型ドーパントが無機物の場合、アルカリ金属、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、またはFr;アルカリ土類金属、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、またはRa;希土類金属、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Th、Dy、Ho、Er、Em、Gd、Yb、Lu、Y、またはMn;または前記金属のうちの1以上の金属を含む金属化合物を含むことができる。あるいは、n型ドーパントは、シクロペンタジエン、シクロヘプタトリエン、6員ヘテロ環、またはこれらの環が含まれている縮合環を含む物質であってもよい。この時、ドーピング濃度は、0.01〜50重量%、または1〜10重量%であってよい。前記ドーピング濃度内で光吸収による効率の低下を防止することができる。
【0035】
一実施例によるn型電荷発生層(512)は、下記の化学式2の化合物を含むことができる。
【0037】
前記化学式2において、A
1〜A
6は、それぞれ水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO
2)、スルホニル(−SO
2R)、スルホキシド(−SOR)、スルホンアミド(−SO
2NR)、スルホネート(−SO
3R)、トリフルオロメチル(−CF
3)、エステル(−COOR)、アミド(−CONHRまたは−CONRR’)、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC
1〜C
12のアルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC
1〜C
12のアルキル、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC
2〜C
12のアルケニル、置換もしくは非置換の芳香族または非芳香族のヘテロ環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、または置換もしくは非置換のアラルキルアミンなどであってよい。ここで、前記RおよびR’は、それぞれ置換もしくは非置換のC
1〜C
60のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換の5〜7員ヘテロ環などであってよい。
【0038】
前記化学式2の化合物の例示的な化合物は、下記の化学式2−1〜2−6の化合物を含む。
【0039】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0040】
一実施例において、n型電荷発生層(512)は、1層のみからなってもよく、2層以上を含むこともできる。2層以上の場合、これらは、同一の物質で形成されてもよく、異なる物質で形成されてもよい。
【0041】
一つの例として、2層以上が同一の物質で構成される場合、1層はドーピングされず、残りの1層はn型ドーピングされてよい。例えば、n型電荷発生層(512)は、前記化学式2の化合物からなる層と、前記化学式2の化合物がn型ドーパントによってドーピングされた層とが積層された構造を有することができる。
【0042】
もう一つの例として、n型電荷発生層(512)は、無機物層と有機物層との積層構造であってよい。具体的には、n型電荷発生層(512)は、MoO
3層と前記化学式2の化合物からなる層であってよい。
【0043】
n型電荷発生層を2層以上で構成する場合、LUMOエネルギー準位値に応じて積層することができる。具体的には、LUMOエネルギー準位の大きい物質を用いて先に層を形成する場合、2つの物質の間のエネルギー障壁(barrier)を減少させることが可能なため、電子の移動を円滑にすることができる。これにより、駆動電圧の上昇を防止することができる。例えば、MoO
3のLUMO準位は6.7eV程度であり、前記化学式2−1の化合物のLUMO準位は5.7eVであることから、MoO
3層を先に形成することができる。
【0044】
本明細書において、電子輸送層は、第1電子輸送層(310)と、第2電子輸送層(410)とを含むことができる。第1電子輸送層(310)は、n型ドーパントによってドーピングされている。第1電子輸送層(310)は、n型ドーパントのドーピングによって電荷発生層(510)とのフェルミ準位(Fermi level)を効果的に合わせる役割を果たす。したがって、第1電子輸送層(310)は、電荷発生層(510)からの電子注入のためのエネルギー障壁(barrier)を低下させることにより、電子注入特性を向上させることができる。n型ドーピングされた第1電子輸送層のLUMOエネルギー準位は、ドーピングされていない電子輸送層に比べて、n型電荷発生層のLUMOエネルギー準位は、フェルミエネルギー準位(E
f、Fermi energy level)に近く形成される特徴がある。したがって、2層の間のエネルギー障壁(barrier)は小くなり、これによって電子注入特性が向上できる(参考文献:J.Mater.Chem.,2011,21,17476−17482)。
【0045】
第1電子輸送層(310)のLUMOエネルギー準位は、これに隣接するn型電荷発生層(512)のLUMOエネルギー準位との差が5eV以下であってよい。
【0046】
一実施例において、第1電子輸送層(310)に含まれるn型ドーパントは、アルカリ金属、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、またはFr;アルカリ土類金属、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、またはRa;希土類金属、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Th、Dy、Ho、Er、Em、Gd、Yb、Lu、Y、またはMn;または前記金属のうちの1以上の金属を含む金属化合物を使用することができる。ここで、前記n型ドーパントは、前記第1電子輸送層(310)材料の総重量を基準として、1〜50重量%であってよい。本明細書において、n型ドーパントをドーピングする方法は、当技術分野で知られている方法を利用することができ、本発明の範囲が特定の方法によって限定されるものではない。
【0047】
第1電子輸送層(310)の厚さは、50〜100オングストロームであってよい。前記n型ドーパントを含む第1電子輸送層(310)の厚さが100オングストローム以下の場合、可視光線の吸収による発光効率の低下を防止することができる。
【0048】
本明細書の実施態様にかかる有機発光素子は、また、金属塩、金属酸化物、および有機金属塩の中から選択された1種以上でドーピングされた第2電子輸送層(410)を含む。金属塩としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、例えば、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF
2、CaF
2、SrF
2、BaF
2、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2などが使用できる。金属酸化物としては、アルカリ金属またはアルカリ金属の酸化物、例えば、LiO
2、NaO
2、BrO
2、Cs
2O、MgO、CaOなどが使用できる。有機金属塩としては、下記の化学式3のLiq、Naq、Kqなどが使用できる。
【0050】
第2電子輸送層(410)の厚さは、50〜500オングストローム、より具体的には50〜200オングストロームであってよい。前記範囲内の厚さを有する場合、駆動電圧の上昇を効率的に防止することができる。
【0051】
金属塩、金属酸化物、または有機金属塩は、第2電子輸送層(410)材料の総重量を基準として、1〜99重量%であってよく、具体的には10〜50重量
%であってよい。
【0052】
第2電子輸送層(410)は、金属塩、金属酸化物、または有機金属塩のドーピングによって、電荷発生層(510)および第1電子輸送層(310)を通して輸送された電子が、第1電極(110)に隣接した発光ユニット(210)に移動することを円滑にすることができる。また、第2電子輸送層(410)は、正孔が発光ユニット(210)から第1電子輸送層(310)を通して電荷発生層(510)に移動することを防止することによって発光効率を向上させることができるだけでなく、駆動電圧を大きく低下させることができ、長寿命の素子を実現することができる。
【0053】
以下では、
図3を参照して、
図1に示された有機発光素子において、第1電子輸送層(310)、第2電子輸送層(410)、および電荷発生層(510)の間における電荷の流れを説明する。
図3において、(−)は電子を、(+)は正孔を意味する。点線は電子の流れを、実線は正孔の流れを意味する。Xで表示されたものは電子や正孔が流れないことを意味する。前記で説明したように、電荷発生層(510)で正孔と電子が分離されて電荷が発生し、第1電子輸送層(310)および第2電子輸送層(410)方向に電子が移動する。反面、正孔は、第2電子輸送層(410)から電荷発生層(510)方向に移動しない。
【0054】
図1に示した第1電子輸送層(310)および第2電子輸送層(410)が有機発光素子に存在しない場合には、前述のような効率的な発光効率を取得することができない。例えば、
図4に示しているように、有機発光素子が互いに異なる特性を有する2つの電子輸送層でなく、1つの電子輸送層を含む場合、発光ユニットで発光に参加せずに流れる正孔が発生し得る。
【0055】
例えば、有機発光素子が、第1電極(11)と第2電極(12)との間に、2つの発光ユニット(21、22)をそれぞれ含み、その発光ユニット(21、22)の間に、第1電極(11)に隣接した発光ユニット(21)側に1つの電子輸送層(31)、例えば、n型ドーピングされた電子輸送層を形成し、第2電極(12)に隣接した発光ユニット(22)側に電荷発生層(51)を形成した場合を考えることができる。この場合、電荷の流れは、
図5に示しているように、電子輸送層(31)から電荷発生層(51)側に正孔が移動するため、発光ユニット(21)で発光に参加せずに流れる正孔が発生し、素子の効率が低下することがある。
【0056】
電子輸送層(31)として、Caのようなn型ドーパントによってドーピングされたn型ドーピングされた電子輸送層が使用される場合にも、素子の効率が高くなく、駆動電圧が上昇し、素子の駆動寿命が短くなる現象が発生することを、本発明者らは見出した。
【0057】
しかし、本明細書に記載された実施態様の有機発光素子では、
図3に示しているように、金属塩、金属酸化物、および有機金属塩の中から選択された1種以上でドーピングされた第2電子輸送層(410)が、発光ユニット(210)から輸送された正孔が、n型ドーパントによってドーピングされた第1電子輸送層(310)を通して電荷発生層(510)に輸送されるのを防止する役割を果たす。これにより、電荷発生層(510)から注入された電子を、n型ドーパントによってドーピングされた第1電子輸送層(310)のLUMOエネルギー準位に効果的に引き上げることができる。これにより、電子は、発光ユニット(210)へ容易に移動することができる。
【0058】
したがって、本明細書の実施態様によれば、素子の効率を大きく増加させることができるだけでなく、駆動電圧を大きく低下させることができ、素子の駆動寿命を向上させることができる。発光層から正孔がきちんと遮断されずに正孔発生層まで移る場合、正孔発生層から第1電子輸送層へ、第1電子輸送層から第2電子輸送層へ、第2電子輸送層から結局発光層まで電子の注入が容易でなくなる。この場合、発光層まで電子を注入させるためにはより多くのエネルギーが必要であり、これは、駆動電圧の上昇につながりかねない。電子の注入が容易でない場合は、素子の電荷不均衡をもたらし、素子の寿命に影響を与えることがある。本明細書に記載された実施態様では、電子の注入を容易にすることで素子内での電荷不均衡を最小化することにより、素子の寿命を向上させることができる。本明細書において、前記第2電子輸送層(410)は、正孔を効率的に遮断する役割を果たすため、隣接する第1電子輸送層(310)の電子注入能力を向上させるのに寄与することができる。
【0059】
本明細書において、第1電子輸送層(310)および第2電子輸送層(410)のドーピングされる有機物、すなわち、ホスト材料としては、電子輸送の役割を果たすことのできる有機物が使用可能である。第1電子輸送層および第2電子輸送層のホスト材料としては、同一の材料が使用されてもよく、異なる材料が使用されてもよい。
【0060】
一実施例で使用可能な第1および第2電子輸送層(310、410)のホスト材料としては、有機物または有機金属錯体が使用できる。
【0061】
具体的には、炭化水素類の電子輸送物質、例えば、アントラセンコアにn型置換基を有する電子輸送物質、ビアントラセンコアにn型置換基を有する電子輸送物質、または後述する有機金属錯体が使用できる。ここで、n型置換基とは、電子求引置換基(electron withdrawing group)を意味し、例えば、環内にN、O、Sなどのヘテロ原子が含まれている環化合物、−F、−Br、−Cl、−I、−CNなどの官能基などが置換された環化合物がある。
【0062】
他の実施例で使用可能な第1および第2電子輸送層(310、410)のホスト材料としては、HOMOエネルギー準位の小さい物質が使用できる。例えば、第1および第2電子輸送層(310、410)のホスト材料のHOMOエネルギー準位は、第2電子輸送層(410)が接する発光ユニット(210)の有機物層のHOMOエネルギー準位より小さい値を有することができる。特に限定されるものではないが、第1および第2電子輸送層(310、410)のホスト材料のHOMOエネルギー準位は、第2電子輸送層(410)が接する発光ユニット(210)の有機物層のHOMOエネルギー準位より小さいほど、優れた効果を示すことができる。
【0063】
具体例として、ホスト材料としては、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、キノリン基、およびフェナントロリン基から選択される官能基を有する化合物を使用することができる。他の例として、ホスト材料としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンのうちの少なくとも1種を含む有機金属錯体化合物が使用可能であり、有機金属錯体の配位子としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、およびこれらの類似体などが使用可能であるが、これらにのみ限定されるものではない。具体的には、有機金属錯体として、Alq
3、BAlqなどが使用できる。
【0064】
具体例として、前記ホスト材料としては、下記の構造式の化合物が使用できる。
【0066】
ここで、
Arは、アリール基であり、例えば、下記の式で表される置換基であってよく、
【0068】
前記Xの例としては、下記の式がある。
【0070】
ここで、Zは、コアに連結される部分であり、
式中、R1〜R5は、それぞれメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基を含むことができ、−F、−Cl、−Br、−I、−CNなどのような電子求引原子(electron−withdrawing atom)を含む基であってよい。
【0071】
R1’〜R5’は、それぞれ電子求引原子(electron−withdrawing atom)を含む基であって、例えば、−F、−Cl、−Br、−I、−CNなどがある。
【0072】
追加的に、第1電子輸送層材料としては、下記の化学式の化合物が使用できる。
【0074】
式中、RおよびR’は、それぞれC
1〜C
20のアルキル基、またはC
6〜C
20のアリール基であり、
Yは、アリーレン基、例えば、フェニレン、ナフチレンなどである。
【0075】
具体的には、前記化学式の化合物としては、下記の化学式の化合物がある。
【0077】
第2電子輸送層材料の具体例としては、下記の化合物があるが、これらによって限定するものではない。
【0079】
前記第1電子輸送層は、前述の第2電子輸送層材料と同一の材料で形成されてよく、この時、下記の化学式の化合物をさらに含むことができる。
【0083】
Zは、前記コア構造に連結される部位であり、
R1〜R5は、それぞれメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基を含むことができ、−F、−Cl、−Br、−I、−CNなどのような電子求引原子(electron−withdrawing atom)を含む基であってよい。
【0084】
図1には、第1電極(110)と第2電極(120)との間に発光ユニット(210、220)が2つのみ備えられた場合を示しているが、本明細書の他の実施態様によっては、第1電極(110)と第2電極(120)との間には、3つ以上の発光ユニットが備えられてよい。3つ以上の発光ユニットが備えられた場合を、
図6に例示した。
【0085】
図6には、発光ユニットをn個含む有機発光素子の積層構造が例示されている。第1電極(110)上に、発光ユニット(210)、第2電子輸送層(310)、第1電子輸送層(410)、電荷発生層(510)、発光ユニット(220)、第2電子輸送層(320)、第1電子輸送層(420)、および電荷発生層(520)が積層された後、追加的に、発光ユニット、第2電子輸送層、第1電子輸送層、電荷発生層が順に繰り返し積層されてよい。次に、n−1番目の発光ユニット、第2電子輸送層、第1電子輸送層、および電荷発生層が積層された後、n番目の発光ユニットと第2電極(120)とが積層される。
図6には、第1電極上に残りの層が積層された構造が示されているが、逆に、第2電極上に残りの層が積層された構造も含まれる。
【0086】
本明細書のもう一つの実施態様にかかる有機発光素子において、前記第2電極(120)に隣接した発光ユニット(220)と前記第2電極(120)との間に追加の電子輸送層が備えられ、前記追加の電子輸送層は、n型ドーパントによってドーピングされた第1電子輸送層(320)と、金属塩、金属酸化物、または有機金属塩によってドーピングされた第2電子輸送層(420)とを含む。このように追加の電子輸送層を備えた例を、
図7に示した。第1電子輸送層(320)および第2電子輸送層(420)には、前述の第1電子輸送層(310)および第2電子輸送層(410)に関する説明が適用可能である。
【0087】
本明細書のもう一つの実施態様にかかる有機発光素子において、前記第2電極(120)に隣接した発光ユニット(220)と前記第2電極(120)との間に追加の電子輸送層が備えられ、前記追加の電子輸送層は、n型ドーパントによってドーピングされた第1電子輸送層(320)と、金属塩、金属酸化物、または有機金属塩によってドーピングされた第2電子輸送層(420)とを含む。また、前記第2電極と前記追加の電子輸送層との間には、追加の電荷発生層(520)が備えられる。このように追加の電子輸送層と追加の電荷発生層とを備えた例を、
図8に示した。電荷発生層(520)には、前述の電荷発生層(510)に関する説明が適用可能である。
【0088】
本明細書のもう一つの実施態様にかかる有機発光素子において、前記第2電極(120)に隣接した発光ユニット(220)と前記第2電極(120)との間に追加の電荷発生層(520)が備えられる。このように追加の電荷発生層を備えた例を、
図9に示した。電荷発生層(520)には、前述の電荷発生層(510)に関する説明が適用可能である。
図9による素子において、発光層または電子輸送層がn型ドーピングされてよい。
【0089】
図7〜
図9のような構成によって、第2電極(120)材料としてより多様な仕事関数を有する材料を使用することができる。
【0090】
本明細書に記載された実施態様の有機発光素子は、前面発光型、後面発光型、または両面発光型で構成されてよい。この時、発光方向に応じて光が通過する電極は透明に構成されてよい。透明とは、光が通過できれば光透過度に特に限定されないが、例えば、光透過度70%以上であってよい。透明な電極は、透明材料で製造されるか、不透明材料が透明な程度に薄く形成されてよい。
【0091】
第1電極および第2電極の材料としては、フェルミエネルギー準位が2〜6eVの材料、特に2〜4eVの材料まで使用することができる。電極材料としては、金属、金属酸化物、および導電性ポリマーからなる群より選択される物質を含むことができる。具体的には、電極材料としては、炭素、セシウム、カリウム、リチウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、ジルコニウム、インジウム、アルミニウム、銀、タンタル、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、鉄、タングステン、モリブデン、ニッケル、金、その他の金属、およびこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、およびその他これと類似の金属酸化物;ZnO:AlおよびSnO
2:Sbのような酸化物と金属との混合物などがある。すなわち、前記電極は、金属電極で形成できるだけでなく、金属酸化物のような透明材料からなる透明電極で形成できる。第1電極の材料と第2電極の材料は、同一であってもよく、必要によって、異なっていてもよい。
【0092】
本明細書の一実施態様にかかる有機発光素子は、第1電極が陽極として基板に接し、第2電極が陰極として前記第1電極に対向する電極の構造を有することができる。本発明の他の実施態様にかかる有機発光素子は、第2電極が陰極として基板に接し、第1電極が陽極として前記第2電極に対向する電極の構造を有することができる。
【0093】
本明細書の一実施態様にかかる有機発光素子は、光散乱構造を含む素子であってよい。
【0094】
本明細書の一実施態様において、前記有機発光素子は、前記第1電極の発光ユニットが備えられる面に対向する面に基板をさらに含み、前記基板と第1電極との間、または第1電極が備えられる面に対向する面に光散乱層をさらに含むことができる。
【0095】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極の発光ユニットが備えられる面に対向する面に備えられた基板と第1電極との間に内部光散乱層をさらに含むことができる。もう一つの実施態様において、前記基板において、第1電極が備えられた面の反対面に外部光散乱層を追加的に含むことができる。
【0096】
本明細書において、前記内部光散乱層または外部光散乱層は、光散乱を誘導して、素子の光散乱効率を向上させることのできる構造であれば特に制限しない。一実施態様において、前記光散乱層は、バインダー内に散乱粒子が分散した構造であってよい。もう一つの実施態様において、前記光散乱層は、凹凸を有するフィルムを用いることができる。
【0097】
また、前記光散乱層は、基板上に、スピンコーティング、バーコーティング、スリットコーティングなどの方法によって直接形成されるか、フィルム形態で作製して付着させる方式によって形成されてよい。
【0098】
本発明の一実施態様において、前記有機発光素子は、フレキシブル(flexible)有機発光素子である。この場合、前記基板がフレキシブル材料を含む。例えば、撓み可能な薄膜形態のガラス、プラスチック、またはフィルム形態の基板を使用することができる。
【0099】
前記プラスチック基板の材料は特に限定しないが、一般的に、PET、PEN、およびPIなどのフィルムを単層または複層の形態で使用することができる。
【0100】
本発明の一実施態様において、前記有機発光素子を含むディスプレイ装置を提供する。
【0101】
本発明の一実施態様において、前記有機発光素子を含む照明装置を提供する。
【0102】
以下、実施例および比較例を通して本発明の多様な実施態様および特徴をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、多様な実施態様および特徴を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0103】
<実施例1>
ガラス基板上において、陽極としてITOを1,500Åをスパッタリング方法によって形成し、その上に、前記化学式2−1のHATを熱真空蒸着によって300Åの厚さの膜を形成し、次に、NPBを用いて600Åの厚さの層を形成した。その上に、蛍光青色発光層を300Åの厚さで形成し、第2電子輸送層を下記の物質1にLiFを50重量%でドーピングして150Åの厚さの層を形成した。その上に、第1電子輸送層を下記の物質1にCaを10重量%でドーピングして50Åの厚さの層を形成した。
【0105】
次に、電荷発生層をHAT層300ÅおよびNPB層300Åで構成し、燐光緑色および赤色発光層を300Åの厚さで形成した。その後、電子輸送層を下記の物質2を用いて450Åの厚さで形成し、最後に、陰極をLiF15Å、アルミニウム1,000Åの厚さで構成して、積層型構造の白色有機発光素子を作製した。
【0107】
<実施例2>
第2電子輸送層を前記物質1に有機金属塩物質のLiqを50重量%でドーピングして構成したことを除いては、実施例1と同様に実施して素子を作製した。
【0108】
<比較例1>
第2電子輸送層を金属塩または有機金属塩でドーピングせず、物質1を用いて150Åの厚さで形成したことを除いては、実施例1と同様に実施して素子を作製した。
【0109】
下記の表1に、実施例1、2および比較例1の電圧および効率を3mA/cm
2の領域で測定して比較した結果を示した。
【0111】
<実施例3>
第2電子輸送層および第1電子輸送層の形成時、前記物質1の代わりに前記物質2を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で素子を作製した。
【0112】
<比較例2>
第2電子輸送層を金属塩または有機金属塩でドーピングせず、前記物質2を用いて150Åの厚さで形成したことを除いては、実施例3と同様に実施して素子を作製した。
【0113】
<比較例3>
第1電子輸送層を形成せず、第2電子輸送層を200Åの厚さで形成したことを除いては、実施例3と同様に実施して素子を作製した。
【0114】
<比較例4>
第2電子輸送層を形成せず、第1電子輸送層を200Åの厚さで形成したことを除いては、実施例3と同様に実施して素子を作製した。
【0115】
下記の表2に、実施例3および比較例2〜4の電圧および効率を3mA/cm
2の領域で測定して比較した結果を示した。
【0117】
<実施例4>
ガラス基板上において、陽極としてITOを1,500Åをスパッタリング方法によって形成し、その上に、前記化学式2−1のHATを熱真空蒸着によって300Åの厚さの膜を形成し、次に、NPBを用いて600Åの厚さに層を形成した。その上に、蛍光青色発光層を300Åの厚さで形成し、第2電子輸送層を前記物質2にLiFを50重量%でドーピングして150Åの厚さの層を形成した。その上に、第1電子輸送層を前記物質2にCaを10重量%でドーピングして50Åの厚さの層を形成した。
【0118】
次に、電荷発生層をHAT層300ÅおよびNPB層300Åで構成し、燐光緑色および赤色発光層を300Åの厚さで形成した。その後、第2電子輸送層を前記物質2にLiFを50重量%で共蒸着して400Åの厚さで形成し、第1電子輸送層を前記物質2にCaを10重量%でドーピングして50Åの厚さの層を形成した。最後に、陰極をアルミニウム1,000Åの厚さで構成して、積層型構造の白色有機発光素子を作製した。
【0119】
<比較例5>
電荷発生層と接する部分に、第2電子輸送層と第1電子輸送層を構成せず、陰極に接する部分にのみ第2電子輸送層と第1電子輸送層を形成したことを除いては、実施例4と同様の構成および方法で素子を作製した。
【0120】
下記の表3に、実施例4および比較例5の電圧および効率を3mA/cm
2の領域で測定して比較した結果を示した。
【0122】
<実施例5>
電荷発生層と接する部分に、第2電子輸送層および第1電子輸送層の形成時、物質1の代わりに下記の物質5を用いたことを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。
【0124】
<実施例6>
電荷発生層と接する部分に、第2電子輸送層および第1電子輸送層の形成時、物質1の代わりに下記の物質7を用いたことを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。
【0126】
<実施例7>
電荷発生層と接する部分に、第2電子輸送層および第1電子輸送層の形成時、物質1の代わりに下記の物質9を用いたことを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。
【0128】
<実施例8>
電荷発生層と接する部分に、第2電子輸送層および第1電子輸送層の形成時、物質1の代わりに下記の物質11を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。
【0130】
下記の表4に、実施例5〜8の電圧および効率を3mA/cm
2の領域で測定して比較した結果を示した。
【0132】
<実施例9>
電荷発生層に隣接する部分において、第2電子輸送層を前記物質2にLiFを50重量%で共蒸着して150Åの厚さで形成し、第1電子輸送層を下記の物質13にCaを10重量%でドーピングして50Åの厚さで形成したことを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。
【0134】
<実施例10>
電荷発生層に隣接する部分において、第1電子輸送層の形成時、Caを5重量%でドーピングしたことを除いては、実施例9と同様に素子を作製した。
【0135】
<実施例11>
電荷発生層に隣接する部分において、第1電子輸送層の形成時、Caを2.5重量%でドーピングしたことを除いては、実施例9と同様に素子を作製した。
【0136】
<比較例6>
電荷発生層に隣接する部分において、第2電子輸送層に金属塩または有機金属塩を含まず、前記物質2だけで150Åの厚さで形成し、第1電子輸送層を前記物質13にCaを10重量%でドーピングして50Åの厚さで形成したことを除いては、実施例9と同様に素子を作製した。
【0137】
<比較例7>
第2電子輸送層にCaを10重量%ドーピングして150Åの厚さで形成し、第1電子輸送層にドーピングされた物質と同一の物質で構成したことを除いては、実施例9と同様に素子を作製した。
【0138】
<比較例8>
第1電子輸送層に金属塩のLiFを50重量%ドーピングして50Åの厚さで形成し、第2電子輸送層にドーピングされた物質と同一のもので構成したことを除いては、実施例9と同様に素子を作製した。
【0139】
<比較例9>
第1電子輸送層に接しているn型電荷発生層のHATを構成しないことを除いては、実施例9と同様に素子を作製した。
【0140】
下記の表5に、実施例9〜11および比較例6〜比較例9の電圧および効率を3mA/cm
2の領域で測定して比較した結果を示した。
【0142】
図10、
図11に、第2電子輸送層にLiFのような金属塩がドーピングされた素子(実施例11)およびドーピングされていない素子(比較例6)に対する電圧−電流グラフと駆動寿命のグラフを代表的に示した。第2電子輸送層に金属塩などがドーピングされた素子は、そうでない素子に比べて、初期電圧が低く、駆動中の電圧の上昇幅も非常に少なく、駆動寿命も改善されたことを確認することができる。
【0143】
比較例7および8では、第2電子輸送層および第1電子輸送層にドーピングする物質を同一のもので構成した素子であり、それぞれCaおよびLiFを用いてドーピングした素子である。
【0144】
比較例7の場合、素子の効率が急激に低下する結果を示したが、これは、Caのドーピング層が発光層に接しているため、発光消滅(quenching)現象が起こるからである。また、第1電子輸送層および第2電子輸送層ともn型ドーパントによってドーピングされた場合、光吸収が多くなり得る。発光層と接する第2電子輸送層に金属がドーピングされる場合には、発光効率が低下することがある。
【0145】
比較例8の場合、第1電子輸送層にドーピングされているLiFが絶縁特性を有しており、n型電荷発生層がHATとの反応性がないため、HAT層から第1電子輸送層までの電子の注入が容易でなく、駆動電圧が大きな上昇を示した。
【0146】
比較例9の場合、第1発光部であるブルーの発光が観察されず、第2発光部であるイエローの発光だけが観察されたが、これは、n型電荷発生層のHATが形成されていないことにより、タンデム(tandem)構造が効果的に動作しなかったことを意味する。