(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973663
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】可動家具部分のための駆出装置およびそれを含んだ家具
(51)【国際特許分類】
A47B 88/00 20060101AFI20160809BHJP
A47B 88/04 20060101ALI20160809BHJP
E05C 19/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
A47B88/00 F
A47B88/04 E
E05C19/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-520765(P2015-520765)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公表番号】特表2015-521923(P2015-521923A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】AT2013000089
(87)【国際公開番号】WO2014008520
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】A768/2012
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘメール,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】シュラー,キャサリナ
【審査官】
河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−514218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/22
E05C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動家具部分(2)のためのロック可能な駆出装置(1)であって、本装置は、
開方向(OR)で前記可動家具部分(2)に作用する駆出要素(3)と、
収容体(4)と、
開方向(OR)における前記駆出要素(3)の経路を、前記可動家具部分(2)の少なくとも閉位置(SS)で妨害することができる、前記収容体(4)内または該収容体(4)上に配置されたロック要素(5)と、
前記可動家具部分(2)の位置を検知するための検知装置(6)と、
前記検知装置(6)によって検知される前記可動家具部分(2)の位置を前記ロック要素(5)に伝達するための伝達装置(7)と、を含んでおり、
前記ロック要素(5)は前記検知された位置に応じて移動可能であり、
前記伝達装置(7)は、中央位置(M)で少なくとも一つの作用力保存手段(9)によって保持できる回転要素(8)を有しており、
閉方向(SR)における前記閉位置(SS)からの前記可動家具部分(2)のオーバープレス時、および開方向(OR)における前記閉位置(SS)からの前記可動家具部分(2)の引っ張り時の両方において、
前記駆出要素(3)が前記ロック要素(5)によって解放されるものであり、
前記駆出要素(3)は、前記可動家具部分(2)のオーバープレス時にも、前記可動家具部分(2)の引っ張り時にも、前記収容体(4)に対する前記ロック要素(5)の相対移動によってロック解除でき、
前記検知装置(6)は、係合要素(10)によって前記回転要素(8)と係合し、該回転要素(8)は、前記開方向(OR)および前記閉方向(SR)における前記係合要素(10)の両移動時に前記中央位置(M)から回転して脱出可能であることを特徴とする駆出装置。
【請求項2】
前記可動家具部分(2)の前記閉位置(SS)、オーバープレス閉位置(US)、および前記閉位置(SS)の少なくとも直前である開位置(ZS)において、
前記検知装置(6)は前記可動家具部分(2)に接しているか、または前記可動家具部分(2)に接続されていることを特徴とする請求項1記載の駆出装置。
【請求項3】
前記駆出要素(3)のロックは、前記回転要素(8)が前記中央位置(M)から外れているときに無効化されることを特徴とする請求項1または2記載の駆出装置。
【請求項4】
前記ロック要素(5)と前記回転要素(8)は別々に形成されており、前記ロック要素(5)は前記作用力保存手段(9)によって作動され、前記回転要素(8)に当接することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆出装置。
【請求項5】
前記ロック要素(5)は前記回転要素(8)のV形状領域(V)に当接し、
前記回転要素(8)は、前記ロック要素(5)が回転軸に最も近い前記V形状領域(V)の点(P)に当接するとき、前記中央位置(M)に存在することを特徴とする請求項4記載の駆出装置。
【請求項6】
前記駆出要素(3)は、ラッチ要素(17)によって、前記ロック要素(5)の、前記閉位置(SS)において保持されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駆出装置。
【請求項7】
前記ロック要素(5)は、閉方向(SR)での前記閉位置(SS)からの前記可動家具部分(2)のオーバープレス時と、開方向(OR)での前記閉位置(SS)からの前記可動家具部分(2)の引っ張り時の両方で、開方向(OR)に対して横断方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆出装置。
【請求項8】
可動家具部分(2)と、該可動家具部分(2)のための、請求項1から7のいずれかに記載のロック可能な駆出装置(1)とを含んだ家具(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動家具部分のためのロック可能な駆出装置(排出装置)に関する。この装置は、開方向で可動家具部分に作用する駆出要素と、収容体(筐体)と、開方向における駆出要素の経路を、可動家具部分の少なくとも閉位置で妨害することができる、収容体内または収容体上に配置されたロック要素とを含んでおり、閉方向における閉位置からの可動家具部分のオーバープレス時(過剰な押し込み時)、および開方向における閉位置からの可動家具部分の引っ張り時の両方において、駆出要素がロック要素によって解放される。さらに本発明は、そのようなロック可能な駆出装置を有する家具にも関する。
【背景技術】
【0002】
可動家具部分を自動的に開ける駆出装置は、家具付属品の分野において長年に渡って既に知られている。ユーザは、ロック作用が解除され、可動家具部分が作用力保存手段によって駆出されるよう、可動家具部分を押すだけでよい。
【0003】
駆出装置をロックするために一般的に使用されている変形例は、カージオイド曲線によるロックである。この場合には、駆出要素に接続されたラッチ要素は、カージオイド形状のスライド軌道内の凹部において閉位置に保持される。可動家具部分を押し込むことで、ラッチ要素が凹部から移動し外れ、それによって、カージオイド形状のスライド軌道の開部分への移動のための経路が開放される。
【0004】
カージオイド形状のスライド軌道を備えた、そのようなロック可能な駆出装置における問題は、それが押し込みによってのみ開けることができることである。しかしながら、家具部分が引っ張られても、ラッチ要素がカージオイド形状のスライド軌道のラッチ凹部から外れることができないため、開けることができない。
【0005】
この問題を解決するため、ロック解除が押し込みだけでなく、引っ張りによっても実行される多くの構造が既に知られている。EP2272400A1、JP2007−009507、US7374261およびJP2008−208684は、この点における例示を開示しており、カージオイド曲線形状のスライド軌道の部分は、ラッチ要素の引っ張り時にロック解除も可能となるよう、引っ張り力が適用された時に回転または旋回される。
【0006】
WO2007/050737A2は、ラッチ要素を開方向に前進させ、引っ張り力が利用された時にロック作用を解除させることができるフレキシブル(可とう)で延伸可能な経路を開示している。
【0007】
先行文献ではなく、優先権を設定するオーストリア出願A614/2011は、カージオイド形状スライド軌道のラッチ凹部を形成する、移動可能な“プラグ部材”を開示している。ロックされたラッチ要素の引っ張り時に、その“プラグ部材”はバネに対抗して移動し、移動の過荷重経路がラッチ要素のために開放される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の代替策としてのロック可能な駆出装置の提供である。特に本発明では、駆出装置を、オーバープレス(過剰な押圧)時にも、引っ張り時にもロック解除させる単純な形態で可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これは、請求項1の特徴を有するロック可能な駆出装置によって達成される。これによれば、本発明では、駆出要素は、可動家具部分のオーバープレス時にも、可動家具部分の引っ張り時にも、収容体に対するロック要素の相対移動によってロック解除できる。この点における特に有利な点は、ロック要素の同じ運動がオーバープレス時にも引っ張り時にも常に発動していることである。従来技術で知られたロック可能な駆出装置の場合には、ラッチ凹部は常にロック要素を形成している。しかしながらこのラッチ凹部は、オーバープレスによる通常の開動作においては移動されず、引っ張り時にのみ、ラッチ凹部の少なくとも一部の運動が従来技術による駆出装置において実行される。
【0010】
本発明の1好適実施態様では、駆出装置は、可動家具部分の位置を検知するための検知装置と、検知装置によって検知される可動家具部分の位置をロック要素に伝達するための伝達装置とを含んでおり、ロック要素は検知された位置に応じて移動可能である。このようにして、可動家具部分の位置が、単純な形態でロック要素に伝えられる。
【0011】
この検知装置は全ての位置においてロック要素に接続されている必要はない。むしろ、それは可動家具部分の閉位置、オーバープレス閉位置、および閉位置の少なくとも直前である開位置において、検知装置は可動家具部分に接しているか、または可動家具部分に接続されている。
【0012】
引っ張りおよび押し込み運動のロック要素の同一運動への変換を簡単な形態で可能にするため、伝達装置が、中央位置で少なくとも一つの作用力保存手段によって保持できる回転要素を有することが好適である。好適には、この目的のため、検知装置は係合要素によって回転要素と係合し、回転要素は、開閉両方向における係合要素の両移動時に中央位置から回転して脱出可能である。好適には、駆出要素のロック作用は、回転要素が中央位置から外れているときに無効化される。
【0013】
駆出装置の単純な設計のため、本発明の第1の実施例によれば、回転要素は同時にロック要素である。さらには、この目的のため、ロック要素は2本の結合バーによって作用力保存手段を形成する2つのバネに接続されており、これらバネは、一方側で収容体に接続されており、他方側でそれぞれ2本の結合バーの一方の一端に固定されており、結合バーはガイド要素によって、収容体のスロット内を制限的に移動可能である。さらに、その第1の実施例では、ロック要素の回転動作は(好適には時計回り方向である)一方向のみのロック解除で実行され、その回転動作は、ガイド要素により2つのスロット内においてガイドされる結合バーのおかげで制限されている。
【0014】
本発明の第2の実施例では、ロック要素と回転要素は別々に形成されており、ロック要素は作用力保存手段によって作用され、回転要素に当接する。ロック要素への動作検知の伝達を可能にするため、この場合には、ロック要素は回転要素のV形状領域に当接し、回転要素は、ロック要素が回転軸に最も近いV形状領域のこの点に当接するとき、中央位置に存在する。
【0015】
原則的に、閉位置において、開方向での駆出要素の運動経路がロック要素によって阻止されることを保証することが必要なだけである。これは例えば摩擦または締め付けによって実行できる。好適には、駆出要素は、駆出要素に接続されたラッチ要素によって、ポジティブな(確実な)ロック関係でロック要素に保持される。
【0016】
駆出要素のために運動の開経路の容易な開放を達成するため、好適にはロック要素は、閉方向での閉位置からの可動家具部分のオーバープレス時と、開方向での閉位置からの可動家具部分の引っ張り時の両方で、開方向に対して横断方向に移動可能である。
【0017】
特許保護は、可動家具部分と、可動家具部分のための本発明によるロック可能な駆出装置とを含んだ家具にも請求される。
【0018】
本発明のさらなる詳細と利点は、図面に示す実施例に関連する詳細な説明によって以降にてさらに詳説される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】多様な位置にある可動家具部分を有する家具を概略的に示している。
【
図2】多様な位置にある可動家具部分を有する家具を概略的に示している。
【
図3】多様な位置にある可動家具部分を有する家具を概略的に示している。
【
図4】多様な位置にある可動家具部分を有する家具を概略的に示している。
【
図5】ロック可能な駆出装置の第1の実施例の分解図である。
【
図6】ロック可能な駆出装置の第1の実施例の分解図である。
【
図7】組み立てられた状態のロック可能な駆出装置を示している。
【
図14】ロック可能な駆出装置の第2の実施例を示している。
【
図16】第2の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図17】第2の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図18】第2の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図19】第2の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図20】第2の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図21】ロック可能な駆出装置の第3の実施例を示している。
【
図23】第3の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図24】第3の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図25】第3の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図26】第3の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【
図27】第3の実施例による駆出装置の多様な位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、家具枠体20と、その中で移動可能に取り付けられた家具部分2とを含んだ家具18を示しており、家具部分2は閉位置SSに存在している。可動家具部分2は、引出しレール21(オプションで中央レールによっても)によって枠体レール22に接続されている。この概略図では、枠体レール22は、ロック可能な駆出装置1の収容体4も形成している。ロック可能な駆出装置1は、駆出力保存手段24によって開方向ORで作用される駆出要素3を有している。
図1では、開方向ORでの駆出要素3の運動経路がロック要素5によって阻止されているため、駆出力保存手段24は加圧されている。引出しレール21には、それにロック要素5が少なくとも一時的に伝達装置7によって接続される同伴部材23が固定されている。一方、伝達装置7は同伴部材23の位置、よって可動家具部分2および回転要素8の位置を検知するための検知装置6を有している。
【0021】
図2に示すように、閉方向SRに可動家具部分2に対して圧力が適用されると、可動家具部分2はオーバープレス閉位置USへと移動する。この運動で、同伴部材23と検知装置6も閉方向SRに移動することで、ロック要素5が回転要素8によって可動家具部分2の移動方向に対して横断方向に移動し、開方向ORでの駆出要素3のための経路が開放される。
【0022】
実質的に同じ形態で、
図3に示すように、開方向での可動家具部分2の引っ張り時に、ロック要素5のロック解除が実行される。この結果、可動家具部分2は開方向ORでの閉位置SSの直前の開位置ZS(引っ張り位置)へと移動する。
【0023】
ロック要素5が(押し込み(
図2参照)または引っ張り(
図3参照)により)駆出要素3を解除するとすぐに駆出力保存手段24が
図4に示すように開方向ORに移動することができ、そうすることで可動家具部分2を同伴すなわち駆出させることができる。この場合には、既にそれ自体は知られているように、同伴部材23は、検知装置6の旋回動作によって自由走行モードとなることができる。この結果、可動家具部分2は開位置OSに存在する。
【0024】
図5から
図13には、本発明の第1の実施例が示されている。
図5と
図6の分解図は、駆出装置1の収容体4を示しており、駆出要素3はガイドトラック(軌道)39に沿って移動される。駆出要素3は、適した手段(図示せず)によって可動家具部分2に少なくとも部分的に接続されている。基部要素25は、駆出要素3と収容体4との間で、ガイドトラック31に沿って移動可能に配置されている。駆出力保存手段24のためのバネガイド34も基部要素25に配置されている。駆出力保存手段24のためのバネ基部は、一方はバネガイド34の相対的に厚い端部領域に、他方は駆出要素3のアバットメント(迫台、突出部)33に形成されている。回転要素8のための回転軸Dは、ピンによって基部要素25に提供されている。第1の実施例では、回転要素8は同時にロック要素5を形成しており、
図6に示すラッチ要素17のためのロック領域37は、ロック要素5に提供されている。2本の結合バー11と12はロック要素5に係合する。結合バー11はピン形状の端部によって、ロック要素5内の接続穴部29に係合する。さらに、結合バー11は収容体4内のスロット15内をガイド要素26によって移動可能にガイドされる。結合バー11は、作用力保存手段9を形成しているバネ13によって、アバットメント(迫台、突出部)28に対してバネ荷重された関係でさらに支持されている。アバットメント28は、固定領域32によって、収容体4に固定式に接続されている。同様に、結合バー12は、ロック要素5内の接続穴部30内にピン形状の前端部によって保持されている。結合バー12のガイド要素27もまた、下方スロット16内を移動可能にガイドされる。さらに結合バー12は、これもまた作用力保存手段9を形成しているバネ14によってバネ荷重されている。回転要素8またはロック要素5は、接続穴部46によって、基部要素25のピン形状の回転軸Dに回転可能に接続されている。
図6の分解図では、基部要素25が、収容体4内のガイドトラック31に係合するガイド肢部36を有する状態も示されている。この場合のガイド肢部36は、基部要素25もまたオーバープレス(過度に押圧する「over-press」)運動と引っ張り運動を実行できるよう、ガイドトラック31よりも少々短い。駆出要素3は、収容体4のバネガイドトラック35内をアバットメント33によって制限的に移動可能である。この場合には、駆出要素3は、アバットメント(迫台、突出部)47まで、開方向ORに移動でき、さらに駆出力保存手段24が完全に圧迫されるまで、またはバネガイド34に対する接触状態が発生するまで、閉方向SRに移動できる。
【0025】
図7は、組み立てられた状態の駆出装置1を示しており、アバットメント(迫台、突出部)33はバネガイドトラック35内に突出している。さらに2つのガイド要素26、27が対応するスロット15と16内へ突出している。ロック可能な駆出装置(排出装置)1全体は、閉位置SSに配置されている。
【0026】
それに応じて、
図8もまた閉位置SSでのロック可能な駆出装置1を示している。圧縮バネの形態の2つのバネ13と14は等しい強度であり、ロック要素(=回転要素8)もまた中央位置Mに配置されている。この場合には、ガイド要素17は、幾分か左側にずれているスロット16の右側端部に当接し、開方向ORにはそれ以上移動できない。バネ13は同じ強度であるので、ガイド要素26はさらに右側にずれたスロット15の左側端部に留まる。駆出要素3に配置されたラッチ要素17は、ロック要素5のロック領域37内に保持されている。開方向ORでのロック要素17の運動経路はこのようにしてロック要素5によって阻止される。
【0027】
その閉位置SSから開始して、可動家具部分2に対して閉方向SRに圧力が適用されると、ロック可能な駆出装置1が
図9に示すようにオーバープレス閉位置USに移動する。この場合には、可動家具部分2の位置は、検知装置6(図示せず)によって移され、ラッチ要素17によって形成される係合要素10と共に伝達装置7を形成する駆出要素3は、ロック要素5を収容体4に対して左側に移動させる。左側でスロット15に突き当たるガイド要素26のために、上方結合バー11はそれ以上左側に移動することができないため、回転要素8は必然的に時計回り方向に、スロット16の左側アバットメントに到達するまで、結合バー12のガイド要素27がバネ14の作用力に対抗して移動してしまうまで回転する。同時に回転軸Dも、収容体4に対する距離の半分だけ移動する。回転要素8のこの回転によって、ロック領域37も旋回し、それによって(ロック要素5にオーバープレス運動を適用した)ラッチ要素17は解放され、よってロック要素5によってもはや阻止されない。
【0028】
図10に示すように、可動家具部分2の引っ張り時に、同じロック解除効果も達成される。可動家具部分2が引っ張られると、駆出要素3とラッチ要素17が開方向ORに移動し、閉位置SSの直前の開位置ZSに移動する。回転要素8は、同時に係合要素10を形成するラッチ要素17によって開方向ORで右側に移動する。下方結合バー12は、スロット16の右側アバットメント端部に配置されたガイド要素27のために、開方向ORにはそれ以上移動できない。対照的に、結合バー11は上方スロット15内でそのガイド要素26と共に開方向ORにさらに移動でき、それによってロック要素5または回転要素8の回転軸D周囲での時計回り方向の回転動作が起動される。回転軸Dは、バネ肢部36がガイドトラック31の端部に接触するまで、開方向ORに収容体4に対する接続スロット29の距離の約半分だけ移動する。時計回り方向のロック要素5の回転によって、
図10に示すラッチ要素17も、ロック要素5のロック領域37の外側で移動する。
【0029】
このロック解除作用のため、
図11に示すように、駆出力保存手段24は応力から解放され、駆出要素3を、および接続装置(図示せず)によってそれと共に可動家具部分2を開方向ORに移動させる。ラッチ要素17がロック要素5ともはや接触しなくなるとすぐに、回転要素8が、
図11に示す始動位置または中央位置Mへ反時計回り方向で再び移動するよう、対応するバネ13または14が始動位置に再び移動する。
【0030】
図12に示すように、駆出力保存手段24はさらに応力から解放されており、この構造体は、駆出装置または可動家具部分2のさらなる開位置OSに到達している。
【0031】
可動家具部分2が再び閉じられると、駆出力保存手段24は駆出要素3の運動によって閉方向SRに再び加圧される。この場合には、閉部分(
図13参照)の最終部分で、ラッチ要素17はロック要素5と接触し、さらなる閉運動時に、ラッチ要素17が傾斜した走行手段38を加圧し、ラッチ要素14がロック領域37にロックまたはスナップ留めされるまで、回転要素5を回転軸D周囲でバネ14の作用力に対抗して回転させる。
図8に示すように始動位置(閉位置SS)はこのようにして元に戻る。
【0032】
図14から
図20は、本発明のさらに別な実施例を示しており、回転要素8とロック要素5は別部材の形態である。ここでも駆出要素3は、ガイドトラック39に沿って収容体4に移動可能に配置されている。駆出要素3は、ラッチ要素17を形成している幅広端部領域によってロック要素5に保持されている。ロック要素5も同様に回転軸X周囲で回転可能に収容体4に取り付けられており、収容体4に支持されている作用力保存手段9に作用される。さらに、回転要素8は、収容体4に回転軸Dによって回転可能に取り付けられている。その回転要素8の回転点の外側には、それに検知装置6が接続されている係合要素10が配置されている。検知装置6、係合要素10および回転要素8は、ロック要素5への可動家具部分2の位置を伝達するための伝達装置7を共同で形成している。さらに詳細には、その位置は、回転要素8のV形状領域Vによって、ロック要素5に移動される。
【0033】
対応する形態で、
図16は、ロック要素5が回転軸に近接する回転要素8のV形状領域VのポイントPに当接し、よって回転要素8が中央位置Mに存在している閉位置SSを示している。この場合には、作用力保存手段9は、ロック要素5のロック領域37が開方向ORで駆出要素3の運動経路を妨害するよう、少なくとも幾分かの応力が解放される。これは、このようにしてラッチ要素17を形成している駆出要素3の幅広端部によって達成される。
【0034】
図17に示すように、可動家具部分2に対して閉方向SRにて圧力が右側に適用されると、検知装置6と、それと共に係合要素10も右側に移動する。係合要素10が回転要素8と偏心的に係合するとき、それは時計回り方向に回転することで、ロック要素5は回転軸に近接したV形状領域VのポイントPに対してもはや当接することができず、反時計回り方向に作用力保存手段9の作用力に対抗して旋回される。この結果、ロック領域37はラッチ要素17をもはや阻止せず、よって駆出要素3は解放、すなわちロック解除される。
【0035】
可動家具部分2に対して開方向ORにて引っ張り力が適用されると、検知装置6は係合要素10と共に開方向OR(
図18参照)に左側へ移動する。この結果、回転要素8はその中央位置Mから外れるように時計回り方向に回転し、ロック要素5は、回転軸に近接したV形状領域VのポイントPに対してもはや当接しない。しかしながらロック要素5が、作用力保存手段9の応力と共に反時計回り方向に旋回されることで、駆出要素3は再び解放される。
【0036】
オーバープレス閉位置US(
図17参照)または閉位置SSの直前の開位置ZS(
図18参照)に到達されるとすぐに、駆出力保存手段24(この実施例では図示せず)が
図19に示すように開方向ORに駆出要素3を移動できる。可動家具部分2が開位置OSに到達するとすぐに、または検知装置6が解放されるとすぐに、作用力保存手段9は再び応力から解放され、ロック要素5によって回転要素8を中央位置Mに再び移動させる。
【0037】
閉じるとすぐに、作用力保存手段24(図示せず)が再び圧迫され、駆出要素3を
図20に示すように閉方向SRに移動させる。傾斜走行手段38によって、閉位置SSに到達する直前に駆出要素3が作用力保存手段9の作用力に対抗してロック要素5を旋回させる。駆出要素3の最も厚い部位が通過されるとすぐに、駆出要素3のラッチ要素17は、部分的には摩擦ロック関係(摩擦による固定する状態)で、部分的にはポジティブなロック関係(確実に固定する状態)で、ロック要素5のロック領域37によって再び保持される。
【0038】
ロック可能な駆出要素1の第3の実施例は、
図21から
図27に示されている。
図21と
図22で示すように、駆出装置1は収容体4を有しており、駆出要素3は収容体4のガイドトラック39内に移動可能に取り付けられている。引張バネの形態である駆出力保存手段34は、収容体4のバネ基部40と駆出要素3のバネ基部41との間で締め付けられている。駆出要素3の幅広端部はここでもラッチ要素17を形成している。この第3の実施例では、ロック要素5は回転不能であるが、収容体4のトラック48内でスライド可能に取り付けられている。トラック48の端部にて、ロック要素5は作用力保存手段9(圧縮バネ)によって作用を受ける。ロック要素5はスロット45を有している。ロック領域37はロック要素5の端部に配置されており、これはガイドトラック39の方向に面する端部である。収容体4内には、ピン42のためのピン受領手段43が提供されており、ピン42は回転要素8のための回転軸Dを同時に形成しており、スロット45を通って突出している。ピン42は、ピン受領手段44によって回転要素8に接続されている。回転要素8は、それにロック要素5の後端が当接するV形状領域Vを追加的に有している。さらに回転要素8内には、この第3の実施例では詳細に示されていないが、伝達装置7のための係合要素10を形成する開口部が偏心的に提供されている。
【0039】
図23に示すように、ロック可能な駆出装置1は閉位置SSに存在している。この場合には、作用力保存手段9は実質的に応力から解放されており、ロック要素35のロック領域37は、開方向ORにおいて駆出要素3のための移動経路を妨害している。引張バネの形態の駆出要素3は圧迫されている。回転要素8は中央位置Mに存在しており、ロック要素5の後端は回転軸に近接した回転要素8のV形状領域VポイントPに当接している。
【0040】
係合要素10もまた、伝達装置7(図示せず)によって閉方向SRに移動されるとすぐに、オーバープレス閉位置USへの閉方向SRにおける可動家具部分2のオーバープレス時に、回転要素8が回転軸Dの周囲で時計回り方向に回転することで、ロック要素5の後端が、作用力保存手段9(
図24参照)の作用力に対抗して後方に移動される。これは、中央位置Mから外れるように移動されている回転要素8によって達成され、ロック要素5の後端はもはやポイントPには当接しない。同時にロック領域37も戻り、ラッチ要素17と駆出要素3のための開方向ORにおける移動経路を開放する。
【0041】
開方向ORにおいて、可動家具部分2に引っ張り作用力が適用されると、係合手段10も開方向ORに移動し、よってこの場合には時計回り方向(
図25参照)に回転要素8を回転させる。この結果、ロック要素5が作用力保存手段9の作用力に対抗して再び移動されることで、ロック領域37がラッチ要素17すなわち駆出要素3を解放する。
【0042】
この解放すなわちロック解除によって、駆出力保存手段24は応力から解放され、
図26に示すように、駆出要素3を開方向ORにおいて開位置OSへと移動させる。係合要素10に作用力がもはや適用されなくなるとすぐに、作用力保存手段9は応力から再び解放されることができ、回転要素8が中央位置Mへと移動する。
【0043】
可動家具部分2を閉じるとすぐに、駆出要素3が、傾斜走行手段38によってロック要素5のロック領域37を再び通過し、よって駆出要素3は、部分的に摩擦ロック関係で、部分的にポジティブなロック関係で、ロック領域37にて再び保持される。作用力保存手段24のおかげで、駆出要素3とロック領域37との間の摩擦は、作用力保存手段9のバネ作用力よりも大きくなければならない。
【0044】
すなわち本発明は、従来のロック可能な駆出装置1の代替であるロック要素5の形態を開示しており、駆出要素3は、可動家具部分2のオーバープレス時にも、可動家具部分2が引っ張られたときにも、収容体4に対するロック要素5の相対運動によってロック解除可能である。
【0045】
原則的に、基本概念を維持しながら構造全体を改変することが可能であることは理解されよう。よって、例えば駆出装置1全体は、可動家具部分2に配置されることも、枠体に対して固定された同伴部材23に対して当接することもできる。
【0046】
原則的に、好適には制動された引込装置を駆出要素3に追加して利用することも可能であり、引込装置と共に可動家具部分2は閉位置へと穏やかに引き込まれる。構造の点で、これは構造全体に組み込まれるか、または別々に形成されることもできる。収容体4は、収納形態の収容体と解釈される必要はなく、むしろ、その上にロック可能な駆出装置1の必須部材が配置される単純な取り付けプレートの形態でもよい。