特許第5973664号(P5973664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973664蒸発晶析によって調製される自由流動塩組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973664
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】蒸発晶析によって調製される自由流動塩組成物
(51)【国際特許分類】
   C01D 3/16 20060101AFI20160809BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20160809BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C01D3/16
   C25B9/00 C
   C25B1/26 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-520973(P2015-520973)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公表番号】特表2015-527967(P2015-527967A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】EP2013064577
(87)【国際公開番号】WO2014009411
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】12176201.7
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/680,811
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スピークマン,フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルゲフート,ロベルト アロイシウス ジェラルドゥス マリア
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−145320(JP,A)
【文献】 国際公開第03/006377(WO,A1)
【文献】 特開平07−003485(JP,A)
【文献】 特開平01−145319(JP,A)
【文献】 特開平04−175220(JP,A)
【文献】 特表2010−536561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 3/00−3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩組成物を作製するための蒸発晶析法であって、水および晶析すべき塩および母液重量に対して1〜5ppmの添加剤を含む母液が形成され、前記添加剤が水溶性アクリル系ポリマーであるステップと、前記水を蒸発させて晶析塩を形成するさらなるステップとを含む蒸発晶析法。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーが、スルホネートまたはホスホネート基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーが、アクリル酸およびマレイン酸のコポリマー、ならびに/またはそれらの塩のコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記晶析塩を洗浄するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記晶析塩を部分的にのみ乾燥して湿潤塩を生成する、前記晶析塩を乾燥するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法から生成する塩の電気分解法における使用。
【請求項7】
前記電気分解法が、メンブラン電解セルを使用する、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高流動性の塩(塩化ナトリウム)を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶格子の構造と塩結晶の流動性の間にはある関係が存在することが見出された。本発明の目的は、良好な流動性を有する塩結晶を提供することである。
【0003】
従来技術は、流動性のある塩結晶を提供しようとする試みに失敗はしていない。
【0004】
GB−A−822893には、ケーキ化しない普通塩結晶を作製するための方法が開示されている。この方法は、ブラインに対して1〜500重量ppm、詳細には、5重量ppmの、解離してポリアニオンを生成するカルボキシル基を含む樹脂性コポリマーを精製または非精製ブラインに添加するステップおよびブラインを蒸発させるステップからなる。このコポリマーは、酢酸ビニルと無水マレイン酸またはマレイン酸塩のコポリマーであってよい。得られた結晶は、表面に中空面のある結晶または六方晶系結晶であると記載されており、球状結晶さえも取得できると述べられている。GB−A−822893は、ケーキ化しにくい塩結晶は不規則でなければならないことを教示している。
【0005】
JP−A−1145319には、精製塩または普通塩を含む飽和または略飽和溶液に5〜1000ppmのヘキサメタリン酸ナトリウムを添加して極めて流動性の良い八面体から十四面体までの結晶を形成するステップが開示されている。実施例では、10ppmおよび100ppmのヘキサメタリン酸ナトリウムが塩溶液に添加され、八面体結晶が得られている。
【0006】
JP−A−1145320には、精製塩または普通塩を含む飽和または略飽和溶液に50〜1000ppmのポリアクリレートを添加して極めて流動性の良い八面体から十四面体までの結晶を形成するステップが開示されている。実施例では、80ppmおよび150ppmのポリアクリル酸ナトリウムが塩溶液に添加され、八面体結晶が得られている。
【0007】
EP−A−1022252には、清澄で熱い原料塩溶液にポリメタリン酸ナトリウム(NaPOを添加し、晶析に到達させて粒の揃った晶析体を得て、ケーキ化傾向を低減することによって自由流動性が改善した塩結晶を作製するステップが開示されている。(NaPOは、乾燥塩の量に対して<1ppmのポリメタリン酸ナトリウム含量を得るのに十分な量で添加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、少量の添加剤を使用する一方で、良好な流動特性を示す塩結晶をもたらす、塩を生成するためのさらなる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、(i)水、および(ii)晶析すべき塩、および(iii)母液重量に対して1〜5ppm(mg/kg)の添加剤を含む母液が形成され、前記添加剤が水溶性アクリル系ポリマーであるステップと、水を蒸発させて晶析塩を形成するさらなるステップとを含む塩組成物を作製するための蒸発晶析法に関する。添加剤に対するより好ましい範囲は、1.5〜5ppm、2〜5ppm、2.5〜5、3〜5ppm、3.5〜5ppm、4〜5ppm、4.5〜5ppm、1.5〜4.5ppm、2〜4.5ppm、2.5〜4.5ppm、3〜4.5ppm、3.5〜4.5ppm、4〜4.5ppm、1.5〜4ppm、2〜4ppm、2.5〜4、3〜4ppm、3.5〜4pm、1.5〜3ppm、2〜3ppm、および2.5〜3ppmである。生成晶析塩は良好な流動性を示し、これは、アプローチ角が38度未満、好ましくは35度未満であることを意味する。この流動性は、立方体形状(6正方面)または八面体形状(8面)結晶で得られたものより良好である。
【0010】
加えて、結晶の化学的な純度も、メンブラン電解セルでの使用を可能にするのに十分である。
【0011】
理論に拘泥するものではないが、このように流動性が改善したのは、少なくとも50%の十四面体形状の結晶がまさに形成されたことによると思われる。十四面体形状の結晶は、14面を有する結晶である。これは、球形状に近い(球体形状とも呼ばれる)または球に近似した形状を有すると説明することができる。球形状粒子または球体形状粒子は、立方体形状または八面体形状のものに比較して流動性が改善されるので、本発明による晶析塩は、流動特性が改善されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添加剤は、水溶性アクリル系ポリマーである。本発明による水溶性アクリル系ポリマーは、(i)アクリル酸もしくはその誘導体のモノマー、または(ii)1つのモノマーがアクリル酸またはその誘導体の1つである2つ(またはそれ以上)のモノマー種(コポリマー)の繰り返しサブユニットに由来するポリマーである。本発明によるアクリル系ポリマーは、酸と塩形態の両方をさらに意味している。アクリル系ポリマーは、好ましくは、アクリル酸およびマレイン酸のコポリマー、ならびに/またはそれらの塩のコポリマーである。本発明によって使用される水溶性アクリル系ポリマーは、温度25℃および圧力1バールで水(蒸留水)1リットル当り少なくともアクリル系ポリマー10グラムを含む水(蒸留水)溶液を形成する場合、水溶性であると定義される。アクリル系ポリマーは、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィノ、スルフェート、および/またはスルホネート基をさらに含むことができる。例は、ホスフィノカルボン酸アクリル系ポリマー、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)アクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーは、好ましくは、約1000から約15000までの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0013】
典型的な晶析プラントでは、(略)飽和ブラインの母液が、いわゆる晶析器に供給される。晶析器では、塩の結晶が、水の蒸発による水の除去によって形成される。晶析プラントは、1つの晶析器からなっていてもよく、複数の直列式晶析器からなっていてもよい(多重効用プラント)。多重効用プラントでは、1つの晶析器の残留母液は、必要なら新鮮な(略)飽和ブラインと一緒に次に供給される。塩スラリーは、サイクロンおよび/または水簸という手段によるラインで晶析器から除去することができる。
【0014】
塩の晶析後、塩は、洗浄および/または乾燥することができる。塩は、完全に乾燥しても、部分的にのみ乾燥してもよい。塩を部分的にのみ乾燥すると、湿潤塩が生成する。
【0015】
湿潤塩という用語は、相当量の水を含む「主として塩化ナトリウム」を命名するのに使用される。より詳細には、これは50重量%超がNaClからなる水含有塩である。好ましくは、かかる塩は、90重量%超のNaClを含む。より好ましくは、塩は92%超のNaClを含むが、本質的にNaClと水である塩が最も好ましい。湿潤塩は、0.5重量%超、好ましくは1.0重量%超、より好ましくは1.5重量%超の水を含む。これは、好ましくは10重量%未満、より好ましくは6重量%未満、最も好ましくは4重量%未満の水を含む。通常、塩は2〜3%の水を含む。所与の重量%はすべて、全組成物の重量に対するものである。
【0016】
本発明の方法に由来する(湿潤)塩は、適切には、例えば、メンブラン電解セルを使用する電気分解で使用することができる。さらなる利点は、有機化合物による塩の汚染が最小であることである。生成した塩は、塩素生成での使用にも十分適している。
【実施例】
【0017】
調製例(比較例)
天然源からのブライン1500グラムを加熱して、圧力160ミリバールの真空蒸発器で沸騰させた。ガラス瓶受け器中で水が約700mlになった時に、蒸発を停止した。塩スラリーをろ過し、次いで高純度ブラインでフィルターを洗浄した。次いで、塩を遠心分離にかけ、流動床乾燥機で乾燥した。得られた結晶を光学顕微鏡下で調べた。得られた結晶は、立方体形状であった。得られた結晶のランダム試料を図1に示す。
【0018】
例1(比較例)
Acumer4300(Mw=2000のアクリルマレインコポリマーの50%水溶液)1.2グラムおよび水47.5グラムから原液を作製した。この溶液4.8グラムをブライン3,000グラムに添加して、ブライン中コポリマーを20ppmとした。このブライン1,500グラムを調製例(比較例)と同様に蒸発器中で加熱して、凝縮液700mlを受けた。得られた結晶を光学顕微鏡下で調べ、結晶の約80%が八面体であることが観察された。残りの結晶は、十四面体(14面)形状であった。得られた結晶のランダム試料を図2に示す。
【0019】
例2(比較例)
Acumer4300水溶液1.9グラムをブライン3,015グラムに添加してブライン中ポリマーを8ppmとしたこと以外は、例1を繰り返した。得られた結晶の70%超が八面体形状であった。得られた結晶のランダム試料を図3に示す。
【0020】
例3(本発明による)
Acumer4300水溶液0.971グラムをブライン2,999グラムに添加してブライン中ポリマーを4ppmとしたこと以外は、例1を繰り返した。得られた結晶の50%超が十四面体形状であった。得られた結晶のランダム試料を図4に示す。
【0021】
例4(本発明による)
Acumer4300水溶液0.483グラムをブライン3,004グラムに添加してブライン中ポリマーを2ppmとしたこと以外は、例1を繰り返した。得られた結晶の50%超が十四面体形状であった。得られた結晶のランダム試料を図5に示す。
【0022】
例5(本発明による)
Acumer1051(Mw=2000〜2300の中性化アクリル系ポリマーの43%水溶液)0.53グラムおよび水99.56グラムから原液を作製した。この溶液0.66グラムをブライン1723グラムに添加して、ブライン中アクリル系ポリマーを1ppmとした。このブラインを加熱して、圧力160ミリバールで真空蒸発器で沸騰させた。水約1011グラムをガラス瓶受け器に受けた時に、蒸発を停止した。塩スラリーをろ過し、次いで高純度ブラインでフィルターを洗浄した。次いで、塩を遠心分離にかけた。得られた結晶を光学顕微鏡下で調べた。得られた結晶の約50%超が十四面体形状であった。
【0023】
例6(本発明による)
Acumer1050(Mw=2000〜2300のアクリル系ポリマーの50%水溶液)1.00グラムおよび水99.01グラムから原液を作製した。この溶液1.86グラムをブライン1859グラムに添加して、ブライン中アクリル系ポリマーを5ppmとした。このブラインを加熱して、圧力160ミリバールにおいて真空蒸発器で沸騰させた。水約839グラムをガラス瓶受け器に受けた時に、蒸発を停止した。塩スラリーをろ過し、次いで高純度ブラインでフィルターを洗浄した。次いで、塩を遠心分離にかけ、流動床乾燥機で乾燥した。得られた結晶を光学顕微鏡下で調べた。得られた結晶の50%超が十四面体形状であった。残りの結晶は、八面体形状であった。得られた結晶のランダム試料を図6に示す。
【0024】
試験例
第1に、この例は、非処理塩(立方体形状の結晶)に比較して、アクリル系ポリマー2.6ppmの添加がこうして生成した塩(本発明による)の流動性に及ぼす効果を示す。非処理塩(立方体形状の結晶)を調製例(比較例)にしたがって調製したが、これは、以下で参照塩とも呼ばれる。
【0025】
市販のアクリル系ポリマーAcumer1050(Mw=2000〜2300、50重量%水溶液)を400m当り2.05リットルの量で飽和原料ブラインに添加した。したがって有効な濃度は、ポリマー2.6ppmであった。得られた結晶の50%超が、十四面体形状であった。プラント試験は、28時間継続され、その間に約2500トンの塩を作製した。塩をブラインおよび水で洗浄し、遠心分離で部分的に乾燥した。
【0026】
この塩の流動特性を以下のように測定し、参照塩と比較した。
【0027】
添加剤を飽和原料ブラインに添加する前に、第1の参照塩試料(試料1(参照塩))を採取した。その後、飽和原料ブラインに添加剤を添加して生成した塩から2つの試料を採取した(試料2および3(2.6ppm))。その後に生成した塩から第2の参照試料を採取したが、これは再度、飽和原料ブラインに添加剤を添加することなしで生成し、そのために再度参照塩(試料4(参照塩))を生成した。得られた結晶のランダム試料を図7〜10に示す。
【0028】
結果を表1に示す。
【0029】
実験室の装置を使用して臨界アプローチ角およびギャップ幅を測定することによって流動性を試験した。臨界アプローチ角は、図11に示す角α1,2である。臨界アプローチ角は、バルク粉末の重要なパラメーターである。その理由は、取扱いおよび貯蔵中の粉末の流動の容易さに対する指標であるからである。臨界アプローチ角は、乾燥した立方体形状参照塩の38度から、アクリル系ポリマー2.6ppmを含む本発明による乾燥塩組成物の34.5度まで低下した。これは、流動性の非常に顕著な改善である。ギャップ幅は、粉末が流動を開始するギャップの大きさを示す。これは、バルク貯蔵中に不十分な流動性の結果としてブリッジを形成する粉末の能力に対する指標であり、ギャップが小さいほど流動性は大きい。ギャップ幅は、3から2mmまで低下した。これは顕著な改善である。
【0030】
塩の内部摩擦を測定するために、別の試験を実施した。Jenikeせん断セルを使用して、内部摩擦角を測定した。Jenikeせん断セルでは、一定量の粉末に垂直に力をかける。次いで、試料の側面に力をかける。粉末が滑り始めるまで、電気モーターを使用して力を増加する。粉末を側方に押すのに必要な力を記録し、これは垂直にかけられた力に依存する。数種の垂直力に対する必要な力を測定し、結果をプロットすることによって、粉末の内部摩擦に対する指標である傾斜を有する略直線が得られる。摩擦角が小さいほど、バルク粉末はそれ自体の重量による応力下で益々容易に流動する。湿潤参照塩の平均摩擦角は、49度であったが、本発明による湿潤塩組成物は、平均摩擦角は42.5度であった。これは、本発明による湿潤塩組成物の流動性がより良好であることを実際に明確に示すものである。
【0031】
湿潤塩25トンのパイルをケーキ化防止材料で処理した後に乾燥した倉庫に貯蔵した。周期的に、貯蔵塩の流動性を測定するための試験を実施した。ねじれ計を備えた手動の土壌ドリルを用いて、侵入試験によってこうした貯蔵安定性を測定した。ドリルを手動で回転させて塩のパイル内に入れた。特定の深さで、回転に対する抵抗が、ねじれ計の既定値より大きくなり、ねじれ計がスリップを開始した。この点における侵入深さを記録したが、これは、例えば、ブルドーザーまたはローダーによる侵入に対するバルク粉末の抵抗の指標である。ねじれ計の既定値12.5Nmにおいての貯蔵9日間後の侵入値は、参照塩の9.9cmから本発明による塩組成物の33cmまで増加した。これは、顕著な改善である。
【0032】
多様な流動性試験の結果を表2に要約する。表2の値は、試料1と4、および試料2と3、それぞれの数平均である。すべての試験は、本発明による塩組成物の流動能力が、非処理塩に比較して優れているということを実際に明確に示す。本発明による他の実施例も、類似の結果をもたらす。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
図はすべて、本発明をさらに例示するための試料の例示的でランダムに選択された結晶を示す。採取された試料量の平均は、変動していたが、約5〜250mgの範囲であった。図は、それぞれの例から得られた多様な数の結晶を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】(調製例(比較例)) 図1は、光学顕微鏡下で分析した、調製例の試料(参照塩)のランダムセクションを示す。写真の中に約30個の結晶を見ることができる。光学顕微鏡法で調べた結晶はすべて、立方体形状である。図1の結晶はすべて、少なくとも1つの側で他の結晶に凝着しており、したがってより大きな凝集体を形成した。
図2】(例1[比較例]) 図2は、光学顕微鏡下で分析した、例1の試料(20ppm)のランダムセクションを示す。試料中の完全に成長した結晶の約80%は、八面体形状であった。20個超の結晶を図2に示す。数個の結晶が少なくとも1つの側で別の結晶に凝着しているので、凝集の第1の兆候を図2で見ることができる。
図3】(例2[比較例]) 図3は、光学顕微鏡下で分析した、例2の試料(8ppm)のランダムセクションを示す。図3は、完全に成長した、八面体形状結晶を示す。図3は、八面体結晶が球面体形状でなく、八面体形状を有する結晶がかなりバルキーであることを示す。
図4】(例3[本発明による]) 図4は、光学顕微鏡下で分析した、例3の試料(4ppm)のランダムセクションを示す。結晶は、十四面体形状(14面を有する結晶)であった。図4に示される7個の結晶はすべて、球体形状を有する。凝着の兆候は存在しない。
図5】(例4[本発明による]) 図5は、光学顕微鏡下で分析した、例4の試料(2ppm)のランダムセクションを示す。15個の完全に成長した結晶を図5で見ることができる。こうした完全に成長した結晶の50%超は、十四面体形状である。残りの結晶は、立方体形状である。
図6】(例6[本発明による]) 図6は、光学顕微鏡下で分析した、例6の試料(5ppm)のランダムセクションを示す。より多数の結晶が図6に示されている。50%超の結晶は、十四面体形状であり、換言すれば、球面体形状を有する。図6の残りの結晶は、八面体形状である。
図7】(試験例) 図7は、光学顕微鏡下で分析した、試験例の試料1(参照塩)のランダムセクションを示す。より多数の結晶を図7で見ることができる。図7に示される結晶はすべて、立方体形状である。図7の結晶はほとんどすべて、少なくとも1つの側で凝着しており、したがってより大きな凝集体を形成した。
図8】(試験例) 図8は、光学顕微鏡下で分析した、本発明による試験例の試料2(2.6ppm)のランダムセクションを示す。約60個の結晶を図8に示す。図8の完全に成長した結晶の70%超は、十四面体形状である。図中で凝集体を見出すことはできない。
図9】(試験例) 図9は、光学顕微鏡下で分析した、本発明による試験例の試料3(2.6ppm)のランダムセクションを示す。約70個の結晶を図9に示す。図9の完全に成長した結晶はすべて、十四面体形状である。図中で凝集体を見出すことはできない。
図10】(試験例) 図10は、光学顕微鏡下で分析した、試験例の試料4(参照塩)のランダムセクションを示す。図10に示される結晶はすべて、立方体形状である。図10の結晶の大部分は、少なくとも1つの側で凝着しており、そのためにより大きい凝集体を形成した。
図11】(臨界アプローチ角を測定する装置および原理) 図11は、臨界アプローチ角を測定する装置および原理の略図を示す。測定装置(10)は、角度の測定前に状態(I)で示される。測定装置(10)の上方部分、すなわち、充填領域(11)は、塩(12)で充填される。測定装置(10)は、プレート(14−1)および(14−2)を備え、それらは、装置(10)内で水平に取り付けられ、x方向に可動であり、測定装置(10)の底部(13)から充填領域(11)を分離する。塩(12)の充填レベルは、充填レベル指示器(16)によって示される。
【0037】
状態(II)は、充填領域(11)から測定装置(10)の底部(13)に塩を排出した後の測定装置(10)を示す。水平に移動したプレート(14−1)と(14−2)の間のギャップ幅(17)が測定される。アプローチ角α1,2は、それぞれのプレート(14−1)、(14−2)上に残留した残留塩(20)のそれぞれの境界線(18−1)、(18−2)とそれぞれのプレート(14−1)、(14−2)のそれぞれの境界線(22−1)、(22−2)によって形成される角度αである。角度αは、塩が流れ始めたギャップ幅(17)が確定した後に測定される。残留塩(20)は、充填領域(11)中に残留する塩である。プレート(14−1)と(14−2)の間のギャップから流れた塩(12)は、測定装置(10)の底部(13)で塩コーン(24)を形成する。
【符号の説明】
【0038】
10 測定装置
11 充填領域
12 塩
13 底部
14−1 プレート
14−2 プレート
16 充填レベル指示器
17 ギャップ幅
18−1 境界線
18−2 境界線
20 残留塩
22−1 境界線
22−2 境界線
24 塩コーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11